JP6256787B2 - 難燃性塩化ビニル樹脂組成物およびそれを用いた絶縁電線、並びに絶縁電線の製造方法 - Google Patents

難燃性塩化ビニル樹脂組成物およびそれを用いた絶縁電線、並びに絶縁電線の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、難燃性塩化ビニル樹脂組成物およびそれを用いた絶縁電線、並びに絶縁電線の製造方法に関する。
電子機器類の内部配線などには、絶縁電線が用いられている。絶縁電線は導体と導体の外周を被覆するように設けられる絶縁被覆とを備えており、導体が外部と電気的に絶縁されている。
電子機器類の内部配線に用いられる絶縁電線においては、電子機器の発火事故などに際して絶縁電線を伝って火が燃え広がらないように、難燃性が要求されている。例えば、絶縁電線には、米国のUL758規格の垂直燃焼試験(VW−1試験)に合格するような高い難燃性が要求されている。
このような絶縁電線の絶縁被覆には、形成材料として、塩化ビニル樹脂を含む塩化ビニル樹脂組成物が広く用いられている。塩化ビニル樹脂は、化学構造中にハロゲンである塩素を含有しており、難燃性に優れている。
塩化ビニル樹脂は、一般に硬質であるため、柔軟性の要求される絶縁被覆の形成材料として用いる場合には、軟質化させるために可塑剤を多量に添加して用いる。しかし、可塑剤は、可燃性であり、塩化ビニル樹脂組成物の難燃性を低下させてしまう。このため、多量の可塑剤を含有する塩化ビニル樹脂組成物では、塩化ビニル樹脂が本来有する難燃性を得ることが困難となる。
そこで、可塑剤を含有させる塩化ビニル樹脂組成物には、当該可塑剤により低下する難燃性を改善するため、難燃剤が添加される。従来、難燃剤としてアンチモン化合物が用いられていたが、アンチモン化合物は、環境や人体に悪影響を与え、また希少で価格が上昇傾向にあるといったことから、その使用が控えられる傾向にある。そのため、近年、アンチモン化合物に代わる難燃剤として、例えば、水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウムなどの金属水酸化物が用いられるようになっている。
例えば、有害なアンチモン化合物を含有しない塩化ビニル樹脂組成物として、塩化ビニル樹脂100質量部に対して、水酸化アルミニウム及び/又は水酸化マグネシウムを8〜22質量部と、非鉛系安定剤とを添加したものが開示されている(例えば、特許文献1を参照)。
特開2011−26427号公報
しかしながら、本発明者の知見によると、金属水酸化物は、塩化ビニル樹脂組成物の難燃性を向上させるものの、その電気特性、熱安定性、耐寒性および成形加工性を低下させるおそれがある。特に、特許文献1のように、金属水酸化物を多量(8〜22質量部)に含有させる場合、塩化ビニル樹脂組成物の諸特性が大きく低下するという問題がある。
本発明は、このような問題に鑑みて成されたものであり、難燃性と共に、電気特性、熱安定性、耐寒性および成形加工性に優れる難燃性塩化ビニル樹脂組成物、およびそれを用いた絶縁電線を提供することを目的とする。
本発明の第1の態様によれば、塩化ビニル樹脂と、可塑剤と、非晶質シリカと、ハイドロタルサイトと、焼成クレーと、を含有し、金属水酸化物を含有しない難燃性塩化ビニル樹脂組成物であって、前記塩化ビニル樹脂100質量部に対して、前記可塑剤を35質量部以上60質量部以下、前記非晶質シリカを4質量部以上15質量部以下、前記ハイドロタルサイトを5質量部以上30質量部以下、前記焼成クレーを4質量部以上15質量部以下含有する難燃性塩化ビニル樹脂組成物が提供される。
本発明の第2の態様によれば、
導体と、前記導体の外周上に、第1の態様の難燃性塩化ビニル樹脂組成物から形成される絶縁被覆と、を備える絶縁電線が提供される。
本発明の第3の態様によれば、
前記絶縁被覆が架橋されている、第2の態様の絶縁電線が提供される。
本発明の第4の態様によれば、
第1の態様の難燃性塩化ビニル樹脂組成物を導体の外周上に押出被覆して絶縁被覆を形成する工程を有する、絶縁電線の製造方法が提供される。
本発明の第5の態様によれば、
前記絶縁被覆を架橋する工程をさらに有する、第4の態様の絶縁電線の製造方法が提供される。
本発明によれば、難燃性と共に、電気特性、熱安定性、耐寒性および成形加工性に優れる難燃性塩化ビニル樹脂組成物、それを用いた絶縁電線が得られる。
本発明の一実施形態に係る絶縁電線の断面図である。
<本発明者が得た知見>
本発明の参考形態及び実施形態の説明に先立ち、本発明者が得た知見について説明をする。
上述したように、水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウム等の金属水酸化物は、塩化ビニル樹脂組成物の難燃性を向上させることができる。しかしながら、金属水酸化物は、塩化ビニル樹脂組成物の電気特性、熱安定性、耐寒性および成形加工性を低下させるおそれがある。そのため、金属水酸化物を多量に含有させた塩化ビニル樹脂組成物から形成される絶縁被覆では、以下の(1)〜(4)のような問題が生じる。
