JP6282773B1 - マスキング治具、電気メッキ装置 - Google Patents
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Abstract
Description
例えば、特許文献1に記載された電気メッキ装置は、陽極を備えメッキ液を満たしたメッキ槽に、ワーク支持機構で吊下げた棒状のワークを浸漬する形式の電気メッキ装置において、メッキ槽に、ワークの下部をマスクするマスキング治具を備え、ワークの下部が液中でマスキング治具に挿入され、マスクする。そして、マスキング治具は、ワークの下部を収納するための、ワークの外径より大きな凹部か、ワークの外径より大径の貫通孔を備えている。
本発明は、マスクすべき部位がメッキされてしまうことを抑制することができるマスキング治具、電気メッキ装置を提供することを目的とする。
他の観点から捉えると、本発明は、メッキしたい物質を含むメッキ液を収容するメッキ槽と、棒状の被メッキ部材を把持する把持部と、前記メッキ槽内に配置されて、前記被メッキ部材の特定部位をマスクするマスキング治具と、を備え、前記マスキング治具は、前記被メッキ部材を通す貫通孔が形成されていると共に、前記貫通孔の周囲に、前記特定部位が前記貫通孔に挿入されることにより弾性変形して前記被メッキ部材の外周端面と接触する変形部を有する接触部材を備え、メッキしたい物質が前記特定部位へ向かうのを抑制する抑制ユニットと、前記抑制ユニットを前記被メッキ部材の軸心方向に交差する方向に移動可能に支持する支持部と、を備え、前記支持部は、前記接触部材を載せる土台と、前記土台との間に前記抑制ユニットを挟むことで前記抑制ユニットの前記軸心方向の移動を規制する規制部材とを有し、前記規制部材の内周面と前記抑制ユニットの外周面との間に隙間を形成することによって、前記抑制ユニットの外周面が前記規制部材の内周面に接触するまで、前記抑制ユニットを、前記土台に対して前記軸心方向に交差する方向に移動可能に支持することを特徴とする電気メッキ装置である。
図1は、本実施の形態に係る電気メッキ装置1の概略構成図である。
図2は、電気メッキ装置1にてメッキ処理を施しているときの状態を示す図である。
電気メッキ装置1は、棒状の被メッキ部材の一例としてのピストンロッド10を把持する把持部の一例としての把持機構20と、メッキしたい物質を含むメッキ液を収容するメッキ槽30とを備えている。そして、電気メッキ装置1は、把持機構20にて複数本のピストンロッド10を把持し、複数本のピストンロッド10を下方に配置したメッキ槽30に浸漬することでメッキ処理する。
また、電気メッキ装置1は、自走台14に設けられたモータ15と、モータ15の出力軸に装着されたピニオン16と、前後方向に延びて、ピニオン16と共にピニオン・ラック機構を形成するラック17とを備えている。自走台14は、モータ15が駆動することによって前後方向に移動する。
また、電気メッキ装置1は、電気メッキのための陽極36と、陽極側のバスバー37と、陰極受け台38と、陰極側のバスバー39とを備えている。
マスキング治具100については後で詳述する。
図3は、被メッキ部材の一例としてのピストンロッド10の概略図である。図1と同じ向きに示している。
図4(a)及び図4(b)は、第1の実施形態に係るマスキング治具100の概略構成を示す図である。マスキング治具100は、ピストンロッド10に対してメッキ処理を行う場合に好適な治具である。
ピストンロッド10は、車両のサスペンションに用いられる部品であり、シリンダ内に配置されるピストンを一方の端部に保持し、他方の端部がシリンダ外に露出する。例えば、ピストンロッド10におけるシリンダ外に露出する部位がシリンダ内を密封するオイルシールに摺接して摩耗するのを抑制するために、オイルシールに摺接する部位に硬質クロムメッキを施すメッキ処理を行う。
<第1の実施形態>
第1の実施形態に係るマスキング治具100は、棒状のピストンロッド10の特定部位の一例としての雄ねじ10eへ、メッキしたい物質の一例としての金属のイオンが向かうのを抑制する抑制ユニット110と、抑制ユニット110をピストンロッド10の軸心に交差する方向に移動可能に支持する支持部の一例としての支持ユニット170とを備える。
抑制ユニット110は、ピストンロッド10の下軸部10cの外周面に接触して、雄ねじ10eへ金属イオンが向かうのを抑制する接触部材130を備えている。また、抑制ユニット110は、ピストンロッド10の雄ねじ10eよりも上方に位置する中央軸部10aの下端部の周囲を囲み、雄ねじ10eの方へ金属イオンが向かうのを抑制する抑制部材140を備えている。また、抑制ユニット110は、接触部材120及び抑制部材140を保持する保持部材150を備えている。
