(プリンタの全体構成)
図1(a)は、本開示の一実施形態に係る液体吐出ヘッド2(以下で単にヘッドということがある。)を含むカラーインクジェットプリンタ1(記録装置の一例。以下で単にプリンタということがある)の概略の側面図である。図1(b)は、プリンタ1の概略の平面図である。
なお、ヘッド2またはプリンタ1は、任意の方向を鉛直方向とすることが可能であるが、便宜上、図1(a)の紙面上下方向を鉛直方向として、上面または下面等の語を用いることがある。また、平面視等の語は、特に断りがない限り、図1(a)の紙面上下方向に見ることをいうものとする。
プリンタ1は、印刷用紙P(記録媒体の一例)を給紙ローラ80Aから回収ローラ80Bへと搬送することにより、印刷用紙Pをヘッド2に対して相対的に移動させる。なお、給紙ローラ80Aおよび回収ローラ80B並びに後述する各種のローラは、印刷用紙Pとヘッド2とを相対移動させる移動部85を構成している。制御部88は、画像や文字等のデータである印刷データ等に基づいて、ヘッド2を制御して、印刷用紙Pに向けて液体を吐出させ、印刷用紙Pに液滴を着弾させて、印刷用紙Pに印刷などの記録を行なう。
本実施形態では、ヘッド2はプリンタ1に対して固定されており、プリンタ1はいわゆるラインプリンタとなっている。記録装置の他の実施形態としては、ヘッド2を印刷用紙Pの搬送方向に交差する方向(例えば略直交する方向)に移動させつつ液滴を吐出する動作と、印刷用紙Pの搬送とを交互に行なう、いわゆるシリアルプリンタが挙げられる。
プリンタ1には、印刷用紙Pと略平行となるように、4個の平板状のヘッド搭載フレーム70(以下で単にフレームと言うことがある)が固定されている。各フレーム70には図示しない5個の孔が設けられており、5個のヘッド2がそれぞれの孔の部分に搭載されている。1個のフレーム70に搭載されている5個のヘッド2は、1つのヘッド群72を構成している。プリンタ1は、4つのヘッド群72を有しており、合計20個のヘッド2が搭載されている。
フレーム70に搭載されたヘッド2は、液体を吐出する部位が印刷用紙Pに面する。ヘッド2と印刷用紙Pとの間の距離は、例えば0.5~20mm程度とされる。
20個のヘッド2は、制御部88と直接接続されていてもよいし、印刷データを分配する分配部を介して制御部88と接続されていてもよい。例えば、制御部88が印刷データを1個の分配部へ送信し、1個の分配部が印刷データを20個のヘッド2に分配してもよい。また、例えば、4つのヘッド群72に対応する4つの分配部へ制御部88が印刷データを分配し、各分配部は、対応するヘッド群72内の5個のヘッド2に印刷データを分配してもよい。
ヘッド2は、図1(a)の手前から奥へ向かう方向、図1(b)の上下方向に細長い長尺形状を有している。1つのヘッド群72内において、3個のヘッド2は、印刷用紙Pの搬送方向に交差する方向(例えば略直交する方向)に沿って並んでおり、他の2個のヘッド2は搬送方向に沿ってずれた位置で、3個のヘッド2の間にそれぞれ一つずつ並んでいる。別の表現をすれば、1つのヘッド群72において、ヘッド2は、千鳥状に配置されている。ヘッド2は、各ヘッド2で印刷可能な範囲が、印刷用紙Pの幅方向、すなわち、印刷用紙Pの搬送方向に交差する方向に繋がるように、あるいは端が重複するように配置されており、印刷用紙Pの幅方向に隙間のない印刷が可能になっている。
4つのヘッド群72は、印刷用紙Pの搬送方向に沿って配置されている。各ヘッド2には、図示しない液体供給タンクから液体(例えばインク)が供給される。1つのヘッド群72に属するヘッド2には、同じ色のインクが供給されるようになっており、4つのヘッド群72で4色のインクが印刷できる。各ヘッド群72から吐出されるインクの色は、例えば、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、シアン(C)およびブラック(K)である。このようなインクを印刷用紙Pに着弾させることにより、カラー画像を印刷できる。
プリンタ1に搭載されているヘッド2の個数は、単色で、1個のヘッド2で印刷可能な範囲を印刷するのであれば、1個でもよい。ヘッド群72に含まれるヘッド2の個数や、ヘッド群72の数は、印刷する対象や印刷条件により適宜変更できる。例えば、さらに多色の印刷をするためにヘッド群72の数を増やしてもよい。また、同色で印刷するヘッド群72を複数配置して、搬送方向に交互に印刷すれば、同じ性能のヘッド2を使用しても搬送速度を速くできる。これにより、時間当たりの印刷面積を大きくすることができる。また、同色で印刷するヘッド群72を複数準備して、搬送方向と交差する方向にずらして配置して、印刷用紙Pの幅方向の解像度を高くしてもよい。
さらに、色のあるインクを印刷する以外に、印刷用紙Pの表面処理をするために、コーティング剤などの液体を、ヘッド2で、一様に、あるいはパターンニングして印刷してもよい。コーティング剤としては、例えば、記録媒体として液体が浸み込み難いものを用いる場合において、液体が定着し易いように、液体受容層を形成するものを使用できる。他に、コーティング剤としては、記録媒体として液体が浸み込み易いものを用いる場合において、液体のにじみが大きくなり過ぎたり、隣に着弾した別の液体とあまり混じり合わないように、液体浸透抑制層を形成するものを使用できる。コーティング剤は、ヘッド2で印刷する以外に、制御部88が制御する塗布機76で一様に塗布してもよい。
プリンタ1は、記録媒体である印刷用紙Pに印刷を行なう。印刷用紙Pは、給紙ローラ80Aに巻き取られた状態になっており、給紙ローラ80Aから送り出された印刷用紙Pは、フレーム70に搭載されているヘッド2の下側を通り、その後2個の搬送ローラ82Cの間を通り、最終的に回収ローラ80Bに回収される。印刷する際には、搬送ローラ82Cを回転させることで印刷用紙Pは、一定速度で搬送され、ヘッド2によって印刷される。
続いて、プリンタ1の詳細について、印刷用紙Pが搬送される順に説明する。給紙ローラ80Aから送り出された印刷用紙Pは、2つのガイドローラ82Aの間を通った後、塗布機76の下を通る。塗布機76は、印刷用紙Pに、上述のコーティング剤を塗布する。
印刷用紙Pは、続いて、ヘッド2が搭載されたフレーム70を収納した、ヘッド室74に入る。ヘッド室74は、印刷用紙Pが出入りする部分などの一部において外部と繋がっているが、概略、外部と隔離された空間である。ヘッド室74は、必要に応じて、制御部88等によって、温度、湿度、および気圧等の制御因子が制御される。ヘッド室74では、プリンタ1が設置されている外部と比較して、外乱の影響を少なくできるので、上述の制御因子の変動範囲を外部よりも狭くできる。
ヘッド室74には、5個のガイドローラ82Bが配置されており、印刷用紙Pは、ガイドローラ82Bの上を搬送される。5個のガイドローラ82Bは、側面から見て、フレーム70が配置されている方向に向けて、中央が凸になるように配置されている。これにより、5個のガイドローラ82Bの上を搬送される印刷用紙Pは、側面から見て円弧状になっており、印刷用紙Pに張力を加えることで、各ガイドローラ82B間の印刷用紙Pが平面状になるように張られる。2つ個ガイドローラ82Bの間には、1個のフレーム70が配置されている。フレーム70は、その下を搬送される印刷用紙Pと平行になるように、設置される角度が少しずつ変えられている。
