以下に、本発明を具体化した一実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、図1は、ユニット式建物の概要を示す斜視図である。
図1に示すように、建物10は、基礎11上に設けられた建物本体12と、その上方に設けられた屋根部13とを備える。建物本体12は、下階部としての一階部分14と、上階部としての二階部分15とを有する二階建てであり、複数の建物ユニット20が互いに連結されることにより構成されている。建物ユニット20は製造工場においてあらかじめ製造され、その後施工現場にトラック等により運搬されるものとなっている。
図2には建物ユニット20の斜視図を示す。図2に示すように、建物ユニット20は、その四隅に配設される4本の柱21と、各柱21の上端部及び下端部をそれぞれ連結する各4本の天井大梁22及び床大梁23とを備えている。そして、それら柱21、天井大梁22及び床大梁23により直方体状の骨格(フレーム)が形成されている。柱21は四角筒状の角形鋼よりなる。天井大梁22及び床大梁23は断面コ字状の溝形鋼よりなり、その開口部が向き合うようにして設置されている。
建物ユニット20の長辺部の相対する天井大梁22の間には、所定間隔で複数の天井小梁25が架け渡されている。同じく建物ユニット20の長辺部の相対する床大梁23の間には、所定間隔で複数の床小梁26が架け渡されている。天井小梁25と床小梁26とはそれぞれ同間隔でかつ各々上下に対応する位置に設けられている。例えば、天井小梁25はリップ溝形鋼よりなり、床小梁26は角形鋼よりなる。天井小梁25によって天井面材27が支持され、床小梁26によって床面材28が支持されている。
続いて、二階部分15の間取りについて図3に基づいて説明する。なお、図3は二階部分15の間取りを示す平面図である。
図3に示すように、二階部分15には、屋内スペースとして、居室31,32やトイレ33、廊下34等が設けられている。居室31,32及びトイレ33には廊下34から出入りすることが可能となっている。廊下34は、一階部分14と二階部分15とを上下に連通する階段室35と隣接しており、その階段室35には一階部分14と二階部分15とを連絡する階段部36が設けられている。階段室35において階段部36よりも上方の空間は昇降通路部37となっており、その昇降通路部37を通って一階部分14と二階部分15との間を行き来可能となっている。なお、階段部36が傾斜部に相当する。
階段部36は、折り返し階段により構成されており、より詳しくは屈折階段により構成されている。階段部36は、その折り返し部に踊り場38を有している。階段部36において踊り場38を挟んだ両側はそれぞれ直線状に延びる下側階段部36a及び上側階段部36bとなっている。すなわち、下側階段部36aが、階段部36において一階部分14(階段下)から踊り場38まで延びており、上側階段部36bが、踊り場38から二階部分15(階段上)まで延びている。
なお、階段部36の傾斜方向とは、階段部36(詳しくは下側階段部36a及び上側階段部36b)の有する複数の踏板39が並ぶ方向と同じ方向のことである。また、階段部36の傾斜角度とは、水平方向に対して階段部36の上記傾斜方向がなす(傾斜)角度のことである。
建物10には、ユーザが階段部36(昇降通路部37)を降りるのを補助する歩行補助装置40が設けられている。以下、この歩行補助装置40の構成について図3に加えて図5に基づいて説明する。図5は、歩行補助装置40の全体構成を示す概略縦断面図である。
図3及び図5に示すように、歩行補助装置40は、階段部36の上方に設けられた支持レール41を備える。支持レール41は、階段室35の天井付近に配置され、平面視にて階段部36の昇降方向(昇降通路部37)に沿って延びるように設けられている。支持レール41は、平面視において階段部36の昇降方向に沿ったU字状をなしており、階段部36の昇降方向全域(昇降通路部37の通路長さ全域)に亘って延びている。支持レール41は、下側階段部36aの上方において同階段部36aに沿って直線状に延びる下階側レール部42と、上側階段部36bの上方において同階段部36bに沿って直線状に延びる上階側レール部43と、踊り場38の上方においてそれら各レール部42,43を円弧状に繋ぐ中間レール部44とを有している。下階側レール部42は、下側階段部36aの幅方向中央部に配置され、上階側レール部43は、上側階段部36bの幅方向中央部に配置されている。
