図1(a)は、本発明の一実施形態に係る液体吐出ヘッド2を含む記録装置であるカラーインクジェットプリンタ1(以下で単にプリンタと言うことがある)の概略の側面図であり、図1(b)は、概略の平面図である。プリンタ1は、記録媒体である印刷用紙Pをガイドローラ82Aから搬送ローラ82Bへと搬送することにより、印刷用紙Pを液体吐出ヘッド2に対して相対的に移動させる。制御部88は、画像や文字のデータに基づいて、液体吐出ヘッド2を制御して、記録媒体Pに向けて液体を吐出させ、印刷用紙Pに液滴を着弾させて、印刷用紙Pに印刷などの記録を行なう。
本実施形態では、液体吐出ヘッド2はプリンタ1に対して固定されており、プリンタ1はいわゆるラインプリンタとなっている。本発明の記録装置の他の実施形態としては、液体吐出ヘッド2を、印刷用紙Pの搬送方向に交差する方向、例えば、ほぼ直交する方向に往復させるなどして移動させる動作と、印刷用紙Pの搬送を交互に行なう、いわゆるシリアルプリンタが挙げられる。
プリンタ1には、印刷用紙Pとほぼ平行となるように平板状のヘッド搭載フレーム70(以下で単にフレームと言うことがある)が固定されている。フレーム70には図示しない20個の孔が設けられており、20個の液体吐出ヘッド2がそれぞれの孔の部分に搭載されていて、液体吐出ヘッド2の、液体を吐出する部位が印刷用紙Pに面するようになっている。液体吐出ヘッド2と印刷用紙Pとの間の距離は、例えば0.5〜20mm程度とされる。5つの液体吐出ヘッド2は、1つのヘッド群72を構成しており、プリンタ1は、4つのヘッド群72を有している。
液体吐出ヘッド2は、図1(a)の手前から奥へ向かう方向、図1(b)の上下方向に細長い長尺形状を有している。この長い方向を長手方向と呼ぶことがある。1つのヘッド群72内において、3つの液体吐出ヘッド2は、印刷用紙Pの搬送方向に交差する方向、例えば、ほぼ直交する方向に沿って並んでおり、他の2つの液体吐出ヘッド2は搬送方向に沿ってずれた位置で、3つの液体吐出ヘッド2の間にそれぞれ一つずつ並んでいる。液体吐出ヘッド2は、各液体吐出ヘッド2で印刷可能な範囲が、印刷用紙Pの幅方向に(印刷用紙Pの搬送方向に交差する方向に)繋がるように、あるいは端が重複するように配置されており、印刷用紙Pの幅方向に隙間のない印刷が可能になっている。
4つのヘッド群72は、記録用紙Pの搬送方向に沿って配置されている。各液体吐出ヘッド2には、図示しない液体タンクから液体、例えば、インクが供給される。1つのヘッド群72に属する液体吐出ヘッド2には、同じ色のインクが供給されるようになっており、4つのヘッド群72で4色のインクが印刷できる。各ヘッド群72から吐出されるインクの色は、例えば、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、シアン(C)およびブラック(K)である。このようなインクを、制御部88で制御して印刷すれば、カラー画像が印刷できる。
プリンタ1に搭載されている液体吐出ヘッド2の個数は、単色で、1つの液体吐出ヘッド2で印刷可能な範囲を印刷するのなら1つでもよい。ヘッド群72に含まれる液体吐出ヘッド2の個数や、ヘッド群72の個数は、印刷する対象や印刷条件により適宜変更できる。例えば、さらに多色の印刷をするためにヘッド群72の個数を増やしてもよい。また、同色で印刷するヘッド群72を複数配置して、搬送方向に交互に印刷すれば、同じ性能の液体吐出ヘッド2を使用しても搬送速度を速くできる。これにより、時間当たりの印刷面積を大きくすることができる。また、同色で印刷するヘッド群72を複数準備して、搬送方向と交差する方向にずらして配置して、印刷用紙Pの幅方向の解像度を高くしてもよい。
さらに、色の付いたインクを印刷する以外に、印刷用紙Pの表面処理をするために、コーティング剤などの液体を印刷してもよい。
プリンタ1は、記録媒体である印刷用紙Pに印刷を行なう。印刷用紙Pは、給紙ローラ80Aに巻き取られた状態になっており、2つのガイドローラ82Aの間を通った後、フレーム70に搭載されている液体吐出ヘッド2の下側を通り、その後2つの搬送ローラ82Bの間を通り、最終的に回収ローラ80Bに回収される。印刷する際には、搬送ローラ82Bを回転させることで印刷用紙Pは、一定速度で搬送され、液体吐出ヘッド2によって印刷される。回収ローラ80Bは、搬送ローラ82Bから送り出された印刷用紙Pを巻き取る。搬送速度は、例えば、50m/分とされる。各ローラは、制御部88によって制御されてもよいし、人によって手動で操作されてもよい。
記録媒体は、印刷用紙P以外に、ロール状の布などでもよい。また、プリンタ1は、印刷用紙Pを直接搬送する代わりに、搬送ベルトを直接搬送して、記録媒体を搬送ベルトに置いて搬送してもよい。そのようにすれば、枚葉紙や裁断された布、木材、タイルなどを記録媒体にできる。さらに、液体吐出ヘッド2から導電性の粒子を含む液体を吐出するようにして、電子機器の配線パターンなどを印刷してもよい。またさらに、液体吐出ヘッド2から反応容器などに向けて所定量の液体の化学薬剤や化学薬剤を含んだ液体を吐出させて、反応させるなどして、化学薬品を作製してもよい。
また、プリンタ1に、位置センサ、速度センサ、温度センサなどを取り付けて、制御部88が、各センサからの情報から分かるプリンタ1各部の状態に応じて、プリンタ1の各部を制御してもよい。例えば、液体吐出ヘッド2の温度や液体タンクの液体の温度、液体タンクの液体が液体吐出ヘッド2に加えている圧力などが、吐出される液体の吐出量や吐出速度などの吐出特性に影響を与えている場合などに、それらの情報に応じて、液体を吐出させる駆動信号を変えるようにしてもよい。
次に、本発明の一実施形態に係る液体吐出ヘッド2について説明する。図2(a)は、図1に示された液体吐出ヘッド2の要部であるヘッド本体2aを示す平面図である。図2(b)は、ヘッド本体2aから第2流路部材6を除いた状態の平面図である。図3および図4は、図2(b)の拡大平面図である。図5(a)は、図4のV−V線に沿った縦断面図である。図5(b)は、ヘッド本体2aの、第1共通流路20の開口20a付近における、第1共通流路20に沿った部分縦断面図である。
各図は、図面を分かり易くするために次のように描いている。図2〜4では、他のものの下方にあって破線で描くべき流路などを実線で描いている。図2(a)では、第1流路部材4内の流路は省略し、個別電極本体44aの配置のみを示している。