ヘッド室74から外に出た印刷用紙Pは、2つの搬送ローラ82Cの間を通り、乾燥機78の中を通り、2個のガイドローラ82Dの間を通り、回収ローラ80Bに回収される。印刷用紙Pの搬送速度は、例えば、100m/分とされる。各ローラは、制御部88によって制御されてもよいし、人によって手動で操作されてもよい。
乾燥機78で乾燥することにより、回収ローラ80Bにおいて、重なって巻き取られる印刷用紙P同士が接着したり、未乾燥の液体が擦れることが起き難くなる。高速で印刷するためには、乾燥も速く行なう必要がある。乾燥を速くするため、乾燥機78では、複数の乾燥方式により順番に乾燥してもよいし、複数の乾燥方式を併用して乾燥してもよい。そのような際に用いられる乾燥方式としては、例えば、温風の吹き付け、赤外線の照射、加熱したローラへの接触などがある。赤外線を照射する場合は、印刷用紙Pへのダメージを少なくしつつ乾燥を速くできるように、特定の周波数範囲の赤外線を当ててもよい。印刷用紙Pを加熱したローラに接触させる場合は、印刷用紙Pをローラの円筒面に沿って搬送させることで、熱が伝わる時間を長くしてもよい。ローラの円筒面に沿って搬送させる範囲は、ローラの円筒面の1/4周以上がよく、さらにローラの円筒面の1/2周以上にするのがよい。UV硬化インク等を印刷する場合には、乾燥機78の代わりに、あるいは乾燥機78に追加してUV照射光源を配置してもよい。UV照射光源は、各フレーム70の間に配置してもよい。
プリンタ1は、ヘッド2をクリーニングするクリーニング部を備えていてもよい。クリーニング部は、例えば、ワイピングおよび/またはキャッピングによって洗浄を行なう。ワイピングは、例えば、柔軟性のあるワイパーで、液体が吐出される部位の面、例えば吐出孔面4-2(後述)を擦ることで、その面に付着していた液体を取り除く。キャッピングしての洗浄は、例えば、次のように行なう。まず、液体を吐出される部位、例えば吐出孔面4-2を覆うようにキャップを被せる(これをキャッピングと言う)ことで、吐出孔面4-2とキャップとで、略密閉されて空間が作られる。そのような状態で、液体の吐出を繰り返すことで、吐出孔8(後述)に詰まっていた、標準状態よりも粘度が高くなっていた液体や、異物等を取り除く。キャッピングしてあることで、洗浄中の液体がプリンタ1に飛散し難く、液体が、印刷用紙Pやローラ等の搬送機構に付着し難くなる。洗浄を終えた吐出孔面4-2を、さらにワイピングしてもよい。ワイピングおよび/またはキャッピングによる洗浄は、プリンタ1に取り付けられているワイパーおよび/またはキャップを人が手動で操作して行なってもよいし、制御部88によって自動で行なってもよい。
記録媒体は、印刷用紙P以外に、ロール状の布などでもよい。また、プリンタ1は、印刷用紙Pを直接搬送する代わりに、搬送ベルトを搬送して、記録媒体を搬送ベルトに置いて搬送してもよい。そのようにすれば、枚葉紙、裁断された布、木材またはタイルなどを記録媒体にできる。さらに、ヘッド2から導電性の粒子を含む液体を吐出するようにして、電子機器の配線パターンなどを印刷してもよい。またさらに、ヘッド2から反応容器などに向けて所定量の液体の化学薬剤または化学薬剤を含んだ液体を吐出させて、反応させるなどして、化学薬品を作製してもよい。
また、プリンタ1に、位置センサ、速度センサおよび/または温度センサなどを取り付けて、制御部88が、各センサからの情報から分かるプリンタ1各部の状態に応じて、プリンタ1の各部を制御してもよい。例えば、ヘッド2の温度、ヘッド2に液体を供給する液体供給タンクの液体の温度、および/または液体供給タンクの液体がヘッド2に加えている圧力などが、吐出される液体の吐出特性(例えば吐出量および/または吐出速度)に影響を与えている場合などに、それらの情報に応じて、液体を吐出させる駆動信号を変えるようにしてもよい。
(ヘッドの構成)
次に、本開示の一実施形態の液体吐出ヘッド2について説明する。図2(a)は、図1に示された液体吐出ヘッド2を構成するヘッド本体2aを示す平面図である。図2(b)は、ヘッド本体2aから第2流路部材6を除いた状態の平面図である。図3および図4は、図2(b)の拡大平面図である。図5(a)は、ヘッド本体2aの、図4のV-V線に沿った部分縦断面図である。図5(b)は、ヘッド本体2aの、第1共通流路20に沿った縦断面図である。ただし、図5(b)には、図2(a)には描いていない信号伝達部60も描いてある。
各図は、図面を分かり易くするために次のように描いている。図2~4では、他のものの下方にあって破線で描くべき流路などを実線で描いている。図2(a)では、第1流路部材4内の流路については、ほとんど省略し、加圧室10の配置のみを示している。
液体吐出ヘッド2は、ヘッド本体2a以外に、金属製の筐体や、ドライバIC、配線基板などを含んでいてもよい。また、ヘッド本体2aは、第1流路部材4と、第1流路部材4に液体を供給する第2流路部材6と、加圧部である変位素子50が作り込まれている圧電アクチュエータ基板40とを含んでいる。ヘッド本体2aは、一方方向に長い平板形状を有しており、その方向を長手方向と言うことがある。また、第2流路部材6は、ヘッド本体2aの構造を支持する支持部材の役割を果たしており、ヘッド本体2aは、第2流路部材6の長手方向の両端部のそれぞれでフレーム70に固定される。
(第1流路部材)
ヘッド本体2aを構成する第1流路部材4は、平板状の形状を有しており、その厚さは0.5~2mm程度である。第1流路部材4の第1の主面である加圧室面4-1には、加圧室10が平面方向に多数並んで配置されている。第1流路部材4の第2の主面であり、加圧室面4-1の反対側の面である吐出孔面4-2には、液体が吐出される吐出孔8が平面方向に多数並んで配置されている。吐出孔8は、それぞれ加圧室10と繋がっている。以下では、加圧室面4-1は、吐出孔面4-2に対して、上方に位置しているとして説明をする。
第1流路部材4には、複数の第1共通流路20および複数の第2共通流路24が、長手方向(第1方向)に対して所定の角度をなす斜め方向に沿って伸びるように配置されている。また、第1共通流路20と第2共通流路24とは、長手方向(第1方向)に交互に並んでいる。
第1共通流路20の両側に沿って加圧室10が並んでおり、片側1列ずつ、合計2列の加圧室列11Aが構成されている。第1共通流路20とその両側に並んでいる加圧室10とは、第1個別流路12を介して繋がっている。
第2共通流路24の両側に沿って加圧室10が並んでおり、片側1列ずつ、合計2列の加圧室列11Aが構成されている。第2共通流路24とその両側に並んでいる加圧室10とは、第2個別流路14を介して繋がっている。なお、以下で、第1共通流路20と第2共通流路24とを合わせて、共通流路と言うことがある。
別の表現をすれば、加圧室10は仮想線上に並んで配置されており、仮想線の一方の側に沿って第1共通流路20が伸びており、仮想線の他方の側に沿って第2共通流路24が伸びている。本実施形態では、加圧室10が並んでいる仮想線は直線状であるが、曲線状や折れ線状であってもよい。
