JP6278324B2 - ラミニンフラグメントの細胞培養基質活性増強方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ラミニンフラグメントまたはその改変体の哺乳動物培養細胞に対する活性増強方法、活性増強されたラミニンフラグメントまたはその改変体がコーティングされている細胞培養器具を用いる哺乳動物細胞の培養方法および、これらの方法に用いることができるコーティング溶液に関するものである。
ヒトES細胞やヒトiPS細胞などのヒト多能性幹細胞は、その再生医療への応用が世界的に注目されている。ヒト多能性幹細胞を再生医療に応用するためには、これら幹細胞を安全かつ安定的に培養、増幅する培養技術の開発が必要である。特に、フィーダー細胞を使用せず(フィーダーフリー)、かつ異種動物由来の成分を含まない(ゼノフリー)条件下での安定した培養法の開発は、喫緊の課題となっている。
これまでに、ビトロネクチン、ラミニンα5β1γ1(以下、「ラミニン511」と記す)、ラミニンα5β2γ1(以下、「ラミニン521と記す)など、フィーダーフリーかつゼノフリー条件を満たす様々な培養基質が開発されている。なかでも、ラミニン511のインテグリン結合部位だけを含む組換えラミニン511E8フラグメント(以下、「ラミニン511E8と記す)は、ヒト多能性幹細胞に対して非常に強い接着活性を持ち、これまでに開発されたどれよりも優れた培養基質であることが本発明者らにより明らかにされている(特許文献1、非特許文献1参照)。また、ラミニン511E8を培養基質に使うことで、ヒトiPS細胞の樹立から拡大培養、分化誘導までの全工程をフィーダーフリー条件下で一気通貫に行うことが可能である(非特許文献2)。
ラミニン511E8を基質として細胞を培養するためには、培養器具の培養面にラミニン511E8をコーティングする必要がある。しかし、ラミニン511E8等のフィーダーフリー条件を満たす培養基質の多くは遺伝子組換え技術を用いて調製した組換え蛋白質であるため、培養器具のコーティングに使用する組換え蛋白質の費用がヒト多能性幹細胞を培養する上で大きな経済的負担となっている。ヒトES細胞またはヒトiPS細胞を培養する場合に使用するラミニン511E8のコーティング濃度は、通常0.25μg/cm〜1.0μg/cmであり、例えば標準的な直径35mmの培養ディッシュ(培養面積:9.6cm)をラミニン511E8でコーティングする場合は、ディシュ1枚当たり2.4μg〜9.6μgのラミニン511E8を使用する。ラミニン511E8は、ラミニンα5鎖、β1鎖およびγ1鎖の各C末端領域のヘテロ三量体であり、分子内に多くのジスルフィド結合を含むため、組換えラミニン511E8を大腸菌等の原核生物を用いる発現系を利用して製造することが難しく、より製造コストが嵩む動物細胞や昆虫細胞の発現系を用いて製造する必要がある。ラミニン511E8をヒト多能性幹細胞用のフィーダーフリー培養基質として広く普及させるためには、単に製造方法の改良によりラミニン511E8の製造コストを引き下げるだけでなく、ラミニン511E8の活性を増強させることにより、より少ないコーティング量でヒト多能性幹細胞の培養を可能とし、培養器具のコーティングに要する費用を抑えることができる新たなラミニン511E8の賦活化技術の開発が強く求められている。
また、ラミニン511E8を用いる培養方法を国内外に普及させるためには、作業に熟練しなくても、コーティング濃度のバラつきが少なく、容易にコーティング操作を行うことが可能な製品の開発が必要である。現在、培養器具のコーティングに用いるラミニン511E8は凍結乾燥品として市販されている(商品名:iMatrix−511、(株)ニッピ)。これを培養基質として使用するためには、通常、凍結乾燥ラミニン511E8を200〜1000μg/mLになるように溶解したラミニン511E8保存液を調製し、これを分注して冷凍保存しておく。培養器具をコーティングする際は、ラミニン511E8保存液を解凍し、目的のコーティング濃度になるようにPBS等で希釈したのち、培養器具の培養面に重層してコーティングを行う。そのため、凍結乾燥品の溶解時や保存液の希釈時にヒューマンエラーが発生するリスクがあり、コーティング作業ごとにコーティング濃度のバラつきが生じることを完全に回避することは困難である。予め目的のコーティング濃度に希釈されたラミニン511E8溶液を毎回のコーティング作業に用いることができれば、経験の浅い作業者であっても安定したコーティング操作を行なうことができ、コーティング濃度のバラつきを回避することが容易となる。また、ラミニン511E8保存液の解凍と希釈の操作を省略できるため、作業時間を大幅に短縮することができる。それゆえ、活性を損なうことなく長期間安定に保存することが可能な、用時調製を要しないラミニン511E8溶液の開発が求められている。
本願発明と類似する先行技術として、特許文献2に、全長のラミニン511を固相化した条件下で細胞を培養する方法においてラミニン511の細胞に対する活性を上昇させる方法が開示されている。具体的には、特許文献2には、「血清、血清アルブミン、プレアルブミン、免疫グロブリン、α−グロブリン、β−グロブリン、α1−アンチトリプシン(α1−AT)、へプトグロビン(Hp)、α2−マクログロブリン(α2−M)、α−フェトプロテイン(AFP)、トランスフェリン、レチノール結合タンパク(RBP)又はアディポネクチンである細胞外マトリックスタンパク質以外の血中タンパク質、並びに、ゼラチン、腫瘍壊死因子(TNF)ファミリーに属するタンパク質、ペプトン、からなるグループから選択されるポリペプチド及び/又はペプチドと、ラミニン511を固相化した条件下で哺乳類細胞を培養することを含む、ラミニン511の細胞に対する活性を上昇させる方法」が開示されている(請求項7)。しかしながら、特許文献2に記載の発明は、全長のラミニン511に関する発明であり、併用するポリペプチドの濃度が高くなると活性上昇効果を奏しない点で、本願発明と全く異なる技術である。
国際公開WO2011/043405号 国際公開WO2013/047763号
Miyazaki, T. et al., Nature Commun. 3:1236, doi: 10.1038/ncomms2231, 2012 Nakagawa, M. et al., Scientific Reports, 4:3594, doi: 10.1038/srep03594, 2014
本発明は、ラミニンフラグメントまたはそれらの改変体がコーティングされている細胞培養器具を用いる細胞培養方法において、推奨されるコーティング濃度より低いコーティング濃度を用いても、推奨濃度でコーティングした場合と同等の細胞培養を可能とする新規な技術を提供することを課題とする。さらに、本発明は、細胞培養器具にラミニンフラグメントまたはそれらの改変体をコーティングする際に使用され、用時調製の必要がなく長期間安定に冷蔵保存することが可能なコーティング溶液を提供することを課題とする。
本発明は、上記課題を解決するために、以下の発明を包含する。
[1]インテグリン結合活性を有するラミニンフラグメントまたはその改変体の哺乳動物培養細胞に対する活性を増強する方法であって、前記ラミニンフラグメントまたはその改変体、および、ラミニンまたはそのフラグメント以外の蛋白質を含むコーティング溶液を細胞培養器具の培養面に接触させ、前記ラミニンフラグメントまたはその改変体を培養面にコーティングすることを含み、前記コーティング溶液は、0.5μg/cmより低いコーティング濃度になる量の前記ラミニンフラグメントまたはその改変体を含み、かつ、前記ラミニンまたはそのフラグメント以外の蛋白質濃度が50μg/mL以上であり、前記哺乳動物培養細胞に対する活性が、細胞表面の接着受容体に対する結合活性、細胞接着活性、細胞増殖活性およびコロニー形成活性から選択される少なくとも一種であることを特徴とする活性増強方法。
[2]前記コーティング溶液の前記ラミニンまたはそのフラグメント以外の蛋白質濃度が200μg/mL以上であることを特徴とする前記[1]に記載の活性増強方法。
[3]前記コーティング溶液の前記ラミニンまたはそのフラグメント以外の蛋白質濃度が500μg/mL以上であることを特徴とする前記[2]に記載の活性増強方法。
[4]前記ラミニンまたはそのフラグメント以外の蛋白質の分子量が10000以上であることを特徴とする前記[1]〜[3]のいずれかに記載の活性増強方法。
[5]前記ラミニンまたはそのフラグメント以外の蛋白質が、ゼラチン、血清アルブミン、トランスフェリン、ミエリン塩基性蛋白質、β−ラクトグロブリン、グルタチオン−S−トランスフェラーゼおよびコラーゲンからなる群より選択される1種以上であることを特徴とする前記[4]に記載の活性増強方法。
[6]ラミニンフラグメントが、ラミニンα5β1γ1、ラミニンα5β2γ1、ラミニンα4β1γ1およびラミニンα2β1γ1から選択される少なくとも1種由来であることを特徴とする前記[1]〜[5]のいずれかに記載の活性増強方法。
[7]ラミニンフラグメントが、ラミニンE8フラグメントであることを特徴とする前記[1]〜[6]のいずれかに記載の活性増強方法。
[8]インテグリン結合活性を有するラミニンフラグメントまたはその改変体がコーティングされている細胞培養器具を用いる哺乳動物細胞の培養方法であって、前記細胞培養器具は、前記ラミニンフラグメントまたはその改変体、および、ラミニンまたはそのフラグメント以外の蛋白質を含むコーティング溶液を細胞培養器具の培養面に接触させることにより作製され、前記コーティング溶液は、0.5μg/cmより低いコーティング濃度になる量の前記ラミニンフラグメントまたはその改変体を含み、かつ、前記ラミニンまたはそのフラグメント以外の蛋白質濃度が50μg/mL以上であることを特徴とする培養方法。
[9]前記コーティング溶液の前記ラミニンまたはそのフラグメント以外の蛋白質濃度が200μg/mL以上であることを特徴とする前記[8]に記載の培養方法。
[10]前記ラミニンまたはそのフラグメント以外の蛋白質の分子量が10000以上であることを特徴とする前記[8]または[9]に記載の培養方法。
[11]ラミニンフラグメントが、ラミニンα5β1γ1、ラミニンα5β2γ1、ラミニンα4β1γ1およびラミニンα2β1γ1から選択される少なくとも1種由来であることを特徴とする前記[8]〜[10]のいずれかに記載の培養方法。
[12]ラミニンフラグメントが、ラミニンE8フラグメントであることを特徴とする前記[8]〜[11]のいずれかに記載の培養方法。
[13]細胞培養器具の培養面にラミニンフラグメントまたはその改変体をコーティングするための溶液であって、インテグリン結合活性を有するラミニンフラグメントまたはその改変体、および、ラミニンまたはそのフラグメント以外の蛋白質を含み、前記ラミニンフラグメントまたはその改変体の濃度が5μg/mL以下であり、前記ラミニンまたはそのフラグメント以外の蛋白質の濃度が50μg/mL以上であることを特徴とするコーティング溶液。
[14]細胞培養器具の培養面におけるラミニンフラグメントまたはその改変体のコーティング濃度が、0.5μg/cmより低いコーティング濃度になるように、前記ラミニンフラグメントまたはその改変体の濃度が調整されていることを特徴とする前記[13]に記載のコーティング溶液。
[15]前記ラミニンまたはそのフラグメント以外の蛋白質の分子量が10000以上であることを特徴とする前記[13]または[14]に記載のコーティング溶液。
[16]前記ラミニンフラグメントが、ラミニンE8フラグメントであることを特徴とする前記[13]〜[15]のいずれかに記載のコーティング溶液。
本発明によれば、インテグリン結合活性を有するラミニンフラグメントまたはその改変体の哺乳動物培養細胞に対する活性を増強する方法を提供することができる。本発明の活性増強方法を用いれば、推奨されるラミニンフラグメントのコーティング濃度より低いコーティング濃度でも、推奨濃度でコーティングした場合と同等の細胞培養が可能となる。また、本発明によれば、細胞培養器具をコーティングするためのラミニンフラグメントまたはその改変体を含有するコーティング溶液を提供することができる。本発明のコーティング溶液は、用時調製の必要がなく長期間安定に保存することが可能であるので、ヒューマンエラーを回避することができ、作業に熟練しなくても均一なコーティング濃度で細胞培養器具をコーティングすることができる。
