JP6265582B2 - 銅合金材およびその製造方法 - Google Patents

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本発明は銅合金材料およびその製造方法に関し、EV、HEVを中心とした車載部品および周辺インフラや太陽光発電システムなどのコネクタのほか、リードフレーム、リレー、スイッチ、ソケット等に適用される銅合金材料およびその製造方法に関する。
EV、HEVを中心とした車載部品および周辺インフラや太陽光発電システムなどのコネクタ、その他リードフレーム、リレー、スイッチ、ソケットなどの用途に使用される銅合金材料に要求される特性項目としては、例えば導電率、耐応力緩和特性が挙げられる。近年、各システムの高電圧化や使用環境の高温化が進行しており、通電ロスの減少や高温環境下での端子の信頼性向上が求められている。従って、導電率や耐応力緩和特性の要求レベルが同時に高まっている。
その中で、Cu−Cr系合金は中程度の強度と高導電を有していることで知られており、実用化やその研究開発が行われている。特に特許文献1ではCu−Cr系合金においてその析出物分布を制御し、高い強度と導電性を満たすことが見出されている。また銅合金材料の強度改良には特許文献2や特許文献3の技術が知られている。特許文献2、3には、銅合金において、平均結晶粒径の微細制御のみならず、その粒径偏差を規定することにより、更なる曲げ加工性改善がなされることが示されている。
特開2006−097113号公報 特許第4006460号公報 特許第4177104号公報
特許文献2、3に記載された発明は、平均結晶粒径が非常に微細に制御され、曲げ加工性、強度等の改善がなされている。しかし一方で、微細結晶粒を有する銅合金は耐応力緩和特性が劣る傾向にあり、同発明をCu−Cr系合金に適応させた場合、耐熱性が十分ではないことが課題であった。
上記の課題に鑑み、本発明の目的は、EV、HEVを中心とした車載部品および周辺インフラや太陽光発電システムなどのリードフレーム、コネクタ、端子材等、その他、リレー、スイッチ、ソケット等に適した、強度、導電性等の特性に優れ、その中でも特に耐応力緩和特性と曲げ加工性の双方が優れている銅合金材およびその製造方法を提供することにある。
本発明者らは、検討を重ね、電気・電子部品用途に適した銅合金について研究を行い、製品が有する組織において、平均結晶粒径が15〜80μmで、その変動係数(結晶粒径の標準偏差/平均結晶粒径)が0.40以下であり、強度、導電性に優れるCu−Cr系合金において、極力曲げ性を劣化させず、耐応力緩和特性を改善し得ることを見出した。
これは特許文献3にあるような、従来の微細結晶粒とその変動係数(文献中における標準偏差(σGS))の規定による曲げ加工性の改善とは異なるものである。中庸サイズの平均結晶粒径を有する銅合金材は、微細な平均結晶粒径を有する銅合金材料と同等の曲げ性は有さないが、一方で耐応力緩和特性に優れる。
ここで変動係数を規定しているのは、変動係数が大きければ、微細粒が混在している場合は応力緩和特性が劣化し、粗大粒が混在している場合は、必要以上に曲げ性を劣化させることになるからである。すなわち、平均結晶粒径と同時に変動係数が範囲内にあることで耐応力緩和特性と曲げ特性を同時に満たすことが出来る。
本発明は、これらの知見に基づきなされるに至ったものである。
すなわち、本発明の課題は以下の構成によって達成された。
(1)Crを0.25〜0.75mass%、並びにMg0.01〜0.25mass%、Ti0.05〜0.06mass%、Zr0.05〜0.10mass%、Zn0.05〜0.20mass%、Fe0.005〜0.08mass%、Sn0.10〜0.25mass%、Ag0.08〜0.10mass%、及びSi0.02〜0.03mass%で、Mg、Ti、Zr、Zn、Fe、Sn、Ag、及びSiの一種もしくは二種以上を合計で0.01〜0.47mass%含有し、残部が銅と不可避不純物からなり、但し、CrとMgの両方が含有される場合は、Ti、Zr、Zn、Sn、Ag、及びSiの一種もしくは二種以上を含有し、又は、Mgを含有しない場合は、ZnとSnの両方は含有せず、
