JP6281382B2 - ポリイミドフィルムの製造方法 - Google Patents
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当該前駆体フィルムは、溶媒を少なからず保有しており、フィルムは一般的に乾燥されるに従って収縮するため、搬送にはフィルムの幅方向の両側端部を多数のピンやクリップで保持しフィルムの幅方向を張設するテンター搬送装置が用いられる(特許文献1参照)。
例えば、特許文献2では、支持体上で溶媒除去された前駆体フィルム(ポリアミド酸自己支持性フィルム)を剥離する際、前駆体フィルム延伸倍率が1.01〜1.2倍になるようにテンター搬送装置を用いて張力を制御することで、延伸による前駆体フィルム表裏の配向差を小さくし、製膜されるポリイミドフィルムの反りを低減させている。
反り量が極めて少ないことは、CCLの基材であるポリイミドフィルムにも同様に求められるが、この要求に応えられるようなフィルムはまだ得られていない。
前記の剥離工程において、剥離した自己支持性フィルムの大気接触面に対して溶媒(ただし、カップリング剤を含まない)を噴霧あるいは塗布し、かつ自己支持性フィルムの支持体接触面に対して該溶媒を噴霧あるいは塗布せずに、該フィルムの支持体接触面に対する大気接触面の溶媒含有比を0.7〜1.3の範囲とすることで、得られるフィルムの線膨張係数が、大気接触面と支持体接触面の絶対値差として、3.5ppm/℃以下となることを特徴とするポリイミドフィルムの製造方法が提供される。
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、フィルムの平坦性が、50mm角の正方形状のサンプルを温度23℃、湿度50%RHの雰囲気で、24時間放置後、サンプルを定盤に置き、反りの状態で確認されることを特徴とする請求項1に記載のポリイミドフィルムの製造方法が提供される。
また、本発明の第3の発明によれば、第1または2の発明において、フィルムの厚さが12.5〜30μmであることを特徴とするポリイミドフィルムの製造方法が提供される。
さらに、本発明の第4の発明によれば、第1〜3のいずれかの発明において、得られたフィルムが、銅ポリイミド二層基板(CCL)を用いたチップ・オン・フィルム(COF)用フィルムの基材となることを特徴とするポリイミドフィルムの製造方法が提供される。
本発明のポリイミドフィルムの製造方法は、ポリアミド酸溶液の生成工程と、生成したポリアミド酸溶液に適宜無機フィラー等を添加するポリイミド前駆体溶液組成物の生成工程と、ポリイミド前駆体溶液組成物を支持体に塗布して自己支持性フィルムを生成するポリイミド前駆体溶液の塗布工程と、生成した自己支持性フィルムを支持体から剥離する工程と、自己支持性フィルムを乾燥しイミド化する工程とを有する。
ポリアミド酸溶液の使用原料としては、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物および/またはピロメリット酸二無水物などの芳香族テトラカルボン酸二無水物と、p−フェニレンジアミンおよび/または4,4‘―ジアミノジフェニルエーテルなどの芳香族ジアミンが一般的であるが、本発明では、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物およびp−フェニレンジアミンを必須成分として使用する。
これにより、固有粘度(測定温度30℃、濃度0.5g/dl溶媒、溶媒:N−メチル−2−ピロリドン)が1.5〜5で、ポリマー濃度が1.5〜25質量%であり、回転粘度(25℃)が500〜4500Pa・sであるポリアミド酸溶液を生成する。
次に、生成されたポリアミド酸溶液に、リン化合物や無機フィラーあるいは有機フィラーを所定量添加してポリイミド前駆体溶液組成物を生成する。
リン化合物は、ポリアミド酸100質量部に対して0.01〜5質量部、特に0.01〜3質量部添加するのが好ましく、中でも(ポリ)リン酸エステル、リン酸エステルのアミン塩などの有機リン化合物、あるいは無機リン化合物を0.01〜1質量部の割合で添加する。
さらには無機フィラーあるいは有機フィラーを、特にポリアミド酸100質量部に対して0.1〜3質量部添加するのが好ましい。無機フィラーとしてはコロイダルシリカ、窒化珪素、タルク、酸化チタン、リン酸カルシウムが挙げられ、平均粒径0.005〜2μm、特に0.005〜1μmのものを添加してポリイミド前駆体溶液組成物を生成するのがより好ましい。
この工程は、ポリイミド前駆体溶液組成物を平滑な表面を有する金属製またはガラス製の支持体表面に連続的に流延して前記溶液の薄膜を形成し、加熱乾燥する工程である。
