図1(a)は、本発明の一実施形態に係る液体吐出ヘッド2を含む記録装置である(カラーインクジェット)プリンタ1の概略の側面図であり、図1(b)は、概略の平面図である。プリンタ1は、記録媒体である印刷用紙Pを搬送ローラ80aから搬送ローラ80bへと搬送することにより、印刷用紙Pを液体吐出ヘッド2に対して相対的に移動させる。制御部88は、画像や文字のデータに基づいて、液体吐出ヘッド2を制御して、記録媒体Pに向けて液体を吐出させ、印刷用紙Pに液滴を着弾させて、印刷用紙Pに印刷などの記録を行なう。
本実施形態では、液体吐出ヘッド2はプリンタ1に対して固定されており、プリンタ1はいわゆるラインプリンタとなっている。本発明の記録装置の他の実施形態としては、液体吐出ヘッド2を、印刷用紙Pの搬送方向に交差する方向、例えば、ほぼ直交する方向に往復させるなどして移動させる動作と、印刷用紙Pの搬送を交互に行なう、いわゆるシリアルプリンタが挙げられる。
プリンタ1には、印刷用紙Pとほぼ平行するように平板状の(ヘッド搭載)フレーム70が固定されている。フレーム70には図示しない20個の孔が設けられており、20個の液体吐出ヘッド2がそれぞれの孔の部分に搭載されていて、液体吐出ヘッド2の、液体を吐出する部位が印刷用紙Pに面するようになっている。液体吐出ヘッド2と印刷用紙Pとの間の距離は、例えば0.5〜20mm程度とされる。5つの液体吐出ヘッド2は、1つのヘッド群72を構成しており、プリンタ1は、4つのヘッド群72を有している。
液体吐出ヘッド2は、図1(a)の手前から奥へ向かう方向、図1(b)の上下方向に細長い長尺形状を有している。この長い方向を長手方向と呼ぶことがある。1つのヘッド群72内において、3つの液体吐出ヘッド2は、印刷用紙Pの搬送方向に交差する方向、例えば、ほぼ直交する方向に沿って並んでおり、他の2つの液体吐出ヘッド2は搬送方向に沿ってずれた位置で、3つ液体吐出ヘッド2の間にそれぞれ一つずつ並んでいる。液体吐出ヘッド2は、各液体吐出ヘッド2で印刷可能な範囲が、印刷用紙Pの幅方向に(印刷用紙Pの搬送方向に交差する方向に)繋がるように、あるいは端が重複するように配置されており、印刷用紙Pの幅方向に隙間のない印刷が可能になっている。
4つのヘッド群72は、記録用紙Pの搬送方向に沿って配置されている。各液体吐出ヘッド2には、図示しない液体タンクから液体(インク)が供給される。1つのヘッド群72に属する液体吐出ヘッド2には、同じ色のインクが供給されるようになっており、4つのヘッド群で4色のインクが印刷できる。各ヘッド群72から吐出されるインクの色は、例えば、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、シアン(C)およびブラック(K)である。このようなインクを、制御部88で制御して印刷すれば、カラー画像が印刷できる。
プリンタ1に搭載される液体吐出ヘッド2の個数は、単色で、1つの液体吐出ヘッド2で印刷可能な範囲を印刷するのなら1つでもよい。ヘッドの群72に含まれる液体吐出ヘ
ッド2の個数や、ヘッド群72の個数は、印刷する対象や印刷条件により適宜変更できる。例えば、さらに多色の印刷をするためにヘッドの群72の個数を増やしてもよい。また、同色で印刷するヘッド群72を複数配置して、搬送方向に交互に印刷することで、印刷速度(搬送速度)を速くすることができる。また、同色で印刷するヘッド群72を複数準備して、搬送方向と交差する方向にずらして配置して、印刷用紙Pの幅方向の解像度を高くしてもよい。
さらに、色の付いたインクを印刷する以外に、印刷用紙Pの表面処理をするために、コーティング剤などの液体を印刷してもよい。
プリンタ1は、記録媒体である印刷用紙Pに印刷を行なう。印刷用紙Pは、給紙ローラ80aに巻き取られた状態になっており、2つのガイドローラ82aの間を通った後、フレーム70に搭載されている液体吐出ヘッド2の下側を通り、その後2つの搬送ローラ82bの間を通り、最終的に回収ローラ80bに回収される。印刷する際には、搬送ローラ82bを回転させることで印刷用紙Pは、一定速度で搬送され、液体吐出ヘッド2によって印刷される。回収ローラ80bは、搬送ローラ82bから送り出された印刷用紙Pを巻き取る。搬送速度は、例えば、75m/分とされる。各ローラは、制御部88によって制御されてもよいし、人によって手動で操作されてもよい。
記録媒体は、印刷用紙P以外に、布などでもよい。また、プリンタ1を、印刷用紙Pの代わりに搬送ベルトを搬送する形態にし、記録媒体は、ロール状のもの以外に、搬送ベルト上に置かれた、枚葉紙や裁断された布、木材、タイルなどにしてもよい。さらに、液体吐出ヘッド2から導電性の粒子を含む液体を吐出するようにして、電子機器の配線パターンなどを印刷してもよい。またさらに、液体吐出ヘッド2から反応容器などに向けて所定量の液体の化学薬剤や化学薬剤を含んだ液体を吐出させて、反応させるなどして、化学薬品を作製してもよい。