平均結晶粒径が15〜80μmで、結晶粒径の変動係数(結晶粒径の標準偏差/平均結晶粒径)が0.40以下であり、
引張強度が400MPaより大、導電率が75%IACSより大、応力緩和率が25%未満、曲げ加工性(R/t)が1以下であることを特徴とする銅合金材。
(2)(1)に記載の銅合金材の製造方法であって、前記銅合金材を与える合金組成の銅合金に、
[工程1]鋳造、
[工程2]1000〜1030℃、1〜8時間の均質化熱処理、
[工程3]600〜900℃、圧延率20〜90%の熱間加工、
[工程4]圧延率75%以上の冷間加工、
[工程5]昇温速度が500〜850℃の範囲で10〜100℃/秒であって、その到達温度が850〜1025℃であり、かつ(最高達到温度−25℃)〜(最高到達温度)の温度範囲で20〜90秒間保持する再結晶熱処理、
[工程6]圧延率10〜50%の冷間圧延、及び
[工程7]350〜700℃、1〜8時間の時効熱処理
をこの順で施すことを特徴とする銅合金材の製造方法。
(3)(1)に記載の銅合金材の製造方法であって、前記銅合金材を与える合金組成の銅合金に、(2)に記載の銅合金材の製造方法の各工程を経た後、
[工程8]圧延率10〜80%の仕上げ冷間圧延、及び
[工程9]500〜800℃、5〜60秒間の熱処理
を更にこの順で施すことを特徴とする銅合金材の製造方法。
本発明のCu−Cr系を中心とした銅合金材料は、特に耐応力緩和特性に優れ、中程度の強度と高導電性を有する。したがって、EV、HEVを中心とした車載部品および周辺インフラや太陽光発電システムなどのコネクタ、その他リードフレーム、リレー、スイッチ、ソケット材等に好適である。
図1は耐応力緩和特性の試験方法の説明図であり、図1の(a)は熱処理前、図1の(b)は熱処理後の状態をそれぞれ示す。
本発明の銅合金材の好ましい実施の態様について、詳細に説明する。ここで、「銅合金材」とは、(加工前であって所定の合金組成を有する)銅合金素材が所定の形状(例えば、板、条、箔、棒、線など)に加工されたものを意味する。なお、実施形態として板材、条材について以下に説明する。その中で、板材とは、特定の厚みを有し形状的に安定しており面方向に広がりをもつものを指し、広義には条材を含む意味である。本発明において、板材の厚さは、特に限定されるものではないが、本発明の効果が一層よく顕れ実際的な用途に適合することを考慮すると、0.03〜10mmが好ましく、0.05〜3mmがより好ましい。
なお、本発明の銅合金材は、その特性を再結晶組織分布で規定するものであるが、これは銅合金材料としてそのような特性を有していれば良いのであって、銅合金材の形状は板材や条材に限定されるものではない。
以下、合金の成分と製造方法の好ましい態様について、説明する。
<主添加元素>(Cr)
本発明は、強度と導電性を確保するため、Cu−Cr系合金を対象とする。ここでCrは析出により2つの寄与をする。1つは従来通りの析出硬化である。もう1つは再結晶化熱処理前に化合物として存在することで、再結晶熱処理時、成長中の粒にピニング効果をもたらし、粒の均一成長を促すことができる。このために成長が終了した粒径の変動係数を十分に小さくすることが出来、これにより耐応力緩和特性を改善する。この化合物は主に再結晶昇温中に最適なサイズに制御されていることが必要であり、昇温速度が速すぎるとその生成量が少なくなり、また遅すぎると、ピニングに対し有効ではない、粗大な化合物と成長してしまう。最適な範囲内での昇温にて、ピニングに有効なサイズの化合物を、十分な密度存在させることが出来る。
<副添加元素>(Mg、Ti、Zr、Zn、Fe、Sn、Ag、Si)
これらの元素は、それぞれ次の役割を果たす。
Mg、Snは固溶、Ti、Siの一部は固溶し、またZr、Ti、Siは化合物を形成し耐応力緩和特性を改善し、強化にも寄与する。固溶元素に関しては、同時に添加すると単独添加時よりも耐応力緩和に対しより大きな効果を示すものもあり、特にSn、Mg同時添加した場合それぞれを単独で添加するより有効である。
