JP6274636B2 - 晶析方法 - Google Patents

晶析方法 Download PDF

Info

Publication number
JP6274636B2
JP6274636B2 JP2012146768A JP2012146768A JP6274636B2 JP 6274636 B2 JP6274636 B2 JP 6274636B2 JP 2012146768 A JP2012146768 A JP 2012146768A JP 2012146768 A JP2012146768 A JP 2012146768A JP 6274636 B2 JP6274636 B2 JP 6274636B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
heat medium
raw material
scale
temperature
crystallization
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2012146768A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2014008457A (ja
Inventor
泰孝 中島
泰孝 中島
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Mitsubishi Chemical Corp
Original Assignee
Mitsubishi Chemical Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Mitsubishi Chemical Corp filed Critical Mitsubishi Chemical Corp
Priority to JP2012146768A priority Critical patent/JP6274636B2/ja
Publication of JP2014008457A publication Critical patent/JP2014008457A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6274636B2 publication Critical patent/JP6274636B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Organic Low-Molecular-Weight Compounds And Preparation Thereof (AREA)

Description

本発明は、原料を含む液を冷却して原料の晶析物を得る晶析方法に関する。
原料を融解した融液や原料を溶媒に溶解した溶液(以下、これらをまとめて「原料を含む液」と記す。)を冷却して原料の結晶を析出させ、原料の結晶を含む懸濁液を得る晶析方法が知られている。
晶析方法としては、原料を含む液を、冷却された熱媒体によって晶析装置の冷却面を介して間接的に冷却して、原料の結晶を含む懸濁液とする方法、すなわち間接冷却によって懸濁状態の結晶を得る晶析方法が一般的である。
しかし、間接冷却による晶析方法においては、冷却によって原料を含む液が過飽和(または過冷却)となって発生したスケール(薄層状の結晶)が晶析装置の冷却面に付着する。そのため、間接冷却による晶析方法には、冷却面に付着したスケールによって原料を含む液や原料の結晶を含む懸濁液の冷却効率が低下し、原料の結晶の生産性が低下するという根本的な問題がある。
晶析装置の冷却面に付着したスケールを除去する方法としては、下記の方法が提案されている。
(1)回分式の晶析方法において、原料を含む液を降温して原料の結晶を析出させる降温工程と、析出した原料の結晶が完全に溶解する前まで(具体的には降温工程の温度よりも2〜4℃高い温度まで)、原料の結晶を含む液を昇温する昇温工程とを繰り返す方法(特許文献1)。
(2)連続式の晶析方法において、原料を含む液を、冷却された熱媒体によって晶析装置の冷却面を介して間接的に冷却して、原料の結晶を含む懸濁液を得た後、冷却された熱媒体を加熱された熱媒体に切り替えて、冷却面に付着したスケールを融解させる方法(特許文献2)。
しかし、(1)の方法では、晶析装置の冷却面に付着したスケールだけではなく、液中の原料の結晶の一部まで溶解させているため、原料の結晶の生産性が低下する。また、原料を含む液を連続的または断続的に供給し、原料の結晶を含む懸濁液を連続的または断続的に抜き出す、いわゆる連続式の晶析方法には適用できない。
(2)の方法では、晶析装置の冷却面に付着したスケールを融解させると同時に、晶析装置(晶析槽)内に溜められた懸濁液中の原料の結晶もすべて溶解させているため、原料の結晶の生産性が低下する。また、原料の結晶の溶解に例えば3時間程度の時間が必要であるため、晶析操作の再開まで時間がかかる。
特開平11−300102号公報 特開2010−131522号公報
本発明は、原料を含む液から原料の結晶を生産性よく得ることができる晶析方法を提供する。
本発明の晶析方法は、原料を含む液(A)が供給され、かつ器壁の内面が冷却面とされた晶析槽と、晶析槽の器壁の外面側から器壁を冷却するジャケットとを有する晶析装置を用い、原料を含む液(A)を、ジャケットに供給された熱媒体(X)によって晶析装置の冷却面を介して間接的に冷却して、原料の結晶を含む懸濁液(B)とする連続式晶析操作の途中にて、熱媒体(X)を、熱媒体(X)よりも高温の熱媒体(Y)に切り替えて晶析操作を中断し、原料の結晶を含む懸濁液(B)を、晶析操作を中断する直前の温度よりも0.5を超えて高くすることなく、熱媒体(Y)によって冷却面に付着したスケールのうち少なくとも冷却面との界面のスケールを融解することによって、冷却面に付着したスケールを除去する融解操作を行った後、熱媒体(Y)を、熱媒体(Y)よりも低温の熱媒体(Z)に切り替えて晶析操作を再開することを特徴とする。
本発明の晶析方法においては、晶析操作における総括伝熱係数の変化によって、冷却面へのスケールの付着を検知し、融解操作を開始することが好ましい。
本発明の晶析方法においては、冷却面を複数の領域に分割し、領域ごとに異なるタイミングにて融解操作を行うことが好ましい。
本発明の晶析方法によれば、原料を含む液から原料の結晶を生産性よく得ることができる。
晶析装置の一例を示す概略断面図である。 晶析装置の他の例を示す概略断面図である。 晶析装置の他の例を示す概略断面図である。 晶析装置の他の例を示す概略断面図である。 晶析操作時における器壁付近の温度分布を示す図である。 融解操作時における器壁付近の温度分布を示す図である。 連続式の晶析方法における熱媒体および懸濁液の温度の時間変化を示すグラフである。 回分式の晶析方法における熱媒体および懸濁液の温度の時間変化を示すグラフである。 実施例において用いた晶析装置を示す概略図である。
本明細書における「晶析操作」とは、原料を含む液(溶液や融液)中の原料(溶質)を過飽和(または過冷却)の状態にすることによって、原料を含む液から結晶相を生じさせ、粒子群または高純度の目的物を得る操作である。ここで「過飽和」とは、溶質がその温度における飽和溶解度以上過剰に溶解した状態である。
本明細書における「原料」とは、晶析操作によって結晶として析出させる目的物質である。
本明細書における「原料を含む液」とは、原料を融解した融液、または原料を溶媒に溶解した溶液である。
