従来の技術においては、ドラムの内部に設置されたセンサによって、高い音質でドラムの音を集音することが困難であった。すなわち、ドラムの内部で高音質に集音するためには、ドラムヘッドの振動によってドラムの内部の空間に励起される音波の他、フープをたたくリムショットにおけるシェルの振動に起因する音波やドラムヘッドの振動によって励起されるシェルの振動に起因する音波を集音する必要がある。
しかし、特許文献1のように、紐でマウントユニットを吊った状態とすることにより、紐が防振構造として機能してシェルの振動がマウントユニット上のマイクに伝達されない場合には、シェルの振動に起因する音波がマイクによって集音されず、高い音質で集音することができない。なお、シェルの振動には、不要な振動、特にシェルの固有振動の低次の振動が含まれるため、特許文献1のようにドラムの内部にマイクを設置する構成において、防振構造を構成せずにシェルに対してマイクを取り付けた場合には、シェルの不要な振動がマイクによって検出され、高い音質で集音することができない。
また、特許文献2においては、打撃が行われても発音しない網状ドラムヘッドが備えられているため、ドラムの原音に忠実な高音質での集音を行うことはそもそも想定されていない。また、ドラムヘッドの振動によってシェルに振動が励起されることはないため、シェルに取り付けられた振動ピックアップの検出結果を使用してもドラムの原音に忠実な高音質での集音を行うことはできない。
本発明は、前記課題にかんがみてなされたもので、ドラムの内部に設置されたセンサによって、高い音質でドラムの音を集音する技術を提供することを目的とする。
上述の目的を達成するため、筒状のシェルと、シェルの一方の開口端に取り付けられるドラムヘッドと、ドラムヘッドおよびシェルの内側の音波を示す音波信号を検出するドラム音センサと、シェルの振動を示す振動信号を検出するシェル振動センサと、振動信号から所定の周波数の振動信号を抽出する振動抽出手段と、音波信号と所定の周波数の振動信号とを混合した信号に基づいてドラムの演奏音を取得する演奏音取得手段と、を備えるドラムを構成する。
すなわち、打撃によって実際に発音されるドラムヘッドを備えたアコースティックドラムにおいて、ドラム音センサによってドラムの内部(ドラムヘッドおよびシェルの内側)の音波信号を取得し、シェル振動センサによってシェルの振動を示す振動信号を検出する。ここで、ドラム音センサが検出する音波信号には、ドラムヘッドの振動によってドラムの内部の空間に励起される音波を示す信号(以下、打撃音信号と呼ぶ)と、フープをたたくリムショットにおけるシェルの振動に起因する音波を示す信号(以下、リムショット音信号と呼ぶ)と、ドラムヘッドの振動によって励起されるシェルの振動に起因する音波を示す信号(以下、ヘッド−シェル振動音信号と呼ぶ)と、シェルの固有振動に起因する音波を示す信号(以下、固有振動音信号と呼ぶ)が含まれ得る。すなわち、ドラム音センサが検出する音波信号には、ドラムの原音に忠実な高音質での集音を行うために集音されるべき打撃音信号とリムショット音信号とヘッド−シェル振動音信号と、不要な音である固有振動音信号が含まれ得る。
一方、シェル振動センサが検出する振動には、フープをたたくリムショットにおけるシェルの振動を示す振動信号(以下、リムショット振動信号と呼ぶ)と、ドラムヘッドの振動によって励起されるシェルの振動を示す振動信号(以下、ヘッド−シェル振動信号と呼ぶ)と、シェルの固有振動を示す振動信号(以下固有振動信号と呼ぶ)が含まれ得る。従って、振動信号から所定の周波数の振動信号を抽出するフィルタ処理を行えば、振動信号から必要な振動信号(リムショット振動信号、ヘッド−シェル振動信号)と不要な振動(固有振動信号)とのいずれかまたは双方を抽出することができる。
そこで、シェルの振動に起因する音波とシェルの振動の周波数特性がほぼ同一であると見なせば、抽出された所定の周波数の振動信号とドラム音センサによって取得された音波信号とを混合することにより、集音されるべき打撃音信号とリムショット音信号とヘッド−シェル振動音信号とをドラムの演奏音として取得することができる。例えば、不要な振動を示す振動信号を所定の周波数の振動信号として取得し、ドラム音センサによって取得された音波信号から当該不要な振動を示す振動信号を減じるように混合を行う構成を採用可能である。また、必要な振動を示す振動信号を所定の周波数の振動信号として取得し、ドラム音センサによって取得された音波信号から振動信号を除外しておき、さらに、当該必要な振動信号を加算するように混合を行う構成を採用可能である。以上の構成によれば、ドラムの内部に設置されたセンサによって、高い音質でドラムの音を集音することが可能である。
ここで、シェルは筒状の部材であり、少なくとも一方の開口端にドラムヘッドを所定の張力で保持することができればよい。ドラムヘッドをシェルに対して取り付けるための構成としては種々の構成を採用可能であり、例えば、シェルの外周に取り付けられるラグおよび当該ラグに取り付けられるフープによってドラムヘッドの保持部材を構成し、ラグにフープを取り付け、フープにドラムヘッドを取り付ける構成等を採用可能である。なお、筒の形状は円筒であっても良いし、他の形状(例えば、開口部が多角形の筒)であってもよい。
