図1(a)は、本発明の一実施形態に係る液体吐出ヘッド2を含む記録装置である(カラーインクジェット)プリンタ1の概略の側面図であり、図1(b)は、概略の平面図である。プリンタ1は、記録媒体である印刷用紙Pを搬送ローラ80Aから搬送ローラ80Bへと搬送することにより、印刷用紙Pを液体吐出ヘッド2に対して相対的に移動させる。制御部88は、画像や文字のデータに基づいて、液体吐出ヘッド2を制御して、記録媒体Pに向けて液体を吐出させ、印刷用紙Pに液滴を着弾させて、印刷用紙Pに印刷などの記録を行なう。
本実施形態では、液体吐出ヘッド2はプリンタ1に対して固定されており、プリンタ1はいわゆるラインプリンタとなっている。本発明の記録装置の他の実施形態としては、液体吐出ヘッド2を、印刷用紙Pの搬送方向に交差する方向、例えば、ほぼ直交する方向に往復させるなどして移動させる動作と、印刷用紙Pの搬送を交互に行なう、いわゆるシリアルプリンタが挙げられる。
プリンタ1には、印刷用紙Pとほぼ平行となるように平板状の(ヘッド搭載)フレーム
70が固定されている。フレーム70には図示しない20個の孔が設けられており、20個の液体吐出ヘッド2がそれぞれの孔の部分に搭載されていて、液体吐出ヘッド2の、液体を吐出する部位が印刷用紙Pに面するようになっている。液体吐出ヘッド2と印刷用紙Pとの間の距離は、例えば0.5〜20mm程度とされる。5つの液体吐出ヘッド2は、1つのヘッド群72を構成しており、プリンタ1は、4つのヘッド群72を有している。
液体吐出ヘッド2は、図1(a)の手前から奥へ向かう方向、図1(b)の上下方向に細長い長尺形状を有している。この長い方向を長手方向と呼ぶことがある。1つのヘッド群72内において、3つの液体吐出ヘッド2は、印刷用紙Pの搬送方向に交差する方向、例えば、ほぼ直交する方向に沿って並んでおり、他の2つの液体吐出ヘッド2は搬送方向に沿ってずれた位置で、3つの液体吐出ヘッド2の間にそれぞれ一つずつ並んでいる。液体吐出ヘッド2は、各液体吐出ヘッド2で印刷可能な範囲が、印刷用紙Pの幅方向に(印刷用紙Pの搬送方向に交差する方向に)繋がるように、あるいは端が重複するように配置されており、印刷用紙Pの幅方向に隙間のない印刷が可能になっている。
4つのヘッド群72は、記録用紙Pの搬送方向に沿って配置されている。各液体吐出ヘッド2には、図示しない液体タンクから液体(インク)が供給される。1つのヘッド群72に属する液体吐出ヘッド2には、同じ色のインクが供給されるようになっており、4つのヘッド群で4色のインクが印刷できる。各ヘッド群72から吐出されるインクの色は、例えば、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、シアン(C)およびブラック(K)である。このようなインクを、制御部88で制御して印刷すれば、カラー画像が印刷できる。
プリンタ1に搭載される液体吐出ヘッド2の個数は、単色で、1つの液体吐出ヘッド2で印刷可能な範囲を印刷するのなら1つでもよい。ヘッド群72に含まれる液体吐出ヘッド2の個数や、ヘッド群72の個数は、印刷する対象や印刷条件により適宜変更できる。例えば、さらに多色の印刷をするためにヘッド群72の個数を増やしてもよい。また、同色で印刷するヘッド群72を複数配置して、搬送方向に交互に印刷することで、印刷速度(搬送速度)を速くすることができる。また、同色で印刷するヘッド群72を複数準備して、搬送方向と交差する方向にずらして配置して、印刷用紙Pの幅方向の解像度を高くしてもよい。
さらに、色の付いたインクを印刷する以外に、印刷用紙Pの表面処理をするために、コーティング剤などの液体を印刷してもよい。
プリンタ1は、記録媒体である印刷用紙Pに印刷を行なう。印刷用紙Pは、給紙ローラ80Aに巻き取られた状態になっており、2つのガイドローラ82Aの間を通った後、フレーム70に搭載されている液体吐出ヘッド2の下側を通り、その後2つの搬送ローラ82Bの間を通り、最終的に回収ローラ80Bに回収される。印刷する際には、搬送ローラ82Bを回転させることで印刷用紙Pは、一定速度で搬送され、液体吐出ヘッド2によって印刷される。回収ローラ80Bは、搬送ローラ82Bから送り出された印刷用紙Pを巻き取る。搬送速度は、例えば、50m/分とされる。各ローラは、制御部88によって制御されてもよいし、人によって手動で操作されてもよい。
記録媒体は、印刷用紙P以外に、布などでもよい。また、プリンタ1を、印刷用紙Pの代わりに搬送ベルトを搬送する形態にし、記録媒体は、ロール状のもの以外に、搬送ベルト上に置かれた、枚葉紙や裁断された布、木材、タイルなどにしてもよい。さらに、液体吐出ヘッド2から導電性の粒子を含む液体を吐出するようにして、電子機器の配線パターンなどを印刷してもよい。またさらに、液体吐出ヘッド2から反応容器などに向けて所定量の液体の化学薬剤や化学薬剤を含んだ液体を吐出させて、反応させるなどして、化学薬品を作製してもよい。
また、プリンタ1に、位置センサ、速度センサ、温度センサなどを取り付け、制御部88が、各センサからの情報から分かるプリンタ1各部の状態に応じて、プリンタ1の各部を制御してもよい。特に、液体吐出ヘッド2から吐出される液体の吐出特性(吐出量や吐出速度など)が外部の影響を受けるようであれば、液体吐出ヘッド2の温度や液体タンクの液体の温度、液体タンクの液体が液体吐出ヘッド2に加えている圧力に応じて、液体吐出ヘッド2において液体を吐出させる駆動信号を変えるようにしてもよい。
次に、本発明の一実施形態の液体吐出ヘッド2について説明する。図2(a)は、図1に示された液体吐出ヘッド2の要部であるヘッド本体2aを示す平面図である。図2(b)は、ヘッド本体2aから第2流路部材6を除いた状態の平面図である。図3および図4は、図2(b)の拡大平面図である。図5(a)は、図4のV−V線に沿った縦断面図である。図5(b)は、ヘッド本体2aの第1共通流路20の開口20a付近における、第1共通流路20に沿った部分縦断面図である。図6(a)は、図2(a)に示したヘッド本体2aの模式的な平面図である。
各図は、図面を分かり易くするために次のように描いている。図2〜4では、他のものの下方にあって破線で描くべき流路などを実線で描いている。図2(a)では、第1流路部材4内の流路については、ほとんど省略し、加圧室10の配置のみを示している。
液体吐出ヘッド2は、ヘッド本体2a以外に、金属製の筐体や、ドライバIC、配線基板などを含んでいてもよい。また、ヘッド本体2aは、第1流路部材4と、第1流路部材4に液体を供給する第2流路部材6と、加圧部である変位素子50が作り込まれている圧電アクチュエータ基板40とを含んでいる。ヘッド本体2aは、一方方向に長い平板形状を有しており、その方向を長手方向と言うことがある。また、第2流路部材6は、支持部材の役割を果たしており、ヘッド本体2aは、第2流路部材6の長手方向の両端部のそれぞれでフレーム70に固定される。
