従来、光透過性のタッチパネル、電磁波シールド、ヒーター等においては、酸化スズ(SnO2)、酸化インジウムスズ(ITO)や酸化亜鉛(ZnO)等の透明導電性材料からなる薄膜(透明導電性薄膜)が用いられている。これらの薄膜は透明ではあるがシート抵抗値は100Ω/□以上であった。しかしながら近年、光透過性導電性材料の低抵抗値化や低価格化が求められており、この透明導電性薄膜を金属細線から構成されるメッシュ様のファインピッチな導電性パタンに代替する検討が進んでいる。現在、メッシュを構成する金属細線の幅が20μm程度のものが、プラズマディスプレイパネル用の光透過性電磁波シールドとして量産されており、更には光透過性のタッチパネル用としてパタンの視認性(難視認性)の問題から、よりファインピッチ化され、金属細線の幅は5μm以下、かつシート抵抗値が100Ω/□以下の十分な導電性を有する導電性パタンが求められていた。
現在、金属細線から構成されるメッシュ様の導電性パタンの形成方法としては感光性レジスト層を金属箔上に設け、感光・現像工程からなるいわゆるフォトリソグラフィー法により任意のパタンでレジスト開口部を有するレジストパタンとした後、エッチングによりレジスト開口部の金属箔を溶解・除去し、金属箔を所望のパタンに加工するサブトラクティブ法が主に用いられているが、上記のようなファインピッチ化の要望から、エッチングする金属箔(主に銅箔)や感光性レジスト層の薄層化が急務となっている。
金属細線から構成されるメッシュ様の導電性パタンの形成に用いられる金属箔としては、圧延銅箔あるいは電解銅箔を光透過性支持体に接着層を介して貼り合わせたもの、光透過性支持体上に真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法などの乾式めっき法または無電解めっき法により下地金属を形成し、電解銅めっきをしたもの(通常「銅メタライズド材料」と呼ばれる)などが用いられている。銅箔を貼り合わせた場合、密着強度確保の観点から、銅箔の貼り合わせ面側をあらかじめ化学的に粗化し、凹凸を形成させることが一般的に行われているが、エッチング後の光透過性支持体の透明性が低下するなどの問題がある。銅メタライズド材料はこの問題がなく、金属箔の薄層化の観点からも優れているが、銅メタライズド材料の製造においては、乾式めっきあるいは無電解めっきなどの工程における生産性が低く、高価になる等の問題点が指摘されている。
感光性レジスト層の薄層化に関しては、一般的に用いられる感光性ドライフィルムレジスト(以下DFRと記載)に替えて、液状レジスト、電着レジストなど薄層化が可能なレジストが用いられるようになっているが、これらのレジストはラミネート設備のみで使用可能なDFRと比較し、薄層の感光性レジスト層を設ける塗布や電着の設備と技術が必要となり、運用の妨げとなっている。この問題については特開2007−210157号公報(特許文献1)のように、あらかじめ金属箔上に感光性レジスト層を塗布した形態で供給する技術などが開示されている。
一方、ファインピッチ化の別の手段として、サブトラクティブ法に替えて、支持体上に薄層の下地金属層と下地金属層上に感光性レジスト層を形成し、感光性レジスト層を露光・現像によりレジストパタンとした後、電解めっき法によりレジスト開口部の下地金属層上に金属層を析出させ、所望の厚みとした後、レジストパタンおよびレジストパタンで保護された下地金属層を除去することにより、導電性パタンを形成する、いわゆるセミアディティブ法が提案されている。例えば特開2007−287953号公報(特許文献2)では支持体表面に第1金属層としてスパッタ金属層を形成し、上記セミアディティブ法を用い導電性パタンを形成する方法が開示されている。しかしながら、下地金属層であるスパッタ金属層を除去するエッチング工程が数回必要であり、また支持体表面のエッチングも行わなければならず、工程が多くなるため生産性は低いものであった。このような生産性を改善することを目的として、特開2010−45227号公報(特許文献3)では、下地金属層として写真製法によって得られた銀薄膜層を用い、その上に感光性レジスト層を設けた導電性材料前駆体が開示されている。しかしながら導電性パタンの形成には、依然としてエッチング工程が必要であった。
一方、エッチング工程を必要としないものとしては、特開平8−239773号公報(特許文献4)、特開平9−205270号公報(特許文献5)、特開平10−18044号公報(特許文献6)等に、プラスチックフィルム上に、膨潤性の水性樹脂、金属化合物の微粒子及び架橋剤を含有する無電解めっき用下地層を設け、これに無電解めっきを施すことで下地金属層を設け、その上に感光性レジスト層を設けた感光性シートが開示されており、該金属化合物の微粒子として、硫化パラジウムや硫化スズ等の金属硫化物が例示されている。これらの感光性シートは感光性レジスト層を露光・現像によりレジストパタンとした後に、露出した下地金属層に電解めっきが施され、その後、接着剤層が設けられた絶縁性支持体の接着層上に、めっき層(あるいはめっき層とレジスト画像)を転写させることで導電性パタンを形成するが、絶縁性支持体へのめっき層の転写や、その後のプラスチックフィルムの剥離等、煩雑な工程を経る必要があり、生産性の改善には至っていなかった。