本明細書における「原料の結晶を含む懸濁液」とは、液中に原料の結晶が分散した状態、いわゆるスラリー状態にある液であり、分散した結晶の濃度や懸濁液の流動状態で制限されるものではない。
本明細書における「スケール」とは、原料を含む液中の原料が過飽和(または過冷却)の状態になることによって、晶析操作の経過とともに晶析装置の冷却面に析出する薄層状の結晶である。
本明細書における「融解操作」とは、晶析装置の冷却面に付着したスケール(固体)を加熱して融解する(液体にする)操作であり、懸濁液中の結晶を液に溶かして均一にする、いわゆる溶解操作とは区別される。
<晶析装置>
本発明の晶析方法に用いられる晶析装置は、原料を含む液(A)を、熱媒体(X)によって晶析装置の冷却面を介して間接的に冷却して、原料の結晶を含む懸濁液(B)とする晶析操作を実施できるものであればよく、特に限定はされない。
晶析装置としては、例えば、下記のものが挙げられる。
(i)原料を含む液(A)が供給され、かつ器壁(装置本体の伝熱材料)の内面が冷却面とされた装置本体と;器壁の外面側から器壁を冷却する冷却手段と;冷却手段に、熱媒体(X)、熱媒体(Y)または熱媒体(Z)を供給する熱媒体供給手段と;冷却手段に供給される熱媒体を、熱媒体(X)、熱媒体(Y)または熱媒体(Z)のいずれかに切り替える熱媒体切替手段とを有する晶析装置。
(ii)原料を含む液(A)が供給される装置本体と;装置本体内の原料を含む液(A)に挿入され、器壁(冷却手段の伝熱材料)の外面が冷却面とされた冷却手段と;冷却手段に、熱媒体(X)、熱媒体(Y)または熱媒体(Z)を供給する熱媒体供給手段と;冷却手段に供給される熱媒体を、熱媒体(X)、熱媒体(Y)または熱媒体(Z)のいずれかに切り替える熱媒体切替手段とを有する晶析装置。なお、熱媒体(X)を熱媒体(Z)として用いてもよい。
(装置本体)
装置本体としては、原料を含む液(A)や原料の結晶を含む懸濁液(B)を貯留する晶析槽;原料を含む液(A)や原料の結晶を含む懸濁液(B)を循環させる循環ライン等が挙げられる。
(i)の晶析装置の装置本体の器壁(伝熱材料)としては、スケールを短時間で融解させる点から、少なくとも冷却面が熱伝導度の高い金属(炭素鋼、ステンレス鋼、銅合金、アルミ合金等)によって形成されたものが好ましい。原料を含む液(A)および原料の結晶を含む懸濁液(B)に対して耐触性を有するものがより好ましい。冷却面には、研磨等の表面処理を施してもよく、樹脂ライニングを施してもよい。
(冷却手段)
(i)の晶析装置の冷却手段としては、熱媒体(X)によって装置本体の器壁を冷却できるものであればよく、ジャケット等が挙げられる。
(ii)の晶析装置の冷却手段としては、熱媒体(X)によって冷却手段の器壁を冷却できるものであればよく、コイル、流通式の熱交換器(多管式熱交換器等)等が挙げられる。
冷却手段としては、冷却効率や限られた容積の中でできるだけ大きな冷却面積を確保する点から、ジャケットまたはコイルが好ましい。
ジャケットとしては、供給される熱媒体を、熱媒体(X)、熱媒体(Y)または熱媒体(Z)のいずれかに切り替える際に、切り替え後の熱媒体への切り替え前の熱媒体の混入をできるだけ少なくする点から、ハーフパイプジャケット等の容積の小さなジャケットが好ましい。
(ii)の晶析装置の冷却手段の器壁(伝熱材料)としては、スケールを短時間で融解させる点から、少なくとも冷却面が熱伝導度の高い金属(炭素鋼、ステンレス鋼、銅合金、アルミ合金等)によって形成されたものが好ましい。原料を含む液(A)、原料の結晶を含む懸濁液(B)および熱媒体に対して耐触性を有するものがより好ましい。冷却面には、研磨等の表面処理を施してもよく、樹脂ライニングを施してもよい。
(熱媒体)
熱媒体(X)、熱媒体(Y)および熱媒体(Z)は、同じ種類の熱媒体であってもよく、異なる種類の熱媒体であってもよい。熱媒体(X)、熱媒体(Y)または熱媒体(Z)のいずれかに切り替える際に、切り替え後の熱媒体に切り替え前の熱媒体が混入するため、同じ種類の熱媒体が好ましく、同じ組成の熱媒体がより好ましい。また、融解操作時に用いる熱媒体(Y)の温度は、晶析操作時の熱媒体(X)の温度よりも高温で、また、晶析操作の再開時に用いる熱媒体(Z)の温度は、融解操作時の熱媒体(Y)の温度よりも低温であればよい。熱媒体としては、水、エタノール、各種アルコール、ブライン、シリコンオイル、炭化水素等が挙げられる。
(他の形態)
晶析装置は、冷却手段の入口および出口における熱媒体(X)の温度ならびに装置本体内の液の温度を測定する温度測定手段と;熱媒体(X)の単位時間あたりの流量を測定する流量測定手段と;温度測定手段で測定された温度、流量測定手段で測定された流量および冷却面の面積に基づいて総括伝熱係数を算出する総括伝熱係数算出手段と;総括伝熱係数算出手段で算出された総括伝熱係数の変化に基づいて熱媒体切替手段を作動させる制御手段とをさらに有することが好ましい。
晶析装置においては、冷却面が複数の領域に分割されるように複数の冷却手段が設置され、かつ冷却手段ごとに熱媒体供給手段および熱媒体切替手段が設けられていることが好ましい。例えば、ジャケットまたはコイルの場合、ジャケットまたはコイルを2段以上に分割する。流通式の熱交換器(多管式熱交換器等)の場合、ジャケットを2段以上に分割する、もしくは熱交換器を直列または並列に複数設置する。クレハエンジニアリング社製の横型多段冷却晶析装置(CDC)のように、装置本体自体が多段になっている場合も同様である。
晶析装置は、装置本体内を撹拌する撹拌装置を有していてもよく、冷却面に付着したスケールを掻き取るためのスクレーパを有していてもよい。また、装置本体の器壁に電気ヒータ、電磁誘導ヒータ等が埋め込まれていてもよい。
晶析装置には、結晶の純度を向上させるために、公知の精製装置等を併設してもよい。精製装置としては、クレハエンジニアリング社製のクレハ連続結晶精製装置(KCP)、月島機械社製の連続溶融精製装置等が挙げられる。
(具体例)
図1は、晶析装置の一例を示す概略断面図である。晶析装置は、原料を含む液(A)が供給され、かつ器壁の内面が冷却面とされた晶析槽1と;晶析槽1の器壁の外面側から器壁を冷却するジャケット2と;ジャケット2に、熱媒体(X)、熱媒体(Y)または熱媒体(Z)を供給する熱媒体供給手段(図示略)と;ジャケット3に供給される熱媒体を、熱媒体(X)、熱媒体(Y)または熱媒体(Z)のいずれかに切り替える熱媒体切替手段(図示略)と;晶析槽1内を撹拌する撹拌装置3とを有する。
図2は、ジャケット2が、ジャケット2aおよびジャケット2bの2段から構成される晶析装置の例である。
図3は、ジャケット2が、ジャケット2a〜2eの多段から構成される晶析装置の例である。
図4は、ジャケット2が2段であり、かつ冷却面に付着したスケールを掻き取るためのスクレーパ4が撹拌装置3に取り付けられた晶析装置の例である。
<晶析方法>
本発明の晶析方法は、原料を含む液(A)を、熱媒体(X)によって晶析装置の冷却面を介して間接的に冷却して、原料の結晶を含む懸濁液(B)とする晶析操作の途中にて、熱媒体(X)を熱媒体(X)よりも高温の熱媒体(Y)に切り替えて晶析操作を中断し、原料の結晶を含む懸濁液(B)を、晶析操作を中断する直前の温度よりも2℃以上高くすることなく、熱媒体(Y)によって冷却面に付着したスケールのうち少なくとも冷却面との界面のスケールを融解することによって、冷却面に付着したスケールを除去する融解操作を行った後、熱媒体(Y)を、熱媒体(Y)よりも低温の熱媒体(Z)に切り替えて晶析操作を再開する方法である。