液体吐出ヘッド2は、ヘッド本体2a以外に、金属製の筐体や、ドライバIC、配線基板などを含んでいてもよい。また、ヘッド本体2aは、第1流路部材4と、第1流路部材4に液体を供給する第2流路部材6と、加圧部である変位素子50が作り込まれている圧電アクチュエータ基板40とを含んでいる。ヘッド本体2aは、一方方向に長い平板形状を有しており、その方向を長手方向と言うことがある。また、第2流路部材6は、支持部材の役割を果たしており、ヘッド本体2aは、第2流路部材6の長手方向の両端部のそれぞれでフレーム70に固定される。
ヘッド本体2aを構成する第1流路部材4は、平板状の形状を有しており、その厚さは0.5〜2mm程度である。第1流路部材4の第1の主面である加圧室面4−1には、加圧室10が平面方向に多数並んで配置されている。第1流路部材4の第2の主面であり、加圧室面4−1の反対側の面である吐出孔面4−2には、液体が吐出される吐出孔8が平面方向に多数並んで配置されている。吐出孔8は、それぞれ加圧室10と繋がっている。以下において、加圧室面4−1は、吐出孔面4−2に対して、上方に位置しているものとして説明をする。
第1流路部材4には、複数の第1共通流路20および複数の第2共通流路24が、第1方向に沿って伸びるように配置されている。また、第1共通流路20と第2共通流路24とは、第1方向と交差する方向である第2方向に交互に並んでいる。なお、第2方向は、ヘッド本体2aの長手方向と同じ方向である。
第1共通流路20の両側に沿って加圧室10が並んでおり、片側1列ずつ、合計2列の加圧室列11Aを構成している。第1共通流路20とその両側に並んでいる加圧室10とは、第1個別流路12を介して繋がっている。
第2共通流路24の両側に沿って加圧室10が並んでおり、片側1列ずつ、合計2列の加圧室列11Aを構成している。第2共通流路24とその両側に並んでいる加圧室10とは、第2個別流路14を介して繋がっている。なお、以下で、第1共通流路20と第2共通流路24とを合わせて、共通流路と言うことがある。
以上のような構成により、第1流路部材4においては、第1共通流路20に供給された液体は、第1共通流路20に沿って並んでいる加圧室10に流れ込み、一部の液体は吐出孔8から吐出され、他の一部の液体は、加圧室10に対して、第1共通流路20と反対側に位置している第2共通流路24に流れ込み、第1流路部材4から外部に排出される。
第1共通流路20の両側に第2共通流路24が、第2共通流路24の両側に第1共通流路20が配置されていることにより、1つの加圧室列11Aに対して、1つの第1共通流路20および1つの第2共通流路24が繋がっており、別の加圧室列11Aに対して、別の第1共通流路20および別の第2共通流路24が繋がっている場合と比較して、第1共通流路20および第2共通流路24の数を約半分にできるので好ましい。第1共通流路20および第2共通流路24の数が少なくて済む分、加圧室10の数を増やして高解像度化したり、第1共通流路20や第2共通流路24を太くして、吐出孔8からの吐出特性の差を小さくしたり、ヘッド本体2aの平面方向の大きさを小さくすることができる。
第1共通流路20に繋がっている第1個別流路12の第1共通流路20側の部分に加わる圧力は、圧力損失の影響で、第1共通流路20に第1個別流路12が繋がっている位置(主に第1方向における位置)により変わる。第2共通流路24に繋がっている第2個別流路14側の部分に加わる圧力は、圧力損失の影響で、第2共通流路24に第2個別流路14が繋がっている位置(主に第1方向における位置)により変わる。第1共通流路20の外部への開口20aを第1方向の一方の端部に配置し、第2共通流路24の外部への開口24aを第1方向の他方の端部に配置すれば、各第1個別流路12および各第2個別流路14の配置による圧力の差が打ち消されるように作用し、各吐出孔8に加わる圧力の差を小さくできる。なお、第1共通流路20の開口20a、および第2共通流路24の開口24aはともに、加圧室面4−1に開口している。
吐出しない状態では、吐出孔8には液体のメニスカスが保持されている。液体の表面張力は、液体の表面積を小さくしようとするので、正圧であっても圧力が小さければ、メニスカスを保持できる。正圧が大きくなれば、液体はあふれ出し、負圧が大きくなれば、液体が第1流路部材4内に引き込まれてしまい、液体が吐出可能な状態を維持できない。そのため、第1共通流路20から第2共通流路24に液体を流した際における、吐出孔8での液体の圧力の差が大きくなり過ぎないようにする必要がある。
加圧室10は、加圧室面4−1に面して配置されており、変位素子50からの圧力を受ける加圧室本体10aと、加圧室本体10aの下から吐出孔面4−2に開口している吐出孔8に繋がる部分流路であるディセンダ10bとを含んだ中空の領域である。加圧室本体10aは、直円柱形状であり、平面形状は円形状である。平面形状が円形状であることにより変位素子50が同じ力で変形させた場合の変位量、および変位により生じる加圧室10の体積変化を大きくできる。ディセンダ10bは、直径が加圧室本体10aより小さい直円柱形状であり、断面形状は円形状である。また、ディセンダ10bは、加圧室面4−1から見たときに、加圧室本体10a内に納まっている。ディセンダ10bは、吐出孔8側に向かって断面積の小さくなる円錐形状や台形円錐形状でもよい。ディセンダ10bの断面形状が加圧室本体10aより小さくなっているので、その分、第1共通流路20および第2共通流路24の幅を大きくでき、上述の圧力損失の差を小さくできる。
複数ある加圧室10は、第1方向に沿った複数の加圧室列11Aを構成しているとともに、第1方向と交差する方向である第2方向に沿った複数の加圧室行11Bを構成している。各吐出孔8は、対応する加圧室10の中心に位置している。複数ある吐出孔8も、加圧室10と同様に、第1方向に沿った複数の吐出孔列9Aを構成しているとともに、第2方向に沿った複数の吐出孔行9Bを構成している。
本実施形態では、第1共通流路20は50本、第2共通流路24は51本であり、加圧室列11Aおよび吐出孔列9Aは100列ある。1つの加圧室列11Aには、16個の加圧室10が含まれており、1つの吐出孔列9Aには、16個の吐出孔8が含まれている。つまり、加圧室行11Bは、16行あり、吐出孔行9Bは、16行ある。
