JP2009218687A - ノイズキャンセル型ヘッドホン - Google Patents

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Abstract

【課題】 使用者の頭部への装着時や取り外し時に発生する圧力変化によって不用意な異常発音や感度の悪化を防止できる構成を備えたノイズキャンセル型ヘッドホンを得る。
【解決手段】 ヘッドホンハウジング4と一体的に設けられ開口を有するバッフル板3と、使用者の耳介を覆うためにバッフル板3の開口外周部に設けられたイヤパッド2と、バッフル板3の中央部に設けられた振動板9およびこれを振動させる磁極を主要部として備えた電気音響変換部SYと、外部から進入する雑音を感知可能なノイズキャンセル用のマイクロホン12と、を備えている。イヤパッド2と使用者の顔の側面により覆われる空間L1と外部とを連通して空間L1内の圧力変化を緩和する音響管100を備え、音響管100の一部に音波取り込み部が形成され、音波取り込み部にマイクロホン12が配置されている。
【選択図】 図1

Description

本発明は、ノイズキャンセル型ヘッドホンに関し、さらに詳しくは、ノイズの誤検知を防止する構造に特徴を有するものである。
周知のように、密閉型ヘッドホンは、耳介を覆う状態で使用者の頭部に装着されて使用されるパーソナルなスピーカとして知られており、その一つとしてノイズキャンセル型ヘッドホンがある。
ノイズキャンセル型ヘッドホンは、外部ノイズを集音して電気信号(以下、「外部ノイズ信号」と呼ぶ)に変換するマイクロホンを備えており、このマイクロホンが変換した外部ノイズ信号を位相反転することによりノイズキャンセル信号を生成し、再生すべき音声信号やオーディオ信号に加算し、電気音響変換器すなわちスピーカユニットから放音することでノイズをキャンセルしている(例えば、特許文献1)。
図3は、上述したノイズキャンセル方式を用いたノイズキャンセル型ヘッドホンの一例を示している。図3においてノイズキャンセル型ヘッドホン1は、次のように構成されている。
ノイズキャンセル型ヘッドホン1は、開口3Aを有するバッフル板3と、このバッフル板3の一面がわに一体化されて使用者の耳介周辺を覆うリング状のイヤパッド2と、バッフル板3のイヤパッド2とは反対側の面に一体化されたヘッドホンハウジング4を備えている。イヤパッド2は、バッフル板3の開口3Aの外周側に、外周面をバッフル板3の外周面とほぼ同一面にして一体化されている。ヘッドホン1が使用者の耳介Eを覆って使用者の顔の側面に装着されると、使用者の顔の側面と、イヤパッド2と、バッフル板3の一部と、後述の電気音響変換部SYによって密閉状の空間L1が形成されるようになっている。
バッフル板3の開口3Aには、電気音響変換部SYが設けられている。電気音響変換部SYは、中央部に開口5Aを有するベースフレーム5と、ベースフレーム5の開口5A内に嵌め込まれてベースフレーム5より小径で扁平なシャーレ状のヨーク6と、ヨーク6の内底部中心に固着された扁平なマグネット7と、マグネット7の端面に固着された板状のポールピース8と、ドーム状の振動板9に一体化されて円筒状に巻き回されたボイスコイル10を備えて構成されている。
ベースフレーム5には、複数箇所に周知構造のフェルトなどを用いた音響抵抗部材11の取り付け部である貫通穴5Bが形成されている。音響抵抗部材11は、電気音響変換部SYが有している振動板9で区切られている電気音響変換部SY内の空間と前記ハウジング4で区切られている電気音響変換部SYの背後の空間L2との間の空気の流通抵抗として作用する。音響抵抗部材11は、ヘッドホンの音響特性を決める一要因となっている。
バッフル板3の前面側すなわちイヤパッド2の取り付け面側には、電気音響変換部SYの側方において、集音部材として用いられるマイクロホン12が固定されている。マイクロホン12は、例えば、音圧変化を振動板の振動により感知して電極板間での静電容量の変化を信号として取り出すことができるエレクトレットコンデンサマイクロホンユニットを用いることができる。図3に示す構成では、イヤパッド2により囲まれている空間内でそのパッド近傍に配置されている。マイクロホンはこのような密閉空間内だけでなく、外部に設ける場合もあるが、実際の聴取位置での雑音感知という観点から空間内に設けることがある。
マイクロホン12は、イヤパッド2などで密閉された空間L1内に入り込む外部騒音の音圧を検知して雑音信号に変換し、この雑音信号を図示しないキャンセル駆動回路に出力する。キャンセル駆動回路では、雑音信号と逆位相のキャンセル信号を電器音響変換器SYに出力して雑音をキャンセルする振幅を持つ逆位相音波を発振するようになっている。
特表2004−526375号公報
密閉型のヘッドホンは、耳介E側の空間L1とヘッドホンハウジング4側との空間L2が電気音響器SYを境にして遮蔽され、ヘッドホンの使用状態ではイヤパッド2で覆われている空間L1はほぼ密閉された空間となっている。
このため、ヘッドホンを耳に押し付けて装着する場合あるいはこれとは逆に押し付けを解除した場合にはその空間内で圧力の上昇や負圧化傾向が発生する。
このような圧力変化は、完全な密閉空間であるとすれば外部との連通部がないことにより圧力変化が収まるまでに時間がかかる。
実際には、頭部の形状や髪の毛の多少などによってイヤパッド2と頭部との間に僅かな隙間Sができることが多く、イヤパッド2側の空間内と外部との圧力差はこの隙間Sを空気が流通することで収束される。
しかし、イヤパッド2側の空間と外部との連通部は、イヤパッド2と使用者の頭部との間の隙間Sに限られていることから、圧力変化が収まるまでの時間が長くなる。
圧力変化はヘッドホンに装備されているノイズキャンセル用のマイクロホン12にも作用する。そのため、上記圧力差で上記マイクロホン12の振動板が振動し、外部騒音とは関係のない信号を出力する。この信号に対応して、外部騒音を取り込んだ場合と同様に逆位相のキャンセル信号生成による発音処理が行われ、その発音も、圧力変化の収束が遅れるとそれに比例して長くなる。
この結果として、本来の雑音を対象としたキャンセル処理とは関係のない音が電気音響変換部から発せられる。また、圧力変化の収束の遅れに伴い雑音とは関係のない音が長時間発せられ、その間、使用者に不快音を与えることになる。しかも、マイクロホン12に圧力が作用すると、マイクロホン12の振動板の位置が変化する。マイクロホン12がコンデンサマイクロホンの場合、振動板の位置が変化することにより振動板と固定極との間の間隔が変化するため、マイクロホンの感度が変化してしまい、正確な雑音感知ができなくなる虞がある。これによっても不快な雑音を含んだまま楽音が再生されることもあり、ユーザに不快感を与える虞がある。
本発明の目的は、上記従来のノイズキャンセル型ヘッドホンにおける問題に鑑み、使用者の頭部への装着時や取り外し時に発生する圧力変化によって不用意な異常発音や感度の悪化を防止できる構成を備えたノイズキャンセル型ヘッドホンを提供することにある。
上記目的を達成するため、本発明は次の構成よりなる。
