以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において同一部分又は相当部分には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
まず、中性子捕捉療法システム1の全体の構成について、図1〜図3を参照して説明する。中性子捕捉療法システム1は、ホウ素中性子捕捉療法(BNCT:Boron Neutorn Capture Therapy)を行う装置である。中性子捕捉療法は、ホウ素(10B)と投与された患者(被照射体)に対して中性子線を照射することによりがん治療を行う治療法である。
中性子捕捉療法システム1は、患者を拘束すると共に患者を搬送、治療する際に利用される治療台2と、患者を治療台2に拘束する等の準備作業が実施される準備室3A,3Bと、患者に対して中性子線の照射が行われる照射室4A,4Bと、中性子線を発生させる中性子線発生部5と、を備えている。また、中性子捕捉療法システム1では、準備室3Aと照射室4Aとの間に連絡室6Aが設けられ、準備室3Bと照射室4Bとの間に連絡室6Bが設けられている。
中性子線発生部5は、荷電粒子を加速する加速器7と、加速器7から出射された荷電粒子線Pから中性子線を出力する中性子線出力部(照射部)8A,8Bと、荷電粒子線Pを中性子線出力部8A,8Bまで輸送するビーム輸送路9とを備える。中性子捕捉療法システム1は、平面視においてY字状を成す荷電粒子線生成室5aを有し、この荷電粒子線生成室5aの室内に、加速器7及びビーム輸送路9が配置されている。荷電粒子線生成室5aは、コンクリート製の遮蔽壁Wに囲まれた閉鎖空間である。
加速器7は、例えばサイクロトロンであり、荷電粒子(例えば陽子)を加速して、荷電粒子線P(例えば陽子線)を出射する。加速器7は、例えばビーム半径40mm、60kw(=30MeV×2mA)の荷電粒子線Pを出射する能力を有する。
ビーム輸送路9は、中性子線出力部8A,8Bのうちのいずれか一方に選択的に荷電粒子線Pを出射する。ビーム輸送路9は、加速器7に接続された第1輸送部10を有する。第1輸送部10の一端側は加速器7に接続され、第1輸送部10の他端側は、ビーム方向切替器11に接続されている。ビーム方向切替器11は、加速器7が出射された荷電粒子線Pを分岐させる分岐部として機能する。
ビーム方向切替器11は、スイッチング電磁石を利用して荷電粒子線Pの進行方向を制御する。ビーム方向切替器11には、荷電粒子線Pを中性子線出力部8Aに輸送するための第2輸送部12Aと、荷電粒子線Pを中性子線出力部8Bに輸送するための第3輸送部12Bとを有する。第2輸送部12Aの後段には、中性子線出力部8Aが設けられ、第3輸送部12Bの後段には、中性子線出力部8Bが設けられている。
また、ビーム方向切替器11は、荷電粒子線Pを正規の軌道から外してビームダンプ(図示せず)に導くことも可能である。ビームダンプは、治療前において荷電粒子線Pの出力を確認する際に利用される。なお、中性子捕捉療法システム1は、ビームダンプを備えていない構成でもよい。
第1輸送部10、第2輸送部12A及び第3輸送部12Bのそれぞれは、荷電粒子線Pのためのビーム調整部13を含む。ビーム調整部13は、荷電粒子線Pの軸調整のための水平型ステアリング及び水平垂直型ステアリング、荷電粒子線Pの発散を抑制するための四重極電磁石、並びに荷電粒子線Pの整形のための四方向スリット等を含む。第1輸送部10、第2輸送部12A及び第3輸送部12Bのそれぞれは、ビーム調整部13を備えていない構成でもよい。
第2輸送部12A及び第3輸送部12Bは、必要に応じて電流モニタを含んでいてもよい。電流モニタは、中性子線出力部8A,8Bに照射される荷電粒子線Pの電流値(つまり、電荷、照射線量率)をリアルタイムで測定する。第2輸送部12A及び第3輸送部12Bは、必要に応じて荷電粒子線走査部14(図4参照)を含んでいてもよい。荷電粒子線走査部14は、荷電粒子線Pを走査し、ターゲットT(図4参照)に対する荷電粒子線Pの照射制御を行う。荷電粒子線走査部14は、例えば、荷電粒子線PのターゲットTに対する照射位置を制御する。
中性子線出力部8Aは、図4に示されるように、中性子線Nを発生させるためのターゲットTと、中性子線Nを減速するための減速材15と、遮蔽体16とを含む。減速材15及び遮蔽体16は、モデレータを構成する。中性子線出力部8Aと中性子線出力部8Bとは互いに同様の構成を有するので、本書では中性子線出力部8Aについて説明し、中性子線出力部8Bの説明を省略する。
ターゲットTは、荷電粒子線Pの照射を受けて中性子線Nを発生させる。ターゲットTは、例えば、ベリリウム(Be)により形成され、直径160mmの円形状をなしている。ターゲットは、板状(固体)に限られず、液状など他の形態であってもよい。
減速材15は、ターゲットTから出射される中性子線Nを減速させる。減速材15により減速され、所定のエネルギーに低減された中性子線Nは、治療用中性子線とも呼ばれる。減速材15は、例えば異なる複数の材料が積層された積層構造をなしていてもよい。減速材15の材料は、荷電粒子線Pのエネルギー等の諸条件によって適宜選択される。例えば、加速器7(図2参照)からの出力が30MeVの陽子線であり、ターゲットTとしてベリリウムターゲットを用いる場合には、減速材15の材料として、鉛、鉄、アルミニウム、又はフッ化カルシウムを用いてもよい。加速器7からの出力が11MeVの陽子線であり、ターゲットTとしてベリリウムターゲットを用いる場合には、減速材15の材料として、重水(D2O)又はフッ化鉛を用いてもよい。加速器7からの出力が2.8MeVの陽子線であり、ターゲットTとしてリチウムターゲットを用いる場合には、減速材15の材料としてフルエンタール(商品名:アルミニウム、フッ化アルミ、フッ化リチウムの混合物)を用いてもよい。加速器7からの出力が50MeVの陽子線であり、ターゲットTとしてタングステンターゲットを用いる場合には、減速材15の材料として、鉄又はフルエンタールを用いてもよい。