以上のような構成により、第1流路部材4においては、第2共通流路24に供給された液体は、第2共通流路24に沿って並んでいる加圧室10に流れ込み、一部の液体は吐出孔8から吐出され、他の一部の液体は、加圧室10に対して第2共通流路24と反対側に位置している第1共通流路20に流れ込み、第1流路部材4の外に排出される。
第1共通流路20の両側に第2共通流路24が配置されており、第1共通流路20は、当該第1共通流路20の両側に配置されている2列の加圧室列11Aと繋がっている。そして、第2共通流路24の両側に第1共通流路20が配置されており、第2共通流路24は、当該第2共通流路24の両側に配置されている2列の加圧室列11Aと繋がっている。このように配置することで、1つの加圧室列11Aに対して、1つの第1共通流路20および1つの第2共通流路24が繋がっている場合(この場合も本開示に係る技術に含まれる。)と比較して、第1共通流路20および第2共通流路24の数を約半分にできる。第1共通流路20および第2共通流路24の数が少なくて済む分、加圧室10の数を増やしてヘッド本体2aの印刷解像度を高解像度化したり、第1共通流路20および第2共通流路24の少なくとも一方の断面を大きくして、複数ある吐出孔8の間の吐出特性の差を小さくしたり、ヘッド本体2aの平面方向の大きさを小さくすることができる。
第1共通流路20に繋がっている第1個別流路12の第1共通流路20側の部分に加わる圧力は、圧力損失の影響で、第1共通流路20に第1個別流路12が繋がっている位置により変わる。第2共通流路24に繋がっている第2個別流路14側の部分に加わる圧力は、圧力損失の影響で、第2共通流路24に第2個別流路14が繋がっている位置により変わる。第1共通流路20の外部への開口20aを共通流路に平行な方向の一方側の端部に配置し、第2共通流路24の外部への開口24aを共通流路に平行な方向の他方側の端部に配置すれば、各第1個別流路12および各第2個別流路14の配置による圧力の差が打ち消されるように作用し、各吐出孔8に加わる圧力の差を小さくできる。なお、第1共通流路20の開口20a、および第2共通流路24の開口24aはともに、加圧室面4-1に開口している。
吐出しない状態では、吐出孔8には液体のメニスカスが保持されている。吐出孔8において液体の圧力が負圧(液体を第1流路部材4に引き込もうとする状態)になっていることで、液体の表面張力とつり合ってメニスカスを保持できる。液体の表面張力は、液体の表面積を小さくしようとするので、正圧であっても圧力が小さければ、メニスカスを保持できる。
第1共通流路20の吐出孔面4-2側の壁面は、第1ダンパ28Aとなっている。第1ダンパ28Aの一方の面は、第1共通流路20に面しており、他方の面はダンパ室29に面している。ダンパ室29があることにより、第1ダンパ28Aは変形可能になっており、変形することで第1共通流路20の体積を変えることができる。液体を吐出させるために加圧室10内の液体が加圧されると、その圧力の一部は、液体を通じて第1共通流路20に伝わってくる。これにより、第1共通流路20内の液体が振動し、その振動が、元の加圧室10や、他の加圧室10に伝わって、液体の吐出特性を変動させる流体クロストークが生じることがある。第1ダンパ28Aが存在すると、第1共通流路20に伝わってきた液体の振動で第1ダンパ28Aが振動し、減衰することで、第1共通流路20内の液体の振動は持続され難くなるので、流体クロストークの影響を小さくできる。また、第1ダンパ28Aは、液体の給排を安定化させる役目も果たす。
第2共通流路24の加圧室面4-1側の壁面は、第2ダンパ28Bとなっている。第2ダンパ28Bの一方の面は、第2共通流路24に面しており、他方の面はダンパ室29に面している。第2ダンパ28Bも、第1ダンパ28Aと同様に、流体クロストークの影響を小さくできる。また、第2ダンパ28Bは、液体の給排を安定化させる役目も果たす。
加圧室10は、加圧室面4-1に面して配置されており、変位素子50からの圧力を受ける加圧室本体10aと、加圧室本体10aから下方に伸びており、吐出孔面4-2に開口している吐出孔8に繋がっている部分流路であるディセンダ10bとを含んだ中空の領域である。加圧室本体10aは、直円柱形状であり、平面形状は円形状である。平面形状が円形状であることにより変位素子50が同じ力で変形させた場合の変位量、および変位により生じる加圧室10の体積変化を大きくできる。ディセンダ10bは、直径が加圧室本体10aより小さい、直円柱形状であり、断面形状は円形状である。また、ディセンダ10bは、加圧室面4-1から見たときに、加圧室本体10a内に納まる位置に配置されている。
複数ある加圧室10は、加圧室面4-1において、千鳥状に配置されている。複数ある加圧室10は、斜め方向に沿った複数の加圧室列11Aを構成している。各加圧室列11Aにおいて、加圧室10は、ほぼ等しい間隔で配置されている。隣り合っている加圧室列11Aに属する加圧室10は、加圧室列11Aに平行な方向に前記間隔の約半分ずれて配置されている。別の表現をすれば、ある加圧室列11Aに属する加圧室10は、その隣に位置する加圧室列11Aに属する、連続する2つの加圧室10に対して、斜め方向のほぼ中央に位置している。
これにより、1つおきの加圧室列11Aに属している加圧室10は、ヘッド2の長手方向(第1方向)に沿って配置されることになり、加圧室行11Bを構成している。
本実施形態では、第1共通流路20は51本、第2共通流路24は50本であり、加圧室列11Aは100列である。なお、ここでは、後述のダミー加圧室10Dのみで構成されているダミー加圧室列11Dは、上述の加圧室列11Aの数に含めていない。また、直接的に繋がっているのがダミー加圧室10Dだけである第2共通流路24は、上述の第2共通流路24の数に含めていない。また、各加圧室列11Aには16個の加圧室10が含まれている。ただし、ヘッド2の長手方向の両端に位置する加圧室列11Aには、8個の加圧室10および8個のダミー加圧室10Dが含まれている。また、上述のように、加圧室10は千鳥状に配置されているため、加圧室行11Bの行数は、16行である。
複数の吐出孔8は、吐出孔面4-2において、格子状に配置されている。複数の吐出孔8は、ヘッド2の長手方向(第1方向)に対して所定の角度をなす斜め方向に沿った複数の吐出孔列9Aを構成している。吐出孔列9Aと加圧室列11Aとは、ほぼ同じ位置に配置されている。また、加圧室10の面積重心と、加圧室10と繋がっている吐出孔8とは、吐出孔列9Aに沿う方向にずれて配置されている。本実施形態では、吐出孔列9Aは100列であり、吐出孔行9Bは16行である。
加圧室本体10aの面積重心と、加圧室本体10aから繋がっている吐出孔8とは、位置がずれている。ディセンダ10bは、加圧室本体10aに対して、吐出孔8がずれている方向と同じ方向にずれた位置に配置されている。加圧室本体10aの側壁と、ディセンダ10bの側壁とは接するように配置されており、これにより加圧室本体10a内での液体の滞留を起き難くすることができる。
