JP6506162B2 - マイクロニードル・シート - Google Patents

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Description

本発明の一側面は、マイクロニードルによる活性成分の投与を補助するために用いるマイクロニードル・シートに関する。
従来から、皮膚を介して活性成分を投与するマイクロニードル、及びそのマイクロニードルを備える装置が知られている。例えば下記特許文献1に記載されている回転可能な微細構造装置は、曲線状の基材と、この基材の第1表面上に貼り付けられた複数の微細要素を含むローラー構造とを具備している。複数の微細要素は、微細構造装置が皮膚の上に置かれて所定の方向に転がるときに皮膚の角質層を貫通するように、所定の大きさ及び形状を有する。
特表2005−503210号公報 国際公開第2013/187392号
しかしながら、上記特許文献1に記載の微細構造装置ではローラー上で微細要素がむき出しになっているので、マイクロニードルを介して活性成分を皮膚に適用しようとする前に当該ニードルが他の物(例えばユーザの皮膚や衣服など)に当たったり引っ掛かったりしてしまう可能性がある。そこで、マイクロニードルの取扱時の安全性を確保することが要請されている。
かかる課題を解決するために、特許文献2では、シートの主面に略沿って該シートに形成された複数のマイクロニードルを備え、シートが曲げられることでマイクロニードルが主面から立ち上がり、立ち上がった該マイクロニードルが皮膚に刺さる、マイクロニードル・シートが提案されている。かかるマイクロニードル・シートでは、シートが曲げられるまでは、マイクロニードルがシートの主面に略沿った状態にある。このことは、マイクロニードルが皮膚に適用されるまでは、マイクロニードルの先端が当該主面上から突き出ていないことを意味する。したがって、マイクロニードル・シートを皮膚に適用しない限り、マイクロニードルが他の物に当たったり引っ掛かったり心配がない。その結果、マイクロニードルの取扱時の安全性を確保することができる。ここで、かかるマイクロニードル・シートには、マイクロニードルが皮膚に刺さりやすいという特性、すなわち穿刺性が要求される。
本発明の一側面に係るマイクロニードル・シートは、シートの主面に略沿って該シートに形成された複数のマイクロニードルを備え、JIS L 1096:2010に規定されるスライド法に準拠して測定した前記シートの下降距離は4.5cm〜12.9cmであり、前記シートの材質は金属であり、シートが曲げられることでマイクロニードルが主面から立ち上がる。立ち上がったマイクロニードルは皮膚に刺さる。
このような側面においては、マイクロニードル・シートは優れた穿刺性を示す。
本発明の一側面によれば、マイクロニードルの取扱時の安全性を確保することができるとともに、優れた穿刺性を示す。
実施形態に係るマイクロニードル・シートの平面図である。
本明細書において、下降距離とは、JIS L 1096:2010に規定される8.21.2B法(スライド法)に準拠して測定した下降距離を意味する。すなわち、下降距離とは、スライド型試験機本体と移動台との上面が一致するようにしてから、5mm×150mmの試験片(マイクロニードル・シート)を設置し、試験片の端部2cmをウェイトで固定し、静かにハンドルを回して移動台を下降させ、試験片の自由端が移動台から離れた時点での下降距離(cm)を意味する。
本明細書において、三点曲げ荷重値とは、JIS K 7171:2008に規定される方法に準拠して測定した三点曲げ荷重値を意味する。すなわち、三点曲げ荷重値とは、5mm×30mmの試験片(マイクロニードル・シート)を左右の支持台の上に対称的に設置し(圧子の半径:0.5mm、支点間距離:5mm)、試験片の支点間中央に圧子を1mm/secの試験速度で下降させ、試験片が所定のたわみ状態(圧子が試験片に接触してから5mm押し込んだ位置)になるまで曲げられる間の最大荷重値(N)を意味する。
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。
図1を用いて、実施形態に係るマイクロニードル・シート10の構造を説明する。マイクロニードル・シート10は、生体内に任意の活性成分(例えば薬剤)を投与するための器具であり、皮膚に刺さる多数のマイクロニードルを有する。
図1に示すように、マイクロニードル・シート10は帯状であり、シートの主面11に略沿って該シートに形成された複数のマイクロニードル12を有する。これらのマイクロニードル12はシートの長手方向及び幅方向のそれぞれにおいて整列するように並んでおり、すべてのマイクロニードル12の先端は例外なくシートの一端(図1では左方向)を向いている。
