以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態について説明する。各実施形態は、個々に独立したものではなく、過剰説明をするまでもなく、当業者をすれば、適宜、組み合わせることが可能であり、この組み合わせによる相乗効果も把握可能である。実施形態間の重複説明は、原則的に省略する。
<第1実施形態>
図1乃至図4を参照して第1実施形態について説明する。図1は、ベース基材の概略的な断面図である。図2は、ベース基材上にビルドアップ層を積層した状態を示す概略的な工程図である。図3は、ベース基材上にビルドアップ層を積層した後、ベース基材に含まれる樹脂層と板状キャリアの固着部をダイシングにより除去することを示す概略的な工程図である。図4は、多層プリント配線基板と板状キャリアを剥離する工程を模式的に示す工程図である。
図1に示すようにベース基材100は、所定厚の金属製の板状キャリア10、板状キャリア10の上面(主面)上に積層した剥離剤層20、剥離剤層20を介して板状キャリア10の上面に積層した樹脂層の一例であるプリプレグ30を備え、板状キャリア10、剥離剤層20、及びプリプレグ30がこの順に積層した積層体である。なお、必ずしも板状キャリア10の上面の全面に剥離剤層20を成膜する必要はない。板状キャリア10やプリプレグ30の上面視形状は矩形に限らず、円形等の他の形状であっても構わない。プリプレグ30は、典型的には、多層プリント配線基板の最下層を構成するべき層である。換言すれば、プリプレグ30は、ビルドアップ層110を構成する絶縁層40に等しい。この点は、後述の説明からも明らかである。
本実施形態においては、図1に示すように、プリプレグ30は、剥離剤層20には直接接触するが板状キャリア10には直接接触しない主部31を含む。プリプレグ30は、更に、剥離剤層20には直接接触しないが、板状キャリア10に直接接触する残部32を含む。プリプレグ30がその残部32において板状キャリア10に直接接触し、これによりプリプレグ30と板状キャリア10の固着(直接結合と呼んでも良く、また該部分を固着部と呼んでも良い)が達成される。プリプレグ30の主部31は、剥離剤層20を介して板状キャリア10上に積層される。プリプレグ30の残部32は、剥離剤層20を介して板状キャリア10上に積層されず、板状キャリア10に対して直接接触する。図示の形態においては、プリプレグ30の残部32は、板状キャリア10の外周に沿って板状キャリア10の側面に直接接触する。プリプレグ30の残部32がプリプレグ30の一部分であり、またプリプレグ30の外周部分であることは図示から直ちに理解できるだろう。また、板状キャリア10が、一対の主面として上下面を有し、またこの上下面を接続する側面を有することは図示から直ちに理解できるだろう。
上述の態様、すなわちプリプレグ30と板状キャリア10が部分的に直接接触してプリプレグ30と板状キャリア10が固着する態様によれば、樹脂製のプリプレグ30と金属製の板状キャリア10が比較的強固に結合するため、外力が作用するとしても板状キャリア10とプリプレグ30間の位置ずれが抑制され、それらの剥離が抑制される。これにより、剥離剤層20の介在により金属製の板状キャリア10とプリプレグ30の剥離可能性を確保しつつ、プリプレグ30が金属製の板状キャリア10に部分的に直接接触して両者の固着が確保されることで意図に反してプリプレグ30と板状キャリア10が剥離することを回避若しくは少なくとも低減することができる。
かかる構成のベース基材100を採用する場合、ベース基材100上にビルドアップ層を積層する前若しくはその後にプリプレグ30と板状キャリア10の比較的強固な固着を除去若しくは低減し、これにより初めてプリプレグ30と板状キャリア10の剥離を実行することが可能になる。当業者は、このような手間を要求するベース基材100の構成は採用し難いものと考えるかもしれない。しかしながら、プリプレグ30と板状キャリア10の比較的強固な結合を除去若しくは低減する方法は、一般的な半導体プロセス技術(例えば、ダイシング、加熱による軟化等)を活用すれば達成可能であり、ベース基材100の購入者側に受け入れられる余地がある。ベース基材100の購入者としても工程数の増加をしても、各工程のコスト減のための自由度が得られ、全体としての歩留まりの向上が期待でき、場合によっては販売製品のコスト低減を図ることも促進できるかもしれない。
ベース基材100の構成層の積層順番に関しては任意であるが、はじめに板状キャリア10を用意した後、板状キャリア10の上面(主面)上に剥離剤層20を積層し、次に、剥離剤層20を介してプリプレグ30を積層することが望ましい。図示の形態では、板状キャリア10よりも若干外形が大きいプリプレグ30を用意する。そして、剥離剤層20を介して板状キャリア10上にプリプレグ30を熱圧着し、これと同時に、プリプレグ30の外周部が加熱変形され、板状キャリア10の側面に直接接触する。これとは異なり、プリプレグ30の下面(主面)に剥離剤層20を積層し、プリプレグ30と剥離剤層20の積層体を板状キャリア10上に積層し、その後、上述と同様に熱圧着処理によりプリプレグ30の外周部を板状キャリア10の側面に直接接触させても良い。いずれにしても好適な形態においては板状キャリア10よりも外形が大きいプリプレグ30を用い、熱圧着の活用により図示の如くプリプレグ30の外周部と板状キャリア10の側面の間の密着を確保する。剥離剤層20は、通常のコーティング技術を活用してプリプレグ30又は板状キャリア10上に成膜可能である。板状キャリア10若しくはプリプレグ30の厚みは、任意の公知の手段、方法により調整可能である。
図2及び図3に示すように、ベース基材100のプリプレグ30上には、1以上の絶縁層40と1以上の配線層50を含むビルドアップ層110が積層される。ビルドアップ層110は、1層の絶縁層40と1層の配線層50の積層体であり、図2においては、プリプレグ30も含めて2層構成のビルドアップ層110が図示されている。ビルドアップ層110の絶縁層40は、好適には樹脂層から成り、より好適には熱硬化性樹脂を含有するプリプレグから成る。ビルドアップ層110の配線層50は、好適にはパターニングされた若しくはパターニングされていない金属層、好適には金属箔若しくはメッキ金属層である。ビルドアップ層110は、絶縁層40と配線層50を順に繰り返し積層することにより形成される。ベース基材100上にビルドアップ層110を積層した後、ベース基材100からビルドアップ層110を分離し、これにより、ビルドアップ層110を好適に薄型の多層プリント配線基板として得ることができる。
このようにして製造される多層プリント配線基板においては、ビルドアップ層110の積層に用いられたベース基材100が含まれない。このような意味において本実施形態に係る多層プリント配線基板が「薄型」構成であると言える。「薄型」であるとは、例えば多層プリント配線基板の厚みが400μm以下、好ましくは200μm以下、より好ましくは100μm以下であることを言う。ただし、多層プリント配線基板の機能上、配線層の層数が極端に多い場合(例えば10層以上)、又は100μmよりも厚い絶縁層又は配線層が必要とされる場合には多層プリント配線基板の厚みが400μmを超える場合があってもよい。
ビルドアップ層の積層工程においてはベース基材100自体も加熱され、若しくは物理的若しくは化学的に処置され、場合によっては、薬液に浸される。このような工程を経た後においても図4に模式的に示す多層プリント配線基板、端的には多層プリント配線基板の最下層のプリプレグ30と板状キャリア10間の剥離性が確保される。好適には、剥離剤層20が板状キャリア10側に残存するが、必ずしもこの限りではない。
絶縁層40と配線層50の構成材料や層厚は任意であり、1つの配線層50が、1以上の導電層の積層から構成されても良く、1つの絶縁層40が、1以上の絶縁層の積層から構成されても良い。配線層50は、例えば、1以上の金属箔から構成される。絶縁層40は、1以上の樹脂層から構成され、好適には熱硬化性樹脂層である。配線層50は、必ずしもパターニングされている必要はなく、また、必ずしも他の配線層と電気的に接続されていなくても良い。フローティングの配線層50を設けることは、配線層間に生じる静電容量の制御や多層プリント配線基板の機械的な強度等を調整する際には有効になる場合がある。
ビルドアップ層110の具体的な構成は任意である。例えば、ビルドアップ層110は、上述のように1以上の絶縁層40と1以上の配線層50を含む。例えば、ビルドアップ層110に含まれる1以上の配線層50が、上述のようにパターニングされた若しくはパターニングされていない金属箔である。例えば、ビルドアップ層110に含まれる1以上の絶縁層40が、上述のようにプリプレグである。例えば、ビルドアップ層110が、片面あるいは両面金属張積層板を含む。
板状キャリア10は、金属製、好適には銅又は銅合金製の平板であり、好適には、金属箔である。板状キャリア10は、その大きさに依存して多少の可撓性を具備しても良いが、支持基板としての機能を確保できる程度の剛性を具備するものであっても良い。板状キャリア10は、典型的には、5μm以上、より好適には10μm以上、30μm以上、35μm以上、50μm以上、65μm以上、70μm以上、80μm以上、100μm以上の厚みを有する金属箔を用いることができる。また、板状キャリア10は典型的には1600μm以下、より好適には1500μm以下、1350μm以下、1000μm以下、800μm以下、500μm以下、400μm以下、300μm以下、105μm以下の厚みを有する金属箔を用いることができる。また、板状キャリア10は、好適には銅箔、又は銅合金箔を使用することができる。
板状キャリア10は、一例としては、銅材の圧延により製造された平板であっても良く、銅材が多層に積層されて成る平板であっても良く、この場合、この平板が1600μm以上の厚みを有しても良い。電解により得た銅箔等の銅材を板状キャリア10に活用しても良い。板状キャリア10の構成材料としては銅合金を活用しても構わない。銅合金を活用することにより、板状キャリア10の硬さを高めることができる。銅合金としては、Ni、Si、Zn、Sn、Ti、P、Cr、B、Ag、Mg、Fe、V、Au、Pd、Co、Mn、ベリリウムやカドミウムの元素群から選ばれる一種以上の元素を合計で0質量%以上〜80質量%以下添加した銅合金が例示できる。また、板状キャリア10の材料としては金属であれば特に制限はなく、例えば、銅、金、銀、鉄、ニッケル、アルミニウム、クロム、チタン、亜鉛、マグネシウム等が挙げられる。銅合金、鉄合金等、これらを使用した合金でもよい。