傾斜部142は、内面142aとピストンロッド10の中央軸部10aの外周面との間の隙間が上側から下側に行くに従って徐々に小さくなるように形成されている。言い換えれば、傾斜部142は、接触部材130の方に行くに従って所定部位の一例としての中央軸部10aとの間の隙間が徐々に小さくなるように軸心に対して傾斜している。傾斜部142の軸心に対する角度θは45度未満であることを例示することができる。傾斜部142の上部の上部外面142bは、軸心方向に平行となるように所定長さに亘って外径が同じに成形されている。傾斜部142の上部外面142bよりも下方の外面は、肉厚が略同じになるように、外径が上側から下側に行くに従って徐々に小さくなるように成形されている。
なお、抑制部材140は、金属や樹脂であることを例示することができる。
円板状部151の貫通孔151aの孔径は、接触部材130の円筒状部131の外径よりも大きく、接触部材130のフランジ132の外径よりも小さい。円板状部151の外径は、接触部材130のフランジ132の外径よりも大きい。
円筒状部152の内周面には、抑制部材140の円筒状部143の外周面に形成された雄ねじ143aが締め付けられる雌ねじ152aが形成されている。
なお、保持部材150は、金属や樹脂であることを例示することができる。
支持ユニット170は、抑制ユニット110が載る土台180と、土台180との間に抑制ユニット110を挟むことで抑制ユニット110の軸心方向の移動を規制する規制部材190と、規制部材190の移動を規制するロックナット195とを備えている。
なお、土台180は、金属や樹脂であることを例示することができる。
なお、規制部材190は、金属や樹脂であることを例示することができる。
第2円筒状部192の内径は、第1円筒状部191の内径よりも大きい。第2円筒状部192の軸心方向の大きさは、抑制ユニット110の保持部材150における軸心方向の大きさよりも大きい。
突出部193は、中央部に貫通孔193aが形成された円形の板状の部位である。貫通孔193aの孔径は、抑制ユニット110の抑制部材140の円筒状部143の内径よりも小さい。貫通孔193aの孔径は、抑制部材140の傾斜部142における最も大きな外径である上部外面142bの外径よりも大きい。
電気メッキ装置1において、陽極側のバスバー37及び陰極側のバスバー39を介して、陽極36とピストンロッド10との間に所定の電圧を印加すると、メッキ液中の金属イオンMiが陰極側のピストンロッド10に向い、金属が還元析出し始める。
図6に示すように、マスキング治具100に対してピストンロッド10が挿入される際、接触部材130の貫通孔133の中心Chと、ピストンロッド10(下軸部10c)の軸心Csとがずれていた場合には、複数の接触片136の内の一部の接触片136の上部にのみ下軸部10cの外周面が接触し、接触した接触片136が軸心と直交する方向に力を受ける。これにより、抑制ユニット110が、接触片136が下軸部10cにより受けた力に応じた方向に移動して、貫通孔133の中心Chとピストンロッド10の軸心Csとが同じになり易くなる。そして、マスキング治具100にピストンロッド10が挿入された後には、下軸部10cの外周面に、複数の接触片136が均等に接触することとなる。
複数の接触片136が下軸部10cの外周端面と均等に接触することにより、接触部材130の上方から、円筒状部131の内周面と下軸部10cの外周面との間を通って、金属イオンMiが雄ねじ10eの方へ向かうのがより確度高く遮断される。
比較例に係るマスキング治具は、第1の実施形態に係るマスキング治具100に対して、接触部材130が軸心と直交する方向に移動できない点が異なる。
比較例に係るマスキング治具に対してピストンロッド10が挿入される際に、接触部材130に形成された貫通孔133の中心Chと、ピストンロッド10(下軸部10c)の軸心Csとがずれていた場合には、複数の接触片136の内の一部の接触片136の上端部にのみ下軸部10cの外周面が接触する。そして、ピストンロッド10は、一部の接触片136を弾性変形させながら下方へ移動する。その結果、比較例に係るマスキング治具にピストンロッド10が挿入された後には、複数の接触片136の内の下軸部10cの外周面と接触しなかった接触片136と下軸部10cの外周面との間に隙間が生じる。すると、この隙間を介して、金属イオンMiが、接触部材130の上方から雄ねじ10eの方へ向かい易くなり、ピストンロッド10の雄ねじ10eがメッキされ易くなる(金属の薄膜が形成され易くなる)。また、貫通孔133の中心Chとピストンロッド10(下軸部10c)の軸心Csとがずれることで一部の接触片136のみが繰り返し変形されると、この一部の接触片136が塑性変形してしまうなどの損傷が生じ易くなり、マスキング治具の耐久性が低下する。