上記エッチングや剥離・転写等の工程を必要とせず、生産工程数が少ないものとして、レジストパタンを形成してからスパッタリングや無電解めっき処理を施し、導電性パタンを形成するリフトオフ方式というものが知られている。しかしながら、この方式において画像形成し、スパッタリングあるいは触媒処理を施し無電解めっき処理を行った場合には、レジストパタン全体に金属が析出してしまい、レジストパタンの除去が困難となってしまう問題がある。また特開2002−134879号公報(特許文献7)においては基材上にメッキレジストを硬化させる特定波長の光線を吸収する触媒層を設けることで金属パタンを正確な形状に形成できること、特開2007−191731号公報(特許文献8)においては、錫化合物、銅化合物、およびパラジウム化合物等で処理することで形成した触媒層上にレジストパタンを形成した後、無電解めっき処理を行うことで、基材に対するめっき膜の密着性や光学的特性に優れためっき配線基板が得られることが開示されている。しかしながら、触媒層を形成する工程においては複数回の浸漬処理が必要であり、また触媒層の付着ムラが発生することもあり均一な金属厚みが得られず、改善が求められていた。微細な導電性パタンにおいて均一な金属厚みが得られない場合、抵抗値が部分的にばらつくという問題が生じる。
他方、特開2003−249790号公報(特許文献9)においては、金属錯体還元層を光透過性支持体上に塗布し、その上にレジストパタンを形成した後、スプレー等を用いて金属錯体を金属錯体還元層に接触させて、導電性パタンを形成することが開示されている。この方法は工程数が少なく生産性に優れた方法であるが、ここで用いられている金属錯体還元層(下地層)では処理時間を短くした場合には導電性が低く、導電性を補うために150℃以上の加熱焼成工程が必要となってしまうことから、樹脂からなるフィルム様の光透過性支持体を使用することが難しいという課題があった。また特開2011−35220号公報(特許文献10)には、支持体にパタン状に印刷された易めっき性樹脂層にめっき触媒化合物溶液を接触させることにより、易めっき性樹脂層上にパタン状のめっき触媒層を設け、その後無電解めっき及び/又は電解めっきを施すことで金属パタンを形成する技術が開示されており、該易めっき性樹脂層が含有する樹脂としてポリウレタン樹脂が記載されている。しかし、この方法では微細で導電性の高い導電性パタンを得ることは難しいという問題があった。
また、光透過性のタッチパネル、電磁波シールド、ヒーター等においては、光透過性支持体上に形成された2種の異なる導電性パタンを貼合して用いる場合があり(例えば静電容量方式のタッチパネル)、専用の貼合装置や貼合用の粘着フィルム(OCA)が必要となるため工程の簡略化が望まれていた。光透過性支持体の両面に導電性パタンを形成すれば貼合は不要となるが、片面のレジストパタンを形成するために露光を行った際に、反対面の感光性レジスト層まで露光されてしまうため、必要とされるレジストパタンを形成できないという課題があった。そのため、例えば特開2013−109682号公報(特許文献11)においては、導電性パタンの間に少なくとも一つの光を吸収する層を設けることにより、他方の感光性レジスト層が露光されることを防止する方法が開示されているが、エッチングによりパタン形成を行うサブトラクティブ法であるため、工程が非常に煩雑になるという課題があった。
以下に本発明を詳細に説明する。本発明の導電性パタン前駆体は、光透過性支持体の両面に、水溶性高分子化合物、架橋剤および金属硫化物を含有する下地層と、該下地層上に感光性レジスト層を有する。
本発明における光透過性支持体とは、下地層および該下地層上の感光性レジスト層を両面に形成するための支持体であり、両面に形成された下地層間に挟まれた部分全体を意味し、ガラスや樹脂等からなる基材だけではなく、その上に形成される易接着層等も含む。また光透過性支持体には耐傷性を目的としたハードコート層(HC層)や、反射率低減を目的としたアンチリフレクション層(AR層)等公知の層を含んでもよい。光透過性支持体の厚さは、20〜300μmであることが好ましい。光透過性支持体の全光線透過率は80%以上であることが好ましく、85%以上がより好ましい。基材としては、例えば、ガラスあるいはポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、ポリカーボネート樹脂、セルロースジアセテート樹脂、セルローストリアセテート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、エチレン−ビニルアルコール樹脂、ポリサルフォン樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂等からなるフィルムを挙げることができる。
本発明において、光透過性支持体は紫外線吸収剤を含有する。紫外線吸収剤は光透過性支持体中の基材を構成する樹脂に均一に含有されていることが好ましいが、光透過性支持体を複数の層、例えば樹脂層A、樹脂層B、紫外線吸収層、易接着層の構成とし、それらの中に紫外線吸収剤を偏在させてもよい。紫外線吸収層とは後述する紫外線吸収剤を合成樹脂あるいは水溶性ポリマーと混合し形成された層である。なお本発明における紫外線とは、波長280〜390nmの紫外光である。本発明において、感光性レジスト層の露光に紫外線を用い、光透過性支持体に含まれる紫外線吸収剤が紫外線を吸収することにより、一方の面に照射した紫外線が他方の面の感光性レジスト層に到達しない、あるいは到達したとしても極僅かであるため、他方の面の感光性レジスト層を露光するには不十分な量となることを利用し、光透過性支持体の両面で別々の露光を行うことが可能となる。そのため、紫外線吸収剤が殆ど吸収しない波長の紫外光を露光に用いることはできない。なお、両面の露光は同一のパタンでも異なったパタンでも良い。紫外線吸収剤を含有する光透過性支持体の、感光性レジスト層を露光するために用いる紫外線における透過率は5%以下であることが好ましく、2%以下であることがより好ましい。