(原料を含む液(A))
原料を含む液(A)は、間接冷却によって原料の結晶を析出するものであればよく、特に限定されない。
原料を含む液(A)は、原料を融解した融液であってもよく、原料を溶媒に溶解した溶液であってもよい。
原料を含む液(A)としては、工程液(原料と不純物との混合液)をそのまま用いてもよく、晶析操作を効率化または安定化にするために、工程液に特定の溶媒を添加したものを用いてもよい。
原料は、間接冷却によって結晶として析出し得るものであればよく、特に限定されない。本発明の晶析方法は、有機物の高度精製に特に好適である。
原料を含む液(A)が融液である場合、原料としては、アクリル酸(13℃)、メタクリル酸(16℃)、モノクロロ酢酸(63℃)、パラキシレン(13℃)、ベンゼン(5.5℃)、パラジクロロベンゼン(53℃)、ナフタレン(80℃)、カプロラクタム(70℃)等が挙げられる。( )内の数値は融点である。
原料を含む液(A)が溶液である場合、マレイン酸水溶液(マレイン酸融点131℃)、アジピン酸水溶液(マレイン酸融点152℃)、フマール酸水溶液(フマール酸融点200℃)等が挙げられる。
通常の熱媒体(蒸気、蒸気ドレン、温水、ブライン、エタノール、シリコンオイル等)で融解できる点から、融点が0〜100℃の物質が好適である。熱媒体との温度差を取れ、晶析装置をよりコンパクトに設計できることから、融点が10〜50℃の物質はさらに好適である。
工程液の組成はプロセスによって様々であるため、原料を含む液(A)中の不純物や溶媒の種類、量等も様々である。原料を含む液(A)中の原料の濃度が低い場合、原料の結晶を含む懸濁液(B)の温度と、原料の結晶(スケールも含む。)の融点との差が大きくなってしまう。冷却に必要なエネルギの観点から、この温度差は小さいほうが好ましい。したがって、晶析操作に供給する原料を含む液(A)中の原料の濃度は高いほうが好ましい。また、原料を含む液(A)中の原料の濃度が高いほうが、原料の結晶の生産性がよくなる。よって、経済的な観点から、原料を含む液(A)中の原料の濃度は、80質量%以上が好ましい。
連続式の晶析方法において、晶析装置に供給される原料を含む液(A)の温度は、晶析装置の効率の点から、できるだけ結晶析出温度に近い温度(飽和溶解度に近い温度)が好ましい。
(晶析操作)
熱媒体(X)による原料を含む液(A)や原料の結晶を含む懸濁液(B)の間接冷却は、冷却手段に供給された、熱媒体(X)によって装置本体(または冷却手段)の器壁を冷却し、さらに冷却された器壁によって器壁の冷却面の側の原料を含む液(A)や原料の結晶を含む懸濁液(B)を冷却することによって行われる。
図5は、晶析操作時における器壁付近の温度分布(温度プロフィール)を示す図である。
間接冷却によって晶析操作を行う場合、原料の結晶を含む懸濁液(B)14の温度Tc1(または原料を含む液(A)の温度)を、原料の結晶の融点Tm以下に冷却して行う。この際、器壁10の冷却面10aの近傍における原料の結晶を含む懸濁液(B)14(または原料を含む液(A))の温度が最も低くなるため、冷却面10aの近傍にて原料の結晶を含む懸濁液(B)14(または原料を含む液(A))が最も過飽和(または過冷却)の状態になる。そのため、冷却面10aに結晶が析出し、スケール12が形成されやすい。
間接冷却による晶析操作において冷却面10aにスケール12が付着する要因については、結晶の器壁10への衝突、器壁10のミクロな表面状態、結晶の物理化学的な性質等が挙げられているが、冷却面10aの温度Tc3が原料の結晶を含む懸濁液(B)14の温度Tc1(または原料を含む液(A)の温度)よりも低いため、冷却面10aの近傍にて原料の結晶を含む懸濁液(B)14(または原料を含む液(A))が最も過飽和(または過冷却)の状態になることが根本的な要因である。器壁10に付着したスケール12の温度は、スケール12の表面温度Tc2から冷却面10aの温度Tc3の間である。
冷却面10aへのスケール12の付着を抑える方法としては、原料の結晶を含む懸濁液(B)14の温度Tc1(または原料を含む液(A)の温度)と熱媒体(X)16の温度Tc4との差(ΔT=Tc1−Tc4)を小さくすることである。一方、晶析装置のサイズを小さくしつつ、原料を含む液(A)から原料の結晶を生産性よく得るためには、ΔTは大きい方が好ましい。晶析装置の設計においては、装置本体のサイズと結晶の生産性との兼ね合いから適当なΔTを選定しているが、工業的な規模の晶析装置において間接冷却により晶析を行う限り、その原理から過飽和(または過冷却)にすることは避けられないのが現状である。
(晶析操作の中断)
晶析操作において晶析装置の冷却面にスケールがある程度付着した場合には、晶析操作の途中にて、熱媒体(X)を熱媒体(X)よりも高温の熱媒体(Y)に切り替えて晶析操作を中断し、後述する融解操作を開始する。
熱媒体の切り替えは、冷却面へのスケールの付着速度があらかじめ分かっている場合は、冷却面へのスケールの付着量があらかじめ設定された量(スケールの付着量の許容量の上限)となるような所定の間隔ごとに定期的に行ってもよく、冷却面へのスケールの付着を検知できる場合は、冷却面へのスケールの付着量があらかじめ設定された閾値(スケールの付着量の許容量)を超えるたびに行ってもよい。
熱媒体の切り替えは、スケールの付着量が顕在化する前に行ってもよく、スケールの付着量が顕在化した後に行ってもよい。スケールの付着量が多くなりすぎてから融解操作に移行した場合、融解操作によって冷却面から剥がれたスケールが後の晶析操作に悪影響を与える場合があるため、好ましくない。
冷却面へのスケールの付着を検知する方法としては、晶析操作における総括伝熱係数の変化によって検知する方法等が挙げられる。総括伝熱係数は、例えば下記式(1)から求めることができる。
U=Q/(A・Δt) ・・・(1)。
Uは、総括伝熱係数であり、Qは、単位時間あたりの熱の移動量、すなわちQ=冷却手段の入口と出口との熱媒体の温度差×熱媒体の比熱×熱媒体の単位時間あたりの流量であり、Aは、冷却面の面積であり、Δtは、原料の結晶を含む懸濁液(B)と熱媒体との温度差である。
現在の総括伝熱係数と、晶析操作の開始(再開)時の総括伝熱係数との差が、あらかじめ設定された閾値を超えた際に、熱媒体(X)を熱媒体(X)よりも高温の熱媒体(Y)に切り替えて晶析操作を中断し、後述する融解操作を開始する。閾値は、冷却面へのスケールの付着量と総括伝熱係数との検量線を予備実験にて作成し、スケールの付着量の許容量に応じて適宜決定すればよい。
熱媒体を切り替える際に、熱媒体(Y)に熱媒体(X)が混入すると、熱効率の低下の要因となる。よって、熱媒体を切り替える際に、空気加圧等によって熱媒体(X)を冷却手段から抜き取った後、冷却手段に熱媒体(Y)を供給する等によって、混入量を最小化することも可能である。
(融解操作)
熱媒体(X)を熱媒体(X)よりも高温の熱媒体(Y)に切り替えることによって、晶析装置の冷却面に付着したスケールを融解し、冷却面に付着したスケールを除去する。
晶析装置の仕様や使用する環境にも依存するが、通常、スケールは冷却面に固着しているため、晶析操作において冷却された熱媒体の供給を停止しただけでは、スケールは容易には剥離しない。したがって、短時間で、効率的にスケールを融解、除去するためには、熱媒体(X)を熱媒体(X)よりも高温の熱媒体(Y)に切り替えることが必要である。
