JP2019167273A - 左官用モルタル - Google Patents

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Abstract

【課題】重ね塗りせずに容易に厚塗りすることができ、左官施工作業性に優れ、しまりが早く、良好な付着性、曲げ剛性及びひび割れ抵抗性を具備した左官用モルタルの提供を課題とする。【解決手段】(A)ポルトランドセメント100質量部、(B)石膏類4.0〜12.0質量部、(C)スラグ微粉及び/又はポゾラン反応性物質26〜38質量部、(D)増粘剤0.15〜0.5質量部、(E)ポリマーセメントモルタル用ポリマー2.0〜8.0質量部、(F)フミン酸及び/又はフルボ酸4〜8質量部、並びに(G)細骨材230〜270質量部を含有する左官用モルタル。【選択図】なし

Description

本発明は、主に鏝塗りで施工するのに適したセメント系の左官用モルタルに関する。
建造物の壁面などに左官施工するモルタルは、鏝作業性等の施工性と施工対象への付着性および施工後の保形性が良好であることが基本的には必要である。しかしながら、左官用モルタルの施工目的は、下地材、仕上材、補修材、目地材等と様々であり、それに関連して要求される性能も多岐にわたる。その中でも塗り厚(施工厚さ)が要求性能とされることが多く、具体的には、手間と工期のかかる重ね塗りを行わずに、1度の施工で所望の厚さに厚塗りできることが要求されている。
一方、左官用モルタルの構成成分は、ポルトランドセメントと細骨材を基本成分とし、これに要求性能に応じた成分が加わる。そして、容重が小さいほど施工物の剥落の防止効果も高いので、前記細骨材には、軽量細骨材を一定割合で使用することが多い。
付着性と収縮抵抗を向上させ、1度の左官施工で6mm程度の塗り厚を得るために、セメントと軽量細骨材に、ポゾラン反応性物質、繊維及びポリマーを加えたモルタルが知られている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、このモルタルでは、施工物が厚肉で肥大化するので、付着性や保水性を確保するため、軽量骨材を多く使用し、またポゾラン反応性物質との水和反応もあるため混練水量も多く必要で、曲げ強度も低くなり、脆弱化し易い。
また、薄塗りから厚塗りまで1種類のモルタルで適用可能にし、良好な左官作業性と曲げ剛性を具備するものとして、セメントと細骨材に、保水剤と特定の含有比にした表面親水性と表面疎水性のポリマーなどを加えた塗りモルタルが知られている(例えば、特許文献2参照)。
特開平11−199297号公報 特開2013−139349号公報
しかしながら、このモルタルではセメントやポゾラン反応性物質との水和反応で含有混練水が急速に消費されることに加え、残存含水も施工後は、施工対象のコンクリート躯体等に吸収されるので、乾燥収縮が急速に進み、亀裂が生じ易くなる。その防止には保水剤の増量が有効ではあるが、有効量を加えると粘性が高くなり過ぎて、左官施工作業性が低下する。ポゾラン反応物質含有量を低減すれば前記有効量も下げられるが、施工物のしまりが遅くなる。
本発明は、鏝塗りする際に重ね塗りせずに容易に厚塗りすることができ、しまりを早めて、液垂れや崩落を防止し、良好な、曲げ剛性及びひび割れ抵抗性を具備した左官用モルタルの提供を課題とする。
本発明者は、特定量のポルトランドセメントと細骨材と石膏とスラグ微粉及び/又はポゾラン反応性物質増粘剤と増粘剤とポリマーセメント用ポリマーとフミン酸及び/又はフルボ酸とを含むモルタル組成物が厚塗りを必要とする左官施工に適し、液垂れ・崩落及びひび割れの抵抗性や強度等の施工後の性状も良好であることを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明は、次の発明〔1〕〜〔3〕を提供するものである。