遮蔽体16は、中性子線N及び当該中性子線Nの発生に伴って生じたガンマ線等の放射線が外部に放出されないよう遮蔽する。遮蔽体16の少なくとも一部は、荷電粒子線生成室5aと照射室4Aとを隔てる壁W1(図1参照)に埋め込まれている。
中性子線出力部8Aにおいては、荷電粒子線PがターゲットTに照射され、これにより中性子線Nが発生する。発生した中性子線Nは、減速材15で減速される。減速材15から出射された中性子線Nが、コリメータ17を通過して治療台2上の患者Sに照射される。中性子線Nは、速中性子線、熱外中性子線、及び熱中性子線を含んでおり、ガンマ線も伴っている。このうち主として熱中性子線が、患者Sの体内の腫瘍中に取り込まれたホウ素と核反応して、有効な治療効果を発揮する。中性子線Nのビームに含まれる熱外中性子線の一部も、患者Sの体内で減速されて上記治療効果を発揮する熱外中性子線となる。熱外中性子線は、0.5eV以下のエネルギーの中性子線である。
ここで、本書では、中性子線Nの出射方向を基準として、以下のようにXYZ座標系を設定する(図1、図4〜図7、図9〜図14参照)。
X軸:中性子線出力部8Aから出射される中性子線Nの出射方向に沿って延びる軸
Y軸:X軸と直交する方向に沿って延びる軸
Z軸:X軸及びY軸に対して垂直方向(床面Fに対して垂直方向)に沿って延びる軸
次に、照射室4A,4Bについて説明する。図1及び図2に示されるように、中性子捕捉療法システム1は、2つの照射室4A,4Bを備える。照射室4Aは、第2輸送部12Aが延びた方向の延長線上に配置されている。照射室4Bは、第3輸送部12Bが延びた方向の延長線上に配置されている。
中性子線Nは、第2輸送部12A又は第3輸送部12Bが延びた方向と交差する方向に取り出すこともできる。この場合、照射室4Aの配置は、第2輸送部12Aが延びた方向の延長線上に制限されることはなく、中性子線Nの取り出し方向に対応する位置であってもよい。照射室4Bの配置は、第3輸送部12Bが延びた方向の延長線上に制限されることはなく、中性子線Nの取り出し方向に対応する位置であってもよい。照射室4Aと照射室4Bとは互いに同様の構成を有するので、本書では照射室4Aについて説明し、照射室4Bの説明を省略する。
照射室4Aは、中性子線Nを患者Sに照射するために、患者Sが室内に配置される部屋である。照射室4Aの大きさは、例えば幅3.5m×奥行き5m×高さ3mである。照射室4Aは、遮蔽壁W2に囲まれた遮蔽空間を有する。照射室4Aの出入口には、扉D1が設けられている。照射室4Aの出入口は、治療台2が通行可能な大きさを有する。
図4に示されるように、遮蔽体16の照射室4A側の表面には、カバー(壁体)18が設けられている。カバー18は、照射室4Aの内壁面の一部を成している。カバー18には、中性子線Nの出入口となるコリメータ取付部18aが設けられている。コリメータ取付部18aは、コリメータ17を嵌め込むための開口である。
遮蔽壁W2は、例えば厚さが2m以上のコンクリート製の壁であり、放射線の透過を抑制する。遮蔽壁W2は、照射室4Aの内部から外部への放射線の透過を防止する。遮蔽壁W2は、遮蔽壁W1と一体的に形成されている。
扉D1は、照射室4Aの出入口を閉止可能な扉である。扉D1は、放射線の透過を抑制する遮蔽扉である。扉D1は、例えばポリエチレン、鉛などの放射線の透過を抑制可能な材質から形成されている。扉D1は、例えば床面Fに設けられたレール上をモータ等により駆動力が与えられて開閉される。扉D1の開放時には、治療台2は連絡室6Aと照射室4Aとの間を移動することができる。扉D1の閉止時には、治療台2は連絡室6Aと照射室4Aとの間を移動することができない。また、扉D1の閉止時には、照射室4Aの出入口を通じての照射線の透過が防止される。
扉D1は重量物であるので、扉D1を駆動するための機構には、高トルクモータや減速機等が用いられる。扉D1は、照射室4Aへの作業者の出入りを報知する機能を有していてもよい。例えば、照射室4Aの室内に治療台2が配置された状態で扉D1を閉めることにより、照射室4Aからの作業者の退避の確認が行われる。
次に、準備室3Aについて説明する。準備室3Aは、照射室4Aおいて患者Sに中性子線Nを照射するために必要な作業を実施するための部屋である。準備室3Aは、Y軸方向において、連絡室6Aを挟んで、照射室4Aから離間して配置されている。準備室3Aと準備室3Bとは互いに同様の構成を有するので、本書では準備室3Aについて説明し、準備室3Bの説明を省略する。
準備室3Aでは、例えば、治療台2への患者Sの拘束や、コリメータ17と患者Sとの位置合わせが実施される。そのため、準備室3Aは室内に収容された治療台2の周囲で作業者が容易に準備作業をすることができる程度の大きさを有している。
準備室3Aと照射室4Aとの間において、連絡室6Aが形成されていない領域には、準備室3Aと照射室4Aとを隔てる壁W3が設けられている。壁W3の厚さは、例えば3.2mである。すなわち、準備室3Aと照射室4Aとは、Y軸方向に沿って3.2mだけ離間している。
また、準備室3Aの出入口には扉D2が設けられている。準備室3Aの出入口は、準備室3Aと連絡室6Aとを連通している。扉D2は、準備室3Aの出入口を閉止可能な扉であり、放射線の透過を抑制する遮蔽扉である。扉D2は、例えばポリエチレン、鉛などの放射線の透過を抑制可能な材質から形成されている。扉D2は、例えば床面Fに設けられたレール上をモータ等により駆動力が与えられて開閉される。扉D2の開放時には、治療台2は準備室3Aと連絡室6Aとの間を移動することができる。扉D2の閉止時には、治療台2は準備室3Aと連絡室6Aとの間を移動することができない。また、扉D2の閉止時には、準備室3Aの出入口を通じての照射線の透過が防止される。扉D2を駆動するための機構には、高トルクモータや減速機等が用いられる。