なお、隣り合う加圧室列11Aにおいて、加圧室10を第1方向にずらして千鳥状に配置すれば、隣り合う加圧室列11Aに属する加圧室10の距離を大きくできるので好ましい。その場合、加圧室行11Bは、32行になり、吐出孔行9Bは、32行になる。
第1方向と第2方向とが成す角度は直角からずれている。このため、第1方向に沿って配置されている吐出孔列9Aに属する吐出孔8同士は、その直角からのずれた角度の分、第2方向にずれて配置される。そして、吐出孔列9Aが第2方向に並んで配置されるので、異なる吐出孔列9Aに属する吐出孔8は、その分、第2方向にずれて配置される。これらが合わさって、第1流路部材4の吐出孔8は、第2方向に一定間隔で並んで配置されており、これにより、吐出した液体により形成される画素で所定の範囲を埋めるように印刷ができる。
図3において、吐出孔8を第2方向と直交する方向に投影すると、仮想直線Rの範囲に32個の吐出孔8が投影され、仮想直線R内で各吐出孔8は360dpiの間隔に並ぶ。これにより、仮想直線Rに直交する方向に印刷用紙Pを搬送して印刷すれば、360dpiの解像度で印刷できる。仮想直線R内に投影される吐出孔8は、1列の吐出孔列9Aに属する吐出孔8すべて(16個)と、その吐出孔列9Aの両隣に位置する2つの吐出孔列9Aに属する吐出孔8の半分(8個)ずつである。このような構成にするために、各吐出孔行9Bでは、吐出孔8は、22.5dpiの間隔で並んでいる。これは、360/16=22.5であるからである。 第1共通流路20および第2共通流路24は、吐出孔8が直線上に並んでいる範囲では、直線になっており、直線がずれる吐出孔8の間で平行にずれている。第1共通流路20および第2共通流路24において、このずれる箇所が少ないので流路抵抗が小さくなっている。また、この平行にずれる部分は、加圧室10と重ならない位置に配置されているので、加圧室10毎に吐出特性の変動を小さくできる。
第2方向の両端に位置する加圧室列11Bに属する加圧室10は、ダミー加圧室である。ダミー加圧室に対する、第2方向の端側には第1共通流路20もしくは第2共通流路24が設けられる。配置される流路は、ダミー加圧室に対して第2方向の中央側に配置されているのが第2共通流路24であれば、第1共通流路20となり、ダミー加圧室に対して第2方向の中央側に配置されているのが第1共通流路20であれば、第2共通流路24となる。ダミー加圧室も、通常の加圧室10と同様に、第1個別流路12を介して第1共通流路20と繋がっており、第2個別流路14を介して第2共通流路24と繋がっている。
第2方向の端に位置する共通流路は、第1共通流路20および第2共通流路24のどちらであっても、供給もしくは回収する加圧室列11Aが1列になり、そのためその1列の加圧室列11Aに属する加圧室10からの吐出の吐出特性が、他の加圧室10からの吐出特性に対して変動するおそれがある。そこでその加圧室列11Aに属する加圧室10は、印刷に使わないダミー加圧室とする。ダミー加圧室は、基本的な形状は通常の加圧室10と同じであり、吐出孔面4−2側に吐出孔8を配置しなくてもよいし、吐出孔8を配置してもよい。
上述のように、第2方向の両端に位置する加圧室列11Aに属する加圧室10をダミー加圧室とすれば、第2方向の両端から2番目に位置する加圧室列11Aに属する加圧室10に液体を供給する第1共通流路20が他の通常の第1共通流路20と同様に、2列の加圧室列11Aに液体を供給するものとなる。また、第2方向の両端から2番目に位置する加圧室列11Aに属する加圧室10の液体を回収する第2共通流路24が他の通常の第2共通流路24と同様に、2列の加圧室列11Aの液体を回収するものとなる。このため、吐出特性の差が生じ難くなる。
第2方向の端から2番目に位置する吐出孔列9Aに属する吐出孔8のうち、第2方向の端に近い8個の吐出孔8は、第2方向の間隔が360dpiとなっていないので、その位置には吐出孔8を設けず、対応する位置にある加圧室10をダミー加圧室としてもよい。
第2流路部材6は、第1流路部材4の加圧室面4−1に接合されており、第1共通流路20に液体を供給する第1統合流路22と、第2共通流路24の液体を回収する第2統合流路26とを有している。第2流路部材6の厚さは、第1流路部材4よりも厚く、5〜30mm程度である。
第2流路部材6は、第1流路部材4の加圧室面4−1の圧電アクチュエータ基板40が接続されていない領域で接合されている。より具体的には、圧電アクチュエータ基板40を囲むように接合されている。このようにすることで、圧電アクチュエータ基板40に、吐出した液体の一部がミストとなって付着するのを抑制できる。また、第1流路部材4を外周で固定することになるので、第1流路部材4が変位素子50の駆動にともなって振動し、共振などが生じるのを抑制できる。
また、第2流路部材6には、貫通孔6cが上下に貫通している。貫通孔6cは、圧電アクチュエータ基板40を駆動する駆動信号を伝達するFPC(Flexible Printed Circuit)などの信号伝達部が通される。なお、貫通孔6cの第1流路部材4側は、短手方向の幅が広くなっている拡幅部6caとなっており、圧電アクチュエータ基板40から短手方向の両側に伸びる信号伝達部は、拡幅部6caで曲げられて上方に向かい、貫通孔6を抜ける。なお、拡幅部6caに広がる部分の凸部は、信号伝達部を傷つけるおそれがあるので、R形状にしておくのが好ましい。
第1統合流路22を、第1流路部材4とは別の、第1流路部材4より厚い第2流路部材6に配置することで、第1統合流路22の断面積を大きくすることができ、それにより第1統合流路22と第1共通流路20とが繋がっている位置の差による圧力損失の差を小さくできる。第1統合流路22の流路抵抗は、第1共通流路20の1/100以下にするのが好ましい。ここで、第1統合流路22の流路抵抗とは、より正確には第1統合流路22のうちで、第1共通流路20と繋がっている範囲の流路抵抗のことである。
第2統合流路26を、第1流路部材4とは別の、第1流路部材4より厚い第2流路部材6に配置することで、第2統合流路26の断面積を大きくすることができ、それにより第2統合流路26と第2共通流路24とが繋がっている位置の差による圧力損失の差を小さくできる。第2統合流路26の流路抵抗は、第2共通流路24の1/100以下にするのが好ましい。ここで、第2統合流路26の流路抵抗とは、より正確には第2統合流路26のうちで、第1統合流路22と繋がっている範囲の流路抵抗のことである。