図8は、第2の実施形態に係るマスキング治具200の概略構成を示す図である。
第2の実施形態に係るマスキング治具200は、第1の実施形態に係るマスキング治具100に対して、支持ユニット270の土台280が、下部に、支持ユニット270の外側から、支持ユニット270の内側に金属イオンMiが向かうのを遮断する遮断部283を有する点が異なる。以下、第1の実施形態に係るマスキング治具100と異なる点について主に説明する。第1の実施形態に係るマスキング治具100と第2の実施形態に係るマスキング治具200とで、同じ形状、機能を有する物については同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
支持ユニット270は、抑制ユニット110が載る土台280を有している。土台280は、円筒状の円筒状部282と、円筒状部282の下部に設けられてピストンロッド10の雄ねじ10eに金属イオンMiが向かうのを遮断する遮断部283とを有している。
遮断部283は、円筒状部282の下端部に、接着、粘着又は溶着されることを例示することができる。遮断部283は、円筒状部282の内側にしまりばめで嵌合されても良い。また、円筒状部282と遮断部283とを、一体的に成形しても良い。つまり、土台280は、カップ状であっても良い。
図9(a)は、第3の実施形態に係るマスキング治具300の概略構成を示す図である。図9(b)は、第3の実施形態に係るマスキング治具300にピストンロッド10が挿入された状態を示す図である。
第3の実施形態に係るマスキング治具300は、第1の実施形態に係るマスキング治具100に対して、抑制ユニット110が異なる。以下、第1の実施形態に係るマスキング治具100と異なる点について主に説明する。第1の実施形態に係るマスキング治具100と第3の実施形態に係るマスキング治具300とで、同じ形状、機能を有する物については同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
抑制ユニット310は、第1の実施形態に係る抑制ユニット110が有する、接触部材130、抑制部材140及び保持部材150に加えて、接触部材130を軸心方向に移動可能にする弾性部材360を有している。弾性部材360は、接触部材130のフランジ132と、保持部材150の円板状部151との間に配置されている。
弾性部材360は、ゴムにて成形された、中央部に貫通孔361が形成された円形の板状の部材であることを例示することができる。また、弾性部材360は、コイルスプリングであることを例示することができる。
図10(a)及び図10(b)は、第4の実施形態に係るマスキング治具400の概略構成を示す図である。
第4の実施形態に係るマスキング治具400は、第1の実施形態に係るマスキング治具100に対して、抑制ユニット110の接触部材130の形状が異なる。以下、第1の実施形態に係るマスキング治具100と異なる点について主に説明する。第1の実施形態に係るマスキング治具100と第4の実施形態に係るマスキング治具400とで、同じ形状、機能を有する物については同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
そして、抑制ユニット410は、ピストンロッド10の下軸部10cの外周面に接触して、金属イオンが雄ねじ10eへ向かうのを抑制する接触部材430を備えている。接触部材430は、中央部に貫通孔433が形成された円形の板状の部材である。つまり、第4の実施形態に係る接触部材430は、第1の実施形態に係る接触部材130とは異なり、ピストンロッド10の雄ねじ10eの周囲を囲んでいない。接触部材430は、貫通孔433の周囲に、雄ねじ10eが貫通孔433に挿入されることにより弾性変形してピストンロッド10の外周面と接触する変形部434を有する。変形部434には、放射状にスリット435が形成され、複数に分離している。つまり、接触部材430は、複数に分離した接触片436を有しており、ピストンロッド10の下軸部10cが挿入されていない状態で、接触片436同士が互いに接触しないようにスリット435が形成されている。