銅としては、典型的には、JIS H0500に規定されるリン脱酸銅、無酸素銅及びタフピッチ銅などの99.90質量%以上の純度の銅が挙げられる。Sn、Ag、Au、Co、Cr、Fe、In、Ni、P、Si、Te、Ti、ZnおよびZrの中の一種以上を合計で0.001〜4.0質量%含有する銅又は銅合金とすることもできる。
銅合金としては、更に、チタン銅、リン青銅、コルソン合金、丹銅、黄銅、洋白等が挙げられる。
チタン銅は典型的には、Ti:0.5〜5.0質量%を含有し、残部が銅及び不可避的不純物からなる組成を有する。チタン銅は更に、Fe、Co、V、Nb、Mo、B、Ni、P、Zr、Mn、Zn、Si、Mg及びCrの中の1種類以上を合計で2.0質量%以下含有しても良い。
リン青銅は典型的には、リン青銅とは銅を主成分としてSn及びこれよりも少ない質量のPを含有する銅合金のことを指す。一例として、りん青銅はSnを3.5〜11質量%、Pを0.03〜0.35質量%含有し、残部銅及び不可避的不純物からなる組成を有する。リン青銅は、Ni、Zn等の元素を合計で1.0質量%以下含有しても良い。
コルソン合金は典型的にはSiと化合物を形成する元素(例えば、Ni、Co及びCrの何れか一種以上)が添加され、母相中に第二相粒子として析出する銅合金のことをいう。一例として、コルソン合金はNiを1.0〜4.0質量%、Siを0.2〜1.3質量%含有し、残部銅及び不可避的不純物から構成される組成を有する。別の一例として、コルソン合金はNiを1.0〜4.0質量%、Siを0.2〜1.3質量%、Crを0.03〜0.5質量%含有し、残部銅及び不可避的不純物から構成される組成を有する。更に別の一例として、コルソン合金はNiを1.0〜4.0質量%、Siを0.2〜1.3質量%、Coを0.5〜2.5質量%含有し、残部銅及び不可避的不純物から構成される組成を有する。更に別の一例として、コルソン合金はNiを1.0〜4.0質量%、Siを0.2〜1.3質量%、Coを0.5〜2.5質量%、Crを0.03〜0.5質量%含有し、残部銅及び不可避的不純物から構成される組成を有する。更に別の一例として、コルソン合金はSiを0.2〜1.3質量%、Coを0.5〜2.5質量%含有し、残部銅及び不可避的不純物から構成される組成を有する。コルソン合金には随意にその他の元素(例えば、Mg、Sn、B、Ti、Mn、Ag、P、Zn、As、Sb、Be、Zr、Al及びFe)が添加されてもよい。これらその他の元素は総計で2.0質量%程度まで添加するのが一般的である。例えば、更に別の一例として、コルソン合金はNiを1.0〜4.0質量%、Siを0.2〜1.3質量%、Snを0.01〜2.0質量%、Znを0.01〜2.0質量%含有し、残部銅及び不可避的不純物から構成される組成を有する。
黄銅とは、銅と亜鉛との合金で、特に亜鉛を20質量%以上含有する銅合金のことをいう。亜鉛の上限は特には限定されないが60質量%以下、好ましくは45質量%以下、あるいは40質量%以下である。
丹銅とは、銅と亜鉛との合金であり亜鉛を1〜20質量%、より好ましくは亜鉛を1〜10質量%含有する銅合金のことをいう。また、丹銅は錫を0.1〜1.0質量%含んでも良い。
洋白とは銅を主成分として、銅を60質量%から75質量%、ニッケルを8.5質量%から19.5質量%、亜鉛を10質量%から30質量%含有する銅合金のことをいう。
アルミニウム及びアルミニウム合金としては、例えばAlを99質量%以上含むものを使用することができる。具体的には、JIS H 4000に記載の合金番号1085、1080、1070、1050、1100、1200、1N00、1N30に代表される、Al:99.00質量%以上のアルミニウム又はその合金等を用いることができる。
ニッケル及びニッケル合金としては、例えばNiを99質量%以上含むものを使用することができる。具体的には、JIS H4551に記載の合金番号NW2200、NW2201に代表される、Ni:99.0質量%以上のニッケル又はその合金等を用いることができる。
鉄合金としては、例えばステンレス、軟鋼、鉄ニッケル合金等を用いることができる。ステンレスは、SUS301、SUS 304、SUS310、SUS 316、SUS 430、SUS 631(いずれもJIS規格)などを用いることができる。軟鋼は、炭素が0.15質量%以下の軟鋼を用いることができ、JIS G3141に記載の軟鋼等を用いることができる。鉄ニッケル合金は、Niを35〜85質量%含み、残部がFe及び不可避不純物からなり、具体的には、JIS C2531に記載の鉄ニッケル合金を用いることができる。また、板状キャリアにはアルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ニッケル合金、鉄、鉄合金、ステンレスなどの公知の金属も用いることができる。
板状キャリア10のビッカース硬さ(HV)は、典型的には30〜100(F/N)/(d/mm)2であり、好適には50〜80(F/N)/(d/mm)2である。板状キャリア10として銅又は銅合金製の平板の十分な硬さを確保することが望ましい。
板状キャリア10に表面処理を施しても構わない。例えば、耐熱性付与を目的とした金属めっき(Niめっき、Ni−Zn合金めっき、Cu−Ni合金めっき、Cu−Zn合金めっき、Znめっき、Cu−Ni−Zn合金めっき、Co−Ni合金めっきなど)、防錆性や耐変色性を付与するためのクロメート処理(クロメート処理液中にZn、P、Ni、Mo、Zr、Ti等の合金元素を1種以上含有させる場合を含む)、表面粗度調整のための粗化処理(例:銅電着粒やCu−Ni−Co合金めっき、Cu−Ni−P合金めっき、Cu−Co合金めっき、Cu−Ni合金めっき、Cu−Co合金めっき、Cu−As合金めっき、Cu−As−W合金めっき等の銅合金めっきによるもの)が挙げられる。粗化処理が板状キャリア10と剥離剤層20の剥離強度に影響を与えることはもちろん、クロメート処理も大きな影響を与える。クロメート処理は防錆性や耐変色性の観点から重要であるが、剥離強度を有意に上昇させる傾向が見られるので、剥離強度の調整手段としても意義がある。
例えば、銅材の光沢面に対して下記の条件によるニッケル−亜鉛(Ni−Zn)合金めっき処理及びクロメート(Cr−Znクロメート)処理を施しても良い。
(ニッケル−亜鉛合金めっき)
Ni濃度 17g/L(NiSO4として添加)
Zn濃度 4g/L(ZnSO4として添加)
pH 3.1
液温 40℃
電流密度 0.1〜10A/dm2
めっき時間 0.1〜10秒
(クロメート処理)
Cr濃度 1.4g/L(CrO3又はK2CrO7として添加)
Zn濃度 0.01〜1.0g/L(ZnSO4として添加)
Na2SO4濃度 10g/L
pH 4.8
液温 55℃
電流密度 0.1〜10A/dm2
めっき時間 0.1〜10秒
剥離剤層20は、板状キャリア10に対して相対的に強く固着し、プリプレグ30に対して相対的に弱く固着する任意の材料から選択すると良い。上述のようにビルドアップ層110の積層工程においてベース基材100が加熱され、化学的又は物理的に処理される場合がある。このような観点から、剥離剤層20としても耐熱性及び耐薬品性を有し、容易に変質したり薬品により浸食を受けたりしないことが望ましい。剥離剤層20は、スピンコーティング、ディップコーティング、スプレーコーティング、印刷等の任意の方法にて板状キャリア10上に形成することができるが、特にこの限りではない。
剥離剤層20が形成される板状キャリア10の上面は、粗面(M面)又は光沢面(S面)のどちらでも構わないが、粗面よりも光沢面とすることが望ましい。板状キャリアとして圧延金属箔、より好適には圧延銅箔を用いると両面が光沢面となるので、板状キャリアの両面に剥離剤層20を形成する場合にはより望ましい。これにより、剥離剤層20が積層される板状キャリア10の上面の粗度のバラつきを抑制してベース基材100の品質の安定化を図ることができる。剥離剤層20の層厚は、典型的には0.001〜10μmであり、好適には0.001〜0.1μmである。
(1)シラン化合物
剥離剤層20の構成材料は、本願に開示、若しくは現時点において入手可能なものに限定されるべきものではないが、例えば、次の化学式に示すシラン化合物、その加水分解生成物、該加水分解生成物の縮合体を単独で又は複数組み合わせを剥離剤層20に活用すると良い。
(式中、R
1はアルコキシ基又はハロゲン原子であり、R
2はアルキル基、シクロアルキル基及びアリール基よりなる群から選択される炭化水素基であるか、一つ以上の水素原子がハロゲン原子で置換されたこれら何れかの炭化水素基であり、R
3及びR
4はそれぞれ独立にハロゲン原子、又はアルコキシ基、又はアルキル基、シクロアルキル基及びアリール基よりなる群から選択される炭化水素基であるか、一つ以上の水素原子がハロゲン原子で置換されたこれら何れかの炭化水素基である。)
当該シラン化合物はアルコキシ基を少なくとも一つ有していることが必要である。アルコキシ基が存在せずに、アルキル基、シクロアルキル基及びアリール基よりなる群から選択される炭化水素基であるか、一つ以上の水素原子がハロゲン原子で置換されたこれら何れかの炭化水素基のみで置換基が構成される場合、剥離剤層20と板状キャリア10表面の密着性が低下し過ぎる傾向がある。また、当該シラン化合物はアルキル基、シクロアルキル基及びアリール基よりなる群から選択される炭化水素基であるか、一つ以上の水素原子がハロゲン原子で置換されたこれら何れかの炭化水素基を少なくとも一つ有していることが必要である。当該炭化水素基が存在しない場合、剥離剤層20と板状キャリア10表面の密着性が上昇する傾向があるからである。なお、本願発明に係るアルコキシ基には一つ以上の水素原子がハロゲン原子に置換されたアルコキシ基も含まれるものとする。
板状キャリア10とプリプレグ30(若しくは、プリプレグ30を含むビルドアップ層110)間の剥離強度を後述の好適な範囲に調節する上では、当該シラン化合物はアルコキシ基を三つ、上記炭化水素基(一つ以上の水素原子がハロゲン原子で置換された炭化水素基を含む)を一つ有していることが好ましい。これを上の式でいえば、R3及びR4の両方がアルコキシ基ということになる。