〔1〕(A)ポルトランドセメント100質量部、
(B)石膏類4〜12質量部、
(C)スラグ微粉及び/又はポゾラン反応性物質26〜38質量部、
(D)増粘剤0.15〜0.5質量部、
(E)ポリマーセメントモルタル用ポリマー2.0〜8.0質量部、
(F)フミン酸及び/又はフルボ酸4〜8質量部、
並びに(G)細骨材230〜270質量部を含有する左官用モルタル。
〔2〕さらに、(H)減水剤、粘土鉱物および短繊維の群から選ばれる1種又は2種以上を含有する前記〔1〕記載の左官用モルタル。
〔3〕JIS R5201に規定する20℃でのフロー値が165〜190mmである前記〔1〕又は〔2〕記載の左官用モルタル。
本発明により得られる左官用モルタルは、重ね塗らなくとも、容易に厚塗りすることができ、施工後も液だれや崩落、ひび割れ、硬化遅延といった懸念がなく、施工作業効率の大幅な改善が達成可能となる。
本発明の左官用モルタルは、結合相形成成分として(A)ポルトランドセメントを含有する。ポルトランドセメントは、例えば、普通、早強、超早強、中庸熱、低熱、耐硫酸塩等の各種ポルトランドセメントの1種又は2種以上が使用できる。また、ポルトランドセメントを含む高炉セメントやフライアッシュセメント等の混合セメントも使用可能であるが、混合セメント中のポルトランドセメント含有相当分だけをポルトランドセメントとして扱い、残部の高炉スラグ粉、フライアッシュ、シリカフュームなどは後述の成分(C)として扱う。本発明ではポルトランドセメントを必須使用するものであり、これに加えてアルミナセメントやエコセメント等の特殊セメントを併用することを制限するものではない。通常の施工環境下では、特別な要求性能が無い限り、コスト的に有利な普通ポルトランドの使用が好ましい。
また、本発明の左官用モルタルは、(B)石膏類を含有する。石膏類は、無水石膏、半水石膏又は二水石膏が使用できる。工業薬品の無水硫酸カルシウムなども使用できる。石膏類を含むことで、収縮が抑制され、それに伴うひび割れ発生を防ぐことができ、また長期強度の延びも期待できる。石膏類の左官用モルタル中の含有量は、ポルトランドセメント含有量100質量部に対し、4〜12質量部とする。好ましくは6〜10質量部の含有量とし、より好ましくは7.5〜9.5質量部の含有量とする。4質量部未満では硬化時の収縮が十分抑制できないことと長期強度がのびないことがあるので好ましくない。また12質量部を超える含有量では過膨張による膨張亀裂の虞があるので好ましくない。
また、本発明の左官用モルタルは、(C)スラグ微粉及び/又はポゾラン反応性物質を含有する。何れもモルタルやコンクリートに使用できるものなら特に限定されない。スラグ微粉としては、概ね1mm未満の高炉スラグ、製鋼スラグ、脱珪スラグ、都市ゴミや汚泥などを起源とする溶融スラグなどを例示することができるが、記載例に限定されるものではない。また、ポゾラン反応性物質としては、シリカフューム、フライアッシュ、火山灰、珪藻土などが例示される。スラグ微粉及び/又はポゾラン反応性物質を含有することで水密性の向上をはかることができ、強固で耐久性のある施工物が得られる。スラグ微粉及び/又はポゾラン反応性物質の左官用モルタル中の含有量は、何れか一方しか含有しないときはその含有物の含有量で、両者を含有するときは両者の合計含有量で、ポルトランドセメント含有量100質量部に対し、26〜38質量部とする。好ましい含有量は30〜34質量部であり、より好ましくは、31.5〜32.5質量部である。26質量部未満では脆弱な施工物しか得られないことがあるので好ましくない。また38質量部を超える含有量にしても含有硬化は殆ど向上しないので好ましくない。