支持レール41は、階段部36の上方にて当該階段部36の傾斜する向きとは反対の向きに傾斜して配置されている。具体的には、支持レール41は、その下階側レール部42が階段部36の下側階段部36aの上方にて当該下側階段部36aの傾斜向きとは反対の向きに傾斜して配置され、上階側レール部43が上側階段部36bの上方にて当該上側階段部36bの傾斜向きとは反対の向きに傾斜して配置されている。この場合、支持レール41は、平面視における階段部36の昇降方向上側(二階部分15側)が下側(低位側)、前記昇降方向下側(一階部分14側)が上側(高位側)となるように傾斜している。
また、支持レール41はその長さ方向全域に亘って連続して傾斜しており、その傾斜角度が長さ方向全域に亘って同じ角度とされている。支持レール41の傾斜角度は階段部36(各階段部36a,36b)の傾斜角度よりも小さい角度となっており、詳しくは階段部36の傾斜角度の半分より小さい角度となっている。
支持レール41は、階段室35を形成する上下2つの建物ユニット20のうち、二階部分15の建物ユニット20(以下、この符号にaを付す)の天井下に設置されている(図6も参照)。図4には、同建物ユニット20aにおける支持レール41の設置状態を示している。図4に示すように、支持レール41は、建物ユニット20aの天井面材27下において、下階側レール部42と上階側レール部43とがそれぞれ天井小梁25に沿って延びるように配置されている。具体的には、下階側レール部42と上階側レール部43とはそれぞれ、一の天井小梁25(以下、その符号にaを付す)を挟んで隣り合う2つの天井小梁25(以下、その符号にb及びcを付す)の下方に配置され、当該天井小梁25b,25cに沿って延びている。また、中間レール部44は、天井小梁25aの下方を跨ぐように配置されている。
支持レール41は、かかる配置状態において各天井小梁25a〜25cに複数の吊り部材48を介して吊り下げ支持されている(図6も参照)。図4にはそれら各吊り部材48の設置箇所を丸印で示している。下階側レール部42は、同レール部42(及び天井小梁25b)に沿って所定の間隔で複数(具体的には3つ)配置された吊り部材48を介して天井小梁25bに吊り下げ支持されている。上階側レール部43は、同レール部43(及び天井小梁25c)に沿って所定の間隔で複数(具体的には3つ)配置された吊り部材48を介して天井小梁25cに吊り下げ支持されている。また、中間レール部44は、天井小梁25aとの交差部に配置された一の吊り部材48を介して天井小梁25aに吊り下げ支持されている。なお、この場合、下階側レール部42と上階側レール部43とが梁下レール部に相当する。
続いて、支持レール41の支持構成について図5に加え図6及び図7に基づいて説明する。図6は歩行補助装置40の構成を示す縦断面図であり、図7は支持レール41周辺の構成を示す斜視図である。なお、図6中の符号45は、天井小梁25の下面に固定され天井面材27を上方から支持する野縁である。
図6に示すように、天井小梁25の外側面には吊り部材48が固定されている。吊り部材48は、金属材料により形成されており、天井小梁25に固定された固定部48aと、その固定部48aから下方に延びる垂下部48bとを有している。固定部48aは、平板状に形成されており、天井小梁25のウェブ25aの外側面に対してボルト51及びナット52を用いて固定されている。具体的には、固定部48aとウェブ25aの外側面との間には、木質板材よりなる下地材53が介在されており、その介在状態において固定部48aがウェブ25aに対してボルト51及びナット52を用いて固定されている。なお、ボルト51は、下地材53に形成された貫通孔53aに挿通されている。
垂下部48bは、上下方向に延びる丸棒状をなしており、天井面材27に形成された挿通孔27aに挿通されている。垂下部48bの外周面には、その長手方向全域に亘っておねじ部49が形成されている。そのおねじ部49には天井面材27を挟んだ上下両側から当該天井面材27を挟み込むようにして一対のナット55が締結されている。これにより、垂下部48bが天井面材27に固定されている。
なお、吊り部材48は、例えば金属材料からなる丸棒材の一端部を平板状に加工することで該平板状部分を固定部48aとしそれ以外の部分を垂下部48bとして形成される。但し、固定部48aと垂下部48bとをそれぞれ別体として形成し、その後それら各部48a,48bを溶接等により結合することで吊り部材48を形成してもよい。