図6は、融解操作時における器壁付近の温度分布(温度プロフィール)を示す図である。
原料の結晶を含む懸濁液(B)14中の結晶の溶解を最小限に抑えるためには、融解操作における原料の結晶を含む懸濁液(B)14の温度Th1と、図5における晶析操作を中断する直前の原料の結晶を含む懸濁液(B)14の温度Tc1温度との差は、小さいほどよい。具体的には、Th1−Tc1は、2.0℃未満であり、0.5℃以下が好ましく、0.1℃以下がより好ましい。Th1−Tc1が2.0℃未満の場合には、原料の結晶を含む懸濁液(B)14の温度上昇は小さいため、原料の結晶を含む懸濁液(B)14中の結晶の溶解量は少なく、また、温度上昇に必要な時間も短い。よって、実質的に晶析操作は中断されないとみなすことができる。Th1−Tc1が0.1℃以下であれば、原料の結晶を含む懸濁液(B)14中の結晶はほとんど溶解しない。
スケール12の融解は、熱媒体(Y)18の温度Th4を原料の結晶(スケール12)の融点Tmよりも高くすることによって行う。器壁10に付着したスケール12の温度は、スケール12の表面温度Th2から冷却面10aの温度Th3の間である。
熱媒体(Y)18の温度Th4は、スケール12の融点Tmよりも高ければよい。なお、熱媒体(Y)18の温度Th4とスケール12の融点Tmとの温度差が大きい方が、短時間にスケール12を融解させる上で有利であるが、温度差が大きすぎると懸濁液(B)14中の結晶を溶解してしまう可能性がある。また、温度差が小さい方が、スケール12のみを融解させやすいが、温度差が小さすぎると、装置構造によっては融解、あるいは脱離できないスケール12が生じる可能性がある。よって、熱媒体(Y)18の温度Th4は、スケール12の融点Tm+5〜50℃が好ましく、スケールの融点Tm+5〜20℃がより好ましい。
熱媒体(Y)18の温度Th4がスケール12の融点Tmよりも低くても、スケール12は徐々に原料の結晶を含む懸濁液(B)14に溶解していくため、スケール12は除去できると考えられる。しかし、この場合には、スケール12の溶解と同時に原料の結晶を含む懸濁液(B)14中の結晶も溶解してしまい、原料の結晶の生産性が低下してしまう。
融解操作の時間は、融解操作を開始するために熱媒体を熱媒体(X)から、熱媒体(X)よりも高温の熱媒体(Y)へ切り替えた時点から、晶析操作を再開するために熱媒体を熱媒体(Y)から、熱媒体(Y)よりも低温の熱媒体(Z)へ切り替えた時点までである。
融解操作の時間は、原料の結晶を含む懸濁液(B)14の組成、温度、物性、熱媒体(Y)18の温度、装置本体のサイズ、構造、器壁10の伝熱材料等に影響を受ける。
融解操作の時間は、できるだけ短いほうが好ましい。融解操作の時間が長くなると、冷却面10aに付着したスケール12は確実に融解される一方、原料の結晶を含む懸濁液(B)14中の結晶の溶解も進むため、晶析のためのエネルギが無駄となり、また、原料の結晶の生産性も低下する。
融解操作においては、冷却面10aに付着したスケール12のうち冷却面10aとスケール12の界面のみを融解してもよく、冷却面10aに付着したスケール12のすべてを融解してもよい。融解操作の時間を短くする点からは、冷却面10aとの界面およびその近傍のスケール12を融解し、残りのスケール12を冷却面10aから剥離することが好ましい。すなわち、微小厚みのスケールのみを融解するのに必要な熱量はごくわずかであるため、加熱を極めて短時間で止めた場合には、原料の結晶を含む懸濁液(B)全体を実質的に加熱することなく、スケールだけを融解できる。また、ジャケットを複数の段に分割した晶析装置を用いる場合は、スケールの融解を行っている段から見て、下側の段の冷却面に付着したスケールが、スケールの融解を行っている段の冷却面からのスケールの剥離を邪魔するおそれがあるため、下方の段から上方の段へ順次融解していくことがよりよい。
冷却面10aからスケール12を剥離するために必要とされる、スケール12の融解厚さを定量することは容易ではないが、スケール12自体の厚さよりはかなり薄い。スケール12を融解する時間が非常に短ければ、原料の結晶を含む懸濁液(B)14中の結晶の溶解量は極めて少なくなるため、実質的に晶析操作を中断することなくスケールの融解操作を行うことができる。
この際の融解操作の時間の下限は、冷却面10aとスケール12との界面およびその近傍のスケール12を融解するために必要な時間となる。融解操作の時間の上限は、晶析操作を中断する直前の温度+2℃に到達するまでの時間となる。
融解操作の時間をさらに短くするためには、装置本体(晶析槽等)や冷却手段(外部熱交換器等)の少なくとも冷却面を熱伝導度の高い金属(炭素鋼、ステンレス鋼、銅合金、アルミ合金等)によって形成することが好ましい。
本発明における融解操作と、従来の融解・溶解操作(冷却面に付着したスケールを融解するために、懸濁液の温度を上げて、懸濁液中の結晶も同時に溶解させる操作)とで必要とされる供給熱量を比較してみる。
例えば、原料の結晶を含む懸濁液(B)(比重:1)が10m、結晶の濃度が30質量%、冷却面の面積が20m、スケール(比重:1.1)の厚さが0.1mmとすると、従来の融解・溶解操作で融解・溶解させる結晶量は、10,000kg×0.3=3,000kgである。一方、本発明における融解操作の場合、スケール(比重:1.1)だけを融解させるとして、その量は20m×(0.1÷1000)m×1.1T/m×1000kg/T=2.2kgである。また、スケールを剥離させるためには、界面近傍を融解させるだけでよいため、スケールを剥離させるために必要な厚さを例えば0.01mmとすれば、0.22kgのスケールを融解させればよいことになる。すなわち、本発明によれば、従来の方法に比べて再結晶化にかかるエネルギの無駄や生産性の低下を抑えることができる。
融解操作は、冷却面を複数の領域に分割し、領域ごとに異なるタイミングにて行ってもよい。例えば、ジャケットまたはコイルを2段以上に分割して、融解操作を段ごとに順次行う。冷却面を複数の領域に分割し、領域ごとに異なるタイミングにて融解操作を行った場合、一回の溶融操作では冷却面の一部を加熱することになるため、冷却面の全面を一度に加熱する場合に比べ、原料の結晶を含む懸濁液(B)の温度上昇が抑えられる。
晶析操作においては、撹拌やポンプ送液によって、冷却面の近傍は流動状態(結晶は懸濁状態)となっている。融解操作を行う際には、撹拌やポンプ送液はそのまま継続しても構わない。ただし、冷却面近傍における原料の結晶を含む懸濁液(B)の流動が激しい場合、スケールを融解するための熱が、原料の結晶を含む懸濁液(B)全体に伝わり、温度を上昇させ、それに伴い結晶を溶解するという不都合が生じる。よって、スケールを優先的に、効率よく融解するためには、撹拌を停止させたり、ポンプ送液を停止させたりしてもよい。
(晶析操作の再開)
融解操作によって晶析装置の冷却面に付着したスケールを除去した後、できればただちに、熱媒体(Y)を、熱媒体(Y)よりも低温の熱媒体(Z)に切り替えて晶析操作を再開、継続する。
スケールの融解が終了したことを検知する方法としては、例えば、下記の方法が挙げられる。
・器壁の冷却面側に温度検知端を埋め込み、冷却面の温度Th3を測定し、原料の結晶を含む懸濁液(B)の温度Th1との温度差から検知する方法。
・所定時間の融解操作を行った後、晶析操作を再開した際の総括伝熱係数から検知する方法。
・掻き取り式のスクレーパを有する場合は、掻き取りの消費動力から検知する方法。
