JP6256787B2 - 難燃性塩化ビニル樹脂組成物およびそれを用いた絶縁電線、並びに絶縁電線の製造方法 - Google Patents
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Description
導体と、前記導体の外周上に、第1の態様の難燃性塩化ビニル樹脂組成物から形成される絶縁被覆と、を備える絶縁電線が提供される。
前記絶縁被覆が架橋されている、第2の態様の絶縁電線が提供される。
第1の態様の難燃性塩化ビニル樹脂組成物を導体の外周上に押出被覆して絶縁被覆を形成する工程を有する、絶縁電線の製造方法が提供される。
前記絶縁被覆を架橋する工程をさらに有する、第4の態様の絶縁電線の製造方法が提供される。
本発明の参考形態及び実施形態の説明に先立ち、本発明者が得た知見について説明をする。
本発明においては、上述したように、非晶質シリカと、ハイドロタルサイトおよび焼成クレーのうちいずれか1つと、により、金属水酸化物の一部または全部を置き換えることができる。本参考形態においては、金属水酸化物の一部を置き換える場合について説明する。具体的には、金属水酸化物と、非晶質シリカと、ハイドロタルサイトおよび焼成クレーのうちいずれか1つと、を含有する場合について説明する。なお、以下では、金属水酸化物、非晶質シリカ、ハイドロタルサイトおよび焼成クレーをそれぞれ、(A)金属水酸化物、(B)非晶質シリカ、(C1)ハイドロタルサイトおよび(C2)焼成クレーとして説明する。
本参考形態の塩化ビニル樹脂組成物は、塩化ビニル樹脂と、可塑剤と、(A)金属水酸化物と、(B)非晶質シリカと、(C1)ハイドロタルサイトおよび(C2)焼成クレーのうちいずれか1つと、を含有する。
塩化ビニル樹脂は、ベース樹脂である。塩化ビニル樹脂としては、特に限定されず、塩化ビニルのホモポリマーの他、塩化ビニルと他の共重合可能なモノマーとの共重合体、例えば塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体などを用いることができる。また、これらの樹脂に、必要に応じてエチレン−酢酸ビニル共重合体や塩素化ポリエチレンなどを混合して用いてもよい。塩化ビニル樹脂としては、熱安定性、耐寒性および成形加工性の観点から、平均重合度が1300以上2500以下であることが好ましく、1500以上2000以下であることがより好ましい。
可塑剤としては、特に限定されず、従来公知の可塑剤を用いることができる。可塑剤の中でも、トリメリット酸系可塑剤が好ましく、例えばトリメリット酸トリ2−エチルヘキシル、トリメリット酸トリノルマルアルキル、トリメリット酸トリイソデシルなどを用いることができる。熱安定性や耐寒性の観点からは、トリメリット酸トリノルマルアルキルがより好ましい。トリメリット酸トリノルマルアルキルは、主成分として炭素数8のアルキル基を含むことが好ましく、副成分として炭素数10のアルキル基を含んでもよい。
(A)金属水酸化物は、塩化ビニル樹脂組成物の難燃性を向上させる。(A)金属水酸化物は、加熱により脱水され、放出する水分により塩化ビニル樹脂の温度を低減し(吸熱反応し)、その燃焼を抑制する。
(B)非晶質シリカは、非晶質微粒子シリカである。非晶質微粒子シリカは、例えば、シリカをガスに還元し、その蒸気相中で酸化することによって得られる。非晶質微粒子シリカは、例えば、一次粒子形状が略球形状であって、平均粒径が0.1μm以上0.2μm以下である。また、非晶質微粒子シリカは、表面における活性な水素基が少ない。そのため、非晶質微粒子シリカは、従来の微粒子シリカと比較して、塩化ビニル樹脂組成物へ分散しやすい。非晶質微粒子シリカは、塩化ビニル樹脂組成物に分散することにより、その難燃性を向上させることができる。この点につき、以下、具体的に説明する。
(C1)ハイドロタルサイトは、例えば、組成式Mg6Al2(OH)16CO3・4H2Oで表わされ、マグネシウムおよびアルミニウムを含む層状構造を有し、層間に炭酸イオン(CO3 2-)を含む化合物である。(C1)ハイドロタルサイトは、酸性域において陰イオン交換性を有するため、塩化ビニル樹脂組成物の難燃性および熱安定性を向上させることができる。この点につき、以下、具体的に説明する。
(C2)焼成クレーは、塩化ビニル樹脂組成物に電気特性および難燃性を付与するものである。(C2)焼成クレーは、例えば、カオリンクレーの1種であり、湿式カオリン(化学式:Al2O3・2SiO2・2H2O)を焼成したものである。(C2)焼成クレーでは、焼成により結晶水が放出し、もとの結晶構造が崩壊している。この構造により、(C2)焼成クレーは、他のカオリン(湿式カオリンや乾式カオリンなど)と比較して活性が高く、遊離イオンを吸着固定しやすい。これにより、(C2)焼成クレーは、塩化ビニル樹脂の電気特性(電気絶縁性)をより向上させることができる。また、(C2)焼成クレーは、多孔質な構造を有するので、低分子の有機成分を取り込み、塩化ビニル樹脂の難燃性にも寄与する。