(1)水酸化アルミニウムは、体積固有抵抗値が低いため、塩化ビニル樹脂組成物の体積固有抵抗値を低減し、絶縁被覆の電気特性(電気絶縁性)を低下させてしまう。水酸化マグネシウムは、塩化ビニル樹脂組成物に含まれる可塑剤を加水分解することで、水酸化アルミニウムと同様に、絶縁被覆の電気特性を低下させてしまう。
(2)水酸化アルミニウムは、塩化ビニル樹脂組成物の熱安定性を低下させてしまうため、絶縁被覆は熱劣化しやすくなる。
(3)水酸化アルミニウム等の金属水酸化物は、塩化ビニル樹脂組成物の耐寒性を低下させてしまうため、絶縁被覆は低温度に曝されたときに脆化してクラックしやすくなる。
(4)水酸化アルミニウム等の金属水酸化物は、塩化ビニル樹脂組成物をせん断しながら押し出して絶縁被覆に成形加工するとき、樹脂のせん断発熱を促して樹脂に発泡を生じさせる要因となる。樹脂が発泡すると、成形加工される絶縁被覆は外観が悪化してしまう。また、水酸化アルミニウム等は、塩化ビニル樹脂組成物をダイスにより押し出して絶縁被覆に成形加工するとき、ダイス出口でダイスカスを生じさせる要因となる。ダイスカスが生じると、成形加工される絶縁被覆の厚さがバラつく場合がある(いわゆる外径エラーが生じる)。このような樹脂の発泡やダイスカスの発生は、塩化ビニル樹脂組成物を押し出す速度(押出速度)を高速化するほど、顕著となる。このように水酸化アルミニウム等は、塩化ビニル樹脂組成物の成形加工性を低下させるため、絶縁被覆の外観不良や外径エラーを生じさせることになる。
上述の金属水酸化物による塩化ビニル樹脂組成物の特性の低下を抑制するには、金属水酸化物の含有量を低減することが考えられる。そこで、本発明者は、塩化ビニル樹脂組成物において、VW−1試験に合格するような高い難燃性を維持しつつ、含有させる金属水酸化物の量を低減するため、その含有量の低減による難燃性の低下を補うことのできる、難燃性を有する他の化合物について検討を行った。その結果、非晶質シリカと、ハイドロタルサイト及び焼成クレーから選択される少なくとも1つとの組み合わせがよいとの知見を見出した。これら化合物はそれぞれ、難燃性を有するため、金属水酸化物の代わりに用いることができる。そして、これら化合物の組み合わせによれば、金属水酸化物の一部または全部を置き換えることができる。すなわち、金属水酸化物の含有量を低減、または0とすることができる。これにより、金属水酸化物のみを多量に用いた場合と同等の難燃性を維持しつつ、金属水酸化物による電気特性、熱安定性、耐寒性および成形加工性の低下を抑制することができる。
本発明は、上記知見に基づき成されたものである。
[本発明の参考形態]
本発明においては、上述したように、非晶質シリカと、ハイドロタルサイトおよび焼成クレーのうちいずれか1つと、により、金属水酸化物の一部または全部を置き換えることができる。本参考形態においては、金属水酸化物の一部を置き換える場合について説明する。具体的には、金属水酸化物と、非晶質シリカと、ハイドロタルサイトおよび焼成クレーのうちいずれか1つと、を含有する場合について説明する。なお、以下では、金属水酸化物、非晶質シリカ、ハイドロタルサイトおよび焼成クレーをそれぞれ、(A)金属水酸化物、(B)非晶質シリカ、(C1)ハイドロタルサイトおよび(C2)焼成クレーとして説明する。
<塩化ビニル樹脂組成物>
本参考形態の塩化ビニル樹脂組成物は、塩化ビニル樹脂と、可塑剤と、(A)金属水酸化物と、(B)非晶質シリカと、(C1)ハイドロタルサイトおよび(C2)焼成クレーのうちいずれか1つと、を含有する。
以下、各成分について、具体的に説明する。
(塩化ビニル樹脂)
塩化ビニル樹脂は、ベース樹脂である。塩化ビニル樹脂としては、特に限定されず、塩化ビニルのホモポリマーの他、塩化ビニルと他の共重合可能なモノマーとの共重合体、例えば塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体などを用いることができる。また、これらの樹脂に、必要に応じてエチレン−酢酸ビニル共重合体や塩素化ポリエチレンなどを混合して用いてもよい。塩化ビニル樹脂としては、熱安定性、耐寒性および成形加工性の観点から、平均重合度が1300以上2500以下であることが好ましく、1500以上2000以下であることがより好ましい。
(可塑剤)
可塑剤としては、特に限定されず、従来公知の可塑剤を用いることができる。可塑剤の中でも、トリメリット酸系可塑剤が好ましく、例えばトリメリット酸トリ2−エチルヘキシル、トリメリット酸トリノルマルアルキル、トリメリット酸トリイソデシルなどを用いることができる。熱安定性や耐寒性の観点からは、トリメリット酸トリノルマルアルキルがより好ましい。トリメリット酸トリノルマルアルキルは、主成分として炭素数8のアルキル基を含むことが好ましく、副成分として炭素数10のアルキル基を含んでもよい。