熱媒体を切り替える際に、熱媒体(Z)に熱媒体(Y)が混入すると、熱効率の低下の要因となる。よって、熱媒体を切り替える際に、空気加圧等によって熱媒体(Y)を冷却手段から抜き取った後、冷却手段に熱媒体(Z)を供給する等によって、混入量を最小化することも可能である。
(連続式、回分式)
晶析操作が連続式(連続プロセス)であっても回分式(回分プロセス)であっても、スケールの融解操作は同じである。
図7および図8は、本発明の晶析方法における熱媒体および懸濁液の温度の時間変化を示すグラフである。温度の記号は図5および図6と同様である。
図7は、連続式の場合であり、温度Tc4の熱媒体(X)によって原料を含む液(A)または原料の結晶を含む懸濁液(B)を間接冷却して晶析操作を行い、冷却面にスケールが付着した時点(時間θ1およびθ2)で、熱媒体(X)から温度Th4の熱媒体(Y)に切り替えることによって極めて短時間で融解操作を行い、その後、ただちに熱媒体(Y)から熱媒体(Y)よりも低温の熱媒体(Z)に切り替えて晶析操作を再開する。ここで熱媒体(Z)の温度は熱媒体(X)の温度と同じ温度とした。この間、原料の結晶を含む懸濁液(B)の温度Tc1、Th1は、ほぼ一定に保たれる。
連続式の場合、供給する原料を含む液(A)の温度(図示略)は、原料の結晶を含む懸濁液(B)の温度Tc1よりも高く、熱媒体(X)の温度Tc4によって、原料の結晶を含む懸濁液(B)の温度Tc1まで冷却される。原料の結晶を含む懸濁液(B)は、定常的に装置本体(晶析槽等)から抜き取られ、装置本体(晶析槽等)における原料の結晶を含む懸濁液(B)の量および温度Tc1、Th1は一定に保たれる。
図8は、回分式の場合であり、原料を含む液(A)の出し入れがないこと、原料の結晶を含む懸濁液(B)の温度が徐々に低下してくることを除けば、連続式の場合とほぼ同じである。すなわち、回分式のため、液の出入りはない。そのため、冷却を行うと原料の結晶を含む懸濁液(B)の温度Tc1は徐々に低下し、結晶の量が増加する。
(精製工程)
上述した晶析操作および融解操作を有する晶析工程で得られた結晶は、分離してそのまま製品とすることもできるが、通常はそのままでは純度が不十分である。その場合には、精製工程にてさらなる精製を行って、高純度化してもよい。
精製工程においては、上述した精製装置等を用いることができる。
(作用効果)
以上説明した本発明の晶析方法にあっては、熱媒体(Y)によって晶析装置の冷却面に付着したスケールを間接的に融解する際に、原料の結晶を含む懸濁液(B)を、晶析操作を中断する直前の温度よりも2℃以上高くすることがないため、原料の結晶を含む懸濁液(B)中の結晶の溶解量が少ない。また、原料の結晶を含む懸濁液(B)を、晶析操作を中断する直前の温度よりも2℃以上高くすることがないため、加熱のための時間も短くでき、晶析操作が中断される時間も短い。よって、原料を含む液(A)から原料の結晶を生産性よく得ることができる。
また、本発明の晶析方法は、連続式、回分式のいずれの晶析方法にも適用可能である。
また、冷却面に付着したスケールを定期的に除去可能となれば、晶析操作におけるΔT(原料の結晶を含む懸濁液(B)または原料を含む液(A)の温度と熱媒体(X)の温度との差)を大きくとることができるため、同じ冷却面の面積で処理量を増やすことができる、または、同じ処理量の晶析操作を小さなサイズの晶析装置で行うことができる。
以下に実施例および比較例によって本発明をさらに詳細に説明するが、これらの例は本発明の範囲を制限するものではない。なお、実施例においては晶析操作の再開時に熱媒体(X)を用いたが、便宜上それを熱媒体(Z)と呼ぶ。
(原料を含む液(A−1))
原料を含む液(A−1):精製メタクリル酸の760gと試薬メタノールの40gとの混合液。
精製メタクリル酸は、三菱レイヨン社の製品で純度は99%以上である。試薬メタノールは、和光純薬社製の試薬1級で純度は99.8%以上である。精製メタクリル酸の融点は16℃、メタノールの融点は−96℃である。
(原料を含む液(A−2))
原料を含む液(A−2):試薬パラキシレンの665gと試薬メタキシレンの35gとの混合液。
原料を含む液(A−2)の組成は、特開平11−207103号公報を参考にしたモデル液である。パラキシレンが目的物質であり、不純物としてモデル的にメタキシレンを用いたた。試薬パラキシレン、試薬メタキシレンともに和光純薬社製の試薬1級であり、純度は98%以上である。パラキシレンの融点は13℃、メタキシレンの融点は−48℃である。
(原料を含む液(A−3))
原料を含む液(A−3):精製アクリル酸の760gと試薬メタノールの40gとの混合液。
精製アクリル酸は、和光純薬社製の試薬1級で純度は98.5%以上である。試薬メタノールは、和光純薬社製の試薬1級で純度は99.8%以上である。精製アクリル酸の融点は13℃、メタノールの融点は−96℃である。
(晶析装置)
本発明の晶析方法における晶析装置としては、間接冷却によって原料を含む液(A)を冷却し、懸濁状態の原料の結晶を得るものであれば、いずれも採用し得る。実施例、比較例においては、冷却面へのスケール付着を観察可能とするために、ガラス容器に撹拌装置およびU字管(SUS304製、内径6mm、外形8mmのパイプをU字型に曲げたもの)を設置したものを用いた。また、熱媒体(X)としてエチレングリコール水溶液であるブラインを用い、熱媒体(Y)として温水を用いた。
図9は、実施例において用いた晶析装置を示す概略図である。ガラス容器20は、セパラブルフラスコと称される容積1Lのガラス製のものであり、撹拌装置22および冷却または加熱用のU字管24および温度計26を備えている。ガラス容器20は、氷水浴28に浸漬可能とされている。撹拌装置22の撹拌翼の回転数は、特に断りのない限り350rpmとした。ガラス容器20内に、原料を含む液(A)の800gを仕込んだ時のU字管24の浸漬長さは約18cmである。U字管24の入口には、熱媒体(X)供給流路30および熱媒体(Y)供給流路32が接続され、U字管24の出口には、熱媒体(X)排出流路34および熱媒体(Y)排水流路36が接続されている。各流路の途中には、それぞれ弁38a〜dが設けられている。熱媒体(X)および熱媒体(Y)は、温度コントロールが付いた容器(図示略)からポンプ(図示略)によって送液している。
[実施例1]
原料を含む液(A−1)をガラス容器20に入れ、撹拌しながら、ガラス容器20を氷水浴28(0〜0.5℃)に浸漬して冷却した。原料を含む液(A−1)の温度が低下して、6.9℃になった時点で結晶が析出し、原料の結晶を含む懸濁液(B−1)となった。その後、原料の結晶を含む懸濁液(B−1)は7.7℃まで昇温した。ガラス容器20を氷水浴28に浸漬したままで、U字管24内に熱媒体(X)(約−5℃)を流した。原料の結晶を含む懸濁液(B−1)の温度が6.0℃となるまで冷却を継続した。この時の原料の結晶を含む懸濁液(B−1)中の結晶の濃度は推算で20〜25質量%である。また、ガラス容器20の内部を観察すると、U字管24の冷却面には厚さが約2mm(目視)のスケールが固着していた。そこで、U字管24に流していた熱媒体(X)を止め、ただちに、25℃の熱媒体(Y)を流したところ、25秒後にはU字管24の冷却面のスケールが剥離した。この時の原料の結晶を含む懸濁液(B−1)の温度は6.0℃のままであり、熱媒体(Y)を流す前後の温度上昇は、測定限界以下(0.1℃以下)であった。ここで、熱媒体(Y)を止め、直ちに熱媒体(Z)として前述の熱媒体(X)を流して、晶析操作を再開した。
[実施例2]