第1統合流路22を第2流路部材6の短手方向の一方の端に配置し、第2統合流路26を第2流路部材6の短手方向の他方の端に配置し、それぞれの流路を第1流路部材4側に向かわせて、それぞれ第1共通流路20および第2共通流路24と繋げる構造にする。このような構造にすることで、第1統合流路22および第2統合流路26の断面積を大きくして、流路抵抗を小さくすることができる。またこのような構造にすることで、第1流路部材4は、外周が第2流路部材6で固定されるので剛性を高くできる。さらに、このような構造にすることで、信号伝達部の通る貫通孔6cを設けることができる。
第2流路部材6は、第2流路部材のプレート6aと6bとが積層されて構成されている。プレート6bの上面には、第1統合流路22のうち第2方向に伸びている流路抵抗の低い部分である第1統合流路本体22aとなる溝と、第2統合流路26のうち第2方向に伸びている流路抵抗の低い部分である第2統合流路本体26aとなる溝が配置されている。
第1統合流路本体22aとなる溝から、下方(第1流路部材4の方向)に向かって複数の第1接続流路22bが伸びており、加圧室面4−1上に開口している第1共通流路の開口20aに繋がっている。各第1接続流路22bの間は仕切り6baで区切られている(つまり、第1接続流路22bの第1共通流路20側は分岐している)。これにより、第2流路部材6と第1流路部材4との接続の剛性を高くできる。さらに、第2方向において、仕切り6baの長さは、第1接続流路22bの長さより長くなっていることで、第2流路部材6と第1流路部材4との接続の剛性をより高くできる。
第2統合流路本体26aとなる溝から、下方(第1流路部材4の方向)に向かって複数の第2接続流路26bが伸びており、加圧室面4−1上に開口している第2共通流路の開口24aに繋がっている。各第2接続流路26bの間は仕切り6bbで区切られている(つまり、第2接続流路26bの第2共通流路24側は分岐している)。これにより、第2流路部材6と第1流路部材4との接続の剛性を高くできる。さらに、第2方向において、仕切り6bbの長さは、第2続流路26bの長さより長くなっていることで、第2流路部材6と第1流路部材4との接続の剛性をより高くできる。
プレート6aには、第1統合流路22の第2の方向の両端それぞれに開口22c、22dが設けられている。プレート6aには、第2統合流路26の第2の方向の両端それぞれに開口26c、26dが設けられている。液体の入っていない液体吐出ヘッド2に液体を供給するとき、第1統合流路22内の液体が外部に排出され易いように、一方の開口(例えば開口22c)から液体を供給し、第1流路部材4に液体を供給するとともに、空気および溢れた液体を他の開口(例えば22d)から排出することで、第1流路部材4に気体が入り込み難くできる。第2統合流路26についても同様に、一方の開口(例えば開口26c)から液体を供給し、他方の開口(例えば開口26d)から液体を排出するようにすればよい。
印刷をする場合の、液体の供給および回収にはいくつかの方法がある。一つは、第1統合流路22に供給した液体のすべてが、第1流路部材4に入り、さらに第2統合流路26入って外部に排出される。この際、第2統合流路26へは外部から液体は供給されない。この場合さらに、2つの開口22c、22dから液体を供給し、2つの開口26c、26dから回収する方法と、開口22c、22dのどちらか一方から液体を供給し、他方は閉じておき、開口26c、26dのどちらか一方から液体を回収し、他方は閉じておく方法があり、さらに、この2つの組み合わせを逆にした方法がある。圧力損失による圧力の差を小さくするには、2つの開口から供給し、2つの開口から回収するのが好ましいが、液体を給排するチューブの接続や、圧力の制御が煩雑になる。1つの開口から供給し、1つの開口から回収すると、接続や圧力の制御が簡単になる。その場合、供給と回収は、第2方向に関して反対側の位置にある開口を組にして行なえば、圧力損失の影響が相殺するようになるので好ましい。具体的には、開口22cから供給し開口26dから回収する、あるいは開口22dから供給し開口26cから回収するようにすればよい。
給排の他の方法は、第1統合流路22の一方の開口(例えば22c)から液体を供給し、他方の開口(例えば22d)から回収し、第2統合流路26の一方の開口(例えば26d)から液体を供給し、他方の開口(例えば26c)から回収する。それぞれの給排の圧力を調節して、第1統合流路22の圧力が、第2統合流路26の圧力より高くなるようにすれば、第1流路部材4に液体が流れるようになる。このようにすると、各吐出孔8のメニスカスに加わる圧力の差は一番小さくなる。
上述の2つの方法を組み合わせて、第1統合流路22に対して給排を行なって、第2統合流路26からは回収だけにしてもよい。逆に、第1統合流路22に対しては供給だけを行ない、第2統合流路26には給排を行なってもよい。
またさらに、以上で説明した供給と回収の関係を逆にしてもよい。例えば、第2統合流路26の2つの開口26c、26dの両方から液体を供給し、第2排出流路22の2つの開口22c、22dの両方から液体を回収してもよい。
第1統合流路22および第2統合流路26には、ダンパを設けて、液体の吐出量の変動に対して液体の供給、あるいは排出が安定するようにしてもよい。また、第1統合流路22および第2統合流路26内に、フィルタを設けることにより、異物や気泡が、第1流路部材4に入り込み難くしてもよい。
第1流路部材4の上面である加圧室面4−1には、変位素子50を含む圧電アクチュエータ基板40が接合されており、各変位素子50が加圧室10上に位置するように配置されている。圧電アクチュエータ基板40は、加圧室10によって形成された加圧室群とほぼ同一の形状の領域を占有している。また、各加圧室10の開口は、流路部材4の加圧室面4−1に圧電アクチュエータ基板40が接合されることで閉塞される。圧電アクチュエータ基板40は、ヘッド本体2aと同じ方向に長い長方形状である。また、圧電アクチュエータ基板40には、各変位素子50に信号を供給するためのFPCなどの信号伝達部が接続されている。第2流路部材6には、中央で、上下に貫通している貫通孔6cが配置されており、信号伝達部は貫通孔6cを通って制御部88と電気的に繋がれる。信号伝達部は、圧電アクチュエータ基板40の一方の長辺の端から他方の長辺の端に向かうように短手方向に伸びる形状にし、信号伝達部に配置される配線が短手方向に沿って伸び、長手方向に並ぶようにすれば、配線間の距離を大きくしやすくなり、好ましい。