可塑剤の含有量は、絶縁被覆に要求される柔軟性に応じて適宜変更することができる。ただし、可塑剤の含有量が少なすぎると、塩化ビニル樹脂組成物を絶縁被覆に形成したときに、脆性により絶縁被覆がクラックするおそれがある。一方、可塑剤の含有量が多すぎると、塩化ビニル樹脂組成物から可塑剤が溶出することで、絶縁被覆がべたつくため、その取り扱い性が低下するおそれがある。このため、可塑剤の含有量は、塩化ビニル樹脂100質量部に対して、35質量部以上60質量部以下であり、40質量部以上55質量部以下であるとよりよい。
((A)金属水酸化物)
(A)金属水酸化物は、塩化ビニル樹脂組成物の難燃性を向上させる。(A)金属水酸化物は、加熱により脱水され、放出する水分により塩化ビニル樹脂の温度を低減し(吸熱反応し)、その燃焼を抑制する。
(A)金属水酸化物としては、特に限定されず、例えば水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウムなどを用いることができる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。水酸化マグネシウムは、水酸化アルミニウムと比較して脱水温度が高いものの、塩化ビニル樹脂組成物において、可塑剤の加水分解や着色を引き起こす場合がある。このため、(A)金属水酸化物として、水酸化マグネシウムを用いずに水酸化アルミニウムのみを用いることが好ましい。これにより、塩化ビニル樹脂組成物の電気特性や成形加工性を向上させることができる。
(A)金属水酸化物の平均粒子径は、特に限定されないが、分散性の観点から2μm以下であることが好ましい。また、(A)金属水酸化物は、表面処理されていないことが好ましい。
((B)非晶質シリカ)
(B)非晶質シリカは、非晶質微粒子シリカである。非晶質微粒子シリカは、例えば、シリカをガスに還元し、その蒸気相中で酸化することによって得られる。非晶質微粒子シリカは、例えば、一次粒子形状が略球形状であって、平均粒径が0.1μm以上0.2μm以下である。また、非晶質微粒子シリカは、表面における活性な水素基が少ない。そのため、非晶質微粒子シリカは、従来の微粒子シリカと比較して、塩化ビニル樹脂組成物へ分散しやすい。非晶質微粒子シリカは、塩化ビニル樹脂組成物に分散することにより、その難燃性を向上させることができる。この点につき、以下、具体的に説明する。
非晶質微粒子シリカは、塩化ビニル樹脂組成物中に、凝集することなく、均一に分散することができる。塩化ビニル樹脂組成物が燃焼し始めるとき(燃焼初期)に、非晶質微粒子シリカは、その樹脂表面に均一に配列して硬い固化層(いわゆるチャー)を形成する。固化層によれば、酸素を遮断し、塩化ビニル樹脂組成物の燃焼を抑制することができる。しかも、非晶質微粒子シリカは、塩化ビニル樹脂組成物において、シリカを起点とするガス化発泡径を微細化することで、燃焼物の拡散を抑制し、延焼を抑制することができる。このように、非晶質微粒子シリカによれば、ナノシリカと同等以上の難燃性を塩化ビニル樹脂組成物に付与することができる。
なお、非晶質微粒子シリカは、塩化ビニル樹脂組成物に高充填した場合であっても、凝集による塩化ビニル樹脂組成物の成形加工性の低下や、絶縁被覆の伸び性等の低下が小さい。
((C1)ハイドロタルサイト)
(C1)ハイドロタルサイトは、例えば、組成式Mg6Al2(OH)16CO3・4H2Oで表わされ、マグネシウムおよびアルミニウムを含む層状構造を有し、層間に炭酸イオン(CO3 2-)を含む化合物である。(C1)ハイドロタルサイトは、酸性域において陰イオン交換性を有するため、塩化ビニル樹脂組成物の難燃性および熱安定性を向上させることができる。この点につき、以下、具体的に説明する。
(C1)ハイドロタルサイトは、化学構造中の炭酸イオン(CO3 2-)により、塩化ビニル樹脂の熱劣化で生じる塩化水素の塩素イオン(Cl-)を置換(イオン交換)し、塩素イオンを結晶構造中に捕捉することができる。このイオン交換により、(C1)ハイドロタルサイトは、塩素イオン型ハイドロタルサイト類化合物となる。この化合物は、約400℃の温度になるまで塩素イオンを化学構造中に捕捉し、脱離させないという特性を有している。したがって、(C1)ハイドロタルサイトは、塩化ビニル樹脂の化学構造から脱離する塩化水素を捕捉し、その熱劣化を抑制することによって、塩化ビニル樹脂の熱安定性を向上させることができる。しかも、(C1)ハイドロタルサイトは、熱安定性を向上させると共に、塩化ビニル樹脂の熱劣化の開始温度を高め、その炭化(燃え殻化)を促進させることによって、塩化ビニル樹脂の難燃性を向上させる。
((C2)焼成クレー)
(C2)焼成クレーは、塩化ビニル樹脂組成物に電気特性および難燃性を付与するものである。(C2)焼成クレーは、例えば、カオリンクレーの1種であり、湿式カオリン(化学式:Al23・2SiO2・2H2O)を焼成したものである。(C2)焼成クレーでは、焼成により結晶水が放出し、もとの結晶構造が崩壊している。この構造により、(C2)焼成クレーは、他のカオリン(湿式カオリンや乾式カオリンなど)と比較して活性が高く、遊離イオンを吸着固定しやすい。これにより、(C2)焼成クレーは、塩化ビニル樹脂の電気特性(電気絶縁性)をより向上させることができる。また、(C2)焼成クレーは、多孔質な構造を有するので、低分子の有機成分を取り込み、塩化ビニル樹脂の難燃性にも寄与する。
