以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一または同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
(第1実施形態)
まず、図1〜3を用いて、第1実施形態に係る貼付剤10について説明する。貼付剤10は、パップ剤やプラスター剤などとして用いられる製剤である。貼付剤10は、支持体12と、支持体12の一方の面の略全体に形成された粘着剤層14と、粘着剤層14の作用面に剥離可能に貼付された剥離シート16と、粘着剤層14内に埋め込まれたマイクロニードル・アレイ20とを備える。ここで、粘着剤層14の作用面とは、貼付剤10の使用時にユーザの皮膚に接する面のことである。
貼付剤10(より具体的には粘着剤層14)の大きさは限定されず、ユーザの症状、年齢、体重、性別などに応じて設定してもよい。例えば、貼付剤10(粘着剤層14)の面積は1〜300cm2でもよいし、10〜200cm2でもよい。貼付剤10(粘着剤層14)の面積を1cm2以上にすることによって、活性成分の十分な皮膚透過性を維持することが容易となり、その面積を300cm2以下にすることによって、貼付剤10の取り扱いが容易になる。
支持体12は、シート状の部材である。支持体12は伸縮性を有してもよい。織布、編布、不織布、不織紙、フィルムなどを支持体12として用いることができ、支持体12の物理的性質(厚さ、伸び、引張り強さ、貼付作業性など)、貼付時の感触、皮膚の密閉性、活性成分の支持体12への移行などを考慮して部材が選択される。支持体12の伸縮性については、縦方向および横方向の少なくとも一方において50%モジュラスが0.5〜10N/50mmであってもよい。なお、「縦方向」とは、編布を製造する工程における流れ方向のことを指し、「横方向」とは、縦方向と直交する方向、すなわち幅方向のことを指す。
支持体12の具体的な材料は限定されない。例えば、材料は、紙、綿、大麻、黄麻などの靱皮繊維でもよいし、葉脈繊維(例えば、マニラ麻)などのセルロース繊維でもよいし、羊毛などの獣毛繊維、絹繊維、羽毛繊維などのタンパク繊維などの天然繊維でもよいし、アルミニウムなどの金属でもよい。あるいは、材料は、再生セルロース繊維(例えば、レーヨン、キュプラ)や再生タンパク繊維などの再生繊維でもよいし、酢酸セルロース繊維やプロミックスなどの半合成繊維でもよい。あるいは、材料は、ナイロンアラミド繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維などでもよい。あるいは、材料は、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリ塩化ビニリデン繊維、ポリ塩化ビニル系繊維、ポリウレタン繊維、ポリオキシメチレン繊維、ポリテトラフルオロエチレン繊維、ポリパラフェニレンベンズビスチアゾール(PBT)繊維、ポリイミド繊維などでもよい。あるいは、粘着剤層14に含有される活性成分との相互作用が少ない、ポリエステル系のポリエチレンテレフタレート繊維からなる不織布を材料としてもよい。
支持体12の厚みは特に限定されないが、例えば5〜1000μmの範囲で設定してもよい。支持体12の厚みを5μm以上とするのは、貼付剤10の取り扱いを容易にするためである。支持体12の厚みを1000μm以下とするのは、支持体12の硬さが付着性に及ぼす影響を防ぐためである。
粘着剤層14は、任意の活性成分を含む層である。ここで、「粘着剤層が活性成分を含む」とは、粘着剤層がその中に活性成分を含有する態様と、活性成分が粘着剤層の作用面に付着した態様との双方を含む概念である。
粘着剤層14の材料は、粘着性を有し皮膚に貼り付けることができれば特に限定されない。
貼付剤10をパップ剤として用いる場合には、皮膚密着性、活性成分の皮膚吸収性、水分を可及的に多く含有していること、粘着剤層14中の水分が蒸発するときに皮膚から熱を奪うことにより生じる清涼感、角質層が内部から蒸散してくる水分子によって水和されることによる薬物の吸収の促進、常温もしくはその近辺の温度でもだれないこと、剥がす時に痛くなくかつ汚れが残らないこと、あるいは、べとつかないことなどの条件を考慮して材料を選んでもよい。
例えば、パップ剤のための粘着基材として水溶性高分子が用いられる。水溶性高分子としては、ゼラチン、寒天、アルギン酸、マンナン、カルボキシメチルセルロースまたはその塩、ヒドロキシプロピルセルロースまたはその塩、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸またはその塩など、あるいは、これらのうちの少なくとも一種を有機または無機の架橋剤により架橋したものを用いてもよい。
必要に応じて増粘剤、湿潤剤、抗酸化剤、充填剤、架橋剤、防腐剤、紫外線吸収剤、溶解補助剤、吸収促進剤、薬効補助剤などを粘着剤層14に添加してもよい。ただし、後述するマイクロニードル・アレイ20の機能を考慮すれば、溶解補助剤および吸収促進剤を添加する必要性は低い。
増粘剤は、水分を10〜80%の範囲で安定に保持でき、かつ保水性を有するのが望ましい。増粘剤の例として、グァーガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、寒天、アラビアガム、トラガカントガム、カラヤガム、ペクチン、澱粉、アカシアガムなどの植物系天然高分子、ザンサンガムなどの微生物系天然高分子、ゼラチンやコラーゲンなどの動物系天然高分子、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどのセルロース系半合成高分子、可溶性デンプン、カルボキシメチルデンプン、ジアルデヒドデンプンなどのデンプン系半合成高分子、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメタクリレートなどのビニル系水溶性高分子、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウムなどのアクリル系水溶性高分子、ポリエチレンオキサイド、メチルビニルエーテル/無水マイレン酸共重合体などの合成系の水溶性高分子などを用いてもよい。例えば、ゲル強度が強く、かつ保水性に優れるポリアクリル酸ナトリウムを用いてもよく、特に、平均重合度が20000〜70000のポリアクリル酸ナトリウムを用いてもよい。平均重合度が20000より小さくなると、増粘効果が乏しくなり十分なゲル強度が得られなくなる傾向が現れ出す。一方、平均重合度が70000より大きくなると、増粘効果が強すぎて作業性が低下する傾向が現れ出す。2種類以上の水溶性高分子を併用することで、より一層ゲル強度の大きい弾性ゲルを得ることができる。例えば、ポリアクリル酸ナトリウムの強イオン高分子と高分子コンプレックスとを併用してもよい。
湿潤剤の例として、グリセリン、プロピレングリコール、ソルビトールといった多価アルコールが挙げられる。
抗酸化剤の例としては、トコフェロールおよびそのエステル誘導体、アスコルビン酸、アスコルビン酸ステアリン酸エステル、ノルジヒトログアヤレチン酸、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソールが挙げられる。
