以下、図面を参照して、本発明の実施形態の一例を説明する。
図1は、本発明の光学機器の実施形態の一例であるデジタルスチルカメラを正面側(被写体側)から見た図である。
図1に示すように、本実施形態のデジタルスチルカメラは、カメラ本体200の正面側に、バリア機構を備えるレンズ鏡筒201、及びストロボユニット202等が設けられ、カメラ本体200の上面部には、レリーズボタン203等が設けられる。また、カメラ本体200の背面側には、不図示の表示ユニットや操作ボタン群等が設けられる。
レンズ鏡筒201は、カメラ本体200の不図示の電源スイッチがON操作されることで、図に示す沈胴位置から撮影位置に繰り出し動作し、また、電源スイッチがOFF操作されることで、撮影位置から沈胴位置に繰り込み動作する。そして、レンズ鏡筒201の撮影位置で、レリーズボタン203が押されると、レンズ鏡筒201内の撮影光学系を通過してCCDセンサやCMOSセンサ等の撮像素子80(図2参照)に結像した被写体光が電気信号に光電変換され、画像が生成される。被写体が暗い場合は、ストロボユニット202が発光して、ストロボ光が被写体に照射される。また、レンズ鏡筒201には、撮影時に被写体側に露出する第1レンズユニット10(図2参照)を開閉可能に覆うバリア機構が設けられる。
図2は、レンズ鏡筒201の撮影位置での断面図である。図3は、レンズ鏡筒201の沈胴位置での断面図である。
図2及び図3に示すように、レンズ鏡筒201は、バリア筒9、第1鏡筒11、第2鏡筒21、第3鏡筒31、第4鏡筒41、第5鏡筒51、第6鏡筒61、移動カム筒71、化粧筒72、固定筒73、駆動カム筒74、カバー筒75及び素子ホルダ81を有する。
バリア筒9は、最も被写体側に配置され、後述するバリア機構を構成する。バリア筒9は、ズーム動作中は第1鏡筒11と一体となって光軸方向に移動する。また、バリア筒9には、沈胴位置でのみ、第1鏡筒11との光軸方向の間隔が離れるようなカム軌跡のカム溝が形成されている。
第1鏡筒11は、第1レンズユニット10を保持し、第1レンズユニット10と一体に光軸方向に移動する。第1鏡筒11の像面側の端部内周部には、不図示のカムピンが設けられている。第1鏡筒11には、第1レンズユニット10が固定された第1レンズ保持枠12が接着等により組み込まれ、第1レンズ保持枠12には、遮光シート13が取り付けられる。
第2鏡筒21は、第2レンズユニット20を保持している。第2鏡筒21に設けられた不図示のカムピンは、移動カム筒71のカム溝71eに係合している。
第3鏡筒31には、第3レンズユニット30が固定された第3レンズ保持枠32が接着等により組み込まれている。第3鏡筒31に設けられた不図示のカムピンは、移動カム筒71のカム溝71eに係合している。また、第3鏡筒31には、絞り/シャッタユニット33が取り付けられている。
絞り/シャッタユニット33は、不図示のフレキシブル基板を介して不図示の制御基板に接続されている。絞り/シャッタユニット33は、被写体側に4枚のシャッタ羽根を有し、像面側に9枚の絞り羽根を有する。4枚のシャッタ羽根は、電磁駆動により開閉動作し、撮像素子80の露光量を制御する。また、9枚の絞り羽根は、不図示のモータにより開閉動作して、絞り開口径を変化させ、光量を調節する。
第4鏡筒41は、第4レンズユニット40を保持した第4レンズ保持枠42を光軸に直交する方向にシフト可能に保持している。第4レンズ保持枠42は、周方向に互いに90度位相が異なる位置で2つの不図示のマグネットを保持している。また、第4レンズ保持枠42は、3つのボール43を挟んで第4鏡筒41に対して不図示のバネの付勢力によって光軸方向に押し付けられている。第4鏡筒41には、不図示のカムピンが設けられており、カムピンは、移動カム筒71の内周部に形成されたカム溝71fに係合している。
また、第4鏡筒41には、上記2つのマグネットを挟む位置に不図示のコイルと不図示のホール素子とが設けられている。不図示のフレキシブル基板を介してコイルに通電すると、第4レンズ保持枠42は、コイルとマグネット間に発生した電磁力によって光軸に直交する方向にシフトする。
このとき、第4レンズ保持枠42は、ボール43の転動を介して光軸に直交する方向にガイドされる。ホール素子は、第4レンズ保持枠42に保持されたマグネットの位置変化に応じた信号を出力するため、該信号に基づいて第4レンズ保持枠42のシフト量を検出することができる。