(各成分の配合)
上述したように、塩化ビニル樹脂組成物において、例えば上述したVW−1試験に合格するような高い難燃性を得るには、(A)金属水酸化物のみを用いる場合、その含有量を8質量部以上とする必要がある。しかしながら、この場合、多量の金属水酸化物によって塩化ビニル樹脂組成物の諸特性が低下してしまう。これに対して、本参考形態では、(B)非晶質シリカと、(C1)ハイドロタルサイトおよび(C2)焼成クレーのうち少なくとも1つとを、(A)金属水酸化物の一部と置き換えることにより、(A)金属水酸化物の含有量を8質量部未満に低減することができる。特に、金属水酸化物の含有量が7質量部以下であれば、金属水酸化物による塩化ビニル樹脂組成物の諸特性の低下を抑制できることが本発明者により知見されている。上記(A)成分〜(C2)成分の組み合わせには、以下の3つの場合がある。
(1):(A)金属水酸化物+(B)非晶質シリカ+(C1)ハイドロタルサイト
(2):(A)金属水酸化物+(B)非晶質シリカ+(C2)焼成クレー
(3):(A)金属水酸化物+(B)非晶質シリカ+(C1)ハイドロタルサイト+(C2)焼成クレー
ここで、上記(1)〜(3)の場合のそれぞれについて、各成分の配合を説明する。なお、本参考形態において、配合(各成分の含有量)は適宜変更することが可能であり、以下はその一例である。
(1)の場合、(A)金属水酸化物、(B)非晶質シリカおよび(C1)ハイドロタルサイトの3成分を用いる。この場合、(B)非晶質シリカおよび(C1)ハイドロタルサイトの含有量を、塩化ビニル樹脂100質量部に対して、以下の範囲とするとよい。なお、「〜」は、「所定の数値以上、所定の数値以下」の範囲を示す。
・(B)非晶質シリカ:4質量部〜15質量部、好ましくは4質量部〜10質量部
・(C1)ハイドロタルサイト:5質量部〜30質量部、好ましくは5質量部〜25質量部
(B)非晶質シリカおよび(C1)ハイドロタルサイトの含有量を上記範囲内とすることにより、(A)金属水酸化物の含有量を、7質量部以下とすることができる。好ましくは、(A)金属水酸化物の含有量を0.1質量部以上6質量部以下とすることができる。なお、(A)金属水酸化物として2種以上を併用する場合、その合計が上記範囲となるように用いる。
(2)の場合、(A)金属水酸化物、(B)非晶質シリカおよび(C2)焼成クレーの3成分を用いる。この場合、(B)非晶質シリカおよび(C2)焼成クレーの含有量を、塩化ビニル樹脂100質量部に対して、以下の範囲とするとよい。
・(B)非晶質シリカ:4質量部〜15質量部、好ましくは4質量部〜10質量部
・(C2)焼成クレー:4質量部〜15質量部、好ましくは5質量部〜10質量部
(B)非晶質シリカおよび(C2)焼成クレーの含有量を上記範囲内とすることにより、(A)金属水酸化物の含有量を、7質量部以下とすることができる。好ましくは、(A)金属水酸化物の含有量を0.1質量部以上6質量部以下とすることができる。なお、(2)の場合、(B)非晶質シリカおよび(C2)焼成クレーを併用すると、相乗効果により、それぞれを単独で使用する場合よりも難燃性をより向上させることができる。このため、3成分の含有量を低減した場合であっても、所望の難燃性を得ることができる。
(3)の場合、(A)金属水酸化物、(B)非晶質シリカ、(C1)ハイドロタルサイトおよび(C2)焼成クレーの4成分を用いる。この場合、(B)非晶質シリカ、(C1)ハイドロタルサイトおよび(C2)焼成クレーの含有量を、塩化ビニル樹脂100質量部に対して、以下の範囲とする。
・(B)非晶質シリカ:4質量部〜15質量部、好ましくは4質量部〜10質量部
・(C1)ハイドロタルサイト:5質量部〜30質量部、好ましくは5質量部〜25質量部
・(C2)焼成クレー:4質量部〜15質量部、好ましくは5質量部〜10質量部
(B)非晶質シリカ、(C1)ハイドロタルサイトおよび(C2)焼成クレーの含有量を上記範囲内とすることにより、(A)金属水酸化物の含有量を、7質量部以下とすることができる。好ましくは、(A)金属水酸化物の含有量を0.1質量部以上6質量部以下とすることができる。なお、(3)の場合、(2)の場合と同様に(B)非晶質シリカおよび(C2)焼成クレーを併用しているため、それぞれの相乗効果により、塩化ビニル樹脂組成物の難燃性をより向上させることができる。このため、4成分の含有量を低減した場合であっても、所望の難燃性を得ることができる。例えば、高コストの(C1)ハイドロタルサイトの含有量を低減するといったように、任意の成分の含有量を低減して調整することができる。
このように、本参考形態によれば、(B)非晶質シリカと、(C1)ハイドロタルサイトおよび(C2)焼成クレーのうちいずれか1つと、を用いることにより、(A)金属水酸化物の含有量を低減することができる。
(その他添加剤)
本参考形態では、上記成分以外に、必要に応じて安定剤をさらに用いてもよい。安定剤は、鉛を含有しない非鉛系安定剤であれば限定されない。
また、無機充填剤をさらに用いてもよい。無機充填剤としては、例えば炭酸カルシウムやタルクなどを用いることができる。