ヒト血清アルブミンによるラミニン511E8のインテグリン結合活性の増強作用を評価した結果を示す図である。 ゼラチンによるラミニン511E8のインテグリン結合活性の増強作用を評価した結果を示す図である。 ヒト血清アルブミンによるラミニン521E8のインテグリン結合活性の増強作用を評価した結果を示す図である。 ゼラチンによるラミニン521E8のインテグリン結合活性の増強作用を評価した結果を示す図である。 ヒト血清アルブミンまたはゼラチンを添加してラミニン511E8をコーティングした培養プレートでヒトiPS細胞を培養し、アルカリホスファターゼ染色を施した結果を示す図である。 ヒト血清アルブミンまたはゼラチンを添加してラミニン521E8をコーティングした培養プレートでヒトiPS細胞を培養し、アルカリホスファターゼ染色を施した結果を示す図である。 ゼラチンを添加したラミニン511E8のコーティング溶液をガラス瓶に入れて4℃で保存し、16週間保存後のインテグリン結合活性を、用時調製したラミニン511E8フラグメントのコーティング溶液のインテグリン結合活性と比較した結果を示す図である。 ヒト血清アルブミンを添加したラミニン521E8のコーティング溶液をポリプロピレン製チューブに入れて4℃で13週間保存後に、保存後のコーティング溶液または用時調製したコーティング溶液を用いて細胞培養用24ウェルプレートをコーティングしてヒトiPS細胞を6日間培養し、アルカリホスファターゼ染色を施した結果を示す図である。 ヒト血清アルブミンを添加したラミニン511E8のコーティング溶液をポリプロピレン製チューブに入れて4℃で12か月間保存後に、保存後のコーティング溶液または用時調製したコーティング溶液を用いて細胞培養用24ウェルプレートをコーティングしてヒトiPS細胞を1週間培養し、アルカリホスファターゼ染色を施した結果を示す図である。 ゼラチンを添加したラミニン511E8のコーティング溶液をポリプロピレン製チューブに入れて4℃で12か月間保存後に、保存後のコーティング溶液または用時調製したコーティング溶液を用いて細胞培養用24ウェルプレートをコーティングしてヒトiPS細胞を1週間培養し、アルカリホスファターゼ染色を施した結果を示す図である。 ヒト血清アルブミンを添加したラミニン511E8のコーティング溶液をポリプロピレン製チューブに入れて4℃で12か月間保存後に、保存後のコーティング溶液または用時調製したコーティング溶液を用いて細胞培養用6ウェルプレートをコーティングしてヒトiPS細胞を1週間培養し、FACS解析を行った結果を示す図である。 ゼラチンを添加したラミニン511E8のコーティング溶液をポリプロピレン製チューブに入れて4℃で12か月間保存後に、保存後のコーティング溶液または用時調製したコーティング溶液を用いて細胞培養用6ウェルプレートをコーティングしてヒトiPS細胞を1週間培養し、FACS解析を行った結果を示す図である。 ヒト血清アルブミンを添加したラミニン521E8のコーティング溶液をポリプロピレン製チューブに入れて4℃で12か月間保存後に、保存後のコーティング溶液または用時調製したコーティング溶液を用いて細胞培養用24ウェルプレートをコーティングしてヒトiPS細胞を1週間培養し、アルカリホスファターゼ染色を施した結果を示す図である。 ゼラチンを添加したラミニン521E8のコーティング溶液をポリプロピレン製チューブに入れて4℃で12か月間保存後に、保存後のコーティング溶液または用時調製したコーティング溶液を用いて細胞培養用24ウェルプレートをコーティングしてヒトiPS細胞を1週間培養し、アルカリホスファターゼ染色を施した結果を示す図である。 ヒト血清アルブミンを添加したラミニン521E8のコーティング溶液をポリプロピレン製チューブに入れて4℃で12か月間保存後に、保存後のコーティング溶液または用時調製したコーティング溶液を用いて細胞培養用6ウェルプレートをコーティングしてヒトiPS細胞を1週間培養し、FACS解析を行った結果を示す図である。 ゼラチンを添加したラミニン521E8のコーティング溶液をポリプロピレン製チューブに入れて4℃で12か月間保存後に、保存後のコーティング溶液または用時調製したコーティング溶液を用いて細胞培養用6ウェルプレートをコーティングしてヒトiPS細胞を1週間培養し、FACS解析を行った結果を示す図である。 ヒト血清アルブミンによるラミニン211E8のインテグリン結合活性の増強作用を評価した結果を示す図である。 ヒト血清アルブミンによるラミニン411E8のインテグリン結合活性の増強作用を評価した結果を示す図である。 ヒト血清アルブミンによるラミニンフラグメント改変体(ラミニン511E8のN末端部にヒトパールカンのドメインI〜IIIを融合させたもの)のインテグリン結合活性の増強作用を評価した結果を示す図である。 ヒト血清アルブミンによるラミニンフラグメント改変体(ラミニン511E8のC末端部にヒトパールカンのドメインIを融合させたもの)のインテグリン結合活性の増強作用を評価した結果を示す図である。
本発明者らは、細胞培養器具にコーティングしたラミニンフラグメントの活性を乾燥状態で長期間安定に維持するための技術開発を進める過程で、ラミニンフラグメントのコーティング量に対して大過剰量のラミニンまたはそのフラグメント以外の蛋白質(例えばゼラチン、ウシ血清アルブミン、ヒト血清アルブミン等、以下「他の蛋白質」と記す)を同時にコーティングすることで、ラミニンフラグメントの乾燥による活性低下が抑制され、未乾燥コーティング状態と同等の活性が維持できることを見出した(PCT/JP2014/062449)。さらに、本発明者らは、ラミニンフラグメントを大過剰の他の蛋白質と同時にコーティングすれば、乾燥による失活が抑制されるだけでなく、より少ない量のラミニンフラグメントをコーティングしたときに、ラミニンフラグメントのインテグリン結合活性が増強されるとともに、ラミニンフラグメント上でのヒトiPS細胞の増殖が亢進することを見いだした。
具体的には、本発明者らは、ラミニン511E8またはラミニン521E8を0.5μg/cm(非特許文献2に記載の推奨コーティング濃度)より低い濃度で単独コーティングすると、コーティング濃度依存的にインテグリン結合活性やヒトiPS細胞のコロニー形成率が低下するが、大過剰の他の蛋白質と共にコーティングすれば、0.5μg/cmの半分以下濃度でラミニンフラグメントをコーティングしても、0.5μg/cmの場合と同等のインテグリン結合活性やヒトiPS細胞の増殖とコロニー形成率が維持されることを見出した。
常識的には、大過剰のゼラチン、血清アルブミン等を同時にコーティングすれば、これらがラミニンフラグメントの細胞培養器具への吸着を拮抗的に阻害し、結果としてラミニンフラグメントのコーティングが著しく損なわれると考えられる。このようなブロッキンング効果は、特許文献2に開示されている技術において、明確に示されている。具体的には、特許文献2の段落[0086]および図1Aには、組換えラミニン511(Biolamina社製)とヒト血清アルブミン(3.13〜100μg/mL)を96ウェルプレートにコーティングしてラット幹細胞株(BRL)を培養したところ、ヒト血清アルブミン濃度が12.5μg/mLを超えると、ラミニン511の単独コーティングより細胞接着活性が低下した実験結果が示されている。この結果は、ヒト血清アルブミン濃度が12.5μg/mLを超えると、ヒト血清アルブミンの吸着によりラミニン511の吸着が阻害されたことを強く示唆している。
一方、本願発明においては、大過剰のゼラチンや血清アルブミン共存下でラミニンフラグメントをコーティングしても、インテグリン結合活性の低下は認められず、ラミニンフラグメントのコーティング量はほとんど影響を受けていないと考えられた。さらに、驚いたことに、ラミニンフラグメントのコーティング濃度が0.5μg/cmより低い場合には、その哺乳動物細胞に対する活性が増強されるという予想外の結果が得られた。したがって、メカニズムは不明であるが、本願発明と特許文献2に開示され発明が全く異なる技術であることは明らかであり、特許文献2に開示され発明に基づいて、本願発明を容易に想到することはできない。
さらに本発明者らは、コーティングに使用する濃度まで希釈したラミニンフラグメントを大過剰量の他の蛋白質と共存させると、溶液中のラミニンフラグメントの活性が低下することなく安定に維持されることを見出した。一般的に、希釈した蛋白質の溶液をガラス瓶等の容器で保存すると、蛋白質が容器の表面に吸着することにより、溶液中の蛋白質実効濃度が低下することが経験的に知られている。実際に、ラミニンフラグメントを大過剰の他の蛋白質を共存させずに保存した場合には、時間とともに溶液中のラミニンフラグメントの活性が低下することを本発明者らは観察している。本発明者らは、上記の新規知見から、使用時に希釈等の操作を必要とせず、冷蔵庫から出して直ちにコーティングに使用でき、加えて長期間安定に冷蔵保存することが可能なコーティング溶液を完成した。
〔活性増強方法〕
本発明は、インテグリン結合活性を有するラミニンフラグメントまたはその改変体の哺乳動物培養細胞に対する活性増強方法を提供する。哺乳動物培養細胞に対する活性とは、哺乳動物細胞の培養基質としての活性を意味し、インテグリン等の細胞表面の接着受容体に対する結合活性、細胞接着活性、細胞増殖活性、コロニー形成活性等が含まれる。
本発明の活性増強方法は、ラミニンフラグメントまたはその改変体、および、ラミニンまたはそのフラグメント以外の蛋白質(他の蛋白質)を含むコーティング溶液を細胞培養器具の培養面に接触させ、前記ラミニンフラグメントまたはその改変体を培養面にコーティングすることを含む。細胞培養器具は哺乳動物細胞の培養に使用できるものであれば特に限定されないが、哺乳動物の幹細胞の培養に使用できるものが好ましく、ヒトの幹細胞の培養に使用できるものがより好ましく、ヒト多能性幹細胞の培養に使用できるものがさらに好ましい。細胞培養器具は、シャーレ等の容器状の器具に限定されず、平面状やビーズ状の器具であってもよい。具体的には、例えば、ガラス製またはプラスチック製のシャーレ、培養フラスコ、マルチウェルプレート、カルチャースライド、マイクロキャリア、ポリビニリデンフルオリド膜等のポリマー膜などが挙げられる。
ラミニンは、α鎖、β鎖およびγ鎖の3本のサブユニット鎖からなるヘテロ3量体分子である。α鎖はα1〜α5の5種類、β鎖はβ1〜β3の3種類、γ鎖はγ1〜γ3の3種類が知られており、それらの組み合わせで少なくとも12種類以上のアイソフォームが存在する。ラミニンフラグメントは、ヘテロ3量体を形成しているα鎖、β鎖およびγ鎖の少なくとも1つ以上が全長より短いフラグメントからなる分子を意味する。本発明に用いられるラミニンフラグメントは、ヘテロ3量体を形成しているラミニンフラグメントであることが好ましい。ラミニンフラグメントがヘテロ3量体を形成していることは、ラミニンフラグメントをSDS−PAGEに供し、バンドの数を検出する、あるいはゲル濾過クロマトグラフィーの溶出位置を測定すること等により確認できる。
本発明に用いられるラミニンフラグメントは、インテグリン結合活性を有することが好ましい。より好ましくは、インテグリン結合活性を有し、かつ、ヘテロ3量体を形成しているラミニンフラグメントである。このようなラミニンフラグメントとして、ラミニンE8フラグメント(以下、「ラミニンE8」と記す)を好ましく用いることができる。ラミニンE8は、マウスラミニンα1β1γ1(以下、「マウスラミニン111」と記す)をエラスターゼで消化して得られたフラグメントの中で、強い細胞接着活性をもつフラグメントとして同定されたものである(Edgar D., Timpl R., Thoenen H.The heparin-binding domain of laminin is responsible for its effects on neurite outgrowth and neuronal survival. EMBO J., 3:1463-1468, 1984.、Goodman SL., Deutzmann R., von der Mark K.Two distinct cell-binding domains in laminin can independently promote nonneuronal cell adhesion and spreading. J. Cell Biol., 105:589-598, 1987.)。マウスラミニン111以外のラミニンについてもエラスターゼで消化した際にマウスラミニン111E8に相当するフラグメントの存在が推定されるが、マウスラミニン111以外のラミニンをエラスターゼで消化してE8を分離、同定した報告はない。したがって、本発明に用いられるラミニンE8は、ラミニンのエラスターゼ消化産物であることを要するものではなく、マウスラミニン111E8と同様の細胞接着活性を有し、同様の構造を有し、同程度の分子量を有するラミニンのフラグメントであればよい。
ラミニンフラグメントまたはその改変体が有するインテグリン結合活性の対象となるインテグリンの種類は特に限定されないが、インテグリンα6β1、インテグリンα6β4、インテグリンα3β1、インテグリンα7β1であることが好ましい。これらのインテグリンと結合活性を有するラミニンフラグメントとしては、ラミニン511、ラミニン521、ラミニン411、ラミニン421、ラミニン311、ラミニン321、ラミニン332、ラミニン211、ラミニン221、ラミニン111およびラミニン121から選択される少なくとも1種由来であることが好ましい。より好ましくは、ラミニン511、ラミニン521、ラミニン411およびラミニン211から選択される少なくとも1種由来のラミニンフラグメントであり、さらに好ましくは、ラミニン511およびラミニン521から選択される少なくとも1種由来のラミニンフラグメントである。ラミニンフラグメントがインテグリン結合活性を有していることは、結合対象のインテグリンを用いた固相結合アッセイ等により確認することができる。
ヒト幹細胞、特にヒト多能性幹細胞はインテグリンの中でもα6β1を多く発現していることが知られている(Miyazaki T, Futaki S., Hasegawa K., Kawasaki M., Sanzen N., Hayashi M., Kawase E., Sekiguchi K., Nakatsuji N., Suemori H. Recombinant human laminin isoforms can support the undifferentiated growth of human embryonic stem cells. Biochem. Biophys. Res. Commun., 375:27-32, 2008)。インテグリンα6β1は様々なラミニンアイソフォームに結合するが、中でもα5鎖を含むラミニン511とラミニン521に非常に強く結合することから(Taniguchi Y., Ido H., Sanzen N., Hayashi M., Sato-Nishiuchi R., Futaki S., Sekiguchi K. The C-terminal region of laminin β chains modulates the integrin binding affinities of laminins. J. Biol. Chem., 284:7820-7831, 2009)、ラミニン511およびラミニン521から選択される少なくとも1種由来のラミニンフラグメントは、ヒト幹細胞の培養基質として特に好ましく用いられる。