また、プリンタ1に、位置センサ、速度センサ、温度センサなどを取り付け、制御部88が、各センサからの情報から分かるプリンタ1各部の状態に応じて、プリンタ1の各部を制御してもよい。特に、液体吐出ヘッド2から吐出される液体の吐出特性(吐出量や吐出速度など)が外部の影響を受けるようであれば、液体吐出ヘッド2の温度や液体タンクの液体の温度、液体タンクの液体が液体吐出ヘッド2に加えている圧力に応じて、液体吐出ヘッド2において液体を吐出させる駆動信号を変えるようにしてもよい。
次に、本発明の一実施形態の液体吐出ヘッド2について説明する。図2(a)、(b)は、図1に示された液体吐出ヘッド2の要部であるヘッド本体2aを示す平面図である。図2(a)は概略の構造を示しており、図2(b)は、果たす役割により領域を分けて示してある。図3は、図2の一点鎖線で囲まれた領域の拡大平面図であり、ヘッド本体2aの一部である。図3では、説明のため、一部の流路を省略して描いている。図4は、図3と同じ位置の拡大平面図であり、図3とは別の一部の流路を省略して描いている。なお、図3および図4において、図面を分かり易くするために、圧電アクチュエータ基板21の下方にあって破線で描くべき加圧室10、しぼり6および吐出孔8などを実線で描いている。図5は、図3のV−V線に沿った縦断面図である。図6(a)は、図1に示された液体吐出ヘッド2の長手方向に沿った部分縦断面図であり、図6(b)〜(e)は、リザーバ40を構成する部材の平面図である。
液体吐出ヘッド2は、ヘッド本体2a以外に、ヘッド本体2aに液体を供給するリザーバ40や、金属製の筐体90を含んでいてもよい。また、ヘッド本体2aは、流路部材4と、変位素子30が作り込まれている圧電アクチュエータ基板21とを含んでいる。
ヘッド本体2aを構成する流路部材4は、共通流路であるマニホールド5と、マニホールド5と繋がっている複数の加圧室10と、複数の加圧室10とそれぞれ繋がっている複数の吐出孔8とを備えている。加圧室10は流路部材4の上面に開口しており、流路部材4の上面が加圧室面4−2となっている。また、流路部材4の上面は、マニホールド5と繋がっている開口5aを有し、この開口5aより液体が供給されるようになっている。
また、流路部材4の上面には、変位素子30を含む圧電アクチュエータ基板21が接合されており、各変位素子30が加圧室10上に位置するように配置されている。また、圧電アクチュエータ基板21には、各変位素子30に信号を供給するためのFPC(Flexible Printed Circuit)などの信号伝達部60が接続されている。図2には、2つの信号伝達部60が圧電アクチュエータ基板21に繋がる状態が分かるように、信号伝達部60の圧電アクチュエータ基板21に接続される付近の外形を点線で示した。圧電アクチュエータ基板21に電気的に接続されている、信号伝達部60に形成されている電極は、信号伝達部60の端部に、矩形状に配置されている。2つの信号伝達部60は、圧電アクチュエータ基板21の短手方向の中央部にそれぞれの端がくるように接続されている。2つの信号伝達部60は、中央部から圧電アクチュエータ基板21の長辺に向かって伸びている。
ヘッド本体2aは、平板状の流路部材4と、流路部材4上に接続された変位素子30を含む圧電アクチュエータ基板21を1つ有している。圧電アクチュエータ基板21の平面形状は一方方向に長い長方形状であり、その長方形の長辺が流路部材4の長手方向に沿うように流路部材4の上面に配置されている。流路部材4には、長手方向である一方方向と直交する方向である他方方向の幅が広い幅広部Wと、幅広部Wよりも幅の狭い幅狭部Nとがあり、それらは長手方向に交互に配置されている。幅広部Wおよび幅狭部Nについては後で詳述する。
流路部材4の内部には2つのマニホールド5が形成されている。マニホールド5は流路部材4の長手方向の一端部側から、他端部側に延びる細長い形状を有しており、その両端部において、流路部材4の上面に開口しているマニホールドの開口5aが形成されている。
また、マニホールド5は、少なくとも加圧室10に繋がっている領域である長手方向における中央部分において、短手方向に間隔を開けて設けられた隔壁15で仕切られている。隔壁15は、加圧室10に繋がっている領域である長手方向の中央部分においては、マニホールド5と同じ高さを有し、マニホールド5を複数の副マニホールド5bに完全に仕切っている。このようにすることで、平面視したときに、隔壁15と重なるように、吐出孔8および吐出孔8から加圧室10に繋がっている流路を設けることができる。
図2では、マニホールド5の両端部を除く全体が隔壁15で仕切られている。このようにする以外に、両端部のうちのどちらか一端部以外が隔壁15で仕切られているようにしてもよい。また、流路部材4の上面に開口している開口5a付近のみが仕切られておらず、開口5aから流路部材4の深さ方向に向かう間に隔壁が設けられるようにしてもよい。いずれにしても、仕切られていない部分があることにより、流路抵抗が小さくなり、液体の供給量を多くできるので、マニホールド5の両端部が隔壁15で仕切られていない方が好ましい。
複数に分けられた部分のマニホールド5を副マニホールド5bと呼ぶことがある。本実施形態においては、マニホールド5は独立して2本設けられており、それぞれの両端部に開口5aが設けられている。また、1つのマニホールド5には、7つの隔壁15が設けられており、8つの副マニホールド5bに分けられている。副マニホールド5bの幅は、隔壁15の幅より大きくなっており、これにより副マニホールド5bに多くの液体を流すこ