この工程で薄膜を60〜150℃、2分〜5時間加熱乾燥することで、固化した自己支持性フィルムが生成する。
固化フィルム中、前記溶媒及び生成水分からなる揮発分含有量が25〜40質量%程度の自己支持性フィルムを生成するのが好ましい。この自己支持性フィルムにフェニルシランカップリング剤などの表面処理剤と塗布処理してもよいし、これをさらに乾燥してもよい。
この剥離工程では、上述したポリイミド前駆体溶液を支持体上に塗布して生成した自己支持性フィルムを支持体から剥離させる。自己支持性フィルムは、レールに沿って駆動するチェーンに取り付けたフィルム把持装置に両端部を把持して剥離する。
その後、自己支持性フィルムの大気接触面に溶媒(ただし、カップリング剤を含まない)を噴霧あるいは塗布し、支持体接触面には該溶媒を噴霧あるいは塗布せずに、フィルム厚さ方向の残留溶媒量を調整する。溶媒はN、N―ジメチルアセトアミドまたはN−メチル−2−ピロリドンであり、フィルムの製造に用いたと同じものが好ましい。
噴霧または塗布する雰囲気は、大気中でよいが、窒素や不活性ガスを混入させたり、加圧・減圧してもよい。また、溶媒の噴霧または塗布量は、フィルムの単位面積当たり3〜12g/m2であることが好ましい。溶媒の噴霧または塗布量が、この範囲を外れると、フィルムの反りを抑制できないことがある。より好ましい噴霧または塗布量は、5〜10g/m2である。
溶媒含有比は、ポリイミド前駆体溶液組成物を塗布した大気面に接するポリイミドフィルム面を大気接触面、支持体に接する面のポリイミドフィルム面を支持体接触面とするフィルムから試験片を切り出し、ATR(Attenuated Total Reflection(全反射測定法))スペクトルを測定し、波数988cm−1の吸収バンドの吸光度を既知量のN−メチル−2−ピロリドンをCCl4中に溶解させ作製した検量線を用いてモル量より算出する。そして、自己支持性フィルムそれぞれの面の溶媒含有量より、支持体接触面に対する大気接触面の溶媒含有比を算出する。
上述した工程で剥離し、大気接触面に前記溶媒(ただし、カップリング剤を含まない)を噴霧または塗布し、支持体接触面には該溶媒を噴霧または塗布しない自己支持性フィルムは、次にキュア炉内に搬送して加熱乾燥し、さらに高温でイミド化する。
キュア炉では加熱ゾーンを複数設け、入り口ゾーンの温度として125〜175℃、次いで順次温度を多段が高くなるように加熱して最高加熱温度:425〜525℃程度、特に475〜500℃程度が20〜60分となる条件で、該自己支持性フィルムを加熱して乾燥及びイミド化する。
残揮発物量が0.4質量%以下程度になったらイミド化を完了し、キュア炉外で自然冷却することによって、本発明のポリイミドフィルムを製造することができる。
本発明に係るポリイミドフィルムは、上記の製造方法で得られたポリイミドフィルムから一辺が15cmの試験片を切り出し、その一方の面にレジスト膜を成膜すると共に、もう一方の面を厚さが半分になるようエッチング処理した後、大気接触面と支持体接触面の線膨張係数(CTE)をJIS K7197に準拠して測定し、その絶対値差を単位ppm/℃で表示したとき、3.5ppm/℃以下となるものである。
前記大気接触面と支持体接触面のCTEの絶対値差が3.5ppm/℃以下と小さければ、ポリイミドフィルムの反りが小さくなり、一方、CTEの絶対値差が3.5ppm/℃よりも大きいと、ポリイミドフィルムの反りが大きくなって所望のCCLを製造できない。
CCLは、上述した製造方法により得られたポリイミドフィルムを放電処理した後、金属層を形成することで製造される。
放電処理工程では、先ず、上述したポリイミドフィルムに対して、プラズマ放電処理(真空あるいは大気圧プラズマ放電処理)、コロナ放電処理などの少なくとも1つの放電処理、好適には真空プラズマ放電処理を行う。
金属層形成工程では、放電処理を行ったポリイミドフィルムに銅積層体を形成するため、蒸着および電気めっきを行う。この場合、金属蒸着または金属蒸着と金属めっき層とで金属層を形成することが好ましい。
金属蒸着方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法などの蒸着法を挙げることができる。真空蒸着法では、真空度が10−5〜1Pa程度であり、蒸着速度が5〜500nm/秒程度であることが好ましい。スパッタリング法では、特にDCマグネットスパッタリング法が好適であり、その際の真空度が13Pa以下、特に0.1〜1Pa程度であり、その層の形成速度が0.05〜50nm/秒程度であることが好ましい。