ラミニンフラグメントの由来は特に限定されず、各種生物由来のラミニンフラグメントを用いることができる。好ましくは哺乳動物由来のラミニンフラグメントである。哺乳動物としては、例えば、ヒト、マウス、ラット、ウシ、ブタ等が挙げられるが、限定されない。なかでもヒト由来のラミニンフラグメントを用いることが特に好ましい。ヒトの再生医療材料を得るためにヒト幹細胞を培養する場合には、培養系から異種生物由来の成分を排除するゼノフリー条件を満たす培養環境が求められることから、ヒト由来のラミニンフラグメントを用いることが好ましい。
ラミニンフラグメントは天然型であってもよく、その生物学的活性を維持したまま、1個またはそれ以上のアミノ酸残基が修飾された修飾型であってもよい。ラミニンフラグメントの製造方法は特に限定されず、例えば、全長ラミニンをエラスターゼ等の蛋白質分解酵素で消化し、目的のフラグメントを分取、精製する方法や、組換え蛋白質として製造する方法などが挙げられる。製造量、品質の均一性、製造コスト等の観点から、組換え蛋白質として製造することが好ましい。なお、全長ラミニンは、例えば、ラミニン高発現細胞から精製する方法や、組換え蛋白質として製造する方法(Hiroyuki Ido, Kenji Harada, Sugiko Futaki, Yoshitaka Hayashi, Ryoko Nishiuchi, Yuko Natsuka, Shaoliang Li, Yoshinao Wada,Ariana C. Combs, James M. Ervasti, and Kiyotoshi Sekiguchi, “Molecular dissection of the α-dystroglycan- and integrin-binding sites within the globular domain of human laminin-10” The Journal of Biological Chemistry, 279, 10946-10954, 2004.)などにより製造することができる。
組換えラミニンフラグメントは、公知の遺伝子組換え技術を用いることにより製造することができる。組換えラミニン、組換えラミニンフラグメントの製造方法としては、例えば、α鎖、β鎖およびγ鎖の各全長タンパク質または部分タンパク質をコードするDNAをそれぞれ取得し、これをそれぞれ発現ベクターに挿入し、得られた3種類の発現ベクターを適切な宿主細胞に共導入して発現させ、3量体を形成しているタンパク質を公知の方法で精製することにより製造することができる。組換えラミニンE8の製造方法としては、例えばIdoら(Hiroyuki Ido, Aya Nakamura, Reiko Kobayashi, Shunsuke Ito, Shaoliang Li, Sugiko Futaki, and Kiyotoshi Sekiguchi, “The requirement of the glutamic acid residue at the third position from the carboxyl termini of the laminin γ chains in integrin binding by laminins” The Journal of Biological Chemistry, 282, 11144-11154, 2007.)の方法が挙げられるが、これに限定されるものではない。
主要な哺乳動物のラミニンを構成するα鎖、β鎖、γ鎖をコードする遺伝子の塩基配列情報および各鎖のアミノ酸配列情報は、公知のデータベース(GenBank等)から取得することができる。表1に、ヒトを含む主な哺乳動物について、ラミニンを構成する各鎖のアクセッション番号を示す。これら以外の各種生物由来のラミニン構成鎖の塩基配列情報およびアミノ酸配列情報も同様に公知のデータベース(GenBank等)から取得することができる。
ラミニンE8は、α鎖のC末端フラグメントから球状ドメイン4および5が除かれたフラグメント(以下「α鎖E8」と記す)、β鎖のC末端フラグメント(以下「β鎖E8」と記す)およびγ鎖のC末端フラグメント(以下「γ鎖E8」と記す)が3量体を形成したフラグメントであり、3量体の分子量は約150〜約170kDaである。α鎖E8は通常約770個のアミノ酸からなり、N末端側の約230アミノ酸が3量体形成に関わる。β鎖E8は通常約220〜約230個のアミノ酸からなる。γ鎖E8は通常約240〜約250個のアミノ酸からなる。γ鎖E8のC末端部から3番目のグルタミン酸残基はラミニンE8の細胞接着活性に必須である(Hiroyuki Ido, Aya Nakamura, Reiko Kobayashi, Shunsuke Ito, Shaoliang Li, Sugiko Futaki, and Kiyotoshi Sekiguchi, “The requirement of the glutamic acid residue at the third position from the carboxyl termini of the laminin γ chains in integrin binding by laminins” The Journal of Biological Chemistry, 282, 11144-11154, 2007.)。
本発明に用いられるラミニンフラグメントの改変体としては、例えば、インテグリン結合活性を有するラミニンフラグメントと細胞接着分子または増殖因子結合分子とがキメラ分子を形成している改変ラミニンが挙げられる(国際公開公報第2012/137970号参照)。細胞接着分子としては、例えば、インテグリンと結合する細胞接着分子(フィブロネクチン、コラーゲン、ビトロネクチン、ネフロネクチン、オステオポンティン、MAEG、テネイシン、SVEP1、TGF−β1 latency associated peptide、TGF−β3 latency associated peptide、EMILIN−1、EMILIN−2など)、膜結合型プロテオグリカンと結合する細胞接着分子(フィブロネクチン、ビトロネクチン、ネフロネクチン、ラミニンなど)、ジスコイジンドメイン受容体と結合する細胞接着分子、ジストログリカンと結合する細胞接着分子(ラミニンなど)、細胞表面の糖鎖と結合する細胞接着分子(Concanavalin A、Dolichos biflorus agglutinin、Arachis hypogaea agglutinin、Ricinus communis agglutinin、Wheat germ agglutininなど)が好ましい。
増殖因子結合分子としては、例えば、パールカン、アグリン、XVIII型コラーゲン、シンデカン1〜4、グリピカン1〜6などのヘパラン硫酸プロテオグリカン、latent TGF−β binding protein1〜4などが好ましい。
インテグリン結合活性を有するラミニンフラグメントと細胞接着分子または増殖因子結合分子とのキメラ分子は、公知の遺伝子組換え技術を用いることにより組換えタンパク質として製造することができる。公知の細胞接着分子および増殖因子結合分子の塩基配列情報およびアミノ酸配列情報は、公知のデータベース(GenBank等)から取得することができる。
本発明の活性増強方法は、ラミニンフラグメントまたはその改変体(以下、「ラミニンフラグメント等」と記す)、および、ラミニンまたはそのフラグメント以外の蛋白質(他の蛋白質)を含むコーティング溶液を細胞培養器具の培養面に接触させ、ラミニンフラグメント等を培養面にコーティングすることを特徴とする。他の蛋白質は限定されず、どのような蛋白質でも本発明に用いることができる。他の蛋白質は、水溶性蛋白質であることが好ましい。他の蛋白質の分子量は特に限定されないが、分子量が10000以上であることが好ましい。他の蛋白質の分子量は15000以上であることがより好ましく、20000以上であることがさらに好ましく、30000以上であることがさらに好ましく、40000以上であることがさらに好ましく、60000以上であることがさらに好ましい。
他の蛋白質として、具体的には、例えば、ゼラチン、血清アルブミン、トランスフェリン、ミエリン塩基性蛋白質、β−ラクトグロブリン、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ、セリシン、コラーゲンなどが挙げられる。好ましくはゼラチン、血清アルブミン、トランスフェリン、ミエリン塩基性蛋白質、β−ラクトグロブリン、グルタチオン−S−トランスフェラーゼまたはコラーゲンであり、より好ましくはゼラチン、ヒト血清アルブミン、ウシ血清アルブミンまたはトランスフェリンであり、さらに好ましくはゼラチンまたはヒト血清アルブミンである。他の蛋白質は一種のみを用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。他の蛋白質は、ヒト由来の蛋白質を用いることが好ましい。ヒトの再生医療材料を得るためにヒト幹細胞を培養する場合には、培養系から異種生物由来の成分を排除するゼノフリー条件を満たす培養環境が求められるからである。
他の蛋白質として、ゼラチンを用いる場合、細胞培養用途に使用される公知のゼラチンを好適に用いることができる。医療用途の安全性が確認されているゼラチンを用いることがより好ましい。医療用途の安全性が確認されているゼラチンとして、株式会社ニッピから市販されているハイグレードゼラチン、メディゼラチンなどが挙げられる。
コーティング溶液に含まれるラミニンフラグメント等の量は、細胞培養器具の培養面において、0.5μg/cmより低いコーティング濃度になる量であることが好ましい。より好ましくは、コーティング濃度が0.4μg/cm以下になる量であり、さらに好ましくはコーティング濃度が0.3μg/cm以下になる量であり、さらに好ましくはコーティング濃度が0.25μg/cm以下になる量であり、さらに好ましくはコーティング濃度が0.2μg/cm以下になる量であり、さらに好ましくはコーティング濃度が0.15μg/cm以下になる量であり、さらに好ましくはコーティング濃度が0.125μg/cm以下になる量であり、さらに好ましくはコーティング濃度が0.1μg/cm以下になる量である。下限は、特に限定されないが、0.01μg/cm以上が好ましく、0.05μg/cm以上がより好ましい。
本明細書において、コーティング濃度は、細胞培養器具の培養面にコーティングされたラミニンフラグメント等の単位面積(1cm)あたりの重量である。したがって、コーティング濃度は、細胞培養器具の培養面の面積(培養面積)とコーティング溶液の液量により決定される。例えば、代表的な細胞培養器具の培養面積とコーティングに要する液量(培養面の全体に液が広がる標準的な液量を表2に示す。なお、培養面積は「細胞培養&細胞生物学製品総合カタログ2014年4月改訂(コーニングインターナショナル株式会社)」に基づき、コーティング液量は発明者らが通常用いている液量である。
表2の数値に基づき、コーティング溶液のラミニンフラグメント等の濃度は、5.0μg/mL以下であることが好ましく、4.5μg/mL以下であることがより好ましく、4.0μg/mL以下であることがさらに好ましく、3.5μg/mL以下であることがさらに好ましく、3.0μg/mL以下であることがさらに好ましく、2.5μg/mL以下であることがさらに好ましく、2.0μg/mL以下であることがさらに好ましく、1.5μg/mL以下であることがさらに好ましい。下限は特に限定さられないが、0.25μg/mL以上であることが好ましく、0.5μg/mL以上であることがより好ましく、1.0μg/mL以上であることがさらに好ましい。
コーティング溶液に含まれる他の蛋白質の量は、コーティング溶液に含まれるラミニンフラグメント等の量と比較して大過剰量であることが好ましい。換言すれば、ラミニンフラグメント等と同時にコーティングした場合、常識的にブロッキンング効果が生じてラミニンフラグメント等のコーティングが著しく損なわれると考えられる量であることが好ましい。本発明の活性増強方法は、大過剰量の他の蛋白質を同時にコーティングしても、予想されるブロッキング効果が生じないだけでなく、ラミニンフラグメント等のコーティング濃度が低い場合にその活性が増強されるという点に技術的特徴を有する。
コーティング溶液の他の蛋白質濃度は、コーティング溶液のラミニンフラグメント等の濃度の10倍以上の濃度であることが好ましく、20倍以上の濃度であることがより好ましく、30倍以上の濃度であることがさらに好ましく、40倍以上の濃度であることがさらに好ましく、50倍以上の濃度であることがさらに好ましく、60倍以上の濃度であることがさらに好ましく、70倍以上の濃度であることがさらに好ましく、80倍以上の濃度であることがさらに好ましく、90倍以上の濃度であることがさらに好ましく、100倍以上の濃度であることがさらに好ましい。上限は特に限定されず、活性増強効果が奏される範囲で適宜設定すればよい。通常コーティング溶液のラミニンフラグメント等の濃度の2000倍以下に設定される。
また、コーティング溶液の他の蛋白質濃度は、50μg/mL以上であることが好ましく、100μg/mL以上であることがより好ましく、150μg/mL以上であることがさらに好ましく、200μg/mL以上であることがさらに好ましく、250μg/mL以上であることがさらに好ましく、300μg/mL以上であることがさらに好ましく、350μg/mL以上であることがさらに好ましく、400μg/mL以上であることがさらに好ましく、450μg/mL以上であることがさらに好ましく、500μg/mL以上であることがさらに好ましい。上限は特に限定されず、活性増強効果が奏される範囲で適宜設定すればよい。通常5mg/mL以下に設定され、好ましくは1mg/mL以下である。