光透過性支持体が含有する紫外線吸収剤としては、例えばフェニルサリシレート、p−tert−ブチルサリシレート等のサリチル酸系紫外線吸収剤、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2′−4,4′−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4,4′−ジメトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤、2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−ドデシル−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−(2−オクチルオキシカルボニルエチル)−フェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−(1−メチル−1−フェニルエチル)−5′−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−フェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−(1−メチル−1−フェニルエチル)−フェニル)ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、2′−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、エチル−2−シアノ−3−(3′,4′−メチレンジオキシフェニル)−アクリレート等のシアノアクリレート系紫外線吸収剤、(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−ドデシルオキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−トリデシルオキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン等のトリアジン系紫外線吸収剤を挙げることができる。これらの内、基材の樹脂に含有させた場合に全光線透過率の低下やヘイズの上昇が少ないという観点から、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤が好ましい。ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の市販品として具体的にはBASFジャパン社製のチヌビンP、チヌビン234、チヌビン326、チヌビン328、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤の市販品として具体的にはBASFジャパン社製のチマソーブ81、トリアジン系紫外線吸収剤の市販品として具体的にはBASFジャパン社製のチヌビン1577を例示することができる。なお、本発明における光透過性支持体の紫外線吸収剤含有量は、1m2当たり0.05〜10gであることが好ましく、より好ましくは1m2当たり0.1〜5gである。
また、本発明に用いる紫外線吸収剤として、紫外線吸収機能を有する樹脂を用いることもできる。このような樹脂として、ポリブチレンテレフタレート(PBT)やポリエチレンナフタレート(PEN)を例示することができ、ポリエチレンテレフタレートとポリエチレンナフタレートを混合した樹脂を用いてもよい。
前記光透過性支持体は易接着層を含むことが好ましい。易接着層は光透過性支持体上に塗布する下地層の塗布性(面質)、および光透過性支持体と下地層の密着性を向上させることができる。易接着層は、合成樹脂あるいは水溶性ポリマーを含有する層であることが好ましく、かかる合成樹脂としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニリデン、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリスチレン、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂等が挙げられる。これらの中でも、特にアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリウレタン樹脂が好ましい。また合成樹脂としては水分散性のポリマー(エマルジョンやラテックス)を利用することが好ましい。水溶性ポリマーとしては、例えばゼラチンやポリビニルアルコール等が挙げられる。更に易接着層はシリカ等のマット剤、イソシアネート、エポキシ等の架橋剤、滑剤、顔料、染料、界面活性剤、前述した紫外線吸収剤を含有していてもよい。
次に本発明の導電性パタン前駆体が有する下地層について説明する。本発明における下地層が含有する水溶性高分子化合物としては水溶性のアニオン性高分子化合物、ノニオン性高分子化合物、及び両性高分子化合物等が挙げられる。アニオン性高分子化合物としては、天然由来の化合物、あるいは合成された化合物のいずれでも用いることができ、例えば−COO−基、−SO3 −基等を有するものが挙げられる。具体的なアニオン性の天然高分子化合物としてはアラビアゴム、アルギン酸、ペクチン等があり、半合成品としてはカルボキシメチルセルロース、フタル化ゼラチン等のゼラチン誘導体、硫酸化デンプン、硫酸化セルロース、リグニンスルホン酸等がある。また、合成品としては無水マレイン酸系(加水分解したものも含む)共重合体、アクリル酸系(メタクリル酸系も含む)重合体及び共重合体、ビニルベンゼンスルホン酸系重合体及び共重合体、カルボキシ変性ポリビニルアルコール等がある。ノニオン性高分子化合物としては、ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース等がある。両性の高分子化合物としてはゼラチン等がある。