実施例1と同様の操作を行って、U字管24の冷却面に厚さが約2mmのスケールを付着させた。そこで、U字管24に流していた熱媒体(X)を止め、ただちに、35℃の熱媒体(Y)を流したところ、13秒後にはU字管24の冷却面のスケールが剥離した。この時の原料の結晶を含む懸濁液(B−1)の温度は6.0℃のままであり、熱媒体(Y)を流す前後の温度上昇は、測定限界以下(0.1℃以下)であった。ここで、熱媒体(Y)を止め、直ちに熱媒体(Z)として前述の熱媒体(X)を流して、晶析操作を再開した。
[実施例3]
実施例1と同様の操作を行って、U字管24の冷却面に厚さが約2mmのスケールを付着させた。そこで、ガラス容器20から氷水浴28を外したあと、U字管24に流していた熱媒体(X)を止め、25℃の熱媒体(Y)を流したところ、25秒後にはU字管24の冷却面のスケールが剥離した。この時の原料の結晶を含む懸濁液(B−1)の温度は6.0℃のままであり、熱媒体(Y)を流す前後の温度上昇は、測定限界以下(0.1℃以下)であった。ここで、熱媒体(Y)を止め、直ちに熱媒体(Z)として前述の熱媒体(X)を流して、晶析操作を再開した。
[実施例4]
熱媒体(X)の温度を−5℃から0℃に変更した以外は、実施例1と同じ晶析操作を行った。U字管24の冷却面には約1mmのスケールが付着していた。そこで、ガラス容器20を氷水浴28から外したあと、U字管24に流していた熱媒体(X)を止め、25℃の熱媒体(Y)を流したところ、10秒後にはU字管24の冷却面のスケールが剥離した。この時の原料の結晶を含む懸濁液(B−1)の温度は6.0℃のままであり、熱媒体(Y)を流す前後の温度上昇は、測定限界以下(0.1℃以下)であった。ここで、熱媒体(Y)を止め、直ちに熱媒体(Z)として前述の熱媒体(X)を流して、晶析操作を再開した。
[実施例5]
実施例1と同様の操作を行って、U字管24の冷却面に厚さが約2mmのスケールを付着させた。そこで、撹拌を止め、U字管24に流していた熱媒体(X)を止め、ただちに、25℃の熱媒体(Y)を流したところ、25秒後にはU字管24の冷却面のスケールが剥離した。この時の原料の結晶を含む懸濁液(B−1)の温度は6.0℃のままであり、熱媒体(Y)を流す前後の温度上昇は、測定限界以下(0.1℃以下)であった。ここで、熱媒体(Y)を止め、直ちに熱媒体(Z)として前述の熱媒体(X)を流して、晶析操作を再開した。
[実施例6]
原料を含む液(A−1)をガラス容器20に入れ、氷水浴28を取り外し、ガラス容器20の外側を木綿繊維で包んで断熱した。ついで、原料を含む液(A−1)を撹拌しながら、U字管24に熱媒体(X)(−5℃)を流して冷却した。原料を含む液(A−1)の温度が8.1℃になった時点で結晶が析出し、原料の結晶を含む懸濁液(B−1)となった。冷却を継続して原料の結晶を含む懸濁液(B−1)を7.7℃まで冷却すると、U字管24の冷却面に約2mmのスケールが付着し、また、原料の結晶を含む懸濁液(B−1)中に微少量の結晶が分散していた。そこで、熱媒体(X)を止めて、ただちに、25℃の熱媒体(Y)を流したところ、25秒後にはU字管24の冷却面のスケールは剥離した。この時の原料の結晶を含む懸濁液(B−1)の温度は8.2℃であり、熱媒体(Y)を流す前後の温度差は0.5℃であった。ここで、熱媒体(Y)を止め、直ちに熱媒体(Z)として前述の熱媒体(X)を流して、晶析操作を再開した。
[比較例1]
実施例1と同様の操作を行って、U字管24の冷却面に厚さが約2〜3mmのスケールを付着させた。そこで、U字管24に流していた熱媒体(X)を止め、熱媒体(Y)も流さずに撹拌を継続したが、10分後でもスケールは剥離も融解もしなかった。
[比較例2]
実施例1と同様の操作を行って、U字管24の冷却面に厚さが約2〜3mmのスケールを付着させた。そこで、U字管24に流していた熱媒体(X)を止め、ただちに、25℃の熱媒体(Y)を流したところ、25秒後にはU字管24の冷却面のスケールが剥離した。この時の原料の結晶を含む懸濁液(B−1)の温度は6.0℃のままであった。そのまま、熱媒体(Y)を流し続けたところ、約15分後には、原料の結晶を含む懸濁液(B−1)の温度は10℃を超え、結晶はすべて溶解していた。
[実施例7]
原料を含む液(A−2)をガラス容器20に入れ、攪拌しながら、ガラス容器20を氷水浴28(0〜0.5℃)に浸漬して冷却した。原料を含む液(A−2)の温度が低下して、8.9℃になった時点で結晶が析出し、原料の結晶を含む懸濁液(B−2)となった。その後、原料の結晶を含む懸濁液(B−2)は11.2℃まで昇温した。ガラス容器20を氷水浴28に浸漬したままで、U字管24内に熱媒体(X)(約−5℃)を流した。原料の結晶を含む懸濁液(B−2)の温度が10.4℃となるまで冷却を継続した。この時のガラス容器20の内部を観察したところU字管24の冷却面には厚さが約2.0mmのスケールが付着していた。そこで、U字管24に流していた熱媒体(X)を止め、ただちに、25℃の熱媒体(Y)を流したところ、約50秒後にはU字管24の冷却面のスケールが剥離した。この時の原料の結晶を含む懸濁液(B−2)の温度は10.4℃のままであり、熱媒体(Y)を流す前後の温度上昇は、測定限界以下(0.1℃以下)であった。ここで、熱媒体(Y)を止め、直ちに熱媒体(Z)として前述の熱媒体(X)を流して、晶析操作を再開した。
[実施例8]
原料を含む液(A−3)をガラス容器20に入れ、撹拌しながら、ガラス容器20を氷水浴28(0〜0.5℃)に浸漬して冷却した。原料を含む液(A−3)液温度が低下して、4.7℃になった時点で結晶が析出し、原料の結晶を含む懸濁液(B−3)となった。その後、原料の結晶を含む懸濁液(B−3)は6.1℃まで昇温した。ガラス容器20を氷水浴28に浸漬したままで、U字管24内に熱媒体(X)(約−5℃)を流した。原料の結晶を含む懸濁液(B−3)の温度が5.4℃となるまで冷却を継続した。この時のガラス容器20の内部を観察したところU字管24の冷却面には厚さ約2.0mmのスケールが付着していた。そこで、U字管24に流していた熱媒体(X)を止め、ただちに、25℃の熱媒体(Y)を流したところ、約20秒後にはU字管24の冷却面のスケールが剥離した。この時の原料の結晶を含む懸濁液(B−3)の温度は5.4℃のままであり、熱媒体(Y)を流す前後の温度上昇は、測定限界以下(0.1℃以下)であった。ここで、熱媒体(Y)を止め、直ちに熱媒体(Z)として前述の熱媒体(X)を流して、晶析操作を再開した。
本発明の晶析方法は、アクリル酸、メタクリル酸、モノクロロ酢酸、パラキシレン、ベンゼン、パラジクロロベンゼン、ナフタレン、カプロラクタム等の精製に有用である。
1 晶析槽
2 ジャケット
3 撹拌装置
4 スクレーパ
10 器壁
10a 冷却面
12 スケール
14 原料の結晶を含む懸濁液(B)
16 熱媒体(X)
18 熱媒体(Y)
20 ガラス容器
22 撹拌装置
24 U字管
26 温度計
28 氷水浴
30 熱媒体(X)供給流路
32 熱媒体(Y)供給流路
34 熱媒体(X)排出流路
36 熱媒体(Y)排水流路
38a 弁
38b 弁
38c 弁
38d 弁
Tc1 原料の結晶を含む懸濁液(B)14の温度
Tc2 スケール12の表面温度
Tc3 冷却面10aの温度
Tc4 熱媒体(X)16の温度
Th1 原料の結晶を含む懸濁液(B)14の温度
Th2 スケール12の表面温度
Th3 冷却面10aの温度
Th4 熱媒体(Y)18の温度
Tm 原料の結晶(スケール12)の融点