コーティング溶液は、コーティングしようとするラミニンフラグメント等および他の蛋白質を、所望の濃度になるように適当な溶媒に溶解することにより調製することができる。コーティング溶液に用いることができる溶媒は、蛋白質の活性を低下させない溶媒であれば特に限定されないが、水性溶媒が好ましい。一般に蛋白質の溶媒として用いられる中性の緩衝液を好適に用いることができる。具体的には、リン酸、クエン酸、ホウ酸、酢酸、トリスヒドロキシメチルアミノメタン、HEPES[4-(2-hydroxyethyl)-1-piperazineethanesulfonic acid]などでpHを中性付近に合わせた生理食塩液などが挙げられる。コーティング溶液は、ろ過滅菌等の滅菌処理を行うことが好ましい。
コーティング溶液には、コーティングしようとする蛋白質(ラミニンフラグメント等および他の蛋白質)の全てが含まれていることが好ましいが、ラミニンフラグメント等を含むコーティング溶液と、他の蛋白質を含むコーティング溶液を別々に調製し、細胞培養器具の培養面上で混合してもよい。
コーティング操作は特に限定されず、細胞培養器具の培養面全体にコーティング溶液を接触させ、一定時間静置または緩やかに振盪することにより、コーティング溶液に含まれる蛋白質を細胞培養器具の培養面にコーティングすることができる。容器状の細胞培養器具の場合、コーティング溶液を容器内に添加すればよい。シート状または膜状の細胞培養器具の表面をコーティングする場合は、コーティングする領域にコーティング溶液を重層すればよい。コーティング条件は特に限定されないが、4℃で約2〜18時間、または室温〜37℃で約0.5〜6時間行えばよい。所定時間経過後、添加または重層したコーティング溶液を除去する。コーティング溶液除去後、コーティングされた表面を洗浄することが好ましい。洗浄液は特に限定されないが、PBS等の緩衝生理食塩液を用いることが好ましい。コーティング操作は、クリーンルーム内、クリーンベンチ内などの無菌環境下で行うことが好ましい。
コーティング後の細胞培養器具は、そのまま細胞の培養に使用することができるが、コーティング後にコーティング面を乾燥させてもよい。コーティング面を乾燥させることにより、細胞培養器具を保存することが可能となる。乾燥方法は特に限定されず、自然乾燥、減圧乾燥等の周知の方法を用いることができる。乾燥温度は、コーティングされた蛋白質が変性または失活しない温度であればよく、室温で好適に行うことができる。通常約2℃〜約40℃の範囲であればよく、好ましくは約4℃〜約37℃、より好ましくは約10℃〜約30℃、さらに好ましくは約15℃〜約25℃である。乾燥時間は特に限定されず、目視により液体の残存がなく、コーティングの表面が乾燥していることを確認できた時点で乾燥を終了することができる。細胞培養器具の形状、コーティング溶液の組成、乾燥方法、乾燥温度等の条件に応じて、予め最適な乾燥時間を設定することが好ましい。乾燥操作は、クリーンルーム内、クリーンベンチ内などの無菌環境下で行うことが好ましい。
コーティングされた蛋白質を乾燥した後に、乾燥した蛋白質を滅菌する工程を設けてもよい。滅菌方法としては、電子線滅菌、エックス線滅菌などの放射線滅菌、紫外線滅菌などが好ましく用いられる。蛋白質を変性させる恐れがある滅菌法(例えばエチレンオキサイドガス滅菌などの化学的滅菌や、高熱をかける高圧蒸気滅菌など)は用いないほうがよい。滅菌工程を設けることにより、細胞培養器具の製造を厳密な無菌条件下で行う必要がなくなり、製造コストを抑制することができる。コーティング面を乾燥させた細胞培養器具は、密封包装することにより長期間安定に保存することができる。保存温度は室温以下であることが好ましく、より低温(例えば、約4℃)で保存することが好ましい。
本発明の活性増強方法により、ラミニンフラグメント等を推奨されるコーティング濃度(例えば0.5μg/cm:非特許文献2)より低いコーティング濃度でコーティングした場合に、ラミニンフラグメント等の単独コーティングでは低下することが確認されているインテグリン結合活性、細胞接着活性、細胞増殖活性、コロニー形成活性等を増強させ、推奨されるコーティング濃度でラミニンフラグメント等を単独コーティングした時と同等の細胞培養が可能となる。本発明の活性増強方法を用いることで、コーティングに用いるラミニンフラグメント等の使用量を減らすことができるので、コーティングに要するコストを大幅に削減することができる。
〔培養方法〕
本発明の培養方法は、上記本発明の活性増強方法を適用して哺乳動物細胞を培養する方法である。すなわち、ラミニンフラグメント等を推奨されるコーティング濃度より低いコーティング濃度で、大過剰量の他の蛋白質と共にコーティングした細胞培養器具を用いて哺乳動物細胞を培養する方法である。本発明の培養方法で使用する細胞培養器具は、上記本発明の活性増強方法で説明した細胞培養器具である。
本発明の培養方法は、どのような哺乳動物細胞の培養にも適用できるが、幹細胞の培養に適用することが好ましい。幹細胞は、自己複製能と多分化能を持った細胞を意味し、体性幹細胞、多能性幹細胞などが含まれる。体性幹細胞としては、神経幹細胞、間葉系幹細胞、造血幹細胞などが挙げられる。多能性幹細胞としては、ES細胞(胚性幹細胞)、iPS細胞(人工多能性幹細胞)、mGS細胞(多能性生殖幹細胞)、ES細胞と体細胞との融合細胞などが挙げられる。より好ましくは多能性幹細胞であり、さらに好ましくはES細胞、iPS細胞である。また、本発明の培養方法は、上記幹細胞から分化した細胞の培養にも好適に用いることができる。幹細胞から分化した細胞には幹細胞を分化誘導した各種細胞が含まれる。すなわち、本発明の培養方法は、幹細胞から最終分化細胞に至る過程における種々の分化段階の細胞の培養に好適に用いることができる。哺乳動物は特に限定されず、ヒト、マウス、ラット、ウシ、ブタ等が挙げられる。なかでもヒトが好ましい。すなわち、本発明の培養方法は、ヒト幹細胞およびヒト幹細胞から分化した細胞の培養に用いることが好ましい。また、本発明の培養方法を用いてヒト幹細胞またはヒト幹細胞から分化した細胞の培養を行う場合には、ヒト由来のラミニンフラグメントまたはその改変体を用いることが好ましい。
本発明の培養方法で哺乳動物細胞を培養する際に使用する培地は特に限定されず、培養対象の細胞に応じて、推奨される公知の培地を用いることができる。また、具体的な培養手順は特に限定されず、培養対象の細胞に応じて、推奨される公知の培養手順に従い培養することが好ましい。
〔コーティング溶液〕
本発明は、インテグリン結合活性を有するラミニンフラグメント等と、ラミニンフラグメント等に対して大過剰量の他の蛋白質を含むコーティング溶液を提供する。本発明のコーティング溶液は、上記本発明の活性増強方法または上記本発明の培養方法で使用するためのコーティング溶液として好適である。
本発明のコーティング溶液に含まれるラミニンフラグメント等として、上記本発明の活性増強方法で説明したラミニンフラグメントまたはその改変体を好ましく用いることができる。また、本発明のコーティング溶液に含まれる他の蛋白質として、上記本発明の活性増強方法で説明したラミニンまたはそのフラグメント以外の蛋白質(他の蛋白質)を好ましく用いることができる。
本発明のコーティング溶液は、ラミニンフラグメント等の濃度が5.0μg/mL以下であり、他の蛋白質の濃度が50μg/mL以上であることが好ましい。ラミニンフラグメント等の濃度は、4.5μg/mL以下であることがより好ましく、4.0μg/mL以下であることがさらに好ましく、3.5μg/mL以下であることがさらに好ましく、3.0μg/mL以下であることがさらに好ましく、2.5μg/mL以下であることがさらに好ましく、2.0μg/mL以下であることがさらに好ましく、1.5μg/mL以下であることがさらに好ましい。下限は特に限定さられないが、0.25μg/mL以上であることが好ましく、0.5μg/mL以上であることがより好ましく、1.0μg/mL以上であることがさらに好ましい。
他の蛋白質濃度は、コーティング溶液のラミニンフラグメント等の濃度の10倍以上の濃度であることが好ましく、20倍以上の濃度であることがより好ましく、30倍以上の濃度であることがさらに好ましく、40倍以上の濃度であることがさらに好ましく、50倍以上の濃度であることがさらに好ましく、60倍以上の濃度であることがさらに好ましく、70倍以上の濃度であることがさらに好ましく、80倍以上の濃度であることがさらに好ましく、90倍以上の濃度であることがさらに好ましく、100倍以上の濃度であることがさらに好ましい。上限は特に限定されないが、通常コーティング溶液のラミニンフラグメント等の濃度の2000倍以下に設定される。
他の蛋白質濃度は、50μg/mL以上であることが好ましく、100μg/mL以上であることがより好ましく、150μg/mL以上であることがさらに好ましく、200μg/mL以上であることがさらに好ましく、250μg/mL以上であることがさらに好ましく、300μg/mL以上であることがさらに好ましく、350μg/mL以上であることがさらに好ましく、400μg/mL以上であることがさらに好ましく、450μg/mL以上であることがさらに好ましく、500μg/mL以上であることがさらに好ましい。上限は特に限定されないが、通常5mg/mL以下、好ましくは1mg/mL以下である。
本発明のコーティング溶液は、使用時に希釈することなく、そのままコーティングに使用できる溶液であることが好ましい。それゆえ、細胞培養器具の培養面におけるラミニンフラグメント等のコーティング濃度が0.5μg/cmより低いコーティング濃度になるように、ラミニンフラグメント等の濃度が調整されていることが好ましい。ラミニンフラグメント等のコーティング濃度は、0.4μg/cm以下になることがより好ましく、0.3μg/cm以下になることがさらに好ましく、0.25μg/cm以下になることがさらに好ましく、0.2μg/cm以下になることがさらに好ましく、0.15μg/cm以下になることがさらに好ましく、0.125μg/cm以下になることがさらに好ましく、0.1μg/cm以下になることがさらに好ましい。
コーティング溶液は、コーティングしようとするラミニンフラグメント等および他の蛋白質を、所望の濃度になるように適当な溶媒に溶解することにより調製することができる。コーティング溶液に用いることができる溶媒は、蛋白質の活性を低下させない溶媒であれば特に限定されないが、水性溶媒が好ましい。一般に蛋白質の溶媒として用いられる中性の緩衝液を好適に用いることができる。具体的には、リン酸、クエン酸、ホウ酸、酢酸、トリスヒドロキシメチルアミノメタン、HEPES[4-(2-hydroxyethyl)-1-piperazineethanesulfonic acid]]などでpHを中性付近に合わせた生理食塩液などが挙げられる。コーティング溶液は、ろ過滅菌等の滅菌処理を行うことが好ましい。
本発明のコーティング溶液は、本来の目的を妨げない限り、ラミニンフラグメント等、他の蛋白質、および溶媒成分以外の成分が含まれていてもよいが、ラミニンフラグメント等、他の蛋白質、および溶媒成分以外の成分は含まれていないことが好ましい。本発明のコーティング溶液は、適当な容量を適当な容器に収容した形態で実施することが好ましい。容器は特に限定されず、蛋白質溶液の保存に用いられる公知の容器を好適に用いることができる。容器は、密封容器であることが好ましく、遮光容器であることが好ましい。また、本発明のコーティング溶液には、コーティングを行う細胞培養容器に対応するコーティング液量とコーティング濃度を示した説明書を添付することが好ましい。それゆえ本発明は、適当な容器に収容した本発明のコーティング溶液と上記の説明書を含むラミニンフラグメント等のコーティング用キットとして実施することができる。
本発明のコーティング溶液は、容器に密封した状態で、10℃以下の温度で冷蔵保存することが好ましい。より好ましくは3℃〜5℃である。また、本発明のコーティング溶液は、紫外線等による蛋白質の劣化を防止するために、遮光保存することが好ましい。本発明者らは、本発明のコーティング溶液をそのままコーティングに使用できる濃度で、少なくとも12か月間安定に冷蔵保存できることを確認しており、現在も長期保存の実験を継続中である。
本発明のコーティング溶液は、用時調製(凍結保存液の解凍、溶解、希釈等)の必要がなく、長期間安定に冷蔵保存することができる。そのため、使用時には、本発明のコーティング溶液を冷蔵庫から取り出し、所定の液量を培養器具に添加あるいは重層するだけで、直ちにコーティングを行うことができ、作業時間を短縮かつ簡略化できることが大きな利点となる。また、冷蔵保存したコーティング溶液を繰り返し使用するため、コーティング操作を行う日や、コーティング操作を行う作業者が異なっても、常に均一なコーティング濃度で細胞培養器具をコーティングすることができる。
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
〔ヒト組換えラミニン511E8の作製〕
ヒト組換えラミニン511E8(以下、「511E8」と記す)は、Idoら(Hiroyuki Ido, Aya Nakamura, Reiko Kobayashi, Shunsuke Ito, Shaoliang Li, Sugiko Futaki, and Kiyotoshi Sekiguchi, “The requirement of the glutamic acid residue at the third position from the carboxyl termini of the laminin γ chains in integrin binding by laminins” The Journal of Biological Chemistry, 282, 11144-11154, 2007)に記載の方法に従い、以下のように作製した。