垂下部48bの下端部は、支持レール41に固定されている。支持レール41は、鋼板により長尺状に形成されている。支持レール41は、垂下部48bの下端部に固定された横板部41aと、その横板部41aの幅方向(短手方向)の両端部からそれぞれ下方に延びる一対の側板部41b,41cと、それら各側板部41b,41cの下端部から互いに近づく(向き合う)側に延びる一対の支持板部41d,41eと、それら各支持板部41d,41eにおいて側板部41b,41cとは反対側の端部(換言すると、各支持板部41d,41eにおいて互いに近い側の端部)から上方に突出する一対の突出板部41f,41gとを有している。
横板部41aには、垂下部48bを挿通させるための挿通孔(図示略)が形成されている。垂下部48bは、その挿通孔に挿通されており、その挿通状態において垂下部48bのおねじ部49には横板部41aを挟んだ上下両側から当該横板部41aを挟み込むようにして一対のナット58が締結されている。これにより、垂下部48bが横板部41aに対して固定されている。
側板部41bと支持板部41dと突出板部41fとにより囲まれた内側領域と、側板部41cと支持板部41eと突出板部41gとにより囲まれた内側領域とはそれぞれレール溝57となっている。それら各レール溝57は、支持レール41の長手方向全域に亘って連続して延びている。
図6及び図7に示すように、支持レール41には、当該支持レール41に沿って移動可能とされた移動体61が設けられている。移動体61は、支持レール41の内側、詳しくは支持レール41の各板部41a〜41eにより囲まれた内側空間に配設されている。移動体61は、四角箱状に形成された本体部62と、その本体部62を挟んで両側に設けられた一対の回転体63とを有している。
回転体63は車輪により構成され、本体部62に軸部64を介して回転可能に連結されている。各回転体63はそれぞれ支持レール41のレール溝57に配設されており、この配設状態において移動体61が各回転体63を介して支持レール41に支持されている。そして、かかる支持状態で、回転体63がレール溝57に沿って回転することにより、移動体61が支持レール41に沿って移動可能とされている。
なお、図示は省略するが、支持レール41の長手方向の両端部にはそれぞれレール溝57から回転体63がレール長手方向に脱落するのを防止するストッパが設けられている。
移動体61には、吊り帯66を介して補助具67が吊り下げ支持されている。吊り帯66は、長尺帯状に形成された吊り具であり、その上端部が移動体61の本体部62内部に設けられた巻取ドラム69に連結されている。巻取ドラム69は、吊り帯66を巻き取り又は引き出すための巻取部材であり、この巻取ドラム69が正逆いずれかの方向に回転することで吊り帯66が巻き取られ又は引き出される。
本体部62には、巻取ドラム69を吊り帯66の巻き取り側へ付勢するドラム付勢部(図示略)が設けられている。通常状態では、このドラム付勢部により巻取ドラム69が巻き取り側に付勢されることで吊り帯66が所定長さ分だけ巻き取られた状態にある。この通常状態における本体部62からの吊り帯66の吊り下げ長さを以下、待機長さ(最短長さ)ともいう(図8において支持レール41の上端部から吊り下げられた吊り帯66参照)。
吊り帯66の下端部には補助具67が取り付けられている。補助具67は、階段部36を降りるユーザに対して装着される装着具である。補助具67は、ユーザの上半身に対して装着されるジャケット型となっており、ユーザの肩部(脇部)付近に引っ掛けられる2つの引っ掛け部67aを有している。それら各引っ掛け部67aがユーザの肩部付近に引っ掛けられることで補助具67がユーザに対して装着される。
補助具67は、巻取ドラム69による吊り帯66の巻き取り又は引き出しによって上下に移動することが可能となっている。通常状態においては、吊り帯66の吊り下げ長さが待機長さとなっているため、その待機長さ分だけ補助具67が本体部62よりも下方に位置している。
本体部62には、吊り帯66が所定以上の加速度で引き出されることに基づいて、当該吊り帯66のそれ以上の引き出しを規制する規制装置71が設けられている。この規制装置71は、例えば本体部62の内部に設けられ、吊り帯66の引き出し側への巻取ドラム69の回転をロック(阻止)するロック機構と、吊り帯66の引き出し加速度を検出する加速度センサと、ロック機構の駆動制御を行う制御部とを有している。この場合、制御部は、加速度センサにより検出された吊り帯66の引き出し加速度が所定以上となった場合に、ロック機構による巻取ドラム69のロック処理を実施する。これにより、巻取ドラム69の引き出し側への回転が阻止され、吊り帯66がそれ以上巻取ドラム69から引き出されることが規制される。なお、この場合、規制装置71が規制手段に相当する。