とができる。また、7つの隔壁15は、幅方向の中央に近いほど、長さが長くなっており、マニホールド5の両端において、幅方向の中央に近い隔壁15ほど、隔壁15の端がマニホールド5の端に近くなっている。これにより、マニホールド5の外側の壁により生じる流路抵抗と、隔壁15により生じる流路抵抗との間のバランスがとれ、各副マニホールド5bのうち、加圧室10に繋がる部分である個別供給流路14が形成されている領域の端における液体の圧力差を少なくできる。この個別供給流路14での圧力差は、加圧室10内の液体に加わる圧力差につながるため、個別供給流路14での圧力差を少なくすれば、吐出ばらつきを低減できる。
流路部材4は、複数の加圧室10が2次元的に広がって形成されている。加圧室10は、角部にアールが施されたほぼ菱形あるいは楕円形状の平面形状を有する中空の領域である。
加圧室10は1つの副マニホールド5bと個別供給流路14を介して繋がっている。1つの副マニホールド5bに沿うようにして、この副マニホールド5bに繋がっている加圧室10の行である加圧室行11が、副マニホールド5bの両側に1行ずつ、合計2行設けられている。したがって、1つのマニホールド5に対して、16行の加圧室11が設けられており、ヘッド本体2a全体では32行の加圧室行11が設けられている。各加圧室行11における加圧室10の長手方向の間隔は同じであり、例えば、37.5dpiの間隔となっている。
各加圧室行11の端にはダミー加圧室16の列が1列設けられている。このダミー加圧室列のダミー加圧室16は、マニホールド5とは繋がっているが、吐出孔8とは繋がっていない。また、32行の加圧室行11の外側には、ダミー加圧室16が直線状に並んだダミー加圧室行が1行設けられている。このダミー加圧室行のダミー加圧室16は、マニホールド5および吐出孔8のいずれとも繋がっていない。これらのダミー加圧室16により、端から1つ内側の加圧室10の周囲の構造(剛性)が他の加圧室10の構造(剛性)と近くなることで、液体吐出特性の差を少なくできる。なお、周囲の構造の差の影響は、距離の近い、長さ方向に隣接する加圧室10の影響が大きいため、長さ方向には、両端にダミー加圧室を設けてある。幅方向については、影響が比較的小さいため、ヘッド本体21aの端に近い方のみに設けている。これにより、ヘッド本体21aの幅を小さくできる。
1つのマニホールド5に繋がっている加圧室10は、矩形状の圧電アクチュエータ基板21の各外辺に沿った行および列をなす格子上に配置されている。これにより、圧電アクチュエータ基板21の外辺から、加圧室10の上に形成されている個別電極25が等距離に配置されることになるので、個別電極25を形成する際に、圧電アクチュエータ基板21に変形が生じ難くできる。圧電アクチュエータ基板21と流路部材4とを接合する際に、この変形が大きいと外辺に近い変位素子30に応力が加わり、変位特性にばらつきが生じるおそれがあるが、変形を少なくすることで、そのばらつきを低減できる。また、最も外辺に近い加圧室行11の外側にダミー加圧室16のダミー加圧室行が設けられているために、変形の影響をより受け難くできる。加圧室行11に属する加圧室10は等間隔で配置されており、加圧室行11に対応する個別電極25も等間隔で配置されている。加圧室行11は短手方向に等間隔で配置されており、加圧室行11に対応する個別電極25の行も短手方向に等間隔で配置されている。これにより、特にクロストークの影響が大きくなる部位をなくすことができる。
本実施形態では、加圧室10は格子状に配置したが、隣り合う圧室列11の加圧室10が互いの間に位置するように千鳥状に配置してもよい。このようにすると、隣接加圧室行11に属する加圧室10の間の距離がより長くなるので、よりクロストークを抑制できる。
加圧室行11をどのように並べるかによらず、流路部材4を平面視したとき、1つの加圧室行11に属する加圧室10が、隣接する加圧室行11に属する加圧室10と、液体吐出ヘッド2の長手方向において、重ならないように配置することにより、クロストークを抑制できる。一方、加圧室行11の間の距離を離すと、液体吐出ヘッド2の幅が大きくなるので、プリンタ1に対する液体吐出ヘッド2の設置角度の精度や、複数の液体吐出ヘッド2を使用する際の、液体吐出ヘッド2の相対位置の精度が印刷結果に与える影響が大きくなる。そこで、隔壁15の幅を副マニホールド5bよりも小さくすることで、それらの精度が印刷結果に与える影響を少なくできる。
1つの副マニホールド5bに繋がっている加圧室10は、2列の加圧室行11をなしており、1つの加圧室行11に属する加圧室10から繋がっている吐出孔8は、1つの吐出孔行9をなしている。2行の加圧室行11に属する加圧室10に繋がっている吐出孔8はそれぞれ、副マニホールド5bの異なる側に開口している。図4では隔壁15には、2行の吐出孔行9が設けられているが、それぞれの吐出孔行9に属する吐出孔8は、吐出孔8に近い側の副マニホールド5bに加圧室10を介して繋がっている。隣接する副マニホールド5bに加圧室行11を介して繋がっている吐出孔8と液体吐出ヘッド2の長手方向において重ならないように配置されていると、加圧室10と吐出孔8とを繋ぐ流路間のクロストークが抑制できるので、さらにクロストークを少なくすることができる。加圧室10と吐出孔8とを繋ぐ流路全体が、液体吐出ヘッド2の長手方向において重ならないように配置されていると、さらにクロストークを少なくすることができる。