連絡室6Aは、準備室3Aと照射室4Aとの間を連通し、患者Sを拘束した状態の治療台2を移動させるための部屋である。連絡室6Aは、Y軸方向に沿って直線的に形成されている。連絡室6Aは、治療台2が通過可能な幅を有している。また、連絡室6Aは、作業者が歩いて通行可能な高さを有している。連絡室6Aの大きさは、一例として幅1.5m×奥行3.2m×高さ2.0mである。連絡室6Bは、準備室3Bと照射室4Bとの間を連通するものであり、連絡室6Aと同様の構成であるので、本書では、連絡室6Bの説明を省略する。
中性子捕捉療法システム1は、準備室3A,3Bと照射室4A,4Bとの間で治療台2を走行させるための軌道19A,19Bを備えている。続いて、軌道19Aについて、説明する。軌道19Aは、準備室3Aの内部から連絡室6Aを通り照射室4Aの内部まで設けられている。
軌道19Aは、図5〜図7に示されるように、治療台2の移動を案内する一対のガイドレール20と、一対のガイドレール20をそれぞれ収容する一対の走行用凹溝部21と、走行用凹溝部21内でガイドレール20の両側に配置された一対の支持部材22と、を備える。
走行用凹溝部21は、床面Fから下方に窪むように形成されている。一対の走行用凹溝部21は、X軸方向に離間して配置され、Y軸方向に沿って延在している。一対の走行用凹溝部21は、平面視において直線状を呈している。
一対のガイドレール20は、走行用凹溝部21内にそれぞれ配置され、Y軸方向に沿って延在している。一対のガイドレールは、平面視において直線状を呈している。ガイドレール20は、走行用凹溝部21の底部に固定されている。
ガイドレール20は、後述するスライダ(レール係合部)23と係合している。スライダ23はガイドレール20に沿って移動する。一対の支持部材22は、断面L字形状を呈する(図6及び図7参照)。一対の支持部材22は、平面視において直線状を呈し、ガイドレール20に沿って延在している。走行用凹溝部21内に収容されたガイドレール20及び一対の支持部材22は、床面より上方に突出しないように、床面より低く配置されている。また、床面と、ガイドレール20及び一対の支持部材22との上下方向の差は、後述する走行用ベルトBT1の厚さと略同一である。
また、X軸方向において、ガイドレール20と一対の支持部材22との間には、スライダ23が通過することができるように隙間が形成されている。
中性子捕捉療法システム1は、図1及び図2に示されるように、管理室24を備えている。管理室24は、中性子捕捉療法システム1を用いて実施される全体工程を管理するための部屋である。管理室24には、中性子線発生部5を操作するための制御装置25や、照射室4A,4Bの内部を監視するための監視機器26等が設けられている。また、管理室24には、治療台2の動作を制御するための治療台制御部27が設けられている。
管理室24は、2つの準備室3A,3Bに隣接するように、準備室3Aと準備室3Bとの間に配置されている。管理室24は、一の角部において準備室3Aと隣接し、別の角部において準備室3Bと隣接している。管理室24と準備室3Aとの間には、準備室3Aの室内を目視することができるように窓28Aが配置されている。管理室24と準備室3Bとの間には、準備室3Bの室内を目視することができるように窓28Bが配置されている。
監視機器26は、例えば照射室4A,4Bの室内に設けられたカメラ29に接続されている。監視機器26は、画像表示部を有し、カメラ29で撮影された画像を表示することができる。
管理室24には、少なくとも1名の管理者が入室することができる。管理者は、制御装置25、監視機器26及び治療台制御部27を用いて、中性子捕捉療法システム1における全体工程を管理することができる。
例えば、管理室24に入室した管理者は、準備室3A,3Bにおける準備作業の様子を管理室24の室内から目視により確認する。管理室24に入室した管理者は、制御装置25を操作して、例えば、中性子線Nを照射すべき照射室4Aに対応するターゲットTに荷電粒子線Pを照射するようにビーム輸送路9を制御する。管理室24に入室した管理者は、制御装置25を操作して、中性子線Nの照射の開始と停止とを制御する。
中性子捕捉療法の実施に際して、患者Sには準備室3A,3Bに入室する前にも種々の準備(例えば、PET検査や、ホウ素(10B)等の投与など)が行われる。そこで、このような前準備の工程も管理室24で管理してもよい。この場合、管理室24は、中性子捕捉療法システム1による照射治療を含めた中性子捕捉療法の全体工程を管理する。
また、管理者は、治療台制御部27を用いて、治療台2の移動を制御することができる。治療台制御部27は、半導体素子を有する回路基板を備え、治療台2の移動開始や、停止位置を制御することができる。
また、治療台制御部27には、治療台2に電力を供給するための電源回路が設けられている。電源回路は、半導体素子を有し、例えば治療台2に供給される電力の電圧や周波数などを調節する。
次に、治療台2について説明する。治療台2は、横たわった状態の患者Sを載置し、患者Sが所定の姿勢を維持するように患者Sを拘束する。治療台2は、患者Sの姿勢を拘束したまま、準備室3Aから照射室4Aへ移動させる。治療台2は、図4に示されるように、床面F上を走行する走行台車30と、患者Sを載置するための天板(載置部)31と、天板31を走行台車30に対して相対的に移動させると共に、天板31を走行台車30上で支持する支持台32と、を備えている。また、治療台2は、中性子線Nの照射視野を規定するためのコリメータ17と、コリメータ17を支持台32に固定するためのコリメータ固定部33とを有する。
走行台車30は、図4及び図5に示されるように、走行台車30を一対のガイドレール20に沿って駆動するための一対の駆動部34と、駆動部34の一方に動力を供給する駆動源35とを備えている。一対の駆動部34は、一対のガイドレール20に対応してそれぞれ設けられている。駆動部34は、図5に示されるように、スライダ23、走行用ベルトBT1、走行用ベルト押さえローラ36、走行用ベルト持ち上げローラ37、走行用ベルトテンションローラ38を備えている。走行用ベルト押さえローラ36、走行用ベルト持ち上げローラ37及び走行用ベルトテンションローラ38は、走行台車30に支持され、X軸方向に延在する回転軸線周りに回転可能とされている。
スライダ23は、ガイドレール20に沿って摺動可能とされている。スライダ23は、ガイドレール20と共に直動軸受(リニアガイド)を構成する。スライダ23は、図4及び図5に示されるように、走行台車30の下面30aに固定されている。具体的には、スライダ23は、走行台車30の下面30aから下方に突き出し、走行用凹溝部21内に配置されている。走行台車30は、ガイドレール20及びスライダ23によって、進行方向が案内される。
走行用ベルトBT1は、いわゆる歯付きベルトであり、可撓性を有する。走行用ベルトBT1の厚み方向の一方の面は、平坦面であり、上向きに配置されている(図5参照)。図8に示されるように、走行用ベルトBT1の平坦面側には、複数のワイヤWEが配置されている。ワイヤWEは、走行用ベルトBT1の長さ方向に沿って延在している。ワイヤWEは、走行用ベルトBT1の幅方向に複数並んでいる。走行用ベルトBT1の他方の面は、走行用ベルトBT1の長さ方向に凹凸が並ぶ凹凸面であり、下向きに配置されている(図5参照)。
走行用ベルトBT1は、図3に示されるように、軌道19A,19Bに沿って、Y軸方向に延在している。
走行用ベルトBT1は、図7に示されるように、走行用凹溝部21内に配置されており、ガイドレール20の上面及び支持部材22の上面を覆っている。走行用ベルトBT1の下面は、ガイドレール20の上面及び支持部材22の上面と対向して配置されている。
走行用ベルトBT1の一端は、走行用凹溝部21の一端に固定されている。走行用ベルトBT1の他端は、走行用凹溝部21の他端に固定されている。走行用ベルトBT1の幅は、走行用凹溝部21の幅と略同一又は走行用凹溝部21の幅よりも若干小さく設定されている。走行用ベルトBT1の幅は、例えば、ベルトの厚さの8倍以下に設定されていてもよい。
走行用ベルト押さえローラ36は、図5に示されるように、走行台車30の走行方向において、前側及び後側にそれぞれ配置されている。走行用ベルト押さえローラ36の下面は、図5及び図7に示されるように、床面Fとの間に隙間を形成するように配置されている。走行用ベルト押さえローラ36は、その下面が走行用ベルトBT1の上面と接する。走行用ベルト押さえローラ36と床面Fとの間には、隙間が形成されていると共に、走行用ベルト押さえローラ36によって押さえつけられた走行用ベルトBT1の部分とガイドレール20との間には隙間が生じている。
一対の走行用ベルト持ち上げローラ37は、図5に示されるように、走行用ベルト押さえローラ36と隣り合うように、走行台車30の走行方向において、走行用ベルト押さえローラ36の内側にそれぞれ配置されている。走行用ベルト持ち上げローラ37は、走行用ベルト押さえローラ36よりも上方に位置している。走行用ベルト持ち上げローラ37は、走行台車30に対して回転可能に取り付けられている。走行用ベルト持ち上げローラ37は、周方向に凹凸が並んだ表面を有する歯付きプーリである。走行用ベルト持ち上げローラ37は、走行用ベルトBT1の下面と接し、走行用ベルトBT1を部分的に持ち上げる。走行台車30の走行方向の前後に配置された一対の走行用ベルト持ち上げローラ37のうちの一方は、駆動源35に接続されており、駆動源35によって回転駆動される。
走行用ベルトテンションローラ38は、走行台車30の走行方向において、一対の走行用ベルト持ち上げローラ37の間に配置されている。走行用ベルトテンションローラ38の下面は、一対の走行用ベルト持ち上げローラ37の上面より下方に配置されている。走行用ベルトテンションローラ38は、その下面が走行用ベルトBT1の上面と接し、走行用ベルトBT1を走行用ベルト持ち上げローラ37の上面に押し付ける。このように、走行用ベルトBT1を下方に押し付けることで、走行用ベルトT1に適正な張力を付与し、走行用ベルトBT1と走行用ベルト持ち上げローラ37とが噛み合うようになる。
走行台車30では、走行用ベルト持ち上げローラ37のうちの一方が回転駆動されて、走行用ベルト持ち上げローラ37は、走行用ベルトBT1と噛み合いながら、走行用ベルトBT1に沿って移動する。これにより、走行台車30は、走行用ベルトBT1の延在する方向に移動する。このとき、一対の走行用ベルト持ち上げローラ37のうちの他方は、走行台車30の移動に伴って、従動回転する。同様に、一対の走行用ベルト押さえローラ36及び走行用ベルトテンションローラ38は、走行台車30の移動に伴って、従動回転する。
また、走行台車30の内部において、走行用ベルトBT1のうち走行用ベルト持ち上げローラ37によって持ち上げられた部分は、走行用凹溝部21よりも上方に位置している。一方、走行台車30の走行方向において、走行用ベルト押さえローラ36よりも外側の部分であり、走行用ベルトBT1のうち走行用ベルト持ち上げローラ37によって持ち上げられていない部分の上面は、床面Fと略同一面を構成している(図5参照)。走行用ベルトBT1のうち走行用ベルト持ち上げローラ37によって持ち上げられていない部分の下面(より詳しくは走行用ベルトBT1の凸部分の先端)は、ガイドレール20の上面及び支持部材22の上面と接している。すなわち、走行用ベルトBT1は、ガイドレール20の上面と一対の支持部材22の上面との3点で支持されている。
天板31は、矩形状を呈する平板である。天板31の長手方向の長さは、患者Sが身体を横たえることが可能な長さ(例えば2m程度)に設定される。天板31は、支持台32に対して、Z軸方向に延在する回転軸線周りに回転可能に支持されている。
支持台32は、例えばXYステージを有し、走行台車30に対して、天板31の位置をX軸方向及びY軸方向に移動させることができる。なお、支持台32に代えて、ロボットアームを備える構成としてもよい。
コリメータ17は、中性子線Nの照射範囲を規制する。コリメータ17には、照射範囲を規定するための例えば円形の開口17aが設けられている。開口17aに対して患者Sの姿勢を所定の位置に保持することにより、開口17aを通過した中性子線Nを患者Sにおける所定の照射目標に照射することが可能となる。