(1)ヘッドホンハウジングと一体的に設けられ開口を有するバッフル板と、使用者の耳介を覆うために前記バッフル板の開口外周部に設けられたイヤパッドと、前記バッフル板の中央部に設けられた振動板およびこれを振動させる磁極を主要部として備えた電気音響変換部と、外部から進入する雑音を感知可能なノイズキャンセル用のマイクロホンユニットと、を備えたノイズキャンセル型ヘッドホンであって、
前記イヤパッドと使用者の顔の側面により覆われる空間と外部とを連通して該空間内の圧力変化を緩和する音響管を備え、
前記音響管の一部に音波取り込み部が形成され、この音波取り込み部に前記マイクロホンユニットが配置されていることを特徴とするノイズキャンセル型ヘッドホン。
(2)前記マイクロホンユニットは、前記音響管での音響インピーダンス比で分割された圧力が作用する位置に配置されていることを特徴とする(1)に記載のノイズキャンセル型ヘッドホン。
(3)前記音響管は、可聴帯域以下の周波数の音波を通過させるローパスフィルタとして機能する(1)または(2)に記載のノイズキャンセル型ヘッドホン。
本発明によれば、イヤパッドにより囲まれている空間内部と外部とが音響管を介して連通させてあるので、空間内での圧力変化が生じた場合の空気の流通を促進して圧力変化を迅速に収束させることができる。これにより、ヘッドホン内部の圧力が外部の圧力と迅速に等価され、マイクロホンに対して圧力変化が長時間作用するのを防止して、キャンセルされるべき雑音以外の耳障りな音の発生が防止される。
上記ノイズキャンセル型ヘッドホンにおいて、マイクロホンユニットを、前記音響管での音響インピーダンス比で分割された圧力が作用する位置に配置すれば、圧力変動がマイクロホンに加わる時間が短縮される。このため、圧力変動で発生する電気音響変換部の過大な振幅、能動回路の動作の不安定さを解消し、上記過大な振幅、能動回路の動作の不安定さを要因とする発振を短時間で解消することができる。
音響管を、可聴帯域以下の周波数の音波を通過させるローパスフィルタとして機能させれば、外来雑音の可聴周波数成分がヘッドホン内のマイクロホンに入ることを防止することができる。
以下、図面により本発明を実施するための最良の形態について実施例を挙げて説明する。
図1は、本発明によるノイズキャンセル型ヘッドホンの要部を示す前記図3に準じた断面図である。図1において、図3に示した従来例の構成部分と同じ構成部分には同じ符号が付してある。以下、本発明の実施例において特徴的な構成および作用について重点的に説明し、図3に示した従来例の構成部分と同じ構成部分については説明を省略し、あるいは簡略化する。
図1において、ヘッドホンユニット1は、図3に示した従来例と同様に構成された、イヤパッド2、バッフル板3、ヘッドホンハウジング4、電気音響変換部SYを備えている。電気音響変換部SYは、上記従来例における電気音響変換部SYと同様に構成されたベースフレーム5、ヨーク6、永久磁石7、ポールピース8、振動板9を有してなる。
以下、本発明において特徴的な構成部分について説明する。バッフル板3の一部には音響管100が設けられている。音響管100は、バッフル板3の半径方向に向けて取り付けられていて、一方の開口は電気音響変換部SYの一部をなす振動板9の外周縁部前方に位置し、他方の開口はイヤパッド2とバッフル板3の外周面と同一面に位置して外部と錬通している。
音響管100は、ヘッドホンユニット1を使用者がその頭部に装着したとき、イヤパッド2で囲まれる空間L1内と外部とを連通させて空間L1に対する空気の吸排用、すなわち、空気流通用の管路であり、空間L1内の圧力変化を緩和させるものである。つまり、空間L1内の圧力が過大に変化した場合には、外部騒音の周波数域よりも低い周波数を以て外部と連通して空気を排出させることにより空間L1内での圧力を迅速に緩和するようになっている。換言すれば、音響管100は、空間L1と外部とを圧力等価するものである。
上記外部騒音よりも低い周波数は、その部分での音響抵抗に基づいて決まるものであり、音響管100の音響抵抗は、音響管100の管径、管路長により設定される。
音響管100には、外部騒音の音波を感知するためのマイクロホン12、例えばエレクトレットコンデンサマイクロホンが配置されている。音響管100を構成する管路の一部にはマイクロホン設置部として窓孔状の音波取り込み部が形成されていて、マイクロホン12はその前面すなわち音波受け入れ面を上記音波取り込み部に対向させて配置されている。
音響管100におけるマイクロホン12の配置位置は次の条件で設定されている。
音響管100は、空間L1内の圧力変化を緩和させるための空気の流通を可能にする一方、音響インピーダンス比において可聴帯域の音波がマイクロホン12に作用する位置、つまり、外部に対する開口端から所定の距離をおいた位置(長さ位置)にマイクロホン12の振動板が対向する開口すなわち音波取り込み部が設けられている。
図2は、上記構成の音響的な等価回路を示しており、各部の音響インピーダンス、空気のスティフネス、質量などを次のように定義する。
Pm:騒音成分の音圧
Ze:耳の音響インピーダンス
sf:イヤパッド2に囲まれた空間L1のスティフネス
mp:騒音成分の音響質量
rp1:音響管100の空間L1側入り口の流路抵抗
rp2:音響管100の騒音成分進入側の流路抵抗
Zc:マイクロホン12側でのキャパシタンス、インピーダンス、抵抗を総合した機械インピーダンス
図2に示すように、上記実施例の音響的な等価回路は、Ze、Pm、rp1、rp2、mp、Pmによる直列回路を有している。耳の音響インピーダンスZeと並列に空間L1のスティフネスsfが接続されている。マイクロホン12の音響インピーダンスは、図2に符号12を付したブロック内の構成のように表すことができる。マイクロホン12の音響インピーダンスが音響管100側での騒音成分の感知部分と並列に接続され、空間L1からの空気の進入側に位置する流路抵抗rp1と騒音成分の感知部分とのインピーダンス比が成立している。これにより、音響管100によって圧力等価を行うことができるとともに、音響管100の上記インピーダンス比で分割された圧力のみがマイクロホン12に加わるため、圧力変動がマイクロホン12に作用している時間を短縮することができる。
特に、音響管100での音響インピーダンス比の分割に際しては、騒音成分の音響成分mpをマイクロホン12の感度に適応させるように音響管100の口径を太くし、音響管100の外気への開口位置からマイクロホン12の位置までの距離を長くしてそれに対応した音響抵抗を設定することで、圧力変化を緩和する際に生じる空気の流通音が騒音と誤って感知されないようにすることが望ましい。
ちなみに、図4は、図3に示した従来のノイズキャンセル型ヘッドホンの音響的な等価回路を示している。この等価回路示すように、本実施例における音響管に相当する成分がない。そのため、イヤパッド2と使用者の頭部との間に生じている空間L1の気圧変動によるマイクロホン12の振動板の振動を緩和する方策がなく、マイクロホン12は騒音以外の音声信号を出力する。この音声信号に基づいてキャンセル信号が出力され、上記騒音以外の不用意な発音が行われてしまう。