アルコキシ基としては、限定的ではないが、メトキシ基、エトキシ基、n−又はiso−プロポキシ基、n−、iso−又はtert−ブトキシ基、n−、iso−又はneo−ペントキシ基、n−ヘキソキシ基、シクロヘキシソキシ基、n−ヘプトキシ基、及びn−オクトキシ基等の直鎖状、分岐状、又は環状の炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10、より好ましくは炭素数1〜5のアルコキシ基が挙げられる。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。
アルキル基としては、限定的ではないが、メチル基、エチル基、n−又はiso−プロピル基、n−、iso−又はtert−ブチル基、n−、iso−又はneo−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基等の直鎖状又は分岐状の炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10、より好ましくは炭素数1〜5のアルキル基が挙げられる。
シクロアルキル基としては、限定的ではないが、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロへプチル基、シクロオクチル基等の炭素数3〜10、好ましくは炭素数5〜7のシクロアルキル基が挙げられる。
アリール基としては、フェニル基、アルキル基で置換されたフェニル基(例:トリル基、キシリル基)、1−又は2−ナフチル基、アントリル基等の炭素数6〜20、好ましくは6〜14のアリール基が挙げられる。
これらの炭化水素基は一つ以上の水素原子がハロゲン原子で置換されてもよく、例えば、フッ素原子、塩素原子、又は臭素原子で置換されることができる。
好ましいシラン化合物の例としては、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、n−又はiso−プロピルトリメトキシシラン、n−、iso−又はtert−ブチルトリメトキシシラン、n−、iso−又はneo−ペンチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン;アルキル置換フェニルトリメトキシシラン(例えば、p−(メチル)フェニルトリメトキシシラン)、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−又はiso−プロピルトリエトキシシラン、n−、iso−又はtert−ブチルトリエトキシシラン、ペンチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、アルキル置換フェニルトリエトキシシラン(例えば、p−(メチル)フェニルトリエトキシシラン)、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン、及びトリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、トリメチルフルオロシラン、ジメチルジブロモシラン、ジフェニルジブロモシラン、これらの加水分解生成物、及びこれらの加水分解生成物の縮合体などが挙げられる。これらの中でも、入手の容易性の観点から、プロピルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシランが好ましい。
(2)分子内に2つ以下のメルカプト基を有する化合物
上述のシラン化合物に代えて、分子内に2つ以下のメルカプト基を有する化合物を剥離剤層20に活用しても良い。この例としては、チオール、ジチオール、チオカルボン酸又はその塩、ジチオカルボン酸又はその塩、チオスルホン酸又はその塩、及びジチオスルホン酸又はその塩が挙げられ、これらの中から選択される少なくとも一種を用いることができる。
チオールは、分子内に一つのメルカプト基を有するものであり、例えばR−SHで表される。ここで、Rは、水酸基又はアミノ基を含んでもよい、脂肪族系又は芳香族系炭化水素基又は複素環基を表す。
ジチオールは、分子内に二つのメルカプト基を有するものであり、例えばR(SH)2で表される。Rは、水酸基又はアミノ基を含んでもよい、脂肪族系又は芳香族系炭化水素基又は複素環基を表す。また、二つのメルカプト基は、それぞれ同じ炭素に結合してもよいし、互いに別々の炭素又は窒素に結合してもよい。
チオカルボン酸は、有機カルボン酸の水酸基がメルカプト基に置換されたものであり、例えばR−CO−SHで表される。Rは、水酸基又はアミノ基を含んでもよい、脂肪族系又は芳香族系炭化水素基又は複素環基を表す。また、チオカルボン酸は、塩の形態でも使用することが可能である。なお、チオカルボン酸基を、二つ有する化合物も使用可能である。
ジチオカルボン酸は、有機カルボン酸のカルボキシ基中の2つの酸素原子が硫黄原子に置換されたものであり、例えばR−(CS)−SHで表される。Rは、水酸基又はアミノ基を含んでもよい、脂肪族系又は芳香族系炭化水素基又は複素環基を表す。また、ジチオカルボン酸は、塩の形態でも使用することが可能である。なお、ジチオカルボン酸基を、二つ有する化合物も使用可能である。
チオスルホン酸は、有機スルホン酸の水酸基がメルカプト基に置換されたものであり、例えばR(SO2)−SHで表される。Rは、水酸基又はアミノ基を含んでもよい、脂肪族系又は芳香族系炭化水素基又は複素環基を表す。また、チオスルホン酸は、塩の形態でも使用することが可能である。
ジチオスルホン酸は、有機ジスルホン酸の二つの水酸基がそれぞれメルカプト基に置換されたものであり、例えばR−((SO2)−SH)2で表される。Rは、水酸基又はアミノ基を含んでもよい、脂肪族系又は芳香族系炭化水素基又は複素環基を表す。また、二つのチオスルホン酸基は、それぞれ同じ炭素に結合してもよいし、互いに別々の炭素に結合してもよい。また、ジチオスルホン酸は、塩の形態でも使用することが可能である。
ここで、Rとして好適な脂肪族系炭化水素基としては、アルキル基、シクロアルキル基が挙げられ、これら炭化水素基は水酸基とアミノ基のどちらか又は両方を含んでいてもよい。
また、アルキル基としては、限定的ではないが、メチル基、エチル基、n−又はiso−プロピル基、n−、iso−又はtert−ブチル基、n−、iso−又はneo−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基等の直鎖状又は分岐状の炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10、より好ましくは炭素数1〜5のアルキル基が挙げられる。
また、シクロアルキル基としては、限定的ではないが、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロへプチル基、シクロオクチル基等の炭素数3〜10、好ましくは炭素数5〜7のシクロアルキル基が挙げられる。
また、Rとして好適な芳香族炭化水素基としては、フェニル基、アルキル基で置換されたフェニル基(例:トリル基、キシリル基)、1−又は2−ナフチル基、アントリル基等の炭素数6〜20、好ましくは6〜14のアリール基が挙げられ、これら炭化水素基は水酸基とアミノ基のどちらか又は両方を含んでいてもよい。
また、Rとして好適な複素環基としては、イミダゾール、トリアゾール、テトラゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾトリアゾール、チアゾール、ベンゾチアゾールが挙げられ、水酸基とアミノ基のどちらか又は両方を含んでいてもよい。
分子内に2つ以下のメルカプト基を有する化合物の好ましい例としては、3−メルカプト−1,2プロパンジオール、2−メルカプトエタノール、1,2−エタンジチオール、6−メルカプト−1−ヘキサノール、1−オクタンチオール、1−ドデカンチオール、10−ヒドロキシ−1−ドデカンチオール、10−カルボキシ−1−ドデカンチオール、10−アミノ−1−ドデカンチオール、1−ドデカンチオールスルホン酸ナトリウム、チオフェノール、チオ安息香酸、4−アミノ−チオフェノール、p−トルエンチオール、2,4−ジメチルベンゼンチオール、3−メルカプト−1,2,4トリアゾール、2−メルカプト−ベンゾチアゾールが挙げられる。これらの中でも水溶性と廃棄物処理上の観点から、3−メルカプト−1,2プロパンジオールが好ましい。
(3)金属アルコキシド
次式に示す構造を有するアルミネート化合物、チタネート化合物、ジルコネート化合物、又はその加水分解生成物質、又は該加水分解生成物質の縮合体(以下、単に金属アルコキシドと記述する)を単独で又は複数混合して使用して、板状キャリア10とプリプレグ30を貼り合わせることで、適度に密着性が低下し、剥離強度を後述するような範囲に調節できる。
式中、R1はアルコキシ基又はハロゲン原子であり、R2はアルキル基、シクロアルキル基及びアリール基よりなる群から選択される炭化水素基であるか、一つ以上の水素原子がハロゲン原子で置換されたこれら何れかの炭化水素基であり、MはAl、Ti、Zrのうちいずれか一つ、nは0又は1又は2、mは1以上Mの価数以下の整数であり、R1の少なくとも一つはアルコキシ基である。なお、m+nはMの価数すなわちAlの場合3、Ti、Zrの場合4である。
当該金属アルコキシドはアルコキシ基を少なくとも一つ有していることが必要である。アルコキシ基が存在せずに、アルキル基、シクロアルキル基及びアリール基よりなる群から選択される炭化水素基であるか、一つ以上の水素原子がハロゲン原子で置換されたこれら何れかの炭化水素基のみで置換基が構成される場合、板状キャリアと金属箔表面の密着性が低下し過ぎる傾向がある。また、当該金属アルコキシドはアルキル基、シクロアルキル基及びアリール基よりなる群から選択される炭化水素基であるか、一つ以上の水素原子がハロゲン原子で置換されたこれら何れかの炭化水素基を0〜2個有していることが必要である。当該炭化水素基を3つ以上有する場合、板状キャリアと金属箔表面の密着性が低下し過ぎる傾向があるからである。なお、本願発明に係るアルコキシ基には一つ以上の水素原子がハロゲン原子に置換されたアルコキシ基も含まれるものとする。板状キャリア10とプリプレグ30(若しくは、プリプレグ30を含むビルドアップ層110)の剥離強度を後述の範囲に調節する上では、当該金属アルコキシドはアルコキシ基を二つ以上、上記炭化水素基(一つ以上の水素原子がハロゲン原子で置換された炭化水素基を含む)を一つか二つ有していることが好ましい。