第5鏡筒51は、第5レンズユニット50を保持している。第5鏡筒51は、第6鏡筒61に固定された不図示の2本のガイドバーによって光軸方向に移動可能に支持されている。AFモータ52の出力軸には、スクリューネジ52aが形成されており、スクリューネジ52aには、第5鏡筒51に固定されたラック53が螺合している。従って、AFモータ52が回転すると、スクリューネジ52aとラック53とのネジ作用によって第5鏡筒51が光軸方向に移動する。
第6鏡筒61は、第6レンズユニット60を保持している。第6鏡筒61には、不図示のカムピンが設けられており、カムピンは、駆動カム筒74の内周部に形成されたカム溝74bに係合している。第6鏡筒61には、直進キー62が一体に設けられている。また、第6鏡筒61の像面側の端部外周部には、不図示のキー部が設けられ、キー部は、固定筒73の内周側に形成された不図示の直進溝に係合している。これにより、第6鏡筒61及び直進キー62は、固定筒73に対する回転が規制された状態で直進溝に沿って光軸方向に移動可能になっている。
素子ホルダ81は、撮像素子80を保持する。撮像素子80の被写体側には、IRカットフィルタ70が配置されている。IRカットフィルタ70及び撮像素子80を含む撮像素子ユニットは、素子ホルダ81に不図示のビスにより固定されている。
移動カム筒71は、外周部に後述するレバー駆動溝71h(図20参照)及びカム溝71dが形成され、内周部にカム溝71e,71f,71gが形成されている。また、移動カム筒71には、カムピン71a、ドライブピン71b、及び爪部71cが設けられている。
化粧筒72は、バリア筒9及び第1鏡筒11の外周側で移動カム筒71に一体に取り付けられ、移動カム筒71のカムピンやカム溝等が外観から見えない様に覆う。
固定筒73は、内周部にカム溝73aが形成され、カム溝73aには、移動カム筒71のカムピン71aが係合している。
駆動カム筒74は、固定筒73の外周側に回転可能に設けられている。駆動カム筒74の外周部には、不図示のギア部が一体に形成されている。ギア部は、不図示の減速機構を介して不図示のPZモータに接続されている。駆動カム筒74の内周部には、第6鏡筒61のカムピンが係合するカム溝74bが形成されている。従って、駆動カム筒74の回転により、第6鏡筒61は、カム溝74bに沿って光軸方向に移動する。
次に、レンズ鏡筒201の動作について説明する。
PZモータの駆動により、駆動カム筒74が回転する。駆動カム筒74の内周部には、光軸方向に沿って延びる溝部74aが形成され、溝部74aには、移動カム筒71のドライブピン71bが係合している。これにより、駆動カム筒74の回転に伴い、移動カム筒71も回転する。移動カム筒71は、カムピン71aが固定筒73のカム溝73aに係合しているため、回転しながら光軸方向に移動する。
移動カム筒71が回転すると、第1鏡筒11の内周部の不図示のカムピンが移動カム筒71の外周部のカム溝71dのリフトによって光軸方向への駆動力を受ける。この際、第1鏡筒11に形成された不図示の直進溝は、第2鏡筒21に設けられた不図示の直進キーに沿って移動する。
また、第1鏡筒11には、バリア筒9の不図示の直進キーに係合する不図示の直進溝が形成されている。バリア筒9のカムピン9a(図4参照)は、移動カム筒71の外周部のカム溝71cのリフトによって光軸方向への駆動力を受ける。従って、移動カム筒71が回転することにより、第1鏡筒11及びバリア筒9は、回転が規制された状態で光軸方向に移動可能となっている。
更に、移動カム筒71が回転すると、第2鏡筒21、第3鏡筒31及び第4鏡筒41は、カム溝71e,71f,71gのリフトによって光軸方向に移動する。このとき、第2鏡筒21、第3鏡筒31及び第4鏡筒41は、直進キー62による不図示の直進ガイド機構により回転が規制される。
このようにして、レンズ鏡筒201は、沈胴位置から撮影位置のワイド端に繰り出され、ワイド端とテレ端との間でズーミングを行うことができる。また、AFモータ52により、第5鏡筒51を光軸方向に移動させることで、フォーカシングを行うことができる。
次に、図4乃至図22を参照して、レンズ鏡筒201に設けられたバリア機構について説明する。
図4は、バリア機構を被写体側から見た分解斜視図である。図5は、バリア機構を像面側から見た分解斜視図である。
図4及び図5に示すように、バリア機構は、バリア羽根1〜4、バリアカバー5、コイルスプリング6、バリア駆動環7、化粧板8、及びバリア筒9を有する。