以上のような本発明の実施例によれば、空間L1内での過大な圧力変化が生じた場合には音響管100を介して外部空間との間で空気が流通し、圧力差を迅速に緩和することができる。しかも、外部騒音が進入した場合には、音響管でのインピーダンス比で分割された位置に配置されているマイクロホン12により騒音を感知し、キャンセル信号を生成して騒音をキャンセルすることができる。
本実施例においては、外部騒音とは別に、マイクロホン12に音圧が作用する場合に相当する圧力が過大に変化した場合には、音響管100の音響質量、音響抵抗とイヤパッド2で囲まれた空間L1で構成される音響容量とを用いて、可聴帯域以下の周波数を通過させるローパスフィルタとして機能させることができるので、外部騒音の可聴周波数音波が空間L1内に不用意に入り込むのを防止でき、ノイズキャンセル以外に騒音の侵入を防止することも可能となる。
なお、空間L1の圧力変動を緩和するのに要する時間は、音響管100の流路抵抗を適宜設定することで調整することも可能である。さらに、音響管100は、その管路の構造で騒音成分に対する音響インピーダンスを設定するだけでなく、音響抵抗となる緩衝材を音響管100内に装填して音響的なインピーダンスの調整を行うことも可能である。
本発明にかかるノイズキャンセル型ヘッドホンの実施例を示す断面図である。 図1に示したノイズキャンセル型ヘッドホンにおける音響的モデルを説明するための等価回路図である。 ノイズキャンセル型ヘッドホンの従来例を示す断面図である。 図3に示したノイズキャンセル型ヘッドホンにおける音響的モデルを説明するための等価回路図である。
符号の説明
1 ヘッドホンユニット
2 イヤパッド
3 バッフル板
4 ヘッドホンハウジング
5 ベースフレーム
5A 開口
6 ヨーク
9 振動板
10 ボイスコイル
11 音響抵抗部材
12 マイクロホン
100 音響管
E 耳介
L1 耳介周辺の密閉空間
L2 空間L1と反対側のヘッドホンハウジング側空間
S 間隙
SY 電気音響部