なお、かかる規制機構としては、必ずしも上記のような機構を用いる必要はなく、車両に設けられた座席用シートベルトに採用されているロック機構等、他の機構を用いることも可能である。
続いて、上述した歩行補助装置40の作用について説明する。まず、ユーザが二階部分15から一階部分14へ向けて階段部36を降りるのを同装置40によって補助する場合の作用について図3に基づいて説明する。
図3に示すように、ユーザは二階部分15において補助具67を装着し、その補助具67の装着状態で階段部36を一階部分14へ向けて移動する(降りる)。このユーザの移動に追従して、移動体61が回転体63の回転により支持レール41に沿って傾斜方向上側へと移動するとともに、吊り帯66が巻取ドラム69から下方に引き出される。この場合、巻取ドラム69にはドラム付勢部により常時巻き取り側への付勢力が作用しているため、その付勢力によって補助具67には吊り帯66を介して上向きの力が常時作用している。そのため、ユーザは、補助具67により体重の一部が支えられた状態で階段部36を降りることができ、その結果比較的楽に階段部36を降りることが可能となる。
ところで、ユーザが階段部36を降りる際には、つまずく等して転倒又は落下する場合が考えられる。ここで、ユーザが転倒又は落下しかかった場合には、補助具67が装着されたユーザの体(上半身)が前のめりになる等して急激に下方に移動することが考えられる、その場合、その移動に伴って巻取ドラム69から吊り帯66が急激に引き出されることが想定される。この点、本歩行補助装置40によれば、吊り帯66が急激に引き出されて規制装置71の加速度センサにより検出される吊り帯66の引き出し加速度が所定以上になると、ロック機構による巻取ドラム69のロック処理が働き、吊り帯66のそれ以上の引き出しが規制されるため、その結果補助具67の下方への移動が規制され、ユーザが転倒又は落下するのを防止することができる。
また、支持レール41の傾斜向きが階段部36の傾斜向きとは反対向きになっているため、ユーザが階段部36において前方(下方)に落下しそうになった場合には、移動体61がその落下に追従して支持レール41を移動することが困難となっている。そのため、この点でも、ユーザの転倒又は落下を抑止する効果がある。
続いて、ユーザが階段部36を一階部分14まで降りて、補助具67を取り外した後の歩行補助装置40の作用について説明する。図8は、補助具67を取り外した後の歩行補助装置40の作用を説明するための説明図である。
図8に示すように、ユーザが一階部分14で補助具67を取り外した時点では、移動体61は支持レール41における傾斜方向の上端部に位置している。移動体61は、この支持レール41の上端部から、重力によって当該支持レール41を傾斜方向下側へ向けて回転体63の回転により移動する。そして、その移動体61の移動に伴って、補助具67が階段部36上をその昇降方向(傾斜方向)に沿って上側(二階部分15側)へと移動する。また、この際、吊り帯66が巻取ドラム69により巻き取られながら、補助具67が二階部分15側へと移動する。
移動体61が支持レール41における傾斜方向の下端部(所定の降下位置)まで移動(降下)すると、補助具67が二階部分15における所定の待機位置へ到達する。この待機位置では、吊り帯66の吊り下げ長さが待機長さ(最短長さ)とされる。この場合、モータ等の駆動機器による動力を使用しないでも、補助具67を二階部分15の待機位置まで戻すことができるため、駆動機器を用いることなく、利便性の向上を図ることができる。なお、移動体61は、支持レール41の傾斜方向下端部にてストッパにより支持された状態で待機(保持)される。
以上、詳述した本実施形態の構成によれば、以下の優れた効果が得られる。
支持レール41の傾斜(傾斜角度)を階段部36(詳しくは各階段部36a,36b)の傾斜(傾斜角度)よりも緩やかに(小さく)したため、ユーザが階段部36を降りる際、移動体61が支持レール41に沿って傾斜方向上側へ追従移動しにくくなってユーザが階段部36を円滑に降りることが妨げられるといった不都合を抑制することができる。
また、このように支持レール41の傾斜角度を小さくすることで、支持レール41の高低差(上下高さ)を小さくすることができるため、支持レール41を天井面材27下に大きく突出させることなく配置することができ、その結果天井付近の意匠性が損なわれるのを抑制することができる。