ドラムヘッドはシェルの一方の開口端に取り付けられる振動膜である。従って、当該ドラムヘッドがスティック等で打撃されることにより、ドラムの演奏音が生成されれば良い。むろん、ドラムヘッドが取り付けられるシェルの開口端と逆側の開口端に対して他のヘッド(レゾナンスヘッド)を取り付ける構成であっても良いし、他のヘッドを取り付けない構成であっても良い。
ドラム音センサは、ドラムヘッドおよびシェルの内側の音波を示す音波信号を検出することができればよい。従って、マイクであっても良いしダイナミックスピーカであってもよい。なお、同一周波数の音を集音するマイクとダイナミックスピーカとを比較した場合に、一般的にはダイナミックスピーカの方が小型であるため、ダイナミックスピーカを使用すれば、マイクを使用するよりもドラム内の音場形成を阻害する程度が抑制される。ドラム音センサはドラムの内部に設置されれば良く、ドラム音センサをドラムの内部に設置するための構成としては、種々の構成を採用可能である。例えば、シェルの内壁やラグに対して保持部材を取り付けるとともに、当該保持部材に対してドラム音センサを取り付ける構成等を採用可能である。むろん、ドラムの内部におけるドラム音センサの設置位置は任意であり、種々の位置とすることができる。また、保持部材の形状や材質も任意であり、弾性のある材料で保持部材の少なくとも一部を構成することにより、保持部材を介してドラム音センサに対して振動が伝達されないように構成しても良い。
シェル振動センサは、シェルの振動を示す振動信号を検出することができればよい。従って、各種の振動センサ、例えば、圧電素子、ひずみゲージ、フィルム状の圧電素子等を採用可能である。なお、シェルの振動には、上述の必要な振動と不要な振動とが含まれるが、振動抽出手段によって所定の周波数の振動信号を抽出する信号処理が行われるため、シェル振動センサによって振動信号を検出する際には、可能な限り広帯域で振動信号を検出することが好ましい。例えば、シェル振動センサに対して防振せず、シェルに対して直接的に取り付けることが好ましい。なお、ドラム音センサがドラムの内部の音波を示す音波信号を検出する構成であるため、シェル振動センサもシェルの内側に取り付けることが好ましい。
振動抽出手段は、シェルの振動を示す振動から所定の周波数の振動信号を抽出することができればよい。例えば、信号処理(フィルタリング等)によって、振動信号から所定の周波数の振動信号を抽出することができればよい。この構成によれば、防振構造を利用して周波数を限定する構成と比較して、簡易な構成によって所望の周波数の振動信号を抽出することができる。むろん、所定の周波数は、特定の値の周波数であっても良いし、複数の値の周波数であっても良いし、所定の帯域に渡る周波数であっても良い。
演奏音取得手段は、ドラム音センサで検出した音波信号と所定の周波数の振動信号とを混合してドラムの演奏音を取得することができればよい。従って、少なくともドラム音センサで検出した音波信号と所定の周波数の振動信号とを加算または減算(または加算かつ減算)することによってドラムの演奏音を取得することができればよい。むろん、演奏音取得手段を構成する機器は、ドラム内に設置されても良いし、ドラム外に設置されても良い。また、ドラム音センサで検出した音波信号と所定の周波数の振動信号とに対して混合以外の信号処理を実施しても良く、例えば、信号に対して所定のゲインをかけて増幅あるいは減衰させて混合しても良い。
さらに、防振機構を介してドラム音センサがシェルの内壁に取り付けられる構成において、振動抽出手段が、振動信号からシェルの固有振動を示す固有振動信号を除外した振動信号を所定の周波数の振動信号として抽出し、演奏音取得手段が、振動信号から固有振動信号を除外した振動信号を音波信号に対して加算して演奏音を取得する構成としても良い。
すなわち、防振機構を介してドラム音センサがシェルの内壁に取り付けられる場合、ドラム音センサが検出する音波信号の主な成分は打撃音信号であり、リムショット音信号とヘッド−シェル振動音信号は取得されないか、または抑制されている。そこで、ドラム音センサが検出した音波信号に対して、振動信号からシェルの固有振動を示す固有振動信号を除外した振動信号、すなわち、リムショット振動信号とヘッド−シェル振動信号とを加算すれば、高音質での集音を行うために集音されるべき打撃音信号とリムショット音信号とヘッド−シェル振動音信号とを再現することができる。むろん、ドラム音センサが検出した音波信号に対して、振動信号から固有振動信号を除外した振動信号を加算する際には、ドラム音センサが検出した音波信号と振動信号から固有振動信号を除外した振動信号とのいずれか一方または双方に対して所定のゲインをかける処理や所定の周波数を抽出する処理等の信号処理を実施しても良い。