得られる金属蒸着層の厚みは10nm以上、1μm以下であり、その中でも0.1μm以上、0.5μm以下であることが好ましい。この上に金属めっきにより肉厚の膜を形成することが好ましい。その厚みは約1〜20μm程度である。
なお、試作の段階で、平坦なCCLが得られなかった場合は、そのポリイミドフィルム材料の大気接触面と支持体接触面の線膨張係数の絶対値差を調べて、CCLの反り発生方向と逆向きの反りを持ったポリイミドフィルムを用いることで、平坦なCCLを得ることが可能となる。
本発明に係るCCLを用いれば、該CCLの少なくとも片面に、配線パターンを個別に形成して、COFを得ることができる。また、所定の位置に層間接続のためのヴィアホールを形成して、各種用途に用いることもできる。
前記配線パターンの形成方法としては、フォトエッチング等の従来公知の方法が使用でき、例えば、少なくとも片面に金属蒸着膜、銅被膜層が形成されたCCLを準備して、該銅上にスクリーン印刷あるいはドライフィルムをラミネートして感光性レジスト膜を形成後、露光現像してパターニングする。
次いで、エッチング液で該金属層を選択的にエッチング除去した後、レジストを除去して所定の配線パターンを形成する。
その場合は、本発明のポリイミドフィルムの製造方法にて、ポリアミド酸自己支持性フィルムの支持体接触面に対する大気接触面の溶媒含有比を本発明の範囲内で任意に調整し、大気接触面と支持体接触面の線膨張係数の絶対値差を本発明の範囲内で調整することで、COFの反り発生方向と逆向きの反りを持ったポリイミドフィルムを用いることで、平坦な配線パターン形成されたCOFを得ることが可能である。
<自己支持性フィルムの溶媒含有量>
自己支持性フィルムの大気接触面と支持体接触面それぞれの面のATR(Attenuated Total Reflection(全反射測定法))スペクトルを測定し、波数988cm−1の吸収バンドの吸光度を既知量のN−メチル−2−ピロリドンをCCl4中に溶解させ作製した検量線を用いてモル量より算出した。
本自己支持性フィルムそれぞれの面の溶媒含有量より、支持体接触面に対する大気接触面の溶媒含有比を算出した。
<評価試料の作製>
作製した30μm厚ポリイミドフィルムの大気接触面に花見化学(株)製レジストインキ873−Kを#20バーコーターで全面塗布し、15〜20μm厚のレジスト膜を形成した。次に、65℃に加熱した東レエンジニアリング(株)ポリイミドエッチング液(製品名:TPE3000)中に上記大気接触面にレジストフィルムを被覆させたポリイミドフィルムを浸漬し、該ポリイミドフィルムが膜厚15μmになるまで溶解(エッチング)させた。さらに、温度65℃に加熱した温水で5分洗浄を行い、レジストフィルムを剥離後、大気接触面評価用ポリイミドフィルムを得た。また、支持体接触面にレジスト膜を形成し以降、前述と同様な操作を行い、支持体接触面評価用ポリイミドフィルムを得た。
CTEは、JIS K7197「プラスチックの熱機械分析による線膨張率試験方法」に準じて測定を行った。前記大気接触面および支持体接触面評価用フィルムから試料片を切り出し、前処理として加熱工程を加え応力緩和した試料片をTMA装置(引張モード、5g荷重、試料長23mm)で測定した。
50mm角の正方形状のサンプルを温度23℃、湿度50%RHの雰囲気で、24時間放置後、サンプルを定盤に置き、反りの状態を確認した。
反応容器に、N−メチル−2−ピロリドン200mLにp−フェニレンジアミン4.17g、および3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物11.34gを加えて、窒素気流下、4℃で5時間、常温で19時間撹拌し重合反応させて、ポリアミド酸溶液を生成した。
生成したポリアミド酸溶液の物性は、固形分濃度が7質量%、固有粘度が4.10dl/g(測定温度30℃、濃度0.5g/dl溶媒、溶媒:N−メチル−2−ピロリドン)、回転粘度が334Pa・sであった(以下、ポリイミド前駆体溶液組成物という)。
次に、ポリイミド前駆体溶液組成物を、1000μmギャップのドクターブレードを用い平滑なガラス支持体上に薄膜を形成した。この薄膜を70℃に熱したアルミニウム基板上で70℃、3時間加熱後、支持体から剥離して自己支持性フィルムを得た。
次に、この自己支持性フィルムの大気接触面に対して、N−メチル−2−ピロリドンを5g/m2噴霧した。その後、自己支持性フィルムの支持体接触面に対する大気接触面の溶媒含有比を前記の方法で測定すると0.7であった。