支持レール41を、建物ユニット20の天井小梁25に吊り部材48を介して支持するようにした。この場合、支持レール41を支持する上で、建物ユニット20の天井部分に別途専用の支持部材を設ける必要がないため、構成の簡素化を図ることができる。
具体的には、平面視U字状をなす支持レール41における2つの直線レール部42,43、すなわち下階側レール部42と上階側レール部43とをそれぞれ天井小梁25b,25cの下方にて当該天井小梁25b,25cに沿って配置し、当該天井小梁25b,25cに吊り部材48を介して吊り下げ支持するようにした。この場合、下階側レール部42及び上階側レール部43に対して複数の吊り部材48を配置し易く、しかも各吊り部材48の位置や間隔に関する自由度も高いため、支持レール41を建物ユニット20の天井小梁25に吊り部材48を介して吊り下げ支持する上で好適な構成といえる。
上述した従来技術(特許文献1)のように、ユーザの手首を腕輪に装着する構成では、ユーザが階段部36で転倒しかかって規制装置71による転倒防止機能が働いた場合に、腕輪部分でユーザの体重を局所的に支えることになるため、ユーザの手首が腕輪により締め付けられるといった不都合が懸念される。この点、上記実施形態では、補助具67をユーザの上半身に装着(着用)されるジャケット型としたため、規制装置71による転倒防止機能が働いた場合に、ユーザの荷重を上半身で広く支えることができ、かかる不都合が生じるのを抑制することができる。
本発明は上記実施形態に限らず、例えば次のように実施されてもよい。
(1)支持レール41における傾斜方向の上端側に、移動体61を保持するための保持部を設けてもよい。その例を図9に示す。図9に示す支持レール81は、その傾斜方向における上端側に移動体61を保持するための保持レール部82(保持部に相当)を有している。この保持レール部82は水平方向に延びており傾斜していない。そのため、この保持レール部82に移動体61を配置しておけば、移動体61が重力によって支持レール81を傾斜方向の下側に向けて移動しないように保持しておくことができ、その結果、補助具67を一階部分14に保持して(待機させて)おくことが可能となる。これにより、ユーザが一階部分14から二階部分15へ向けて階段部36を昇る際にも補助具67を装着することが可能となるため、階段部36を降りる場合にも昇る場合にも歩行補助装置40によりユーザを補助することが可能となる。
なお、補助具67を一階部分14に保持しておくにあたっては、例えば、一階部分14の壁面等に補助具67を引っ掛け支持する引っ掛け部を設け、その引っ掛け部に補助具67を引っ掛けることで、補助具67が巻取ドラム69による吊り帯66の巻き取りにより上昇しないよう一階部分14に保持しておくことが考えられる。
また、保持レール部82を、水平方向に延びるように形成することに代えて、支持レール81における保持レール部82以外のレール部分とは逆向きに傾斜するよう形成してもよい。その場合にも、移動体61を保持レール部82において、詳しくは保持レール部82の傾斜方向下端部において、ストッパにより支持された状態で保持することができる。
また、保持部は必ずしも保持レール部82により構成する必要はない。例えば支持レール41の傾斜方向上端部において支持板部41d,41eの上面に凹部(保持部に相当)を設け、その凹部に回転体63を配設することでレール溝57に沿った回転体63の回転を防止し、それによって移動体61を保持することが考えられる。
(2)上記実施形態では、支持レール41の傾斜角度をレール長手方向全域に亘って一定としたが、支持レール41の傾斜角度をその途中で変化させてもよい。例えば支持レール41において、下階側レール部42の傾斜を上階側レール部43の傾斜よりも急にしたり、それとは逆に、上階側レール部43の傾斜を下階側レール部42の傾斜よりも急にしたりしてもよい。
また、図10に示すように、支持レール41における傾斜方向上端側の一部のレール部分について、その傾斜をそれ以外のレール部分と比べて急にしてもよい。図10に示す支持レール85は、その傾斜方向における上端側のレール部分が、それ以外のレール部分(以下、通常レール部87という)と比べて傾斜角度が大きくされた急傾斜レール部86となっている。例えば、この急傾斜レール部86では、通常レール部87と比べて傾斜角度が2倍以上となっている。