バリア羽根1〜4は、それぞれ一対で組をなしている。一対のバリア羽根1〜4は、互いに反対方向に回動可能とされ、バリアカバー5の開口部5aを開閉可能に覆うようになっている。
また、バリア羽根1は、樹脂材で形成され、バリア羽根2〜4は、金属材で形成されている。バリア羽根1〜4は、開状態でそれぞれ光軸方向に重ねて配置される。バリアカバー5、バリア駆動環7、化粧板8、及びバリア筒9は、それぞれ樹脂材で形成され、バリアカバー5は、ビス19によりバリア筒9に固定される。ここで、バリア羽根1、バリア羽根2、バリア羽根3及びバリア羽根4は、それぞれ本発明の第1のバリア羽根、第2のバリア羽根、第3のバリア羽根及び第4のバリア羽根の一例に相当する。
図6は、バリア羽根1〜4が閉状態のバリア機構を被写体側から見た図である。図7は、バリア羽根1〜4が開状態のバリア機構を被写体側から見た図である。図8は、バリア羽根1〜4が閉状態のバリア機構を像面側から見た図である。図9は、バリア羽根1〜4が開状態のバリア機構を像面側から見た図である。なお、図8及び図9では、バリア駆動環7及びバリア筒9の図示を省略している。
図10は、バリア羽根1〜4が閉状態のバリア機構において、バリアカバー5及びそれぞれ対をなすバリア羽根1〜4のうちの一方のバリア羽根2〜4を取り外した状態を被写体側から見た図である。図11は、図10の状態の斜視図である。図12は、それぞれ対をなすバリア羽根1〜4の一方のバリア羽根1〜4の閉状態を示す斜視図である。図13は、バリア羽根1とバリア羽根2との閉状態での関係を示す斜視図である。図14は、バリア羽根1とバリア羽根2との開状態での関係を示す斜視図である。図15は、バリア機構の部分拡大断面図である。図16は、バリア羽根1〜4が閉状態でのバリア機構の側面図である。
図4、図5及び図10に示すように、バリア駆動環7には、径方向外側に突出するフランジ部7cが周方向に180°離間して2カ所設けられている。また、バリア駆動環7には、径方向外側に突出するフランジ部7dがフランジ部7cに対して90°位相を代えて周方向に180°離間して2カ所設けられている。
バリア筒9は、バリア駆動環7の外周側に配置され、バリア駆動環7のフランジ部7c,7dに対応する位置には、それぞれバヨネット爪部9c,9dが設けられている。バリア駆動環7のフランジ部7c,7dをバリア筒9のバヨネット爪部9c,9dにバヨネット結合させることで、バリア駆動環7の光軸方向におけるバリア筒9に対する被写体側の位置が決められる。
また、図15に示すように、バリア駆動環7の像面側の面に対してバリア駆動環7のレール部7eとバリア筒9のレール部9gとが光軸方向に当接することで、バリア駆動環7の光軸方向におけるバリア筒9に対する像面側での位置が決められる。図4、図5及び図15に示すように、バリア駆動環7には、像面側に突出する突起部7hが周方向に略等間隔で3カ所形成されている。突起部7hは、突起部7hに対応してバリア筒9に形成された円弧溝9hに径方向に挿入されて該円弧溝9hの内周面に当接する。これにより、バリア筒9に対してバリア駆動環7が回転可能に保持される。
バリアカバー5は、バリア筒9より大径に形成され、図6及び図7に示すように、第1レンズユニット10の被写体側における有効開口領域(撮像に有効な光束が入射する領域)に対応する開口部5aと、開口部5aの径方向外側に形成された遮光部5bとを有する。開口部5aは、矩形状に形成され、上述したように、バリア羽根1〜4の閉状態で塞がれ、バリア羽根1〜4の開状態で開放される。開口部5aが閉状態のバリア羽根1〜4で塞がれることで、第1レンズユニット10の被写体側が覆われて第1レンズユニット10が保護される。
バリアカバー5には、図8に示すように、穴部5cが周方向に180°離間して2カ所設けられている。また、バリアカバー5には、爪部5dが穴部5cに対して90°位相を代えて周方向に180°離間して2カ所設けられている。
図7及び図9に示すバリア羽根1〜4の開状態では、バリア羽根1〜4は光軸方向に互いに重なり合う位置に収納される。樹脂材からなるバリア羽根1の基部における像面側には、軸1aが設けられ、被写体側には、軸1bが設けられている。軸1aと軸1bとは、図13に示すように、同軸ではなく、平行に配置されている。バリア羽根1の像面側の軸1aは、バリア筒9に形成された穴部9i(図4参照)に挿入され、被写体側の軸1bは、バリア羽根2に形成された穴部2a(図4参照)に挿入される。ここで、軸1aは、本発明の第1の軸の一例に相当し、軸1bは、本発明の第2の軸の一例に相当する。また、第1のバリア羽根1は、本発明の主バリア羽根の一例に相当し,バリア羽根2〜4は、本発明の複数の副バリア羽根の一例に相当する。