ヘッド本体2aを構成する第1流路部材4は、平板状の形状を有しており、その厚さは0.5〜2mm程度である。第1流路部材4の第1の主面である加圧室面4−1には、加圧室10が平面方向に多数並んで配置されている。第1流路部材4の第2の主面である吐出孔面4−2には、液体が吐出される吐出孔8が平面方向に多数並んで配置されている。吐出孔8は、それぞれ加圧室10と繋がっている。以下において、加圧室面4−1は、吐出孔面4−2に対して、上方に位置しているものとして説明をする。
第1流路部材4には、複数の第1共通流路20および複数の第2共通流路24が、第1方向に沿って伸びるように配置されている。また、第1共通流路20と第2共通流路24とは、第1方向と交差する方向である第2方向に交互に並んでいる。
第1共通流路20の両側に沿って加圧室10が並んでおり、片側1列ずつ、合計2列の加圧室列11Aを構成している。第1共通流路20とその両側に並んでいる加圧室10とは、第1個別流路12を介して繋がっている。
第2共通流路24の両側に沿って加圧室10が並んでおり、片側1列ずつ、合計2列の加圧室列11Aを構成している。第1統合流路22とその両側に並んでいる加圧室10とは、第2個別流路14を介して繋がっている。なお、以下で、第1共通流路20と第2共
通流路24とを合わせて、共通流路と呼ぶことがある。
別の表現をすれば、加圧室10は仮想線上に並んで配置されており、仮想線の一方の側に沿って第1共通流路20が伸びており、仮想線の他方の側に沿って第2共通流路24が伸びている。本実施形態では、加圧室10が並んでいる仮想線は直線状であるが、曲線
状や折れ線状であってもよい。
以上のような構成により、第1流路部材4においては、第2共通流路24に供給された液体は、第2共通流路24に沿って並んでいる加圧室10に流れ込み、一部の液体は吐出孔8から吐出され、他の一部の液体は、加圧室10に対して第2共通流路24と反対側に位置している第1共通流路20に流れ込み、第1流路部材4から外部に排出される。
第1共通流路20の両側に第2共通流路24が、第2共通流路24の両側に第1共通流路20が配置されていることにより、1つの加圧室列11Aに対して、1つの第1共通流路20および1つの第2共通流路24が繋がっており、別の加圧室列11Aに対して、別の第1共通流路20および別の第2共通流路24が繋がっている場合と比較して、第1共通流路20および第2共通流路24の数を約半分位にできるので好ましい。第1共通流路20および第2共通流路24の数が少なくて済む分、加圧室10の数を増やして高解像度化したり、第1共通流路20や第2共通流路24を太くして、吐出孔8からの吐出特性の差を小さくしたり、ヘッド本体2aの平面方向の大きさを小さくすることができる。
第1共通流路20に繋がっている第1個別流路12の第1共通流路20側の部分に加わる圧力は、圧力損失の影響で、第1共通流路20内の第1個別流路12の位置により変わる。第2共通流路24に繋がっている第2個別流路14側の部分に加わる圧力は、圧力損失の影響で、第2共通流路24内の第2個別流路14の位置により変わる。第1共通流路20の外部への開口20aを第1方向の一方の端部に配置し、第2共通流路24の外部への開口24aを第1方向の他方の端部に配置すれば、各第1個別流路12および各第2個別流路14の配置による圧力の差が打ち消されるように作用し、各吐出孔8に加わる圧力の差を小さくできる。なお、第1共通流路20の開口20a、および第2共通流路24の開口24aはともに、加圧室面4−1に開口している。
吐出しない状態では、吐出孔8には液体のメニスカスが保持されている。吐出孔8において液体の圧力が負圧(液体を第1流路部材4に引き込もうとする状態)になっていることで、液体の表面張力とつり合ってメニスカスが保持できる。正圧が大きくなれば、液体はあふれ出し、負圧が大きくなれば、液体が第1流路部材4内に引き込まれてしまい、液体が吐出可能な状態を維持できない。そのため、第2共通流路24から第1共通流路20に液体を流した際における、吐出孔8での液体の圧力の差が大きくなり過ぎないようにする必要がある。
第1共通流路20の吐出孔面4−2側の壁面は、第1ダンパ28Aとなっている。第1ダンパ28Aの一方の面は、第1共通流路20に面しており、他方の面はダンパ室29に面している。ダンパ室29があることにより、第1ダンパ28Aは変形可能になっており、変形することで第1共通流路20の体積を変えることができる。液体を吐出させるために加圧室10内の液体が加圧されると、その圧力の一部は、液体を通じて第1共通流路20に伝わってくる。これにより、第1共通流路20内の液体が振動し、その振動が、元の加圧室10や、他の加圧室10に伝わって、液体の吐出特性を変動させる流体クロストークが生じることがある。第1ダンパ28Aが存在すると、第1共通流路20に伝わってきた液体の振動で第1ダンパ28Aが振動し、減衰することで、第1共通流路20内の液体の振動は持続され難くなるので、流体クロストークの影響を小さくできる。また、第1ダンパ28Aは、液体の給排を安定化させる役目も果たす。
第2共通流路24の加圧室面4−1側の壁面は、第2ダンパ28Bとなっている。第2ダンパ28Bの一方の面は、第2共通流路24に面しており、他方の面はダンパ室29に面している。第2ダンパ28Bも、第1ダンパ28Aと同様に、流体クロストークの影響
を小さくできる。また、第2ダンパ28Bは、液体の給排を安定化させる役目も果たす。
加圧室10は、加圧室面4−1に面して配置されており、変位素子50からの圧力を受ける加圧室本体10aと、加圧室本体10aの下から吐出孔面4−2に開口している吐出孔8に繋がる部分流路であるディセンダ10bとを含んだ中空の領域である。加圧室本体10aは、直円柱形状であり、平面形状は円形状である。平面形状が円形状であることにより変位素子50が同じ力で変形させた場合の変位量、および変位により生じる加圧室10の体積変化を大きくできる。ディセンダ10bは、直径が加圧室本体10aより小さい、直円柱形状であり、断面形状は円形状である。また、ディセンダ10bは、加圧室面4−1から見たときに、加圧室本体10a内に納まる位置に配置されている。
複数ある加圧室10は、加圧室面4−1において、千鳥状に配置されている。複数ある加圧室10は、第1方向に沿った複数の加圧室列11Aを構成している。各加圧室列11Aでは、加圧室10が、ほぼ等間隔で配置されている。隣り合っている加圧室列11Aに属する加圧室10は、第1方向に前記間隔の半分ずれて配置されている。別の表現をすれば、ある加圧室列11Aに属する加圧室10は、その隣に位置する加圧室列11Aに属する、連続する2つの加圧室10に対して、第1方向のほぼ中央に位置している。