また、アルキル基としては、限定的ではないが、メチル基、エチル基、n−又はiso−プロピル基、n−、iso−又はtert−ブチル基、n−、iso−又はneo−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基等の直鎖状又は分岐状の炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10、より好ましくは炭素数1〜5のアルキル基が挙げられる。
また、シクロアルキル基としては、限定的ではないが、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロへプチル基、シクロオクチル基等の炭素数3〜10、好ましくは炭素数5〜7のシクロアルキル基が挙げられる。
また、R2として好適な芳香族炭化水素基としては、フェニル基、アルキル基で置換されたフェニル基(例:トリル基、キシリル基)、1−又は2−ナフチル基、アントリル基等の炭素数6〜20、好ましくは6〜14のアリール基が挙げられ、これら炭化水素基は水酸基とアミノ基のどちらか又は両方を含んでいてもよい。
これらの炭化水素基は一つ以上の水素原子がハロゲン原子で置換されてもよく、例えば、フッ素原子、塩素原子、又は臭素原子で置換されることができる。
好ましいアルミネート化合物の例としては、トリメトキシアルミニウム、メチルジメトキシアルミニウム、エチルジメトキシアルミニウム、n−又はiso−プロピルジメトキシアルミニウム、n−、iso−又はtert−ブチルジメトキシアルミニウム、n−、iso−又はneo−ペンチルジメトキシアルミニウム、ヘキシルジメトキシアルミニウム、オクチルジメトキシアルミニウム、デシルジメトキシアルミニウム、フェニルジメトキシアルミニウム;アルキル置換フェニルジメトキシアルミニウム(例えば、p−(メチル)フェニルジメトキシアルミニウム)、ジメチルメトキシアルミニウム、トリエトキシアルミニウム、メチルジエトキシアルミニウム、エチルジエトキシアルミニウム、n−又はiso−プロピルジエトキシアルミニウム、n−、iso−又はtert−ブチルジエトキシアルミニウム、ペンチルジエトキシアルミニウム、ヘキシルジエトキシアルミニウム、オクチルジエトキシアルミニウム、デシルジエトキシアルミニウム、フェニルジエトキシアルミニウム、アルキル置換フェニルジエトキシアルミニウム(例えば、p−(メチル)フェニルジエトキシアルミニウム)、ジメチルエトキシアルミニウム、トリイソプロポキシアルミニウム、メチルジイソプロポキシアルミニウム、エチルジイソプロポキシアルミニウム、n−又はiso−プロピルジエトキシアルミニウム、n−、iso−又はtert−ブチルジイソプロポキシアルミニウム、ペンチルジイソプロポキシアルミニウム、ヘキシルジイソプロポキシアルミニウム、オクチルジイソプロポキシアルミニウム、デシルジイソプロポキシアルミニウム、フェニルジイソプロポキシアルミニウム、アルキル置換フェニルジイソプロポキシアルミニウム(例えば、p−(メチル)フェニルジイソプロポキシアルミニウム)、ジメチルイソプロポキシアルミニウム、(3,3,3−トリフルオロプロピル)ジメトキシアルミニウム、及びトリデカフルオロオクチルジエトキシアルミニウム、メチルジクロロアルミニウム、ジメチルクロロアルミニウム、ジメチルクロロアルミニウム、フェニルジクロロアルミニウム、ジメチルフルオロアルミニウム、ジメチルブロモアルミニウム、ジフェニルブロモアルミニウム、これらの加水分解生成物、及びこれらの加水分解生成物の縮合体などが挙げられる。これらの中でも、入手の容易性の観点から、トリメトキシアルミニウム、トリエトキシアルミニウム、トリイソプロポキシアルミニウム、が好ましい。
好ましいチタネート化合物の例としては、テトラメトキシチタン、メチルトリメトキシチタン、エチルトリメトキシチタン、n−又はiso−プロピルトリメトキシチタン、n−、iso−又はtert−ブチルトリメトキシチタン、n−、iso−又はneo−ペンチルトリメトキシチタン、ヘキシルトリメトキシチタン、オクチルトリメトキシチタン、デシルトリメトキシチタン、フェニルトリメトキシチタン;アルキル置換フェニルトリメトキシチタン(例えば、p−(メチル)フェニルトリメトキシチタン)、ジメチルジメトキシチタン、テトラエトキシチタン、メチルトリエトキシチタン、エチルトリエトキシチタン、n−又はiso−プロピルトリエトキシチタン、n−、iso−又はtert−ブチルトリエトキシチタン、ペンチルトリエトキシチタン、ヘキシルトリエトキシチタン、オクチルトリエトキシチタン、デシルトリエトキシチタン、フェニルトリエトキシチタン、アルキル置換フェニルトリエトキシチタン(例えば、p−(メチル)フェニルトリエトキシチタン)、ジメチルジエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、メチルトリイソプロポキシチタン、エチルトリイソプロポキシチタン、n−又はiso−プロピルトリエトキシチタン、n−、iso−又はtert−ブチルトリイソプロポキシチタン、ペンチルトリイソプロポキシチタン、ヘキシルトリイソプロポキシチタン、オクチルトリイソプロポキシチタン、デシルトリイソプロポキシチタン、フェニルトリイソプロポキシチタン、アルキル置換フェニルトリイソプロポキシチタン(例えば、p−(メチル)フェニルトリイソプロポキシチタン)、ジメチルジイソプロポキシチタン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシチタン、及びトリデカフルオロオクチルトリエトキシチタン、メチルトリクロロチタン、ジメチルジクロロチタン、トリメチルクロロチタン、フェニルトリクロロチタン、ジメチルジフルオロチタン、ジメチルジブロモチタン、ジフェニルジブロモチタン、これらの加水分解生成物、及びこれらの加水分解生成物の縮合体などが挙げられる。これらの中でも、入手の容易性の観点から、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、が好ましい。
好ましいジルコネート化合物の例としては、テトラメトキシジルコニウム、メチルトリメトキシジルコニウム、エチルトリメトキシジルコニウム、n−又はiso−プロピルトリメトキシジルコニウム、n−、iso−又はtert−ブチルトリメトキシジルコニウム、n−、iso−又はneo−ペンチルトリメトキシジルコニウム、ヘキシルトリメトキシジルコニウム、オクチルトリメトキシジルコニウム、デシルトリメトキシジルコニウム、フェニルトリメトキシジルコニウム;アルキル置換フェニルトリメトキシジルコニウム(例えば、p−(メチル)フェニルトリメトキシジルコニウム)、ジメチルジメトキシジルコニウム、テトラエトキシジルコニウム、メチルトリエトキシジルコニウム、エチルトリエトキシジルコニウム、n−又はiso−プロピルトリエトキシジルコニウム、n−、iso−又はtert−ブチルトリエトキシジルコニウム、ペンチルトリエトキシジルコニウム、ヘキシルトリエトキシジルコニウム、オクチルトリエトキシジルコニウム、デシルトリエトキシジルコニウム、フェニルトリエトキシジルコニウム、アルキル置換フェニルトリエトキシジルコニウム(例えば、p−(メチル)フェニルトリエトキシジルコニウム)、ジメチルジエトキシジルコニウム、テトライソプロポキシジルコニウム、メチルトリイソプロポキシジルコニウム、エチルトリイソプロポキシジルコニウム、n−又はiso−プロピルトリエトキシジルコニウム、n−、iso−又はtert−ブチルトリイソプロポキシジルコニウム、ペンチルトリイソプロポキシジルコニウム、ヘキシルトリイソプロポキシジルコニウム、オクチルトリイソプロポキシジルコニウム、デシルトリイソプロポキシジルコニウム、フェニルトリイソプロポキシジルコニウム、アルキル置換フェニルトリイソプロポキシジルコニウム(例えば、p−(メチル)フェニルトリイソプロポキシチタン)、ジメチルジイソプロポキシジルコニウム、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシジルコニウム、及びトリデカフルオロオクチルトリエトキシジルコニウム、メチルトリクロロジルコニウム、ジメチルジクロロジルコニウム、トリメチルクロロジルコニウム、フェニルトリクロロジルコニウム、ジメチルジフルオロジルコニウム、ジメチルジブロモジルコニウム、ジフェニルジブロモジルコニウム、これらの加水分解生成物、及びこれらの加水分解生成物の縮合体などが挙げられる。これらの中でも、入手の容易性の観点から、テトラメトキシジルコニウム、テトラエトキシジルコニウム、テトライソプロポキシジルコニウム、が好ましい。
ベース基材100は、板状キャリア10とプリプレグ30をホットプレスで密着させて製造可能である。例えば、板状キャリア10及び/又はプリプレグ30の貼り合わせ面に前記分子内に前記金属アルコキシドを塗工処理した上で、板状キャリア10に対してBステージの樹脂製のプリプレグ30をホットプレス積層することで製造可能である。
金属アルコキシドは水溶液の形態で使用することができる。水への溶解性を高めるためにメタノールやエタノールなどのアルコールを添加することもできる。アルコールの添加は特に疎水性の高い金属アルコキシドを使用する時に有効である。
金属アルコキシドの水溶液中の濃度は高い方が板状キャリア10とプリプレグ30(若しくは、プリプレグ30を含むビルドアップ層110)の剥離強度は低下する傾向にあり、金属アルコキシド濃度調整によって剥離強度を調整可能である。限定的ではないが、金属アルコキシドの水溶液中の濃度は0.001〜1.0mol/Lとすることができ、典型的には0.005〜0.2mol/Lとすることができる。
金属アルコキシドの水溶液のpHは特に制限はなく、酸性側でもアルカリ性側でも利用できる。例えば3.0〜10.0の範囲のpHで使用できる。特段のpH調整が不要であるという観点から中性付近である5.0〜9.0の範囲のpHとするのが好ましく、7.0〜9.0の範囲のpHとするのがより好ましい。
(4)樹脂塗膜からなる離型材