コリメータ17は、例えば矩形状を呈する平板である。コリメータ17の外形形状は、照射室4Aにおけるコリメータ取付部18aの内面形状に対応している。本書において、コリメータ17で規定される照射野の中心(開口17aの中心)を通る仮想の軸線を、照射中心軸線Cと称する。照射中心軸線Cは、治療台2を照射室4A,4Bに配置して中性子線Nを照射したときに、中性子線Nの上下流方向に延在している。
コリメータ固定部33は、支持台32の基部32aにおける上面に固定されている。コリメータ固定部33は、コリメータ17を基部32aに対して一定の位置に保持する。コリメータ固定部33は、水平片33aと起立片33bとを有し、略L字状の形状をなしている。水平片33aは、一端部が基部32aに固定され、他端部が基部32aの側面32bから外側に離間した位置に配置されている。起立片33bは、一端部が水平片33aの他端部に固定されて、上下方向に延在している。起立片33bの上端部である他端部にはコリメータ17が取り付けられている。
治療台2には、走行用の駆動源である電動モータ及びXYステージを駆動するための電動モータが搭載されている。これらの電動モータとして、例えばステッピングモータが利用されている。これらのステッピングモータには、治療台2の外部から電力が供給されると共に、ステッピングモータを駆動するための制御信号が送信される。
中性子捕捉療法システム1は、図9〜図14に示されるように、治療台2に電力を供給すると共に、制御信号を送信するための給電・信号送信機構40を備えている。給電・信号送信機構40は、図12〜図14に示されるように、電力を供給するための給電用ケーブル41と、制御信号を送信するための制御用ケーブル(送信ケーブル)42と、給電用ケーブル41及び制御用ケーブル42を保持するケーブルベア(登録商標)(ケーブル保持部)43と、ケーブルベア43を床下に収容するピット44と、ピット44の開口部を覆うカバーベルト(長尺状の蓋部)BT2と、給電用ケーブル41及び制御用ケーブル42を走行台車30に取り込むためのケーブル取込み部45と、カバーベルトBT2を持ち上げるためのカバーベルト持ち上げ部46と、を備えている。
給電用ケーブル41は、治療台2に電力を供給するためのケーブルである。給電用ケーブル41の固定端である一端側41aは、例えば管理室24に配置された電力供給部47に接続され、給電用ケーブル41の移動端である他端側41bは、治療台2の駆動源35(図5参照)に接続されている。給電用ケーブル41の他端側は、管理室24以外に設置された電力供給部に接続されていてもよい。電力供給部47は、例えば、治療台2の駆動源35に供給される電力を調整する電源回路を備えている。
制御用ケーブル42は、治療台2に制御信号を送信するためのケーブルである。制御用ケーブル42の固定端である一端側42aは、例えば管理室24に配置された治療台制御部27に接続され、制御用ケーブル42の移動端である他端側42bは、治療台2の駆動源35に接続されている。また、制御用ケーブル42は、治療台2の各種センサと、管理室24に配置された監視機器26とを接続してもよい。治療台2に接続される制御用ケーブル42は、複数設けられている。制御用ケーブル42の一端側は、管理室24以外に配置された制御部に接続されていてもよい。治療台制御部27は、例えば、治療台2の駆動源35であるステッピングモータを駆動する駆動回路を備えている。
ケーブルベア43は、図12及び図13に示されるように、複数の給電用ケーブル41及び制御用ケーブル42を覆って保持すると共に、これらのケーブル41,42の折れ曲がりを案内するものである。ケーブルベア43は、ケーブル41,42の両側に配置された一対のチェーン部43aと、この一対のチェーン部43aをケーブルベア43の幅方向(X軸方向)に連結する保持部43bとを備えている。複数のチェーン部43aは、ケーブルベア43の長手方向に連結されている。保持部43bは、複数のチェーン部43aにそれぞれ対応して設けられ、ケーブルベア43の幅方向に対向する一対のチェーン部43a同士を連結している。ケーブルベア43では、厚み方向(Z軸方向)に、複数段の保持部43bが設けられている。複数のケーブル41,42は、厚み方向に離間する保持部43b間にそれぞれ配置されている。
ピット44は、給電用ケーブル41及び制御用ケーブル42を保持するケーブルベア43を収容する凹溝部である。ピット44は、床面Fから下方に窪むように形成されている。ピット44は、X軸方向において、ガイドレール20を収容する一対の走行用凹溝部21間の中央に配置され、Y軸方向に延在している。ピット44は、軌道19Aに沿って、準備室3Aの内部から連絡室6Aを通り照射室4Aの内部まで延在している。
ケーブルベア43の一端側である固定端43cは、図10及び図11に示されるように、連絡室6A内に設けられた固定点(中間固定部)48で、ピット44の底面に固定されている。ケーブルベア43の他端側である移動端43dは、走行台車30の底部30bに固定され、治療台2の移動に応じて、ピット44の長手方向(Y軸方向)に移動する。
図10に示されるように、ピット44内において、給電用ケーブル41及び制御用ケーブル42の一方の端部は、準備室3A側の端部に固定されている。給電用ケーブル41及び制御用ケーブル42は、ピット44内において、準備室3A側の端部から固定点48までは、ピット44の底面上に配置されて、固定点48から他方の端部までは、ケーブルベア43によって保持されて、折れ曲がり位置が案内される。給電用ケーブル41及び制御用ケーブル42は、ケーブルベア43によって好適に折り返されて、ピット44内において、床面F近傍(床面Fより下方)に配置されて、準備室3A側の端部に向かって延びている。
図10では、治療台2が準備室3A内に配置されている状態を示している。この状態において、ケーブルベア43による折り返し位置KRは、固定点48の近傍(固定点48の照射室4A側)に配置されている。治療台2が照射室4A側に移動するにつれて、ケーブルベア43の折り返し位置KRは、照射室4Aに向かって移動する。