圧電アクチュエータ基板40の上面における各加圧室10に対向する位置には個別電極44がそれぞれ配置されている。
流路部材4は、複数のプレートが積層された積層構造を有している。これらのプレートは、流路部材4の加圧室面4−1側から順に、キャビティプレート4a、供給プレート4b、マニホールドプレート4c〜e、回収プレート4fおよびノズルプレート4gである。これらのプレートには多数の孔や溝が形成されている。孔や溝は、例えば、各プレートを金属で作製し、エッチングで形成できる。各プレートの厚さは10〜300μm程度であることにより、形成する孔の形成精度を高くできる。マニホールドプレート4c〜eは、同じ形状をしており、1枚のプレートで構成してもよいが、孔を精度よく形成するため、3枚のプレートで構成している。各プレートは、これらの孔が互いに連通して第1共通流路20などの流路を構成するように、位置合わせして積層されている。
平板状の流路部材4の加圧室面4−1には、加圧室本体10aが開口しており、圧電アクチュエータ基板40が接合されている。また、加圧室面4−1には、第1共通流路20に液体を供給する開口20a、および第2共通流路24から液体を回収する開口24aが開口している。流路部材4の、加圧室面4−1と反対側の面である吐出孔面4−2には吐出孔8が開口している。
液体を吐出する構造としては、加圧室10と吐出孔8とがある。加圧室10は、変位素子50に面している加圧室本体10aと、加圧室本体10aより断面積が小さいディセンダ10bから成っている。加圧室本体10aは、キャビティプレート4aに形成されており、ディセンダ10bは、プレート4b〜fに形成された孔が重ねられ、さらにノズルプレート4gで(吐出孔8以外の部分を)塞がれて成っている。
加圧室本体10aには、第1個別流路12が繋がっており、第1個別流路12は、第1共通流路20に繋がっている。第1個別流路12は供給プレート4bを貫通する円形状の孔であり、液体は上下方向に流れる。第1共通流路20はプレート4c〜eに形成された孔が重ねられ、さらに上側を供給プレート4bで、下側をノズルプレート4gで塞がれて成っている。
ディセンダ10bには、第2個別流路14が繋がっており、第2個別流路14は、第2共通流路24に繋がっている。第2個別流路14は回収プレート4fを貫通している貫通溝であり、液体は溝に沿って流れる。第2共通流路24はプレート4c〜hに形成された孔が重ねられ、さらに上側を供給プレート4bで、下側をノズルプレート4gで塞がれて成っている。
液体の流れについて、まとめると、第1統合流路22に供給された液体は、第1共通流路20および第1個別流路12を順に通って加圧室10に入り、一部の液体は吐出孔8から吐出される。吐出されなかった液体は、第2個別流路14を通って、第2共通流路24に入った後、第2統合流路26に入り、ヘッド本体2の外部に排出される。
圧電アクチュエータ基板40は、圧電体である2枚の圧電セラミック層40a、40bからなる積層構造を有している。これらの圧電セラミック層40a、40bはそれぞれ20μm程度の厚さを有している。すなわち、圧電アクチュエータ基板40の圧電セラミック層40aの上面から圧電セラミック層40bの下面までの厚さは40μm程度である。圧電セラミック層40aと圧電セラミック層40bの厚さの比は、3:7〜7:3、好ましく4:6〜6:4にされる。圧電セラミック層40a、40bのいずれの層も複数の加圧室10を跨ぐように延在している。これらの圧電セラミック層40a、40bは、例えば、強誘電性を有する、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)系、NaNbO3系、BaTiO3系、(BiNa)NbO3系、BiNaNb5O15系などのセラミックス材料からなる。
圧電アクチュエータ基板40は、Ag−Pd系などの金属材料からなる共通電極42およびAu系などの金属材料からなる個別電極44を有している。共通電極42の厚さは2μm程度であり、個別電極44の厚さは、1μm程度である。
個別電極44は、圧電アクチュエータ基板40の上面における各加圧室10に対向する位置に、それぞれ配置されている。個別電極44は、平面形状が加圧室本体10aより一回り小さく、加圧室本体10aとほぼ相似な形状を有している個別電極本体44aと、個別電極本体44aから引き出されている引出電極44bとを含んでいる。引出電極44bの一端の、加圧室10と対向する領域外に引き出された部分には、接続電極46が形成されている。接続電極46は、例えば銀粒子などの導電性粒子を含んだ導電性樹脂であり、5〜200μm程度の厚さで形成されている。また、接続電極46は、信号伝達部に設けられた電極と電気的に接合されている。
詳細は後述するが、個別電極44には、制御部88から信号伝達部を通じて駆動信号が供給される。駆動信号は、印刷媒体Pの搬送速度と同期して一定の周期で供給される。
共通電極42は、圧電セラミック層40aと圧電セラミック層40bとの間の領域に面方向のほぼ全面にわたって形成されている。すなわち、共通電極42は、圧電アクチュエータ基板40に対向する領域内のすべての加圧室10を覆うように延在している。共通電極42は、圧電セラミック層40a上に個別電極44からなる電極群を避ける位置に形成されている共通電極用表面電極(不図示)に、圧電セラミック層40aを貫通して形成された貫通導体を介して繋がっている。また、共通電極42は、共通電極用表面電を介して接地され、グランド電位に保持されている。共通電極用表面電極は、個別電極44と同様に、制御部88と直接あるいは間接的に接続されている。