さらに、ドラム音センサが検出する音波信号に打撃音信号とリムショット音信号とヘッド−シェル振動音信号と固有振動音信号とが含まれる場合(防振機構を使用しない場合、または防振機構による音の抑制の程度が小さい場合)において、各種の信号処理によって演奏音を取得することが可能である。例えば、振動抽出手段が、固有振動信号を所定の周波数の振動信号として抽出し、演奏音取得手段が、ドラム音センサが検出した音波信号から固有振動信号を減じて演奏音を取得する構成を採用しても良い。すなわち、ドラム音センサが検出する音波信号に打撃音信号とリムショット音信号とヘッド−シェル振動音信号と固有振動音信号とが含まれる場合、不要な音は固有振動音信号である。そこで、振動抽出手段によって固有振動信号を取得し、ドラム音センサが検出した音波信号から当該固有振動信号を減じれば、ドラムの演奏音のみを残すことができる。
なお、シェルの固有振動信号は、ドラムの音に悪影響を与える音を誘発する振動の信号であれば良く、人間の聴覚によって知覚されやすい振動信号が該当する。従って、例えば、固有振動のうち、最も低次の振動モードや、最も低次の振動モードを含む低次の振動モードを対象とする構成等を採用可能である。また、ドラム音センサが検出した音波信号から固有振動信号を減じる際には、ドラム音センサが検出した音波信号と固有振動信号とのいずれか一方または双方に対して所定のゲインをかける処理や所定の周波数を抽出する処理等の信号処理を実施しても良い。
さらに、ドラム音センサが検出する音波信号に打撃音信号とリムショット音信号とヘッド−シェル振動音信号と固有振動音信号とが含まれる場合において、振動抽出手段が、振動信号からシェルの固有振動を示す固有振動信号を除外した振動信号を所定の周波数の振動信号として抽出し、演奏音取得手段が、ドラム音センサが検出した音波信号から振動信号を減じ、さらに、振動信号から固有振動信号を除外した振動信号を加算して演奏音を取得する構成を採用しても良い。すなわち、振動信号にはリムショット振動信号とヘッド−シェル振動信号と固有振動信号が含まれ、これらの振動はドラム音センサが検出する音波信号のうち、打撃音信号以外の音波信号とほぼ等しい。また、振動信号から固有振動信号を除外すると、必要な振動を示すリムショット振動信号とヘッド−シェル振動信号とが残る。
そこで、ドラム音センサが検出した音波信号から振動信号を減じれば、ドラム音センサが検出した音波信号から打撃音信号のみを残すことができる。従って、さらに、振動信号からシェルの固有振動信号を除外した信号を加えれば、打撃音信号とリムショット音信号とヘッド−シェル振動音信号とからなるドラムの演奏音を生成することができる。むろん、ここでも、ドラム音センサが検出した音波信号と振動信号と振動信号からシェルの固有振動信号を除外した振動信号との少なくとも1個に対して所定のゲインをかける処理や所定の周波数を抽出する処理等の信号処理を実施しても良い。
さらに、ドラム音センサが検出する音波信号に打撃音信号とリムショット音信号とヘッド−シェル振動音信号と固有振動音信号とが含まれる場合において、振動抽出手段が、固有振動信号と振動信号から固有振動信号を除外した振動信号とを所定の周波数の振動信号として抽出し、演奏音取得手段が、ドラム音センサが検出した音波信号から、固有振動信号に第1のゲインをかけた振動信号を減じ、さらに、振動信号から固有振動信号を除外した振動信号に第2のゲインをかけた振動信号を減じ、さらに、振動信号からシェルの固有振動信号を除外した振動信号に第3のゲインをかけた振動信号を加算して演奏音を取得する構成としても良い。
すなわち、ドラム音センサが検出する音波信号に打撃音信号とリムショット音信号とヘッド−シェル振動音信号と固有振動音信号とが含まれる場合、不要な音は固有振動音信号である。従って、ドラム音センサが検出した音波信号からリムショット音信号とヘッド−シェル振動音信号と固有振動音信号とを減じれば、打撃音信号のみを残すことができる。振動信号にはリムショット振動信号とヘッド−シェル振動信号と固有振動信号が含まれており、これらの振動はドラム音センサが検出する音波信号のうち、打撃音信号以外の音波信号とほぼ等しいが厳密には異なっている。そこで、振動信号に含まれるリムショット振動信号とヘッド−シェル振動信号と固有振動信号とを、ドラム音センサが検出する音波信号から減じるにあたり、周波数毎に異なるゲインをかけた後にドラム音センサが検出した音波信号から減じる構成とする。
すなわち、シェルの固有振動信号に第1のゲインをかけ、振動信号から固有振動信号を除外して得られたリムショット振動信号とヘッド−シェル振動信号とに第2のゲインをかける。そして、ドラム音センサが検出した音波信号から各ゲインをかけた振動信号を減じる構成とする。この構成によれば、ドラム音センサが検出した音波信号から打撃音信号をより正確に抽出することができる。そこで、得られた打撃音信号に対して必要な振動(振動信号からシェルの固有振動信号を除外した振動信号)に第3のゲインをかけた振動信号を加算すれば演奏音を取得することができる。むろん、ここでも、各振動の少なくとも1個に対して所定のゲインをかける処理や所定の周波数を抽出する処理等の信号処理を実施しても良い。
ここでは、下記の順序に従って本発明の実施の形態について説明する。
(1)ドラムの構成:
(2)他の実施形態:
(1)ドラムの構成:
図1Aは本発明の一実施形態にかかるドラム1を示す断面図であり、シェル10およびドラムヘッド20aで切断した状態を示している。シェル10は内径がほぼ一定の筒状の部材である。シェル10の外壁には複数の位置にラグ10cが取り付けられる。本実施形態において、ラグ10cは、円周方向に沿って複数の位置(例えば6カ所)に取り付けられる。ラグ10cにはシェル10の高さ方向に平行に延びるチューニングピン10bが取り付けられる。
チューニングピン10bには、フープ10aが取り付けられる。フープ10aは筒形の部材であり、当該フープ10aの内径はシェル10の外径より大きく、フープ10aの外径はシェル10の直径の延長線上に配置された2個のチューニングピン10bの距離より小さい。従って、フープ10aを、シェル10の外周とチューニングピン10bとの間に配置することができる。さらに、チューニングピン10bに対してフープ10aを取り付けた状態でチューニングピン10bを調整することにより、フープ10aの高さ方向の位置を調整することができる。
ドラムヘッド20aは、薄い円形の部材であり、縁をフープ10aに取り付けることができる。従って、ドラムヘッド20aをフープ10aに取り付けた状態でチューニングピン10bによってフープ10aの高さ方向の位置を調整することにより、ドラムヘッド20aに作用している張力を調整しつつドラムヘッド20aをシェル10の開口端に取り付けることができる。なお、本実施形態においては、シェル10の開口端の一方にスティック等によって打撃される面(バターヘッド)となるドラムヘッド20aを取り付けているが、むろん、シェル10の開口端の他方にスティック等によって打撃されない面となるレゾナンスヘッドを取り付けても良い。
シェル10およびドラムヘッド20aの内側には、ドラム音センサ30aとシェル振動センサ30bとが設置される。本実施形態においては、シェル10の内壁に屈曲された板状の保持部材31aが取り付けられ、保持部材31aの一面(ドラムヘッド20a側の面)に防振部材34aが取り付けられる。また、防振部材34aにドラム音センサ30aが取り付けられる。本実施形態において、防振部材34aは弾性体であることによってシェル10からドラム音センサ30aに対して振動が伝達されることを防止することができればよく、例えば、各種の弾性体(ゴム、板バネ、コイルバネ等)によって構成可能である。
本実施形態においては、演奏のためにドラムヘッド20aに対して打撃が加えられた場合におけるドラムヘッド20aの最大可動範囲と干渉せず、当該最大可動範囲に最も近い位置にドラム音センサ30aが配置される。すなわち、ドラム音センサ30aは、ドラムヘッド20aの動作と干渉しない範囲において、できるだけドラムヘッド20aに近くなるように配置されている。
ドラム音センサ30aは、音によって励起されるダイヤフラムの振動を電気信号に変換する装置であり、電気信号の出力端子に配線32aが接続されている。従って、ドラムヘッド20aに対する打撃によってドラム1の内部に音波が励起されるとダイヤフラムが振動し、音波に応じた音波信号が配線32aに出力される。なお、防振部材34aを利用することなくドラム音センサ30aが保持部材31aに取り付けられている場合、ドラム音センサ30aにおいては、ドラムヘッド20aの振動によってドラム1の内部の空間に励起される音波を示す音波信号である打撃音信号と、フープ10aをたたくリムショットにおけるシェル10の振動に起因する音波を示す音波信号であるリムショット音信号と、ドラムヘッドの振動によって励起されるシェルの振動に起因する音波を示す音波信号であるヘッド−シェル振動音信号と、シェルの固有振動に起因する音波を示す音波信号である固有振動音信号とを検出し得る。
しかし、本実施形態においては、ドラム音センサ30aが防振部材34aを介して保持部材31aに取り付けられているため、ドラム音センサ30aにおいてシェル10の振動に起因するリムショット音信号とヘッド−シェル振動音信号と固有振動音信号は検出されない(または極めて小さい)。そこで、本実施形態においては、ドラム音センサ30aによって打撃音信号のみが検出されると見なしている。
配線32aは、シェル10の内壁および外壁を貫通するコネクタ33aに接続されており、当該コネクタ33aに対して所定の信号処理機能を備えたアンプ40を接続することにより、配線32aに出力された電気信号を演奏音出力として取り出すことができる。従って、本実施形態においては、ドラム音センサ30aによって検出した打撃音信号を演奏者出力として取り出すことができる。なお、本実施形態において、ドラム音センサ30aのダイヤフラムは、ドラムヘッド20aの方向に向けられている。従って、ドラム音センサ30aにおいては、ドラムヘッド20aによって励起された音を効果的に集音することができる。
シェル振動センサ30bは、板状の外形を有する圧電素子を備えたセンサであり、板の一面に加えられる振動を電気信号に変換して出力する。また、本実施形態においては、シェル振動センサ30bの外形を構成する板の一面がシェル10の内壁に接触するように、当該シェル振動センサ30bがシェル10に取り付けられている。さらに、本実施形態においては、シェル振動センサ30bの電気信号の出力端子に配線32bが接続されている。従って、ドラムヘッド20aに対する打撃またはフープ10aに対する打撃が行われることによってシェル10が振動すると、圧電素子が振動し、振動に応じた振動信号が配線32bに出力される。すなわち、シェル振動センサ30bにおいては、フープをたたくリムショットにおけるシェルの振動を示すリムショット振動信号と、ドラムヘッドの振動によって励起されるシェルの振動を示すヘッド−シェル振動信号と、シェルの固有振動を示す固有振動信号とを配線32bに出力する。