上記した水溶性高分子の中でも、ゼラチン、ゼラチン誘導体、ポリビニルアルコールが好ましく、特にポリビニルアルコールを用いた場合、優れた密着性に加え、とりわけ優れた導電性を有する導電性パタンを得ることが可能となる。ポリビニルアルコールは下地層の皮膜形成性及び皮膜強靱性の観点から、完全または部分鹸化されたポリビニルアルコールが好ましく、中でも鹸化度が80%以上のポリビニルアルコールが特に好ましい。また、ポリビニルアルコールの平均重合度は500〜6000が好ましく、1000〜5000がより好ましい。本発明で用いられるポリビニルアルコールとしては、一般的なポリビニルアルコールに加え、カチオン変性ポリビニルアルコール、アニオン変性ポリビニルアルコール、シラノール変性ポリビニルアルコール及びその他ポリビニルアルコールの誘導体も含まれる。ポリビニルアルコールは1種単独でもよいし、2種以上を併用してもよい。
なお本発明において、水溶性高分子化合物の水溶性とは、25℃における水に対する溶解量が少なくとも0.5質量%以上であることを意味し、好ましくは溶解量が5質量%以上である。本発明の下地層における水溶性高分子化合物の含有量は、固形分として1m2当たり1〜1000mgが好ましく、より好ましくは5〜200mgである。
本発明の下地層は、光透過性支持体に対する導電性パタンの密着性を向上させることを目的として、水溶性高分子化合物に加えてウレタンポリマーラテックスを含有してもよい。ウレタンポリマーラテックスは、ウレタンポリマーエマルジョン、ポリウレタンラテックス、ポリウレタンエマルジョン、水性ウレタン樹脂等とも表記される。本発明の下地層に用いるウレタンポリマーラテックスにはポリオールとポリイソシアネートから合成されるウレタンポリマーの微粒子を含有する。用いられるポリオールとしてポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、アクリルポリオールなどが挙げられる。ウレタンポリマーラテックス中のウレタンポリマー微粒子の平均粒子径は0.01〜0.3μmであることが好ましく、より好ましくは0.01〜0.1μmである。なお、本発明において下地層に用いるウレタンポリマーラテックスは、下地層の塗液に用いる段階ではウレタンポリマー微粒子の水分散物であるが、下地層は塗布後乾燥され固体の塗膜となるため、下地層中でウレタンポリマーラテックスは、水分散物の状態やウレタンポリマー微粒子の粒子形状を保持している必要はない。
本発明における下地層が含有する架橋剤としては、25℃の水に対する溶解量が0.5質量%以上である架橋剤が好ましく、例えばクロム明ばん等の無機化合物、ホルムアルデヒド、グリオキザール、マロンアルデヒド、グルタルアルデヒド等のアルデヒド類、尿素、エチレン尿素等のN−メチロール化合物、ムコクロル酸、2,3−ジヒドロキシ−1,4−ジオキサン等のアルデヒド等価体、2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−s−トリアジン塩、2,4−ジヒドロキシ−6−クロロ−s−トリアジン塩等の活性ハロゲンを有する化合物、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル等のエポキシ基を分子中に二個以上有する化合物類、ジビニルスルホン、ジビニルケトン、N,N,N−トリアクリロイルヘキサヒドロトリアジン、活性な三員環であるエチレンイミノ基を二個以上有する化合物、「高分子の化学反応」(大河原 信著 1972、化学同人社)の2・6・7章、5・2章、9・3章などに記載の架橋剤等の、公知の高分子用架橋剤を用いることができる。中でも下地層が含有する水溶性高分子化合物としてポリビニルアルコールを用いた場合、多価アルデヒド化合物を架橋剤として使用することが好ましい。架橋剤として多価アルデヒド化合物を用いた場合、とりわけ優れた導電性を有する導電性パタンを得ることが可能となる。
多価アルデヒド化合物の代表例としては、例えばグリオキザール、マロンアルデヒド、グルタルアルデヒド、スクシンアルデヒド、ヘプタンジアール、オクタンジアール、ノナンジアール、デカンジアール、ドデカンジアール、2,4−ジメチルヘプタンジアール、4−メチルヘキサンジアールなどの脂肪族ジアルデヒドやテレフタルアルデヒド、フェニルマロンジアルデヒドなどの芳香族ジアルデヒド、更にはそれらとメタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのアルコール類が反応したアセタール化合物、及びN,N′,N″−(3,3′,3″−トリスルホミルエチル)イソシアヌレートなどのトリアルデヒド化合物が挙げられる。特に好ましい多価アルデヒド化合物はジアルデヒド化合物であり、特にグルタルアルデヒド及びグリオキザールが好適である。多価アルデヒド化合物は1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。下地層における架橋剤の含有量は、水溶性高分子化合物の含有量に対して1〜200質量%であることが好ましい。
本発明の下地層が含有する金属硫化物は、主に重金属の硫化物の微粒子(粒子サイズは1〜数十nm程度)である。金属硫化物の代表例としては、例えば、金、銀等のコロイド粒子や、パラジウム、亜鉛、スズ等の水溶性塩と硫化物を反応させて得られた金属硫化物等が挙げられ、中でも硫化パラジウムが好ましい。下地層に用いる金属硫化物の含有量は、固形分で導電性パタン前駆体の1m2当たり0.1〜10mgであることが好ましい。