圧電セラミック層40aの個別電極44と共通電極42とに挟まれている部分は、厚さ方向に分極されており、個別電極44に電圧を印加すると変位する、ユニモルフ構造の変位素子50となっている。より具体的には、個別電極44を共通電極42と異なる電位にして圧電セラミック層40aに対してその分極方向に電界を印加したとき、この電界が印加された部分が、圧電効果により歪む活性部として働く。この構成において、電界と分極とが同方向となるように、制御部88により個別電極44を共通電極42に対して正または負の所定電位にすると、圧電セラミック層40aの電極に挟まれた部分(活性部)が、面方向に収縮する。一方、非活性層の圧電セラミック層40bは電界の影響を受けないため、自発的には縮むことがなく活性部の変形を規制しようとする。この結果、圧電セラミック層40aと圧電セラミック層40bとの間で分極方向への歪みに差が生じて、圧電セラミック層40bは加圧室10側へ凸となるように変形(ユニモルフ変形)する。
続いて、液体の吐出動作について、説明する。制御部88からの制御でドライバICなどを介して、個別電極44に供給される駆動信号により、変位素子50が駆動(変位)させられる。本実施形態では、様々な駆動信号で液体を吐出させることができるが、ここでは、いわゆる引き打ち駆動方法について説明する。
あらかじめ個別電極44を共通電極42より高い電位(以下、高電位と称す)にしておき、吐出要求がある毎に個別電極44を共通電極42と一旦同じ電位(以下、低電位と称す)とし、その後所定のタイミングで再び高電位とする。これにより、個別電極44が低電位になるタイミングで、圧電セラミック層40a、40bが元の(平らな)形状に戻り(始め)、加圧室10の容積が初期状態(両電極の電位が異なる状態)と比較して増加する。これにより、加圧室10内の液体に負圧が与えられる。そうすると、加圧室10内の液体が固有振動周期で振動し始める。具体的には、最初、加圧室10の体積が増加し始め、負圧は徐々に小さくなっていく。次いで加圧室10の体積は最大になり、圧力はほぼゼロとなる。次いで加圧室10の体積は減少し始め、圧力は高くなっていく。その後、圧力がほぼ最大になるタイミングで、個別電極44を高電位にする。そうすると最初に加えた振動と、次に加えた振動とが重なり、より大きい圧力が液体に加わる。この圧力がディセンダ内を伝搬し、吐出孔8から液体を吐出させる。
つまり、高電位を基準として、一定期間低電位とするパルスの駆動信号を個別電極44に供給することで、液滴を吐出できる。このパルス幅は、加圧室10の液体の固有振動周期の半分の時間であるAL(Acoustic Length)とすると、原理的には、液体の吐出速度および吐出量を最大にできる。加圧室10の液体の固有振動周期は、液体の物性、加圧室10の形状の影響が大きいが、それ以外に、圧電アクチュエータ基板40の物性や、加圧室10に繋がっている流路の特性からの影響も受ける。
なお、パルス幅は、吐出される液滴を1つにまとめるようにするなど、他に考慮する要因もあるため、実際は、0.5AL〜1.5AL程度の値にされる。また、パルス幅は、ALから外れた値にすることで、吐出量を少なくすることができるため、吐出量を少なくするためにALから外れた値にされる。
本発明の吐出孔8の配置について説明する。図6は、本発明の一実施形態に係る吐出孔8の配置である。図6では、吐出孔8の行上および列上の位置が分かり易いように、行および列に区切ったマス目の中で、吐出孔8が存在する位置を塗りつぶしている。以降の説明において、x列目、y行目の位置を(x、y)と表すことがある。図6で示されている第1方向および第2方向は、図3で示されている第1方向および第2方向と、それぞれ同じ方向である。図6では、図の縦方向と横方向とで拡大率が異なっていて、横方向の拡大率が大きいため、第1方向と第2方向との成す角度が、図3とは異なっているように見える。
吐出孔8は、第2方向に沿っている16行の行上に配置されている。つまり、吐出孔8は、16行の吐出孔行9Bを構成している。また、各吐出孔行9Bにおいては、吐出孔8は第2方向に同じ間隔で並んでいる。さらに、吐出孔8全体でも、吐出孔8は第2方向に同じ間隔で並んでおり、その間隔は、各吐出孔行9Bにおける間隔の1/16となっている。
吐出孔行9Bは、吐出孔8が第2方向に等間隔に並んでいる行である。実際には吐出孔行9Bは、図6の左右にさらに、吐出孔8が連なっている。吐出孔行9Bは、16行存在しており、それらは第1方向に並んでいる。第1方向に並んでいる順に、1行目の行、2行目の行、・・・・16行目の行と呼ぶ。上述の実施形態では、各吐出孔行9Bの間の距離は同じになっているが、これは必ずしもその必要はない。各吐出孔行9B間の距離が異なっている場合、以下の説明では、その割合を保った状態で縮小した図などを用いて理解する必要がある。
記録媒体は、ヘッド本体2aの短手方向に移動させながら記録を行なう。記録媒体上で第2方向に隣り合って着弾する液体は、第2方向に関して隣り合っている吐出孔8から吐出される。つまり、隣り合う列の吐出孔8から吐出された液体が、記録媒体上で隣り合う画素となる。
記録精度を高くするため、液体吐出ヘッド2は、記録媒体の搬送方向と第2方向とが直交するように設置するが、実際にはある程度の角度のずれが生じる。角度のずれがあった場合、隣り合っている画素間の距離のずれは、ずれの角度とそれらの画素を吐出した吐出孔8のヘッド本体2aの短手方向の距離に比例する。そのため、行方向に隣り合っている吐出孔8が、短手方向に離れて配置されていると、画素間の距離のずれは大きくなる。
また、吐出孔8は、第1方向に並んで配置されており、吐出孔列9Aを構成している。さらに、吐出孔列9Aに沿って、加圧室10が並んでいる加圧室列11Aが構成されている。そして、加圧室列11Aの間に、加圧室列11Aに沿って、第1共通流路20および第2共通流路24が配置されている。第1共通流路20および第2共通流路24は、吐出に必要とされる液体を供給するとともに、インクの固形分などの沈降などが生じ難いように液体を流す必要があるので、ある程度以上の断面積が必要にある。なお、循環を行なわず、第2共通流路24が存在しないヘッド本体2aであっても、吐出する液体の供給は必要であり、第1共通流路20の断面積をある程度以上にする必要がある。
第2方向に対する第1方向の角度が小さくなると、第1共通流路20および第2共通流路24がヘッド本体2aを斜めに横切るようになり、断面積が小さくなってしまう。断面積を大きくするには、例えば、(1、1)、(2、2)、・・・(16、16)の各位置に吐出孔8を配置することが考えられる。しかし、このような配置では、(16、16)の行方向の隣が(17、1)になり、短手方向に15単位離れた配置になってしまう。このような配置は、16行の吐出孔配置において、最も離れた配置であり、ヘッド本体2aの設置角度ずれの影響が大きくなってしまう。