充填剤の例としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸塩(例えば、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム等)、ケイ酸、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、亜鉛酸カルシウム、酸化亜鉛、酸化チタンが挙げられる。
架橋剤の例としては、アミノ樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、不飽和ポリエステルなどの熱硬化性樹脂、イソシアネート化合物、ブロックイソシアネート化合物、有機系架橋剤、そして、金属または金属化合物などの無機系架橋剤が挙げられる。
防腐剤の例としては、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチルが挙げられる。
紫外線吸収剤の例としては、p−アミノ安息香酸誘導体、アントラニル酸誘導体、サリチル酸誘導体、クマリン誘導体、アミノ酸系化合物、イミダゾリン誘導体、ピリミジン誘導体、ジオキサン誘導体が挙げられる。
溶解補助剤または吸収促進剤の例としては、炭酸プロピレン、クロタミトン、l−メントール、ハッカ油、リモネン、ジイソプロピルアジペートが挙げられる。
薬効補助剤の例としては、サリチル酸メチル、サリチル酸グリコール、l−メントール、チモール、ハッカ油、ノニル酸ワニリルアミド、トウガラシエキスが挙げられる。
また、必要に応じて、架橋剤や重合剤などを添加してもよく、これにより粘着剤層14を強固にするとともに保水性を持たせることができる。架橋剤および重合剤は増粘剤などの種類に応じて適宜選択される。例えば、増粘剤にポリアクリル酸またはポリアクリル酸塩を適用した場合は、分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物を用いてもよいし、Ca、Mg、Alなどの塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩、炭酸塩などの無機酸塩を用いてもよいし、クエン酸塩、酒石酸塩、グルコン酸塩、ステアリン酸塩などの有機酸塩を用いてもよいし、酸化亜鉛や無水珪酸などの酸化物を用いてもよいし、水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウムなどの多価金属化合物を用いてもよい。増粘剤にポリビニルアルコールを適用した場合は、アジピン酸、チオグリコール酸、エポキシ化合物(エピクロルヒドリン)、アルデヒド類、N−メチロール化合物などの錯化物を用いてもよいし、Al、Ti、Zr、Sn、V、Cu、B、Crなどの化合物の錯化物を用いてもよい。増粘剤にポリビニルピロリドンを適用した場合は、メチルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体、ポリアシッド化合物またはそのアルカリ金属塩(ポリアクリル酸またはタンニン酸、またはその誘導体)など用いてもよい。増粘剤にポリエチレンオキサイドを適用した場合は、パーキオサイドやポリスルホンアザイドなどを用いてもよい。増粘剤にメチルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体を適用した場合は、多官能ヒドロキシ化合物、ポリアミン、ヨウ素、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、鉄、水銀、鉛塩などを用いてもよい。増粘剤にゼラチンを適用した場合は、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、ジアルデヒドデンプンなどのアルデヒド類を用いてもよいし、グリオキサールやブタジエンオキシドなどのジエポキシド類を用いてもよいし、ジビニルケトンなどのジケトン類を用いてもよいし、ジイソシアネート類を用いてもよい。増粘剤にポリアクリル酸ナトリウムを適用した場合には、水酸化リチウム、水酸化亜鉛、水酸化アルミニウム、ほう酸ナトリウムなどの多価金属塩を架橋剤として添加してもよく、特に、亜鉛塩またはアルミニウム塩が望ましい。架橋剤として添加される多価金属塩の濃度は、増粘剤(または水溶性高分子)1当量に対し0.5〜1.5当量であってもよい。多価金属塩の濃度が0.5当量より小さくなると、反応が遅すぎてゲル強度が低くなる傾向が現れ出す。一方、多価金属塩の濃度が1.5当量より大きくなると、反応が速すぎてゲル化が不均一になり作業性が低下する傾向が現れ出す。
貼付剤10をプラスター剤として用いる場合には、粘着基剤としてゴム系粘着成分、アクリル系粘着成分、シリコン系粘着成分などを用いてもよい。
ゴム系粘着成分として、天然ゴムおよび合成ゴムのいずれも用いることができる。合成ゴムの例として、例えば、スチレン系ブロックコポリマーおよびポリイソブチレンが挙げられる。
スチレン系ブロックコポリマーの例としては、スチレン−ブチレン−スチレンブロックコポリマー(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー(SIS)、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロックコポリマー(SEBS)、およびスチレン−エチレン/プロピレン−スチレンブロックコポリマー(SEPS)が挙げられる。スチレン系ブロックコポリマーの具体例としては、クレイトンD−1112、D−1111、D−1107(商品名、クレイトンポリマー(株)製)、JSR5000またはJSR5002(商品名、日本合成ゴム(株)製)、クインタック3530、3421または3570C(商品名、日本ゼオン(株)製)、クレイトンD−KX401CSまたはD−1107CU(商品名、クレイトンポリマー(株)製)などのリニアトリブロックコポリマーや、クレイトンD−1124(商品名、クレイトンポリマー(株)製)、ソルプレン418(商品名、フィリップペトロリアム(株)製)などの分岐ブロックコポリマーなどが挙げられる。
ポリイソブチレンについては、高分子のものを用いてもよいし低分子のものを用いてもよい。例えば、オパノールB10、B12、B12SF、B15、B15SF、B30SF、B50、B50SF、B80、B100、B120、B150、B200(商品名、BASF(株)製)や、ビスタネックスLM−MS、LM−MH、LM−H、MM L−80、MM L−100、MM L−120、MM L−150(商品名、エクソン化学(株)製)などが挙げられる。