図11では、治療台2が照射室4A内に配置されている状態を示している。この状態において、ケーブルベア43による折り返し位置KRは、照射室側の停止位置G1の近傍であり、移動端43d付近に配置されている。照射室4A側の停止位置G1は、治療台2の走行方向において、照射中心軸線Cに対応する位置である。
カバーベルトBT2は、いわゆる歯付きベルトであり、可撓性を有する。カバーベルトBT2の厚み方向の一方の面は、平坦面であり、上向きに配置されている。図8に示されるように、カバーベルトBT2の平坦面側には、複数のワイヤWEが配置されている。ワイヤWEは、カバーベルトBT2の長さ方向に沿って延在している。ワイヤWEは、カバーベルトBT2の幅方向に複数並んでいる。カバーベルトBT2の他方の面は、カバーベルトBT2の長さ方向に凹凸が並ぶ凹凸面であり、下向きに配置されている。
カバーベルトBT2は、図3及び図9に示されるように、軌道19A,19Bに沿って、Y軸方向に延在している。
カバーベルトBT2は、図13に示されるように、ピット44内において、床面F近傍に配置されている。ピット44の上部側には、一対のベルト支持プレート49が設けられている。一対のベルト支持プレート49は、ピット44の側壁44bの上端部から、ピット44の幅方向(X軸方向)の中心に向かって張り出すように配置されている。
一対のベルト支持プレート49は、X軸方向に離間して配置され、カバーベルトBT2の幅方向の両端部を支持すると共に、給電用ケーブル41及び制御用ケーブル42を床面Fより上方に引き出すための隙間を形成する。
一対のベルト支持プレート49は、ピット44の側壁44bの上端部に固定されたL字形鋼50によって下方から支持されている。また、一対のベルト支持プレート49の内側の端部には、幅方向の内側に張り出すつば部49aが形成されている。ベルト支持プレート49の上面は、床面Fと略同じ高さ位置となっている。つば部49aは、ベルト支持プレート49の上面よりも低い位置に形成されている。ベルト支持プレート49の上面とつば部49aとの高低差は、カバーベルトBT2の厚みに対応している。カバーベルトBT2が一対のベルト支持プレート49のつば部49aによって支持されている状態において、床面F、ベルト支持プレート49の上面及びカバーベルトBT2の上面は、略同じ高さ位置で、平坦面を成している。
ピット44の開口部は、ピット44の長手方向の全長において、一対のベルト支持プレート49及びカバーベルトBT2によって、覆われている。カバーベルトBT2の一端側は、ピット44の準備室3A側の端部に固定され、カバーベルトBT2の他端側は、ピット44の照射室4A側の端部に固定されている。
カバーベルト持ち上げ部46は、治療台2の走行台車30に設けられている。カバーベルト持ち上げ部46は、図14に示されるように、カバーベルト押さえローラ51及びカバーベルト持ち上げローラ52を備えている。カバーベルト押さえローラ51及びカバーベルト持ち上げローラ52は、走行台車30に支持され、X軸方向に延在する回転軸線周りに回転可能とされている。
カバーベルト押さえローラ51は、走行台車30の走行方向において、前側及び後側にそれぞれ配置されている。ここでは、走行方向において、照射室4A側を前側とし、準備室3A側を後側とする。図14では、前側のカバーベルト押さえローラ51を示している。カバーベルト押さえローラ51は、前側及び後側において、それぞれ複数設けられている。複数のカバーベルト押さえローラ51のうちの最も下方に設けられたローラ51の下面は、床面Fとの間に隙間を形成するように配置されている。カバーベルト押さえローラ51の下面は、カバーベルトBT2の上面と接し、カバーベルトBT2の上下方向の位置を規制する。カバーベルト押さえローラ51がカバーベルトBT2に接している位置において、カバーベルトBT2と、ベルト支持プレートのつば部49aとの間には、隙間が生じている。複数のカバーベルト押さえローラ51のうち、走行方向の内側に配置されたローラ51は、最下点よりも上方にずれた位置で、カバーベルトBT2の上面と接し、カバーベルトBT2が緩やかな曲率で曲げられるようにカバーベルトBT2を下方に押し下げる。
一対のカバーベルト持ち上げローラ52は、図14に示されるように、カバーベルト押さえローラ51と隣り合うように、走行台車30の走行方向において、カバーベルト押さえローラ51の内側にそれぞれ配置されている。カバーベルト持ち上げローラ52の上面は、カバーベルト押さえローラ51よりも上方に位置している。カバーベルト持ち上げローラ52は、周方向に凹凸が並んだ表面を有する歯付きプーリである。カバーベルト持ち上げローラ52は、カバーベルトBT2の下面と接し、カバーベルトBT2を部分的に持ち上げる。
これらのカバーベルト押さえローラ51及びカバーベルト持ち上げローラ52は、走行台車30の移動に伴って従動回転する。
走行台車30の内部において、カバーベルトBT2のうちカバーベルト持ち上げローラ52によって持ち上げられた部分は、床面Fよりも上方に位置している。一方、走行台車30の走行方向において、カバーベルト押さえローラ51よりも外側の部分であり、カバーベルトBT2のうちカバーベルト持ち上げローラ52によって持ち上げられていない部分の上面は、床面Fと略同一面を構成している(図13参照)。カバーベルトBT2のうち持ち上げられていない部分の下面(より詳しくはカバーベルトBT2の凸部分の先端)は、一対のベルト支持プレート49のつば部49aの上面と接している。すなわち、カバーベルトBT2は、一対のベルト支持プレート49のつば部49aの2点で支持されている。