最初に、クローニング用プラスミドpBluescript KS(+)(Stratagene社)を鋳型として、以下の3種類のプライマーセットを用いてPCRを行い、プラスミドのマルチクローニング部位内のEcoRVの5’側に6×HisタグをコードするDNA、HA(ヘマグルチニン)タグをコードするDNA、またはFLAGタグをコードするDNAが挿入された3種類のpBluescript KS(+)をそれぞれ作製した。
(i) 6×Hisタグ導入用プライマー
5’-ATGATGATGAAGCTTATCGATACCGT-3’(forward、配列番号1)
5’-CATCATCATGATATCGAATTCCTGCA-3’(reverse、配列番号2)
(ii) HAタグ導入用プライマー
5’-ATCATATGGATAAAGCTTATCGATACCGT-3’(forward、配列番号3)
5’-GTGCCAGATTATGCAGATATCGAATTCCT-3’(reverse、配列番号4)
(iii) FLAGタグ導入用プライマー
5’-ATCCTTGTAATCAAGCTTATCGATACCGT-3’(forward、配列番号5)
5’-GTGCCAGATTATGCAGATATCGAATTCCT-3’(reverse、配列番号4)
次に、α5鎖、β1鎖、γ1鎖の全長塩基配列を含むプラスミド(Ido et al., J. Biol. Chem., 279, 10946-10954, 2004.)を鋳型として、以下のプライマーを用いたPCRを行い、α5鎖E8(Ala2534−Ala3327)、β1鎖E8(Leu1561−Leu1786)、γ1鎖E8(Asn1362−Pro1608)に相当する領域をそれぞれ増幅した。
(iv) α5鎖E8フラグメント増幅用プライマー
5’-GCTGCCGAGGATGCTGCTGGCCAGG-3’(forward、配列番号6)
5’-CTAGGCAGGATGCCGGGCGGGCTGA-3’(reverse、配列番号7)
(v) β1鎖E8フラグメント増幅用プライマー
5’-CTTCAGCATAGTGCTGCTGACATTG-3’(forward、配列番号8)
5’-TTACAAGCATGTGCTATACACAGCAAC-3’(reverse、配列番号9)
(vi) γ1鎖E8フラグメント増幅用プライマー
5’-AATGACATTCTCAACAACCTGAAAG-3’(forward、配列番号10)
5’-CTAGGGCTTTTCAATGGACGGGGTG-3’(reverse、配列番号11)
増幅したcDNAを、タグ配列を付加したpBluescript KS(+)のマルチクローニング部位のEcoRV部位に挿入した後、5’側のタグをコードする配列を含めて増幅したcDNAを制限酵素EcoRIとHindIIIで切り出し、哺乳細胞用発現ベクターpSecTag2B(インビトロジェン)の当該部位に挿入し、ヒトα5鎖E8フラグメント(N末端側に6×Hisタグを含む)、ヒトβ1鎖E8フラグメント(N末端側にHAタグを含む)、ヒトγ1鎖E8フラグメント(N末端側にFLAGタグを含む)の発現ベクターをそれぞれ作製した。
511E8の発現は、作製した各鎖の発現ベクターをヒト腎臓由来293F細胞(インビトロジェン社より購入)に導入して行った。300mlの293F細胞(1.0 × 106個/ml)にトランスフェクション試薬293fectin(商品名、インビトロジェン)およびOpti-MEM(商品名、インビトロジェン)を用いて各鎖発現ベクターを180μgずつ同時にトランスフェクトし、72時間培養を行ったのち、培養液を回収した。培養液は1000×gで10分間遠心し、その上清をさらに15,000×gで30分間遠心し、細胞や不溶物を除去した。培養上清に5mlのNi-NTA agarose(キアゲン)を添加し一晩インキュベートして目的蛋白質を吸着させた。Ni-NTA agaroseを回収し、TBS(-)(Ca、Mgを含まないトリス緩衝生理的食塩水)および10mM イミダゾ−ル/TBS(-)で洗浄したのち200mM イミダゾール/TBS(-)で溶出した。溶出画分はSDS-PAGEおよび銀染色により確認し、511E8が溶出された画分に2mlのANTI-FLAG M2 affinity Gel(シグマ)を添加し、4℃で一晩旋回させた。ゲルをエコノカラムに移し1mM PMSFを含むTBS(-)で洗浄後、100μg/ml FLAG peptide(シグマ)を含むTBS(-)で溶出した。溶出フラクションを銀染色で確認し、511E8の溶出された画分を合わせてTBS(-)に対して透析を行った。
〔ヒト組換えラミニン521E8の作製〕
ヒト組換えラミニン521E8(以下、「521E8」と記す)は、上記ヒト組換えラミニン511E8の作製方法に準じて作製した。すなわち、ヒトα5鎖E8フラグメント(N末端側に6×Hisタグを含む)、ヒトβ2鎖E8フラグメント(N末端側にHAタグを含む)、ヒトγ1鎖E8フラグメント(N末端側にFLAGタグを含む)の各発現ベクターをヒト腎臓由来293F細胞にトランスフェクトし、72時間培養を行ったのち、培養液を回収し、ラミニン511E8と同様にNi-NTA agaroseとANTI-FLAG M2 affinity Gelを用いたアフィニティークロマトグラフィーにより精製した。ヒトβ2鎖E8フラグメントの発現ベクターはTaniguchiら(Yukimasa Taniguchi, Hiroyuki Ido, Noriko Sanzen Maria Hayashi, Ryoko Sato-Nishiguti, Sugiko Futaki, and Kiyotoshi Sekiguchi, “The C-terminal region of laminin β chains modulates the integrin binding affinities of laminins” The Journal of Biological Chemistry, 284, 7820-7831, 2009)に記載の方法に従い、調製した。
〔ヒト組換えラミニン211E8および411E8の作製〕
ヒト組換えラミニン211E8(以下、「211E8」と記す)およびラミニン411E8(以下、「411E8」と記す)は、上記ヒト組換えラミニン511E8の作製方法に準じて、作製した。すなわち、ヒトα2鎖E8フラグメントあるいはα4鎖E8フラグメント(どちらもN末端側に6×Hisタグを含む)、ヒトβ1鎖E8フラグメント(N末端側にHAタグを含む)、ヒトγ1鎖E8フラグメント(N末端側にFLAGタグを含む)の各発現ベクターをヒト腎臓由来293F細胞にトランスフェクトし、72時間培養を行ったのち、培養液を回収し、ラミニン511E8と同様にNi-NTA agaroseとANTI-FLAG M2 affinity Gelを用いたアフィニティークロマトグラフィーにより精製した。ヒトα2E8フラグメントの発現ベクターおよびヒトα4E8フラグメントの発現ベクターはTaniguchiら(Yukimasa Taniguchi, Hiroyuki Ido, Noriko Sanzen Maria Hayashi, Ryoko Sato-Nishiguti, Sugiko Futaki, and Kiyotoshi Sekiguchi, “The C-terminal region of laminin β chains modulates the integrin binding affinities of laminins” The Journal of Biological Chemistry, 284, 7820-7831, 2009)に記載の方法に従い、調製した。
〔実施例1:他の蛋白質による511E8のインテグリン結合活性の増強〕
実験方法
(1)プレートのコーティング
50μg/mLまたは500μg/mLのヒト血清アルブミン(Biological Industries cat#05-720-1B;以下HSAと記す)を含むPBS(Gibco、cat#10010-049、pH 7.4)で終濃度が22nM、11nM、5.5nM、2.7nMになるように511E8を段階希釈したのち、96ウェルプレート(ベクトン・ディッキンソン #353072、培養面積0.32cm2/well)に50μL/well加え、4℃で一晩ゆるやかに振盪しながらコーティングを行った。コーティング量を単位面積あたりの重量で表した場合は、それぞれ0.5、0.25、0.125、0.0625μg/cm2となっている。同様に、50μg/mLまたは500μg/mLのゼラチン(ニッピ APAT)を含むPBS(Gibco、cat#10010049、pH 7.4)で終濃度が22nM、11nM、5.5nM、2.7nMになるように段階希釈した511E8を用いて96ウェルプレートをコーティングした。なお、対照として、HSAおよびゼラチンを含まないPBSで同様に段階希釈した511E8をコーティングした96ウェルプレートを調製した。
(2)インテグリン結合アッセイ
インテグリン結合アッセイは、上記Idoら(Ido et al., The Journal of Biological Chemistry, 282, 11144-11154, 2007)に記載の方法に従って実施した。具体的には、上記のように511E8を単独で、またはHSAもしくはゼラチン(終濃度50μg/mLもしくは500μg/mL)を添加した511E8を用いてコーティングした96ウェルプレートに、0.1%ウシ血清アルブミン(BSA; シグマ・アルドリッチ cat#A7906)、0.02% Tween-20(Wako cat#167-11515)、130 mM NaClを含む20mM Tris緩衝液、pH7.4(以下0.1% BSA/TBSTと記す)を200μL/well加えて、プレートを洗浄した。次に、1%ウシ血清アルブミン、0.02% Tween-20、130mM NaClを含む20mM Tris緩衝液、pH7.4(以下1% BSA/TBSTと記す)を200μL/well加え、シェーカー(B.Braun Biotech International CERTOMAT MT)上で振盪しながら室温で1時間ブロッキングを行った。200μL/wellの0.1% BSA/TBSTで1回洗浄後、α6β1インテグリン溶液(10nM α6β1インテグリン、19.6mM Tris、127mM NaCl、0.0056% Tween-20、0.1% BSA、1mM MnCl2)を50μL/well加え、室温にてシェーカー上で振盪しながら3時間反応させた。200μL/wellの1mM MnCl2/0.1% BSA/TBSTで3回洗浄後、1mM MnCl2/0.1% BSA/TBST で希釈した1μg/mL のビオチン標識抗Velcro抗体(Takagi, J., Erickson, H. P., and Springer, T. A. (2001) Nat. Struct. Biol. 8, 412-416の記載に従って作製)を50μL/well加え、室温にてシェーカー上で30分間反応させた。200μL/wellの1mM MnCl2/0.1% BSA/TBSTで3回洗浄後、1mM MnCl2/0.1% BSA/TBSTで希釈した0.6μg/mL streptavidin-horseradish peroxidase(Pierce cat#21126)を50μL/well加え、室温にてシェーカー上で15分間反応させた。200μL/wellの1mM MnCl2/0.1% BSA/TBSTで3回洗浄後、ο-phenylenediamine(OPD)溶液(0.04% OPD (Wako cat#161-11851)、0.04% H2O2、25mM クエン酸、50mM Na2HPO4)を50μL/well加えて2分20秒反応させた。2.5M H2SO4で反応停止後、マイクロプレートリーダー(Molecular Devices EMax)を用いて490nmでの発色基質の吸光度を測定した。
実験結果
(1)HSAの効果
50μg/mLまたは500μg/mLのHSAを添加して511E8をコーティングした場合のインテグリン結合活性の測定結果を図1に示した。HSAの添加の有無にかかわらず、インテグリン結合量はコーティングした511E8の濃度とともに増加したが、500μg/mLのHSAを添加することにより、明確な511E8のインテグリン結合活性の増加が観察された。特に低濃度の511E8でコーティングした場合にその傾向が顕著であり、2.7nMの511E8でコーティングした場合、HSAの添加によりインテグリン結合活性は80%以上増加した。50μg/mLのHSAの添加によっても10%程度の活性増加が観察された。
(2)ゼラチンの効果
50μg/mLまたは500μg/mLのゼラチンを添加して511E8をコーティングした場合のインテグリン結合活性の測定結果を図2に示した。ゼラチンを添加した場合も、HSAを添加した場合と同様の結果が得られた。すなわち、500μg/mLのゼラチンを添加した場合、511E8のインテグリン結合活性の明確な増加が観察され、特に低濃度の511E8でコーティングした場合にその活性増強効果は顕著であった。2.7nMの511E8でコーティングした場合、インテグリン結合活性は2倍以上に増加した。50μg/mLのゼラチンの添加によっても20%〜60%の活性増加が観察された。
以上の結果は、HSAやゼラチンの共存下で511E8をコーティングすると、511E8を単独でコーティングした場合と比較して、511E8のインテグリン結合活性が有意に増加することを示している。また、添加するHSA、ゼラチンの濃度が高いほどインテグリン結合活性の増加が大きいことがわかった。