吐出孔8は、ディセンダ10bの中央部に配置されている。ここで中央部とは、ディセンダ10bの面積重心を中心とする、ディセンダ10bの直径の半分の円内の領域のことである。別の表現では、中央部とは、ディセンダ10bの断面と相似で面積が1/4の図形を、その図形の面積重心とディセンダ10bの断面の面積重心とが合うように配置した領域のことである。
第1個別流路12と加圧室本体10aとの接続部は、加圧室本体10aの面積重心に対して、ディセンダ10bとは反対側に配置されている。これにより、ディセンダ10bから流れ込んだ液体は、加圧室本体10a全体に広がった後、第1個別流路12に向かうように流れるため、加圧室本体10a内に液体の滞留が生じ難い。
第2個別流路14は、ディセンダ10bの吐出孔面4-2側の面から、平面方向に引き出されて第2共通流路24と繋がっている。引き出される方向は、加圧室本体10aに対して、ディセンダ10bがずらされる方向と同じである。
斜め方向に沿って配置されている吐出孔列9Aに属する吐出孔8同士は、ヘッド2の長手方向(第1方向)の位置で見ると、ずれて配置される。そして、吐出孔列9Aが長手方向(第1方向)に並んで配置されるので、異なる吐出孔列9Aに属する吐出孔8は、その分、長手方向(第1方向)にずれて配置される。これらが合わさって、第1流路部材4の吐出孔8は、長手方向(第1方向)に一定間隔で並んで配置されている。これにより、吐出孔8から吐出された液体により形成される画素で所定の範囲を埋めるように印刷ができる。
本実施形態では、吐出孔8の配置は次のようになっている。図3において、吐出孔8をヘッド2の長手方向(第1方向)に投影すると、仮想直線Rの範囲に32個の吐出孔8が投影され、仮想直線R内で各吐出孔8は360dpiの間隔に並ぶ。これにより、仮想直線Rに直交する方向に印刷用紙Pを搬送して印刷すれば、360dpiの解像度で印刷できる。仮想直線R内に投影される吐出孔8は、1列の吐出孔列9Aに属する吐出孔8すべて(16個)と、その吐出孔列9Aの両隣に位置する2つの吐出孔列9Aに属する吐出孔8の半分(8個)ずつである。このような構成にするために、各吐出孔行9Bでは、吐出孔8は、22.5dpiの間隔で並んでいる。これは、360/16=22.5であるからである。
ヘッド2の長手方向の端の1列、すなわち両端で合わせて2列の加圧室列11Aには、通常の加圧室10とダミー加圧室10Dとが含まれている(そのため、この加圧室列11Aをダミー加圧室列11D1と言うことがある)。また、ダミー加圧室列11D1のさらに外側には、ダミー加圧室10Dのみが並んでいる1列、すなわち両端で合わせて2列のダミー加圧室列11D2が配置されている。長手方向(第1方向)の両端に1本ずつ、すなわち両端で合わせて2列ある流路は、通常の第2共通流路24と同じ形状をしているが、直接的には加圧室10とは繋がっておらず、ダミー加圧室10Dとしか繋がっていない。
ダミー加圧室10Dは、液体の吐出には用いない。もっとも端に位置する第2共通流路24に加圧室10を繋げると、その第2共通流路24に繋がっている加圧室10は1列だけになり、その列の加圧室10は、他の加圧室10と吐出特性が変わるおそれがある。そのため、ダミー加圧室10Dを配置する。ダミー加圧室10Dおよびダミー加圧室10Dと共通流路とを繋いでいる流路の基本的な構造は、加圧室10および加圧室10と共通流路とを繋いでいる流路と同じであり、そのようなダミー加圧室10Dを配置することで、もっとも端に位置する第2共通流路24の内側に隣り合って配置されている第1共通流路20に流れる液体の状態を、他の第1共通流路20とほぼ同じにできる。それにより、もっとも端に位置する第2共通流路24に対してヘッド本体2aの内側に隣り合って配置されている第1共通流路20に対してヘッド本体2aの内側に隣り合って配置されている加圧室10の吐出特性を、他の加圧室10の吐出特性とほぼ同じにできる。
本実施形態では、ダミー加圧室10Dには、対応した吐出孔8を設けていない。また、一部のダミー加圧室10Dの上部には圧電アクチュエータ基板40が配置されていない。そのようなダミー加圧室10Dは、加圧室10となる孔が配置されているプレート4aではなく、プレート4aの下に配置されているプレート4bの孔をプレート4aで塞ぐことで構成されている。なお、ダミー加圧室10Dは、例えば、加圧室10と全く同じ構造にして、単に駆動信号を供給しないことで、液体の吐出には用いないようにしてもよい。
第1流路部材4は、ヘッド2の長手方向において第1共通流路20および第2共通流路24からなる共通流路群の外側に位置していて、ヘッド2の長手方向に交差する方向に伸びている、端部流路30を有している。端部流路30は、加圧室面4-1に並んでいる第1共通流路20の開口20aのさらに外側に配置されている開口30cと、加圧室面4-1に並んでいる第2共通流路24の開口24aのさらに外側に配置されている開口30dとを繋いでいる流路である。
液体の吐出特性を安定させるために、ヘッド本体2aは、温度を一定にするようコントロールされる。また、液体の粘度が低くなる方が、吐出や液体の循環が安定するため、温度は、基本的には常温以上にされる。そのため、基本的には加熱することになるが、環境温度が高い場合は、冷却することもある。
温度を一定に保つためには、液体吐出ヘッド2にヒータを設けたり、供給する液体を温度調節したものにしたりする。いずれにしても、環境温度と、目標とする温度に差がある場合、ヘッド本体2aの長手方向(第1方向)の端部からの放熱が多くなるため、第2方向の中央部に位置する加圧室10の中の液体の温度に対して、第2方向および第4方向の端に位置する加圧室10の温度は低くなりやすい。端部流路30を設けることにより、長手方向(第1方向)の端に位置する加圧室10の温度が下がり難くなり、各加圧室10から吐出される液体の吐出特性のばらつきを小さくでき、印刷精度を向上させることができる。
端部流路30は、第1統合流路22と第2統合流路26とを繋いでいる流路である。端部流路30の流路抵抗が、第1共通流路20および第2共通流路24の流路抵抗よりも小さいときには、端部流路30に流れる液体の量が多くなり、端部流路30より内側での温度低下をより抑制できる。
端部流路30には、流路の幅が、共通流路の幅よりも広い幅広部30aが設けられており、幅広部30aの加圧室面4-1側にはダンパが設けられている。このダンパは、一方の面が幅広部30aに面しており、他方の面がダンパ室に面していて変形可能になっている。ダンパのダンピング能力は、変形可能な領域の差し渡しが一番狭い部分の影響が大きい。そのため、幅広部30aに面してダンパを設けることで、ダンピング能力の高いダンパとすることができる。幅広部30aの幅は、共通流路の幅の2倍以上、または3倍以上とされてよい。幅広部30aを設けることで、流路抵抗が低くなり過ぎるようであれば、狭窄部30bを設けて、流路抵抗を調整してもよい。
(第2流路部材)
第2流路部材6は、第1流路部材4の加圧室面4-1に接合されている。第2流路部材6は、第2共通流路24に液体を供給する第2統合流路26と、第1共通流路20の液体を回収する第1統合流路22とを有している。第2流路部材6の厚さは、第1流路部材4よりも厚く、5~30mm程度である。