これにより、1つ置きの加圧室列11Aに属している加圧室10は、第2方向に沿って配置されることになり、加圧室行11Bを構成している。
本実施形態では、第1共通流路20は51本、第2共通流路24は50本であり、加圧室列11Aは100列である。(ここでは、後述のダミー加圧室10Dのみで構成されているダミー加圧室列11Dは、上述の加圧室列11Aの数に含めていない。また、直接的に繋がっているのがダミー加圧室10Dだけである第2共通流路24は、上述の第2共通流路24の数に含めていない。)また、各加圧室列11Aには16個の加圧室10が含まれている。上述のように、加圧室10は千鳥状に配置されているため、加圧室行11Bの行数は、32行となる。
複数ある加圧室10は、吐出孔面4−2において、第1方向および第2方向に沿った格子状に配置されている。複数ある吐出孔8は、第1方向に沿った複数の吐出孔列9Aを構成している。吐出孔列9Aと加圧室列11Aとは、ほぼ同じ位置に配置されている。
加圧室10の面積重心と、加圧室10と繋がっている吐出孔8とは第1方向にずらされて配置されている。1つの加圧室列11A内では、ずらされる方向は同じ方向であり、隣り合う加圧室列11Aでは、ずらされる方向は逆方向になっている。これにより、2行の加圧室行11Bに属する加圧室10から繋がっている吐出孔8は、第2方向に沿って配置された1行の吐出孔行9Bを構成している。
したがって、本実施形態では、吐出孔列9Aは100列であり、吐出孔行9Bは16行である。
加圧室本体10aの面積重心と、加圧室本体10aから繋がっている吐出孔8とは、ほぼ第1方向に位置がずれている。ディセンダ10bは、加圧室本体10aに対して、吐出孔8の方向にずれた位置に配置されている。加圧室本体10aの側壁と、ディセンダ10bの側壁とは接するように配置されており、これにより加圧室本体10a内での液体の滞留を起き難くすることができる。
吐出孔8は、ディセンダ10bの中央部に配置されている。ここで中央部とは、ディセンダ10bの面積重心を中心とする、ディセンダ10bの直径の半分の円内の領域のこと
である。
第1個別流路12と加圧室本体10aとの接続部は、加圧室本体10aの面積重心に対して、ディセンダ10bとは反対側に配置されている。これにより、ディセンダ10bから流れ込んだ液体は、加圧室本体10a全体に広がった後と、第1個別流路12に向かうように流れるため、加圧室本体10a内に液体の滞留が生じ難い。
第2個別流路14は、ディセンダ10bの吐出孔面4−2側の面から、平面方向に引き出されて第2共通流路24と繋がっている。引き出される方向は、加圧室本体10aに対して、ディセンダ10bがずらされる方向と同じである。
第1方向と第2方向(ヘッド本体2aの長手方向)とが成す角度は直角からずれている。このため、第1方向に沿って配置されている吐出孔列9Aに属する吐出孔8同士は、その直角からのずれた角度の分、第2方向にずれて配置される。そして、吐出孔列9Aが第2方向に並んで配置されるので、異なる吐出孔列9Aに属する吐出孔8は、その分、第2方向にずれて配置される。これらが合わさって、第1流路部材4の吐出孔8は、第2方向に一定間隔で並んで配置されており、これにより、吐出した液体により形成される画素で所定の範囲を埋めるように印刷ができる。
1つの吐出孔列9Aに属する吐出孔8の配置は、第1方向に沿って完全に一直線上に配置すれば、上述のように所定範囲を埋め尽くすように印刷が可能である。ただし、そのように配置した場合に、プリンタ1に液体吐出ヘッド2を設置する際に生じる第2方向に直交する方向と搬送方向とのずれが、印刷精度に与える影響が大きくなる。そのため、上述の一直線上の吐出孔8の配置から、隣り合う吐出孔列9Aの間で、吐出孔8を入れ替えて配置するのが好ましい。
本実施形態では、吐出孔8の配置は次のようになっている。図3において、吐出孔8を第2方向と直交する方向に投影すると、仮想直線Rの範囲に32個の吐出孔8が投影され、仮想直線R内で各吐出孔8は360dpiの間隔に並ぶ。これにより、仮想直線Rに直交する方向に印刷用紙Pを搬送して印刷すれば、360dpiの解像度で印刷できる。仮想直線R内に投影される吐出孔8は、1列の吐出孔列9Aに属する吐出孔8すべて(16個)と、その吐出孔列9Aの両隣に位置する2つの吐出孔列9Aに属する吐出孔8半分(
8個)ずつである。各吐出孔行9Bでは、吐出孔8は、22.5dpiの間隔で並んでいる(360/16=22.5のため)。
第1共通流路20および第2共通流路24は、吐出孔8が直線状に並んでいる範囲では、直線になっており、直線がずれる吐出孔8の間で平行にずれている。第1共通流路20および第2共通流路24において、このずれる箇所が少ないので、流路抵抗が小さくなっている。また、この平行にずれる部分は、加圧室10と重ならない位置に配置されているので、加圧室10毎に吐出特性の変動を小さくできる。
第2方向の両方の端の1列(すなわち合わせて2列)の加圧室列11Aには、通常の加圧室10と第1ダミー加圧室10Dとが含まれている(そのため、この加圧室列11Aをダミー加圧室列11Dと言うことがある)。また、ダミー加圧室列11Dのさらに外側には、ダミー加圧室10Dのみが並んでいる1列(すなわち、両端で合わせて2列)のダミー加圧室列11Dが配置されている。第2方向の両方の端に1本ずつ(すなわち合わせて2本)ある流路は、通常の第1共通流路24と同じ形状をしているが、直接的には加圧室10とは繋がっておらず、ダミー加圧室10Dとしか繋がっていない。
第1流路部材4は、第1共通流路20および第2共通流路24からなる共通流路群の第
2方向の外側の位置に、第1方向に伸びている、端部流路30を有している。端部流路30は、加圧室面4−1に並んでいる第1共通流路20の開口20aのさらに外側に配置されている開口30cと、加圧室面4−1に並んでいる第2共通流路24の開口24aのさらに外側に配置されている開口30dとを繋いでいる流路であり、端部流路30の流路抵抗は、第1共通流路20および第2共通流路24の流路抵抗よりも小さくなっている。端部流路30については後で詳述する。
第2流路部材6は、第1流路部材4の加圧室面4−1に接合されており、第2共通流路24に液体を供給する第2統合流路26と、第1共通流路20の液体を回収する第1統合流路22とを有している。第2流路部材6の厚さは、第1流路部材4よりも厚く、5〜30mm程度である。
第2流路部材6は、第1流路部材4の加圧室面4−1の圧電アクチュエータ基板40が接続されていない領域で接合されている。より具体的には、圧電アクチュエータ基板40を囲むように接合されている。このようにすることで、圧電アクチュエータ基板40に、吐出した液体の一部がミストとなって付着するのを抑制できる。また、第1流路部材4を外周で固定することになるので、第1流路部材4が変位素子50の駆動にともなって振動して、共振などが生じることを抑制できる。