〔実施例2:他の蛋白質によるラミニン521E8フラグメントのインテグリン結合活性の増強〕
HSAやゼラチンの添加によるインテグリン結合活性の増加が511E8だけでなく、他のラミニンE8フラグメントでも観察されるかを、521E8を用いて検討した。
実験方法
(1)プレートのコーティング
511E8を521E8に代えた以外は実施例1と同じ手順で、プレートのコーティングを行った。
(2)インテグリン結合アッセイ
実施例1と同じ方法で、インテグリン結合活性を測定した。
実験結果
(1)HSAの効果
50μg/mLまたは500μg/mLのHSAを添加して521E8をコーティングした場合のインテグリン結合活性の測定結果を図3に示した。511E8と同様、500μg/mLのHSAを添加すると521E8のインテグリン結合活性は有意に増加した。インテグリン結合活性の増加は、低濃度の521E8でコーティングした場合に、より著明に観察され、2.7nMの521E8でコーティングした場合、500μg/mLのHSAの添加によりインテグリン結合活性は60%以上増加した。50μg/mLのHSAの添加によっても10%〜20%の活性増加が観察された。
(2)ゼラチンの効果
50μg/mLまたは500μg/mLのゼラチンを添加して521E8をコーティングした場合のインテグリン結合活性の測定結果を図4に示した。ゼラチンを添加した場合も、HSAを添加した場合と同様の結果が得られた。すなわち、500μg/mLのゼラチンを添加した場合、521E8のインテグリン結合活性の明確な増加が観察され、特に低濃度の521E8でコーティングした場合にその活性増強効果は顕著であった。2.7nMの521E8でコーティングした場合、インテグリン結合活性は80%以上増加した。また、50μg/mLのゼラチンの添加によっても10%〜60%の活性増加が観察された。
以上の結果から、511E8および521E8のいずれにおいても、50μg/mL〜500μg/mLのHSAまたはゼラチンを添加してプレートをコーティングすることにより、インテグリン結合活性が有意に増加することが明らかになった。また、いずれの場合も添加するHSAやゼラチンの濃度が高いほど、インテグリン結合活性の増加は顕著であった。
〔実施例3:他の蛋白質を添加して511E8をコーティングした培養プレート上でのヒトiPS細胞の培養〕
実験方法
細胞培養用6ウェルプレート(ベクトン・ディッキンソン cat#353046;培養面積 9.6cm2)を511E8単独で、またはHSA(Biological Industries cat#05-720-1B)もしくはゼラチン(ニッピ APAT)を添加した511E8を用いてコーティングし、細胞培養用基質としての511E8の活性が増強されるかを検討した。培養する細胞としては、ヒトinduced pluripotent stem(iPS)細胞201B7株を用い、培養方法はNakagawaら(Masato Nakagawa, Yukimasa Taniguchi, Sho Senda, Nanako Takizawa, Tomoko Ichisaka, Kanako Asano, Asuka Morizane, Daisuke Doi, Jun Takahashi, Masatoshi Nishizawa, Yoshinori Yoshida, Taro Toyoda, Kenji Osafune, Kiyotoshi Sekiguchi, Shinya Yamanaka, “A novel efficient feeder-free culture system for the derivation of human induced pluripotent stem cells” Scientific Reports 4, 3594, 2014, doi:10.1038/srep03594)に記載の方法に従った。具体的には、終濃度500μg/mLのHSAまたはゼラチンを含むPBS(Gibco、cat#10010-049、pH 7.4)で32nM、16nM、8nMになるように511E8を段階希釈した後、各ウェルに0.5μg/cm2、0.25μg/cm2、0.125μg/cm2になるように511E8を加えて、4℃で一晩(約18時間)緩やかに振盪しながらプレートをコーティングした。対照として、HSAおよびゼラチンを含まないPBSで希釈した511E8を0.5μg/cm2、0.25μg/cm2、0.125μg/cm2になるように加えて、同様にプレートをコーティングした。コーティング溶液を除いたのち、TrypLE Select(ライフテクノロジーズ、cat#A12859-01)を用いて単一細胞に分散した201B7細胞を1.35×103個/cmとなるように播種し、1週間培養した。培地にはTeSR2(ステムセルテクノロジーズ、cat#05860)とNutriStem(バイオロジカルインダストリーズ、cat#05-100-1)の1:1混合液を用いた。培地は1日おきに交換した。培養開始1週間後に、細胞をアルカリホスファターゼ染色した。アルカリホスファターゼ染色は白血球アルカリホスファターゼキット(シグマ・アルドリッチ、cat#86R-1KT)を用いて、キットに添付の推奨プロトコールに従って行った。
実験結果
細胞をアルカリホスファターゼ染色した結果を図5に示した。0.5μg/cm2で511E8をコーティングした場合、HSAまたはゼラチンを添加しても生じた細胞のコロニー数やコロニーの大きさに有意な差は認められなかった。一方、0.25μg/cm2または0.125μg/cm2で511E8をコーティングした場合は、HSAまたはゼラチンを添加して511E8をコーティングすることによりコロニー数の有意な増加が認められた。さらに、HSAまたはゼラチンを添加して511E8をコーティングすることにより、ヒトiPS細胞の培養に推奨される511E8のコーティング濃度(0.5μg/cm2:非特許文献2)の1/2量のコーティング濃度(0.25μg/cm2)でもほぼ同等のiPS細胞の増殖が認められた。さらに、終濃度500μg/mLのHSAを添加した場合には、推奨されるコーティング濃度の1/4量のコーティング濃度(0.125μg/cm2)でも十分なiPS細胞の増殖が観察された。また、HSAまたはゼラチンを添加して511E8をコーティングしたプレート上で培養したヒトiPS細胞は、アルカリホスファターゼ活性染色で強く染色されることから、未分化性が維持されていると考えられた。
〔実施例4:他の蛋白質を添加して521E8をコーティングした培養プレート上でのヒトiPS細胞の培養〕
実験方法
細胞培養用24ウェルプレート(ベクトン・ディッキンソン cat#353047;培養面積1.88 cm2)を521E8単独で、またはHSA(Biological Industries cat#05-720-1B)もしくはゼラチン(ニッピ APAT)を添加した521E8を用いてコーティングし、細胞培養用基質としての521E8の活性が増強されるかを、実施例3に記載の方法に準じて検討した。具体的には、終濃度500μg/mLのHSAまたはゼラチンを含むPBS(Gibco、cat#10010-049、pH 7.4)で希釈した521E8を各ウェルに0.25μg/cm2になるように加えて、4℃で一晩(約18時間)緩やかに振盪しながらプレートをコーティングした。対照として、HSAおよびゼラチンを含まないPBSで希釈した521E8を0.5μg/cm2または0.25μg/cm2になるように加えて、同様にプレートをコーティングした。コーティング溶液を除いたのち、TrypLE Select(ライフテクノロジーズ、cat#A12859-01)を用いて単一細胞に分散した201B7細胞を4.15×103個/cmとなるように播種して、1週間培養した。培地にはTeSR2とNutriStemの1:1混合液を用いた。培地は1日おきに交換した。培養開始1週間後に、細胞をアルカリホスファターゼ染色した。アルカリホスファターゼ染色は白血球アルカリホスファターゼキット(シグマ・アルドリッチ、cat#86R-1KT)を用いて、キットに添付の推奨プロトコールに従って行った。
実験結果
細胞をアルカリホスファターゼ染色した結果を図6に示した。HSAおよびゼラチンを添加せずに521E8をコーティングした場合、0.5μg/cm2でコーティングしたプレート上では多数のコロニーがみられ、十分なiPS細胞の増殖が観察されたが、0.25μg/cm2でコーティングしたプレート上では、iPS細胞は増殖するものの、ウェル全体にわたるコロニーの成長はみられなかった。一方、500μg/mLのHSAまたはゼラチンを添加して521E8を0.25μg/cm2でコーティングしたプレート上では、ウェルの全面にわたってコロニーが生じており、HSAおよびゼラチンを添加せずに521E8を0.25μg/cm2でコーティングしたプレートと比較してiPS細胞の増殖が有意に亢進していた。また、521E8を0.5μg/cm2でコーティングしたプレートと比較しても、同等以上のiPS細胞の増殖が認められた。また、HSAまたはゼラチンを添加して521E8をコーティングしたプレート上で培養したヒトiPS細胞は、アルカリホスファターゼ活性染色で強く染色されることから、未分化性が維持されていると考えられた。
これらの結果は、HSAまたはゼラチンの添加によるラミニンE8フラグメントの活性の増強が511E8だけでなく、521E8でも生じることを示すとともに、HSAまたはゼラチンを添加することにより、プレートにコーティングするラミニンE8フラグメント量を半減できることを示している。コーティングに用いるラミニンE8フラグメント量を減らすことができれば、iPS細胞の培養に要する経費を節約することができ、大きなメリットがある。
〔実施例5:他の蛋白質の添加による511E8を含むコーティング溶液の長期安定化〕
HSAやゼラチン等の他の蛋白質を含むPBS(Gibco、cat#10010-049、pH 7.4)でコーティング濃度付近まで希釈した511E8が、その活性を長期間安定に保持できるかどうかを、インテグリン結合活性を指標として検討した。
実験方法
500μg/mLのゼラチン(ニッピ APAT)を含むPBSで511E8を32nM(4.8μg/mL)に希釈したのち、ガラス瓶に入れて4℃で保存した。また、ゼラチンを含まないPBSで32nMに希釈した511E8を調製し、同様にガラス瓶に入れて4℃で保存した。16週間保存したコーティング溶液を22nM, 11nM, 5.5nM, 0nMとなるように希釈したのち、96ウェルプレート(ベクトン・ディッキンソン cat#353072)に50μL/well加え、4℃で一晩ゆるやかに振盪しながらプレートをコーティングした。対照として、コーティング直前に511E8濃度が22nM, 11nM, 5.5nM, 0nMとなるようにPBSで希釈した新たなコーティング溶液を調製し、96ウェルプレートに50μL/well加え、同様にプレートをコーティングした。インテグリン結合活性は、実施例1と同じ方法で測定した。
実験結果
結果を図7に示した。用時調製したコーティング溶液でコーティングしたプレートと比較して、ゼラチンを添加せずに4℃で16週間保存したコーティング溶液を使用した場合は、5.5〜22 nMのいずれのコーティング濃度においても有意なインテグリン結合活性の低下が認められた。一方、500μg/mLのゼラチンを添加して16週間保存したコーティング溶液を使用した場合は、標準的なコーティング濃度である22 nM(0.5μg/cm2に相当)において、長期保存によるインテグリン結合活性の低下は認められなかった。驚くべきことに、5.5 nMまたは11 nMのコーティング濃度ではインテグリン結合活性の有意な増加が観察された。さらに、5.5 nMあるいは11 nMでも22 nMとほぼ同等のインテグリン結合活性が得られており、4℃で16週間保存後でもゼラチンによる511E8の賦活化効果が維持されていることが確認された。
〔実施例6:他の蛋白質の添加による521E8を含むコーティング溶液の長期安定化〕
HSAやゼラチン等の他の蛋白質を含むPBS(Gibco、cat#10010-049、pH 7.4)でコーティング濃度付近まで希釈した521E8が、その活性を長期間安定に保持できるかどうかを、ヒトiPS細胞の増殖を指標として検討した。
実験方法
500μg/mLまたは2000μg/mLのHSA(Biological Industries cat#05-720-1B)を含むPBSで521E8を16nM(2.4μg/mL)、8nM(1.2μg/mL)に希釈したのち、ポリプロピレン製50mLチューブ(IWAKI Cat.No.2345-050, Asahi Glass Co., Ltd)に入れて4℃で保存した。また、HSAを含まないPBSで16nM(2.4μg/mL)、8nM(1.2μg/mL)に希釈した521E8を調製し、同様にポリプロピレン製50mLチューブに入れて4℃で保存した。13週間保存した521E8コーティング溶液を細胞培養用24ウェルプレート(ベクトン・ディッキンソン cat#353047;培養面積1.88cm2)に0.25μg/cm2または0.125μg/cm2になるように加え、4℃で一晩ゆるやかに振盪しながらプレートをコーティングした。対照として、コーティング直前にHSAを含まないPBSで希釈した521E8を新たに調製し、0.25μg/cm2または0.125μg/cm2になるように加えて、同様にプレートをコーティングした。コーティング溶液を除いたのち、TrypLE Select(ライフテクノロジーズ、cat#A12859-01)を用いて単一細胞に分散したヒトiPS細胞409B2株を1.3×104個/wellとなるように播種して、6日間培養した。培地にはTeSR2とNutriStemの1:1混合液を用いた。培地は1日おきに交換した。培養開始6日後に、細胞をアルカリホスファターゼ染色した。アルカリホスファターゼ染色は白血球アルカリホスファターゼキット(シグマ・アルドリッチ、cat#86R-1KT)を用いて、キットに添付の推奨プロトコールに従って行った。