そこで、16行目から1行目に直接戻るのではなく、間に吐出孔8を配置する。図6では、第2方向における、第2吐出孔8−2(46、16)と第3吐出孔8−3(49、1)との間には、第2配列9A−2に属する吐出孔8(47、8)および吐出孔8(48、9)が存在する。これにより、第2吐出孔8−2(46、16)と吐出孔8(47、8)との短手方向の距離は8単位、吐出孔8(48、9)と第3吐出孔8−3(49、1)との短手方向の距離は8単位と、上述した配置と比較して約半分の距離になっている。これにより、上述した配置と比較して、角度ずれに対する影響は約半分になる。また、第2方向に対する第1方向の角度もあまり小さくならないため、第1共通流路20および第2共通流路24の断面積を大きくできる。
吐出孔8の配置は、次のようになっている。1行目の行に属する1つの吐出孔8に注目し、それを第1吐出孔8−1(33、1)とする。16行目の行に属する吐出孔8の中で、第1吐出孔8−1から距離が最も近いのは吐出孔8−A(30、16)であり、2番目が第2吐出孔8−2(46、16)、3番目が吐出孔8−B(14、16)、4番目が第4吐出孔8−4(62、16)である。第2吐出孔8−2から第4吐出孔8−4に向かう方向は第2方向と一致している。1行目の行に属していて、第1吐出孔8−1に対して第2方向側に位置している吐出孔8のうちで、第1吐出孔8−1からの距離が最も短い吐出孔8を第3吐出孔8−3とする。そうすると、第1〜4吐出孔8−1〜8−4は、第2方向に関して、第1吐出孔8−1、第2吐出孔8−2、第3吐出孔8−3、第4吐出孔8−4の順に配置されていることになる。
2〜15行目の行に属する吐出孔8は、第1吐出孔8−1から第4吐出孔8−4に向かう直線状の吐出孔列9Aに配置されている。吐出孔列9Aは、2〜15行目の行の吐出孔8を一つずつ含んでいる。また、吐出孔列9Aは、第2方向に関して、第1吐出孔8−1から第2吐出孔8−2までの間に位置している吐出孔8からなる第1配列9A−1、第2吐出孔8−2から第3吐出孔8−3までの間に位置している吐出孔8からなる第2配列9A−2、第3吐出孔8−3から第4吐出孔8−4までの間に位置している吐出孔8からなる第3配列9A−3からなっている。なお、第1配列9A−1には、第1吐出孔8−1が含まれており、第3配列9A−3には、第4吐出孔8−4が含まれている。また、第2吐出孔8−2および第3吐出孔8−3は、ここで対象としている第1吐出孔8−1から第4吐出孔8−4に向かう直線状の吐出孔列9Aには含まれておらず、他の吐出孔列9Aに含まれている。また、第2配列9A−2は、属する吐出孔8の個数が1つであっても構わない。
なお、図6においては、吐出孔列9A、第1配列9A−1、第2配列9A−2、第3配列9A−3を同じ吐出孔8の配列に対して示すと、分かり難くなるため、異なる吐出孔8の配列に対して示している。
上述のように配置された吐出孔列9Aが、第2方向に並んで配置されることで、吐出孔を、第2方向に等間隔で配置することができる。なお、第2方向の端部、および第2方向と反対方向の端部の吐出孔列9Aは、完全な形状ではないが、他の吐出孔列9Aの一部と同じ形状になっている。
上述の関係を、吐出孔行9Bの数がn行である場合に一般化すると次のようになる。2〜n−1行目の行に属する吐出孔8は、第1吐出孔8−1から第4吐出孔8−4に向かう直線状の吐出孔列9Aに配置されている。吐出孔列9Aは、2〜n−1行目の行の吐出孔8を一つずつ含んでいる。吐出孔列9Aは、第2方向に関して、第1吐出孔8−1から第2吐出孔8−2までの間に位置している吐出孔8からなる第1配列9A−1、第2吐出孔8−2から第3吐出孔8−3までの間に位置している吐出孔8からなる第2配列9A−2、および第3吐出孔8−3から第4吐出孔8−4までの間に位置している吐出孔8からなる第3配列9A−3から成っている。
第1配列9A−1、第2配列9A−2、および第3配列9A−3に配置されている、2〜n−1行目の行に属する吐出孔8の個数は、最少で1つである。したがって、n−1は最小で4であり、nは5以上となる。
第1吐出孔8−1の位置を(1、1)として、第1吐出孔8−1から連なっている吐出孔列9Aが、n行目の行のm列目、すなわち(m、n)にまで連なている場合において、mの値として適切な範囲について考察する。
吐出孔列9Aには、n個の吐出孔8が含まれるので、mはn以上になる。m=nとすると、吐出孔8の配置は、例えば、(1、1)、(2、2)、・・・・(n、n)となるが、この配置では、ヘッド本体2aの角度ずれの影響が大きくなってしまう。
mの値を2×n程度にして、第2吐出孔8−2と第3吐出孔8−3の間に第2配列9A−2を配置すれば、角度ずれの影響を小さくしつつ、第1共通流路20および第2共通流路24の断面積を大きくできる。
mの値を大きくして、3×n程度以上にすると、第1共通流路20および第2共通流路24の断面積が小さくなってしまう。また、その場合、第2方向に関して、n行目吐出孔列に属する吐出孔8と1行目吐出孔列に属する吐出孔8との間に、第2配列9A−2のような配列が配置されることになるが、そのような配列の中には、短手法方向の位置が第1方向の中央付近ではなく、1行目吐出孔列に近い位置あるいはn行目吐出孔列に近い位置に配置しなければならず、そのような配置にすると、n行目吐出孔列あるいは1行目吐出孔列からの距離が大きくなり、角度ずれに対する影響が大きくなってしまう。
mの値としてn+2〜2×n−1の範囲(n+1および2×n−1が含まれていないのは、それらの値では1行目の行に属する吐出孔8と行方向に隣り合うことになるからである)の中では、1.5×nより大きく2×n−1以下が適切である。mの値が、n+2〜2×n−1の範囲内でnに近づくと、第2配列9A−2は、第2方向に長くなる。第2配列9A−2が、第2方向に長くなると第2配列9A−2の第2吐出孔8−2側の端は、第2吐出孔8−2との短手方向の距離が大きくなり、次第に角度ずれに対する影響が大きくなっていく。また、第1配列9A−1と第2方向との成す角度が次第に小さくなっていくので、第2配列9A−2との角度の差が大きくなり、第1共通流路20および第2共通流路24の断面積が一定にならなくなってしまう。第1個別流路12や第2個別流路14が繋がっている部分の断面積が異なると吐出特性がばらつく可能性がある。また、第1共通流路20および第2共通流路24の断面積をほぼ一定にしようとすると、一番断面の小さいところに合わせなければならないので、結果的に断面積が小さくなってしまう。このような影響を小さくするためには、mの値は、1.5×nより大きく2×n−1以下の範囲のいずれかであるのが好ましい。