本発明の下地層の塗布は、例えばディップコーティング、スライドコーティング、カーテンコーティング、バーコーティング、エアーナイフコーティング、ロールコーティング、グラビアコーティング、スリットダイコーティング、スプレーコーティングなどの公知の塗布方式で塗布することができるが、下地層を均一に塗布するという観点から、エアーナイフコーティング、グラビアコーティング(特に小径グラビアコーティング)、スリットダイコーティングが好ましい。また、塗布方式に合わせ、増粘剤、界面活性剤等の各種塗布助剤を用いることもできる。本発明の下地層は、皮膜の架橋を促進させるために皮膜形成後、30〜50℃の温度で3〜7日間加温することが望ましい。
本発明における感光性レジスト層は、本発明における紫外線領域(280〜390nm)から任意に選択される波長の紫外線によって感光可能なレジスト層であり、例えば、市販の一般的なドライフィルムレジストは365nmの紫外線に対し感度を有するため、下地層を形成した光透過性支持体とラミネートすることにより感光性レジスト層を下地層上に設けることができるが、ファインピッチな導電性パタンを形成するという観点から、下地層上に感光性液状レジストが塗布されて形成した感光性レジスト層であることが好ましい。また下地層との接触による経時変化の観点から、ポジ型感光性レジスト層であることがより好ましい。
ポジ型感光性レジスト層としては、感光して溶解可能となった部分を、アルカリ性水溶液を主成分とする現像液で溶解除去できる水処理可能なものが好ましく用いられ、本発明における紫外線領域(280〜390nm)に対応した光酸発生剤を含む化学増幅レジスト層やノボラック樹脂レジスト層が好ましく、特にノボラック樹脂レジスト層であるキノンジアジド系ポジ型フォトレジスト層が好ましい。キノンジアジド系ポジ型フォトレジスト層は、アルカリ可溶性樹脂と光分解成分であるフォトセンシタイザーを含有する。アルカリ可溶性樹脂としてはクレゾールノボラック樹脂が好ましく、フォトセンシタイザーとしてはナフトキノンジアジドスルホン酸エステルが好ましい。本発明において、ポジ型感光性レジスト層には、例えば強度を向上させるなどの目的で、アルカリ可溶性樹脂と相溶性のあるエポキシ樹脂やアクリル樹脂、可塑剤としてのポリビニルエーテル類、その他安定剤、レベリング剤、染料、顔料などを含有させてもよい。
上記ポジ型感光性レジスト層の膜厚としては、10μm以下であることが好ましく、5μm以下、更には3μm以下であることがより好ましい。下限は必要なレジスト性能を確保する点、および塗布の均一という観点から、0.5μm以上であることが好ましい。
本発明の感光性レジスト層の塗布は下地層と同様の塗布方式で実施することができ、例えばディップコーティング、スライドコーティング、カーテンコーティング、バーコーティング、エアーナイフコーティング、ロールコーティング、グラビアコーティング、スリットダイコーティング、スプレーコーティングなどの公知の塗布方式で塗布することができるが、感光性レジスト層を均一に塗布するという観点から、エアーナイフコーティング、グラビアコーティング(特に小径グラビアコーティング)、スリットダイコーティングが好ましい。また、塗布方式に合わせ、増粘剤、界面活性剤等の各種塗布助剤を用いることもできる。なお、感光性レジスト層は塗布を行った後、60〜150℃で乾燥させることが好ましい。
次に、本発明の導電性パタンの製造方法について説明する。本発明における導電性パタンの製造方法は、導電性パタン前駆体の両面に設けられている感光性レジスト層を本発明における紫外線領域(280〜390nm)から選択される波長の紫外線により露光を行った後、現像し、任意のパタンで下地層が露出したレジスト開口部を有するレジストパタンを形成した後、無電解めっき処理によりレジスト開口部の下地層上に金属を積層させ、その後剥離処理により感光性レジスト層を除去する。なお、露光、現像処理、無電解めっき処理、剥離処理といった各工程は、両面同時に行うことが好ましいが、マスキングフィルムの貼合等により片面をマスキングし、片面ずつ逐次に行っても良い。
本発明における露光方式としては、必要なサイズの光束を任意のパタンが描画されたマスクを介して導電性パタン前駆体へ照射する、いわゆるマスク露光方式と、レーザー光をポリゴンミラーあるいはデジタルミラーデバイス(DMD)を用いて任意のパタンにして導電性パタン前駆体へ照射する、レーザー直描方式に大別することができる。マスク露光方式には、マスクと導電性パタン前駆体を密着して露光するコンタクト露光方式、マスクと導電性パタン前駆体を1〜100μmの間隔を開けて露光するプロキシミティ露光方式、ミラーやレンズを用いて投影し露光する投影(プロジェクション)露光方式を挙げることができる。ここで任意のパタンとして、静電容量型タッチパネル用電極を例に取ると、パタンは金属細線から構成されるメッシュ様のファインピッチな導電性パタンおよび周辺トレース配線を形成するためのパタンから構成され、メッシュ様部分は少なくとも正方形、菱形あるいは六角形等の格子パタンからなる。メッシュ様部分は、導電性や光透過性等を考慮して、線幅1〜20μm、線間隔100〜1000μmとする。また、その周辺トレース配線としてはライン&スペースで10〜200μmピッチに設定される。