また、絶縁被覆を架橋させる場合は、架橋剤および架橋助剤を用いてもよい。架橋剤としては、有機過酸化物やシラン化合物などを用いることができる。また、架橋助剤としては、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等を用いることができる。架橋助剤の含有量は、特に限定されないが、少なすぎると架橋が不十分となり、多すぎると成形加工の際に架橋が進行してしまう。このため、架橋助剤の含有量は、塩化ビニル樹脂100質量部に対して、2質量部以上20質量部以下とするとよい。このような含有量であれば、架橋したときの絶縁被覆の架橋度を、ゲル分率で40%以上65%以下、好ましくは49%以上60%以下とすることができる。
また、必要に応じて、紫外線吸収剤、光安定剤、滑剤、着色剤、加工性改良剤、その他の改質剤などを1種または2種以上含有してもよい。これらは、従来公知のものを用いることができ、その含有量も用途に合わせて適宜変更することができる。
なお、本参考形態の塩化ビニル樹脂組成物は、上述の塩化ビニル樹脂と、可塑剤と、(A)金属水酸化物と、(B)非晶質シリカ、(C1)ハイドロタルサイトおよび(C2)焼成クレーの少なくとも1つと、また必要に応じて架橋助剤などのその他添加剤とを混合し、加熱しながら混練することにより得られる。混練条件や各成分の添加順序は、特に限定されず、従来公知の方法と同様とする。また、混練は、ミキシングロール、バンバリーミキサー、単軸または2軸押出機などを用いて行うことができる。また、混練の際の加熱温度は、例えば170℃以上200℃以下とする。
<絶縁電線>
次に、本発明の一実施形態にかかる絶縁電線について図1を用いて説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る絶縁電線1の断面図を示す。
図1に示すように、絶縁電線1は、導体10と、導体10の外周を被覆するように設けられる絶縁被覆11と、を備える。絶縁被覆11は、上述の塩化ビニル樹脂組成物から形成される。
導体10としては、特に限定されず、通常用いられる金属線、例えば銅線、銅合金線の他、アルミニウム線、金線、銀線などを用いることができる。また、金属線の外周に錫やニッケルなどの金属めっきを施したものを用いてもよい。さらに、金属線を撚り合わせた集合撚り導体を用いることもできる。導体10の導体径は、特に限定されず、例えば0.15mm以上7mm以下とすることができる。
絶縁被覆11は、実施形態の塩化ビニル樹脂組成物を導体10の外周上に押出被覆することにより形成される。絶縁被覆11の厚さは、特に限定されず、例えば0.1mm以上3mm以下とすることができる。また、絶縁被覆11は、機械特性を向上させる観点から、架橋されていることが好ましい。この架橋方法は、特に限定されず、例えば、有機過酸化物架橋、シラン架橋、放射線架橋など従来公知の方法を用いることができる。この中でも、管理面やコスト面から、電子線を用いる放射線架橋が好ましい。
<絶縁電線の製造方法>
上述の絶縁電線1は、従来公知の方法により製造することができる。絶縁電線1の製造方法は、例えば、上述の塩化ビニル樹脂組成物を導体10の外周上に押出被覆して絶縁被覆11を形成する工程と、絶縁被覆11を架橋する工程とを有する。具体的には、所定の線速(例えば、400m/min)で導体10を走行させ、その外周上に塩化ビニル樹脂組成物を押出被覆することにより絶縁被覆11を形成する。その後、絶縁被覆11に電子線などを照射することにより、絶縁被覆11を架橋する。これにより、本実施形態の絶縁電線1を得る。本実施形態では、(A)金属水酸化物を含有せず、成形加工性に優れる塩化ビニル樹脂組成物を用いるため、せん断発熱による発泡やダイスカスの発生を抑制することができ、高速押出が可能である。つまり、絶縁電線1の生産効率を向上させることができる。
なお、本実施形態では、導体の外周に塩化ビニル樹脂組成物を直接押出被覆し、絶縁層として絶縁被覆を形成する場合について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、通常の絶縁電線の外周上に押出被覆し、シースとして絶縁被覆を形成してもよい。また、図1では、導体10が単芯線の場合を示すが、本発明はこれに限定されず、多心撚線であってもよい。また、導体10の断面形状は、丸形形状に限定されず、平角形状とすることもできる。
<本発明の参考形態に係る効果>
本参考形態によれば、以下に示す1つ又は複数の効果を奏する。
(a)本参考形態によれば、塩化ビニル樹脂組成物は、塩化ビニル樹脂と、可塑剤と、(A)金属水酸化物と、(B)非晶質シリカと、(C1)ハイドロタルサイトおよび(C2)焼成クレーのうち少なくとも1つと、を含有している。(B)非晶質シリカ、(C1)ハイドロタルサイトおよび(C2)焼成クレーのそれぞれは、塩化ビニル樹脂組成物に難燃性を付与するため、(A)金属水酸化物の代わりに用いることができる。そして、これらの化合物の組み合わせによれば、(A)金属水酸化物の一部を置き換えて、(A)金属水酸化物の含有量を低減した場合であっても、(A)金属水酸化物のみを多量に用いた場合と同等の難燃性を維持することができる。これにより、例えば、絶縁被覆は、UL758規格の垂直燃焼試験(VW−1試験)に合格するような高い難燃性を有することになる。