アクリル系高分子としては、モノマー単位として、例えば、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸−2−エチルヘキシルなどに代表される(メタ)アクリル酸エステルを少なくとも一種含有する重合体または共重合体などが用いられる。例えば、アクリル酸・アクリル酸オクチルエステル共重合体、アクリル酸−2−エチルヘキシル・N−ビニル−2−ピロリドン・ジメタクリル酸−1,6−ヘキサングリコール共重合体、アクリル酸−2−エチルヘキシル・酢酸ビニル共重合体、アクリル酸−2−エチルヘキシル・酢酸ビニル・アクリル酸共重合体、アクリル酸−2−エチルヘキシル・メタクリル酸−2−エチルヘキシル・メタクリル酸ドデシル共重合体、アクリル酸メチル・アクリル酸−2−エチルヘキシル共重合樹脂エマルジョン、アクリル樹脂アルカノールアミン液に含有するアクリル系高分子などの粘着剤を用いたり、Duro−Takアクリル粘着剤シリーズ(ナショナルスターチアンドケミカル社製)、GELVAアクリル粘着剤シリーズ(モンサント社製)、SKダインマトリダーム(綜研化学)、オイドラギットシリーズ(樋口商会)などを用いたりすることができる。
上記のゴム系、アクリル系、シリコン系などの粘着基剤は、一種のみでもよいし、二種以上の混合であってもよい。
貼付剤10をプラスター剤として用いる場合には、粘着付与剤、可塑剤、充填剤、または安定剤を適宜配合してもよい。
粘着付与剤の例としては、ロジン系樹脂および石油系樹脂が挙げられる。これらの樹脂に加えて、テルペン系樹脂、フェノール系樹脂、キシレン系樹脂などの他の種類の粘着付与剤をさらに用いてもよい。
ロジン系樹脂の例として、天然樹脂ロジン、変性ロジン、ロジンエステル(ロジングリセリンエステル、ロジンペンタエリスリトールエステルなど)、水添ロジンエステル(水添ロジングリセリンエステル、水添ロジンペンタエリスリトールエステルなど)が挙げられる。例えば、皮膚刺激性および耐老化性の観点から水添ロジンエステル、たとえば水添ロジングリセリンエステルを用いてもよい。ロジン系樹脂の具体例として、エステルガムH、パインクリスタルKE−100、KE−311(以上、荒川化学工業(株))、フォーラル85、フォーラル105、ステベライトエステル7、ステベライトエステル10(以上、理化ハーキュレス(株))などが挙げられる。1種のロジン系樹脂を用いてもよいし、2種以上のロジン系樹脂を組み合わせてもよい。
石油系樹脂の例としては、C5系合成石油樹脂(イソプレン、シクロペンタジエン、1,3−ペンタジエン、および1−ペンテンのうちの少なくとも2種の共重合体、2−ペンテンおよびジシクロペンタジエンのうちの少なくとも2種の共重合体、1,3−ペンタジエン主体の樹脂など)、C9系合成石油樹脂(インデン、スチレン、メチルインデン、およびα−メチルスチレンのうちの少なくとも2種の共重合体など)、ジシクロペンタジエン系合成石油樹脂(ジシクロペンタジエンを主体とするイソプレンおよび/または1,3−ペンタジエンとの共重合体など)が挙げられる。例えば、耐侯性、および粘着基剤との相溶性の観点からC9系合成石油樹脂を用いてもよい。
別の分類の観点から、石油系樹脂の例として、脂環族系石油樹脂(脂環族系飽和炭化水素樹脂などの脂環族系炭化水素樹脂)、脂環族系水添石油樹脂、脂肪族系石油樹脂(脂肪族系炭化水素樹脂)、脂肪族系水添石油樹脂、芳香族系石油樹脂などが挙げられる。粘着力、粘着基剤との相溶性、および耐老化性の観点から、脂環族系石油樹脂または脂環族系水添石油樹脂を用いてもよく、特に脂環族系水添石油樹脂を用いてもよい。このような石油系樹脂の具体例として、アルコン−P70、アルコンP−90、アルコンP−100、アルコンP−115、アルコンP−125(以上、荒川化学工業(株))、エスコレッツ8000(エッソ石油化学(株))などが挙げられる。1種の石油系樹脂を用いてもよいし、2種以上の石油系樹脂を組み合わせてもよい。
可塑剤の例としては、流動パラフィン、石油系オイル(パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイル等)、スクワラン、スクワレン、植物系オイル(オリーブ油、ツバキ油、ひまし油、トール油、ラッカセイ油等)、シリコンオイル、二塩基酸エステル(ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート等)、液状ゴム(ポリブテン、液状イソプレンゴム等)、サリチル酸グリコール等が挙げられる。一種の可塑剤を単独で用いてもよいし、2種以上の可塑剤を混合したものを用いてもよい。可塑剤の含有量は、粘着剤層14の全質量に対して5〜70質量%、10〜60質量%、または10〜50質量%の範囲内で適宜設定される。含有量を5質量%以上とするのは、軟化効果を高め、かつ付着力を向上させるためである。含有量を70%質量以下とするのは、製剤物性を向上させるためである。
粘着剤層14に含有される活性成分は、経皮的に体内に吸収されて薬理効果を発揮するものであれば特に限定されない。活性成分の例として、抗炎症剤、鎮痛剤、抗ヒスタミン剤、局所麻酔剤、血行促進剤、麻酔剤、精神安定剤、抗高血圧剤、抗菌剤、血管拡張剤などが挙げられる。
活性成分は限定されないが、例えば、催眠・鎮静薬(フルラゼパム、リルマザホン、フェノバルビタール、アモバルビタール、メデトミジン、デクスメデトシン等)、解熱消炎鎮痛薬(ブトルファノール、ペリソキサール、アセトアミノフェン、メフェナム酸、ジクロフェナク、アスピリン、アルクロフェナク、ケトプロフェン、フルルビプロフェン、ナプロキセン、ピロキシカム、ペンタゾシン、インドメタシン、フェルビナク、サリチル酸グリコール、アミノピリン、ロキソプロフェン、メロキシカム、ロルノキシカム等)、ステロイド系抗炎症薬(ヒドロコルチゾン、プレドニゾロン、デキサメタゾン、ベタメタゾン等)、興奮・覚醒薬(メタンフェタミン、アンフェタミン、メチルフェニデート等)、精神神経用薬(イミプラミン、ジアゼパム、セルトラリン、フルボキサミン、パロキセチン、シタロプラム、フルオキセチン、アルプラゾラム、ハロペリドール、クロミプラミン、アミトリプチリン、デシプラミン、アモクサピン、マプロチリン、ミアンセリン、セチプチリン、トラゾリドン、ロフェプラミン、ミルナシプラン、デュロキセチン、ベンラフェキシン、クロルプロマジン、チオリダジン、ジアゼパム、メプロバメート、エチゾラム、リスペリドン、アセナピン等)、ホルモン薬(エストラジオール、エストリオール、プロゲステロン、酢酸ノルエチステロン、酢酸メテノロン、テストステロン等)、局所麻酔薬(リドカイン、プロカイン、テトラカイン、ジブカイン、プロピトカイン等)、泌尿器官用薬(オキシブチニン、タムスロシン、プロピベリン、イミダフェナシン、ソリフェナシン、トルテロジン等)、骨格筋弛緩薬(チザニジン、エペリゾン、プリジノール、塩化スキサメトニウム等)、生殖器官用薬(リトドリン、メルアドリン)、抗てんかん薬(バルプロ酸、クロナゼパム、カルバマゼピン等)、自律神経用薬(塩化カルプロニウム、臭化ネオスチグミン、塩化ベタネコール等)、抗パーキンソン病薬(ペルゴリド、ブロモクリプチン、トリヘキシフェニジル、アマンタジン、タリペキソール、カベルゴリン、ドロキシドパ、ビペリデン、セレギリン、ロピニロール等)、利尿薬(ヒドロフルメチアジド、フロセミド等)、呼吸促進薬(ロベリン、ジモルホラミン、ナロキソン等)、抗片頭痛薬(ジヒドロエルゴタミン、スマトリプタン、エルゴタミン、フルナリジン、サイプロヘプタジン等)、抗ヒスタミン薬(クレマスチン、ジフェンヒドラミン、クロルフェニラミン、ジフェニルピラリン、プロメタジン等)、気管支拡張薬(ツロブテロール、プロカテロール、サルブタモール、クレンブテロール、フェノテロ−ル、テルブタリン、イソプレナリン、ホルモテロール等)、強心薬(イソプレナリン、ドパミン等)、冠血管拡張薬(ジルチアゼム、ベラパミル、硝酸イソソルビド、ニトログリセリン、ニコランジル等)、末梢血管拡張薬(ニカメタート、トラゾリン等)、禁煙補助薬(ニコチン、バレニクリン等)、循環器官用薬(フルナリジン、ニカルジピン、ニトレンジピン、ニソルジピン、フェロジピン、アムロジピン、ニフェジピン、ニルバジピン、マニジピン、ベニジピン、エナラプリル、テモカプリル、アラセプリル、イミダプリル、シラザプリル、リシノプリル、カプトプリル、トランドラプリル、ペリンドプリルエルブミン、アテノロール、ビソプロロール、メトプロロール、ベタキソロール、アロチノロール、セリプロロール、カルベジロール、カルテオロール、ベバントロール、バルサルタン、カンデサルタンシレキセチル、ロサルタンカリウム、クロニジン等)、不整脈用薬(プロプラノロール、アルプレノロール、プロカインアミド、メキシレチン、ナドロール、ジソピラミド等)、抗悪性潰瘍薬(シクロフォスファミド、フルオロウラシル、テガフール、プロカルバジン、ラニムスチン、イリノテカン、フルリジン等)、抗脂血症薬(プラバスタチン、シンバスタチン、ベザフィブレート、プロブコール等)、血糖降下薬(グリベンクラミド、クロルプロパミド、トルブタミド、グリミジンナトリウム、グリブゾール、ブホルミン等)、消化性潰瘍治療薬(プログルミド、セトラキサート、スピゾフロン、シメチジン、臭化グリコピロニウム等)、利胆薬(ウルソデスオキシコール酸、オサルミド等)、消化管運動改善薬(ドンペリドン、シサプリド等)、肝臓疾患用薬(チオプロニン等)、抗アレルギー薬(ケトチフェン、アゼラスチン、エメダスチン等)、抗ウイルス薬(アシクロビル等)、鎮暈薬(ベタヒスチン、ジフェニドール等)、抗生物質(セファロリジン、セフジニル、セフポドキシムプロキセチル、セファクロル、クラリスロマイシン、エリスロマイシン、メチルエリスロマイシン、カナマイシン、サイクロセリン、テトラサイクリン、ベンジルペニシリンカリウム、プロピシリンカリウム、クロキサシリンナトリウム、アンピシリンナトリウム、バカンピシリン、カルベニシリンナトリウム、クロラムフェニコール等)、習慣性中毒用薬(シアナミド等)、食欲抑制薬(マジンドール等)、化学療法薬(イソニアジド、エチオナミド、ピラジナミド等)、血液凝固促進薬(チクロピジン、ワルファリンカリウム等)、抗アルツハイマー薬(フィゾスチグミン、ドネペジル、タクリン、アレコリン、キサノメリン、ガランタミン、リバスチグミン等)、セロトニン受容体拮抗制吐薬(オンダンセトロン、グラニセトロン、ラモセトロン、アザセトロン、パロノセトロン等)、痛風治療薬(コルヒチン、プロベネシド、スルフィンピラゾン等)、麻薬系の鎮痛薬(モルヒネ、コデイン、コカイン、ペチジン、フェンタニル等)、抗真菌薬(テルビナフィン、ブテナフィン、アモロルフィン、ネチコナゾール、ミコナゾール、ルリコナゾール、イトラコナゾール、リラナフタート等)等が挙げられる。活性成分は、薬剤学的に許容可能な塩であってもよい。活性成分の量は、予め設定された有効量を貼付剤10を介して皮膚に適用できるように、貼付剤10の種類や用途などに応じて適宜選択される。
剥離シート16は、貼付剤10の使用前において粘着剤層14を保護するシート状部材である。
剥離シート16の略中央には、その全長または全幅にわたって弱化部16aが形成される。弱化部16aは、剥離シート16を分断しやすくするために設けられる。図1の例では弱化部16aは直線状のミシン目であるが、弱化部16aの態様はこれに限定されない。例えば、弱化部16aは薄肉でもよいし、ハーフカットでもよいし、他の形態でもよい。また、弱化部16aは波形や鋸歯形などを呈してもよい。
剥離シート16として、ポリプロピレン(例えば、無延伸ポリプロピレンや延伸ポリプロピレンなど)、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレンなどのプラスチックフィルムを用いてもよいし、合成樹脂、合成紙、または合成繊維にシリコン加工して得られるシリコン加工紙を用いてもよいし、アルミ箔またはクラフト紙にポリエチレンなどをラミネートして得られるラミネート加工紙などを用いてもよい。剥離シート16は無色でもよいし、少なくとも一部が着色されていてもよい。
マイクロニードル・アレイ20は、皮膚を穿刺するための器具である。本実施形態ではマイクロニードル・アレイ20は粘着剤層14により埋められる。マイクロニードル・アレイ20は、薄い基板21と、その基板21上に二次元状に設けられた多数のマイクロニードル22とを備える。なお、マイクロニードルの本数は限定されるものではなく、一本だけでもよい。図1の例では一つのマイクロニードル・アレイ20を示しているが、複数のマイクロニードル・アレイ20が粘着剤層14に埋め込まれてもよい。複数のマイクロニードル・アレイ20を用いる場合には、それらの形状および寸法が統一されていてもよいし、形状および寸法の少なくとも一方が互いに異なってもよい。
マイクロニードル・アレイ20(基板21およびマイクロニードル22)の材料は限定されない。例えば、シリコン、二酸化ケイ素、セラミック、金属(ステンレス、チタン、ニッケル、モリブテン、クロム、コバルト等)、合成または天然の樹脂素材などを用いてもよい。あるいは、マイクロニードル22の抗原性および材料の単価を考慮して、ポリ乳酸、ポリグリコリド、ポリ乳酸−co−ポリグリコリド、プルラン、カプロラクトン、ポリウレタン、ポリ無水物などの生分解性ポリマーを用いてもよいし、非分解性ポリマーであるポリカーボネート、ポリメタクリル酸、エチレンビニルアセテート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリオキシメチレンなどの合成または天然の樹脂素材を用いてもよい。あるいは、多糖類であるヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、プルラン、デキストラン、デキストリン若しくはコンドロイチン硫酸、セルロール誘導体などを用いてもよい。マイクロニードル22が皮膚上で折れる可能性を考慮して生分解性樹脂を採用してもよく、この場合にはポリ乳酸が望ましい。なお、ポリ乳酸には、ポリL−乳酸やポリD−乳酸のポリ乳酸ホモポリマ、ポリL/D−乳酸共重合体、およびこれらの混合体などが存在するが、これらのいずれを用いてもよい。ポリ乳酸の平均分子量が大きいほどその強度は強くなり、例えば平均分子量が40000〜100000のものを用いてもよい。
基板21は、マイクロニードル22を支持するための土台である。本明細書では、マイクロニードル22が立ち上がっている方の面を基板21の主面といい、その主面の反対側を基板21の裏面という。基板21の寸法は粘着剤層14の寸法を考慮して決めることができる。図1の例では基板21の面積は粘着剤層14の面積よりも小さいが、その面積比は限定されない。例えば、基板21と粘着剤層14とで面積が同じでもよい。あるいは、基板21の方が粘着剤層14より面積が大きくてもよく、この場合には、基板21の一部が露出することになる。所定の大きさの基板21をいくつかつなげることで所望の大きさの基板を構成するようにしてもよい。当然ながら、複数のマイクロニードル・アレイ20を粘着剤層14に埋め込む場合には複数の基板21が用意される。基板21の厚さは限定されない。例えば、その下限は5μmでも20μmでもよく、上限は1000μmでも300μmでもよい。