マスク露光方式において必要とされる紫外線を得るには、例えば高圧水銀灯や超高圧水銀灯に代表されるガス放電灯のように可視領域から紫外領域にわたり連続したスペクトルを有する光源よりバンドパスフィルターやショートパスフィルターを用いて280〜390nmの波長を有する紫外線を適宜分光する方法、希ガスエキシマランプや紫外線LED等のように280〜390nmの波長領域において発光する光源を用いる方法がある。特に、高圧水銀灯や超高圧水銀灯の発光に含まれる365nmの輝線(i線と呼ばれる)を含む紫外光をバンドパスフィルターやショートパスフィルターを用いて取り出した紫外光は高い発光効率を有するため好ましい。例として、高圧水銀灯や超高圧水銀灯の発光を赤外線領域を透過する誘電体多層膜からなる凹面ミラー(ダイクロイックミラー)により集光しフライアイレンズを通過させた後、バンドパスフィルターやショートパスフィルターを通過させ、平面鏡あるいは凹面鏡により疑似平行光を得る光学系を挙げることができる。また、レーザー直描方式において必要とされる280〜390nmの波長を有するレーザーとしては、XeFレーザー(351nm)、XeClレーザー(308nm)、アルゴンイオンレーザー(351nm、364nm)、ヘリウムカドミウムレーザー(325nm)、紫外半導体レーザー(375nm)等を例示することができる。
本発明において、露光された感光性レジスト層を有する導電性パタン前駆体に対して現像処理が行われる。現像処理は、環境負荷低減の観点から、アルカリ性水溶液を使用することが好ましい。かかるアルカリ性水溶液としては、例えば炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水等の無機アルカリ類、エチルアミン、n−プロピルアミン等の第一アミン類、ジエチルアミン、ジ−n−ブチルアミン等の第二アミン類、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン等の第三アミン類、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルコールアミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド等の第四級アンモニウム塩、ピロール、ピペリジン等の環状アミン類等を含有するアルカリ性水溶液を使用することができる。更に、上記アルカリ性水溶液にアルコール類、界面活性剤を適当量添加して使用することもでき、pHが11〜14であるアルカリ性水溶液を例示することができる。任意のパタンに露光された感光性レジスト層を現像処理することで、下地層上に任意のパタンで下地層が露出したレジスト開口部を有するレジストパタンを形成することができる。また現像時の溶出性を向上させ、レジストパタンを形成しやすくするために、現像前に導電性パタン前駆体を60〜150℃で加熱しても良い。
本発明の導電性パタン製造方法では、上記のようにして得られたレジストパタンに無電解めっき処理を施すことで、レジスト開口部の下地層上に優先的に金属を積層させ、導電性の金属パタンを形成する。無電解めっき処理として、銅めっき法、ニッケルめっき法、亜鉛めっき法、スズめっき法、銀めっき法等の公知のめっき方法を用いることができるが、その中でも、得られる導電性の観点から無電解銀めっき法が特に好ましい。
無電解銀めっき法としては、硝酸銀及びアンモニアを含むアンモニア性硝酸銀溶液と、還元剤及び強アルカリ成分を含む還元剤溶液の2液を、前記任意のパタンを有するレジストパタンが形成された導電性パタン前駆体の表面上で混合されるように付与し、酸化還元反応を生じせしめ、金属銀を析出させる方法が挙げられる。
前記還元剤溶液としては、グルコース、グリオキザール等のアルデヒド化合物、硫酸ヒドラジン、炭酸ヒドラジンまたはヒドラジン水和物等のヒドラジン化合物等の還元剤、水酸化ナトリウムに代表される強アルカリ成分を含有する還元剤溶液が挙げられ、かかる還元剤溶液は、亜硫酸ナトリウムまたはチオ硫酸ナトリウム等を含有してもよい。
アンモニア性硝酸銀溶液には、無電解銀めっき処理における金属銀の析出速度を速めるためにいくつかの添加剤を加えることもできる。例えば、モノエタノールアミン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、1−アミノ−2−プロパノール、2−アミノ−1−プロパノール、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン等のアミノアルコール化合物、グリシン、アラニン、グリシンナトリウム等のアミノ酸またはその塩等が挙げられるが、特に限定されるものではない。
前記アンモニア性硝酸銀溶液と還元剤溶液の2液を、任意のパタンで下地層が露出するレジスト開口部を有するレジストパタンが形成された、導電性パタン前駆体の表面上で混合されるように付与する方法としては、2種の水溶液をあらかじめ混合し、この混合液をスプレーノズルやスリットノズル、スプレーガン等を用いてレジストパタンが形成された導電性パタン前駆体の表面に吹き付ける方法、スプレーガンのヘッド内で2種の水溶液を混合して直ちに吐出する構造を有する同芯スプレーガンを用いて吹き付ける方法、2種の水溶液を1つのスプレーガンに2つのスプレーノズルを有する双頭スプレーガンから各々吐出させ吹き付ける方法、2種の水溶液を2つの別々のスプレーガンを用いて同時に吹き付ける方法、スリットノズルを2本並べ2種の水溶液を順に吹き付ける方法等がある。これらは状況に応じて任意に選ぶことができる。
本発明の導電性パタン製造方法における、無電解めっき処理時間としては5〜300秒が好ましい。これによりレジスト開口部の下地層上に積層される金属の厚みは、0.1〜1μm程度である。本発明の導電性パタン前駆体を用いる場合、急速にめっきが進行し、短時間で安定した金属層が得られる。更には、熱処理による焼成も必要がなく、通常の自然乾燥のみで十分な導電性が得られる。