配線32bは、シェル10の内壁および外壁を貫通するコネクタ33bに接続されており、当該コネクタ33bに対して所定の信号処理機能を備えたアンプ40を接続することにより、配線32bに出力された信号を演奏音出力として取り出すことができる。従って、本実施形態においては、シェル振動センサ30bによって検出したリムショット振動信号とヘッド−シェル振動信号と固有振動信号とを演奏音出力として取り出すことができる。
コネクタ33bに接続されるアンプ40は、アンプ40に対する入力信号毎に信号処理を行う回路を備えており、当該信号処理には、信号にゲインをかける増幅処理と信号から所定の周波数を抽出するフィルタリング処理が含まれている。本実施形態においては、シェル振動センサ30bによって検出されたシェルの振動を示す振動信号に対してシェル10の振動を示す振動信号からシェル10の固有振動信号を除外するフィルタリング処理を行う。ここでは、固有振動信号のうち、少なくとも最も低次の振動モードを除外するため、シェル10の振動を示す振動信号にローパスフィルタを作用させて0〜800Hzの振動成分を除外する。この結果、シェル10の振動を示す振動信号から人間の耳で認識されやすい固有振動信号が除外されて、リムショット振動信号とヘッド−シェル振動信号とが残る。
さらに、アンプ40においては、ドラム音センサ30aによって検出された打撃音信号に当該固有振動信号が除外された振動信号を加算することによって演奏音出力を取得する。従って、当該演奏音出力に基づいてスピーカ等を駆動することにより、ドラム1の原音を忠実に再現することができる。すなわち、ドラム1の内部に設置されたセンサによって、高い音質でドラム1の音を集音することが可能である。
(2)他の実施形態:
以上の実施形態は本発明を実施するための一例であり、振動信号から所定の周波数の振動信号を抽出し、ドラム音センサによって検出した音波信号と混合することで演奏音を取得する限りにおいて、他にも種々の実施形態を採用可能である。例えば、ドラムの内部に設置するドラム音センサ30aの数は1個に限定されず、2個以上であっても良い。また、ドラムヘッド20aにおけるアタック音はボディ音よりも高い周波数の音であるため、相対的に高い周波数で感度が良いドラム音センサによってアタック音を検出し、相対的に低い周波数で感度が良いドラム音センサによってボディ音を検出する構成であっても良い。さらに、スネアドラムにおいて、スネアワイア(スナッピーとも呼ばれる)に起因するスネアワイア音は、一般的にはアタック音よりも高い周波数の音であるため、アタック音とボディ音を検出するドラム音センサに加え、アタック音を検出するためのドラム音センサよりも相対的に高い周波数で感度が良いドラム音センサを追加し、当該ドラム音センサによってスネアワイア音を検出する構成としても良い。
むろん、広帯域に渡って感度がよいドラム音センサを使えば、1個のドラム音センサによってボディ音とアタック音とスネアワイア音とを検出するように構成可能であり、この場合、ドラム音センサの位置は図1Aに示す例よりも下側(スネアサイド側)に存在する方が好ましい。また、各ドラム音センサの向きとしても各種の向きを採用可能であり、ドラム音センサ30aをドラムヘッド20aに対して傾斜させるように設置することで、ドラム音センサ30aをドラムヘッド20aの中央に向ける構成としても良い。
さらに、図1Aに示す構成において、防振部材34aを利用することなくドラム音センサ30aが保持部材31aに取り付けられる構成としても良い。この場合、シェル10の振動が保持部材31aを介してドラム音センサ30aに伝達されるため、打撃音信号とリムショット音信号とヘッド−シェル振動音信号と固有振動音信号とがドラム音センサ30aによって検出される。従って、ドラム音センサ30aによって検出される音波信号には不要な音である固有振動音信号が含まれている。そこで、シェル振動センサ30bによって検出された信号に対してアンプ40によって信号処理を行って、ドラム音センサ30aによって検出された信号と混合すれば、ドラム1の原音により忠実な演奏音を取得することができる。
図1Bは、アンプ40における信号処理の1例を示すブロック図である。同図1Bにおいては、ドラム音センサ30aによって検出される音波信号を打撃音信号fd、リムショット音信号fr、ヘッド−シェル振動音信号fs、固有振動音信号fnとして示し、シェル振動センサ30bによって検出される振動をリムショット振動信号Fr、ヘッド−シェル振動信号Fs、固有振動信号Fnとして示している。