また、本発明の左官用モルタルは、(D)増粘剤を含有する。増粘剤としてはモルタルやセメントで使用できる水溶性の増粘剤なら何れのものでも使用できる。具体的には、セルロース誘導体、デンプン誘導体、ゼラチン、アラビアゴム等の水溶性ポリマーを挙げることができるが限定されるものではない。好ましくは、左官施工に適した粘性のモルタルが得やすくかつ良好な保水性能も具備することから、20℃2%水溶液の粘度が1500〜35000mPa・sのセルロース誘導体を使用する。前記セルロース誘導体としては、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース等が、20℃2%水溶液の粘度が1500〜35000mPa・sのものを容易に調整できるので推奨されるが、限定されるものではない。前記増粘剤の含有により、付着性向上と、施工物の乾燥によるひび割れ、施工後の剥落や液垂れの抑止に寄与する。増粘剤の左官用モルタル中の含有量は、ポルトランドセメント含有量100質量部に対し、0.15〜0.5質量部(液状増粘剤のときは固形分換算量)である。好ましい含有量は0.2〜0.4質量部(液状増粘剤のときは固形分換算量)であり、より好ましい含有量は0.25〜0.35質量部(液状増粘剤のときは固形分換算量)である。0.15質量部未満では良好な鏝塗り性が得られず、ひび割れも十分抑えられないことがあって好ましくない。また0.5質量部を超える含有量では粘性が上昇し過ぎ、混練性の悪化や流動性が乏しくなり過ぎて鏝塗りができないことがあるので好ましくない。
また、本発明の左官用モルタルは、(E)ポリマーセメントモルタル用ポリマーを含有する。本発明で使用するポリマーセメントモルタル用ポリマーは、JIS A 1171:2016に規定するポリマーセメントモルタルを構成するセメント混和用ポリマーが好ましく、セメントと共にモルタルの結合相を形成するセメント混和用ポリマーであって、セメント混和用再乳化形粉末樹脂とセメント混和用ポリマーディスパーションと規定されているものに該当するなら、何れのものでも使用でき、2種以上併用もできる。具体例を示すと、セメント混和用ポリマーディスパーションとして、スチレンブタジエンゴム(SBR)系ラテックス、アクリル酸エステル(PAE)系エマルション、エチレン酢ビ(EVA)系エマルションが、また再乳化形粉末樹脂として、アクリル系、酢酸ビニル系の樹脂などを挙げることができる。ポリマーセメント用ポリマーは、2種類以上を併用しても良い。ポリマーセメント用ポリマーの左官用モルタル中の含有量は、ポルトランドセメント含有量100質量部に対し、2.0〜8.0質量部(液状のものは固形分換算量,以下同様)である。好ましい含有量は3.5〜7.0質量部であり、より好ましい含有量は4.5〜5.5質量部である。2.0質量部未満では良好な鏝塗り性が得られず、ひび割れも十分抑えられないことがあって好ましくない。また8.0質量部を超える含有量では粘性が上昇し過ぎ、混練性の悪化、鏝塗り作業性の低下などを起こすので好ましくない。
また、本発明の左官用モルタルは、(F)フミン酸及び/又はフルボ酸を含有する。フミン酸及び/又はフルボ酸の含有により、増粘剤や保水剤を増加させずに、厚塗り施工が可能となり、しまりも早いため、液垂れや崩落防止に貢献することに加え、硬化後の付着強度が高まる。
フミン酸とフルボ酸は、いずれも植物などが微生物により分解される最終生成物である腐植物質である。フルボ酸は天然フルボ酸が使用できる。フミン酸は天然フミン酸と再生フミン酸の何れでも使用することができる。天然フミン酸及び天然フルボ酸は生成源に限定されずに使用できる。再生フミン酸は市販工業製品のニトロフミン酸が例示できるが、これの使用に限定されるものではない。また、フミン酸塩は製造時の配合に使用しない。フミン酸塩はフミン酸本来の活性作用が失われ、本発明でフミン酸配合によって奏される前記のような特性が得難くなるためである。本発明の左官用モルタル中のフミン酸及び/又はフルボ酸の含有量は、ボルトランドセメント含有量100質量部に対し、4〜8質量部とするのが好ましい。好ましいフミン酸含有量は、ボルトランドセメント含有量100質量部に対し、5〜6質量部である。4質量部未満の含有量では、施工物のしまりの遅延や左官後付着力低下による施工物の液だれや崩落が起こり易くなり好ましくない。フミン酸含有量が8質量部を越えると、しまりが早くなりすぎて施工作業時間が大きく制約される虞があるので好ましくない。