1つのマニホールド5に繋がっている複数の加圧室10により加圧室群(変位素子群31と同じ範囲である)が構成されており、マニホールド5が2つあるため、加圧室群は2つある。各加圧室群内における吐出に関わる加圧室10の配置は同じで、短手方向に平行移動させた位置に配置されている。これらの加圧室10は、流路部材4の上面における圧電アクチュエータ基板21に対向する領域に、加圧室群間などの少し間隔が広くなった部分があるものの、ほぼ全面にわたって配列されている。つまり、これらの加圧室10によって形成された加圧室群は圧電アクチュエータ基板21とほぼ同一の形状の領域を占有している。また、各加圧室10の開口は、流路部材4の上面に圧電アクチュエータ基板21が接合されることで閉塞されている。
加圧室10の個別供給流路14が繋がっている角部と対向する角部からは、流路部材4の下面の吐出孔面4−1に開口している吐出孔8に繋がる流路が伸びている。この流路は、平面視において、加圧室10から離れる方向に伸びている。より具体的には、加圧室10の長い対角線に沿う方向に離れつつ、その方向に対して左右にずれながら伸びている。これにより、加圧室10は各加圧室行11内での間隔が37.5dpiになっている格子状の配置にしつつ、吐出孔8は、全体で1200dpiの間隔で配置することができる。
これは別の言い方をすると、流路部材4の長手方向に平行な仮想直線に対して直交するように吐出孔8を投影すると、図4に示した仮想直線のRの範囲に、各マニホールド5に繋がっている16個の吐出孔8、全部で32個の吐出孔8が、1200dpiの等間隔となっているということである。これにより、すべてのマニホールド5に同じ色のインクを供給することで、全体として長手方向に1200dpiの解像度で画像が形成可能となる。また、1つのマニホールド5に繋がっている1個の吐出孔8は、仮想直線のRの範囲で600dpiの等間隔になっている。これにより、各マニホールド5に異なる色のインクを供給することで、全体として長手方向に600dpiの解像度で2色の画像が形成可能となる。この場合、2つの液体吐出ヘッド2を用いれば、600dpiの解像度で4色の画像が形成可能となり、600dpiで印刷可能な液体吐出ヘッドを用いるよりも、印刷精度が高くなり、印刷のセッティングも簡単にできる。なお、ヘッド本体2aの短手方向
に並んでいる1列の加圧室列に属する加圧室10から繋がっている吐出孔8で、仮想直線のRの範囲がカバーされている。
液体吐出ヘッド2には、ヘッド本体2aの両端部にあるマニホールドの開口5aに液体を供給するために、リザーバ40が積層されている。リザーバ40は、ヘッド本体2aと同じ方向に長い平板形状をなしているが、液体を溜めておくため、ヘッド本体2aの5倍以上、さらには10倍以上の厚さを有する。リザーバ4と流路部材4とは、長手方向の両端部のそれぞれで接合されている。リザーバ40と流路部材4とは、間に圧電アクチュエータ基板21を挟むように積層されている。リザーバ40の流路部材4側には、リザーバの凹部41があり、圧電アクチュエータ基板21はリザーバの凹部41に収容される。リザーバの凹部41の短手方向の両側にできる開口は、金属板などがねじ止めで取り付けられ、周囲に樹脂を塗布して、圧電アクチュエータ基板21のある部位に、インクなどの液体が侵入し難いようにされる。
リザーバ40は、リザーバ流路42と分岐流路44とを有している。また、リザーバ40は、平板状のプレート40a、c〜gおよびダンパプレート40bが積層されている構造を有している。ダンパプレート40bは、リザーバ40の平面方向全体に広がっていなくてもよく、リザーバ流路42の特定の領域にダンピング効果が与えられるように、リザーバ流路42に面するように内部で張り付けられる構造としてもよい。リザーバ流路42となる凹部あるいは孔が形成されているプレート40d、fは厚さが5〜10mm程度とされており、ダンパプレート40b以外の他のプレートは0.1〜5mm程度とされる。
リザーバ流路42は、液体吐出ヘッド2の長手方向の一端部から他端部まで延在している。リザーバ流路42の一端部には、流入孔42aが開口しており、外部から液体が供給される。リザーバ流路42の一端部には、開口42cが開口している。開口42cは、液体吐出ヘッド2が空の状態から液体を入れる際には開けた状態にされるが、液体を吐出する際には閉じられる。液体を吐出する際には、液体は、リザーバ流路42の長手方向の中央部にある流出孔42bを通じて分岐流路44に流れ込む。
分岐流路44は液体吐出ヘッド2の一端部から他端部まで延在している。分岐流路44の中央部に入った液体は、分岐流路44の中を液体吐出ヘッド2の一端部と、他端部とに分かれて進み、分岐流路44の両端部にある流出孔44bに到達し、それぞれの流出孔44bから、マニホールドの開口5aへと流れ込む。