Claims (3)

  1. 原料を含む液(A)が供給され、かつ器壁の内面が冷却面とされた晶析槽と、晶析槽の器壁の外面側から器壁を冷却するジャケットとを有する晶析装置を用い、原料を含む液(A)を、ジャケットに供給された熱媒体(X)によって晶析装置の冷却面を介して間接的に冷却して、原料の結晶を含む懸濁液(B)とする連続式晶析操作の途中にて、
    熱媒体(X)を、熱媒体(X)よりも高温の熱媒体(Y)に切り替えて晶析操作を中断し、
    原料の結晶を含む懸濁液(B)を、晶析操作を中断する直前の温度よりも0.5を超えて高くすることなく、熱媒体(Y)によって冷却面に付着したスケールのうち少なくとも冷却面との界面のスケールを融解することによって、冷却面に付着したスケールを除去する融解操作を行った後、
    熱媒体(Y)を、熱媒体(Y)よりも低温の熱媒体(Z)に切り替えて晶析操作を再開する、晶析方法。
  2. 晶析操作における総括伝熱係数の変化によって、冷却面へのスケールの付着を検知し、融解操作を開始する、請求項1に記載の晶析方法。
  3. 冷却面を複数の領域に分割し、領域ごとに異なるタイミングにて融解操作を行う、請求
    項1または2に記載の晶析方法。
JP2012146768A 2012-06-29 2012-06-29 晶析方法 Active JP6274636B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012146768A JP6274636B2 (ja) 2012-06-29 2012-06-29 晶析方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012146768A JP6274636B2 (ja) 2012-06-29 2012-06-29 晶析方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2014008457A JP2014008457A (ja) 2014-01-20
JP6274636B2 true JP6274636B2 (ja) 2018-02-07