また、これら上記の元素は固溶状態時に粒界の移動を妨げるドラッグ効果をもたらすことができ、これは本規定内の平均結晶粒の成長に対し有効である。そのため、急激な粒粗大化を抑制することが出来、変動係数の制御に対し有効に寄与することができる。
いずれも添加量が少ないと効果を得られず、添加量が多いと化合物を形成する場合は溶解、鋳造、熱間圧延時の製造性に対し著しく悪影響を与え、固溶状態にある場合は導電率を減少させる。
<合金組成>
本発明の銅合金材料は、EV、HEVを中心とした車載部品および周辺インフラや太陽光発電システムなどのコネクタに要求される導電性、機械的強度、曲げ加工性および耐応力緩和特性を有するものである。すなわち、本発明の第一の態様の銅合金材は、銅合金におけるCrの含有量は0.1〜0.8mass%、好ましくは0.2〜0.6mass%、副添加元素に関しては含有量は合計で0.005〜0.5mass%、好ましくは0.01〜0.3mass%である。Crおよびその他化合物を形成する元素については、その最適量および工程条件中の熱処理条件等を制御することで、強度に寄与する化合物、ピニング効果で結晶粒制御に寄与する化合物を制御する。また、固溶状態にある元素によるドラッグ効果にて、結晶粒径とその変動係数を制御することで、耐応力緩和特性向上に寄与することが出来る。
また、本発明の第二の態様の銅合金材は、銅合金におけるCrの含有量が0.1〜0.8mass%、好ましくは0.2〜0.6mass%、Mgの含有量が0.01〜0.5mass%、好ましくは0.05〜0.3mass%、副添加元素に関しては合計で0.005〜0.5mass%、好ましくは0.01〜0.3mass%である。Mgが添加されている本態様は、耐応力緩和特性に優れた銅合金材を提供することができる。
いずれの実施態様も残部は銅と不可避的不純物である。
<結晶粒径>
本発明における結晶粒径とはJIS−H−0501の切断法に準じて測定した値をいい、測定個数200を測定した平均を平均結晶粒径とする。
本発明の銅合金材は平均結晶粒径が15〜80μm、好ましくは25〜60μmである。中庸サイズの平均結晶粒径を有する銅合金材は、微細な平均結晶粒径を有する銅合金材料と同等の曲げ性は有さないが、一方で耐応力緩和特性に優れる。
一方、変動係数(結晶粒径の標準偏差/平均結晶粒径)は0.40以下である。下限については特に制限はない。好ましくは0.15〜0.30である。ここで結晶粒径の標準偏差は上記平均結晶粒径を求めるために測定した200個の個々の結晶粒径から算出される。変動係数が大きければ、微細粒が混在している場合は応力緩和特性が劣化し、粗大粒が混在している場合は、必要以上に曲げ性を劣化させることになる。すなわち、平均結晶粒径と同時に変動係数が範囲内にあることで耐応力緩和特性と曲げ特性を同時に満たすことが出来る。
<製造方法>
次に、本発明の銅合金材料の製造方法(平均結晶粒径および、変動係数(結晶粒径の標準偏差/平均結晶粒径)の制御方法)について説明する。ここでは、析出型銅合金の板材(条材)を例に挙げて説明するが、析出を利用する固溶型合金に展開することが可能である。
本発明合金は、1000〜1030℃、1〜8時間の均質化熱処理(下記[工程2])後の熱間圧延(下記[工程3])と冷間圧延(下記[工程4])にて薄板化する。各工程の条件は、熱間圧延は溶体化熱処理終了後、600〜900℃で圧延率20〜90%で圧延し、速やかに圧延を済ませ水冷する工程、冷間圧延は再結晶のため、最低でも75%、好ましくは85〜99%の板厚減少をさせる圧延が必要である。この冷間圧延率が十分でないと、体積転位量が不均一あるため、同じ温度熱処理を施しても結晶粒の核生成、および成長の程度が各所で異なり、結果変動係数が所定の範囲内に収まらなくなり、特性にも影響を及ぼす。
再結晶の際にはピニング効果をもたらす化合物が有効な密度で析出するよう、500〜850℃の範囲で10〜100℃/秒の速度で昇温する(下記[工程5])。10℃/秒より昇温速度が遅ければ析出物が粗大化し、ピニング効果を失ってしまう。また100℃/秒より昇温速度が速ければ再結晶時に有効な析出物の密度が不十分なために、ピニング効果がもたらされない。