かかる構成によれば、移動体61を重力によって支持レール85の傾斜方向下側へ移動(降下)させる際、急傾斜レール部86においてその移動に勢いを付けることができるため、移動体61を支持レール85の傾斜方向の下端部(所定の降下位置)まで確実に移動させることができ、その結果補助具67を二階部分15(所定の待機位置)まで確実に移動させることが可能となる。
(3)上記実施形態では、移動体61を重力のみにより支持レール41に沿って傾斜方向下側へ移動させるようにしたが、重力以外の力も利用して移動体61を移動させるようにしてもよい。その例を図11に示す。
図11では、移動体61の本体部62の内部に、ゼンマイよりなる付勢部材91が設けられている。この付勢部材91は、各回転体63と軸部64を介して連結されている。この場合、移動体61が支持レール41に沿って傾斜方向上側へ向けて移動する際の回転体63の回転に基づき付勢部材91が弾性変形し、それによって付勢部材91には付勢力が蓄えられる。そして、付勢部材91に蓄えられた付勢力によって、回転体63には支持レール41における傾斜方向下側へ向けた回転が生じる。
かかる構成によれば、補助具67を装着したユーザが階段部36を二階部分15から一階部分14へと降りるのに伴い、移動体61が支持レール41を傾斜方向上側へ向けて移動すると、付勢部材91には付勢力が蓄えられる。そして、ユーザが一階部分14まで降りた後、移動体61を支持レール41に沿って傾斜方向下側へ移動させる際には、重力に加えてその付勢力を利用することができる。これにより、移動体61を支持レール41の傾斜方向下端部(所定の降下位置)まで確実に移動させることができ、その結果補助具67を二階部分15(所定の待機位置)まで確実に移動させることが可能となる。
(4)上記実施形態では、補助具67を吊り下げる吊り具として、帯状に形成された吊り帯66を用いたが、線状に形成されたロープやワイヤ等を用いてもよい。
また、上記実施形態では、吊り帯66の巻き取り又は引き出しによって移動体61からの吊り帯66の吊り下げ長さを調整するようにしたが、これを変更してもよい。例えば、吊り帯を、ゴム等の弾性材料によって伸縮可能に形成し、その伸縮によって吊り下げ長さを変化させるようにしてもよい。
(5)上記実施形態では、歩行補助装置40に、階段部36においてユーザが転倒又は落下するのを防止すべく規制装置71を設けたが、かかる規制装置71を不具備としてもよい。この場合にも、ユーザが階段部36を降りる際にユーザの体重の一部を支えることができるため、ユーザが階段部36を降りるのを補助することができる。
(6)上記実施形態では、支持レール41を建物ユニット20の天井小梁25(のみ)により支持するようにしたが、支持レール41の一部を天井大梁22により支持するようにしてもよい。例えば、支持レール41の下階側レール部42又は上階側レール部43を天井大梁22の下方にて当該天井大梁22に沿って配置し、その天井大梁22により当該レール部42(43)を支持することが考えられる。
また、建物ユニット20の天井大梁22間又は天井小梁25間に、別途専用の支持部材(長尺材)を架け渡して、その支持部材により支持レール41を上方から支持するようにしてもよい。この場合、支持レール41を配置する上で天井梁22,22の位置による制約を受けることがないため、支持レール41の配置に関し自由度を高めることができる。
(7)上記実施形態では、屈折階段よりなる階段部36に対して本発明の歩行補助装置40を適用したが、折り返し部が段差状とされている回り階段等、他の折り返し階段に対して本発明を適用してもよい。また、折り返し階段以外の階段に対して本発明の歩行補助装置を適用してもよい。例えば、直階段に対して本発明を適用することが考えられる。直階段では階段の昇降方向が(平面視にて)直線状であるため、それに合わせて支持レール41を直線状に形成することになる。
また、建物10内にスロープが設けられている場合に、そのスロープに対して本発明の歩行補助装置を適用してもよい。この場合にも、階段に本発明を適用した場合と同様の効果を得ることができる。
(8)例えば3階建て以上の建物において、二階部分と三階部分との間を連絡する階段に本発明の歩行補助装置40を適用してもよい。また、一階部分と三階部分との間を連絡する階段に本発明を適用してもよい。
屋外に階段又はスロープが設けられている場合に、その階段又はスロープに本発明の歩行補助装置40を適用してもよい。
(9)上記実施形態では、ユニット式建物への適用例を説明したが、鉄骨軸組工法により構築される建物等、他の構造の建物にも本発明を適用できる。