シリコーンと、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂及びフッ素樹脂から選択されるいずれか1つ又は複数の樹脂とで構成される樹脂塗膜を使用して、板状キャリア10とプリプレグ30を貼り合わせることで、適度に密着性が低下し、剥離強度を後述するような範囲に調節できる。
このような密着性を実現するための剥離強度の調節は、後述するようにシリコーンと、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂及びフッ素樹脂から選択されるいずれか1つ又は複数の樹脂とで構成される樹脂塗膜を使用することで行う。このような樹脂塗膜に後述するような所定条件の焼付け処理を行って、板状キャリアと金属箔との間に用いてホットプレスして貼り合わせることで、適度に密着性が低下し、剥離強度を後述の範囲に調節できるようになるからである。
エポキシ系樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、臭素化エポキシ樹脂、アミン型エポキシ樹脂、可撓性エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、臭素化フェノキシ樹脂等が挙げられる。
メラミン系樹脂としては、メチルエーテル化メラミン樹脂、ブチル化尿素メラミン樹脂、ブチル化メラミン樹脂、メチル化メラミン樹脂、ブチルアルコール変性メラミン樹脂等が挙げられる。また、メラミン系樹脂は、前記樹脂とブチル化尿素樹脂、ブチル化ベンゾグアナミン樹脂等との混合樹脂であってもよい。
なお、エポキシ系樹脂の数平均分子量は2000〜3000、メラミン系樹脂の数平均分子量は500〜1000であることが好ましい。このような数平均分子量を有することによって、樹脂の塗料化が可能になると共に、樹脂塗膜の接着強度を所定範囲に調整し易くなる。
また、フッ素樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル等が挙げられる。
シリコーンとしては、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン、変性ジメチルポリシロキサン、これらの混合物等が挙げられる。ここで、変性とは、例えば、エポキシ変性、アルキル変性、アミノ変性、カルボキシル変性、アルコール変性、フッ素変性、アルキルアラルキルポリエーテル変性、エポキシポリエーテル変性、ポリエーテル変性、アルキル高級アルコールエステル変性、ポリエステル変性、アシロキシアルキル変性、ハロゲン化アルキルアシロキシアルキル変性、ハロゲン化アルキル変性、アミノグリコール変性、メルカプト変性、水酸基含有ポリエステル変性等が挙げられる。
樹脂塗膜において、膜厚が小さすぎると、樹脂塗膜が薄膜すぎて形成が困難であるため、生産性が低下し易い。また、膜厚が一定の大きさを超えても、樹脂塗膜の剥離性のさらなる向上は見られず、樹脂塗膜の製造コストが高くなり易い。このような観点から、樹脂塗膜は、その膜厚が0.1〜10μmであることが好ましく、0.5〜5μmであることが更に好ましい。また、樹脂塗膜の膜厚は、後述する手順において、樹脂塗料を所定塗布量で塗布することによって達成される。
樹脂塗膜において、シリコーンは樹脂塗膜の剥離剤として機能する。そこで、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂の合計量がシリコーンに比べて多すぎると、板状キャリア10とプリプレグ30(若しくは、プリプレグ30を含むビルドアップ層110)との間で樹脂塗膜が付与する剥離強度が大きくなるため、樹脂塗膜の剥離性が低下し、人手で容易に剥がせなくなることがある。一方で、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂の合計量が少なすぎると、前述の剥離強度が小さくなるため、搬送時や加工時に剥離することがある。この観点から、シリコーン100質量部に対して、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂の合計が10〜1500質量部の量で含まれることが好ましく、更に好ましくは20〜800重量部の量で含まれることが好ましい。
また、フッ素樹脂は、シリコーンと同様、剥離剤として機能し、樹脂塗膜の耐熱性を向上させる効果がある。フッ素樹脂がシリコーンに比べて多すぎると、前述の剥離強度が小さくなるため、搬送時や加工時に剥離することがあるほか、後述する焼き付け工程に必要な温度が上がるため不経済となる。この観点から、フッ素樹脂は、シリコーン100質量部に対して、0〜50質量部であることが好ましく、更に好ましくは0〜40質量部であることが好ましい。
樹脂塗膜は、シリコーン、及びエポキシ樹脂及び/又はメラミン樹脂、及び必要に応じてフッ素樹脂に加えて、SiO2、MgO、Al2O3、BaSO4及びMg(OH)2から選択される1種以上の表面粗化粒子を更に含有していてもよい。樹脂塗膜が表面粗化粒子を含有することによって、樹脂塗膜の表面が凹凸となる。その凹凸によって、樹脂塗膜が塗布された板状キャリアあるいは金属箔の表面が凹凸となり、艶消し表面となる。表面粗化粒子の含有量は、樹脂塗膜が凹凸化されれば特に限定されないが、シリコーン100質量部に対して、1〜10質量部が好ましい。
表面粗化粒子の粒子径は、15nm〜4μmであることが好ましい。ここで、粒子径は、走査電子顕微鏡(SEM)写真等から測定した平均粒子径(最大粒子径と最小粒子径の平均値)を意味する。表面粗化粒子の粒子径が前記範囲であることによって、樹脂塗膜の表面の凹凸量が調整し易くなり、結果的に板状キャリアあるいは金属箔の表面の凹凸量が調整し易くなる。具体的には、板状キャリアあるいは金属箔の表面の凹凸量は、JIS規定の最大高さ粗さRyで4.0μm程度となる。
ここで、ベース基材100の製造方法について説明する。ベース基材100は、コーティング対象物(板状キャリア10及びプリプレグ30の少なくとも一方)の表面に、上述した樹脂塗膜を塗布する工程と、この塗布した樹脂塗膜を硬化させる焼付け工程とを有する手順を経て得られる。以下、各工程について説明する。
(塗布工程)
塗布工程は、コーティング対象物(板状キャリア10及びプリプレグ30の少なくとも一方)に、主剤としてのシリコーンと、硬化剤としてのエポキシ系樹脂、メラミン系樹脂と、必要に応じて剥離剤としてのフッ素樹脂とからなる樹脂塗料を塗布して樹脂塗膜を形成する工程である。樹脂塗料は、アルコール等の有機溶媒にエポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、フッ素樹脂及びシリコーンを溶解したものである。また、樹脂塗料における配合量(添加量)は、シリコーン100質量部に対して、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂の合計が10〜1500質量部であることが好ましい。また、フッ素樹脂は、シリコーン100質量部に対して、0〜50質量部であることが好ましい。
塗布工程における塗布方法としては、樹脂塗膜が形成できれば特に限定されるものではないが、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、カーテンフローコート法、静電塗装機を用いる方法等が用いられ、樹脂塗膜の均一性、及び、作業の簡便性からグラビアコート法が好ましい。また、塗布量としては、樹脂塗膜3が好ましい膜厚:0.5〜5μmとなるように、樹脂量として1.0〜2.0g/m2が好ましい。
グラビアコート法は、ロール表面に設けられた凹部(セル)に満たされた樹脂塗料をコーティング対象物に転写させることによって、コーティング対象物の表面に樹脂塗膜を形成させる方法である。具体的には、表面にセルが設けられた下側ロールの下部を樹脂塗料中に浸漬し、下側ロールの回転によってセル内に樹脂塗料を汲み上げる。そして、下側ロールと、下側ロールの上側に配置された上側ロールとの間にコーティング対象物を配置し、上側ロールでコーティング対象物を下側ロールに押し付けながら、下側ロール及び上側ロールを回転させることによって、コーティング対象物が搬送されると共に、セル内に汲み上げられた樹脂塗料がコーティング対象物の片面に転写(塗布)される。
また、コーティング対象物の搬入側に、下側ロールの表面に接触するようにドクターブレードを配置することによって、セル以外のロール表面に汲み上げられた過剰な樹脂塗料が取り除かれ、コーティング対象物の表面に所定量の樹脂塗料が塗布される。なお、セルの番手(大きさ及び深さ)が大きい場合、又は、樹脂塗料の粘度が高い場合には、コーティング対象物の片面に形成される樹脂塗膜が平滑になり難くなる。したがって、コーティング対象物の搬出側にスムージングロールを配置して、樹脂塗膜の平滑度を維持してもよい。
なお、コーティング対象物の両面に樹脂塗膜を形成させる場合には、コーティング対象物の片面に樹脂塗膜を形成させた後に、コーティング対象物を裏返して、再度、下側ロールと上側ロールとの間に配置する。そして、前記と同様に、下側ロールのセル内の樹脂塗料をコーティング対象物の裏面に転写(塗布)する。
(焼付け工程)
焼付け工程は、塗布工程で形成された樹脂塗膜に125〜320℃(焼付け温度)で0.5〜60秒間(焼付け時間)の焼付け処理を施す工程である。このように、所定配合量の樹脂塗料で形成された樹脂塗膜に所定条件の焼付け処理を施すことによって、樹脂塗膜により付与された物(例えば、板状キャリア10)と他方の物(例えば、プリプレグ30)との間の剥離強度が所定範囲に制御される。本発明において、焼付け温度はプリプレグ30の到達温度である。また、焼付け処理に使用される加熱手段としては、従来公知の装置を使用する。
焼き付けが不十分となる条件、例えば焼付け温度が125℃未満、又は、焼付け時間が0.5秒未満である場合には、樹脂塗膜が硬化不足となり、上記剥離強度が200gf/cmを超え、剥離性が低下する。また、焼き付けが過度な条件、例えば焼付け温度が320℃を超える場合には、樹脂塗膜が劣化して、上記剥離強度が200gf/cmを超え、剥離時の作業性が悪化する。あるいは、板状キャリアが高温によって変質することがある。また、焼付け時間が60秒を超える場合には、生産性が悪化する。
ベース基材100の製造方法においては、前記塗布工程の樹脂塗料が、主剤としてのシリコーンと、硬化剤としてのエポキシ樹脂、メラミン系樹脂と、剥離剤としてのフッ素樹脂と、SiO2、MgO、Al2O3、BaSO4及びMg(OH)2から選択される1種以上の表面粗化粒子とからなるものであってもよい。