本発明の導電性パタン製造方法において、上記無電解めっき処理後、レジストパタンの剥離処理を行う。剥離処理の前に、レジストパタンの膨潤・溶解性を向上させるために、レジストパタンに対し感光性レジスト層を露光可能な波長の光で露光を行っても良い。剥離処理は、レジストパタンを膨潤させる有機溶剤および・またはアルカリ性水溶液等からなる剥離液をスプレーにより吹き付け、レジストパタンを膨潤・溶解させ、除去する処理である。環境負荷低減の観点から、剥離液にはアルカリ性水溶液を使用することが好ましい。かかるアルカリ性水溶液としては、例えば炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水等の無機アルカリ類、エチルアミン、n−プロピルアミン等の第一アミン類、ジエチルアミン、ジ−n−ブチルアミン等の第二アミン類、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン等の第三アミン類、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルコールアミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド等の第四級アンモニウム塩、ピロール、ピペリジン等の環状アミン類等を含有するアルカリ性水溶液を使用することができる。更に、上記アルカリ性水溶液にアルコール類、界面活性剤を適当量添加して使用することもでき、pHが11〜14であるアルカリ性水溶液を例示することができる。以上詳述したように、本発明の導電性パタンの製造方法には金属層を除去するエッチング工程は含まれない。
以下実施例によって本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
≪導電性パタン前駆体1の作製≫
光透過性支持体として、紫外線吸収剤を含有するポリエチレンテレフタレートフィルムの両面にポリビニルアルコール系易接着層を有する厚み150μmのフィルムを用いた。紫外線吸収剤はベンゾトリアゾール系であるチヌビン234(BASFジャパン社製)であり、これをポリエチレンテレフタレートフィルム1m2あたり1.0gとなるように樹脂に混合した。該光透過性支持体の全光線透過率をスガ試験機株式会社製、ダブルビーム方式ヘーズコンピューターを用いて測定したところ88%であった。また株式会社島津製作所製紫外可視分光光度計UV−2600を用い、波長365nmの紫外線における透過率を測定したところ1%であった。下記硫化パラジウムゾルを調製し、該硫化パラジウムゾルを用いて下記下地層1の塗液を作製した。塗布装置には、直径が60mm、斜線角度が45度、線数90線/インチ、溝深さ110μmの斜線グラビアロールを用いリバース回転かつキスタッチで塗布を行う塗布ヘッドを2つ有し、垂直乾燥ゾーンとエアターンバーにより水平搬送へ移行した後の水平乾燥ゾーンを有する両面同時塗布装置を用い、前記光透過性支持体の両面に該塗液を塗布・乾燥した。その後40℃の加温庫にて1週間加温した。
<硫化パラジウムゾルの調製>
A液 塩化パラジウム 5g
塩酸 48g
蒸留水 1000g
B液 硫化ソーダ 8.6g
蒸留水 1000g
A液とB液を撹拌しながら混合し、30分後にイオン交換樹脂の充填されたカラムに通し硫化パラジウムゾルを得た。
<下地層1の塗液/1m2あたり>
PVA217(株式会社クラレ製ポリビニルアルコール 鹸化度88%、重合度1700) 12mg
タイポールNPS−436(泰光油脂化学工業株式会社製界面活性剤)
12mg
1N.水酸化ナトリウム 110mg
グルタルアルデヒド 18mg
前記硫化パラジウムゾル 0.4mg
このようにして光透過性支持体の両面に形成された下地層1上に、クレゾールノボラック樹脂、およびナフトキノンジアジドスルホン酸エステルを含有するキノンジアジド系ポジ型感光性液状レジストを前記した両面同時塗布装置を用いて塗布し、90℃で2分間乾燥して、乾燥膜厚が1.5μmの感光性レジスト層を両面に設けることで、導電性パタン前駆体1を得た。導電性パタン前駆体1をロール状に巻き取る際には、糊面を有さないポリエチレンフィルムを重ねて巻き込むことにより、感光性レジスト層同士のブロッキングを防止した。以後、ロール状に巻き取られた導電性パタン前駆体1のロール表面側を表面、ロール内側面を裏面と表記する。
≪導電性パタン前駆体2の作製≫
下地層1の塗液の作製において、PVA217(株式会社クラレ製ポリビニルアルコール 鹸化度88%、重合度1700)の代わりにPVA117(株式会社クラレ製ポリビニルアルコール 鹸化度99%、重合度1700)を用いた以外は導電性パタン前駆体1の作製と同様にして、導電性パタン前駆体2を得た。
≪導電性パタン前駆体3の作製≫
下地層1の塗液の作製において、硫化パラジウムゾルの代わりに、下記硫化錫ゾルを用いた以外は導電性パタン前駆体1の作製と同様にして、導電性パタン前駆体3を得た。
<硫化錫ゾルの調製>
A液 塩化錫 5g
塩酸 48g
蒸留水 1000g
B液 硫化ソーダ 8.6g
蒸留水 1000g
A液とB液を撹拌しながら混合し、30分後にイオン交換樹脂の充填されたカラムに通し硫化錫ゾルを得た。
≪導電性パタン前駆体4の作製≫
導電性パタン前駆体1の作製において、下地層1の塗液の代わりに下記下地層2の塗液を用いた以外は導電性パタン前駆体1の作製と同様にして、導電性パタン前駆体4を得た。
<下地層2の塗液/1m2あたり>
ゼラチン 50mg
界面活性剤 12mg
(泰光油脂化学工業株式会社製タイポールNPS−436)
1規定水酸化ナトリウム 110mg
2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−s−トリアジンナトリウム塩
5mg
硫化パラジウムゾル 0.4mg
≪導電性パタン前駆体5の作製≫
下地層1の塗液の作製において、グルタルアルデヒドの代わりにブチルアルデヒドを用いた以外は導電性パタン前駆体1の作製と同様にして、導電性パタン前駆体5を得た。
≪導電性パタン前駆体6の作製≫