本実施形態のリザーバ流路42は、流入孔42aから入った液体が途中で2つに分かれ、液体吐出ヘッド2の短手方向に並んだ進んだ後、2本ある分岐流路44にそれぞれ流れ込むようになっているが、このように分岐しなくてもかまわない。しかし、このような分岐を行なえば、リザーバ40における液体吐出ヘッド2の短手方向へ液体の分配が、リザーバ流路42によって行なわれ、長手方向へ液体の分配が、分岐流路44で行なわれるため、液体の分配を効率よく行なうことができる。
液体吐出ヘッド2が空の状態から液体を入れる際には、開口42cは開けた状態にされる。このようにすることで、リザーバ流路42内に最初にあった空気が、流入孔42aから入ってきた液体と混じった状態で、開口42cから排出されるため、ヘッド本体2aに空気が入り込み難くなり、ヘッド本体2aに入り込んだ空気に起因する不吐出などを起こり難くできる。
また、リザーバ流路42の途中にはフィルタ48が設けられており、異物や気泡が、ヘッド本体2aに入り込み難くされている。ダンパプレート40bの一部は、リザーバ流路42に面しており、リザーバ流路42の体積を可変可能なダンパ46となっている。ダン
パ46は、液体の吐出量が急激に変化した場合などに、リザーバ流路42の体積を変えることにより、液体の供給を安定させることができる。
圧電アクチュエータ基板21の上面における各加圧室10に対向する位置には個別電極25がそれぞれ形成されている。個別電極25は、加圧室10より一回り小さく、加圧室10とほぼ相似な形状を有している個別電極本体25aと、個別電極本体25aから引き出されている引出電極25bとを含んでおり、個別電極25は、加圧室10と同じように、個別電極列および個別電極群を構成している。また、圧電アクチュエータ基板21の上面には、共通電極24とビアホールを介して電気的に接続されている共通電極用表面電極28が形成されている。共通電極用表面電極28は、圧電アクチュエータ基板21の短手方向の中央部に、長手方向に沿うように2行形成され、また、長手方向の端近くで短手方向に沿って1列形成されている。図示した共通電極用表面電極28は直線上に断続的に形成されたものであるが、直線上に連続的に形成してもよい。共通電極用表面電極28と共通電極24とは、圧電セラミック層21bに配置された、図示しないビアホール内の導体を通じて、電気的に接続される。
圧電アクチュエータ基板21には、2枚の信号伝達部60が、圧電アクチュエータ基板21の2つの長辺側から、それぞれ中央に向かうように配置され、接合される。その際、圧電アクチュエータ基板21の引出電極25bおよび共通電極用表面電極28の上に、それぞれ、接続電極26および共通電極用接続電極を形成して接続することで、接続が容易になる。また、その際、共通電極用表面電極28および共通電極用接続電極の面積を接続電極26の面積よりも大きくすれば、信号伝達部60の端部(先端および圧電アクチュエータ基板21の長手方向の端)における接続が、共通電極用表面電極28上の接続により強くできるので、信号伝達部60が端からはがれ難くできる。
また、吐出孔8は、流路部材4の下面側に配置されたマニホールド5と対向する領域を避けた位置に配置されている。さらに、吐出孔8は、流路部材4の下面側における圧電アクチュエータ基板21と対向する領域内に配置されている。これらの吐出孔8は、1つの群として圧電アクチュエータ基板21とほぼ同一の形状の領域を占有しており、対応する圧電アクチュエータ基板21の変位素子30を変位させることにより吐出孔8から液滴が吐出できる。
ヘッド本体2aに含まれる流路部材4は、複数のプレートが積層された積層構造を有している。これらのプレートは、流路部材4の上面から順に、キャビティプレート4a、ベースプレート4b、アパーチャ(しぼり)プレート4c、サプライプレート4d、マニホールドプレート4e〜j、カバープレート4kおよびノズルプレート4lである。これらのプレートには多数の孔が形成されている。各プレートの厚さは10〜300μm程度であることにより、形成する孔の形成精度を高くできる。流路部材4の厚さは、500μm〜2mm程度である。各プレートは、これらの孔が互いに連通して個別流路12およびマニホールド5を構成するように、位置合わせして積層されている。ヘッド本体2aは、加圧室10は流路部材4の上面に、マニホールド5は内部の下面側に、吐出孔8は下面にと、個別流路12を構成する各部分が異なる位置に互いに近接して配設され、加圧室10を介してマニホールド5と吐出孔8とが繋がる構成を有している。
各プレートに形成された孔について説明する。これらの孔には、次のようなものがある。第1に、キャビティプレート4aに形成された加圧室10である。第2に、加圧室10の一端からマニホールド5へと繋がる個別供給流路14を構成する連通孔である。この連通孔は、ベースプレート4b(詳細には加圧室10の入り口)からサプライプレート4c(詳細にはマニホールド5の出口)までの各プレートに形成されている。なお、この個別供給流路14には、アパーチャプレート4cに形成されている、流路の断面積が小さくな
っている部位であるしぼり6が含まれている。