同様にして、バリア羽根3に形成された穴部3a、及びバリア羽根4に形成された穴部4aにも、バリア羽根1の被写体側の軸1bが順次挿入される。これにより、バリア羽根1は、軸(回動軸)1aを中心として、開閉方向(図10の矢印B又はE方向)に回動可能に支持され、バリア羽根2〜4は、軸1bを中心として、開閉方向(図10の矢印C又はF方向)に回動可能に支持される。ここで、バリア羽根1の像面側の軸1aと被写体側の軸1bとは、平行に配置されているため、バリア羽根1の軸1aを中心とした回動に伴ってバリア羽根2〜4の回動中心である軸1bは移動(公転)する。
図10、図11及び図16に示すように、一対のバリア羽根1の先端部及び基端部には、それぞれ先端側段差凹部1k及び基端側段差凹部1jが形成されている。バリア羽根1の先端側段差凹部1kは、被写体側を向くように形成され、基端側段差凹部1jは、像面側を向くように形成される。
そして、一対のバリア羽根1の閉状態において、一方(他方)のバリア羽根1の先端側段差凹部1kが他方(一方)のバリア羽根1の基端側段差凹部1jに回動方向に挿入されて先端側段差凹部1k及び基端側段差凹部1jが互いに光軸方向に対向配置される。このとき、一対のバリア羽根1の表面は、同一平面上に配置される。
図11に示すように、バリア羽根1の基端部の開閉方向の内周側には、誘い込み部1mが面取り等により形成されている。また、バリア羽根1の開閉方向に対向するバリア羽根2の先端部には、バリア羽根1,2の閉状態で誘い込み部1mを介してバリア羽根1に乗り上げてバリア羽根1の被写体側の面に対して光軸方向に重なる乗り上げ部2eが形成されている。これにより、一対のバリア羽根1同士の高さがガタつき等により光軸方向にずれた場合でも、バリア羽根2の乗り上げ部2eがバリア羽根1の被写体側の面に乗り上げることで、一対のバリア羽根1の光軸方向の高さを揃えることができる。
図12に示すように、バリア羽根3の開閉方向の外周側には、像面側に曲げられた曲げ部3cが形成され、曲げ部3cの先端には、バリア羽根3の開方向に突出する突出部3dが形成されている。また、バリア羽根4の開閉方向の外周側には、像面側に曲げられた2つの曲げ部4c,4fが形成され、曲げ部4c,4fの先端には、バリア羽根4の開方向に突出する突出部4d,4eが形成されている。突出部3dは、本発明の第1突出部の一例に相当し、突出部4d,4eは、本発明の第2突出部の一例に相当する。
図5及び図15に示すように、バリアカバー5の内周部には、横溝部5hが形成されている。横溝部5hには、バリア羽根3の突出部3dが開状態で径方向に挿入されるようになっている。また、図15に示すように、バリア羽根3,4の開状態では、バリア羽根3の突出部3dとバリア羽根4の突出部4eとが光軸方向に重なるように配置される。
図17は、バリア羽根1〜4の閉状態でのバリア機構を像面側から見た図である。図18は、バリア羽根1の閉状態でのバリア機構を被写体側から見た斜視図である。図19は、バリア羽根1の開状態でのバリア機構を被写体側から見た斜視図である。図20は、移動カム筒71とバリア駆動環7との関係を示す断面図である。図21は、バリア羽根1〜4が閉状態のバリア機構において、それぞれ対をなすバリア羽根1〜4のうちの一方のバリア羽根1〜4を取り外した状態を像面側から見た図である。図22は、バリア羽根1〜4が閉状態のバリア機構において、バリアカバー5及びそれぞれ対をなすバリア羽根1〜4のうちの一部のバリア羽根4を取り外した状態を被写体側から見た図である。なお、図18及び図19では、バリア羽根2〜4の図示は省略している。
図18に示すように、一対のバリア羽根1の閉状態において、一方(他方)のバリア羽根1の先端側段差凹部1kの先端部分は、他方(一方)のバリア羽根1の基端側段差凹部1jから反対側に突出してバリア駆動環7の被写体側の端面まで達している。バリア羽根1は、図18に示す閉状態から図19に示す開状態までの回動中に、先端側段差凹部1kの先端部分がバリア駆動環7の被写体側の端面を移動する。バリア羽根1の閉状態では、バリア羽根1の像面側に基端側段差凹部1jを設けているので、先端側段差凹部1kは、外観上見えなくなる。また、先端側段差凹部1kの先端部分が静圧を受けた際には、バリア駆動環7の被写体側の端面に押しつけられるため、該先端部分が静圧受けになる。