実験結果
細胞をアルカリホスファターゼ染色した結果を図8に示した。HSAを添加せずに521E8をコーティングした場合、0.25μg/cm2でコーティングしたプレート上では多数のコロニーがみられ、十分なiPS細胞の増殖が観察されたが、0.125μg/cm2でコーティングしたプレート上では、iPS細胞は増殖するものの、ウェル全体にわたるコロニーの成長はみられなかった。このiPS細胞の増殖性の違いは、コーティング溶液を用事調製したか、調製後13週間冷蔵保存したかにかかわらず観察された。一方、500μg/mLあるいは2000μg/mL のHSAを添加して13週間冷蔵保存した521E8を0.125μg/cm2でコーティングしたプレート上では、ウェルの全面にわたってコロニーが生じており、HSAを添加せずにコーティングしたプレートと比較してiPS細胞の増殖が有意に亢進していた。また、521E8を0.25μg/cm2でコーティングしたプレートと比較しても、同等のiPS細胞の増殖が認められた。また、HSAを添加して521E8をコーティングしたプレート上で培養したヒトiPS細胞は、アルカリホスファターゼ活性染色で強く染色されることから、未分化性が維持されていると考えられた。
〔実施例7:511E8および他の蛋白質を含む1×コーティング溶液の長期保存試験〕
実験方法
(1)1×コーティング溶液の調製および保存
500μg/mLまたは2000μg/mLのHSA(Biological Industries cat#05-720-1B)を含むPBS(ナカライ)で511E8を3.2μg/mLおよび1.6μg/mLにそれぞれ希釈したのち、ポリプロピレン製50mLチューブ(ベクトン・ディッキンソン)に入れて4℃で保存した。また、500μg/mLまたは2000μg/mLのゼラチン(ニッピ APAT)を含むPBSで511E8を3.2μg/mLおよび1.6μg/mLにそれぞれ希釈したのち、ポリプロピレン製50mLチューブに入れて4℃で保存した。対照として、HSA、ゼラチン等の他の蛋白質を含まないPBSで511E8を3.2μg/mLおよび1.6μg/mLにそれぞれ希釈し、同様にポリプロピレン製50mLチューブに入れて4℃で保存した。
(2)プレートのコーティング
12か月間冷蔵保存したコーティング溶液を用いて、細胞培養用24ウェルプレート(ベクトン・ディッキンソン cat#353047;培養面積1.88cm2)または細胞培養用6ウェルプレート(ベクトン・ディッキンソン cat#353046;培養面積 9.6cm2)をコーティングした。511E8のコーティング濃度が0.5μg/cm2(511E8濃度が3.2μg/mLの場合)または0.25μg/cm2(511E8濃度が1.6μg/mLの場合)になるように、コーティング液量を、24ウェルプレートでは300μL/well、6ウェルプレートでは1.5mL/wellとした。コーティング溶液をウェルに添加した後、4℃で一晩ゆるやかに振盪しながらプレートをコーティングした。対照として、コーティング直前に、HSA、ゼラチン等の他の蛋白質を含まないPBSで希釈した511E8を新たに調製し、0.5μg/cm2または0.25μg/cm2になるように加えて、同様にプレートをコーティングした。
(3)ヒトiPS細胞の培養
コーティング溶液を除いたのち、TrypLE Select(ライフテクノロジーズ、cat#A12859-01)を用いて単一細胞に分散したヒトiPS細胞409B2株を、24ウェルプレートには1.3×104個/well、6ウェルプレートには5.2×104個/wellとなるように播種して、1週間培養した。培地にはTeSR2とNutriStemの1:1混合液を用いた。細胞播種時のみ細胞死を抑制するためのROCK阻害剤(Y-27632、和光純薬)を最終濃度が10μMとなるよう培地に添加した。細胞播種した翌日に培地交換し、その後5日目までは1日おきに、5日目以降は毎日培地交換した。1週間目に80〜90%コンフルエントに達したので、以下の試験に供した。
(4)アルカリホスファターゼ染色
24ウェルプレートで培養したヒトiPS細胞をアルカリホスファターゼ染色に供した。アルカリホスファターゼ染色は、実施例6と同様に、白血球アルカリホスファターゼキット(シグマ・アルドリッチ、cat#86R-1KT)を用いて、キットに添付の推奨プロトコールに従って行った。
(5)フローサイトメトリー解析
6ウェルプレートで培養したヒトiPS細胞をフローサイトメトリー解析に供した。フローサイトメトリー解析は山田ら(Yamada et al., Biochem. J., 2008)に記載の方法に基づいて、一部変更した方法で実施した。使用した未分化マーカーに対する抗体は、FITC標識マウスIgG3(コントロール)、FITC標識抗マウスSSEA4抗体、FITC標識抗マウスTra 1-60抗体、Alexa flour 488標識IgG1(コントロール)(以上は細胞表面マーカー用)、およびAlexa flour 488標識抗OCT3/4抗体(細胞内マーカー)である。これらの抗体は、いずれもBD Pharmingen社製である。
培地を除き、TrypLE Selectを用いて単一細胞に分散したiPS細胞をPBSで希釈したホルマリン(ホルマリン:PBS=1:10)を用いて室温で10分間固定した。固定した細胞をPBSで2度洗浄した後、100μLのPBSで懸濁し、80μLと20μLの細胞懸濁液に二分した。
80μL細胞懸濁液は細胞表面マーカー用(IgG3、SSEA4、Tra 1-60、IgG1)として使用した。1500rpmで遠心後上清を除去し、80μLの1.5%牛胎児血清(FBS、ライフテクノロジーズ)/PBSを加えて再懸濁した。細胞懸濁液を4等分(20μL/tube)し、15分間氷上に静置してブロッキングを行なった。ブロッキング後、20μLの各抗体をそれぞれチューブに添加し、氷上で遮光して1時間インキュベーションした。
20μLの細胞懸濁液は細胞内マーカー用(OCT3/4)として使用した。細胞懸濁液にTriton X-100濃度が0.1%となるように20μLの0.2%Triton X-100/PBSを加えて15分間室温で細胞透過処理を行った。遠心後上清を除去し、100μLの1.5%FBS/PBSを添加し、室温で15分間ブロッキングを行った。ブロッキング後、20μLの抗OCT3/4抗体を添加し、室温で遮光して1時間インキュベーションした。
各抗体で染色した細胞をPBSで洗浄し、500μLのPBSに再懸濁した。フローサイトメーター(FACScan;BD社製)を用いて解析を行った。
実験結果
(1)アルカリホスファターゼ染色
細胞をアルカリホスファターゼ染色した結果を図9および図10に示した。図9は他の蛋白質としてHSAを用いた結果、図10は他の蛋白質としてゼラチンを用いた結果である。他の蛋白質を添加せずに511E8をコーティングした場合、0.25μg/cm2でコーティングしたプレート上では、iPS細胞は増殖するものの、ウェル全体にわたるコロニーの成長はみられなかった(図9,10の左から2,3番目)。これは用事調製したコーティング溶液を用いた場合も、12か月間保存したコーティング溶液を用いた場合も同じであった。他の蛋白質を添加しないコーティング溶液を用事調製し、0.5μg/cm2でコーティングしたプレート上では、十分なiPS細胞の増殖が観察された(図9,10の左端)。
一方、図9および図10から明らかなように、500μg/mLあるいは2000μg/mL のHSAまたはゼラチンを添加して12か月間保存した511E8を0.25μg/cm2でコーティングしたプレート上では、ウェルの全面にわたってコロニーが生じており、用事調製したコーティング溶液を用いて0.5μg/cm2でコーティングしたプレートと同等のiPS細胞の増殖が認められた。すなわち、12か月間保存後の1×コーティング溶液を用いても、ヒトiPS細胞の培養に推奨される511E8のコーティング濃度(0.5μg/cm2:非特許文献2)の1/2量のコーティング濃度(0.25μg/cm2)で同等のiPS細胞の増殖が得られることが示された。また、HSAまたはゼラチンを添加して511E8をコーティングしたプレート上で培養したヒトiPS細胞は、アルカリホスファターゼ活性染色で強く染色されることから、未分化性が維持されていると考えられた。
(2)フローサイトメトリー解析
解析の結果を図11および図12に示した。図11は他の蛋白質としてHSAを用いた結果、図12は他の蛋白質としてゼラチンを用いた結果である。いずれの群においても、未分化マーカー(SSEA4、Tra 1-60、OCT3/4)の蛍光強度(FL-1値)は、IgGコントロールより高くなっており、未分化性が維持されていることが示された。その値はHASまたはゼラチンの添加および12か月の保存により低下しなかった。
〔実施例8:521E8および他の蛋白質を含む1×コーティング溶液の長期保存試験〕
実験方法
(1)1×コーティング溶液の調製および保存
500μg/mLまたは2000μg/mLのHSA(Biological Industries cat#05-720-1B)を含むPBS(ナカライ)で521E8を3.2μg/mL、1.6μg/mLおよび0.8μg/mLにそれぞれ希釈したのち、ポリプロピレン製50mLチューブ(ベクトン・ディッキンソン)に入れて4℃で保存した。また、500μg/mLまたは2000μg/mLのゼラチン(ニッピ APAT)を含むPBSで521E8を3.2μg/mL、1.6μg/mLおよび0.8μg/mLにそれぞれ希釈したのち、ポリプロピレン製50mLチューブに入れて4℃で保存した。対照として、HSA、ゼラチン等の他の蛋白質を含まないPBSで521E8を3.2μg/mL、1.6μg/mLおよび0.8μg/mLにそれぞれ希釈し、同様にポリプロピレン製50mLチューブに入れて4℃で保存した。
(2)プレートのコーティング
12か月間冷蔵保存したコーティング溶液を用いて、実施例7と同じ方法で、細胞培養用24ウェルプレートおよび細胞培養用6ウェルプレートに521E8をコーティングした。521E8のコーティング濃度は、0.5μg/cm2(521E8濃度が3.2μg/mLの場合)、0.25μg/cm2(521E8濃度が1.6μg/mLの場合)または0.125μg/cm2(521E8濃度が0.8μg/mLの場合)とした。対照として、コーティング直前に、HSA、ゼラチン等の他の蛋白質を含まないPBSで希釈した521E8を新たに調製し、0.5μg/cm2、0.25μg/cm2または0.125μg/cm2になるように加えて、同様にプレートをコーティングした。
(3)ヒトiPS細胞の培養
実施例7と同じ方法で行った。
(4)アルカリホスファターゼ染色
実施例7と同じ方法で行った。
(5)FACS解析
実施例7と同じ方法で行った。
実験結果
(1)アルカリホスファターゼ染色
細胞をアルカリホスファターゼ染色した結果を図13および図14に示した。図13は他の蛋白質としてHSAを用いた結果、図14は他の蛋白質としてゼラチンを用いた結果である。他の蛋白質を添加せずに521E8をコーティングした場合、0.125μg/cm2でコーティングしたプレート上では、iPS細胞はほとんど増殖せず(図13の左から2,3番目)、0.25μg/cm2でコーティングしたプレート上では、iPS細胞は増殖するものの、ウェル全体にわたるコロニーの成長はみられなかった(図13の左端、図14の左から2,3番目)。これは用事調製したコーティング溶液を用いた場合も、12か月間保存したコーティング溶液を用いた場合も同じであった。他の蛋白質を添加しないコーティング溶液を用事調製し、0.5μg/cm2でコーティングしたプレート上では、十分なiPS細胞の増殖が観察された(図14の左端)。
一方、図13から明らかなように、500μg/mLあるいは2000μg/mL のHSAを添加して12か月間保存した521E8を0.125μg/cm2でコーティングしたプレート上では、ウェルの全面にわたってコロニーが生じており、用事調製したコーティング溶液を用いて0.25μg/cm2でコーティングしたプレートより顕著に優れたiPS細胞の増殖が認められた。また、図14から明らかなように、500μg/mLあるいは2000μg/mL のゼラチンを添加して12か月間保存した521E8を0.25μg/cm2でコーティングしたプレート上では、ウェルの全面にわたってコロニーが生じており、用事調製したコーティング溶液を用いて0.5μg/cm2でコーティングしたプレートと同等のiPS細胞の増殖が認められた。すなわち、12か月間保存後の1×コーティング溶液を用いても、他の蛋白質を用いずに用時調製した場合に十分なiPS細胞の増殖が認められたコーティング濃度(0.5μg/cm2)の1/4〜1/2量のコーティング濃度(0.125〜0.25μg/cm2)で同等のiPS細胞の増殖が得られることが示された。また、HSAまたはゼラチンを添加して521E8をコーティングしたプレート上で培養したヒトiPS細胞は、アルカリホスファターゼ活性染色で強く染色されることから、未分化性が維持されていると考えられた。
(2)フローサイトメトリー解析
解析の結果を図15および図16に示した。図15は他の蛋白質としてHSAを用いた結果、図16は他の蛋白質としてゼラチンを用いた結果である。いずれの群においても、未分化マーカー(SSEA4、Tra 1-60、OCT3/4)の蛍光強度(FL-1値)は、IgGコントロールより高くなっており、未分化性が維持されていることが示された。その値はHSAの添加および12か月の保存により低下しなかった。なお、他の蛋白質を添加せずに521E8を12か月間保存したコーティング溶液を用いて0.125μg/cm2でコーティングした群は、FACS解析に供する十分な細胞数が得られず、解析不可能であった。