マイクロニードル22は、基板21の面と交差する方向に立ち上がった微小な構造物であり、基板21と接続する底部から先端部に向けて細くなるテーパ状を呈する。本明細書における「マイクロニードル」は、広い意味での針形状の構造物、および針形状を含む構造物だけでなく、先の尖っていない形状も含む概念である。
マイクロニードル22の密度の下限は例えば0.05本/cm2、1本/cm2、100本/cm2、200本/cm2、300本/cm2、または400本/cm2でもよい。一方、その密度の上限は例えば10000本/cm2、5000本/cm2、2000本/cm2、または850本/cm2でもよい。密度の下限は、1mgの活性成分を投与し得る針の本数と必要な面積とから換算した値であり、密度の上限は、針の形状を考慮した上での限界値である。
マイクロニードル22の長さの下限は20μmでも50μmでもよく、その上限は1000μmでも400μmでも300μmでもよい。ここで、マイクロニードル22の長さとは、基板21と接続する底部から先端までの距離である。マイクロニードル22の長さを20μm以上とするのは、活性成分の経皮吸収を確実にするためである。その長さを400μm以下に設定した場合には、マイクロニードル22が皮膚の角質を穿孔するのをより確実に防ぐことができる。マイクロニードル22の長さが300μm以下であると、皮膚内に入るべき量の活性成分を効率良く投与することができる。マイクロニードル22は、通常使用において皮膚の角質層を貫通しないものが好ましいが、一部のマイクロニードル22が角質層を貫通することもあり得る。
マイクロニードル22の形状は限定されない。例えば、マイクロニードル22は図2に示すような立体形状であってもよいし、図3に示すような平面形状であってもよい。
マイクロニードル22が立体形状である場合には、マイクロニードル22は円錐でもよいし、四角錐などの任意の角錐(例えば四角錐)でもよい。図2ではマイクロニードル22は円錐である。あるいは、マイクロニードル22は錐体でなくてもよく、例えば先端部が平坦であったり丸みを帯びたりしていてもよい。先端部が平坦なマイクロニードルは、意図的に加工することで得られる場合もあれば、そのような加工をしなくても結果的に得られる場合もあり得る。先端部が丸みを帯びたマイクロニードルについても同様であり、意図的に加工することで得られたり、そのような加工をしなくても結果的に得られたりする。先端部が平坦である場合には、その平坦部の面積は20〜600μm2であってもよいし、50〜250μm2であってもよい。先端部が丸みを帯びている場合には、先端部の曲率半径が2〜100μmであってもよいし、5〜30μmであってもよい。
立体形状のマイクロニードル22を有するマイクロニードル・アレイ20の製法として、シリコン基板を用いたウエットエッチング加工またはドライエッチング加工、金属または樹脂を用いた精密機械加工(放電加工、レーザ加工、ダイシング加工、ホットエンボス加工、射出成型加工など)、機械切削加工などが挙げられる。これらの加工法により、基板21とマイクロニードル22とが一体に成型される。マイクロニードル22を中空にするのであれば、マイクロニードル22を作製後にレーザ加工などで二次加工する方法が挙げられる。
マイクロニードル22が平面形状である場合には、マイクロニードル22は三角形でもよいし、菱形などの他の形状でもよい。図3ではマイクロニードル22は三角形である。
平面形状のマイクロニードル22は、基板21を打ち抜いて多数のマイクロニードル22を形作り、そのマイクロニードル22を基板21から立ち上げることで出来上がる。基板21が金属であれば、薬液でそのシートを打ち抜くことで多数のマイクロニードル22を形成し、そのマイクロニードル22を起こすことでマイクロニードル・アレイ20を形成することができる。基板21が非金属であれば、レーザでその基板21を打ち抜くことで多数のマイクロニードル22を形成し、金属シートの場合と同様にそのマイクロニードル22を起こせばよい。これらのようにエッチングを用いる場合には、各マイクロニードル22の周囲に空隙が生ずる。もちろん、エッチング以外の任意の手法によりマイクロニードル・アレイ20を形成してもよい。
マイクロニードル22の形状に関わらず、マイクロニードル22の先端が向く方向(マイクロニードル22の先端方向)は、基板21の面に対して垂直でもよいし、その面に対して鋭角の方向(すなわち、マイクロニードル22の傾斜角度が0度より大きくかつ90度未満)でもよい。図2ではマイクロニードル22が基板21と垂直な方向を向き、図3ではそれが基板21に対して傾斜しているが、立体形状のマイクロニードルが基板に対して傾斜してもよいし、平面形状のマイクロニードルが基板から垂直に立ち上がってもよい。
次に、貼付剤10の製造方法について説明する。まず、支持体12の一方の面と基板21の裏面とが接するように支持体12上にマイクロニードル・アレイ20を配置する。この際にマイクロニードル・アレイ20を支持体12に接着してもよい。続いて、そのマイクロニードル・アレイ20を埋めるように粘着剤を展着することで粘着剤層14を形成する。このとき、マイクロニードル22の全体が粘着剤層14に完全に埋まってもよいし、マイクロニードル22の先端が粘着剤層14から露出してもよい。すなわち、粘着剤層14の厚さはマイクロニードル・アレイ20の高さより大きくてもよいし、その高さと同じでもよいし、その高さより小さくてもよい。なお、マイクロニードル・アレイ20の高さとは、基板21の裏面からマイクロニードル22の先端までの距離である。続いて、弱化部16aが形成された剥離シート16を粘着剤層14の作用面に貼り付ける。
貼付剤10は、皮膚に刺さったマイクロニードル22をその皮膚から離れる方向(本明細書ではこれを「引抜方向」ともいう)に移動させるための弾性を有する。この弾性は、支持体12、粘着剤層14、および基板21のうちの少なくとも一つから生じるものであればよい。例えば、貼付剤10の弾性は、粘着剤層14が有する弾性のみから成ってもよいし、支持体12および粘着剤層14の弾性の混合であってもよいし、粘着剤層14および基板21の弾性の混合であってもよいし、支持体12、粘着剤層14、および基板21の弾性の混合であってもよい。あるいは、貼付剤10の弾性は、支持体12、粘着剤層14、および基板21の少なくとも一つが有する弾性と、それら3要素以外の構成要素が有する弾性との混合であってもよい。
穿刺により形成された穴のうち粘着剤層14に対して露出する領域がマイクロニードル22の移動により広がるのであれば、支持体12、粘着剤層14、および基板21のうちの少なくとも一つが有する弾性の程度は限定されない。例えば、その弾性は、マイクロニードル22を皮膚から完全に抜くことができる程度であってもよいし、マイクロニードル22の一部(例えば先端部)が穴から完全に抜けないが、少なくともそのマイクロニードル22を引抜方向に動かすことができる程度であってもよい。なお、「弾性の程度」を表す指標の例として弾性率があるが、弾性の程度を調整する際に着目する指標は弾性率に限定されない。