図12及び図14に示すケーブル取込み部(案内部)45は、治療台2の走行台車30の底部30bに設けられ、走行台車30の走行方向において、一対のカバーベルト持ち上げローラ52間に配置されている。ケーブル取込み部45は、ケーブルベア43内の給電用ケーブル41及び制御用ケーブル42を上方へ引き出して走行台車30内へ導入する。ケーブル取込み部45は、ピット44内に配置された給電用ケーブル41及び制御用ケーブル42を上方に引き出して、走行台車30内に導入するためのケーブル取込みダクト53と、ケーブル取込みダクト53を支持するダクト支持部54とを備えている。
ケーブル取込みダクト53は、例えば断面が矩形の筒体である。ケーブル取込みダクト53の開口部は上下方向に向けられている。ケーブル取込みダクト53の上端には、フランジ53aが設けられ、ケーブル取込みダクト53の下端には、フランジ53bが設けられている。
下端側のフランジ53bは、走行台車30の下面より下方に張り出すように配置され、ピット44内に挿入されている。下端側のフランジ53bには、図14に示されるように、ケーブルベア43の移動端43dが固定されている。
また、ケーブル取込みダクト53の開口部は、X軸方向の長さよりもY軸方向の長さが長くなっている。ケーブル取込みダクト53の開口部のX軸方向の長さは、図12に示されるように、一対のベルト支持プレート49間の隙間(つば部49a同士の間隔)よりもやや狭くなっている。ケーブル取込みダクト53のY軸方向の大きさは、一対のカバーベルト持ち上げローラ52に接触しない大きさとなっている。
ケーブル取込みダクト53の上端側のフランジ53aは、ダクト支持部54によって、X軸方向の両側から支持されている。ダクト支持部54は、走行台車30の底面から上方に延びるように形成され、ケーブル取込みダクト53の上端側のフランジ53aを走行台車30に対して固定している。
そして、ケーブルベア43に保持された給電用ケーブル41及び制御用ケーブル42は、ケーブルベア43の移動端43dから外部に露出され、Y軸方向に配列されると共に上向きに曲げられて、ケーブル取込みダクト53内を通過して、上端開口部から導出されて、カバーベルトBT2の下側で、X軸方向の両側に振り分けられている。走行台車30内に導入された給電用ケーブル41及び制御用ケーブル42は、上述したように駆動源(ステッピングモータ)35に接続されている。
また、中性子捕捉療法システム1は、図10及び図11に示されるように、ピット44を閉止可能な遮蔽ブロック55,56を備えている。遮蔽ブロック55は、連絡室6Aと照射室4Aとの間で、扉D1の下方に配置されている。遮蔽ブロック56は、連絡室6Aと準備室3Aとの間で、扉D2の下方に配置されている。
遮蔽ブロック55,56は、例えば、ポリエチレン、鉛などの放射線の透過を抑制可能な材質から形成されている。遮蔽ブロック55,56は、例えばX軸方向に延在するガイドレールに沿って駆動されて、ピット44内に張り出してピット44を閉止する。遮蔽ブロック55,56は、電動モータ等により駆動力が与えられえて開閉駆動される。
続いて、中性子捕捉療法システム1を用いた中性子捕捉療法の流れを説明する。
まず、準備室3A(中性子捕捉療法システム1)に入る前の所定の事前準備を患者Sに対して行う。次に、患者S及び作業者が準備室3A内に入室し、作業者が患者Sを天板31の上に横たわらせる。次に、作業者は、拘束具を用いて天板31に対して患者Sの身体を拘束する。次に、患者Sにおける照射目標と、コリメータ17の照射中心軸線Cとの位置合わせを実施する。
次に、治療台2が照射室4Aへと移動される。このとき、照射室4Aへの入室の可否は、管理室24の管理者が決定してもよい。例えば、準備室3Aおける作業が完了した旨を、作業者が管理者に報告する。報告を得た管理者は、照射室4Aへの入室が可能であると判断すると、準備室3Aと連絡室6Aとを隔てる扉D2を開放する。また、このとき、遮蔽ブロック56は開放した(遮蔽ブロック56によりピット44を閉鎖しない)ままの状態としておくか、又は、扉D2の開放に合わせて、遮蔽ブロック56を開放する。
治療台2が準備室3Aから連絡室6A内に移動すると、扉D2が閉鎖されると共に遮蔽ブロック56によりピット44を閉鎖する。扉D2の閉鎖後、連絡室6Aと照射室4Aとを隔てる扉D1が開放される。また、扉D1の開放に合わせて、遮蔽ブロック55を開放する。扉D1,D2の開閉順序はこの順に限定されることはなく、例えば、扉D1と扉D2とが同時に開放されてもよい。なお、扉D1及び扉D2を閉鎖した後に、治療台2の照射室4内への移動状態を準備室3Aから目視して確認できるように、一時的に扉D1及び扉D2を開放してもよい。
治療台2が連絡室6Aから照射室4A内に移動すると、コリメータ17がコリメータ取付部18aに取り付けられる。次に、扉D1によって照射室4Aの出入口が閉鎖される。同様に遮蔽ブロック55を用いて、扉D1の下方においてピット44を閉鎖する。その後、管理者が制御装置25を操作すると、中性子線Nの照射が開始され、患者Sの治療が行われる。照射時間は、一例として1時間程度である。治療中の患者Sの様子は、照射室4Aの室内に設けられたカメラ29で撮像される。カメラ29で撮像された画像は管理室24の監視機器26のモニタに映し出される。管理者は、モニタを用いて、治療中の患者Sの様子を管理する。管理者は、治療中の患者Sに異常を認めた場合、照射中止の判断を行う。
所定の照射時間が経過すると、制御装置25は自動的に中性子線Nの照射を停止する。次に、治療台2を準備室3Aまで移動させる。次に、作業者は、準備室3Aの室内において拘束具による患者Sの固定を解除し、患者Sを準備室3Aの室外へ誘導する。以上により、中性子捕捉療法システム1を用いた中性子捕捉療法が完了する。