(b)本参考形態によれば、(A)金属水酸化物の含有量を低減することで、塩化ビニル樹脂組成物の電気特性の低下を抑制することができる。これにより、例えば、絶縁被覆は、熱劣化前の初期状態において15kV以上の高い破壊電圧を有することになる。
(c)本参考形態によれば、(A)金属水酸化物の含有量を低減することで、塩化ビニル樹脂組成物の熱安定性の低下を抑制することができる。これにより、塩化ビニル樹脂組成物の熱劣化による電気特性や引張伸びの低下を抑制することができる。例えば、絶縁被覆は、熱劣化前の初期状態の破壊電圧Aと、136℃で168時間放置した後の破壊電圧Bとの比率B/Aが0.9以上であり、熱劣化による電気特性の低下が抑制されることになる。また、絶縁被覆は、150℃の高温環境下に500時間曝された場合における引張伸びの絶対値の低下率が50%以下であり、熱劣化による引張伸びの低下が抑制されることになる。
(d)本参考形態によれば、(A)金属水酸化物の含有量を低減することで、塩化ビニル樹脂組成物の耐寒性の低下を抑制することができる。これにより、例えば、絶縁被覆は、−35℃の環境下に1時間曝された場合であっても、脆化しにくく、クラックが生じにくくなる。
(e)本参考形態によれば、(A)金属水酸化物の含有量を低減することで、塩化ビニル樹脂組成物の成形加工性を向上させることができる。このため、塩化ビニル樹脂組成物は、高速押出が可能である。すなわち、塩化ビニル樹脂組成物を、例えば線速を400m/minとして高速押出する場合であっても、塩化ビニル樹脂組成物における発泡を抑制することができ、良好な外観の絶縁被覆を得ることができる。さらに、塩化ビニル樹脂組成物におけるダイスカスの発生を抑制できるため、厚さのバラつき(外径エラー)の少ない絶縁被覆を得ることができる。
(f)本参考形態によれば、(A)金属水酸化物の含有量が、塩化ビニル樹脂100質量部に対して、7質量部以下であることが好ましい。これにより、塩化ビニル樹脂組成物において、(A)金属水酸化物による諸特性の低下をさらに抑制することができる。
(g)本参考形態によれば、(C1)ハイドロタルサイトおよび(C2)焼成クレーの両方を含有することが好ましい。これにより、塩化ビニル樹脂組成物の難燃性をより向上させることができる。
(h)本参考形態によれば、塩化ビニル樹脂組成物は、有害なアンチモン化合物および鉛系安定剤を実質的に含有しない。これにより、環境負荷を低減することができる。
(i)本参考形態によれば、例えば図1に示す構成を有する絶縁電線1の絶縁被覆11を、上述の塩化ビニル樹脂組成物を用いて形成している。このような絶縁電線によれば、上記(a)〜(h)の効果を有する絶縁被覆を備えるため、例えば、ドライヤー、炊飯器、トランス口出部、照明器具、エアコンなどの電気機器内における高温部の配線に用いることができる。
(j)本参考形態によれば、絶縁被覆11は架橋されていることが好ましい。架橋によれば、絶縁被覆の機械特性をさらに向上させることができる。
(k)本参考形態によれば、塩化ビニル樹脂組成物は、成形加工性に優れるため、高速押出することができる。これにより、絶縁被覆11の形成を高速化し、絶縁電線1の生産性を向上させることができる。
[本発明の実施形態]
次に、本発明の実施形態について説明する。ただし、ここでは、上述した参考形態との相違点のみを説明する。
上述の参考形態では、(A)金属水酸化物の一部を置き換える場合について説明したが、本発明はこれに限定されない。本発明では、(B)非晶質シリカ、(C1)ハイドロタルサイトおよび(C2)焼成クレーにより、(A)金属水酸化物の全部を置き換えることが可能である。すなわち、難燃性塩化ビニル樹脂組成物においては、(A)金属水酸化物を用いることなく、(A)金属水酸化物のみを用いた場合と同等の難燃性を得ることができる。しかも、(A)金属水酸化物を用いないことから、難燃性塩化ビニル樹脂組成物では、(A)金属水酸化物による諸特性の低下を防止することができる。これにより、難燃性塩化ビニル樹脂組成物の難燃性を維持しつつ、電気特性、熱安定性、耐寒性および成形加工性をより向上させることができる。
なお、本実施形態では、(B)非晶質シリカ、(C1)ハイドロタルサイトおよび(C2)焼成クレーの含有量を、塩化ビニル樹脂100質量部に対して、以下の範囲とする。
・(B)非晶質シリカ:4質量部〜15質量部、好ましくは4質量部〜10質量部
・(C1)ハイドロタルサイト:5質量部〜30質量部、好ましくは5質量部〜25質量部
・(C2)焼成クレー:4質量部〜15質量部、好ましくは5質量部〜10質量部
次に、本発明の実施例を説明する。
(1)材料
参考例、実施例および比較例において用いた材料は次の通りである。
塩化ビニル樹脂として、大洋塩ビ株式会社製「TH−1700」(重合度1700)を用いた。