第2流路部材6は、第1流路部材4の加圧室面4-1の圧電アクチュエータ基板40が接続されていない領域に接合されている。より具体的には、圧電アクチュエータ基板40を囲むように接合されている。このようにすることで、圧電アクチュエータ基板40に、吐出した液体の一部がミストとなって付着するのを抑制できる。また、第1流路部材4を外周で固定することになるので、第1流路部材4が変位素子50の駆動にともなって振動して、共振などが生じることを抑制できる。
また、第2流路部材6の中央部には、第2流路部材6を上下に貫通している貫通孔6aが配置されている。貫通孔6aは、圧電アクチュエータ基板40を駆動する駆動信号を伝達するFPC(Flexible Printed Circuit)などの信号伝達部60が通される。
第1統合流路22を、第1流路部材4とは別の、第1流路部材4より厚い第2流路部材6に配置することで、第1統合流路22の断面積を大きくすることができ、それにより第1統合流路22と第1共通流路20とが繋がっている位置の差による圧力損失の差を小さくできる。第1統合流路22の流路抵抗(より正確には第1統合流路22のうちで、第1共通流路20と繋がっている範囲の流路抵抗)は、第1共通流路20の1/100以下にするのが好ましい。
第2統合流路26を、第1流路部材4とは別の、第1流路部材4より厚い第2流路部材6に配置することで、第2統合流路26の断面積を大きくすることができ、それにより第2統合流路26と第2共通流路24とが繋がっている位置の差による圧力損失の差を小さくできる。第2統合流路26の流路抵抗(より正確には第2統合流路26のうちで、第1統合流路22と繋がっている範囲の流路抵抗)は、第2共通流路24の1/100以下にするのが好ましい。
第1統合流路22を第2流路部材6の短手方向の一方の端に配置し、第2統合流路26を第2流路部材6の短手方向の他方の端に配置し、それぞれの流路を第1流路部材4側に向かわせて、それぞれ第1共通流路20および第2共通流路24と繋げる構造にする。このようにすることで、第1統合流路22および第2統合流路26の断面積を大きく、すなわち流路抵抗を小さくできるともに、第2流路部材6で、第1流路部材4の外周を固定して剛性を高くし、さらに、信号伝達部60の通る貫通孔6aを設けることができる。
第2流路部材6の下面には、第1統合流路22のうちヘッド2の長手方向に伸びている流路抵抗の低い部分である第1統合流路本体22aとなる溝と、第2統合流路26のうちヘッド2の長手方向に伸びている流路抵抗の低い部分である第2統合流路本体26aとなる溝が配置されている。第2流路部材6の第1統合流路本体22aとなる溝は、下面の一部は第1流路部材4の上面で塞がれ、下面の他の部分は第1流路部材4の上面に配置されている、第1共通流路20の開口20aおよび端部流路30の開口30cと繋がることで、第1統合流路本体22aとなっている。第2流路部材6の第2統合流路本体26aとなる溝は、下面の一部は第1流路部材4の上面で塞がれる、下面の他の部分は第1流路部材4の上面に配置されている、第2共通流路24の開口24aおよび端部流路30の開口30dと繋がることで、第1統合流路本体22aとなっている。
第1統合流路22の端部には、第2流路部材6の上面に開口している開口22bが配置されている。第2統合流路26の端部には、第2流路部材6の上面に開口している開口26bが配置されている。印刷をする場合には、外部から第2統合流路26の開口26bに液体を供給し、吐出しなかった液体は、第1統合流路22の開口26bから回収する。
第1統合流路22および第2統合流路26には、ダンパを設けて、液体の吐出量の変動に対して液体の供給、あるいは排出が安定するようにしてもよい。また、第1統合流路22および第2統合流路26の内部や、第1共通流路20あるいは第2共通流路24との間に、フィルタを設けることにより、異物や気泡が、第1流路部材4に入り込み難くしてもよい。
(第1流路部材および圧電アクチュエータ基板の積層構造)
第1流路部材4の上面である加圧室面4-1には、変位素子50を含む圧電アクチュエータ基板40が接合されており、各変位素子50が加圧室10上に位置するように配置されている。圧電アクチュエータ基板40は、加圧室10によって形成された加圧室群とほぼ同一の形状の領域を占有している。また、各加圧室10の開口は、第1流路部材4の加圧室面4-1に圧電アクチュエータ基板40が接合されることで閉塞される。圧電アクチュエータ基板40は、ヘッド本体2aと同じ方向に長い長方形状である。また、圧電アクチュエータ基板40には、各変位素子50に信号を供給するためのFPCなどの信号伝達部60が接続されている。第2流路部材6には、中央で、上下に貫通している貫通孔6cがあり、信号伝達部60は貫通孔6cを通って制御部88と電気的に繋がれる。信号伝達部60は、圧電アクチュエータ基板40の一方の長辺の端から他方の長辺の端に向かうように短手方向に伸びる形状にし、信号伝達部に配置される配線が短手方向に沿って伸び、長手方向に並ぶようにすれば、配線間の距離を大きくできる。
圧電アクチュエータ基板40の上面における各加圧室10に対向する位置には個別電極44がそれぞれ配置されている。
第1流路部材4は、複数のプレートが積層された積層構造を有している。第1流路部材4の加圧室面4-1側から順に、プレート4aからプレート4lまでの12枚のプレートが積層されている。これらのプレートには多数の孔や溝が形成されている。孔や溝は、例えば、各プレートを金属で作製し、エッチングで形成できる。各プレートの厚さは10~300μm程度であることにより、形成する孔や溝の形成精度を高くできる。各プレートは、これらの孔や溝が互いに連通して第1共通流路20などの流路を構成するように、位置合わせして積層されている。
平板状の第1流路部材4の加圧室面4-1には、加圧室本体10aが開口しており、圧電アクチュエータ基板40が接合されている。また、加圧室面4-1には、第2共通流路24に液体を供給する開口24a、および第1共通流路20から液体を回収する開口20aが開口している。第1流路部材4の、加圧室面4-1と反対側の面である吐出孔面4-2には吐出孔8が開口している。なお、加圧室面4-1にさらにプレートを積層して、加圧室本体10aの開口を塞ぎ、その上に圧電アクチュエータ基板40を接合してもよい。そのようにすれば、吐出する液体が圧電アクチュエータ基板40に接する可能性を低減することができ、信頼性をより高くできる。
液体を吐出する構造としては、加圧室10と吐出孔8とがある。加圧室10は、変位素子50に面している加圧室本体10aと、加圧室本体10aより断面積が小さいディセンダ10bから成っている。加圧室本体10aは、プレート4aに形成されており、ディセンダ10bは、プレート4b~kに形成された孔が重ねられ、さらにノズルプレート4lで、吐出孔8以外の部分を塞がれて成っている。
加圧室本体10aには、第1個別流路12が繋がっており、第1個別流路12は、第1共通流路20に繋がっている。第1個別流路12は、プレート4bを貫通する円形状の孔と、プレート4cにおいて平面方向に伸びている貫通溝と、プレート4dを貫通する円形状の孔とを含んでいる。第1共通流路20はプレート4f~iに形成された孔が重ねられ、さらに上側をプレート4eで、下側をプレート4jで塞がれて成っている。