また、第2流路部材6の中央部で、貫通孔6cが上下に貫通している。貫通孔6cは、圧電アクチュエータ基板40を駆動する駆動信号を伝達するFPC(Flexible Printed Circuit)などの配線部材が通される。なお、貫通孔6cの第1流路部材4側は、短手方向の幅が広くなっている拡幅部6caとなっており、圧電アクチュエータ基板40から短手方向の両側に伸びる配線部材は、拡幅部6caで曲げられて上方に向かい、貫通孔6を抜ける。なお、拡幅部6caに広がる部分の凸部は、配線部材を傷つけるおそれがあるので、R形状にしておくのが好ましい。
第1統合流路22を、第1流路部材4とは別の、第1流路部材4より厚い第2流路部材6に配置することで、第1統合流路22の断面積を大きくすることができ、それにより第1統合流路22と第1共通流路20とが繋がっている位置の差による圧力損失の差を小さくできる。第1統合流路22の流路抵抗(より正確には第1統合流路22のうちで、第1共通流路20と繋がっている範囲の流路抵抗)は、第1共通流路20の1/100以下にするのが好ましい。
第2統合流路26を、第1流路部材4とは別の、第1流路部材4より厚い第2流路部材6に配置することで、第2統合流路26の断面積を大きくすることができ、それにより第2統合流路26と第2共通流路24とが繋がっている位置の差による圧力損失の差を小さくできる。第2統合流路26の流路抵抗(より正確には第2統合流路26のうちで、第1統合流路22と繋がっている範囲の流路抵抗)は、第2共通流路24の1/100以下にするのが好ましい。
第1統合流路22を第2流路部材6の短手方向の一方の端に配置し、第2統合流路26を第2流路部材6の短手方向の他方の端に配置し、それぞれの流路を第1流路部材4側に向かわせて、それぞれ第1共通流路20および第2共通流路24と繋げる構造にする。このようにすることで、第1統合流路22および第2統合流路26の断面積を大きく(つまり流路抵抗を小さく)できるともに、第2流路部材6で、第1流路部材4の外周を固定して剛性を高くし、さらに、配線部材の通る貫通孔6cを設けることができる。
第2流路部材6は、第2流路部材のプレート6aと6bとが積層されて構成されている。プレート6bの上面には、第1統合流路22のうち第2方向に伸びている流路抵抗の低
い部分である第1統合流路本体22aとなる溝と、第2統合流路26のうち第2方向に伸びている流路抵抗の低い部分である第2統合流路本体26aとなる溝が配置されている。
第1統合流路本体22aとなる溝から、下方(第1流路部材4の方向)に向かって複数の第1接続流路22bが伸びており、加圧室面4−1上に開口している第1共通流路の開口20aに繋がっている。各第1接続流路22bの間は仕切り6baで区切られている(つまり、第1接続流路22bの第1共通流路20側は分岐している)。これにより、第2流路部材6と第1流路部材4との接続の剛性を高くできる。さらに、第2方向において、仕切り6baの長さは、第1接続流路22bの長さより長くなっていることで、第2流路部材6と第1流路部材4との接続の剛性をより高くできる。
第2統合流路本体26aとなる溝から、下方(第1流路部材4の方向)に向かって複数の第2接続流路26bが伸びており、加圧室面4−1上に開口している第2共通流路の開口24aに繋がっている。各第2接続流路26bの間は仕切り6bbで区切られている(つまり、第2接続流路26bの第2共通流路24側は分岐している)。これにより、第2流路部材6と第1流路部材4との接続の剛性を高くできる。さらに、第2方向において、仕切り6bbの長さは、第2接続流路26bの長さより長くなっていることで、第2流路部材6と第1流路部材4との接続の剛性をより高くできる。
プレート6aには、第1統合流路22の第2方向の一方の端には、開口22cが設けられている。プレート6aには、第2統合流路26の第2方向の他方の端には、開口26cが設けられている。液体は、第2統合流路26の開口26cから供給され、第1統合流路22の開口22cから回収されるが、供給と回収を逆にしてもよい。
第1統合流路22および第2統合流路26には、ダンパを設けて、液体の吐出量の変動に対して液体の供給、あるいは排出が安定するようにしてもよい。また、第1統合流路22および第2統合流路26内に、フィルタを設けることにより、異物や気泡が、第1流路部材4に入り込み難くしてもよい。
第1流路部材4の上面である加圧室面4−1には、変位素子50を含む圧電アクチュエータ基板40が接合されており、各変位素子50が加圧室10上に位置するように配置されている。圧電アクチュエータ基板40は、加圧室10によって形成された加圧室群とほぼ同一の形状の領域を占有している。また、各加圧室10の開口は、流路部材4の加圧室面4−1に圧電アクチュエータ基板40が接合されることで閉塞される。圧電アクチュエータ基板40は、ヘッド本体2aと同じ方向に長い長方形状である。また、圧電アクチュエータ基板40には、各変位素子50に信号を供給するためのFPCなどの信号伝達部が接続されている。第2流路部材6には、中央で、上下に貫通している貫通孔6cがあり、信号伝達部は貫通孔6cを通って制御部88と電気的に繋がれる。信号伝達部は、圧電アクチュエータ基板40の一方の長辺の端から他方の長辺の端に向かうように短手方向に伸びる形状にし、信号伝達部に配置される配線が短手方向に沿って伸び、長手方向に並ぶようにすれば、配線間の距離をとりやすくなり、好ましい。
圧電アクチュエータ基板40の上面における各加圧室10に対向する位置には個別電極44がそれぞれ配置されている。
流路部材4は、複数のプレートが積層された積層構造を有している。流路部材4の加圧室面4−1側から順に、プレート4aからプレート4lまでの12枚のプレートが積層されている。これらのプレートには多数の孔や溝が形成されている。孔や溝は、例えば、各プレートを金属で作製し、エッチングで形成できる。各プレートの厚さは10〜300μm程度であることにより、形成する孔の形成精度を高くできる。プレート4f〜iは、同
じ形状のプレートであり、それらは1枚のプレートで構成してもよいが、孔を精度よく形成するため、4枚のプレートで構成している。各プレートは、これらの孔が互いに連通して第1共通流路20などの流路を構成するように、位置合わせして積層されている。