具体的には、樹脂塗料は、前記したシリコーン添加樹脂溶液に表面粗化粒子を更に添加したものである。このような表面粗化粒子を樹脂塗料に更に添加することによって、樹脂塗膜の表面が凹凸となり、この凹凸によって板状キャリア10が凹凸となり、艶消し表面となる。そして、このような艶消し表面を有する板状キャリア10を得るためには、樹脂塗料における表面粗化粒子の配合量(添加量)が、シリコーン100質量部に対して、1〜10質量部であることが好ましい。また、表面粗化粒子の粒子径が15nm〜4μmであることが更に好ましい。
本発明に係る製造方法は、以上説明したとおりであるが、本発明を行うにあたり、前記各工程に悪影響を与えない範囲において、前記各工程の間あるいは前後に、他の工程を含めてもよい。例えば、塗布工程の前に板状キャリアの表面を洗浄する洗浄工程を行ってもよい。
プリプレグ30は、多層プリント配線基板の土台の層を構成する樹脂層の一例である。プリプレグ30は、任意の基材と任意の充填材料の複合体であり、典型的には、不織布、織物等の基材を合成樹脂等の充填材料に含侵させた状態で充填材料を液体から固体化して得られる。プリプレグ30は、高い絶縁性を有し、かつ所望の機械的強度を有する。プリプレグ30の構成材料である樹脂は、例示的には、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、天然ゴム、松脂等であるが、この限りではない。板状キャリア10上への実装前のプリプレグ30は、Bステージの状態にあるものが良く、これにより、十分な強度を確保することができる。
プリプレグ30は、高いガラス転移温度Tgを有することが望ましい。プリプレグ30のガラス転移温度Tgは、例えば、120〜320℃、好ましくは170〜240℃である。なお、ガラス転移温度Tgは、DSC(示差走査熱量測定法)により測定される値とする。
プリプレグ30は、板状キャリア10上の剥離剤層20が成膜された上面上にホットプレス処理等により熱圧着して積層固定される。ホットプレスの条件としては、圧力30〜40kg/cm2、プリプレグ30のガラス転移温度よりも高い温度でホットプレスすることが好ましい。プリプレグ30の積層固定時にプリプレグ30に接するプレス部材の表面温度は、140〜320℃が望ましい。
プリプレグ30は、剥離剤層20を介して板状キャリア10上に積層した後、ホットプレス処理等によりその外周部を含めて加熱し、図示のように板状キャリア10の側面に直接接触して固着する。これによりプリプレグ30と板状キャリア10間の比較的強固な結合が達成される。この強固な結合により剥離剤層20の選定範囲の自由度が向上することが見込まれる。更に、この強固な結合によりビルドアップ層の積層過程でのベース基材100の対加熱性や耐薬品性を確保することが見込まれる。
ある好適な形態では、プリプレグ30の残部32、つまりその外周部が、板状キャリア10の多角形(図示の場合は矩形を想定)の外周の少なくとも一辺以上において板状キャリア10の側面に対して直接接触する。また別の形態においては、プリプレグ30の残部32が、板状キャリア10の多角形の外周の全周において板状キャリア10の側面に対して直接接触する。
プリプレグ30の厚みは特に制限はなく、可撓性を有する程度の厚さ若しくは可撓性を有しない程度の厚さに設定される。但し、ビルドアップ層110を積層するうえでプリプレグ30にも機械的な強度と剛性があるほうが望ましいため、極端に薄くすることは適当ではない。また、プリプレグ30が極端に厚いとプリプレグ30を介した熱伝播が生じにくくなるため、ホットプレス時にプリプレグ30の平面内において不均一な熱分布が生じてしまい、十分なホットプレスを達成し難くなるおそれがある。この点に鑑みて、プリプレグ30の厚みを50〜900μmとし、より好ましくは100〜400μmとする。
ビルドアップ層110の積層工程においてプリプレグ30を板状キャリア10上に十分に固定し、他方、ビルドアップ層110の積層工程後においてプリプレグ30と板状キャリア10間の容易な剥離性を確保するという観点に基づいて板状キャリア10とプリプレグ30(若しくは、プリプレグ30を含むビルドアップ層110)間の剥離強度を設定することが望ましい。なお、剥離強度の調節は、上述の剥離剤層20の材料や厚みの設定により調整することができ、また、板状キャリア10やプリプレグ30の表面処理により調整することができる。
ビルドアップ層110の積層工程前であり、これに加えて金属製の板状キャリア10とプリプレグ30の直接接触を除去した状態において、板状キャリア10とプリプレグ30間の剥離強度が、典型的には10gf/cm以上、好ましくは30gf/cm以上、より好ましくは50gf/cm以上であり、典型的には200gf/cm以下、好ましくは150gf/cm以下、より好ましくは80gf/cm以下である。このように板状キャリア10とプリプレグ30間の剥離強度を設定することにより、ベース基材100の搬送時等に板状キャリア10とプリプレグ30が剥離することを抑制することができ、かつビルドアップ層110の積層工程後において板状キャリア10とプリプレグ30を含むビルドアップ層110間の剥離性を確保することができる。なお、板状キャリア10とプリプレグ30間の剥離強度は、板状キャリア10とビルドアップ層110間の剥離強度に等しいものと理解しても構わない。
板状キャリア10とプリプレグ30間の剥離強度は、ビルドアップ層110の積層工程後においても大きく変動しないことが望ましい。これにより、ビルドアップ層110の積層工程後においても板状キャリア10とプリプレグ30を含むビルドアップ層110間の剥離性が損なわれないことを確保することができる。
例えば金属製の板状キャリア10とプリプレグ30の直接接触を除去した状態を前提として、220℃で3時間、6時間又は9時間のうちの少なくとも一つの条件でベース基材100を加熱した後において、板状キャリア10とプリプレグ30間の剥離強度が、典型的には10gf/cm以上、好ましくは30gf/cm以上、より好ましくは50gf/cm以上であり、典型的には200gf/cm以下、好ましくは150gf/cm以下、より好ましくは80gf/cm以下である。
220℃の条件でベース基材100を加熱した後の板状キャリア10とプリプレグ30間の剥離強度については、ビルドアップ層110の積層数の幅の確保という観点から、3時間後及び6時間後の両方、又は6時間及び9時間後の両方において剥離強度が上述した範囲を満たすことが好ましく、3時間、6時間及び9時間後の全ての剥離強度が上述した範囲を満たすことが更に好ましい。
本発明において、剥離強度はJIS C6481に規定される90度剥離強度測定方法に準拠して測定する。
従来のCCLでは、樹脂層と銅箔のピール強度が高いことが望まれるため、例えば、電解銅箔のマット面(M面)を樹脂層との接着面とし、粗化処理等の表面処理を施すことによって化学的及び物理的アンカー効果による接着力向上が図られている。また、樹脂層側においても、銅箔との接着力をアップするために各種バインダーが添加される等している。前述したように、本実施形態においてはCCLとは異なり、板状キャリア10とプリプレグ30を最終的に剥離するため、その剥離強度が過度に高いのは望ましくない。
板状キャリア10とプリプレグ30間の剥離強度を先述した好ましい範囲に調節するため、貼り合わせ面の表面粗度を、JIS B 0601(2001)に準拠して測定した板状キャリア10の上面の十点平均粗さ(Rz jis)で表すと、3.5μm以下、更に3.0μm以下とすることが好ましい。但し、表面粗度を限りなく小さくするのは手間がかかりコスト上昇の原因となるので、0.1μm以上とするのが好ましく、0.3μm以上とすることがより好ましい。表面粗度の調整という観点からすれば、板状キャリア10の光沢面を剥離剤層20の積層面として用いることが簡便である。
実施形態によっては、板状キャリア10とプリプレグ30の各貼り合わせ面に対して粗化処理等の剥離強度向上のための表面処理を行わなくても良い。実施形態によっては、プリプレグ30中には剥離剤層20との接着力を高めるためのバインダーは添加されていない。
ビルドアップ層110中の配線層は、金属箔を用いても良いし、サブトラクティブ法又はフルアディティブ法又はセミアディティブ法の少なくとも一方を用いて形成しても良い。
サブトラクティブ法とは、任意の基板、例えば、金属張積層板や配線基板(プリント配線板、プリント回路板を含む)上の金属箔の不要部分をエッチング等によって選択的に除去して導体パターンを形成する方法を指す。フルアディティブ法は、無電解めっき及び/又は電解めっきを用いて、パターニングされた導体層である配線層50を形成する方法である。セミアディティブ法は、例えば、金属箔からなるシード層上に無電解金属析出と、電解めっき、エッチング、又はその両者を併用して導体パターンを形成した後、不要なシード層をエッチングして除去することで導体パターンを得る方法である。
ビルドアップ層110の構成層として、樹脂、片面あるいは両面配線基板、片面あるいは両面金属張積層板、キャリア付き金属箔、金属箔、又はベース基材100を1つ以上含めても良い。
片面あるいは両面配線基板、片面あるいは両面金属張積層板、キャリア付き金属箔の金属箔、キャリア付き金属箔の板状キャリア、又は樹脂に穴を開け、当該穴の側面及び底面に導通めっきをする工程を更に含むことができる。また、前記片面あるいは両面配線基板を構成する金属箔、片面あるいは両面金属張積層板を構成する金属箔、及びキャリア付き金属箔を構成する金属箔の少なくとも一つに配線を形成する工程を1回以上行うことを更に含むこともできる。
パターニングされた配線層50上に金属箔を密着させ、更にキャリア付金属箔のキャリア側を積層する工程を更に含むこともできる。パターニングされた配線層50上に樹脂を積層し、更に、当該樹脂上に金属箔を密着させても良い。また、配線形成された表面の上に、樹脂を積層し、当該樹脂に両面に金属箔を密着させたキャリア付金属箔を積層する工程を更に含むこともできる。なお、「配線形成された表面」とは、ビルドアップを行う過程で都度現れる表面に配線形成された部分を意味し、ビルドアップ基板としては最終製品のものも、その途中のものも包含する。