Family

ID=50105614

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2012146768A Active JP6274636B2 (ja) 2012-06-29 2012-06-29 晶析方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6274636B2 (ja)

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN110585757B (zh) * 2019-10-09 2024-07-02 浙江工业大学 一种环流连续结晶器

Family Cites Families (9)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS5534115A (en) * 1978-09-01 1980-03-10 Kureha Chem Ind Co Ltd Crystallization method
FR2609977B1 (fr) * 1987-01-27 1991-06-07 Atochem Procede de condensation du chlorure d'aluminium
JP3238426B2 (ja) * 1991-07-10 2001-12-17 三菱化学株式会社 連続晶析方法および装置
JPH06343802A (ja) * 1993-06-02 1994-12-20 Mitsui Toatsu Chem Inc 晶析精製方法および装置
JPH11300102A (ja) * 1998-04-20 1999-11-02 Sumitomo Chem Co Ltd 晶析方法
US6203612B1 (en) * 2000-03-30 2001-03-20 General Electric Company Process for cleaning bisphenol crystallizer
JP4389422B2 (ja) * 2001-10-25 2009-12-24 三菱化学株式会社 晶析器の運転方法
JP2010131522A (ja) * 2008-12-04 2010-06-17 Mitsubishi Rayon Co Ltd 晶析装置および晶析物除去方法
JP2012102129A (ja) * 2012-01-05 2012-05-31 Mitsubishi Rayon Co Ltd メタクリル酸の精製方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2014008457A (ja) 2014-01-20

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5962817B2 (ja) 晶析方法および晶析装置
EP2450340B1 (en) Device and method for crystallizing (meth)acrylic acid
JP5701305B2 (ja) アクリル酸結晶を母液中の該アクリル酸結晶の懸濁液sから精製分離するための分離法のスタートアップ方法
JP6274636B2 (ja) 晶析方法
WO2010090143A1 (ja) (メタ)アクリル酸の製造方法
JP5336794B2 (ja) 原料粗結晶の精製方法
JP6103017B2 (ja) 硫酸ニッケルの晶析設備および晶析方法
JP4259819B2 (ja) 晶析方法および晶析装置
JP4389422B2 (ja) 晶析器の運転方法
JP2008163419A (ja) 金属精製方法及び装置、精製金属、鋳造品、金属製品及び電解コンデンサ
JP4918232B2 (ja) 凍結融解処理方法と凍結融解処理装置
CN109071402A (zh) 甲基丙烯酸的精制方法和制造方法
JP2004188349A (ja) 晶析付着物生成装置及び測定装置
JP2010131522A (ja) 晶析装置および晶析物除去方法
JP5581316B2 (ja) (メタ)アクリル酸の製造方法
RU2750578C1 (ru) Способ очистки термолабильных жидкостей
CN205235452U (zh) 一种结晶釜
CN207079179U (zh) 苯甲酸提纯装置
CN203653265U (zh) 一种生产氟化氢铵用釜式结晶器
RU2818763C1 (ru) Способ и установка получения парацетамола из пара-нитрозофенола и/или пара-нитрофенола в среде уксусной кислоты
JP5318602B2 (ja) アクリル酸結晶の融解方法
JP4022089B2 (ja) 熱交換器の運転方法
RU2775695C1 (ru) Способ мойки трубок в пленочном испарителе от отложений, образующихся в результате испарения воды из солевого раствора
CN108671577B (zh) 一种蒽结晶防堵塞放料装置
JP2011006354A (ja) (メタ)アクリル酸の製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20150609

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20160707

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20160809

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20161006

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20170221

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20170424

A911 Transfer of reconsideration by examiner before appeal (zenchi)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A911

Effective date: 20170502

A912 Removal of reconsideration by examiner before appeal (zenchi)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A912

Effective date: 20170526

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20180105

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6274636

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150