有効な速度で昇温後、850〜1025℃の温度範囲で最終の再結晶熱処理および溶体化熱処理を行って再結晶させる。(最高達到温度−25℃)〜(最高到達温度)の温度範囲で20〜90秒間保持されることが必要となる。温度が低い場合は、結晶粒径サイズが15μmより微細、もしくは未再結晶となり、温度が1025℃を超えると再結晶粒径が80μmより粗大になる。その中でも1050℃を超える熱処理を行うと材料強度が極端に落ち、製品として十分な形状を熱処理中に維持できない。
再結晶熱処理を行った後に、圧延率10〜50%の冷間圧延(下記[工程6])と350〜700℃、1〜8時間の時効熱処理(下記[工程7])とによって必要な強度を満足させるように製造される。なお、再結晶に関しては、昇温速度が該当範囲において、時効として析出処理を兼ねるような長時間熱処理にて行っても良い。
Cu−Cr系のような析出型合金の従来工程では、再結晶熱処理までに析出処理および析出を促進するような熱処理は行わず、固溶状態を維持する工程条件を用いるのが常である。
本発明の銅合金材料の製造方法としては鋳造[工程1]、均質化熱処理[工程2]、熱間加工[工程3]、冷間加工[工程4]、再結晶熱処理[工程5]を行う。[工程1]、[工程2]、[工程3]および[工程5]の熱履歴制御において、従来の再結晶粒径よりも大きい粒径に成長する到達温度と、その粒径を制御できる時間で再結晶させる。結果、平均結晶粒径が15〜80μmで、その変動係数(結晶粒径の標準偏差/平均結晶粒径)が0.40以下となる組織を有する合金材となる。また、この後に冷間圧延[工程6]および時効熱処理[工程7]を行う。
ここまでの工程によって、本発明の合金材を提供することができるが、さらに、この後に圧延率10〜80%の仕上げ冷間圧延[工程8]および500〜800℃、5〜60秒間の熱処理[工程9]を経るとさらに良い。これらは通常行われる調質処理である。
本発明の銅合金材は、同組成の従来合金の耐応力緩和特性を上回る特性を有しており、EV、HEVを中心とした車載部品および周辺インフラや太陽光発電システムなどのコネクタや、その他リードフレーム、リレー、スイッチ等に要求される特性を満足することができる。
以下に、実施例に基づき本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
原料を溶解後、120mmw×30mmt×180mmLのサイズのブックモールドに鋳造し、以下発明例と比較例で次のような条件でサンプル試作した。
(発明例)
溶体化熱処理を1000℃、2hで行った後、熱間圧延(700〜950℃)を圧延率80%施し、水冷後、冷間圧延(再結晶前圧延)を圧延率75〜99%施し、再結晶熱処理として500〜850℃の範囲で速度10〜100℃/秒で昇温し、850〜1025℃で処理時間において20〜90秒間保持施した後速やかに冷却し、圧延率25%の冷間圧延を行い、450〜650℃で2時間保持した。
熱処理の後に圧延を圧延率25%加え、結晶粒径、析出状態が変らない程度の低温350℃での焼鈍を30分程度施し最終特性を評価した。
(比較例)
溶体化熱処理を1000℃、2hで行った後、熱間圧延、冷間圧延(再結晶前圧延)を圧延率50〜99%施し、再結晶熱処理として500〜850℃の範囲で速度1〜150℃/秒で昇温し、700〜1080℃で、5〜120秒間の処理を施した後速やかに冷却し、圧延率25%の冷間圧延を行い、450〜650℃で2時間保持した。この再結晶前圧延〜再結晶処理工程のいずれかの条件が本発明の製造方法で規定する範囲外とした。
熱処理の後に圧延を圧延率25%加え、結晶粒径、析出状態が変らない程度の低温350℃での焼鈍を30分間程度施し最終特性を評価した。
なお、各熱処理や圧延の後に、材料表面の酸化や粗度の状態に応じて酸洗浄や表面研磨を、形状に応じてテンションレベラーによる矯正を行った。
これら発明例および比較例の供試材について、下記の特性調査を行った。ここで、供試材の厚さは0.40mmtとした。
a.再結晶粒分布測定:
まず、試験片の圧延方向に垂直な断面を湿式研磨、バフ研磨により鏡面に仕上げた後、クロム酸:水=1:1の液で研磨した断面を数秒間腐食した。この断面を走査型電子顕微鏡(SEM)の二次電子像を用いて400〜1000倍の倍率で写真を撮影し、その断面の平均結晶粒径をJIS−H−0501の切断法に準じてn200(測定個数200)の条件にて測定した。その際、個々の結晶粒径についても測定することで、結晶粒径の標準偏差を算出し、結晶粒径の変動係数(結晶粒径の標準偏差/平均結晶粒径)を導き出した。
以下、引張強度、導電性、耐応力緩和特性の特性評価を行った。
b.引張強度 [TS]:
圧延平行方向から切り出したJIS Z2201−13B号の試験片をJIS Z2241に準じて3本測定し、その平均値を示した。
c.導電率 [EC]:
20℃(±0.5℃)に保たれた恒温漕中で四端子法により比抵抗を計測して導電率を算出した。なお、端子間距離は100mmとした。
d.応力緩和率 [SR]:
日本伸銅協会 JCBA T309:2004「銅及び銅合金薄板条の曲げによる応力緩和試験方法」に準じ、以下に示すように、150℃で1000h保持の条件で測定した。片持ちはり法(片持ちはりブロック式ジグ使用)により耐力の80%の初期応力を負荷した。
図1は耐応力緩和特性の試験方法の説明図であり、(a)は熱処理前、(b)は熱処理後の状態である。図1(a)に示すように、試験台4に片持ちで保持した試験片1に、耐力の80%の初期応力を付与した時の試験片1の位置は、基準からδの距離である。これを150℃の恒温槽に1000時間保持(前記試験片1の状態での熱処理)し、負荷を除いた後の試験片2の位置は、図1(b)に示すように基準からHの距離である。3は応力を負荷しなかった場合の試験片であり、その位置は基準からHの距離である。この関係から、応力緩和率(%)は(H−H)/(δ−H)×100と算出した。式中、δは、基準から試験片1までの距離であり、Hは、基準から試験片3までの距離であり、Hは、基準から試験片2までの距離である。
e.曲げ加工性 [R/t]:
日本伸銅協会 JCBA T307:2007「銅および銅合金薄板条の曲げ加工性評価方法」に準じ、90°W曲げをGW、BWにおいて行い、曲げ表面上にクラック割れが入らなかった最小の曲げ半径Rを板厚tで割ったR/tにて評価した。
高温環境下のバネ端子材の評価としては、TS>400MPa、EC>75%IACS、SR<25%、R/t≦1であれば特性が良好である。この値を満たす銅合金材は、EV、HEVを中心とした車載部品および周辺インフラや太陽光発電システムなどのコネクタ、その他リードフレーム、リレー、スイッチ、ソケット等の用途に使用される銅合金材料として実用できると言える。
Figure 0006265582
Figure 0006265582
表1−1では本発明で規定する合金成分を有する「発明例」(合金No.1〜24)、表1−2では本発明で規定する合金成分を有しない「比較例」(合金No.25〜50)のそれぞれの合金組成について示す。これ以降、本稿で「合金番号(合金No.)」を表記したときは、この表の組成を有する合金材を示すものとする。
Figure 0006265582
Figure 0006265582
表2−1は本発明で規定する合金成分の範囲内の合金、表2−2は本発明で規定する合金成分の範囲外の合金で、且つ製造条件が本発明の範囲内にある一例にて試作した合金の結果を示す。成分、製造条件が本発明の範囲内にあると、コネクタ等に必要な特性(TS>400MPa、EC>75%IACS、SR<25%、R/t≦1)は全て満たされる。成分が本発明の範囲外であると、製造条件が本発明の範囲内であっても上記特性のいずれか1つ以上の特性が満たされていないか、もしくは製造難となることがわかる。
Figure 0006265582
Figure 0006265582
表3−1は本発明で規定する合金成分の範囲内の合金、表3−2は本発明で規定する合金成分の範囲外の合金の結果を示す。ただし、表3−1、3−2の各合金は、製造条件が本発明の範囲外にある一例にて試作した合金である。成分が本発明の範囲内であるか範囲外であるかに関わらず、製造条件が本発明の範囲外にあれば、コネクタ等に必要な特性(TS>400MPa、EC>75%IACS、SR<25%、R/t≦1)は満たさないか、製造難となることがわかる。この条件では特に結晶粒径が小さくなる熱処理条件をとっているため、曲げについては表2−1、および表2−2と比べより良好である試作材も存在するが、耐応力緩和特性については劣っており、コネクタ等の材料の特性としてはバランスが不十分な合金となっている。