なお、キャリア付金属箔は、支持基板として機能する樹脂製又は金属製のキャリア上に金属箔が剥離剤層を介して積層したものである。キャリア付き金属箔においてキャリアと金属箔間を剥離可能に結合する剥離剤層は、本願に開示の剥離剤層20と同じ材料を用いることができる。
ベース基材100上にビルドアップ層110を積層した後、ベース基材100に対する処理(加熱、ダイシング等)により板状キャリア10とプリプレグ30間の固着を除去若しくは低減させると良い。若しくは、ベース基材100上にビルドアップ層110を積層する前、ベース基材100に対する処理(加熱、ダイシング等)により板状キャリア10とプリプレグ30間の結合を除去若しくは低減させても良い。好適な形態においては、ベース基材100上にビルドアップ層110を積層した後、得られた積層体150の外周部をダイシングし、その外周部を除去し、これと一緒に板状キャリア10とプリプレグ30間の固着部を除去し、これにより板状キャリア10とプリプレグ30の剥離が可能になる。この場合、ビルドアップ層110の積層過程でのベース基材100の様々な耐性を確保しつつ、その後のダイシング等の処理によりベース基材100における板状キャリア10とプリプレグ30の剥離を可能とすることができる。
上述の段落に説明したダイシング処理に加えて、ベース基材100上にビルドアップ層110を積層して得られた積層体150を個片化するためにダイシング処理を実行しても良い。積層体150を個片化するためのダイシングのダイシング深度は、積層体150を完全に個片化する程度のものである必要はなく、板状キャリア10まで到達しない程度であっても構わない。積層体150を完全に個片化しない場合には、板状キャリア10に到達若しくは到達しない溝が設けられる。ダイシングに用いる機器は、ダイシングブレードを活用したタイプに限らず、ワイヤー、レーザー等の任意の方法を採用できる。
上述のダイシング工程後、板状キャリア10とプリプレグ30を剥離して分離すると良い。板状キャリア10まで到達しない溝が設けられる場合、共通の板状キャリア10から複数の個片化された多層プリント配線基板が得られる。
ビルドアップ層110内における絶縁層40と配線層50同士は熱圧着により積層させても良い。この熱圧着は、一層ずつ積層するごとに行ってもよいし、ある程度積層させてからまとめて行ってもよいし、最後に一度にまとめて行ってもよい。
ビルドアップ層110内の配線層50同士若しくはビルドアップ層110内の配線層50と外部配線間の電気的導通を確保するためにビルドアップ層110にビア配線(層間配線)を形成しても良く、該工程は、ベース基材100上にビルドアップ層110を形成する過程で行っても良いし、所定の積層数のビルドアップ層110をベース基材100上に積層した後に行っても良い。ベース基材100上にビルドアップ層110を積層した状態でビア配線を形成しても良いし、ベース基材100の板状キャリア10をビルドアップ層110から剥離した後にビア配線を形成しても良い。例えば、ベース基材100上に下部配線層50、中間絶縁層40、及び上部配線層50を形成した状態において上部配線層50と中間絶縁層40を貫通して下部配線層50に到達するビアホールを形成し、該ビアホールに導電材を堆積等により設け、これにより、下部配線層50と上部配線層50間の電気的導通が確保される。ビアホールの形成は、機械的な切削やレーザー加工等の任意の方法を採用することができる。ビアホールが貫通する絶縁層40の数は任意であり、2以上であっても構わない。ビアホールへの導電材の充填は、電解めっきを活用しても良い。
図1乃至図4を参照して多層プリント配線基板の製造方法について説明する。まず、図1に示すベース基材100を用意する。ベース基材100自体の製造方法は、上述のとおりであるが、例えば、板状キャリア10上に剥離剤層20を成膜し、その後、プリプレグ30を剥離剤層20を介して板状キャリア10上に実装して上方から加熱押圧し、プリプレグ30が剥離剤層20を介して板状キャリア10上に積層したベース基材100を得る。プリプレグ30の外周部の加熱処理によりプリプレグ30の外周部が板状キャリア10の側面に直接接触して固着する。剥離剤層20は、板状キャリア10の上面の全ての範囲に亘り一定の層厚で形成される。プリプレグ30は、剥離剤層20の上面に平面内で一様に十分に密着する。
次に図2に模式的に示すようにベース基材100上にビルドアップ層110を積層する。例えば、絶縁層40と配線層50を交互に積層する。絶縁層40と配線層50の組から成る積層単位の数は、典型的には1以上であり、2以上、3以上、4以上であっても構わない。積層単位の数の増加により多層プリント配線基板の層間位置の精度の維持が困難になる。本実施形態においては、多層プリント配線基板の最下層となるプリプレグ30が、事前にベース基材100上に安定に固定されており、このプリプレグ30上にビルドアップ層110を安定に積層することができる。
ベース基材100のプリプレグ30を省略した状態で顧客側へ提供し、顧客側においてプリプレグ30を熱圧着して積層固定してビルドアップ層110を形成する場合、剥離剤層20を別途保護するための部材が必要になり、この部材との関係も踏まえて剥離剤層20の厚みや材料を選定することが必要になる場合もあるかもしれない。本実施形態においては、ビルドアップ層110の最下層であるプリプレグ30を剥離剤層20上に積層し、上述のような問題が生じることを回避することができる。
配線層50は、非限定的には金属箔若しくはパターニングされた金属箔であり、好適には銅箔若しくはパターニングされた銅箔である。通常の半導体プロセス技術を活用して配線層50を形成しても構わない。配線層50は、特に限定を意図するわけではないが、典型的にはCVD(Chemical Vapor Deposition)、PVD(Physical Vapor Deposition)に代表される蒸着等により形成したベタ配線層をフォトリソグラフィー技術の活用によりパターニングして形成される。配線層50を必ずしもパターニングする必要はなく、配線層50をベタ配線層としても構わない。パターニングによる配線層の除去部分については、プリプレグ30に対して絶縁層40が接触する場合もある。リフトオフ技術を活用してパターニングしても構わない。
絶縁層40は、非限定的には樹脂層若しくはビア配線(層間配線)が設けられた樹脂層であり、典型的には熱硬化性樹脂又は感光性樹脂が例示できる。また、絶縁層40はガラス繊維又は無機充填物によって補強されたプリプレグであってもよい。絶縁層40の構成樹脂は、プリプレグと同一若しくは類似特性の材料から選定すると良い。ダイコーダーに代表される任意の種類の塗布装置を活用して成膜しても良い。これに代えて、若しくはこれと併用して、通常の半導体プロセス技術を活用して配線層50を形成しても構わない。絶縁層40は、特に限定を意図するわけではないが、典型的にはCVD(Chemical Vapor Deposition)、PVD(Physical Vapor Deposition)に代表される蒸着等により絶縁材料が成膜されてなり、必要に応じて上下の配線層50間の電気的接続を確保するために導電性ビアが設けられる。導電性ビアの絶縁層40中への組み込みの方法は任意である。配線層50上に堆積した絶縁層40上に開口を有するマスク層を形成し、マスク層を介してエッチング処理してマスク層の開口に対応する範囲で絶縁層40を除去し、その後、絶縁層40が除去された範囲で導電性材料を充填する方法が例示できる。
配線層50は、例えば、銅、アルミニウム、ポリシリコン等の導電性材料から成る。絶縁層40は、二酸化シリコン等の絶縁材料から成る。絶縁層40中に組み込まれるビアは、銅、アルミニウム、ポリシリコン等の導電性材料から成る。絶縁層40の構成樹脂は、プリプレグ30と同一若しくは類似特性の材料から選定すると良い。
次に図3に模式的に示すように、プリプレグ30と板状キャリア10の固着部を除去する。詳細には、図示の如くダイシング予定線DL1やこれよりも内側のダイシング予定線DL2に沿って積層体150を切断し、これにより、プリプレグ30と板状キャリア10の固着部が除去される。該ステップにより、プリプレグ30の主部31のみが残存し、プリプレグ30の残部32若しくはこれを含む部分が除去される。該ステップにより、プリプレグ30と板状キャリア10が通常の力で剥離可能な状態になる。
次に図4に模式的に示すように、板状キャリア10上に剥離剤層20が積層した積層体120とビルドアップ層110を分離する。このようにして多層プリント配線基板を製造することができる。なお、積層体120とビルドアップ層110を人手により引き剥がすことにより両者を分離しても構わないが、ロボット等を活用して両者を分離しても良い。
図4に示す分離工程後に積層体120上に別の新しいプリプレグ30をホットプレスすることにより図1に示したベース基材100を製造しても構わない。その後、上述の手順に従い、多層プリント配線基板を製造しても良い。
以下、更に例示的な形態について説明する。上述のベース基材100上に、所望枚数のプリプレグ、次に「内層コア」と称する2層金属張積層板、次にプリプレグ、更に「キャリア付金属箔」を順に積層し、この積層ユニットの単位(通称「ページ」と言う)を10回程度繰り返して積層し、プレス組み立て物(通称「ブック」と言う)を構成しても良い。その後、このブックを一組の平板プレートの間で挟んでホットプレス機にセットし、所定の温度及び圧力で加圧成型することにより多数の4層金属張積層板を同時に製造することができる。平板プレートとしては例えばステンレス製プレートを使用することができる。プレートは、限定的ではないが、例えば1〜10mm程度の厚板を使用することができる。4層以上の金属張積層板についても、一般的には内層コアの層数を上げることで、同様の工程で生産することが可能である。
必要に応じて配線層50を構成する金属箔の全面を、ハーフエッチングして厚みを調整する工程を含めてもよい。配線層50を構成する金属箔の所定位置にレーザー加工を施して金属箔と樹脂を貫通するビアホールを形成し、ビアホールの中のスミアを除去するデスミア処理を施した後、ビアホール底部、側面及び金属箔の全面又は一部に無電解めっきを施して層間接続を形成して、必要に応じて更に電解めっきを行っても良い。金属箔上の無電解めっき又は電解めっきが不要な部分にはそれぞれのめっきを行う前までに予めめっきレジストを形成おいてもよい。また、無電解めっき、電解めっき、めっきレジストと金属箔の密着性が不十分である場合には予め金属箔の表面を化学的に粗化しておいてもよい。めっきレジストを使用した場合、めっき後にめっきレジストを除去する。次に、金属箔及び、無電解めっき部、電解めっき部の不要部分をエッチングにより除去することで回路を形成する。このようにしてビルドアップ基板を製造することができる。樹脂、銅箔の積層から回路形成までの工程を複数回繰り返し行って更に多層のビルドアップ基板としてもよい。