以上の結果は、HSAやゼラチン等の他の蛋白質を添加することにより、用時希釈の必要がない濃度まで希釈したラミニンE8の細胞培養基質としての活性を増強できるだけでなく、1×コーティング溶液の状態で1年以上の長期間安定に冷蔵保存できることを示している。また、HSAやゼラチン等の他の蛋白質の添加は、ヒト多能性幹細胞の未分化性維持に悪影響を及ぼさないことも示している。
細胞培養器具のコーティングに用いる511E8は凍結乾燥品として市販されている(商品名:iMatrix-511、(株)ニッピ)。これをヒト多能性幹細胞の培養基質として使用する際は、この凍結乾燥品を200〜1000μg/mLになるように溶解し、分注後、再度冷凍保存したものを511E8保存液として使用することが推奨されている。例えば培養プレートをコーティングする際は、凍結した保存液を解凍し、PBS等で3〜5μg/mLに希釈後、0.5μg/cm2になるように各ウェルに加え、培養プレートのコーティングを行う。すなわち、培養プレートをコーティングするごとに、保存液の解凍と希釈を行う必要がある。本発明によれば、HSAやゼラチン等の蛋白質をコーティング溶液に添加することにより、予めコーティング濃度に希釈した511E8溶液を作製し、その活性を損なうことなく4℃で長期間安定に保管することが可能となる。これにより、細胞培養を行う作業者の負担を減じることができるだけでなく、コーティング溶液の調製時に生じ得るヒューマンエラーを回避することができ、さらにコーティングに用いる511E8使用量を節約できるというメリットも生まれる。
〔実施例9:他の蛋白質による211E8および411E8のインテグリン結合活性の増強〕
HSAやゼラチンの添加によるインテグリン結合活性の増加が511E8や521E8だけでなく、他のラミニンE8フラグメントでも観察されるかを、211E8および411E8を用いて検討した。
実験方法
(1)プレートのコーティング
500μg/mLのヒト血清アルブミン(Biological Industries cat#05-720-1B;以下HSAと記す)を含むPBS(Gibco、cat#10010-049、pH 7.4)で終濃度が25nM、10nM、5nM、0nMになるように211E8または411E8を段階希釈したのち、それぞれ96ウェルプレート(ベクトン・ディッキンソン #353072、培養面積0.32cm2/well)に50μL/well加え、4℃で一晩ゆるやかに振盪しながらコーティングを行った。
(2)インテグリン結合アッセイ
実施例1に記載の方法に従い、インテグリン結合活性を測定した。ただし、411E8に対してはα6β1インテグリン溶液(30nM α6β1インテグリン、19.6mM Tris、127mM NaCl、0.0056% Tween-20、0.1% BSA、1mM MnCl2)を用い、211E8に対してはα7X2β1インテグリン溶液(30nM α7X2β1インテグリン、19.6mM Tris、127mM NaCl、0.0056% Tween-20、0.1% BSA、1mM MnCl2)を用いて、インテグリン結合アッセイを行った。アッセイに用いた組換えα7X2β1インテグリンは、Taniguchiら(Yukimasa Taniguchi, Hiroyuki Ido, Noriko Sanzen Maria Hayashi, Ryoko Sato-Nishiguti, Sugiko Futaki, and Kiyotoshi Sekiguchi, “The C-terminal region of laminin β chains modulates the integrin binding affinities of laminins” The Journal of Biological Chemistry, 284, 7820-7831, 2009)に記載の方法に従い、調製した。
実験結果
500μg/mLのHSAを添加して211E8をコーティングした場合のインテグリン結合活性の測定結果を図17に示した。511E8や521E8と同様、低濃度(5nMおよび10nM)の211E8でコーティングした場合に、HSAの添加による有意なインテグリン結合活性の増加が観察された。211E8のコーティング濃度が25nMの場合には、521E8をコーティングした場合と同様、インテグリン結合活性の増加は認められなかった。
500μg/mLのHSAを添加して411E8をコーティングした場合のインテグリン結合活性の測定結果を図18に示した。HSAの添加によるインテグリン結合活性の増加は、411E8をコーティングした場合に、より顕著に認められた。図18に示すように、低濃度(5nMおよび10nM)の411E8でコーティングした場合、HSAを添加しないとインテグリン結合活性はごく微弱にしか検出されなかったが、500μg/mLのHSAを添加すると非常に強いインテグリン結合活性が検出された。25nMの411E8でコーティングした場合は、HSAによるインテグリン結合活性の著明な増強は観察されなかった。
〔実施例10:他の蛋白質によるラミニンフラグメント改変体のインテグリン結合活性の増強〕
HSAやゼラチンの添加によるインテグリン結合活性の増加がラミニンE8フラグメントと細胞接着分子または増殖因子結合分子のキメラ分子でも観察されるかを、増殖因子結合分子と511E8とのキメラ分子を用いて検討した。増殖因子結合分子と511E8とのキメラ分子としては、511E8のN末端部にヒトパールカンのドメインI〜IIIを融合させたラミニンフラグメント改変体(Plus#3ラミニンE8)および511E8のC末端部にヒトパールカンのドメインIを融合させたラミニンフラグメント改変体(Plus#5ラミニンE8)の2種類の511E8改変体を用いた。Plus#3ラミニンE8およびPlus#5ラミニンE8は、国際公開WO2014/199754に記載の方法により調製し、インテグリン結合活性の測定に供した。
実験方法
(1)プレートのコーティング
500μg/mLのヒト血清アルブミン(Biological Industries cat#05-720-1B;以下HSAと記す)を含むPBS(Gibco、cat#10010-049、pH 7.4)で終濃度が22nM、11nM、5.5nM、0nMになるようにPlus#3ラミニンE8またはPlus#5ラミニンE8を段階希釈したのち、それぞれ96ウェルプレート(ベクトン・ディッキンソン #353072、培養面積0.32cm2/well)に50μL/well加え、4℃で一晩ゆるやかに振盪しながらコーティングを行った。
(2)インテグリン結合アッセイ
実施例1に記載の方法に従い、α6β1インテグリン溶液(10nM α6β1インテグリン、19.6mM Tris、127mM NaCl、0.0056% Tween-20、0.1% BSA、1mM MnCl2)を用いてインテグリン結合活性を測定した。
実験結果
500μg/mLのHSAを添加してPlus#3ラミニンE8およびPlus#5ラミニンE8をコーティングした場合のインテグリン結合活性の測定結果を図19および図20に示した。いずれのラミニンフラグメント改変体においても、コーティング濃度が5.5nMおよび11nMの場合に、500μg/mLのHSAを添加してコーティングすることによって、インテグリン結合活性の有意な増加が観察された。一方、22nMでラミニンフラグメント改変体をコーティングした場合には、500μg/mLのHSAを添加してもインテグリン結合活性の増加は観察されなかった。
以上の結果は、HSAやゼラチン等、その他の蛋白質を高濃度で添加することにより、511E8、521E8、211E8、411E8のようなラミニンE8フラグメントだけでなく、増殖制御分子(細胞接着分子や増殖因子結合分子)とラミニンE8フラグメントのキメラ分子の活性を増強することが可能であることを示している。すなわち、本発明によるラミニンフラグメントの活性増強法は、ラミニンフラグメントおよびその改変体(増殖制御分子とのキメラ分子を含む)に広く適用可能である。
なお本発明は上述した各実施形態および実施例に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。また、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考として援用される。

Claims (14)

  1. インテグリン結合活性を有するラミニンフラグメントまたはその改変体の哺乳動物培養細胞に対する活性を増強する方法であって、
    前記ラミニンフラグメントまたはその改変体、および、ラミニンまたはそのフラグメント以外の蛋白質を含むコーティング溶液を細胞培養器具の培養面に接触させ、前記ラミニンフラグメントまたはその改変体を培養面にコーティングすることを含み、
    前記コーティング溶液は、0.5μg/cmより低いコーティング濃度になる量の前記ラミニンフラグメントまたはその改変体を含み、
    前記ラミニンまたはそのフラグメント以外の蛋白質濃度が前記ラミニンフラグメントまたはその改変体の濃度の10倍以上、かつ、50μg/mL以上であり、
    前記ラミニンまたはそのフラグメント以外の蛋白質の分子量が10000以上であり、
    前記哺乳動物培養細胞に対する活性が、細胞表面の接着受容体に対する結合活性、細胞接着活性、細胞増殖活性およびコロニー形成活性から選択される少なくとも一種であることを特徴とする活性増強方法。
  2. 前記コーティング溶液の前記ラミニンまたはそのフラグメント以外の蛋白質濃度が前記ラミニンフラグメントまたはその改変体の濃度の40倍以上、かつ、200μg/mL以上であることを特徴とする請求項1に記載の活性増強方法。
  3. 前記コーティング溶液の前記ラミニンまたはそのフラグメント以外の蛋白質濃度が前記ラミニンフラグメントまたはその改変体の濃度の100倍以上、かつ、500μg/mL以上であることを特徴とする請求項2に記載の活性増強方法。
  4. 前記ラミニンまたはそのフラグメント以外の蛋白質が、ゼラチン、血清アルブミン、トランスフェリン、ミエリン塩基性蛋白質、β−ラクトグロブリン、グルタチオン−S−トランスフェラーゼおよびコラーゲンからなる群より選択される1種以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の活性増強方法。
  5. ラミニンフラグメントが、ラミニンα5β1γ1、ラミニンα5β2γ1、ラミニンα4β1γ1およびラミニンα2β1γ1から選択される少なくとも1種由来であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の活性増強方法。
  6. ラミニンフラグメントが、ラミニンE8フラグメントであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の活性増強方法。
  7. インテグリン結合活性を有するラミニンフラグメントまたはその改変体がコーティングされている細胞培養器具を用いる哺乳動物細胞の培養方法であって、
    前記細胞培養器具は、前記ラミニンフラグメントまたはその改変体、および、ラミニンまたはそのフラグメント以外の蛋白質を含むコーティング溶液を細胞培養器具の培養面に接触させることにより作製され、
    前記コーティング溶液は、0.5μg/cmより低いコーティング濃度になる量の前記ラミニンフラグメントまたはその改変体を含み、
    前記ラミニンまたはそのフラグメント以外の蛋白質濃度が前記ラミニンフラグメントまたはその改変体の濃度の10倍以上、かつ、50μg/mL以上であり、
    前記ラミニンまたはそのフラグメント以外の蛋白質の分子量が10000以上であることを特徴とする培養方法。
  8. 前記コーティング溶液の前記ラミニンまたはそのフラグメント以外の蛋白質濃度が前記ラミニンフラグメントまたはその改変体の濃度の40倍以上、かつ、200μg/mL以上であることを特徴とする請求項7に記載の培養方法。
  9. 前記コーティング溶液の前記ラミニンまたはそのフラグメント以外の蛋白質濃度が前記ラミニンフラグメントまたはその改変体の濃度の100倍以上、かつ、500μg/mL以上であることを特徴とする請求項8に記載の培養方法。
  10. ラミニンフラグメントが、ラミニンα5β1γ1、ラミニンα5β2γ1、ラミニンα4β1γ1およびラミニンα2β1γ1から選択される少なくとも1種由来であることを特徴とする請求項7〜9のいずれかに記載の培養方法。
  11. ラミニンフラグメントが、ラミニンE8フラグメントであることを特徴とする請求項7〜10のいずれかに記載の培養方法。
  12. 細胞培養器具の培養面にラミニンフラグメントまたはその改変体をコーティングするための溶液であって、
    インテグリン結合活性を有するラミニンフラグメントまたはその改変体、および、ラミニンまたはそのフラグメント以外の蛋白質を含み、
    前記ラミニンフラグメントまたはその改変体の濃度が5μg/mL以下であり、前記ラミニンまたはそのフラグメント以外の蛋白質の濃度が前記ラミニンフラグメントまたはその改変体の濃度の10倍以上、かつ、50μg/mL以上であり、
    前記ラミニンまたはそのフラグメント以外の蛋白質の分子量が10000以上であることを特徴とするコーティング溶液。
  13. 細胞培養器具の培養面におけるラミニンフラグメントまたはその改変体のコーティング濃度が、0.5μg/cmより低いコーティング濃度になるように、前記ラミニンフラグメントまたはその改変体の濃度が調整されていることを特徴とする請求項12に記載のコーティング溶液。
  14. 前記ラミニンフラグメントが、ラミニンE8フラグメントであることを特徴とする請求項12または13に記載のコーティング溶液。
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