図1Bに示す例において、アンプ40においては混合器Mとローパスフィルタ(LPF)Lと増幅器Aとイコライザ(EQ)Eとによって処理を行う。すなわち、ドラム音センサ30aによって検出される音波信号(打撃音信号fd、リムショット音信号fr、ヘッド−シェル振動音信号fs、固有振動音信号fn)は混合器Mに入力され、シェル振動センサ30bによって検出される振動(リムショット振動信号Fr、ヘッド−シェル振動信号Fs、固有振動信号Fn)は、ローパスフィルタLに入力される。また、ローパスフィルタLの出力は増幅器Aに入力され、増幅器Aの出力が混合器Mに入力される。混合器Mの出力はイコライザEに入力され、イコライザEの出力が演奏音出力foutとされる。
本例において、ローパスフィルタLは、シェル10の固有振動信号を抽出するフィルタであり、例えば、0〜800Hzの振動信号を抽出するフィルタによって構成可能である。ローパスフィルタLに入力された振動信号からはリムショット振動信号Frおよびヘッド−シェル振動信号Fsが除外され、固有振動信号Fnが抽出されて出力される。抽出された当該固有振動信号Fnは、増幅器Aによって所定のゲインがかけられて増幅器Aから出力される。ここで、ゲインは、固有振動信号Fnの強度を固有振動音信号fnの強度に合わせるための値として設定(1以上であっても良いし1以下であっても良い)される。
図1Bに示す例においては、固有振動信号Fnと固有振動音信号fnとは発生原因が同一であるため、振動特性がほぼ同一の特性であると見なし、固有振動信号Fnのゲインを調整することで固有振動音信号fnとほぼ同一の信号にすることができると見なしている。そこで、図1Bにおいては、増幅器Aの出力が固有振動音信号fnとほぼ同一の振動信号であることを、増幅器Aの出力線に(fn)と併記することによって示している。
混合器Mは、入力された信号同士を加算し、あるいは一方の信号から一方の信号を減じて出力する回路であり、図1Bにおいては、ドラム音センサ30aによって検出される音波信号から増幅器Aの出力信号を減じて出力する。ここで、増幅器Aの出力信号は固有振動音信号fnとほぼ同一であるため、混合器Mからは、ドラム音センサ30aによって検出された信号(打撃音信号fd、リムショット音信号fr、ヘッド−シェル振動音信号fs、固有振動音信号fnが重畳された信号)から固有振動音信号fnが減じられた音波信号が出力される。すなわち、図1Bに示す例においては、ドラム音センサ30aによって検出される音波信号からシェル10の固有振動信号が減じられて出力される。従って、ドラム音センサ30aによって検出された音波信号から不要な音波信号を除去した状態で出力することができ、ドラム1の原音に忠実な音を生成することができる。
なお、図1Bに示す例において、混合器Mの出力は、イコライザEによって調整可能であるため、打撃音信号fd、リムショット音信号fr、ヘッド−シェル振動音信号fsからなる信号において所定の周波数の音波信号を強調し、または減衰させることができる。この結果、よりドラム1の原音に忠実な音を生成することができる。
さらに、シェル振動センサ30bの出力からシェル10の固有振動信号を除外した振動信号に基づいて演奏音出力を生成する図1Cのような構成としても良い。図1Cに示す例において、アンプ40においては混合器M1,M2とハイパスフィルタ(HPF)Hと増幅器A1,A2とイコライザE1,E2とによって処理を行う。すなわち、ドラム音センサ30aによって検出される音波信号(打撃音信号fd、リムショット音信号fr、ヘッド−シェル振動音信号fs、固有振動音信号fn)は混合器M1に入力され、シェル振動センサ30bによって検出される振動(リムショット振動信号Fr、ヘッド−シェル振動信号Fs、固有振動信号Fn)は、増幅器A1およびハイパスフィルタHに入力される。また、増幅器A1の出力は混合器M1に入力され、ハイパスフィルタHの出力はイコライザE1に入力される。さらに、イコライザE1の出力は増幅器A2に入力され、増幅器A2の出力が混合器M2に入力される。さらに、混合器M1の出力はイコライザE2に入力され、イコライザE2の出力が混合器M2に入力される。そして、混合器M2の出力が演奏音出力foutとされる。
本例において、シェル振動センサ30bによって検出される振動信号(リムショット振動信号Fr、ヘッド−シェル振動信号Fs、固有振動信号Fn)は、増幅器A1によって所定のゲインがかけられて増幅器A1から出力される。ここで、ゲインは、リムショット振動信号Fr、ヘッド−シェル振動信号Fs、固有振動信号Fnの強度をリムショット音信号fr、ヘッド−シェル振動音信号fs、固有振動音信号fnの強度に合わせるための値として設定(1以上であっても良いし1以下であっても良い)される。
図1Cに示す例においては、シェル10の振動を示す振動信号とシェル10の振動に起因する音波信号の特性とがほぼ同一であると見なし、シェル振動センサ30bによって検出される振動信号のゲインを調整することでリムショット音信号fr、ヘッド−シェル振動音信号fs、固有振動音信号fnとほぼ同一の信号にすることができると見なしている。そこで、図1Cにおいては、増幅器A1の出力がリムショット音信号fr、ヘッド−シェル振動音信号fs、固有振動音信号fnとほぼ同一の振動信号であることを、増幅器A1の出力線に(fr、fs、fn)と併記することによって示している。