マイクロニードル・シートの下降距離は、4.5cm〜12.9cmである。下降距離が上記範囲内であると、マイクロニードル・シートは優れた穿刺性を示す。穿刺後の巻き戻り性の観点から、マイクロニードル・シートの下降距離は、6.2cm〜12.9cmであってもよい。
マイクロニードル・シートの三点曲げ荷重値は、0.008N〜3.02Nであってもよい。三点曲げ荷重値が上記範囲内であると、マイクロニードル・シートは優れた屈曲性を示す傾向がある。
マイクロニードル・シート10及びマイクロニードル12の材質は金属である。金属としては、マイクロニードル・シート10及びマイクロニードル12を形成できる金属であれば特に限定されないが、具体的には例えば、鉄、クロム、ニッケル、モリブデン、チタン、アルミニウム、バナジウム、パラジウム、ルテニウム、タンタル、コバルト、ニオブ、ジルコニウム、貴金属(金、銀、銅、白金等)、アルカリ金属(ナトリウム、カリウム等)、アルカリ土類金属(マグネシウム、カルシウム等)、及びこれらの合金(ステンレス鋼、チタン合金等)が挙げられる。
ステンレス鋼としては、例えば、ステンレス鋼総量に対してクロムを18%〜20%、及びニッケルを8%〜10.5%含有するSUS304類(具体例;SUS304、SUS304Cu、SUS304L、SUS304N1、SUS304N2、SUS304LN、SUS304J1、SUS304J2等)、クロムを16%〜18%、ニッケルを10%〜14%、及びモリブデンを2%〜3%含有するSUS316類(具体例;SUS316、SUS316L、SUS316LN、SUS316Ti、SUS316J1、SUS316J1L等)が挙げられる。
チタンとしては、例えば、JIS規格1種、2種、3種、及び4種のチタンが挙げられる。
チタン合金としては、例えば、チタン合金総量に対してアルミニウムを5.5%〜6.75%、及びバナジウムを3.5%〜4.5%含有するJIS規格60種のチタン合金、チタン合金総量に対してアルミニウムを5.5%〜6.5%、及びバナジウムを3.5%〜4.5%含有するJIS規格60種Eのチタン合金、チタン合金総量に対してアルミニウムを2.5%〜3.5%、及びバナジウムを2.0%〜3.0%含有する、JIS規格61種のチタン合金等が挙げられる。
金属としては、マイクロニードル・シートの生体適合性、屈曲部の移動性、屈曲しやすさ、及び穿刺性の観点から、SUS304、SUS316L、チタン、チタン合金が好ましい。
マイクロニードル12はレーザー、エッチングなどにより形成することができる。図1に示すように本実施形態ではマイクロニードル12は三角形状であるが、マイクロニードルの形状は何ら限定されない。マイクロニードル12を予めシートの主面11から立ち上げておく必要がないので、マイクロニードル・シート10を容易かつ安価に製造することができる。
マイクロニードル・シート10の厚さも限定されない。具体的には、マイクロニードル・シート10の厚さの下限は5μmでも20μmでもよく、厚さの上限は1000μmでも300μmでも70μmでも50μmでもよい。マイクロニードル・シート10の厚さの下限は、皮膚を穿刺するマイクロニードル12の強度を考慮して定められ、厚さの上限はシートの屈曲性やマイクロニードル12の穿刺性などを考慮して定められる。
本発明の一側面に係るマイクロニードル・シートでは、シートの厚さが5μm〜70μmであってもよい。このように厚さを設定することでマイクロニードル・シートの穿刺性が優れたものとなる。また、このように厚さを設定することでマイクロニードル・シートが薄く且つ柔軟になるので、生体の形状に合わせて当該シートを皮膚に当てることができ、その結果、活性成分を効率的に投与することができる。
マイクロニードル・シート10の長さ及び幅も限定されない。具体的には、マイクロニードル・シート10の長さの下限は0.1cmでも1cmでもよく、長さの上限は50cmでも20cmでもよい。マイクロニードル・シート10の幅の下限は0.1cmでも1cmでもよく、幅の上限は60cmでも30cmでもよい。マイクロニードル・シート10の長さ及び幅の下限は活性成分の投与量を考慮して定められ、長さ及び幅の上限は生体の大きさを考慮して定められる。
マイクロニードル12に関するパラメータも限定されない。具体的には、マイクロニードル12の長さの下限は10μmでも100μmでもよく、その長さの上限は10000μmでも1000μmでもよい。ここで、マイクロニードル12の長さとは、マイクロニードル12の底辺(主面11から立ち上がる根元の部分)から頂部までの距離である。針の密度の下限は0.05本/cmでも1本/cmでもよく、その密度の上限は10000本/cmでも5000本/cmでもよい。密度の下限は、1mgの活性成分を投与し得る針の本数及び面積から換算した値であり、密度の上限は、針の形状を考慮した上での限界値である。