図17及び図22に示すように、バリア羽根1〜4の閉状態では、バリア羽根3の突出部3dは、バリア駆動環7の被写体側の端面に乗って光軸方向で重なっているため、バリア羽根3が被写体側から静圧を受けても当該静圧が受け止められる。
また、図10に示すように、バリア羽根1〜4の閉状態では、バリア羽根4の突出部4d,4eは、バリア駆動環7の被写体側の端面に乗って光軸方向で重なっているため、バリア羽根4が被写体側から静圧を受けても当該静圧が受け止められる。
図12及び図13に示すように、樹脂材からなるバリア羽根1の像面側には、金属材からなるバリア羽根2に形成されたリンク部2bの爪部が掛脱可能に掛止される掛止凸部1eが設けられている。掛止凸部1eのリンク部2bの爪部が掛止される部分の反対側の面には、傾斜部が形成され、傾斜部は、組立時や爪部が外れたときに再び爪部を掛止するための誘い込み形状となっている。
バリア羽根1には、掛止凸部1eから先端側段差凹部1kまでの間でリンク部2bが移動できるための溝が形成され、先端側段差凹部1kには、貫通穴1fが形成されている。バリア羽根1には、静圧など外から押されたときに第1レンズユニット10に光軸方向に当接する凸部1pが形成されている。凸部1pの周囲には、バリア羽根1の閉時や開閉途中で第1レンズユニット10に当たらないようにする逃げ形状としての凹球面部1q及び凹曲面部1rが形成されている。
リンク部2bは、図13に示すように、バリア羽根2の外周部から像面側に90°曲げられた曲げ部2c1と、曲げ部2c1の先端から90°曲げられてバリア羽根2と平行に延びる腕部2c2とを有する。腕部2c2の先端には、掛止凸部1eに掛止される爪部が形成される。バリア羽根2とリンク部2bの腕部2c2との間には、バリア羽根1の外周部1gが光軸方向に挟み込まれる。
図14に示すように、バリア羽根2のリンク部2bは、バリア羽根2の開状態から閉状態にかけてバリア羽根1に形成された貫通穴1fから掛止凸部1eまでの溝部に配置される。このため、リンク部2bは、凸部1pの周囲に形成された凹球面部1q及び凹曲面部1rから出ることはなく、また、バリア羽根1の回動方向の幅内に配置されるため、バリア羽根1からバリア駆動環7側に飛び出ることもない。貫通穴1fは、バリア羽根1の閉状態で、被写体側から見えない位置に形成されている。
コイルスプリング6は、引っ張りバネで構成され、図13に示すように、その両端に互いに同一方向を向くフック部6aを有する。コイルスプリング6の一方のフック部6aは、バリア羽根1の掛止部1dに掛止され、他方のフック部6aは、バリア駆動環7の掛止部7gに掛止される。
コイルスプリング6は、チャージされることで、バリア羽根1とバリア駆動環7とを互いに引き寄せるように付勢力を発生させる。すなわち、チャージされたコイルスプリング6は、バリア羽根1を図10の矢印B方向(開位置から閉位置に回動する方向)に付勢し、かつバリア駆動環7を図10の矢印D方向(閉位置から開位置に回転する方向)に付勢する。
バリア駆動環7には、像面側に延びる連動レバー7fが設けられ、連動レバー7fは、図15に示すように、バリア筒9の穴部9kと第1鏡筒11の穴部11cを貫通する。レンズ鏡筒201の沈胴動作時(バリア羽根1〜4の閉動作時)には、図20に示すように、連動レバー7fは、移動カム筒71に形成されたレバー駆動溝部71hに係合する。
図14に示すように、バリア羽根1が矢印E方向(閉位置から開位置)に回動する際には、バリア羽根1の外周部1gは、バリア羽根2のリンク部2bの曲げ部2c1に当接する。また、バリア羽根1が図14の矢印B方向(開位置から閉位置)に回動する際には、図13に示すように、バリア羽根1の掛止凸部1eにバリア羽根2のリンク部2bの腕部2c2先端の爪部が掛止される。これにより、バリア羽根1とバリア羽根2とが連結され、バリア羽根2は、バリア羽根1の回動動作に連動して回動する。
同様にして、図12に示すように、バリア羽根2の先端部2dは、バリア羽根3の先端部の爪部3bに掛止される。これにより、バリア羽根3は、バリア羽根2の回動動作に連動して回動する。
また、バリア羽根3の先端部3dは、バリア羽根4の先端部の爪部4bに掛止される。これにより、バリア羽根4は、バリア羽根3の回動動作に連動して回動する。リンク部2b、爪部3b及び爪部4bは、バリア羽根1〜4の開閉方向の回動動作時に互いに干渉しない位置に配置される。