平板状の流路部材4の加圧室面4−1には、加圧室本体10aが開口しており、圧電アクチュエータ基板40が接合されている。また、加圧室面4−1には、第2共通流路24に液体を供給する開口24a、および第1共通流路20から液体を回収する開口20aが開口している。流路部材4の、加圧室面4−1と反対側の面である吐出孔面4−2には吐出孔8が開口している。なお、加圧室面4−1にさらにプレートを積層して、加圧室本体10aの開口を塞ぎ、その上に圧電アクチュエータ基板40を接合してもよい。そのようにすれば、吐出する液体が圧電アクチュエータ基板40に接する可能性を低減することができ、信頼性をより高くできる。
液体を吐出する構造としては、加圧室10と吐出孔8とがある。加圧室10は、変位素子50に面している加圧室本体10aと、加圧室本体10aより断面積が小さいディセンダ10bから成っている。加圧室本体10aは、プレート4aに形成されており、ディセンダ10bは、プレート4b〜kに形成された孔が重ねられ、さらにノズルプレート4lで(吐出孔8以外の部分を)塞がれて成っている。
加圧室本体10aには、第1個別流路12が繋がっており、第1個別流路12は、第1共通流路20に繋がっている。第1個別流路12は、プレート4bを貫通する円形状の孔と、プレート4cにおいて平面方向に伸びている貫通溝と、プレート4dを貫通する円形状の孔とを含んでいる。第1共通流路20はプレート4f〜iに形成された孔が重ねられ、さらに上側をプレート4eで、下側をプレート4jで塞がれて成っている。
ディセンダ10bには、第2個別流路14が繋がっており、第2個別流路14は、第2共通流路24に繋がっている。第2個別流路14は、プレート4jにおいて平面方向に伸びている貫通溝である。第2共通流路24はプレート4f〜iに形成された孔が重ねられ、さらに上側をプレート4eで、下側をプレート4jで塞がれて成っている。
液体の流れについて、まとめると、第2統合流路26に供給された液体は、第2共通流路24および第2個別流路14を順に通って加圧室10に入り、一部の液体は吐出孔8から吐出される。吐出されなかった液体は、第1個別流路12を通って、第1共通流路20に入った後、第1統合流路22に入り、ヘッド本体2の外部に排出される。
圧電アクチュエータ基板40は、圧電体である2枚の圧電セラミック層40a、40bからなる積層構造を有している。これらの圧電セラミック層40a、40bはそれぞれ20μm程度の厚さを有している。すなわち、圧電アクチュエータ基板40の圧電セラミック層40aの上面から圧電セラミック層40bの下面までの厚さは40μm程度である。圧電セラミック層40aと圧電セラミック層40bの厚さの比は、3:7〜7:3、好ましく4:6〜6:4にされる。圧電セラミック層40a、40bのいずれの層も複数の加圧室10を跨ぐように延在している。これらの圧電セラミック層40a、40bは、例えば、強誘電性を有する、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)系、NaNbO3系、BaTi
O3系、(BiNa)NbO3系、BiNaNb5O15系などのセラミックス材料からなる
。
圧電アクチュエータ基板40は、Ag−Pd系などの金属材料からなる共通電極42およびAu系などの金属材料からなる個別電極44を有している。共通電極42の厚さは2μm程度であり、個別電極44の厚さは、1μm程度である。
個別電極44は、圧電アクチュエータ基板40の上面における各加圧室10に対向する位置に、それぞれ配置されている。個別電極44は、平面形状が加圧室本体10aより一回り小さく、加圧室本体10aとほぼ相似な形状を有している個別電極本体44aと、個別電極本体44aから引き出されている引出電極44bとを含んでいる。引出電極44bの一端の、加圧室10と対向する領域外に引き出された部分には、接続電極46が形成されている。接続電極46は例えば銀粒子などの導電性粒子を含んだ導電性樹脂であり、5〜200μm程度の厚さで形成されている。また、接続電極46は、信号伝達部に設けられた電極と電気的に接合されている。
また、圧電アクチュエータ基板40の上面には、共通電極用表面電極(不図示)が形成されている。共通電極用表面電極と共通電極42とは、圧電セラミック層40aに配置された、図示しない貫通導体を通じて、電気的に接続されている。
詳細は後述するが、個別電極44には、制御部88から信号伝達部を通じて駆動信号が供給される。駆動信号は、印刷媒体Pの搬送速度と同期して一定の周期で供給される。
共通電極42は、圧電セラミック層40aと圧電セラミック層40bとの間の領域に面方向のほぼ全面にわたって形成されている。すなわち、共通電極42は、圧電アクチュエータ基板40に対向する領域内のすべての加圧室10を覆うように延在している。共通電極42は、圧電セラミック層40a上に個別電極44からなる電極群を避ける位置に形成されている共通電極用表面電極に、圧電セラミック層40aを貫通して形成されたビアホールを介して繋がっていて、接地され、グランド電位に保持されている。共通電極用表面電極は、複数の個別電極44と同様に、制御部88と直接あるいは間接的に接続されている。
圧電セラミック層40aの個別電極44と共通電極42とに挟まれている部分は、厚さ方向に分極されており、個別電極44に電圧を印加すると変位する、ユニモルフ構造の変位素子50となっている。より具体的には、個別電極44を共通電極42と異なる電位にして圧電セラミック層40aに対してその分極方向に電界を印加したとき、この電界が印加された部分が、圧電効果により歪む活性部として働く。この構成において、電界と分極とが同方向となるように、制御部88により個別電極44を共通電極42に対して正または負の所定電位にすると、圧電セラミック層40aの電極に挟まれた部分(活性部)が、面方向に収縮する。一方、非活性層の圧電セラミック層40bは電界の影響を受けないため、自発的には縮むことがなく活性部の変形を規制しようとする。この結果、圧電セラミック層40aと圧電セラミック層40bとの間で分極方向への歪みに差が生じて、圧電セラミック層40bは加圧室10側へ凸となるように変形(ユニモルフ変形)する。
続いて、液体の吐出動作について、説明する。制御部88からの制御でドライバICなどを介して、個別電極44に供給される駆動信号により、変位素子50が駆動(変位)させられる。本実施形態では、様々な駆動信号で液体を吐出させることができるが、ここでは、いわゆる引き打ち駆動方法について説明する。
あらかじめ個別電極44を共通電極42より高い電位(以下、高電位と称す)にしておき、吐出要求がある毎に個別電極44を共通電極42と一旦同じ電位(以下、低電位と称す)とし、その後所定のタイミングで再び高電位とする。これにより、個別電極44が低電位になるタイミングで、圧電セラミック層40a、40bが元の(平らな)形状に戻り(始め)、加圧室10の容積が初期状態(両電極の電位が異なる状態)と比較して増加する。これにより、加圧室10内の液体に負圧が与えられる。そうすると、加圧室10内の液体が固有振動周期で振動し始める。具体的には、最初、加圧室10の体積が増加し始め、負圧は徐々に小さくなっていく。次いで加圧室10の体積は最大になり、圧力はほぼゼ