図1に示すように本実施形態ではマイクロニードル12は三角形状であるが、マイクロニードルの形状は何ら限定されない。また、図1に示すように本実施形態ではマイクロニードル12はその大きさ、向き及びマイクロニードル・シートにおける分布は均一であるが、いずれも均一である必要はない。マイクロニードル12は三角形状である場合、その先端部の角度は10°以上であってよく、20°以上であってよく、150°以下であってよく、120°以下であってもよい。
皮膚に適用する活性成分の準備方法として、マイクロニードル・シート10自体に予め活性成分をコーティングしておく手法と、マイクロニードル・シート10の上層に活性成分を含有する層を付加する手法と、マイクロニードル12を皮膚に穿刺する前にその皮膚上に活性成分を塗布しておく手法と、マイクロニードル12を皮膚に穿刺した後にその皮膚上に活性成分を塗布する手法とが考えられる。マイクロニードル・シート10に予め活性成分をコーティングするのであれば、所定の粘度のコーティング液をなるべく均一な厚みでシート全体に塗布するのが好ましいが、マイクロニードル12が主面11に沿っているのでそのような塗布を容易に為し得る。コーティングはスクリーン印刷の原理を用いて実施してもよいし、他の方法により実施してもよい。
マイクロニードル・シート10を皮膚に適用する場合、アプリケータを用いることができる。公知のアプリケータ、例えば、国際公開第2014/203911号に記載のアプリケータ、が利用可能である。
以上説明したように、本発明の一側面に係るマイクロニードル・シートは、シートの主面に略沿って該シートに形成された複数のマイクロニードルを備え、シートが曲げられることでマイクロニードルが主面から立ち上がり、立ち上がった該マイクロニードルが皮膚に刺さる。
このような側面においては、シートが曲げられるまではマイクロニードルがシートの主面に略沿った状態にある。このことは、マイクロニードルが皮膚に適用されるまでは、マイクロニードルの先端が当該主面上から突き出ていないことを意味する。したがって、マイクロニードル・シートを皮膚に適用しない限り、マイクロニードルが他の物に当たったり引っ掛かったりする心配がない。その結果、マイクロニードルの取扱時の安全性を確保することができる。例えば、ユーザはマイクロニードル・シートの保管や搬送、使用直前の準備などを安全に行うことができる。
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はそれらに何ら限定されるものではない。
〔試験例1:三点曲げ荷重値及び下降距離の測定、並びに穿刺性の評価〕
(マイクロニードル・シートの作製)
厚みが5μm、10μm、20μm、50μm及び70μmの5種類のSUS304箔について、配置密度が異なる以下の4パターンのマイクロニードル:
D94(長さ:500μm、幅:220μm、配置密度:100本/cm
D35(長さ:500μm、幅:220μm、配置密度:225本/cm
D95(長さ:500μm、幅:220μm、配置密度:150本/cm
D96(長さ:500μm、幅:220μm、配置密度:75本/cm
となるようにエッチング加工を施して、各種マイクロニードル・シートを作製した。
(三点曲げ試験)
JIS K 7171:2008に規定される試験方法(圧子の半径R:0.5mm、支持台の半径R:1.4mm、支点間距離L:5mm)に準じて三点曲げ荷重値を測定した。具体的には、上記作製されたマイクロニードル・シートを5mm×30mmの大きさに切断した試験片を左右の支持台の上に対称的に設置し、試験片の支点間中央に圧子を1mm/secの試験速度で下降させ、試験片が所定のたわみ状態(圧子が試験片に接触してから5mm押し込んだ位置)になるまで曲げられる間の最大荷重値を測定した。
下降距離試験)
JIS L 1096:2010に規定される8.21.2B法(スライド法)に準拠して下降距離を測定した。具体的には、スライド型試験機本体と移動台との上面が一致するようにしてから、上記作製されたマイクロニードル・シートを5mm×150mmに切断した試験片を設置し、試験片の端部2cmをウェイトで固定し、静かにハンドルを回して移動台を下降させ、試験片の自由端が移動台から離れた時点での下降距離(cm)を測定した。
(穿刺性の評価)
上記作製されたマイクロニードル・シートの穿刺性について、以下の評価方法(1)又は評価方法(2)によって評価した。なお、マイクロニードル・シートの厚みが10μm以上の場合は評価方法(1)を用い、マイクロニードル・シートの厚みが5μmの場合は評価方法(2)を用いた。
(穿刺性の評価方法(1))