図4及び図5に戻って、バリア筒9のバヨネット爪部9c,9dは、全て光軸に直交する方向にスライド成形される。このため、バヨネット爪部9c,9dの像面側には、スライド成形のための複数の横穴部が形成されている。そして、バリアカバー5の2つの爪部5dは、バリア筒9の複数の横穴部のうちの2つの横穴部9fに係止される。バリアカバー5の穴部5cには、ビス19が挿通され、ビス19は、バリア筒9のビス穴9e(図10参照)にビス締めされて固定される。
化粧板8の像面側には、爪部8a,8bがそれぞれ2つずつ形成されている。化粧板8を回転させて、爪部8a,8bをバリアカバー5のバヨネット穴5e,5fにそれぞれ結合することにより、バリアカバー5に対して化粧板8が固定される。
次に、バリア機構におけるバリア羽根1〜4の開状態から閉状態への動作について説明する。なお、一対のバリア羽根1〜4の開閉動作は、同様であるため、ここでは、一方のバリア羽根1〜4の開状態から閉状態への動作についてのみ説明する。
図20に示すように、移動カム筒71は、バリア駆動環7の連動レバー7fに対応する位置にレバー駆動溝部71hを有する。レバー駆動溝部71hは、レンズ鏡筒201の沈胴動作による移動カム筒71の回転に伴い、連動レバー7fを押してバリア駆動環7を回転させる。
バリア駆動環7は、図9に示すバリア羽根1〜4の開状態から、連動レバー7fが移動カム筒71のレバー駆動溝部71hに押されることで、図10の矢印A方向に回転する。バリア駆動環7が矢印A方向に回転すると、コイルスプリング6がチャージされ、バリア羽根1は、コイルスプリング6の付勢力により引っ張られて軸1aを中心として矢印B方向に回動する。このように、バリア駆動環7は、コイルスプリング6を介してバリア羽根1を閉位置に向けて回動させる。
バリア羽根2は、バリア羽根1に重なっており、バリア羽根1,2同士の摩擦力が高い場合は、摩擦力によりバリア羽根1と一体に矢印B方向に回動し始める。バリア羽根1,2同士の摩擦力が低い場合は、バリア羽根2は、バリア羽根1の回動に追従しないので、バリア羽根2のバリア羽根1に対する相対的な回動方向は、矢印Bと逆方向の矢印C方向となる。
このため、バリア羽根1の軸1aを中心とした矢印B方向の回動角度をB1とし、バリア羽根2の軸1bを中心とした矢印C方向の相対的な回動角度をC2とすると、バリア羽根1の軸1bが軸1aを中心として角度C2回動する。すなわち、バリア羽根2は、バリア羽根1の軸1a周りに矢印B方向に公転するような軌道で自転する角度がB1−C2と小さくなり、結果的に図10のB1−C2で示す角度を回動する。
バリア羽根2に重なるバリア羽根3も同様に、バリア羽根1に対する矢印C方向の相対的な回動角度をC3として、図10のB1−C3で示す角度を回動する。バリア羽根3に重なるバリア羽根4も同様に、バリア羽根1に対する矢印C方向の相対的な回動角度をC4として、図10のB1−C4で示す角度を回動する。
図12及び図13に示すように、バリア羽根1の掛止凸部1eがバリア羽根2のリンク部2bの爪部に引っ掛かると、バリア羽根2の軸1b周りの矢印C方向への回動はなくなり、バリア羽根2は、バリア羽根1の回動動作に連動して矢印B方向に回動し始める。その後、バリア羽根2の先端部2dがバリア羽根3の爪部3bに引っ掛かることで、バリア羽根3がバリア羽根1,2に連動して回動する。更に、バリア羽根3の先端部3dがバリア羽根4の爪部4bに引っ掛かることで、バリア羽根4がバリア羽根1〜3に連動して回動する。
また、バリア羽根1は、他方のバリア羽根1と突き当たって停止する。このとき、バリア羽根2〜4は、一体に矢印B方向に回動しており、バリア羽根4は、図21に示すように、爪部4bの先端部がバリアカバー5のストッパ5gに突き当たって停止する。これにより、バリア羽根1〜4が閉じられてバリアカバー5の開口部5aが塞がれ、第1レンズユニット10の被写体側が覆われて第1レンズユニット10が保護される。
ここで、本実施形態では、第1レンズユニット10は、被写体側に突出する凸レンズで構成される。そして、リンク部2bは、バリア羽根2が開位置から閉位置に回動する際に第1レンズユニット10の頂点を通らず、バリア羽根1の回動軸1aから第1レンズユニット10の頂点よりも遠い位置に配置される。
図23は、最も被写体側に配置されるバリア羽根4とバリアカバー5との位置関係を示す図である。図23において、一対のバリア羽根4のうち、上側のバリア羽根4は、閉位置に配置され、下側のバリア羽根4は、開位置に配置されている。