第3に、加圧室10の個別供給路14が繋がっている端と反対の他端から吐出孔8へと連通する流路を構成する連通孔である。この連通孔は、以下の記載においてディセンダ(部分流路)と呼称されることがある。ディセンダは、ベースプレート4b(詳細には加圧室10の出口)からノズルプレート4l(詳細には吐出孔8)までの各プレートに形成されている。
第4に、副マニホールド5aを構成する連通孔である。この連通孔は、マニホールドプレート4e〜jに形成されている。マニホールドプレート4e〜jには、副マニホールド5bを構成するように隔壁15となる仕切り部が残るように孔が形成されている。各マニホールドプレート4e〜jにおける仕切り部は、ハーフエッチングした支持部(図では省略してある)で各マニホールドプレート4e〜jと繋がった状態にされる。
第1〜4の連通孔が相互に繋がり、マニホールド5からの液体の流入口(マニホールド5の出口)から吐出孔8に至る個別流路12を構成している。マニホールド5に供給された液体は、以下の経路で吐出孔8から吐出される。まず、マニホールド5から上方向に向かって、個別供給流路14に入り、しぼり6の一端部に至る。次に、しぼり6の延在方向に沿って水平に進み、しぼり6の他端部に至る。そこから上方に向かって、加圧室10の一端部に至る。さらに、加圧室10の延在方向に沿って水平に進み、加圧室10の他端部に至る。加圧室10からディセンダに入った液体は、水平方向にも移動しつつ、主に下方に向かい、下面に開口した吐出孔8に至って、外部に吐出される。
圧電アクチュエータ基板21は、圧電体である2枚の圧電セラミック層21a、21bからなる積層構造を有している。これらの圧電セラミック層21a、21bはそれぞれ20μm程度の厚さを有している。圧電アクチュエータ基板21の圧電セラミック層21aの下面から圧電セラミック層21bの上面までの厚さは40μm程度である。圧電セラミック層21a、21bのいずれの層も複数の加圧室10を跨ぐように延在している。これらの圧電セラミック層21a、21bは、例えば、強誘電性を有する、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)系、NaNbO3系、BaTiO3系、(BiNa)NbO3系、BiNaNb5O15系などのセラミックス材料からなる。なお、圧電セラミック層21bは、振動板として働いており、必ずしも圧電体である必要はなく、代わりに、圧電体でない他のセラミック層や金属板を用いてもよい。
圧電アクチュエータ基板21は、Ag−Pd系などの金属材料からなる共通電極24およびAu系などの金属材料からなる個別電極25を有している。個別電極25は上述のように圧電アクチュエータ基板21の上面における加圧室10と対向する位置に配置されている個別電極本体25aと、そこから引き出された引出電極25bとを含んでいる。引出電極25bの一端の、加圧室10と対向する領域外に引き出された部分には、接続電極26が形成されている。接続電極26は例えばガラスフリットを含む銀−パラジウムからなり、厚さが15μm程度で凸状に形成されている。また、接続電極26は、信号伝達部60に設けられた電極と電気的に接合されている。詳細は後述するが、個別電極25には、制御部88から信号伝達部60を通じて駆動信号が供給される。駆動信号は、印刷媒体Pの搬送速度と同期して一定の周期で供給される。
共通電極24は、圧電セラミック層21aと圧電セラミック層21bとの間の領域に面方向のほぼ全面にわたって形成されている。すなわち、共通電極24は、アクチュエータ基板21に対向する領域内のすべての加圧室10を覆うように延在している。共通電極24の厚さは2μm程度である。共通電極24は、圧電セラミック層21a上に個別電極25からなる電極群を避ける位置に形成されている共通電極用表面電極28に、圧電セラミ
ック層21aを貫通して形成されたビアホールを介して繋がっていて、接地され、グランド電位に保持されている。共通電極用表面電極28は、多数の個別電極25と同様に、制御部88と直接あるいは間接的に接続されている。
圧電セラミック層21aの個別電極25と共通電極24とに挟まれている部分は、厚さ方向に分極されており、個別電極25に電圧を印加すると変位する、ユニモルフ構造の変位素子30となっている。より具体的には、個別電極25を共通電極24と異なる電位にして圧電セラミック層21aに対してその分極方向に電界を印加したとき、この電界が印加された部分が、圧電効果により歪む活性部として働く。この構成において、電界と分極とが同方向となるように、制御部88により個別電極25を共通電極24に対して正または負の所定電位にすると、圧電セラミック層21aの電極に挟まれた部分(活性部)が、面方向に収縮する。一方、非活性層の圧電セラミック層21bは電界の影響を受けないため、自発的には縮むことがなく活性部の変形を規制しようとする。この結果、圧電セラミック層21aと圧電セラミック層21bとの間で分極方向への歪みに差が生じて、圧電セラミック層21bは加圧室10側へ凸となるように変形(ユニモルフ変形)する。
続いて、液体の吐出動作について、説明する。制御部88からの制御でドライバICなどを介して、個別電極25に供給される駆動信号により、変位素子30が駆動(変位)させられる。本実施形態では、様々な駆動信号で液体を吐出させることができるが、ここでは、いわゆる引き打ち駆動方法について説明する。