貼付剤10の弾性は、支持体12、粘着剤層14、および基板21のそれぞれの材料を考慮することで調整することができる。例えば、マイクロニードル22を引抜方向に動かすことができる粘着基剤を選択してもよいし、粘着剤層14に増粘剤または粘着付与剤を含めてもよい。
あるいは、粘着剤層14の厚さをマイクロニードル・アレイ20の高さ以上に設定することで、マイクロニードル22を引抜方向に動かすための弾性を確保してもよい。例えば、粘着剤層14の厚さをマイクロニードル22の高さよりも大きくすることで、マイクロニードル22をより確実に皮膚から引き抜くことができる。
次に、図4,5を参照しながら、貼付剤10の使用方法について説明する。図4はマイクロニードル22が基板21から垂直に立ち上がっている場合を示し、図5はマイクロニードル22が基板21から斜めに立ち上がっている場合を示す。
まず、ユーザは貼付剤10の両端部を摘み、支持体12と共に剥離シート16を左右に引っ張ることで、弱化部16aに沿って剥離シート16を分断する。その結果、支持体12上の粘着剤層14が露出する。あるいは、ユーザは、弱化部16aに沿って剥離シート16を分断した後に、一方の剥離シート16を剥離して支持体12上の粘着剤層14の半分を露出させてもよい。次に、ユーザは露出した粘着剤層14を皮膚Sに当てる。このとき、粘着剤層14のうち皮膚Sに接した部分は、貼付剤10を皮膚Sに仮止めする役割を果たす。続いて、ユーザは剥離シート16の残りの部分を粘着剤層14から剥がしながらその粘着剤層14を皮膚Sに貼る。図4,5のそれぞれ上段に示すように、貼付剤10が貼られた直後は、マイクロニードル22はまだ粘着剤層14の中に埋まったままである。
続いて、ユーザは、支持体12の上からマイクロニードル22の先端方向に沿って貼付剤10を皮膚Sに向かって押す。図2のようにマイクロニードル22が基板21から垂直に立ち上がっているのであれば、ユーザは図4の矢印Aaに示すように貼付剤10を皮膚Sに向かって垂直方向に押す。図3のようにマイクロニードル22が基板21から斜めに立ち上がっているのであれば、ユーザは図5の矢印Acに示すように貼付剤10を皮膚面に沿ってずらしながら(平行移動させながら)押し込む。なお、貼付剤10を押す手段は限定されず、ユーザは指で貼付剤10を押してもよいし、アプリケータなどの補助具を用いて貼付剤10を押してもよい。この操作により、図4,5のそれぞれ中段に示すように、マイクロニードル22が粘着剤層14から露出して皮膚Sに刺さる。ここで、「マイクロニードルが粘着剤層から露出する」という概念は、それまで粘着剤層に埋まっていたマイクロニードルの部分が粘着剤層から露出することをいう。この概念は、最初からマイクロニードル22の先端が粘着剤層14から露出している場合にそのマイクロニードル22の残りの部分がユーザの押し込みにより露出する場合も含む。
その後、ユーザは貼付剤10を押すのを止める。すると、図4,5のそれぞれ下段に示すように、貼付剤10が全体として、ユーザにより押された方向とは逆の方向に移動する。個々のマイクロニードル22に注目すると、それは、皮膚Sへの進入方向とは逆の方向に向かって移動する。その移動方向は、図4では矢印Abで示され、図5では矢印Adで示される。このようにマイクロニードル22が移動するのは、支持体12、粘着剤層14、および基板21のうちの少なくとも一つが有する弾性のためである。マイクロニードル22は皮膚Sから完全に抜けるかもしれないし、完全には抜けないかもしれない(すなわち、マイクロニードル22の先端が皮膚S内に残るかもしれない)。いずれにしてもマイクロニードル22は、その弾性により、皮膚Sから離れる方向に移動する。
この移動により、マイクロニードル22により開けられた皮膚S上の穴Hの一部または全部が、マイクロニードル22で塞がれずに粘着剤層14に対して開放される。粘着剤層14内の活性成分は、その穴Hを介して、あるいは穴H以外の部分から皮膚S内に浸透する。活性成分は多数の穴Hから皮膚S内に容易に浸透するので、マイクロニードル・アレイ20を用いない場合よりも効率的に(より早く、またはより多く)活性成分を経皮吸収させることができる。
以上説明したように、本発明の一側面に係る貼付剤は、支持体と、支持体の一方の面に設けられ、かつ活性成分を含む粘着剤層と、基板上に設けられたマイクロニードルを有するマイクロニードル・アレイとを備え、マイクロニードルが、粘着剤層の中から露出して皮膚に刺さった後に、弾性により該皮膚から離れる方向に移動する。
このような側面においては、皮膚に刺さったマイクロニードルが弾性によりその皮膚から離れる方向に移動するので、穿刺により生じた皮膚上の穴の少なくとも一部が、マイクロニードルで塞がれることなく露出する。そして、活性成分の少なくとも一部がその開放された穴を介して容易に皮膚内に浸透するので、活性成分の効率的な経皮吸収が実現される。皮膚表面のバリアを壊すマイクロニードルを貼付剤そのものの弾性により引抜方向に動かすことで、活性成分の透過性を高めるために溶解補助剤および吸収促進剤を用いなくても、活性成分の皮膚透過速度および累積透過量を上げることができる。
他の側面に係る貼付剤では、マイクロニードルが、支持体、粘着剤層、および基板のうちの少なくとも一つが有する弾性により、皮膚から離れる方向に移動してもよい。貼付剤そのものが有する弾性によりマイクロニードルが引抜方向に動かすことができるので、他の補助具を用いることなく貼付剤そのものによりマイクロニードルを皮膚から引き出すことができる。
他の側面に係る貼付剤では、マイクロニードルが予め粘着剤層の中に設けられてもよい。この場合には、マイクロニードル・アレイと支持体および粘着剤層とが一体化するので、貼付剤の取り扱いが容易になる。
他の側面に係る貼付剤では、粘着剤層の厚さがマイクロニードル・アレイの高さよりも大きくてもよい。この場合には、マイクロニードルを引抜方向に動かし易くすることができる。また、マイクロニードルの全体が隠れるので、貼付剤の使用前にマイクロニードルが意図せず皮膚に刺さる事態を避けることができる(安全性の向上)。
他の側面に係る貼付剤では、マイクロニードルが基板に対して傾斜してもよい。この場合には、貼付剤を皮膚面に沿ってずらしながらマイクロニードルを皮膚に刺すことができる。
(第2実施形態)
図6,7を参照して、第2実施形態に係る貼付剤10Aを説明する。貼付剤10Aは、第1実施形態と同様の支持体12、粘着剤層14、および剥離シート16と、粘着剤層14内に埋め込まれたマイクロニードル・アレイ20Aとを備える。本実施形態では、貼付剤10Aおよびマイクロニードル・アレイ20Aは共に円形である。
マイクロニードル・アレイ20Aを構成するマイクロニードル22は、図3の例と同様に平面形状であり、上記と同様の製法で作成することができる。ただし、マイクロニードル22の先端方向は垂直ではなく、マイクロニードル22は基板21に対して傾斜する。マイクロニードル22を皮膚に刺すためには、マイクロニードル・アレイ20Aを回転移動させながら皮膚に向けて押し込む必要がある。このようにマイクロニードル・アレイ20Aをねじるような操作が必要であることから、マイクロニードル・アレイ20Aは「ねじり型のマイクロニードル・アレイ」ということができる。