図23に示すように、開位置(下側)でのバリア羽根4の外径の外接円の中心Oは、バリアカバー5やバリア筒9の中心位置である光軸Oと一致している。そして、バリア羽根4が閉位置(上側)にあるとき、バリア羽根4の外径の外接円の中心位置は、Oxyとなり、バリアカバー5の開口部5aの短辺と平行な中心線上に近い位置に配置される。このときの光軸Oに対するOxyのずれは、製造上の誤差でばらつく程度のずれ量であるため、Oxyは、ほぼ中心線上にあるといえる。これにより、開口部5aの対角部の上側左右両側の角部をほぼ均等にバリア羽根4により塞ぐことができる。
図24を用いて、更に詳しく説明する。図24は、2つの軸1a,1bを用いたバリア羽根4の開閉動作を説明するための概略図である。
図24に示すように、バリア羽根4が開位置にあるとき、バリア羽根4の外径の外接円とバリアカバー5の外径とは一致している。バリア羽根4が開位置から閉位置に向けて図の矢印A方向にθ2回動する際、バリア羽根1の軸1aを中心にバリア羽根1の軸1bが回転する。そして、バリア羽根4の閉位置では、軸1bは、図10及び図21に示す矢印B1又はE1で示す角度に相当する角度α移動しており、バリア羽根4は、角度α移動する軸1bを中心に矢印C4又はF4で示す角度に相当する角度β相対的に逆方向に回動する。
従って、バリア羽根4は、結果的にθ2=α−β回動し、図24でX軸方向のX2の値が略0になるように軸1bを配置することで、バリア羽根4は、・軸方向にはほぼ動かずにY軸方向にのみY2だけ移動することになる。これにより、θ2=α−β回動後の閉状態のバリア羽根4は、・軸方向にはほとんど移動せず、Y軸方向にY2下がった位置に移動するため、開口部5aの上側左右両側の角部を均等に塞ぐことができる。なお、X軸方向のX2の値は、必ずしも略0にする必要はなく、バリア羽根4で開口部5aの上側左右両側の角部を均等に塞ぐことができる範囲で適宜設定することができる。
次に、バリア機構におけるバリア羽根1〜4の閉状態から開状態への動作について説明する。なお、一対のバリア羽根1〜4の開閉動作は、同様であるため、ここでは、一方のバリア羽根1〜4の閉状態から開状態への動作についてのみ説明する。
図10に示すバリア羽根1〜4の閉状態において、レンズ鏡筒201の沈胴状態からの繰り出し動作に応じて移動カム筒71が回転すると、レバー駆動溝部71hによって連動レバー7fが押された状態が解除される。これにより、バリア駆動環7は、チャージされていたコイルスプリング6の付勢力によって図10の矢印D方向に回転する。
バリア駆動環7が矢印D方向に回転すると、バリア駆動環7に形成された壁部7bがバリア羽根1の突起1cを押す。これにより、バリア羽根1は、軸1aを中心として矢印E方向の駆動力を受けて開方向に向けて回動し始める。
さらにバリア駆動環7が矢印D方向に回転し続けてバリア羽根1が矢印E方向に回転すると、図14に示すように、バリア羽根1の外周部1gがバリア羽根2の曲げ部2cに当接する。当接した後は、バリア羽根2は、軸1aを中心としてバリア羽根1とともに一体に矢印E方向に回動し始める。
このとき、バリア羽根2は、軸1bに嵌合している為、軸1bが軸1aを中心として回転する分移動するが、バリア羽根1の外周部1gがバリア羽根2の曲げ部2cに当接する前は慣性力により軸1bを中心として相対的に矢印E方向と逆の矢印F方向に回動する。すなわち、バリア羽根2は、軸1aを中心として図10のE1−F2で示す角度をバリア羽根1と一体に矢印E方向に開位置まで回動する。
ここで、E1は、バリア羽根1の軸1aを中心とした矢印E方向の回動角度、F2は、バリア羽根1の外周部1gがバリア羽根2の曲げ部2cに当接するまでのバリア羽根2の軸1bを中心とした矢印F方向の相対的な回動角度とする。
その後、バリア羽根2がバリア羽根1とともに矢印E方向に回動していくと、図12に示すように、バリア羽根1の外周部1hがバリア羽根3の曲げ部3cに突き当たる。そして、バリア羽根2と同様にして、バリア羽根3は、軸1aを中心として図10のE1−F3で示す角度をバリア羽根1,2と一体に矢印E方向に開位置まで回動する。
ここで、F3は、バリア羽根1の外周部1hがバリア羽根3の曲げ部3cに当接するまでのバリア羽根3の軸1bを中心とした矢印F方向の相対的な回動角度とする。
さらにバリア羽根3がバリア羽根1,2とともに矢印E方向に回動すると、図12に示すように、バリア羽根1の凸部1iがバリア羽根4の曲げ部4cに突き当たる。そして、バリア羽根2と同様にして、バリア羽根4は、軸1aを中心として図10のE1−F4で示す角度をバリア羽根1〜3と一体に矢印E方向に開位置まで回動する。