ロとなる。次いで加圧室10の体積は減少し始め、圧力は高くなっていく。その後、圧力がほぼ最大になるタイミングで、個別電極44を高電位にする。そうすると最初に加えた振動と、次に加えた振動とが重なり、より大きい圧力が液体に加わる。この圧力がディセンダ内を伝搬し、吐出孔8から液体を吐出させる。
つまり、高電位を基準として、一定期間低電位とするパルスの駆動信号を個別電極44に供給することで、液滴を吐出できる。このパルス幅は、加圧室10の液体の固有振動周期の半分の時間であるAL(Acoustic Length)とすると、原理的には、液体の吐出速度
および吐出量を最大にできる。加圧室10の液体の固有振動周期は、液体の物性、加圧室10の形状の影響が大きいが、それ以外に、圧電アクチュエータ基板40の物性や、加圧室10に繋がっている流路の特性からの影響も受ける。
液体の吐出特性を安定させるために、ヘッド本体2aは、温度を一定にするようコントロールされる。また、液体の粘度が低くなる方が、吐出や液体の循環が安定するため、温度は、基本的には常温以上にされる。そのため、基本的には加熱することになるが、環境温度が高い場合は、冷却することもある。以下では環境温度に対して加熱する場合について説明するが、冷却する場合も同様になる。
温度を一定に保つためには、液体吐出ヘッド2にヒータを設けたり、供給する液体を温度調節したものにする。いずれにしても、環境温度と、目標とする温度に差がある場合、ヘッド本体2aの長手方向(第2方向)の端部からの放熱が多くなるため、第2方向の中央部に位置する加圧室10の中の液体の温度に対して、第2方向の端および第4方向の端に位置する加圧室10の温度は低くなりやすい。各加圧室10内の液体の温度、あるいは変位素子50の温度に差があると、それらは液滴の吐出特性に差が生じる原因になるので、印刷精度が低下することがあった。
本実施形態の詳細について、図6(a)を用いて説明する。加圧室配置領域11Cは、加圧室10が配置されている領域である。より詳細には、ヘッド本体2aに存在するすべての加圧室10を含む凸形状の領域のうちで、面積が最も小さい領域である。図6(a)では、概略の平行四辺形の領域を示している。
第1統合流路22は、少なくとも第2方向における、加圧室10の存在する範囲(すなわち、加圧室配置領域11Cの範囲)において、加圧室配置領域11Cよりも第1方向に配置されている第1延在部22gを含んでいる。第1延在部22gは、第2方向に伸びている。第1延在部22gの第2方向の端は、第1統合流路22の一部である第1端部22hに繋がっている。第1端部22hは、加圧室配置領域11Cよりも第2方向に伸びて配置されている。
第2統合流路26は、少なくとも第4方向(第2方向と逆の方向)における、加圧室10の存在する範囲(すなわち、加圧室配置領域11Cの範囲)において、加圧室配置領域11Cよりも第3方向(第1方向と逆の方向)に配置されている第2延在部26gを含んでいる。第2延在部26gは、第4方向に伸びている。第2延在部26gの第4方向の端は、第2統合流路26の一部である第2端部26hに繋がっている。第2端部26hは、加圧室配置領域11Cよりも第4方向に伸びて配置されている。
流路中を液体が循環すると、流路の周囲の第1流路部材4および第2流路部材6が直接的に温められる。また、その熱は、温められた部分から周囲に熱伝導で広がっていき、ヘッド本体2a全体が暖められる。
ヘッド本体2aの第2方向の端部および第4方向の端部は、平面視した際のヘッド本体
2aの短辺の分、表面積が広いので熱が逃げやすく、ヘッド本体2aの第2方向の中央部に比べて、温度が低くなりやすい。また、ヘッド本体2aの第2方向の端部および第4方向の端部は、プリンタに取り付ける部分となることが多く、プリンタに熱が伝わることによっても温度が低くなる。
ヘッド本体2aの第2方向の端部では、第2流路部材6内に第1端部22hが伸びており、第2流路部材6と第1流路部材4とが、第1端部22hの下方において接合されている。このため、第1端部22hに流れる液体の熱が、第2流路部材6から第1流路部材4に伝わるため、第1流路部材4の温度を均等化できる。
また、本実施形態では、第1端部22hの下方の第2流路部材6は、ダンパのためなどの空隙は配置されておらず、中実になっている。これにより熱伝導性が高くなっているので、第1流路部材4の温度をより均等化できる。なお、ここで言う中実には、接着剤の逃がし溝など、例えば、幅1mm、あるいは500μm以下で、深さ500μm以下の微小な空隙は存在していてもよい。また、第1端部22hの下方の第1流路部材4が中実であれば、第1流路部材4の温度を、より均等化できる。
また、第1端部22hの下側の面が、第1流路部材4の上面(加圧室面4−1)となるようすれば、第1端部22hに流れる液体の熱が、第2流路部材6から第1流路部材4に直接伝わることで、より伝わりやすくなるため、第1流路部材4の温度をより均等化できる。この場合、第1端部22hは、第2流路部材6の下側に開口した溝状の構造で形成され、第1流路部材4を第2流路部材6に接合することで、その溝は、第1流路部材4で塞がれて、管状の第1端部22hとなる。
また、第1端部22hの流路を、下方(第1流路部材4)側に向かわせ、一旦第1流路部材4内に設けた流路に繋げ、再度第2流路部材6内の流路に繋げた後、開口22cを介して外部と接続するようにしてもよい。
ヘッド本体2aの第4方向の端部では、第2流路部材6内に第2端部26hが伸びており、第2流路部材6と第1流路部材4とが、第2端部26hの下方において接合されている。このため、第2端部26hに流れる液体の熱が、第2流路部材6から第1流路部材4に伝わるため、第1流路部材4の温度を均等化できる。
また、本実施形態では、第2端部26hの下方の第2流路部材6は、中実になっている。これにより、熱伝導性が高くなっているので、第1流路部材4の温度を、より均等化できる。また、第2端部26hの下方の第1流路部材4が中実であれば、第1流路部材4の温度を、より均等化できる。
また、第2端部26hの下側の面が、第1流路部材4の上面(加圧室面4−1)となるようすれば、第2端部26hに流れる液体の熱が、第2流路部材6から第1流路部材4に直接伝わることで、より伝わりやすくなるため、第1流路部材4の温度をより均等化できる。
また、第2端部26hの流路を、一旦第1流路部材4内に設けた流路に繋げ、再度第2流路部材6内の流路に繋げた後、開口26cを介して外部と接続するようにしてもよい。