Claims (4)

  1. ヘッドホンハウジングと一体的に設けられ開口を有するバッフル板と、使用者の耳介を覆うために前記バッフル板の開口外周部に設けられたイヤパッドと、前記バッフル板の中央部に設けられた振動板およびこれを振動させる磁極を主要部として備えた電気音響変換部と、外部から進入する雑音を感知可能なノイズキャンセル用のマイクロホンユニットと、を備えたノイズキャンセル型ヘッドホンであって、
    前記イヤパッドと使用者の顔の側面により覆われる空間と外部とを連通して該空間内の圧力変化を緩和する音響管を備え、
    前記音響管の一部に音波取り込み部が形成され、この音波取り込み部に前記マイクロホンユニットが配置されていることを特徴とするノイズキャンセル型ヘッドホン。
  2. 前記マイクロホンユニットは、前記音響管での音響インピーダンス比で分割された圧力が作用する位置に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のノイズキャンセル型ヘッドホン。
  3. 前記音響管は、可聴帯域以下の周波数の音波を通過させるローパスフィルタとして機能する請求項1または2に記載のノイズキャンセル型ヘッドホン。
  4. 音響管の内部に音響抵抗となる緩衝材が装填され、音響的なインピーダンスの調整が可能である請求項1記載のノイズキャンセル型ヘッドホン。
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