ディセンダ10bには、第2個別流路14が繋がっており、第2個別流路14は、第2共通流路24に繋がっている。第2個別流路14は、プレート4kにおいて平面方向に伸びている貫通溝である。第2共通流路24はプレート4f~jに形成された孔が重ねられ、さらに上側をプレート4eで、下側をプレート4kで塞がれて成っている。
液体の流れについてまとめると、第2統合流路26に供給された液体は、第2共通流路24および第2個別流路14を順に通って加圧室10に入り、一部の液体は吐出孔8から吐出される。吐出されなかった液体は、第1個別流路12を通って、第1共通流路20に入った後、第1統合流路22に入り、ヘッド本体2aの外部に排出される。
(圧電アクチュエータ基板)
圧電アクチュエータ基板40は、圧電体である2枚の圧電セラミック層40a、40bからなる積層構造を有している。これらの圧電セラミック層40a、40bはそれぞれ20μm程度の厚さを有している。すなわち、圧電アクチュエータ基板40の圧電セラミック層40aの上面から圧電セラミック層40bの下面までの厚さは40μm程度である。圧電セラミック層40aと圧電セラミック層40bの厚さの比は、3:7~7:3、または4:6~6:4にされる。圧電セラミック層40a、40bのいずれの層も複数の加圧室10を跨ぐように延在している。これらの圧電セラミック層40a、40bは、例えば、強誘電性を有する、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)系、NaNbO3系、BaTiO3系、(BiNa)NbO3系、BiNaNb5O15系などのセラミックス材料からなる。
圧電アクチュエータ基板40は、Ag-Pd系などの金属材料からなる共通電極42およびAu系などの金属材料からなる個別電極44を有している。共通電極42の厚さは2μm程度であり、個別電極44の厚さは1μm程度である。
個別電極44は、圧電アクチュエータ基板40の上面における各加圧室10に対向する位置に、それぞれ配置されている。個別電極44は、平面形状が加圧室本体10aより一回り小さく、加圧室本体10aとほぼ相似な形状を有している個別電極本体44aと、個別電極本体44aから引き出されている引出電極44bとを含んでいる。引出電極44bの一端の、加圧室10と対向する領域外に引き出された部分には、接続電極46が形成されている。接続電極46は、例えば銀粒子などの導電性粒子を含んだ導電性樹脂であり、5~200μm程度の厚さで形成されている。また、接続電極46は、信号伝達部60に設けられた電極と電気的に接合されている。
また、圧電アクチュエータ基板40の上面には、共通電極用表面電極(不図示)が形成されている。共通電極用表面電極と共通電極42とは、圧電セラミック層40aに配置された、図示しない貫通導体を通じて、電気的に接続されている。
詳細は後述するが、個別電極44には、制御部88から信号伝達部60を通じて駆動信号が供給される。駆動信号は、印刷用紙Pの搬送速度と同期して一定の周期で供給される。
共通電極42は、圧電セラミック層40aと圧電セラミック層40bとの間の領域に面方向のほぼ全面にわたって形成されている。すなわち、共通電極42は、圧電アクチュエータ基板40に対向する領域内のすべての加圧室10を覆うように延在している。共通電極42は、圧電セラミック層40a上に個別電極44からなる電極群を避ける位置に形成されている共通電極用表面電極に、圧電セラミック層40aを貫通して形成されたビアホールを介して繋がっていて、接地され、グランド電位に保持されている。共通電極用表面電極は、複数の個別電極44と同様に、制御部88と直接あるいは間接的に接続されている。
圧電セラミック層40aの個別電極44と共通電極42とに挟まれている部分は、厚さ方向に分極されており、個別電極44に電圧を印加すると変位する、ユニモルフ構造の変位素子50となっている。より具体的には、個別電極44を共通電極42と異なる電位にして圧電セラミック層40aに対してその分極方向に電界を印加したとき、この電界が印加された部分が、圧電効果により歪む活性部として働く。この構成において、電界と分極とが同方向となるように、制御部88により個別電極44を共通電極42に対して正または負の所定電位にすると、圧電セラミック層40aの電極に挟まれた活性部が、面方向に収縮する。一方、非活性層である圧電セラミック層40bは電界の影響を受けないため、自発的には縮むことがなく活性部の変形を規制しようとする。この結果、圧電セラミック層40aと圧電セラミック層40bとの間で分極方向への歪みに差が生じて、圧電セラミック層40bは加圧室10側へ凸となるように変形(ユニモルフ変形)する。
(吐出動作)
続いて、液体の吐出動作について説明する。制御部88からの制御でドライバICなどを介して、個別電極44に供給される駆動信号により、変位素子50が駆動(変位)させられる。本実施形態では、様々な駆動信号で液体を吐出させることができるが、ここでは、いわゆる引き打ちの駆動方法について説明する。
あらかじめ個別電極44を共通電極42より高い電位(以下、高電位と称す)にしておき、吐出要求がある毎に個別電極44を共通電極42と一旦同じ電位(以下、低電位と称す)とし、その後所定のタイミングで再び高電位とする。これにより、個別電極44が低電位になるタイミングで、圧電セラミック層40a、40bが元の(平らな)形状に戻り(始め)、加圧室10の容積が初期状態(両電極の電位が異なる状態)と比較して増加する。これにより、加圧室10内の液体に負圧が与えられる。そうすると、加圧室10内の液体が固有振動周期で振動し始める。具体的には、最初、加圧室10の体積が増加し始め、負圧は徐々に小さくなっていく。次いで加圧室10の体積は最大になり、圧力はほぼゼロとなる。次いで加圧室10の体積は減少し始め、圧力は高くなっていく。その後、圧力がほぼ最大になるタイミングで、個別電極44を高電位にする。そうすると最初に加えた振動による圧力と、次に加えた圧力とが重なり、より大きい圧力が液体に加わる。この圧力がディセンダ内を伝搬し、吐出孔8から液体を吐出させる。
つまり、高電位を基準として、一定期間低電位とするパルスの駆動信号を個別電極44に供給することで、液滴を吐出できる。このパルス幅は、加圧室10の液体の固有振動周期の半分の時間であるAL(Acoustic Length)とすると、原理的には、液体の吐出速度
および吐出量を最大にできる。加圧室10の液体の固有振動周期は、液体の物性、加圧室10の形状の影響が大きいが、それ以外に、圧電アクチュエータ基板40の物性や、加圧室10に繋がっている流路の特性からの影響も受ける。
なお、パルス幅は、吐出される液滴を1つにまとめるようにするなど、他に考慮する要因もあるため、実際は、0.5AL~1.5AL程度の値にされる。また、パルス幅は、ALから外れた値にすることで、吐出量を少なくすることができるため、吐出量を少なくするためにALから外れた値にされる。
(吐出孔の配置)
本開示の液体吐出ヘッド2の要部となる複数の吐出孔8の配置について説明する。図6は複数の吐出孔の配置の一例、図7および図8は複数の吐出孔8の配置の他の例を示している。