接触部材430は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などの樹脂や金属であることを例示することができる。
また、円板状部材430と保持部材150の円板状部151との間に、第3の実施形態に係る弾性部材360を配置しても良い。
図11は、第5の実施形態に係るマスキング治具500の概略構成を示す図である。
第5の実施形態に係るマスキング治具500は、第1の実施形態に係るマスキング治具100に対して、抑制ユニット110が異なる。以下、第1の実施形態に係るマスキング治具100と異なる点について主に説明する。第1の実施形態に係るマスキング治具100と第5の実施形態に係るマスキング治具500とで、同じ形状、機能を有する物については同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
抑制ユニット510は、第1の実施形態に係る抑制ユニット110が有する、接触部材130、抑制部材140及び保持部材150に加えて、接触部材130の上方に遮断部材520を有している。
Claims (8)
- 棒状の被メッキ部材を通す貫通孔が形成されていると共に、前記貫通孔の周囲に、前記被メッキ部材の特定部位が前記貫通孔に挿入されることにより弾性変形して前記被メッキ部材の外周端面と接触する変形部を有する接触部材を備え、メッキしたい物質が前記特定部位へ向かうのを抑制する抑制ユニットと、
前記抑制ユニットを前記被メッキ部材の軸心方向に交差する方向に移動可能に支持する支持部と、
を備え、
前記支持部は、前記接触部材を載せる土台と、前記土台との間に前記抑制ユニットを挟むことで前記抑制ユニットの前記軸心方向の移動を規制する規制部材とを有し、前記規制部材の内周面と前記抑制ユニットの外周面との間に隙間を形成することによって、前記抑制ユニットの外周面が前記規制部材の内周面に接触するまで、前記抑制ユニットを、前記土台に対して前記軸心方向に交差する方向に移動可能に支持する
ことを特徴とするマスキング治具。 - 前記変形部は、放射状にスリットが形成されて複数に分離している
請求項1に記載のマスキング治具。 - 前記接触部材は、弾性体であると共に、前記被メッキ部材の軸方向に重ねられた複数の層から構成される
請求項1又は2に記載のマスキング治具。 - 前記抑制ユニットは、前記特定部位へメッキしたい物質が向かうのを抑制する抑制部材を有する
請求項1〜3のいずれか1項に記載のマスキング治具。 - 前記抑制部材は、前記接触部材の方に行くに従って前記被メッキ部材の所定部位との間の隙間が徐々に小さくなるように前記被メッキ部材の軸心方向に対して傾斜した傾斜部を有し、前記傾斜部の前記軸心方向に対する角度は45度未満である
請求項4に記載のマスキング治具。 - 前記抑制部材の前記傾斜部における前記軸心方向に交差する方向の大きさは、前記土台の大きさよりも小さい
請求項5に記載のマスキング治具。 - 前記土台は、前記特定部位へ前記物質が向かうのを遮断する遮断部を有する請求項5又は6に記載のマスキング治具。
- メッキしたい物質を含むメッキ液を収容するメッキ槽と、
棒状の被メッキ部材を把持する把持部と、
前記メッキ槽内に配置されて、前記被メッキ部材の特定部位をマスクするマスキング治具と、
を備え、
前記マスキング治具は、
前記被メッキ部材を通す貫通孔が形成されていると共に、前記貫通孔の周囲に、前記特定部位が前記貫通孔に挿入されることにより弾性変形して前記被メッキ部材の外周端面と接触する変形部を有する接触部材を備え、メッキしたい物質が前記特定部位へ向かうのを抑制する抑制ユニットと、
前記抑制ユニットを前記被メッキ部材の軸心方向に交差する方向に移動可能に支持する支持部と、
を備え、
前記支持部は、前記接触部材を載せる土台と、前記土台との間に前記抑制ユニットを挟むことで前記抑制ユニットの前記軸心方向の移動を規制する規制部材とを有し、前記規制部材の内周面と前記抑制ユニットの外周面との間に隙間を形成することによって、前記抑制ユニットの外周面が前記規制部材の内周面に接触するまで、前記抑制ユニットを、前記土台に対して前記軸心方向に交差する方向に移動可能に支持する
ことを特徴とする電気メッキ装置。
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