上記作製されたマイクロニードル・シートと、前記マイクロニードル・シートとほぼ同じ大きさの、厚みが75μmのフィルムの一端を互いに固定した。皮膚のモデルとしてのスチレン共重合体エラストマーシートと、これに対して約300μmの間隙を有する平板との間に、前記フィルムが固定されたマイクロニードル・シートを配置し、その一端をスチレン共重合体エラストマーシートに対して固定した。フィルムを水平方向に引っ張って、マイクロニードル・シートを180°屈曲させつつ、マイクロニードルをスチレン共重合体エラストマーシートに穿刺した。なお、スチレン共重合体エラストマーシートの硬度は、JIS K 6253−2:2012で規定される国際ゴム硬さで30である。
(穿刺性の評価方法(2))
皮膚のモデルとしてのスチレン共重合体エラストマーシート上に上記作製されたマイクロニードル・シートを配置し、その一端をスチレン共重合体エラストマーシートに対して固定した(以下、固定された一端を「固定端」という)。固定端の近傍に、マイクロニードル・シートの幅方向に向けて径0.8mm〜1.2mmの円柱棒(金属製)を配置した。マイクロニードル・シートを円柱棒の曲面に密着させて180°屈曲させた状態とし、円柱棒の軸心をスチレン共重合体エラストマーシート側に当接させつつ、マイクロニードル・シートの固定端から遠ざかる方向へ移動させてマイクロニードル・シートを繰り出して、マイクロニードルをスチレン共重合体エラストマーシートに穿刺した。なお、スチレン共重合体エラストマーシートの硬度は、JIS K 6253−2:2012で規定される国際ゴム硬さで30である。
穿刺性の評価は、1)屈曲部の移動性、2)屈曲しやすさ、及び3)巻き戻り性の各項目について評価した後、これらの項目を総合的に評価することで行った。具体的には以下の基準で評価した。
1)屈曲部の移動性
シートを屈曲させつつスムーズにシートを繰り出すことができない場合を×と評価し、シートを屈曲させつつスムーズにシートを繰り出すことができる場合を○と評価した。
2)屈曲しやすさ
マイクロニードル・シートを屈曲させることができない場合を×と評価し、マイクロニードル・シートを屈曲させることができる場合を○と評価した。
3)巻き戻り性
マイクロニードルをスチレン共重合体エラストマーシートに穿刺した後、マイクロニードルがスチレン共重合体エラストマーシートから巻き戻ることなく平面を保持できる場合を○と評価し、マイクロニードルがスチレン共重合体エラストマーシートからわずかに巻き戻るものの、上から抑えれば平面を保持できる場合を△と評価し、マイクロニードルがスチレン共重合体エラストマーシートから著しく巻き戻る場合を×と評価した。
4)穿刺性
上記1)〜3)の評価において、×が一つもない場合を○と評価し、その他の場合を×と評価した。
結果を表1に示す。
Figure 0006506162
下降距離が4.5cm〜12.9cmの範囲内にある試験片では、折り目の移動性、折れ曲がりやすさ、穿刺後の巻き戻り性いずれも良好で、優れた穿刺性を示した。特に下降距離が6.2cm〜12.9cmの範囲内にある試験片では、穿刺後に巻き戻りが全くみられず、特に優れた穿刺性を示した。なお、下降距離が12.9cmを超える試験片では、マイクロニードルがスチレン共重合体エラストマーシート上で座屈し、スチレン共重合体エラストマーシートに穿刺され難い傾向が認められた。
〔試験例2:下降距離の測定〕
(マイクロニードル・シートの作製)
厚みが10μm、20μm及び50μmmの3種類の、材質の異なる3種類の金属箔(SUS304、SUS316L及びチタン)について、配置密度が異なる以下の2パターンのマイクロニードル:
D94(長さ:500μm、幅:220μm、配置密度:100本/cm
D96(長さ:500μm、幅:220μm、配置密度:75本/cm
となるようにエッチング加工を施して、各種マイクロニードル・シートを作製した。
下降距離試験)
試験例1と同様の方法で下降距離を測定した。結果を表2に示す。
Figure 0006506162
いずれの材質においても、適切な下降距離を示した。
10…マイクロニードル・シート、11…主面、12…マイクロニードル

Claims (1)

  1. シートの主面に略沿って該シートに形成された複数のマイクロニードルを備え、
    JIS L 1096:2010に規定されるスライド法に準拠して、スライド型試験機本体と移動台との上面が一致するようにしてから、5mm×150mmの前記シートを設置し、前記シートの端部2cmをウェイトで固定し、静かにハンドルを回して移動台を下降させ、前記シートの自由端が移動台から離れた時点で測定した前記シートの下降距離6.2cm〜12.9cmであり、
    前記シートの材質はチタン又はチタン合金であり、
    前記シートの厚みが5μm〜50μmであり、
    前記シートが曲げられることで前記マイクロニードルが前記主面から立ち上がる、
    マイクロニードル・シート。
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