mの値をこの範囲にするためには、吐出孔列9Aは、第1吐出孔8−1と、n行目吐出孔列9Bに属する吐出孔8の中で、第1吐出孔8−1から4番目に近い吐出孔8とを繋ぐように配置すればよく、そのようにすると上述の吐出孔8の配置となる。
mの値が2×n+2〜3×n−1の範囲の場合の挙動については後述する。
第3配列9A−3全体が、第2配列9A−2よりも第1方向に位置し、第2配列9A−2全体が、第1配列9A−1よりも第1方向に位置していると次の点で好ましい。第2吐出孔8−2と、第2吐出孔8−2の第2方向に隣り合う第1配列9A−1内の吐出孔8との短手方向の距離、および第2吐出孔8−2と、第2吐出孔8−2の第2方向に隣り合う第1配列9A−1内の吐出孔8との短手方向の距離を短くできる。さらに、第3吐出孔8−3と、第3吐出孔8−3の第2方向に隣り合う第2配列9A−2内の吐出孔8との短手方向の距離を短くできる。またさらに、第3吐出孔8−3と、第3吐出孔8−3の第2方向に隣り合う第3配列9A−3内の吐出孔8との短手方向の距離を短くできる。
また、nが偶数の場合、第2配列9A−2に属する吐出孔8の個数を2にするのが好ましい。そのようにすると、第1配列9A−1と第2方向との成す角が大きくできる。さらに、第1配列9A−1に属する吐出孔8の個数と第3配列9A−3に属する吐出孔8の個数とを同じにすれば、吐出孔列9Aを直線に近い配置にできるので、第1共通流路20および第2共通流路24の断面積を大きく、直線に近い形状にすることができる。
さらに、nが奇数の場合、第2配列9A−2に属する吐出孔8の個数を1にするのが好ましい。そのようにすると、第1配列9A−1と第2方向との成す角が大きくできる。さらに、第1配列9A−1に属する吐出孔8の個数と第3配列9A−3に属する吐出孔8の個数とを同じにすれば、吐出孔列9Aを直線に近い配置にできるので、第1共通流路20および第2共通流路24の断面積を大きく、直線に近い形状にすることができる。
図7(a)、(b)、図8(a)、(b)は、本発明の他の実施形態における吐出孔配置である。図6に示した実施形態と差異が少ない部位については、同じ符号を付けて説明を省略する。
図7(a)は、16行の吐出孔行9Bが存在する場合において、第2配列9A−2に属する吐出孔8の個数を1個にする実施形態である。
図7(b)は、16行の吐出孔行9Bが存在する場合において、第2配列9A−2に属する吐出孔8の個数を4個にする実施形態である。
図8(a)は、16行の吐出孔行9Bが存在する場合において、吐出孔列9Aが、第1吐出孔8−1と、16行目吐出孔行に属する吐出孔8の中で、第1吐出孔8−1から5番目に近い吐出孔8とを繋ぐように配置する実施形態である。この実施形態では、16行目の行に属する吐出孔8のうちで第1吐出孔8−1からの距離が3番目に短い吐出孔8が第2吐出孔8−2であり、5番目に短い吐出孔8が第4吐出孔8−4である。また、第2方向に関して、第1吐出孔8−1、第3吐出孔8−3、第2吐出孔8−2、第4吐出孔8−4の順に配置されている。第1吐出孔8−1から第3吐出孔8−3までの間に位置している吐出孔8からなるのが第1配列9A−1、第3吐出孔8−3から第2吐出孔8−2までの間に位置している吐出孔8からなるのが第2配列9A−2、第2吐出孔8−2から第4吐出孔8−4までの間に位置している吐出孔8からなるのが第3配列である。
これは前述の説明において、mの値として2×n+2〜3×n−1の範囲にしたものである。この範囲では、mの値が3×nに近づくと、第1吐出孔8−1と第1配列9A−1の第1吐出孔8−1側の端の吐出孔8を結んだ線と、第1配列9A−1との成す角度の差が大きくなるとともに、第4吐出孔8−4と第3配列9A−3の第4吐出孔8−4側の端の吐出孔8を結んだ線と、第3配列9A−3との成す角度の差が大きくなるので、第1共通流路20および第2共通流路24の断面積が一定にならなくなってしまう。また、第1共通流路20および第2共通流路24の断面積をほぼ一定にしようとすると、一番断面の小さいところに合わせなければならないので、結果的に断面積が小さくなってしまう。
このような影響を小さくするためには、mの値としては、2×n+2〜2.5×nが適切である。mの値をこの範囲するためには、吐出孔列9Aは、第1吐出孔8−1と、n行目の行に属する吐出孔8の中で、第1吐出孔8−1から5番目に近い吐出孔8とを繋ぐように配置すればよい。そのように配置すると上述の吐出孔8の配置となる。
図8(b)は、15行の吐出孔行9Bが存在する場合において、第2配列9A−2に属する吐出孔8の個数を1個にする実施形態である。
続いて、吐出孔列9Aを直線状に配置する際における、吐出孔8の配置範囲を説明する。図9には、第1〜4吐出孔8−1〜8−4を示してある。第1吐出孔8−1と第4吐出孔8−4とを繋ぐ直線は、仮想直線9AAである。行方向の位置をx、列方向の位置をyで表すと、仮想直線9AAは、y=(((15÷29)×(x−1)) mod 16)+1で表される。ただし、modは剰余の計算を表し、15は第1吐出孔8−1と第4吐出孔8−4との間の列方向の差であり、29は第1吐出孔8−1と第4吐出孔8−4との間の行方向の差である。
各列において、吐出孔8が配置できる位置の中で、仮想直線9AAに最も近い位置は、斜線でハッチングされた範囲A1である。吐出孔8は、この範囲A1の中に配置するのが最も好ましい。図9において横線でハッチングされている範囲A2は、範囲A1に対して、±2行以内の範囲内である。吐出孔8は、範囲A2の中に配置してもよい。なお、ここで±2行以内、つまり4行の幅以内としているのは、全体の行数の16行の1/4以内にするためである。全体の行数が16行以外の場合でも、全体の行数の1/4以内の領域である領域A2に配置するのが好ましい。ただし、行数が7行以下の場合には、領域A2は、領域A1の±1行以内とする。7行以下の場合にも、全体の行数の1/4以内であると、領域A2が領域A1と同じになってしまい、配置が難しくなるからである。また、各行の間の距離が同じではない場合、最も離れた行の間の距離の1/4以内にすればよい。