混合器M1,M2は、入力された信号同士を加算し、あるいは一方の信号から一方の信号を減じて出力する回路であり、混合器M1においては、ドラム音センサ30aによって検出される音波信号から増幅器A1の出力信号を減じて出力する。ここで、増幅器A1の出力信号はリムショット音信号fr、ヘッド−シェル振動音信号fs、固有振動音信号fnとほぼ同一であるため、混合器M1からは、ドラム音センサ30aによって検出された信号(打撃音信号fd、リムショット音信号fr、ヘッド−シェル振動音信号fs、固有振動音信号fnが重畳された信号)からリムショット音信号fr、ヘッド−シェル振動音信号fs、固有振動音信号fnが減じられた音波信号が出力される。すなわち、図1Cに示す例においては、ドラム音センサ30aによって検出される音波信号からシェル10の振動を示す振動信号が減じられる。なお、図1Cに示す例において、混合器M1の出力は、イコライザE2によって周波数毎に強調、減衰させることが可能である。
ハイパスフィルタHは、シェル10の固有振動信号を除外した振動信号を抽出するフィルタであり、例えば、800Hzより大きい周波数の振動信号を抽出するフィルタによって構成可能である。ハイパスフィルタHに入力された振動信号からは固有振動信号Fnが除外され、リムショット振動信号Frおよびヘッド−シェル振動信号Fsが抽出されて出力される。抽出された当該リムショット振動信号Frおよびヘッド−シェル振動信号Fsは、イコライザE1に入力され、イコライザE1の出力は増幅器A2に入力される。
すなわち、図1Cにおいては、リムショット振動信号Frおよびヘッド−シェル振動信号Fsの強度比とリムショット音信号frおよびヘッド−シェル振動音信号fsの強度比は若干異なると見なし、イコライザE1によって周波数毎に強調または減衰を行った後に増幅器A2にてゲインをかけることで、リムショット音信号frとヘッド−シェル振動音信号fsとが混合された状態を生成する。図1Cにおいては、生成された信号がリムショット音信号frとヘッド−シェル振動音信号fsとほぼ同一の振動信号であることを、増幅器A2の出力線に(fr、fs)と併記することによって示している。
混合器M2においては、イコライザE2の出力信号に増幅器A2の出力信号を加算して出力する。すなわち、図1Cに示す例においては、ドラム音センサ30aによって検出される音波信号からシェル10の振動を示す振動信号が減じられた後に、シェル振動センサ30bによって検出された振動信号から固有振動信号が除外された振動信号が加算される。
ここで、増幅器A2の出力信号はリムショット音信号frとヘッド−シェル振動音信号fsとほぼ同一であり、イコライザE2の出力は打撃音信号fdを周波数毎に調整した結果であるため、混合器M1からは、打撃音信号fd、リムショット音信号fr、ヘッド−シェル振動音信号fsが周波数毎に調整されて混合された音波信号が出力される。従って、ドラム1の原音に忠実な音を生成することができる。
図1Bに示す例においては、固有振動信号Fnと固有振動音信号fnとの振動特性がほぼ同一の特性であると見なしているが、前者はシェル10の振動を示す振動信号であり、後者はドラム音センサ30aで検出される音波を示す音波信号であるため、厳密には両者は異なっている。例えば、後者における固有振動音信号fnには、保持部材31aを介してシェル10から伝達される振動を示す振動信号とシェル10の振動によってドラム1内の空気が振動することによってドラム音センサ30aで検出される振動信号とが含まれる。そして、シェル振動センサ30bの検出信号には、ドラム1内の空気が振動することによってドラム音センサ30aで検出される信号が含まれない。従って、この点で固有振動信号Fnと固有振動音信号fnとの振動特性は異なり得る。
そこで、各音波信号や振動信号をより詳細に調整できるように図1Dのような構成を採用しても良い。図1Dに示す例において、アンプ40においては混合器Ma,MbとローパスフィルタLaとハイパスフィルタHaと増幅器Aa,Ab,AcとイコライザEa,Ebとによる処理を行う。すなわち、ドラム音センサ30aによって検出される音波信号(打撃音信号fd、リムショット音信号fr、ヘッド−シェル振動音信号fs、固有振動音信号fn)は混合器Maに入力され、シェル振動センサ30bによって検出される振動(リムショット振動信号Fr、ヘッド−シェル振動信号Fs、固有振動信号Fn)は、ローパスフィルタLaおよびハイパスフィルタHaに入力される。また、増幅器Aaおよび増幅器Abの出力は混合器Maに入力され、増幅器Abの出力はイコライザEaに入力される。さらに、イコライザEaの出力は増幅器Acに入力され、増幅器Acの出力が混合器Mbに入力される。さらに、混合器Maの出力はイコライザEbに入力され、イコライザEbの出力が混合器Mbに入力される。そして、混合器Mbの出力が演奏音出力foutとされる。
本例において、ローパスフィルタLaは、シェル10の固有振動信号を抽出するフィルタであり、例えば、0〜800Hzの振動信号を抽出するフィルタによって構成可能である。ローパスフィルタLに入力された振動信号からはリムショット振動信号Frおよびヘッド−シェル振動信号Fsが除外され、固有振動信号Fnが抽出されて出力される。抽出された当該固有振動信号Fnは、増幅器Aaによって所定のゲインがかけられて増幅器Aaから出力される。ここで、ゲインは、固有振動信号Fnの強度を固有振動音信号fnの強度に合わせるための値として設定(1以上であっても良いし1以下であっても良い)される。