本実施形態の中性子捕捉療法システム1では、照射室4A,4Bの外部に治療台制御部27が配置され、この治療台制御部27から出力された制御信号を、制御用ケーブル42を用いて治療台2に伝達することができ、治療台2の駆動制御を行うことができる。これにより、治療台2に治療台制御部27を設置する必要がないので、治療台2の移動に伴って治療台制御部27が照射室4A,4Bの内部に配置されることがない。そのため、治療台制御部27の駆動回路が放射線によって故障するおそれが低減される。また、治療台2に制御用ケーブル42が接続されているので、照射室4A,4Bの内部で、制御用ケーブル42を治療台2に接続する作業が不要となる。これにより、照射室4A,4Bの内部での作業を減らして、作業員の被ばく量を低減することができる。また、治療台2と制御用ケーブル42とを接続するための設備を、照射室4A,4Bの内部に設ける必要がないので、その接続用の設備のメンテナンスを行う必要がない。そのため、メンテナンスのために、照射室4A,4Bの内部に作業員が入る必要もなく、作業員の被ばく量を低減することができる。
また、本実施形態の中性子捕捉療法システム1では、照射室4A,4Bの外部に電力供給部47が配置され、この電力供給部47から出力された電力を、給電用ケーブル41を用いて治療台2に供給することができ、治療台2を走行させることができる。これにより、治療台2に電力供給部47を設置する必要がないので、治療台2の移動に伴って電力供給部47が照射室4A,4Bの内部に配置されることがない。そのため、電力供給部47の電源回路が放射線によって故障するおそれが低減される。また、治療台2に給電用ケーブル41が接続されているので、照射室4A,4Bの内部で、給電用ケーブル41を治療台2に接続する作業が不要となる。これにより、照射室4A,4Bの内部での作業を減らして、作業員の被ばく量を低減することができる。また、治療台2と給電用ケーブル41とを接続するための設備を、照射室4A,4Bの内部に設ける必要がないので、その接続用の設備のメンテナンスを行う必要がない。そのため、メンテナンスのために、照射室4A,4Bの内部に作業員が入る必要もなく、作業員の被ばく量を低減することができる。
また、中性子捕捉療法システム1によれば、床面Fには、照射室4A、4Bの内部と照射室4A,4Bの外部との間で連続するピット44が設けられ、このピット44内に給電用ケーブル41及び制御用ケーブル42が配置されているので、床面Fより下方に給電用ケーブル41及び制御用ケーブル42を収容することができる。これにより、治療台2の移動に邪魔にならない位置に給電用ケーブル41及び制御用ケーブル42を配置することができる。
また、中性子捕捉療法システム1では、治療台2の外側において、ピット44はカバーベルトBT2及び一対のベルト支持プレート49によって覆われているので、床面Fにピット44が露出されず、作業員がこのピット44の開口につまずくおそれが低減される。これにより、安全性の向上を図ることができる。また、治療台2は、治療台2の移動に伴って、カバーベルトBT2を持ち上げるカバーベルト持ち上げ部46を有する構成であるので、床面FよりカバーベルトBT2を持ち上げることで、ピット44内に配置されている給電用ケーブル41及び制御用ケーブル42を、ピット44内から外部に導出させることができる。これにより、治療台2に接続された給電用ケーブル41及び制御用ケーブル42をピット44内に配置して、治療台2の外側では、カバーベルトBT2によって開口部を覆うと共に、治療台2の移動に伴って、カバーベルトBT2を持ち上げて、ピット44内の給電用ケーブル41及び制御用ケーブル42を床面Fより上方に引き出して治療台2に接続することができる。
また、中性子捕捉療法システム1では、カバーベルト持ち上げ部46が走行台車30の内部に配置されているので、上から見た場合、走行台車30で覆われた領域内でカバーベルトBT2を持ち上げることができ、走行台車30で覆われた領域の外ではカバーベルトBT2は持ち上げられない。そのため、人が移動可能な範囲において、カバーベルトBT2の上面と床面Fとを平らに配置することができ、人がつまずくおそれを低減することができる。
また、中性子捕捉療法システム1では、ケーブル取込み部45が、走行台車30の内部に配置されているので、人の作業や通行の邪魔にならない位置にケーブル取込み部45を配置して、給電用ケーブル41及び制御用ケーブル42を引き上げて走行台車30内に導入することができる。
また、中性子捕捉療法システム1によれば、扉D1によって照射室4A,4Bの出入口を閉止し、遮蔽ブロック55によってピット44を閉止することができるので、照射室4A,4B内から放出される放射線を遮蔽して、照射室4A,4Bの外部への放射線の透過を抑制することができる。
本発明は、前述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で下記のような種々の変形が可能である。
上記の実施形態では、床に設けられたピット44内に給電用ケーブル41及び制御用ケーブル42を配置しているが、床下以外の領域にケーブル41,42を配置してもよい。
また、上記の実施形態では、制御用ケーブル42を用いて、制御用信号を送信しているが、例えば、部分的に無線通信部を介して制御信号を送信してもよい。また、コネクタを用いて制御用ケーブルを接続して使用してもよい。
また、上記の実施形態では、給電用ケーブル41を用いて、治療台2に電力を供給しているが、例えば、治療台2に蓄電装置を搭載し、蓄電装置から治療台2に電力を供給してもよい。
また、上記の実施形態では、治療台制御部27及び電力供給部47を、照射室4A,4Bの外部に配置しているが、治療台制御部27及び電力供給部47のうち何れか一方を照射室4A,4Bに配置してもよい。
また、上記の実施形態では、ケーブル41,42をケーブルベア43によって保持しているが、ケーブル41,42はケーブルベア43に保持されていないものでもよい。
また、上記の実施形態では、ケーブル取込み部45は、走行台車30の内部に配置されているが、ケーブル取込み部45は、走行台車30の内部に配置されていないものでもよい。例えば、ケーブル取込み部45は、走行台車30の外部に張り出すように配置されていてもよい。
また、上記の実施形態では、カバーベルト持ち上げ部46は、走行台車30の内部に配置されているが、カバーベルト持ち上げ部46は、走行台車30の内部に配置されていないものでもよい。例えば、カバーベルト持ち上げ部46は、走行台車30の外部に張り出すように配置されていてもよい。