Figure 0006265582
表4には、本発明の範囲内にある合金成分を有する合金(合金No.3、7、10、12、17、20、22、24)について、製造工程を本発明で規定する条件の範囲内、範囲外の数種にて試作した結果を示す。各製造工程における条件が異なっても、本発明で規定する条件の範囲内であれば特性(TS>400MPa、EC>75%IACS、SR<25%、R/t≦1)は全て満たされ、本発明で規定する条件の範囲外であれば上記特性のいずれか1つ以上が満たされていない、もしくは製造難となっている。
すなわち、表1−1から表4を総括すると、本発明は適切な合金成分と製造条件によって成し得るものであることがわかり、本発明で規定する範囲外の成分や条件による製造ではコネクタ等に必要な特性(TS>400MPa、EC>75%IACS、SR<25%、R/t≦1)を満足しない。本発明の銅合金材料は、平均結晶粒径が15〜80μmで、結晶粒径の変動係数(結晶粒径の標準偏差/平均結晶粒径)が0.40以下となっていることから、かかる条件を満足するものとなっている。
本発明の銅合金材料は、EV、HEVを中心とした車載部品および周辺インフラや太陽光発電システムなどのコネクタ、リードフレーム、リレー、スイッチ、ソケット等に好適である。
1 初期応力を付与した時の試験片
2 負荷を除いた後の試験片
3 応力を負荷しなかった場合の試験片
4 試験台

Claims (3)

  1. Crを0.25〜0.75mass%、並びにMg0.01〜0.25mass%、Ti0.05〜0.06mass%、Zr0.05〜0.10mass%、Zn0.05〜0.20mass%、Fe0.005〜0.08mass%、Sn0.10〜0.25mass%、Ag0.08〜0.10mass%、及びSi0.02〜0.03mass%で、Mg、Ti、Zr、Zn、Fe、Sn、Ag、及びSiの一種もしくは二種以上を合計で0.01〜0.47mass%含有し、残部が銅と不可避不純物からなり、但し、CrとMgの両方が含有される場合は、Ti、Zr、Zn、Sn、Ag、及びSiの一種もしくは二種以上を含有し、又は、Mgを含有しない場合は、ZnとSnの両方は含有せず、
    平均結晶粒径が15〜80μmで、結晶粒径の変動係数(結晶粒径の標準偏差/平均結晶粒径)が0.40以下であり、
    引張強度が400MPaより大、導電率が75%IACSより大、応力緩和率が25%未満、曲げ加工性(R/t)が1以下であることを特徴とする銅合金材。
  2. 請求項1に記載の銅合金材の製造方法であって、前記銅合金材を与える合金組成の銅合金に、
    [工程1]鋳造、
    [工程2]1000〜1030℃、1〜8時間の均質化熱処理、
    [工程3]600〜900℃、圧延率20〜90%の熱間加工、
    [工程4]圧延率75%以上の冷間加工、
    [工程5]昇温速度が500〜850℃の範囲で10〜100℃/秒であって、その到達温度が850〜1025℃であり、かつ(最高達到温度−25℃)〜(最高到達温度)の温度範囲で20〜90秒間保持する再結晶熱処理、
    [工程6]圧延率10〜50%の冷間圧延、及び
    [工程7]350〜700℃、1〜8時間の時効熱処理
    をこの順で施すことを特徴とする銅合金材の製造方法。
  3. 請求項1に記載の銅合金材の製造方法であって、前記銅合金材を与える合金組成の銅合金に、請求項2に記載の銅合金材の製造方法の各工程を経た後、
    [工程8]圧延率10〜80%の仕上げ冷間圧延、及び
    [工程9]500〜800℃、5〜60秒間の熱処理
    を更にこの順で施すことを特徴とする銅合金材の製造方法。
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