図7に示すように、本実施形態におけるマイクロニードル・アレイは、それぞれが基板21の径方向に沿って延びる複数の列の集合である。各列は複数のマイクロニードル22から成る。複数の列は基板21の中心付近から放射状に延びる。本実施形態では隣り合う2列の成す角度がすべて30°であるが、この角度は限定されるものではない。例えば、その角度は10°、15°、45°、60°、90°、120°、あるいは180°であってもよい。また、その角度は不均一であってもよい。マイクロニードル・アレイ20Aの全体を見ると、すべてのマイクロニードル22が向く方向は、時計回り又は反時計回りの方向に統一される。一つの列内にある複数のマイクロニードル22の先端はすべて同じ方向を向く。
マイクロニードル・アレイ20Aにおけるマイクロニードル22の長さは均一でなくてもよい。例えば、基板21の周縁部に位置するマイクロニードル22よりも基板21の中心部に位置するマイクロニードル22の方が長くてもよい。この更なる変形として、それぞれの列において、基板21の周縁部から中心部に進むに従ってマイクロニードル22が次第に長くなっていくように個々のマイクロニードル22が形成されてもよい。あるいは、基板21の周縁部に位置するマイクロニードル22よりも基板21の中心部に位置するマイクロニードル22の方が短くてもよい。この更なる変形として、それぞれの列において、基板21の周縁部から中心部に進むに従ってマイクロニードル22が次第に短くなっていくように個々のマイクロニードル22が形成されてもよい。
マイクロニードル22の傾斜角度は均一でなくてもよい。例えば、基板21の周縁部に位置するマイクロニードル22よりも基板21の中心部に位置するマイクロニードル22の方が、傾斜角度が大きくてもよい。この更なる変形として、それぞれの列において、基板21の周縁部から中心部に進むに従ってマイクロニードル22の傾斜角度が次第に大きくなっていくように個々のマイクロニードル22が形成されてもよい。上記のように個々のマイクロニードル22の長さを異ならせる場合には、マイクロニードル22の高さが同じかまたはほぼ同じになるように、個々のマイクロニードル22の傾斜角度を設定してもよい。
マイクロニードル22の長さおよび傾斜角度の双方が均一でなくてもよい。例えば、基板21の周縁部に位置するマイクロニードル22よりも基板21の中心部に位置するマイクロニードル22の方が、長さおよび傾斜角度が大きくてもよい。この更なる変形として、それぞれの列において、基板21の周縁部から中心部に進むに従ってマイクロニードル22の長さおよび傾斜角度が次第に大きくなっていくように個々のマイクロニードル22が形成されてもよい。あるいは、基板21の周縁部に位置するマイクロニードル22よりも基板21の中心部に位置するマイクロニードル22の方が、短くかつ傾斜角度が大きくてもよい。この更なる変形として、それぞれの列において、基板21の周縁部から中心部に進むに従って、マイクロニードル22が短くなる一方で傾斜角度が次第に大きくなっていくように個々のマイクロニードル22が形成されてもよい。
基板21の周縁部におけるマイクロニードル22と基板21の中心部におけるマイクロニードル22との間で長さまたは傾斜角度を変えることで、基板21の中心部に位置するマイクロニードル22をより確実に皮膚に刺すことができる。
マイクロニードル22の長さおよび傾斜角度の少なくとも一方を均一にしない場合には、粘着剤層14の厚さをマイクロニードル・アレイ20Aの高さの最大値と同じにしてもよいし、その最大値より大きくしてもよい。
個々のマイクロニードル22の先端は、該マイクロニードル22の回転方向を示す仮想円の接線方向に向いてもよい。図7の例はその一態様である。あるいは、個々のマイクロニードル22の先端は、その接線方向よりも基板21の中心側の方に向いてもよい。この場合には、穿刺時に個々のマイクロニードル22に掛かる抵抗を減らすことができる。
次に、図8を参照しながら、貼付剤10Aの使用方法について説明する。まず、ユーザは第1実施形態と同様に貼付剤10Aを皮膚に貼る。図8の上段に示すように、貼付剤10Aが貼られた直後は、マイクロニードル22はまだ粘着剤層14の中に埋まったままである。
続いて、ユーザは、支持体12の上からマイクロニードル22の先端方向に沿って貼付剤10Aを皮膚Sに向かって押す。より具体的には、ユーザは図8の矢印Aeに示すように貼付剤10Aを皮膚面に沿ってねじりながら(時計回りまたは反時計回りの方向に回しながら)押し込む。この回転および押し込みにより、図8のそれぞれ中段に示すように、マイクロニードル22が粘着剤層14から露出して皮膚Sに刺さる。
その後、ユーザは貼付剤10Aを押すのを止める。すると、図8の下段に示すように、貼付剤10Aが全体として、ユーザにより押された方向とは逆の方向に移動する。個々のマイクロニードル22に注目すると、それは、皮膚Sへの進入方向とは逆の方向(図8における矢印Afで示される方向)に向かって移動する。このようにマイクロニードル22が移動するのは、支持体12、粘着剤層14、および基板21のうちの少なくとも一つが有する弾性のためである。マイクロニードル22は皮膚Sから完全に抜けるかもしれないし完全には抜けないかもしれないが、いずれにしてもマイクロニードル22は、その弾性により、皮膚Sから離れる方向に移動する。
この移動により、マイクロニードル22により開けられた皮膚S上の穴Hの一部または全部が、マイクロニードル22で塞がれずに粘着剤層14に対して開放される。粘着剤層14内の活性成分は、その穴Hを介して、あるいは穴H以外の部分から皮膚S内に浸透する。したがって、上記実施形態と同様に、粘着剤層14内の活性成分を効率的に経皮吸収させることができる。
以上説明したように、本実施形態においても、第1実施形態と同様の効果が得られる。すなわち、活性成分の効率的な経皮吸収、補助具なしでのマイクロニードルの引き出し、貼付剤の取り扱いの容易さ、および貼付剤の安全性の向上が期待できる。また、本実施形態によれば、貼付剤をねじりながらマイクロニードルを皮膚に刺すことができる。
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はそれらに何ら限定されるものではない。
[ねじり型マイクロニードル・アレイの製造方法]
上記第2実施形態で示したねじり型マイクロニードル・アレイを作製した。具体的には、厚さ50μmのSUS304の薄板をプレス機で打ち抜くことでマイクロニードル・アレイを形作り、その後マイクロニードルを基板に対して鋭角に立ち上げることで、マイクロニードル・アレイを作成した。今回の試験に用いたマイクロニードル・アレイの試作条件は以下の通りである。
・基板の形状:半径1cmの円
・マイクロニードルの長さ:300μm
・マイクロニードルの先端角度:45度
・マイクロニードルの傾斜角度:30度
・マイクロニードルの本数:84本
[穿刺試験用の貼付剤の製造方法]