また、本発明の左官用モルタルは、(G)細骨材を含有する。細骨材は、最大粒径5mm以下であってモルタルに使用できるものなら、材質を含め特に限定されない。具体的には、例えば、山砂、川砂、海砂等の天然砂や砕石粉等の普通骨材、パーライト、軽石、EVA等の樹脂の軽量骨材を挙げることができる。好ましくは、強度低下抑制と容重低減を両立させるため、軽量骨材と普通骨材を併用する。その場合、軽量骨材と普通骨材の配合比を質量比(軽量/普通)で0.03〜0.04にするのがより好ましい。また、粒度分布や比重の異なる複数の種類の細骨材を適宜組み合わせて用いると、ひび割れの抑制が行い易くなるので望ましい。
本発明の左官用モルタル中の細骨材の含有量は、ボルトランドセメント含有量100質量部に対し、230〜270質量部とする。細骨材が250質量部未満の含有量では、収縮ひび割れが発生する虞があるので好ましくなく、290質量部を越えると含有量では強度が低下するので好ましくない。
また、本発明の左官用モルタルは、さらに(H)減水剤、粘土鉱物および短繊維の群から選ばれる1種又は2種以上を含有することが好ましい。
このうち、減水剤の含有は、混練性が良好になり、均質なモルタルが得やすくなる。減水剤は、高性能減水剤、高性能AE減水剤、AE減水剤、分散剤などと称されるものを含め、モルタルやコンクリートに使用できるものなら何れのものでも良い。一例を示すと、ポリカルボン酸系高性能減水剤やナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物系高性能減水剤が好適であり、メラミンスルホン酸やリグニンスルホン酸を有効成分に含む減水剤なども使用可能である。高性能減水剤を使用する場合の好ましい含有量は、ポルトランドセメント含有量100質量部に対し、固型分質量換算で0.02〜0.06質量部である。
また、粘土鉱物の含有は、保水性が向上するとともに、鏝作業性が向上する。粘土鉱物としては、含水珪酸塩鉱物が好ましく、具体的には、ベントナイト、セピオライト、カオリナイト、モンモリロナイト等が例示されるが、限定されるものではない。粘土鉱物を使用する場合の好ましい含有量は、ポルトランドセメント含有量100質量部に対し、2.0〜5.0質量部である。
また、短繊維の含有は、施工物のひび割れ抑制や付着性並びに耐衝撃性向上等に寄与する。短繊維としては、高分子繊維、カーボン繊維、鋼繊維、セラミックス繊維等を挙げることができるが、好ましくは高分子繊維、より好ましくは耐破断性や耐食性に優れて安価なナイロン繊維を使用する。高分子繊維を使用する場合の好ましい含有量は、ポルトランドセメント含有量100質量部に対し、0.2〜0.5質量部である。
また、本発明の左官用モルタルは、前記以外の成分(材料)も本発明の効果を損なうものでない限り、含有することができる。このような成分として、例えば、乾燥収縮低減剤、膨張材、撥水剤、スターチエーテル等を挙げることができる。
また、本発明の左官用モルタルの混練の際に添加される混練水の量は、特に制限されるものではない。施工対象、施工環境及びモルタル配合等に応じて適宜定めれば良い。配合量の目安を例示すると、20℃前後で混練・施工する場合、本発明の左官用モルタルに含まれるポルトランドセメント100質量部に対し、80〜90質量部の混練水の使用が推奨される。より好ましくは、JIS R5201に規定する20℃でのフロー値が165〜190mmになるような混練水の配合量とする。