上述したように、塩化ビニル樹脂組成物において、例えば上述したVW−1試験に合格するような高い難燃性を得るには、(A)金属水酸化物のみを用いる場合、その含有量を8質量部以上とする必要がある。しかしながら、この場合、多量の金属水酸化物によって塩化ビニル樹脂組成物の諸特性が低下してしまう。これに対して、本参考形態では、(B)非晶質シリカと、(C1)ハイドロタルサイトおよび(C2)焼成クレーのうち少なくとも1つとを、(A)金属水酸化物の一部と置き換えることにより、(A)金属水酸化物の含有量を8質量部未満に低減することができる。特に、金属水酸化物の含有量が7質量部以下であれば、金属水酸化物による塩化ビニル樹脂組成物の諸特性の低下を抑制できることが本発明者により知見されている。上記(A)成分〜(C2)成分の組み合わせには、以下の3つの場合がある。
(1):(A)金属水酸化物+(B)非晶質シリカ+(C1)ハイドロタルサイト
(2):(A)金属水酸化物+(B)非晶質シリカ+(C2)焼成クレー
(3):(A)金属水酸化物+(B)非晶質シリカ+(C1)ハイドロタルサイト+(C2)焼成クレー
・(B)非晶質シリカ:4質量部〜15質量部、好ましくは4質量部〜10質量部
・(C1)ハイドロタルサイト:5質量部〜30質量部、好ましくは5質量部〜25質量部
・(B)非晶質シリカ:4質量部〜15質量部、好ましくは4質量部〜10質量部
・(C2)焼成クレー:4質量部〜15質量部、好ましくは5質量部〜10質量部
・(B)非晶質シリカ:4質量部〜15質量部、好ましくは4質量部〜10質量部
・(C1)ハイドロタルサイト:5質量部〜30質量部、好ましくは5質量部〜25質量部
・(C2)焼成クレー:4質量部〜15質量部、好ましくは5質量部〜10質量部
本参考形態では、上記成分以外に、必要に応じて安定剤をさらに用いてもよい。安定剤は、鉛を含有しない非鉛系安定剤であれば限定されない。
次に、本発明の一実施形態にかかる絶縁電線について図1を用いて説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る絶縁電線1の断面図を示す。
上述の絶縁電線1は、従来公知の方法により製造することができる。絶縁電線1の製造方法は、例えば、上述の塩化ビニル樹脂組成物を導体10の外周上に押出被覆して絶縁被覆11を形成する工程と、絶縁被覆11を架橋する工程とを有する。具体的には、所定の線速(例えば、400m/min)で導体10を走行させ、その外周上に塩化ビニル樹脂組成物を押出被覆することにより絶縁被覆11を形成する。その後、絶縁被覆11に電子線などを照射することにより、絶縁被覆11を架橋する。これにより、本実施形態の絶縁電線1を得る。本実施形態では、(A)金属水酸化物を含有せず、成形加工性に優れる塩化ビニル樹脂組成物を用いるため、せん断発熱による発泡やダイスカスの発生を抑制することができ、高速押出が可能である。つまり、絶縁電線1の生産効率を向上させることができる。
本参考形態によれば、以下に示す1つ又は複数の効果を奏する。
次に、本発明の実施形態について説明する。ただし、ここでは、上述した参考形態との相違点のみを説明する。
・(B)非晶質シリカ:4質量部〜15質量部、好ましくは4質量部〜10質量部
・(C1)ハイドロタルサイト:5質量部〜30質量部、好ましくは5質量部〜25質量部
・(C2)焼成クレー:4質量部〜15質量部、好ましくは5質量部〜10質量部
参考例、実施例および比較例において用いた材料は次の通りである。
・(a1)水酸化アルミニウム:昭和電工株式会社製「ハイジライトH−42M」(平均粒子径1μm)
・(a2)水酸化アルミニウム:昭和電工株式会社製「ハイジライトH−43M」(平均粒子径0.75μm)
・(a3)水酸化アルミニウム:昭和電工株式会社製「ハイジライトH−32」(平均粒子径8μm)
・(a4)水酸化アルミニウム:昭和電工株式会社製「ハイジライトH−42S」(平均粒子径1μm、表面処理済み)
・非鉛安定剤:水澤化学株式会社製「NL−HT7」
・架橋助剤:トリメチロールプロパントリアクリレート(新中村化学株式会社製「NKエステルH−200」)
・炭酸カルシウム:三共製粉株式会社製「SCP♯2010」
・三酸化アンチモン中国辰州株式会社製「NANO−200」
参考例1〜5では、(B)非晶質シリカ、(C1)ハイドロタルサイトおよび(A)金属水酸化物を用いて、塩化ビニル樹脂組成物を調製した。