次に、本自己支持性フィルムを一辺が15cmの正方形の窓を有する正方形金属枠で両面から固定後、熱風窒素加熱炉で常温から100℃(昇温速度100℃/14分)まで昇温後1時間保持し、さらに同昇温速度で200℃まで昇温し1時間保持し、同昇温速度で430℃まで昇温し1時間保持することで溶媒乾燥、更にイミド化を行った。その後、炉内で自然冷却し、30μm厚のポリイミドフィルムを得た。それぞれの操作は窒素雰囲気内で行った。
このポリイミドフィルムの線膨張係数を前記の方法で測定すると、大気接触面と支持体接触面の絶対値差が3.36となり、支持体接触面には反りが発生しなかった。
以下の表1に、溶媒噴霧面、溶媒含有比及び、作製したポリイミドフィルムのCTEの絶対値差と平坦性を示す。
実施例1において、自己支持性フィルムの大気接触面に対するN−メチル−2−ピロリドンの噴霧量を増加し、自己支持性フィルムの支持体接触面に対する大気接触面の溶媒含有比を1.0〜1.3に調整したこと以外は、同様にしてポリイミドフィルムを作製した。
表1に、溶媒噴霧面、溶媒含有比及び、作製したポリイミドフィルムのCTEの絶対値差と平坦性を示す。
上記の実施例1と同様にして、自己支持性フィルムを調製したが、熱風窒素加熱炉での乾燥、イミド化工程前に、自己支持性フィルムの大気接触面に対してN−メチル−2−ピロリドンを噴霧しないでポリイミドフィルムを作製した。自己支持性フィルムの支持体接触面に対する大気接触面の溶媒含有比を測定すると、0.6であった。
得られたポリイミドフィルムの大気接触面と支持体接触面の線膨張係数を測定すると、絶対値差が4.06となり、支持体接触面を凹に反りが発生した。
表1に、作製したポリイミドフィルムのCTEの絶対値差と平坦性を示す。
実施例4に対して、N−メチル−2−ピロリドンの噴霧量をさらに増加し、自己支持性フィルムの支持体接触面に対する大気接触面の溶媒含有比を1.5に調整したこと以外は、同様にして比較例1のポリイミドフィルムを作製した。
また、比較例2〜3は、熱風窒素加熱炉での乾燥、イミド化工程前に、自己支持性フィルムの支持体接触面に対してN−メチル−2−ピロリドンを噴霧し、自己支持性フィルムの支持体接触面に対する大気接触面の溶媒含有比を0.3〜0.4に調整したこと以外は、実施例1と同様にしてポリイミドフィルムを作製した。
比較例1のポリイミドフィルムは、大気接触面を凹に反り、比較例2〜3のポリイミドフィルムは、支持体接触面を凹に反りが生じた。
以下の表1に、溶媒噴霧面、溶媒含有比及び、作製したポリイミドフィルムのCTEの絶対値差と平坦性を示す。
Claims (4)
- 3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物とp−フェニレンジアミンとを必須成分としてポリアミド酸を合成する工程と、該ポリアミド酸を含む溶液からポリイミド前駆体溶液組成物を調製する工程と、該溶液組成物を支持体に塗布して自己支持性フィルムを生成する工程と、60〜150℃で2分〜5時間乾燥して、溶媒及び生成水分からなる揮発分含有量が25〜40質量%となった該自己支持性フィルムを支持体から剥離する工程と、剥離したフィルムを乾燥し、引き続き加熱キュアしてイミド化する工程とを有する平坦なポリイミドフィルムの製造方法において、
前記の剥離工程において、剥離した自己支持性フィルムの大気接触面に対して溶媒(ただし、カップリング剤を含まない)を噴霧あるいは塗布し、かつ自己支持性フィルムの支持体接触面に対して該溶媒を噴霧あるいは塗布せずに、該フィルムの支持体接触面に対する大気接触面の溶媒含有比を0.7〜1.3の範囲とすることで、得られるフィルムの線膨張係数が、大気接触面と支持体接触面の絶対値差として、3.5ppm/℃以下となることを特徴とするポリイミドフィルムの製造方法。 - フィルムの平坦性が、50mm角の正方形状のサンプルを温度23℃、湿度50%RHの雰囲気で、24時間放置後、サンプルを定盤に置き、反りの状態で確認されることを特徴とする請求項1に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
- フィルムの厚さが12.5〜30μmであることを特徴とする請求項1または2に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
- 得られたフィルムが、銅ポリイミド二層基板(CCL)を用いたチップ・オン・フィルム(COF)用フィルムの基材となることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリイミドフィルムの製造方法。
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