ビルドアップ層110の最上層に、樹脂製のキャリア基板の片面に金属箔を密着したキャリア付金属箔を設けても良い。キャリア付き金属箔のキャリア基板が金属箔よりも下層としても良く、逆であっても構わない。ビルドアップ層110の樹脂層上に、樹脂製のキャリア基板の両面に金属箔を密着したキャリア付金属箔を積層しても良い。
ビルドアップ層110の最上層に、別のベース基材100を積層しても良い。
好適には、ビルドアップ層110の絶縁層40として、熱硬化性樹脂を含有するプリプレグを用いると良い。
好適には、絶縁層40は、樹脂層、例えば、プリプレグ又は感光性樹脂である。絶縁層40としてプリプレグを用いる場合、レーザー加工によりプリプレグにビアホールを設けても良い。レーザー加工の後、このビアホールの中のスミアを除去するデスミア処理を施すとよい。また、樹脂として感光性樹脂を用いた場合、フォトリソグラフィ法によりビアホールを形成部の樹脂を除去することができる。次に、ビアホール底部、側面及び樹脂の全面又は一部に無電解めっきを施して層間接続を形成して、必要に応じて更に電解めっきを行う。樹脂上の無電解めっき又は電解めっきが不要な部分にはそれぞれのめっきを行う前までに予めめっきレジストを形成おいてもよい。また、無電解めっき、電解めっき、めっきレジストと樹脂の密着性が不十分である場合には予め樹脂の表面を化学的に粗化しておいてもよい。めっきレジストを使用した場合、めっき後にめっきレジストを除去する。次に、無電解めっき部又は電解めっき部の不要部分をエッチングにより除去することで回路を形成する。
<第2実施形態>
図5及び図6を参照して第2実施形態について説明する。図5は、ベース基材の概略的な断面図である。図6は、ベース基材の両面上にビルドアップ層を積層した状態を示す概略的な断面図である。本実施形態においては、図5に示すように、板状キャリア10の下面上にも剥離剤層20、プリプレグ30を順に積層する。このような場合であっても第1実施形態と同様の効果を得ることができる。本構成の場合、図6に模式的に示すように板状キャリア10の両面にビルドアップ層110を積層することができ、ベース基材100の利用効率を効果的に高めることができ、結果として多層プリント配線基板の製造効率を高めることができる。
なお、板状キャリア10の両面に貼り付けられる剥離剤層20の厚みは、同じであっても良いし、異なっていても構わない。この点は、板状キャリア10の上層及び下層に配されるプリプレグ30についても同様である。ベース基材100の上層及び下層に形成されるビルドアップ層110の構成についても同様である。
<第3実施形態>
図7及び図8を参照して第3実施形態について説明する。図7は、ベース基材の概略的な断面図である。図8は、ベース基材上にビルドアップ層を積層する直前に、ベース基材に含まれる樹脂層と板状キャリアの固着部をダイシングにより除去することを示す概略的な工程図である。
本実施形態においては、上述の実施形態とは異なり、プリプレグ30の残部32が板状キャリア10の上面(主面)に直接接触する。このような場合においても上述の実施形態と同様の効果を得ることができる。なお、剥離剤層20については板状キャリア10の上面の全域を比較せず、板状キャリア10の上面の外周部が露出する。従って、剥離剤層20の非形成領域が板状キャリア10の外周沿いに形成され、板状キャリア10上へのプリプレグ30の積層や熱圧着によりプリプレグ30と板状キャリア10の直接接触を簡便に確保することができる。
図8は上述の実施形態と同様にダイシング予定線DL1、DL2を示すものであり、参考のためビルドアップ層110を積層する直前にダイシング処理することを示す。
−実施例−
<実験例1>
圧延銅箔(厚さ70μm)を準備し、その両面に対して、下記の条件によるニッケル−亜鉛(Ni−Zn)合金めっき処理及びクロメート(Cr−Znクロメート)処理を施し、両面面の十点平均粗さ(Rz jis:JIS B 0601(2001)に準拠して測定)を1.5μmとした。
(ニッケル−亜鉛合金めっき)
Ni濃度 17g/L(NiSO4として添加)
Zn濃度 4g/L(ZnSO4として添加)
pH 3.1
液温 40℃
電流密度 0.1〜10A/dm2
めっき時間 0.1〜10秒
(クロメート処理)
Cr濃度 1.4g/L(CrO3又はK2CrO7として添加)
Zn濃度 0.01〜1.0g/L(ZnSO4として添加)
Na2SO4濃度 10g/L
pH 4.8
液温 55℃
電流密度 0.1〜10A/dm2
めっき時間 0.1〜10秒
当該銅箔表面への剥離剤の処理に関しては、剥離剤の水溶液をスプレーコーターを用いて塗布してから、100℃の空気中で銅箔表面を乾燥させた。剥離剤の使用条件について、剥離剤の種類、剥離剤を水中に溶解させてから塗布する前までの撹拌時間、水溶液中の剥離剤の濃度、水溶液中のアルコール濃度、水溶液のpHを図9の表に示す。
このようにして得た剥離剤層付銅箔の両面に、厚み200μmのプリプレグ(南亜プラスティック社製、FR-4プリプレグ)をホットプレスにより積層し、プリプレグの外周部の加熱処理によりプリプレグを銅箔の側面に直接接触させ、てベース基材を得た。ホットプレス条件は圧力30kg/mm2、温度170℃、保持時間100分とした。
次に、ベース基材の両面に、絶縁層としてプリプレグ(南亜プラスティック社製、FR-4プリプレグ、厚み62μm)と、配線層として銅箔(JX日鉱日石金属株式会社製、JTC(製品名)、厚み12μm)をホットプレスにより積層してビルドアップ層を形成した。ホットプレス条件は前述のベース基材を得た時と同一である。こうして得たベース基材とビルドアップ層からなる積層体に対してビルドアップ層形成などのさらなる加熱処理の際に熱履歴がかかることを想定して、図9に示す表に記載の条件(ここでは、220℃で3時間)の熱処理を行った。得られた積層体、及び更に熱処理を行った後の積層体における、ベース基材とビルドアップ層の絶縁層との界面の剥離強度を測定した。それぞれの結果を図9の表に示す。なお、図9の表に記載のベース基材とビルドアップ層の絶縁層との界面の剥離強度は、金属製の板状キャリアと樹脂層の固着部をダイシングにより除去した状態で測定した。(実験例2〜12も同様である。)
<実験例2〜11>
図9の表に示す銅箔、樹脂(プリプレグ)及び剥離剤を用いて、実験例1と同様の手順で、ベース基材とビルドアップ層からなる積層体を作製した。それぞれについて実験例1と同様の評価を行った。結果を図9の表に示す。
また、実験例11における当該S面への離型材樹脂塗膜の形成は、図9の表に示した組成を有する樹脂塗膜用の組成物をグラビアコート法により塗布した後、ドクターブレードを用いてその厚みを2〜4μmに調節した。また、塗布した樹脂塗膜は、150℃で、30秒間加熱して焼き付け処理を行った。なお、図9の表で示したエポキシ系樹脂としてはビスフェノールA型エポキシ樹脂を用い、メラミン系樹脂としてはメチルエーテル化メラミン樹脂を用い、フッ素樹脂としてはポリテトラフルオロエチレンを用い、ジメチルシリコーンレジンとしてはジメチルポリシロキサンを用いた。
なお、銅箔の剥離剤処理面の種別、表面処理の条件及び表面粗さRz jis、剥離剤の使用条件、プリプレグの種類、ならびに銅箔とプリプレグとの積層条件は、図9の表に示したとおりである。
図9の表に示すように、実施例1〜11において良好な結果を得ることができた。実施例1〜8、10においてより良好な結果を得ることができた。実施例1、2、5〜7において特に良好な結果を得ることができた。なお、剥離作業性の評価においては、樹脂層である剥離剤層が破壊されず、ベース基材100からビルドアップ層110を剥離できたものを「G」で示した。剥離剤層が破壊されず、ベース基材100からビルドアップ層110を剥離できたものの、10回中4回以上の確率で剥離操作無しで剥離してしまったものを「−」で示した。剥離剤層が破壊され、若しくはベース基材100からビルドアップ層110を剥離できないものを「N」で示した。
(実施例12)
実施例1〜11と同様のベース基材の両側に、FR−4プリプレグ(南亜プラスティック社製)、銅箔(JX日鉱日石金属(株)製、JTC12μm(製品名))を順に重ね、3MPaの圧力で所定の加熱条件にてホットプレスを行い、4層銅張積層板を作製した。
次に、前記4層銅張積層板表面の銅箔とその下の絶縁層(硬化したプリプレグ)を貫通する直径100μmの孔をレーザー加工機を用いて空けた。続いて、前記孔の底部に露出したキャリア付き銅箔上の銅箔表面と、前記孔の側面、前記4層銅張積層板表面の銅箔上に無電解銅めっき、電気銅めっきにより銅めっきを行い、キャリア付銅箔上の銅箔と、4層銅張積層板表面の銅箔との間に電気的接続を形成した。次に、4層銅張積層板表面の銅箔の一部を塩化第二鉄系のエッチング液を用いてエッチングし、回路を形成した。このようにして、4層ビルドアップ基板を得た。
続いて、前記4層ビルドアップ基板において、金属製の板状キャリアと樹脂層の固着部を切断により除去した後に、前記ベース基材の板状キャリアとその両面のプリプレグを剥離して分離することにより、2組の2層ビルドアップ配線板を得た。剥離も良好に行うことができた。
各実験例とも、金属製の板状キャリアと樹脂層を固着させた複数の4層ビルドアップ基板並びに、金属製の板状キャリアと樹脂層を固着させない複数の4層ビルドアップ基板を作製し、それぞれについて、ビルドアップ基板製作工程におけるキャリア付銅箔を構成するプリプレグと銅箔との密着具合を目視にて確認したところ、金属製の板状キャリアと樹脂層を固着させない4層ビルドアップ基板の方がプリプレグと銅箔との界面で剥がれかかった状態のものが、金属製の板状キャリアと樹脂層を固着させた複数の4層ビルドアップ基板よりも多かった。
上述の教示を踏まえると、当業者をすれば、各実施形態に対して様々な変更を加えることができる。板状キャリアの主面は、典型的にはその上面若しくは下面である。