あらかじめ個別電極25を共通電極24より高い電位(以下高電位と称す)にしておき、吐出要求がある毎に個別電極25を共通電極24と一旦同じ電位(以下低電位と称す)とし、その後所定のタイミングで再び高電位とする。これにより、個別電極25が低電位になるタイミングで、圧電セラミック層21a、21bが元の(平らな)形状に戻り(始め)、加圧室10の容積が初期状態(両電極の電位が異なる状態)と比較して増加する。これにより、加圧室10内の液体に負圧が与えられる。そうすると、加圧室10内の液体が固有振動周期で振動し始める。具体的には、最初、加圧室10の体積が増加し始め、負圧は徐々に小さくなっていく。次いで加圧室10の体積は最大になり、圧力はほぼゼロとなる。次いで加圧室10の体積は減少し始め、圧力は高くなっていく。その後、圧力がほぼ最大になるタイミングで、個別電極25を高電位にする。そうすると最初に加えた振動と、次に加えた振動とが重なり、より大きい圧力が液体に加わる。この圧力がディセンダ内を伝搬し、吐出孔8から液体を吐出させる。
つまり、高電位を基準として、一定期間低電位とするパルスの駆動信号を個別電極25に供給することで、液滴を吐出できる。このパルス幅は、圧力室10の液体の固有振動周期の半分の時間であるAL(Acoustic Length)とすると、原理的には、液体の吐出速度
および吐出量を最大にできる。圧力室10の液体の固有振動周期は、液体の物性、圧力室10の形状の影響が大きいが、それ以外に、アクチュエータ基板21の物性や、加圧室10に繋がっている流路の特性からの影響も受ける。
なお、パルス幅は、吐出される液滴を1つにまとめるようにするなど、他に考慮する要因もあるため、実際は、0.5AL〜1.5AL程度の値にされる。また、パルス幅は、ALから外れた値にすることで、吐出量を少なくすることができるため、吐出量を少なくするためにALから外れた値にされる。
液体吐出ヘッド2の構成について改めてまとめると、ヘッド本体2aは、一方方向に長い平板状であり厚さは1mm程度であるのに対して、短手方向で2cm以上、長手方向では10cm以上の寸法となっている。
各変位素子30は、駆動周期毎に(吐出を行なう際は)駆動され、ヘッド本体2aを平面方向に伸縮させる。特定周波数で駆動すると、この伸縮が次第に積み重なり、ヘッド本体2aを、平面方向に伸縮させる振動が大きくなることがある。この振動が大きくなると、液体の吐出特性が変動したり、状態がひどくなると、液体が吐出されなくなる。詳細な原理は不確かなところもあるが、この振動により、加圧室10が平面方向に伸縮し、それにより生じる加圧室10の体積変化が、変位素子30に液体を吐出させるために加えられる変位素子30の変位による加圧室10の体積変化に干渉することが原因と考えられる。このような現象が生じることは、液体の吐出特性の変動が大きくなる駆動周波数と、ヘッド本体2aの短手方向の端部の位置の変化が大きくなる周波数が、ほぼ一致することで確認できる。短手方向の端部の位置の変化は、例えば、レーザ変位計で測定することができる。
このような短手方向の振動が大きくなる原因の一部は、ヘッド本体2aが厚さの厚いリザーバ40と両端部で固定されていることで、長手方向には伸縮し難く、平面方向の伸縮が、比較的フリーな状態にされている、短手方向の中央部に集中することにあると考えられる。そのため、本発明の構造は、そのような流路部材4とリザーバ40とが、両端部で接合された液体吐出ヘッド2で特に有効である。
この振動を低減する構造として、流路部材4に、短手方向の幅が広い幅広部Wと、幅広部Wよりも幅の狭い幅狭部Nとを設け、これらを長手方向に交互に配置する。流路部材4の幅方向の共振周波数は、基本的に流路部材4の幅の長さに反比例するので、幅広部Wと幅狭部Nとでは、共振周波数に差が生じる。これにより、幅広部Wが共振する周波数(に近い周波数)で駆動される場合、幅狭部Nは共振しなく(もしくは共振の程度は低く)なる。逆に、幅狭部Nが共振する周波数(に近い周波数)で駆動される場合、幅広部Wは共振しなく(もしくは共振の程度は低く)なる。したがって、幅がほぼ一定の流路部材4と比較すると、共振する周波数が複数になることにより、特定の周波数における共振の振幅を小さくでき、吐出特性に対する影響を低減できる。
幅広部Wと幅狭部Nとは、流路部材4の長手方向に渡って設けられる。より具体的には、長手方向において、変位素子群31が存在する範囲に渡って設けるのがよい。さらに、ヘッド本体2aの両端にある、流路部材4とリザーバ40との接合領域18にまで達するように伸びていれば、共振周波数の分散がより広い範囲で行なわれるので好ましい。
流路部材4に幅の異なる部分を設ければ、上述のように、共振周波数を分散させることができるが、流路部材4の各部において様々な共振周波数で共振すると、流路部材4内に位置する変位素子30の位置により吐出特性がばらつくことになる。そのため、幅広部Wおよび幅狭部Nがそれぞれ複数ある場合には、複数ある幅広部Wの幅は略同じにし、複数ある幅狭部Nの幅は略同じにするのが好ましい。なおここで言う略同じ幅とは、幅の差が0.5%以内、より好ましくは0.3%以内であることである。