粘着剤層を形成するための溶液を以下のように調整した。すなわち、59.75質量%のDuro−Tak 87−2194と、40質量%のパルミチン酸イソプロピル(IPM)と、0.25質量%の酸化亜鉛とを混合し、そしてエタノールを添加することで、固形分濃度が57質量%である溶液を作製した。続いて、支持体であるポリエチレンテレフタラート製フィルム(サンドマット加工、厚み25μm)にその溶液を、乾燥後の第1の粘着剤層の厚みが約10μmとなるように塗布し、80℃の条件下で10分間乾燥することで、該第1の粘着剤層を形成した。続いて、ねじり型マイクロニードル・アレイを第1の粘着剤層上に設置した。続いて、上記の溶液を、乾燥後の第2の粘着剤層の厚みが約170μmになるようにマイクロニードル・アレイ上に塗布し、80℃の条件下で30分間乾燥することで、該第2の粘着剤層を形成した。このとき、マイクロニードルの先端から第2の粘着剤層の表面(作用面に相当する)までの距離は約20μmであり、したがって、マイクロニードルの全体は粘着剤層に完全に覆われた。続いて、剥離シートである、シリコン処理されたポリエチレンテレフタラート製フィルム(厚み75μm)を第2の粘着剤層上に重ねた。最後に、ねじり型マイクロニードル・アレイの基板が露出しないように裁断することで貼付剤を得た。
[アルミ箔を用いた穿刺試験]
硬度5のゲルシートに厚さ12μmのアルミ箔を敷き、その上に、剥離シートを取り除いた貼付剤を貼付した。続いて、直径22mmの棒を用いてその貼付剤をアルミ箔側に押し付けながら約20度回転させ、その後、貼付剤からその棒を離した。そして、その貼付剤を10秒間そのままの状態にし、その後、アルミ箔の状態を貼付剤の上からマイクロスコープで観察した。
その結果、マイクロニードル・アレイが、貼付剤の弾性により、棒による回転の方向とは逆方向に動いて穿刺箇所から外れ、穿刺により形成された穴に粘着剤層内の成分が入り込むことが確認できた。
[透過試験用の貼付剤の製造方法]
粘着剤層を形成するための溶液を以下のように調整した。すなわち、77質量%のDuro−Tak 87−2516と、7.5質量%のガランタミンと、12.5質量%のオレイン酸と、3質量%のパルミチン酸イソプロピルとを混合し、そしてエタノールを添加することで、固形分濃度が46質量%である溶液を作製した。
厚さ90μmのアクリル製両面テープ(スリーエム社製)を、支持体であるポリエチレンテレフタラート製フィルム(サンドマット加工、厚み25μm)に積層した。続いて、ねじり型マイクロニードル・アレイを両面テープ上に設置した。続いて、ニードルの主面に乾燥後の厚みが170μmになるようにその溶液をマイクロニードル・アレイ上に塗布し、80℃の条件下で30分間乾燥することで、粘着剤層を形成した。このとき、マイクロニードルの先端から粘着剤層の作用面までの距離は約20μmであり、したがって、マイクロニードルの全体は粘着剤層に完全に覆われた。続いて、剥離シートである、シリコン処理されたポリエチレンテレフタラート製フィルム(厚み75μm)を粘着剤層上に重ねた。最後に、ねじり型マイクロニードル・アレイの基板が露出しないように裁断することで貼付剤を得た。
[ヒト皮膚を用いた透過試験]
ダーマトーム処理したin vitroヒト皮膚(腹部)を用意し、コルク板にその皮膚を置き、角質層側に、剥離シートを除いた貼付剤を貼った。続いて、直径22mmの棒を用いてその貼付剤を皮膚へ押し付けながら約20度回転させ、その後、貼付剤からその棒を離した。続いて、真皮側をレセプタ層側に向けた状態で、32℃の温水を外周部に循環させたフロースルー型拡散セル(3cm2)に、貼付剤を貼った皮膚を装着した。レセプタ層においてはリン酸緩衝生理食塩水を一定流量で置換させ、所定時間毎に溶液をサンプリングした。得られた溶液のガランタミン濃度を高速液体クロマトグラフ法により測定し、この測定結果から下記式に従って皮膚透過速度を求めた。
皮膚透過速度(μg/cm2/h)={ガランタミン濃度(μg/ml)×1時間当たりの流量(ml/h)}/貼付剤の適用面積(cm2)
また、試験開始からの累積透過量(μg/cm2)も計算した。
皮膚透過速度の結果を図9に示し、累積透過量の結果を図10に示す。これらのグラフでは、マイクロニードル・アレイを備えない貼付剤を比較例として示す。両方のグラフにおいて、横軸は貼付剤を適用してからの経過時間(h)を示す。これらのグラフからわかるように、マイクロニードル・アレイを備える貼付剤の方が高い透過性能を示した。
以上、本発明をその実施形態に基づいて詳細に説明した。しかし、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
支持体は、マイクロニードル・アレイの側とは反対の方向に凸となるように湾曲してもよい。この変形例を図11に示す。図11(a)は貼付剤10Bの断面図であり、図11(a)は貼付剤10Cの断面図である。
貼付剤10Bでは、マイクロニードル・アレイ20は湾曲せずに平坦である。マイクロニードル・アレイ20は周縁部においてのみ支持体12と接し、貼付剤10Bの中央部では支持体12とマイクロニードル・アレイ20との間に隙間が生じる。この隙間には、粘着剤層14が充填される。
貼付剤10Cでは、マイクロニードル・アレイ20は支持体12に沿って湾曲し、その全体において支持体12と接する。したがって、支持体12とマイクロニードル・アレイ20との間には空間は生じない。粘着剤層14の作用面は平坦である。
貼付剤10B,10Cの双方において、マイクロニードル・アレイ20が粘着剤層14により埋められる点、および粘着剤層14が剥離シート16で保護される点は、上記各実施形態と同様である。
これらの貼付剤10B,10Cを用いた場合には、上記実施形態と同様の効果を奏する。この変形例では、支持体12がその弾性により元の凸状に戻ろうとすることに起因してマイクロニードル22が引抜方向に移動する。
マイクロニードル・アレイは、予め粘着剤層に埋め込まれなくてもよい。すなわち、マイクロニードル・アレイは粘着剤層の外側にあってもよい。この変形例を図12に示す。図12は貼付剤10Dの断面図である。この貼付剤10Dは、従来の貼付剤の上にマイクロニードル・アレイ20を載せることで得られる。マイクロニードル22の先端は支持体12の方を向く。使用前において、マイクロニードル・アレイ20はテープなどにより支持体12に固定されていてもよいし、固定されていなくてもよい。
貼付剤10Dを用いる際には、ユーザは剥離シート16を剥がして粘着剤層14を皮膚に貼る。続いて、ユーザは基板21の上からマイクロニードル22の先端方向に向かってマイクロニードル・アレイ20を押す。すると、マイクロニードル22が支持体12を突き破り、粘着剤層14内を貫通して、皮膚に刺さる。その後、ユーザがマイクロニードル・アレイ20を押すのを止めると、個々のマイクロニードル22が皮膚への進入方向とは逆の方向に向かって移動する。この移動により、マイクロニードル22により開けられた皮膚上の穴の一部または全部が、マイクロニードル22で塞がれずに粘着剤層14に対して開放されるので、上記実施形態と同様に、活性成分を効率的に経皮吸収させることができる。
上記実施形態では矩形および円形の貼付剤を示したが、貼付剤の形状はこれらに限定されず、例えば正方形、星形、楕円、他の多角形などの任意の形状であってよい。マイクロニードル・アレイの形状は、貼付剤の形状と同じでもよいし異なってもよい。