可塑剤として、トリメリット酸トリノルマルアルキル(以下、n−TOTMと略す)(花王株式会社製「トリメックスNo8」)を用いた。
(A)金属水酸化物として、次の4種類を用いた。
・(a1)水酸化アルミニウム:昭和電工株式会社製「ハイジライトH−42M」(平均粒子径1μm)
・(a2)水酸化アルミニウム:昭和電工株式会社製「ハイジライトH−43M」(平均粒子径0.75μm)
・(a3)水酸化アルミニウム:昭和電工株式会社製「ハイジライトH−32」(平均粒子径8μm)
・(a4)水酸化アルミニウム:昭和電工株式会社製「ハイジライトH−42S」(平均粒子径1μm、表面処理済み)
(B)非晶質シリカとして、エルケム株式会社製「SIDISTAR 120U」を用いた。
(C1)ハイドロタルサイトとして、堺化学株式会社製「HT−1」を用いた。
(C2)焼成クレーとして、BASF株式会社製「SP♯33」を用いた。
また、その他の添加剤として、次のものを用いた。
・非鉛安定剤:水澤化学株式会社製「NL−HT7」
・架橋助剤:トリメチロールプロパントリアクリレート(新中村化学株式会社製「NKエステルH−200」)
・炭酸カルシウム:三共製粉株式会社製「SCP♯2010」
・三酸化アンチモン中国辰州株式会社製「NANO−200」
(2)塩化ビニル樹脂組成物の調製
参考例1〜5では、(B)非晶質シリカ、(C1)ハイドロタルサイトおよび(A)金属水酸化物を用いて、塩化ビニル樹脂組成物を調製した。
参考例1では、塩化ビニル樹脂100質量部に、可塑剤としてn−TOTMを44質量部、(B)非晶質シリカを4質量部、(C1)ハイドロタルサイトを7質量部、(A)金属水酸化物として(a1)水酸化アルミニウムを5質量部、その他の添加剤として、非鉛安定剤を4質量部、架橋助剤を4質量部、添加して混合した。この混合物を、140℃に加熱したオープンロールミキサーで混練した。その後、混練物を冷却してペレット状に形成することで、参考例1の塩化ビニル樹脂組成物を調製した。調製条件を以下の表1に示す。
また、参考例2〜5では、(A)金属水酸化物,(B)非晶質シリカおよび(C1)ハイドロタルサイトの添加量、その他の添加剤の種類や添加量を変更した以外は、参考例1と同様に参考例2〜5の塩化ビニル樹脂組成物を調製した。
Figure 0006256787
参考例6〜9では、(A)金属水酸化物、(B)非晶質シリカおよび(C2)焼成クレーを用いた以外は、参考例1と同様に塩化ビニル樹脂組成物を調製した。調製条件を以下の表2に示す。
Figure 0006256787
実施例1〜6では、(B)非晶質シリカ、(C1)ハイドロタルサイトおよび(C2)焼成クレーを用いた以外は、参考例1と同様に塩化ビニル樹脂組成物を調製した。調製条件を以下の表3に示す。
Figure 0006256787
参考例10〜16では、(A)金属水酸化物、(B)非晶質シリカ、(C1)ハイドロタルサイトおよび(C2)焼成クレーを用いた以外は、参考例1と同様に塩化ビニル樹脂組成物を調製した。調製条件を以下の表4に示す。
Figure 0006256787
比較例1〜7では、三酸化アンチモンと(A)金属水酸化物と(C2)焼成クレーとを適宜組み合わせて用いた以外は、参考例1と同様に塩化ビニル樹脂組成物を調製した。調製条件を以下の表5に示す。
Figure 0006256787
(3)絶縁電線の製造
次に、上記で調製した実施例1〜6、参考例1〜16および比較例1〜7の塩化ビニル樹脂組成物を用いて、絶縁電線を製造した。具体的には、導体として、外径0.16mmの錫メッキ軟銅線を26本撚り合わせた撚り導体(外径0.94mm)の外周上に、調製した塩化ビニル樹脂組成物を溶融押出法により被覆厚0.5mmで押出被覆し、厚さ0.5mmの絶縁被覆を形成した。その後、絶縁被覆に、線量3.5Mradで電子線を照射し、電子線架橋することにより、絶縁電線を製造した。
(4)評価方法
次に、得られた絶縁電線の絶縁被覆について、難燃性、電気特性、熱安定性、耐寒性および成形加工性を評価した。以下、評価方法について説明する。
(難燃性)
難燃性としては、UL1581に規定されるVW−1試験に準拠して、垂直難燃試験を行った。本実施例では、5本の絶縁電線に対して試験を行い、5本とも合格した場合を「○」、1本でも不合格であった場合を「×」とした。
(電気特性)
電気特性としては、初期状態の絶縁電線、および136℃の環境下に168時間放置した熱劣化後の絶縁電線について、UL758を基準に以下の2つの試験を行い、いずれの試験にも合格した場合を「○」、そうでなかった場合を「×」とした。
(i)初期状態および熱劣化後のそれぞれの絶縁電線を直径5mmのマンドレルに6回巻き付け、水中で所定電圧をかけ、絶縁破壊するまでの破壊電圧を測定した。そして、初期状態の絶縁電線の破壊電圧をA、熱劣化後の絶縁電線の破壊電圧をBとして、Aが15kV以上、かつB/Aが0.9以上となる場合を合格とした。
(ii)初期状態および熱劣化後のそれぞれの絶縁電線に金属箔を巻き、定格条件105℃/2000Vで1分間、課電した。初期状態および熱劣化後の絶縁電線について、いずれも短絡しない場合を合格とした。