幅広部Wの幅Ww[mm]に対する、幅広部Wの幅Wwと幅狭部Nの幅Wn[mm]との差は、2%以上であるのが好ましい。これは、(Ww−Wn)/Ww≧0.02の条件を満たすということである。差の割合は、3%以上、特に5%以上するのがより好ましい。駆動周波数は、プリンタ1の用途や規模により様々であるが、5kHz〜100kHz程度の範囲が考えられる。また、上述のように流路部材4の短手方向の端部の振動を測定した結果から、共振は、ピークの周波数を中心に0.5〜1kHzの範囲で振動が大きくなっており、共振による影響は、その範囲で吐出特性への影響が大きくなると考えられる。50kHz以上の駆動周波数に対して共振が問題となる場合、幅が2%以上異なれば共振周波数は1kHz以上異なることになるので、分散の効果が十分得られる。25〜50kHzの領域においても、共振のピークが0.5kHz以上ずれることになるので、分散
の効果は得られる。
なお、駆動周波数が低いということは、単位時間当たりに与えられる振動(駆動)のエネルギーが低いということなので、共振が吐出特性に与える影響は小さくなる。そのため、液体吐出ヘッド2の構造にもよるが、25kHz以下の駆動周波数では、そもそも共振の影響が小さいので、周波数分散による改善の効果が多少低くても、十分な精度の印刷結果が得られる。なお、低い駆動周波数で、より効果を高めたい場合、(Ww−Wn)/Wwの値を、共振のピークが1kHz以上離れる値にすればよい。具体的は、駆動周波数25kHz付近で生じる共振では、1(kHz)/駆動周波数(kHz)の値は0.04なので、(Ww−Wn)/Ww≧0.04とすれば、共振のピークが1kHz以上離れることになり、周波数の分散効果を高くできる。
幅広部Wおよび幅狭部Nのヘッド本体2aの長手方向における長さは、あまり短いと幅広部Wと幅狭部Nとの境界付近の部分が、それらの中間の共振周波数で共振することで、周波数の分散の程度が低くなるおそれがある。周波数を分散させるためには、ヘッド本体2aの長手方向における幅広部Wの長さは、幅広部Wの幅の1/4以上とし、ヘッド本体2aの長手方向における幅狭部Nの長さは、幅狭部Wの幅の1/4以上とするのがよい。また、それぞれの長さを長くし過ぎると、共振周波数が異なることにより吐出特性にわずかに差がある領域が交互に並ぶのが目立つおそれがあるので、幅広部Wの長さは、幅広部Wの幅以下とし、幅狭部Nの長さは、幅狭部Wの幅以下とするのがよい。
以上の実施形態では、幅広部Wおよび幅狭部Nのそれぞれの幅が、プレート4a〜lのすべてが(製造の精度の範囲内で)ほぼ同じである場合について記述したが、必ずしもそのようにする必要はない。例えば、幅狭部Nとして、プレート4a〜lのうちの何枚かの幅を短くすれば、幅狭部Nの共振周波数と、幅広部Wの共振周波数とを変えることができるので、周波数分散の効果が得られる。周波数分散の効果を高めるには、プレート4a〜lのうちで、幅狭部Nにおいて、幅広部Wよりも幅が狭くなっているプレートの厚さの合計(そのようなプレートが1枚ならその厚さ)が流路部材4の厚さの半分以上になるようにすればよい。これは、別の言い方をすれば、幅広部Wにおいて、幅狭広部Nよりも幅が狭くなっているプレートの厚さの合計(そのようなプレートが1枚ならその厚さ)が流路部材4の厚さの半分以上になるようにすればよい、ということである。
液体が吐出される方向の最も端に積層されているプレート、本実施形態ではプレート4lは、ワイピングする際に、液滴が吐出孔面4−1に残り難くしたり、記録用紙Pと接触した際に記録用紙Pに傷を付け難くするなどの点から、幅広部Wと幅狭部Nとで幅を変えずに、略一定の幅とするのがよい。ここで略一定とは、幅の差が0.5%以内、より好ましくは0.3%以内のことである。吐出孔面4−1の強度を強くするためには、吐出孔面4−1から連続して積層さている、幅が一定であるプレートの厚さの合計が、流路部材4の厚さの1/4以上の厚さになるようにするのがよい。
図7は、本発明の他の実施形態である液体吐出ヘッドの要部であるヘッド本体102aの平面図である。この液体吐出ヘッドの全体の構成は、図2〜6を用いて説明した液体吐出ヘッドとほぼ同じであり、図7は、図2(b)で示したのと同じ部分である。また、差の少ない部位については、同じ符号を付けて説明を省略する。
ヘッド本体102aでは、幅広部W2は、幅方向の両側において三角形状に凸になっており、幅狭部N2は、幅方向の両側において三角形状凹になっている。ここで正確には、幅広部W2とは、幅広部W2および幅狭部N2を合わせた全体の平均の幅よりも幅が広い部分であり、幅狭部Nとは、幅広部W2および幅狭部N2を合わせた全体の平均の幅よりも幅が狭い部分である。幅広部W2におけるもっとも幅の広い部分から、幅狭部N2にお
けるもっとも幅の狭い部分に向かって連続的に幅が変わっているため、共振周波数が分散されて特定の周波数での共振の程度を低くできる。また。ヘッド本体102aの長手方向にそって共振周波が連続的に変化するので、共振周波数の差により生じるおそれのある吐出特性の変動も連続的になり、ヘッド本体102a内の吐出特性のばらつきを目立ち難くできる。