また、本発明の左官用モルタルの製造方法は特に限定されない。一例を挙げれば、混練水および配合する全材料をミキサーに投入し、1〜2分程度混練すれば、所望の左官用モルタルが得られる。また、本発明の左官用モルタルは左官施工に適したものであるが、施工方法が限定されるものではない。
以下、実施例により本発明を具体的に詳しく説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。また、特記無い限り、以下の実施例は評価も含め、20(±0.5)℃の環境下で行った。
次に表す各材料を表1の配合となるよう、混練容器に投入し、セメント100質量部に対し、混練水85質量部を加え、約60秒間混練を行って、モルタル組成物を作製した。
A;普通ポルトランドセメント(太平洋セメント株式会社製)
B;II型無水石膏(市販試薬)
C1;高炉スラグ粉(日鉄住金高炉セメント社製「エスメント」)
C2;シリカフューム(BET比表面積10万cm2/g、市販品)
C3;フライアッシュII種(市販品)
D;メチルセルロース系増粘剤(SKWイーストアジア社製「チローゼMH6000YP」)
E2;ポリマーディスパーション(太平洋マテリアル社製「モルヒットエマルション」、固型分濃度45%)
E1;再乳化型粉末樹脂(ワッカー社製「ビナパス8034H」)
D2;消泡剤(市販品)
D3;蟻酸カルシウム(市販試薬)
F1;フミン酸(市販試薬)
F2;フミン酸(東京化成工業社製ニトロフミン酸)
G1;普通細骨材(有垣工業社製「有垣粒粉103」)
G2;普通細骨材(珪砂8号、市販品)
G3;普通細骨材(旭鉱末社製「タンカルA」)
G4;軽量細骨材(ハットリ社製「服部パーライト」)
G5;軽量細骨材(吉岡産業社製「吉岡EVA」)
H1;ポリカルボン酸系高性能減水剤(太平洋マテリアル社製「コアフローNF−200」)
H2;セピオライト(市販品)
H3;ナイロン短繊維(長さ10mm、市販品)
Figure 2019167273
[モルタル組成物の流動性評価]
混練したモルタル組成物の流動性の評価として、JIS R5201に規定する方法に準じてフローを測定した。フロー測定は、混練終了直後、混練終了30分経過後のモルタル組成物に対して行った。この結果を表2に示す。
[モルタル組成物の容重評価]
また、前記混練直後のモルタル組成物の容重をJIS A1171に準拠した方法で測定した。その結果を表2に示す。
[モルタル組成物の施工性評価]
また、前記モルタル組成物の施工性の評価を行った。評価の項目と方法は以下の通りである。その結果を表2に記す。
(1)鏝切れ;20℃の試験室で450×900×60mmのコンクリート製平版を床面に垂直に設置し、5mm厚さで450×450の範囲面に、市販の金鏝で各モルタル組成物を塗りつけ、鏝切れを調べた。2回塗りつけた後に、金鏝にモルタル組成物の付着残が実質無かったものを、鏝切れ性「良好」と判断し、それ以外の状況となったものは全て「不良」と判断した。
(2)鏝伸び;20℃の試験室で450×900×60mmのコンクリート製平版を床面に垂直に設置し、5mm厚さで450×450の範囲面に、市販の金鏝で各モルタル組成物を塗りつけ、鏝伸び状況を調べた。塗りつけたモルタル組成物を、金鏝でほぼ平滑に押し広げることができたものを鏝伸びが「良好」と判断し、それ以外の状況となったものは全て「不良」と判断した。
(3)垂れの有無;20℃の試験室で450×900×60mmのコンクリート製平版を床面に垂直に設置し、450×450の範囲面に、市販の金鏝で各モルタル組成物を可能な限りの厚さで塗りつけ、施工物の垂れの有無を目視で確認した。塗りつけた施工物の垂れや崩落が見られなかったものを、垂れ「無」と判断し、それ以外の状況となったものは全て、垂れ「有」と判断した。