ハイパスフィルタHaは、シェル10の固有振動信号を除外した振動信号を抽出するフィルタであり、例えば、800Hzより大きい周波数の振動信号を抽出するフィルタによって構成可能である。ハイパスフィルタHaに入力された振動信号からは固有振動信号Fnが除外され、リムショット振動信号Frおよびヘッド−シェル振動信号Fsが抽出されて出力される。抽出された当該リムショット振動信号Frおよびヘッド−シェル振動信号Fsは、増幅器Abにて所定のゲインがかけられた後、混合器MaおよびイコライザEaに入力され、イコライザEaの出力は増幅器Acに入力される。ここで、ゲインは、リムショット振動信号Frおよびヘッド−シェル振動信号Fsの強度をリムショット振動音信号frおよびヘッド−シェル振動音信号fsの強度に合わせるための値として設定(1以上であっても良いし1以下であっても良い)される。
混合器Ma,Mbは、入力された信号同士を加算し、あるいは一方の信号から一方の信号を減じて出力する回路であり、混合器Maにおいては、ドラム音センサ30aによって検出される音波信号から増幅器Aa,Abの出力信号を減じて出力する。ここで、固有振動信号Fnと固有振動音信号fnとは若干異なるものの、増幅器Aaにおいて固有振動信号Fnのゲインを調整することで固有振動音信号fnとほぼ同一の信号を出力できると見なされる。そこで、図1Dにおいては、増幅器Aaの出力が固有振動音信号fnとほぼ同一の振動を示すことを、増幅器Aaの出力線に(fn)と併記することによって示している。
また、リムショット振動信号Frおよびヘッド−シェル振動信号Fsと、リムショット振動音信号frおよびヘッド−シェル振動音信号fsとは若干異なるものの、増幅器Abによってリムショット振動信号Frおよびヘッド−シェル振動信号Fsのゲインを調整することでリムショット振動音信号frおよびヘッド−シェル振動音信号fsとほぼ同一の信号を出力できると見なされる。そこで、図1Dにおいては、増幅器Abの出力がリムショット振動音信号frおよびヘッド−シェル振動音信号fsとほぼ同一の振動信号を示すことを、増幅器Abの出力線に(fr,fs)と併記することによって示している。
混合器Maによって、ドラム音センサ30aによって検出される音波信号から増幅器Aa,Abの出力信号が減じられると、打撃音信号fdが出力される。すなわち、図1Dに示す例においては、ドラム音センサ30aによって検出される音波信号から、シェル10の固有振動信号Fnに増幅器Aaによって第1のゲインをかけた振動信号を減じ、さらに、シェル10の振動を示す振動信号からシェル10の固有振動信号を除外した振動信号Fr,Fsに増幅器Abによって第2のゲインをかけた振動信号を減じることになる。
なお、図1Dに示す例においては、増幅器Aaの出力が固有振動音信号fnとほぼ同一であり、かつ、増幅器Abの出力がリムショット振動音信号frおよびヘッド−シェル振動音信号fsとほぼ同一であるため、混合器Maによる混合によって打撃音信号fdを正確に抽出することができる。一方、図1Cに示す例においては、増幅器A1の出力がリムショット音信号fr、ヘッド−シェル振動音信号fs、固有振動音信号fnとほぼ同一であるため、混合器M1による混合によって打撃音信号fdを正確に抽出することができる。しかし、図1Dに示す例と図1Cに示す例とを比較すると、図1Dに示す例においては、固有振動音信号fnと他の信号(リムショット振動音信号frおよびヘッド−シェル振動音信号fs)とを区別して混合処理を行っているため、より正確に打撃音信号fdを抽出することができる。
さらに、図1Dに示す例おいては、イコライザEaによって、リムショット振動音信号frおよびヘッド−シェル振動音信号fsに対して周波数毎に強調または減衰を行った後に増幅器Acにてゲインをかけることができる。さらに、図1Dに示す例おいては、打撃音信号fdに対してもイコライザEbによって周波数毎に強調または減衰を行うことができる。従って、打撃音信号fdと、リムショット振動音信号frおよびヘッド−シェル振動音信号fsとを区別して高音質化した後に混合器Mbで混合して演奏音出力を取得することができる。従って、ドラム1の原音に忠実な音を生成することができる。
以上のように、図1Dに示す例においては、シェル振動センサ30bによって検出された振動信号から固有振動信号が除外された振動に対して増幅器Ab,Acによるゲインをかけた信号と混合器Maの出力信号とが加算されることになる。すなわち、増幅器Ab,Acによるゲインの和を第3のゲインと見なせば、シェル10の振動を示す振動信号からシェル10の固有振動信号を除外した振動信号に第3のゲインをかけた信号と混合器Maの出力信号とを加算することになる。
なお、上述の図1B〜図1Dに示す構成は一例であり、その構成要素の一部を省略し、また、他の構成を追加することも可能である。例えば、各例における増幅器やイコライザは省略しても良いし、増幅器やイコライザを追加しても良い。