これらの図は、吐出孔面4-2の一部の模式的な平面図となっている。これらの図において、x方向は、ヘッド2の長手方向(第1方向)である。y方向は、ヘッド2の長手方向に直交する方向(第2方向)である。吐出孔8を黒点で表し、y方向に見て隣り合っている吐出孔8の関係が分かり易いように、-x側に位置する吐出孔8から+x側に位置する吐出孔8へ順に、吐出孔8同士を繋いでいる線を描いている。また、吐出孔8同士の位置関係の把握を容易にするために、x方向およびy方向に平行な目盛線を付している。縦軸の数字は、吐出孔行9Bに付した行番号を示している。
液体吐出ヘッド2は、長手方向である第1方向の一端側から他端側に延びており、第1方向に直交する第2方向(搬送方向)において二分するように仮想的に区画した一対の第1吐出領域R1および第2吐出領域R2を含んでいる。なお、第1吐出領域R1と第2吐出領域R2とは、第2方向に沿った液体吐出ヘッド2の幅方向をほぼ2等分に区画するような仮想的な領域のことである。
図6に示すような複数の吐出孔8が15行配置の場合は、1行~8行の吐出孔8を含む第1吐出領域R1と9行~15行の吐出孔8を含む第2吐出領域R2とに区画することとする。また、図7に示すような複数の吐出孔8が16行配置の場合は、1行~8行の吐出孔8を含む第1吐出領域R1と9行~16行の吐出孔8を含む第2吐出領域R2とに区画する。また、図8に示すような複数の吐出孔8が17行配置の場合は、1行~8行の吐出孔8を含む第1吐出領域R1と9行~17行の吐出孔8を含む第2吐出領域R2とに区画することとする。なお、複数の吐出孔8が15行乃至17行配置されているとは、必ずしも各行を構成する吐出孔8が第1方向に沿って一直線に並んでいることに限定されるものではない。
そして、液体吐出ヘッド2は、第1方向(x方向)に沿った仮想直線IL上に射影したときの射影点PPが等ピッチに並ぶように配置された複数の吐出孔8を有している。ここで、射影点PPが等ピッチに並ぶとは、平均ピッチからみてプラスマイナス15%の範囲内でずれた間隔が含まれていてもよいこととする。吐出孔8の孔径は、例えば10μm~30μmとされる。
また、液体吐出ヘッド2は、第1方向に対して所定の角度をなす斜め方向に沿って第1吐出領域R1から第2吐出領域R2にかけて延びる吐出孔列9Aを複数有している。
ここで、mを3以上の所定の整数とする。また、nを2以上(m-1)以下の任意の整数とする。このとき、第1方向の一端側(-x側)から数えて(n-1)番目、n番目および(n+1)番目の吐出孔列9Aをそれぞれ吐出孔列91、92および93と呼称するものとする。このとき、吐出孔列91、92および93の間には、以下に述べる関係が成り立っている。
なお、nは任意の整数であるから、いずれの連続する3つの吐出孔列9Aが吐出孔列91、92および93と捉えられてもよいが、図では、便宜上、1組の3つの吐出孔列9Aに91、92および93の符号を付している。また、mは、例えば、複数の吐出孔列9Aの総数である。ただし、mは、複数の吐出孔列9Aの総数よりも少ない数であってもよい。例えば、ヘッド2の長手方向(x方向)の両側には、特異な吐出孔列9Aが設けられることもある。このような場合においては、本実施形態で述べる吐出孔8の配置は、ヘッド2の長手方向の中央側の一部においてのみ成り立ってもよい。
複数の吐出孔列9Aは、第1方向の一端側(-x側)から数えて(n-1)番目の吐出孔列91とn番目の吐出孔列92とが、第2方向(y方向)から見たときに重なる領域を有している配置になっている。換言すれば、y方向に見て、吐出孔列91のうちの+x側の少なくとも一部かつ2以上の吐出孔8と、吐出孔列92のうちの-x側の一部かつ2以上の吐出孔8とは交互に並んでいる。同様に、y方向に見て、吐出孔列92のうちの+x側の一部かつ2以上の吐出孔8と、吐出孔列93のうちの-x側の少なくとも一部かつ2以上の吐出孔8とは交互に並んでいる。
また、第1方向の一端側(-x側)から数えて(n-1)番目の吐出孔列91と(n+1)番目の吐出孔列93とは第2方向から見たときに重なる領域を有しない配置になっている。
さらに、複数の吐出孔8を第1方向に沿った仮想直線IL上に射影したときに、第1方向の一端側(-x側)から数えて(n-1)番目の吐出孔列91のうちの最も他端側(+x側)に位置する第1吐出孔9aの射影点PPと、(n+1)番目の吐出孔列93のうちの最も一端側に位置する第2吐出孔9bの射影点PPとの間には、n番目の吐出孔列92のうちの一つの吐出孔である第3吐出孔9cの射影点PPのみがある。
ここで、第3吐出孔9cは、n番目の吐出孔列92を構成する吐出孔8のうち、第1吐出領域R1と第2吐出領域R2との境界に隣接する位置にある。第3吐出孔9cとは、「第1方向の一端側から数えて(n-1)番目(nは2以上の整数)の吐出孔列91のうちの最も他端側に位置する第1吐出孔9aの射影点と、(n+1)番目(nは2以上の整数)の吐出孔列93のうちの最も一端側に位置する第2吐出孔9bの射影点との間には、n番目(nは2以上の整数)の吐出孔列のうちの一つの吐出孔である第3吐出孔9cの射影点のみがある」として定義される吐出孔である。
比較例として、第1吐出孔9aの射影点PPと第2吐出孔9bの射影点PPとが互いに隣り合う(両者の間にn番目の吐出孔列92の吐出孔8が位置しない)態様が挙げられる。この場合、吐出孔列92の最も-x側の吐出孔8から第1吐出孔9aまで、および第2吐出孔9bから吐出孔列92の最も+x側の吐出孔8までは、y方向に見て互いに隣り合う吐出孔8の行間隔(y方向の距離)が一定であるのに対して、第1吐出孔9aと第2吐出孔9bとの行間隔は特異的に大きくなることになる。
このような特異的に行間隔が大きくなる部位は、記録媒体への着弾時間差によって記録媒体の画質に影響を与えるおそれがある。また、ヘッドメンテナンス等で液体吐出ヘッドの離脱、取り付けが行われると、第1方向(x方向)に対するヘッド取り付け角度にわずかなずれが生じる場合がある。このような場合、第1方向における記録媒体上のドット間隔が異なる部分が生じてしまい、記録媒体に濃度ムラが視認されるおそれもある。
一方、本実施形態では、上述した配置により、行間隔に大きな差が見られなくなる。具体的には、図6に示す15行配置の例では、第1方向に隣接する吐出孔8と吐出孔8との行間隔が全て7行となる。また、図7に示す16行配置の例では、第1方向に隣接する吐出孔8と吐出孔8との行間隔が7行または8行となる。また、図8に示す17行配置の例では、第1方向に隣接する吐出孔8と吐出孔8との行間隔が全て8行となる。
このように、本開示の液体吐出ヘッド2によれば、第2方向に見て吐出孔8の行間隔に大きな差が見られなくなることから、濃度ムラを抑制することができる。したがって、記録媒体の画質を向上させることができる。
第1吐出領域R1と第2吐出領域R2とは、上記のような第1吐出孔9aおよび第2吐出孔9bとの間に第3吐出孔9cが位置する吐出孔8の配置パターンを前提として、以下のように再定義することができる。吐出孔面4-2を第1方向(x方向)に沿う(例えば平行な)仮想直線(境界線BL)によって、第1吐出領域R1と第2吐出領域R2とに区画するものとする。このとき、境界線BLは、第1吐出領域R1が、2番目から(m-1)番目の吐出孔列9Aそれぞれにおいて第3吐出孔9cよりも第1方向の一方側(-x側)に位置している吐出孔8を全て含むように、かつ第2吐出領域R2が、2番目から(m-1)番目の吐出孔列9Aそれぞれにおいて第3吐出孔9cよりも第1方向の他方側(+x側)に位置している吐出孔8を全て含むように設定される。