ここで、F4は、バリア羽根1の外周部1iがバリア羽根4の曲げ部4cに当接するまでのバリア羽根4の軸1bを中心とした矢印F方向の相対的な回動角度とする。
その後、図10に示すように、バリア羽根1の先端部1nがバリア筒9のストッパ9jに突き当たって停止し、これにより、バリア羽根1〜4の開位置に収納されてバリアカバー5の開口部5aが開放され、図7及び図9に示す開状態が維持される。
このとき、バリア羽根1とバリア羽根2とは光軸方向に互いに重なる位置に配置され、バリア羽根3はバリア羽根1,2と光軸方向に重なり、バリア羽根4もバリア羽根1〜3と光軸方向に重なる位置に配置される。
以上説明したように、本実施形態では、合計8枚となる一対のバリア羽根1〜4を用いても、一対のバリア羽根1〜4をレンズ鏡筒201の径方向において効率良く開位置にて収納することができる。これにより、バリア羽根の枚数を増してバリア機構の開口部5aに対してレンズ鏡筒201の外径を小さくすることができる。
また、本実施形態では、バリア羽根1の回動軸1aを固定し、バリア羽根2〜4の回動軸1bを回動軸1aを中心に公転させている。このため、構造の複雑化や組立性の低下を招くことなく、閉状態で一対のバリア羽根1〜4同士の合わせ部や開口部5aに隙間が生じないようにすることができる。
また、本実施形態では、2つの軸1a,1bを使用した回転運動によりバリア羽根1〜4を開閉動作させるため、バリア羽根1〜4の設計的なレイアウトの自由度が増える。また、直進スライド機構によりバリア羽根を開閉動作させる場合に比べて摩擦力を小さくできるので、アクチュエータのパワーも比較的少なくて済む。
また、本実施形態では、開口部5aの長辺(又は短辺)と略平行な中心線上に軸1aを配置しているので、鏡筒径を開口部5aの大きさに比べて小さくしてバリア羽根1〜4の退避スペースが小さくなっても、軸1aが露出するのを防止することができる。このため、軸1aの軸受部にゴミ等がつまることによる動作不良や外観の見栄えが悪くなるなどの不具合を回避することができる。
また、本実施形態では、バリア羽根1〜4の閉状態で、バリア羽根3,4の突出部3d,4d,4eは、バリア駆動環7の被写体側の端面に乗って光軸方向で重なって配置される。このため、第1レンズユニット10との距離が光軸方向に離れて配置されるバリア羽根3,4が被写体側から静圧を受けても当該静圧を確実に受け止めることができる。
また、本実施形態では、バリア羽根1〜4の開状態で、バリア筒9より大径のバリアカバー5の内周部に設けた横溝部5dにバリア羽根3の突出部3dが径方向に挿入される。このため、バリア羽根3の突出部3dをバリア筒9の外径よりも径方向外側まで延長することができ、静圧を受けるための有効な突出部3dの大きさを確保することができる。
また、本実施形態では、バリア羽根1〜4の開状態では、バリア羽根3の突出部3dとバリア羽根4の突出部4eとが光軸方向に重なるように配置される。このため、バリア羽根1〜4の開位置で静圧を受ける部分を効率よく収納することができる。
また、本実施形態では、金属材からなるバリア羽根2にコ字状の曲げ部2c1を有するリンク部2bを設け、リンク部2bの腕部2c2とバリア羽根2とで樹脂製のバリア羽根1を挟んでバリア羽根1の像面側の掛止凸部1eに腕部2c2先端の爪部を掛止する。このため、リンク部2bは、レンズ鏡筒201の外観(被写体側)と逆側に配置されるため、外観から見えることはない。
また、本実施形態では、バリア羽根2の被写体側にさらにバリア羽根3を重ねてもリンク部2bはバリア羽根1の内側(像面側)にあるため、バリア羽根2がバリア羽根3と機構的に干渉することはない。
また、本実施形態では、リンク部2bは、バリア羽根1の内側(像面側)にあるため、バリア駆動環7や第1レンズユニット10に干渉することがない。
なお、本発明の構成は、上記実施形態に例示したものに限定されるものではなく、材質、形状、寸法、形態、数、配置箇所等は、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
例えば、上記実施形態では、デジタルスチルカメラに用いるバリア機構を例示したが、これに限定されず、銀塩カメラやデジタルビデオカメラ、カメラ機能付携帯端末、その他の光学機器や光学機器を含む装置に用いられるバリア機構に本発明を適用してもよい。