下地層1の塗液の作製において、硫化パラジウムゾルの代わりに、下記パラジウムコロイドを用いた以外は、導電性パタン前駆体1の作製と同様にして、導電性パタン前駆体6を得た。
<パラジウムコロイドの調製>
A液 塩化パラジウム 5g
5N.塩酸 25g
蒸留水 565g
B液 ポリビニルピロリドン(東京化成工業株式会社製 K90)
7.5g
1N.水酸化ナトリウム 250g
蒸留水 437.5g
C液 ホルマリン 5g
蒸留水 626g
B液をスターラーで撹拌し、A液とC液を同時にゆっくりと添加し、30分後にイオン交換樹脂の充填されたカラムに通しパラジウムコロイドを得た。
≪導電性パタン前駆体7の作製≫
下地層1の塗液の作製において、硫化パラジウムゾルを添加しなかった以外は導電性パタン前駆体1の作製と同様にして、導電性パタン前駆体7を得た。
≪導電性パタン前駆体8の作製≫
導電性パタン前駆体1の作製において、紫外線吸収剤を添加しない以外は導電性パタン前駆体1の作製と同様にして、導電性パタン前駆体8を得た。
<導電性パタンの形成>
上記のようにして得られた導電性パタン前駆体1〜8それぞれについて、露光前にブロッキング防止のために重ねられたポリエチレンフィルムを剥がし、30cm×30cmのガラスマスクを用いて露光を行った。ガラスマスクには、線幅が3μm、線間隔が300μmの格子パタンからなるメッシュ様の5cm×5cmの導電性パタン、および線幅が10μm、線間隔が10μmのライン&スペースで20μmピッチとなる細線パタンを有し、画像部以外は全て遮光部としたものを用いた。なお、導電性パタン前駆体1〜8は両面に感光性レジスト層を有するため露光は表裏各1回行い、表面から露光された部位をA部位、裏面から露光された部位をB部位とした。なお、A部位とB部位は導電性パタン前駆体内において異なる場所である。露光には超高圧水銀灯の発光を赤外線領域を透過する誘電体多層膜からなる凹面ミラー(ダイクロイックミラー)により集光しフライアイレンズを通過させた後、中心波長365nm、半値巾10nm、365nmにおける透過率55%のバンドパスフィルターを通過させることにより、本発明の紫外線とし、更に凹面ミラー光学系を通過させることで疑似平行光とした光源を用いた。露光後の導電性パタン前駆体1〜8は、それぞれ1%炭酸ナトリウム水溶液の現像液を用い、30℃30秒の条件で現像し、水洗後、自然乾燥することで、導電性パタン前駆体の両面にレジストパタンを形成した。レジスト開口部のレジストは完全に除去され、下地層が露出していた。なお現像は現像液をシャワー方式にて感光性レジスト層に吹き掛けることにより実施した。
次に、表面と裏面を脱イオン水で洗浄し、圧縮空気により脱イオン水を吹き飛ばした後、双頭スプレーガンにて、下記組成のアンモニア性硝酸銀溶液と還元剤溶液を同時に30秒間吹き付けて無電解銀めっき処理を行い、レジスト開口部の下地層が露出した溝部分に銀画像を形成した。双頭スプレーガンは導電性パタン前駆体を挟んで対向して設置されており、両面同時に無電解銀めっき処理を行った。なお無電解銀めっき処理は感光性レジスト層上においても若干行われており、極僅かに銀膜が形成されていた。その後、脱イオン水で綺麗に水洗し、自然乾燥させた。なお、双頭スプレーガン1台あたりの吹き付け量は各々240ml/分であった。
<アンモニア性硝酸銀溶液>
D液 硝酸銀 20g
脱イオン水 1000g
E液 28%アンモニア水溶液 100g
モノエタノールアミン 5g
脱イオン水 1000g
D液とE液を1:1で混合し、アンモニア性硝酸銀溶液を調液した。
<還元剤溶液>
硫酸ヒドラジン 10g
モノエタノールアミン 5g
水酸化ナトリウム 10g
脱イオン水 1000gに溶解し、還元剤溶液を調液した。
次に、pHが14弱の5%水酸化ナトリウム溶液をシャワー方式にて両面に60秒間吹き掛けてレジストパタンを溶解除去し、水洗後、自然乾燥することで、導電性パタン前駆体1〜8を用いた導電性パタン1〜8を得た。
上記導電性パタン1の作製において、バンドパスフィルターを中心波長405nm、半値巾10nm、405nmにおける透過率63%のタイプに変更し、紫外線ではなく可視光線での露光を行い、導電性パタン9を得た。
<シート抵抗値>
得られた導電性パタン1〜9が有するA部位およびB部位の、線幅が3μm、線間隔が300μmの格子パタンからなるメッシュ様の5cm×5cm部分のシート抵抗値を、(株)ダイアインスツルメンツ製のロレスターGP/ESPプローブを用いて、JIS K7194に従い測定した。その結果を表1に示す。なお導電性パタン6、7は、格子パタンは認められるものの所々に断線やムラが見られシート抵抗値が高すぎて、具体的な値が得られなかったため、表中「測定不能」と記載した。
<線幅と厚み測定>
得られた導電性パタン1〜9が有するA部位およびB部位の、線幅が10μm、線間隔が10μmのライン&スペース部から任意の3本のラインを選択し、これらの線幅と厚みを共焦点顕微鏡(Lasertec社製 OPTELICS C130)にて測定した。得られたA部位およびB部位の線幅の平均値と、得られたA部位およびB部位の細線の個々の厚み(N1〜N3)を表1に示す。
<裏面抜け>
得られた導電性パタン1〜9について、A部位の裏面側を観察し、一切銀画像が形成されていない(感光性レジスト層が露光されていない)場合には○、極僅かでも銀画像が形成されている(感光性レジスト層が露光されており本来形成されてはいけないレジスト開口部が形成されてしまい、無電解銀めっき処理時に下地層上に銀画像が形成されてしまった)場合には×とした。
以上の結果より、本発明においては金属細線から構成されるメッシュ様のファインピッチな導電性パタンを、金属の厚みが均一かつ十分な導電性を有する形で光透過性支持体の両面に形成できることが判る。