(4)厚塗り;20℃の試験室で450×900×60mmのコンクリート製平版を床面に垂直に設置し、450×450の範囲面に、市販の金鏝で各モルタル組成物を垂れや崩落が起こる限界厚さまで塗りつけた。1回の塗りつけで7mm以上の厚さに塗りつけることができ、塗りつけ後も垂れや崩落しなかったものを厚塗り「可」と判断し、それ以外の状況となったものは全て厚塗り「不可」と判断した。
Figure 2019167273
[凝結時間の評価]
また、前記の如く作製した注水後のモルタル組成物に対し、JIS A 1147に準じた方法でプロクター貫入試験を行った。プロクター針は断面積0.125cm2の針を使用した。凝結の始発時間は、プロクター貫入抵抗値が3.5N/mm2に到達した時間をもって定めた。また、プロクター貫入抵抗値が28N/mm2に達した組成物の注水時からの経過時間を凝結の終結時間とした。結果を表2に記す。尚、プロクター貫入抵抗値が3.5N/mm2以下の状態が注水から12時間以上続いたモルタル質組成物は、凝結が実質起こらないものと見なし、「×」と表記した。
[圧縮強度の評価]
また、前記の如く作製した注水後のモルタル組成物を、作製後直ちに、内寸40×40×160mmの成形用型枠に流し込んだ。これを空気中に24時間静置して脱型した。脱型物は、所定の材齢まで20℃(±0.5℃)恒温庫に入れて、それぞれ材齢材齢7日と28日の供試体を得た。各供試体の一軸圧縮強度をアムスラー式圧縮強度試験機で測定した。この結果を表3に示す。尚、所定材齢で未硬化だったものは供試体作成不能のため強度測定を行えず、「×」と表記した。
[曲げ強度の評価]
また、前記の如く作製した注水後のモルタル組成物を、作製後直ちに、内寸40×40×160mmの成形用型枠に充填した。これを空気中に24時間静置して脱型した。脱型物は、所定の材齢まで20℃(±0.5℃)恒温庫に入れて、それぞれ材齢材齢7日と28日の供試体を得た。各供試体の三点曲げ強度をモハエリス曲げ強度試験機で測定した。この結果を表3に示す。尚、所定材齢で未硬化だったものは供試体作成不能のため強度測定を行えず、「×」と表記した。
[ひび割れ発生状況の確認]
前記曲げ強度の評価に使用する材齢28日の供試体の強度試験直前の表面のひび割れ発生状況を目視で観察した。表面にひび割れが全く観察されなかったものを、ひび割れ発生が「無」と判断し、僅かでもひび割れが観察されたものは、ひび割れ発生が「有」と判断した。その結果も表3に示す。
Figure 2019167273
表2から、本発明による左官用モルタルは、左官施工に必要な性状を十分具備し、左官施工に適していることがわかる。しかも、従来技術で施工した場合は時間の手間のかかる重ね塗りをしないと得られないような施工厚みも、容易に得ることができる。また、表3から終結も比較的早いためしまりが良く、付着性も良好で、ひび割れもなく強固な施工物が得られたことがわかる。

Claims (3)

  1. (A)ポルトランドセメント100質量部、
    (B)石膏類4.0〜12.0質量部、
    (C)スラグ微粉及び/又はポゾラン反応性物質26〜38質量部、
    (D)増粘剤0.15〜0.5質量部、
    (E)ポリマーセメントモルタル用ポリマー2.0〜8.0質量部、
    (F)フミン酸及び/又はフルボ酸4〜8質量部、
    並びに(G)細骨材230〜270質量部を含有する左官用モルタル。
  2. さらに、(H)減水剤、粘土鉱物および短繊維の群から選ばれる1種又は2種以上を含有する請求項1記載の左官用モルタル。
  3. JIS R5201に規定する試験方法におけるフロー値が165〜190mmである請求項1又は2記載の左官用モルタル。
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