第1端部22hおよび第2端部26hの付近の第2流路部材6および第1流路部材4の構造は、第1端部22hおよび第2端部26hの下方だけでなく、少なくとも第2方向における第1端部22hおよび第2端部の存在している範囲のどこかで、ヘッド本体2aの短手方向に渡って中実な部分を設けておくのが、温度の均等化に対して好ましい。
第1端部22hは、単に加圧室配置領域11Cよりも第2方向に伸びているだけでなく、第3方向に伸びていることで、ヘッド本体2aの第2方向の端部からの影響を、加圧室配置領域11Cに伝わり難くできる。ここで、第3方向に伸びているとは、第1方向ではなく第3方向に伸びていることを意味し、より詳細には、第3方向に対する角度が90度より小さいこと意味する。
第1端部22hが、加圧室配置領域11Cの中央よりも第3方向に伸びていれば、ヘッド本体2aの第2方向の端部からの影響を、加圧室配置領域11Cに伝わり難くできる。加圧室配置領域11Cの中央よりも第3方向に伸びているとは、加圧室配置領域11Cにおける、第2方向と直交する方向の中央よりも第3方向に位置している部分があるという意味である。具体的には、図6(b)のように、第1端部122hが、加圧室配置領域11Cにおける第2方向と直交する方向の中央を示す仮想直線L1よりも第3方向に位置している部分があることを示している。
第2端部26hについても同様に、第2端部26hが、加圧室配置領域11Cの中央よりも第1方向に伸びていれば、ヘッド本体2aの第4方向の端部からの影響を、加圧室配置領域11Cに伝わり難くできる。図6(b)には、第1端部126hが、加圧室配置領域11Cにおける第2方向と直交する方向の中央を示す仮想直線L1よりも第1方向に位置している部分が存在する形態を示している。
また、図6(c)に示すように、第1端部222hが、加圧室配置領域11Cよりも第3方向に伸びていれば、ヘッド本体2aの第2方向の端部からの影響を、加圧室配置領域11Cにより伝わり難くできる。加圧室配置領域11Cよりも第3方向に伸びているとは加圧室配置領域11Cにおける、第2方向と直交する方向の最も離れている仮想直線L2よりも第3方向に位置している部分があるという意味である。
第2端部26hについても同様に、図6(c)に示すように、第2端部226hが、加圧室配置領域11Cよりも第1方向に伸びていれば、ヘッド本体2aの第4方向の端部からの影響を、加圧室配置領域11Cにより伝わり難くできる。加圧室配置領域11Cよりも第1方向に伸びているとは加圧室配置領域11Cにおける、第2方向と直交する方向の最も離れている仮想直線L3よりも第1方向に位置している部分があるという意味である。
第2流路部材6は矩形形状であり、第2方向は、その矩形形状の第1の対向する2辺と、略平行になっている。ここで、略平行とは、成す角度が5度以下であることを意味する。第1方向は、その矩形形状の、第1の対向する2辺とは異なる第2の対向する2辺に対して傾いている。そして、その傾きは第2方向に向かっている。その結果、第2方向の端に配置されている加圧室10は、第3方向の端では、第1方向の端よりも、第4方向に配置されることになる(図3参照)。この部分は、第1端部22hが第3方向に伸びていたとしても、第1統合流路22と第2統合流路26との間の流路がない部分に対応している。すなわち、ヘッド本体2aの第2方向の端の温度の影響をより受けやすい部分であり、その部分が、第4方向に引っ込んで配置されているため、その温度の影響を受け難くできる。このような配置の関係は、第4方向の端でも同様になるので、第4方向の端においても、その温度の影響を受け難くできる。
第1延在部22gは、加圧室配置領域11Cに沿って、第2方向に延在している。第1延在部22gは、加圧室配置領域11Cの少なくとも第1方向側の辺に渡って延在しているのが好ましい。これにより、加圧室配置領域11Cの温度をより均等化できる。第1延在部22gは、加圧室配置領域11Cの第1方向側の辺よりも、第4方向に伸びていれば
、ヘッド本体2aの第4方向の端部からの温度の影響を受けに難くなるので好ましい。しかし、第1共通流路20の開口20aよりも第4方向に伸びていても、その部分は、液体の循環の経路から外れるので、液体があまり入れ替わらず、温度均等化への寄与も比較的小さい。また、液体が滞留することで、液体中の顔料が沈降しやすくなるなどの影響が生じることもある。
そこで、流路部材4の、加圧室配置領域11Cより第4方向側に端部流路30を設ける。端部流路30の開口30cは、第1共通流路20の開口20aよりも第4方向側に配置されており、第1共通流路20の開口20aよりも第4方向に伸びている第1延在部22gに流れる液体が端部流路30を通って循環するようにできる。
第2延在部26gについても同様にできる。すなわち、流路部材4の、加圧室配置領域11Cより第2方向側に端部流路30を設ける。端部流路30の開口30dは、第2共通流路24の開口24aよりも第2方向側に配置されており、第2共通流路24の開口24aよりも第2方向に伸びている第2延在部26gに流れる液体が端部流路30を通って循環するようにできる。
図7(a)は、本発明の他の実施形態のヘッド本体の模式的な平面図であり、図6(a)と同じ部分を表している。ここで、第1端部322hと加圧室配置領域11Cとが第2方向に重なっている領域での、第2方向に沿った距離を考える。
第1端部322hの第3方向側での、第2方向に沿った距離D13[mm]は、第1端部322hの第1方向側での、第2方向に沿った距離D11[mm]よりも短くなっている。これにより、第1端部322hの第3方向側で途切れていることにより、ヘッド本体の第2方向の端部の温度の影響を受けやすくなっている部位が、距離の近い第1端部322hにより、温度の影響を受け難くできる。
第2端部326hの第1方向側での、第2方向に沿った距離D21[mm]は、第2端部326hの第3方向側での、第2方向に沿った距離D23[mm]よりも短くなっている。これにより、第2端部326hの第1方向側で途切れていることにより、ヘッド本体の第4方向の端部の温度の影響を受けやすくなっている部位が、距離の近い第2端部326hにより、温度の影響を受け難くできる。
図7(b)は、本発明の他の実施形態のヘッド本体の模式的な平面図であり、図6(a)と同じ部分を表している。
第1端部422hと加圧室配置領域11Cとの間の第2方向に沿った距離D1[mm]は、第2端部426hと加圧室配置領域11Cとの間の第2方向に沿った距離D2[mm]よりも短くなっている。液体は、外部から第2統合流路に供給され、第1流路部材を通った後、第1統合流路を通り、外部に回収される。したがって、第2端部426hを通った後、温度の下がった液体が第1端部422hを通ることになる。そこで、上述のような配置にすることで、第1端部422hを通る液体の温度が少し低くなっても、その差が、加圧室配置領域11Cに影響し難くできる。