次に、上記で調製した実施例1〜6、参考例1〜16および比較例1〜7の塩化ビニル樹脂組成物を用いて、絶縁電線を製造した。具体的には、導体として、外径0.16mmの錫メッキ軟銅線を26本撚り合わせた撚り導体(外径0.94mm)の外周上に、調製した塩化ビニル樹脂組成物を溶融押出法により被覆厚0.5mmで押出被覆し、厚さ0.5mmの絶縁被覆を形成した。その後、絶縁被覆に、線量3.5Mradで電子線を照射し、電子線架橋することにより、絶縁電線を製造した。
次に、得られた絶縁電線の絶縁被覆について、難燃性、電気特性、熱安定性、耐寒性および成形加工性を評価した。以下、評価方法について説明する。
難燃性としては、UL1581に規定されるVW−1試験に準拠して、垂直難燃試験を行った。本実施例では、5本の絶縁電線に対して試験を行い、5本とも合格した場合を「○」、1本でも不合格であった場合を「×」とした。
電気特性としては、初期状態の絶縁電線、および136℃の環境下に168時間放置した熱劣化後の絶縁電線について、UL758を基準に以下の2つの試験を行い、いずれの試験にも合格した場合を「○」、そうでなかった場合を「×」とした。
(i)初期状態および熱劣化後のそれぞれの絶縁電線を直径5mmのマンドレルに6回巻き付け、水中で所定電圧をかけ、絶縁破壊するまでの破壊電圧を測定した。そして、初期状態の絶縁電線の破壊電圧をA、熱劣化後の絶縁電線の破壊電圧をBとして、Aが15kV以上、かつB/Aが0.9以上となる場合を合格とした。
(ii)初期状態および熱劣化後のそれぞれの絶縁電線に金属箔を巻き、定格条件105℃/2000Vで1分間、課電した。初期状態および熱劣化後の絶縁電線について、いずれも短絡しない場合を合格とした。
熱安定性としては、以下の2つの試験を行い、いずれの試験にも合格した場合を「○」、そうでなかった場合を「×」とした。
(i)絶縁電線を150℃で熱劣化させ、熱劣化後の絶縁被覆の引張伸びの絶対値が50%となる時間を測定し、その時間が500時間以上である場合を合格、500時間未満である場合を不合格とした。
(ii)CSA試験で指定されたワニスを絶縁電線に塗布し、105℃で30分乾燥させ、その後、150℃で20時間、ワニスを硬化させた。これを直径1mmのマンドレルに6回巻き付け、絶縁被覆にクラックが生じない場合を合格とした。
耐寒性としては、絶縁電線を−35℃の環境下に1時間放置し、これを直径1mmのマンドレルに6回巻き付け、絶縁被覆にクラックが生じない場合を「○」、クラックが生じた場合を「×」とした。
成形加工性としては、以下の2つの試験を行い、いずれの試験にも合格した場合を「○」、そうでなかった場合を「×」とした。
(i)40mmの押出機を用いて、線速400m/minで塩化ビニル樹脂組成物を押出被覆し、塩化ビニル樹脂組成物に由来するスパーク抜け、もしくはコブ・ダイスカスの発生による外径エラーが生じない場合を合格、生じた場合を不合格とした。
(ii)押出初期のサンプルと、押出被覆を1時間行った後のサンプルとを採取し、絶縁被覆の外観に荒れが確認されず、また光学顕微鏡による倍率100倍での観察にて絶縁被覆に発泡が確認されない場合を合格とした。
参考例1〜5では、(B)非晶質シリカおよび(C1)ハイドロタルサイトを用いることによって、(A)金属水酸化物の含有量を7質量部以下に低減した場合であっても、所望する難燃性を維持できることが確認された。しかも、(A)金属水酸化物の含有量を7質量部以下に低減しているため、電気特性、熱安定性、耐寒性および成形加工性の低下を抑制し、これらの特性を向上できることが確認された。
10 導体
11 絶縁被覆
Claims (5)
- 塩化ビニル樹脂と、可塑剤と、非晶質シリカと、ハイドロタルサイトと、焼成クレーと、を含有し、金属水酸化物を含有しない難燃性塩化ビニル樹脂組成物であって、前記塩化ビニル樹脂100質量部に対して、前記可塑剤を35質量部以上60質量部以下、前記非晶質シリカを4質量部以上15質量部以下、前記ハイドロタルサイトを5質量部以上30質量部以下、前記焼成クレーを4質量部以上15質量部以下含有することを特徴とする難燃性塩化ビニル樹脂組成物。
- 導体と、前記導体の外周上に、請求項1に記載の難燃性塩化ビニル樹脂組成物から形成される絶縁被覆と、を備える絶縁電線。
- 前記絶縁被覆が架橋されている、請求項2に記載の絶縁電線。
- 請求項1に記載の難燃性塩化ビニル樹脂組成物を導体の外周上に押出被覆して絶縁被覆を形成する工程を有する、絶縁電線の製造方法。
- 前記絶縁被覆を架橋する工程をさらに有する、請求項4に記載の絶縁電線の製造方法。
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