このとき、図7に示すように、複数の第3吐出孔9cは、-x側に位置するものから+x側に位置するものへ順に、第1吐出領域R1と第2吐出領域R2とに1つずつ交互に位置してよい。換言すれば、複数の吐出孔列9における第3吐出孔9cは、n番目の吐出孔列92を構成する吐出孔8のうち、第1吐出領域R1と第2吐出領域R2との境界に隣接する位置にあって、第1方向(x方向)の一端側から他端側にわたって見渡したときに、第1吐出領域R1と第2吐出領域R22とに繰り返し交互に位置していてもよい。
この構成によれば、第1方向の一端側から他端側にわたって第3吐出孔9cを第1吐出領域R1と第2吐出領域R2とにバランスよく配置することができる。そして、各吐出孔列9Aにおいて、第1吐出領域R1と第2吐出領域R2とにそれぞれ同数の吐出孔8を配置できる。
また、図6または図8に示すように、複数の第3吐出孔9cは、境界線BL上に位置しているか、第1吐出領域R1および第2吐出領域R2のうちのいずれか一方の領域のみに位置してよい。なお、境界線BL上に位置するか否かは、境界線BLの設定位置による。境界線BLが第3吐出孔9cに重ならないように設定された場合について、別の表現をすれば、複数の吐出孔列9における第3吐出孔9cは、n番目の吐出孔列92を構成する吐出孔8のうち、第1吐出領域R1と第2吐出領域R2との境界に隣接する位置にあって、第1方向の一端側から他端側にわたって見渡したときに、第1吐出領域R1および第2吐出領域R2のうちのいずれか一方の領域のみに位置していてもよい。この構成によれば、第1方向(x方向)において互いに隣接する吐出孔8の行間隔を全て等しくでき、記録媒体の画質向上に寄与できる。
(共通流路の幅の設定の一例)
第1共通流路20の幅および第2共通流路24の幅は、互いに同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。また、互いに異なっている場合において、これらの共通流路の幅の異同と、複数の吐出孔列9A同士の間隔との間に関係性があってもよいし、なくてもよい。以下では、複数の吐出孔列9A同士の間隔のばらつきに応じて第1共通流路20の幅および第2共通流路24の幅の幅が互いに異なっている態様の一例を示す。
図9は、図7において、吐出孔8同士を結ぶ線およびマス目等を省略するとともに、第1共通流路20および第2共通流路24を描いた模式的な平面透視図である。
図7に関して、複数の吐出孔9cが第1吐出領域R1と第2吐出領域R2とに交互に位置していることを述べた。これは、別の観点では、以下のように捉えることもできる。奇数番目および偶数番目の一方の吐出孔列9A(例えば図7の吐出孔列92)それぞれにおいて、第3吐出孔9cよりも第1方向の一方側(-x側)に位置している吐出孔8の数は、第3吐出孔9cよりも第1方向の他方側(+x側)に位置している吐出孔8の数よりも(例えば1つ)少ない。一方で、奇数番目および偶数番目の他方の吐出孔列9A(例えば図7の吐出孔列93)それぞれにおいて、第3吐出孔9cよりも第1方向の一方側(-x側)に位置している吐出孔8の数は、第3吐出孔9cよりも第1方向の他方側(+x側)に位置している吐出孔8の数よりも(例えば1つ)多い。
このような配置に起因して、複数の吐出孔列9Aは、相対的に長い間隔(例えば吐出孔列91と92との間隔を参照)と、相対的に短い間隔(吐出孔列92と93との間隔を参照)とが繰り返されるように第1方向(x方向)に配列されている。具体的には、第3吐出孔9cよりも-x側に位置している吐出孔8の数が相対的に少ない吐出孔列9A(例えば吐出孔列92)に対して+x側の間隔は狭くなり、第3吐出孔9cよりも-x側に位置している吐出孔8の数が相対的に多い吐出孔列9A(例えば吐出孔列93)に対して+x側の間隔は広くなる。
そして、相対的に広い間隔に位置している共通流路(図9の例では第2共通流路24)の幅w2は、相対的に狭い間隔に位置している共通流路(図9の例では第1共通流路20)の幅w1よりも大きくされている。なお、共通流路の幅は、共通流路の高さ方向において一定でないときは、最大幅が比較されてよい。図示の例とは逆に、相対的に広い間隔に第1共通流路20が配置され、相対的に狭い間隔に第2共通流路24が配置され、第1共通流路20の幅が第2共通流路24の幅よりも大きくされてもよい。あるいは、実施形態の説明では、第2共通流路24に供給された液体が第2個別流路14、加圧室10及び第1個別流路12を介して第1共通流路20へ流れるものとして説明したが、これとは逆の流れとされてもよい。
このように、吐出孔列9A同士の間隔が互いに同一でない場合において、相対的に広い間隔に位置する共通流路の幅を相対的に大きくすることによって、例えば、吐出孔列9A間の間隔を有効利用して、第1流路部材4の体積の利用効率を向上させることができる。
上記のような共通流路の幅の大小関係と、共通流路および/または個別流路の役割、形状および寸法とは、関連性があってもよいし、なくてもよい。
例えば、加圧室10と相対的に幅が広い第2共通流路24との間の流路抵抗(第2個別流路14の流路抵抗)は、加圧室10と第1共通流路20との間の流路抵抗(第1個別流路12の流路抵抗)よりも小さくてよい。
この場合、例えば、加圧室10で生じた圧力波は、流路抵抗が相対的に小さい第2個別流路14を介して第2共通流路24に伝わりやすい。しかし、第2共通流路24の幅が相対的に広いことにより、第2ダンパ28Bの効果を相対的に向上させやすい。その結果、第1共通流路20および第2共通流路24の全体として、不要な圧力波を低減することができる。また、例えば、供給路である第2共通流路24の流量の方が回収路である第1共通流路20の流量よりも多いから、供給路の流速と回収路の流速とを近づけることができる。
本開示に係る技術は、以上の実施形態に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
例えば、液体吐出ヘッドは、圧電素子によって個別流路に圧力を付与するピエゾ式のものに限定されない。例えば、ヘッドは、加熱素子によって液体に気泡を生じさせ、個別流路に圧力を付与するサーマル式のものであってもよい。
吐出孔列の列数は、適宜な数とされてよい。実施形態における数mの説明からも理解されるように、3列以上の吐出孔列が存在すれば、本実施形態の吐出孔の配置を実現できる。同様に、吐出孔行の行数は、15行~17行に限定されない。3行以上の吐出孔行が存在すれば、第2方向に見て、(n-1)番目の吐出孔列の2以上の吐出孔と、n番目の吐出孔列の2以上の吐出孔とが交互に並び、n番目の吐出孔列の2以上の吐出孔と、(n+1)番目の吐出孔列のうちの2以上の吐出孔とが交互に並び、(n-1)番目の吐出孔列と(n+1)番目の吐出孔列との間にn番目の吐出孔列の1つの吐出孔が位置する配置を実現できる。