第1端部422hと加圧室配置領域11Cとの間の第2方向に沿った距離D1[mm]は、第1端部422hと加圧室配置領域11Cとの間の第2方向に沿った距離の平均距離のことである。より詳細には、距離D1[mm]は、第1端部422hと加圧室配置領域11Cとが第2方向に重なっている領域での、第2方向に沿った距離である。図7(b)では、距離D1[mm]は、第1端部422hの第3方向側での、第2方向に沿った距離D13[mm]と、第1端部422hの第1方向側での、第2方向に沿った距離D11[
mm]の算術平均である。
第2端部426hと加圧室配置領域11Cとの間の第2方向に沿った距離D2[mm]は、第2端部426hと加圧室配置領域11Cとの間の第2方向に沿った距離の平均距離のことであり。図7(b)では、距離D2[mm]は、第2端部426hの第1方向側での、第2方向に沿った距離D21[mm]と、第2端部426hの第3方向側での、第2方向に沿った距離D23[mm]の算術平均である。
図7(c)は、本発明の他の実施形態のヘッド本体の模式的な平面図であり、図6(a)と同じ部分を表している。
第1端部522hは、上流である第1延在部側よりも、下流である外部への開口側の方が、断面積が小さくなっている。また、第2端部526hは、上流である外部への開口側よりも、下流である第2延在部側の方が、断面積が小さくなっている。このため、第1端部522hの平均断面積は、第2端部526hの平均断面積よりも小さくなっている。液体は、第2流路部材6よりも熱伝導率が小さいので、太い部分は熱伝導による外部への熱のロスが小さくできる。これにより、温度低下が大きくなる下流側の温度低下を抑制できる。
ヘッド本体2aでは、第1流路部材4の、加圧室配置領域11Cの第2方向の外側および第4方向の外側に、端部流路30が設けられている。端部流路30は、共通流路(第1共通流路20および第2共通流路)よりも流路抵抗が低くなっている。端部流路30の流路抵抗が低いため、端部流路30に流れる液体の時間当たりの流量は、共通流路に流れる液体の時間当たりの流量よりも多くなる。このため、ヘッド本体2aの第2方向の端部からの放熱が大きくても、端部流路30を横切るように温度が伝わり難いので、加圧室配置領域11C内の温度差を小さくできる。共通流路の流路抵抗は、端部流路30の流路抵抗の2倍以上、特に3倍以上であるのが好ましい。
また、第1流路部材4中で端部流路30を流れる液体により温度低下が抑制できるだけでなく、端部流路30が存在することで、液体の滞留が起き難いように第1延在部22gを第4方向側に伸ばして配置することができ、液体の滞留が起き難いように第2延在部26gを第2方向側に伸ばして配置することができる。
なお、共通流路の流路抵抗とは、1つの第2共通流路24の開口24bから、1つの第1共通流路20の開口20aまでの流路抵抗のことである。本実施形態では、1本の第2共通流路24に供給された液体は、2列の加圧室列11Aの加圧室に流れ込み、さらに2本の第1共通流路20に流れ込む。逆に、1本の第1共通流路20には、2本の第2共通流路24からの液体が流れ込む。この関係から、共通流路の流路抵抗は、1本の第2共通流路24に供給された液体が、2列の加圧室列11Aの加圧室に流れ込み、さらに第1共通流路20の2倍の流路抵抗に流れ込んだ場合の流路抵抗と同じになる。すなわち、共通流路の流路抵抗は、第2共通流路24の流路抵抗+(個別流路の流路抵抗/16+第1共通流路24の流路抵抗×2)/2であり、第1共通流路20の流路抵抗+第2共通流路24の流路抵抗+個別流路の流路抵抗/32であり、第1共通流路20の流路抵抗+第2共通流路24の流路抵抗+2列の加圧室列11Aの流路抵抗のことである。
本実施形態では、端部流路30は、加圧室配置領域11Cの両側にそれぞれ設けられており、温度の安定化のためには両側に設ける方がよいが、片側だけであっても、その片側において温度を安定化することができる。
ヘッド本体2aとプリンタ1との固定をヘッド本体2aの第2方向の端部で行なう場合
、ヘッド本体2aの両端部からプリンタ1への熱伝導が大きくなるため、そのようなヘッド本体2aでは、端部流路30を設ける必要性が高くなる。
端部流路30には、流路の幅が、共通流路の幅よりも広い幅広部30aが設けられており、幅広部30aの加圧室側4−1には第3ダンパ28cが設けられている。第3ダンパ28Cは、一方の面が幅広部30aに面しており、他方の面がダンパ室29に面していて変形可能になっている。ダンパのダンピング能力は、変形可能な領域の差し渡しが一番狭い部分の影響が大きい。共通流路の幅を広くするヘッド本体2aの大きさが大きくなってしまうため、共通流路の幅はあまり大きくできず、共通流路に設けられた第1ダンパ28A、第2ダンパ28Bだけでは、ダンピング能力が十分でないおそれがある。幅広部30aの幅を大きくすることで、第3ダンパ28Cのダンピング能力を大きくすることができる。幅広部30aの幅は、共通流路の幅の2倍上、特に3倍以上であるのが好ましい。
幅広部30aの吐出孔面4−2側にもダンパを設けて、さらにダンピング能力を大きくしてもよい。
また、以上の実施形態では第1共通流路20は、第2統合流路26と直接繋がっておらず、第2共通流路24は、第1統合流路22と直接繋がっていないが、本発明は、このような形態に限定されない。すなわち、共通流路が、第1統合流路22と第2統合流路26とを直接繋いでいてもよい。
また、以上の実施形態では、ヘッド本体2a内を液体が通り抜けるようにすることで、プリンタ1全体では、液体が循環するようになっていたが、第1統合流路22と第2統合流路26との両方から液体を供給して、循環を行なわずに使用してもよい。
また、第1統合流路22および第2統合流路26は、第2流路部材6に配置せずに、第1流路部材4に配置してよい。このようにすれれば、第1統合流路22、第2統合流路26、第1共通流路20、および第2共通流路24は、第1流路部材4内の同一面内配置することができ、平面方向の温度をより平均化できる。ただし、第1統合流路22および第2統合流路26に、印刷する分の液体、および滞留を抑制し、温調が可能になる分の液体を流そうとすると、第1流路部材4の厚さを厚くして、第1統合流路22および第2統合流路26の断面の高さを高くするか、もしくは、ヘッド本体2aの短手方向の大きさを大きくして第1統合流路22および第2統合流路26の断面の幅を大きくする必要がある。是前者は、ALが長くなることで駆動周波数を高くするのが難しくなるおそれがあり、後者は、ヘッド本体2aが大きくなることで、複数のヘッド本体2aを用いる場合の間隔が広くなってしまい印刷精度が低くなるおそれがある。そのため、第1統合流路22および第2統合流路26は、第2流路部材6に配置するのが好ましい。