(熱安定性)
熱安定性としては、以下の2つの試験を行い、いずれの試験にも合格した場合を「○」、そうでなかった場合を「×」とした。
(i)絶縁電線を150℃で熱劣化させ、熱劣化後の絶縁被覆の引張伸びの絶対値が50%となる時間を測定し、その時間が500時間以上である場合を合格、500時間未満である場合を不合格とした。
(ii)CSA試験で指定されたワニスを絶縁電線に塗布し、105℃で30分乾燥させ、その後、150℃で20時間、ワニスを硬化させた。これを直径1mmのマンドレルに6回巻き付け、絶縁被覆にクラックが生じない場合を合格とした。
(耐寒性)
耐寒性としては、絶縁電線を−35℃の環境下に1時間放置し、これを直径1mmのマンドレルに6回巻き付け、絶縁被覆にクラックが生じない場合を「○」、クラックが生じた場合を「×」とした。
(成形加工性)
成形加工性としては、以下の2つの試験を行い、いずれの試験にも合格した場合を「○」、そうでなかった場合を「×」とした。
(i)40mmの押出機を用いて、線速400m/minで塩化ビニル樹脂組成物を押出被覆し、塩化ビニル樹脂組成物に由来するスパーク抜け、もしくはコブ・ダイスカスの発生による外径エラーが生じない場合を合格、生じた場合を不合格とした。
(ii)押出初期のサンプルと、押出被覆を1時間行った後のサンプルとを採取し、絶縁被覆の外観に荒れが確認されず、また光学顕微鏡による倍率100倍での観察にて絶縁被覆に発泡が確認されない場合を合格とした。
(5)評価結果
参考例1〜5では、(B)非晶質シリカおよび(C1)ハイドロタルサイトを用いることによって、(A)金属水酸化物の含有量を7質量部以下に低減した場合であっても、所望する難燃性を維持できることが確認された。しかも、(A)金属水酸化物の含有量を7質量部以下に低減しているため、電気特性、熱安定性、耐寒性および成形加工性の低下を抑制し、これらの特性を向上できることが確認された。
参考例6〜9では、(B)非晶質シリカおよび(C2)焼成クレーを用いることによって、参考例1〜5と同様に、難燃性を維持しつつ、電気特性、熱安定性、耐寒性および成形加工性の向上できることが確認された。
実施例1〜6では、(B)非晶質シリカ、(C1)ハイドロタルサイトおよび(C2)焼成クレーを用いることによって、(A)金属水酸化物を用いることなく、所望する難燃性を得られることが確認された。なお、実施例1〜6では、(A)金属水酸化物を用いる参考例1〜9と比較して、絶縁被覆の電気特性、熱安定性、耐寒性および成形加工性をより向上できることが確認された。
参考例10〜16では、(B)非晶質シリカ、(C1)ハイドロタルサイトおよび(C2)焼成クレーと共に(A)金属水酸化物を7質量部以下用いることによって、難燃性と共に電気特性、熱安定性、耐寒性および成形加工性を向上させることが確認された。なお、参考例10〜16では、(C1)ハイドロタルサイトおよび(C2)焼成クレーを用いることによって難燃成分の含有量を増やしているため、参考例1〜9と比較して、絶縁被覆の難燃性をより向上できることが確認された。
なお、参考例4や参考例9等では、炭酸カルシウムを用いることにより、諸特性を維持しつつ、コストを低減できる。
比較例1は、三酸化アンチモンと(C2)焼成クレーとを用いた例である。比較例1では、三酸化アンチモンの含有量が少ないため、絶縁被覆の難燃性が低いことが確認された。具体的には、VW−1試験において5本の絶縁電線のうち3本が燃焼してしまった。なお、比較例1では、三酸化アンチモンを含有するため、コストが高く、また環境負荷が大きくなる。
比較例2は、(C2)焼成クレーと共に、(a4)水酸化アルミニウムを15質量部用いた例である。比較例2では、(A)金属水酸化物の含有量が7質量部より多いため、絶縁被覆の難燃性を向上できるものの、熱安定性および成形加工性が低くなってしまう。具体的には、熱安定性が低下したことから、絶縁被覆を150℃で熱劣化させたときに、絶縁被覆の引張伸びが50%となる時間が350時間未満となり、また巻き付け試験を行ったときに絶縁被覆にクラックが生じてしまった。また、成形加工性が低下したことから、成形加工の際にダイスカスが発生し、ダイスカスの付着により絶縁被覆では外径エラーが生じてしまった。
比較例3は、(A)金属水酸化物の種類を、比較例2で用いた(a4)水酸化アルミニウム(表面処理済み)から、(a1)水酸化アルミニウム(表面処理なし)に変更した例である。比較例3では、比較例2と同様に、絶縁被覆の熱安定性および成形加工性が低くなることが確認された。このことから、(A)金属水酸化物は、表面処理の有無により、効果が相違しないことが分かる。なお、比較例3では、ダイスカスが発生して、絶縁被覆の厚さのバラつきが生じることが確認された。
比較例4は、(A)金属水酸化物の含有量を、比較例3よりも多くして22質量部とした例である。比較例4では、(A)金属水酸化物の含有量を比較例3よりもさらに増やしたため、熱安定性および成形加工性の他に、電気特性および耐寒性が低くなってしまった。比較例4では、比較例3と同様に、ダイスカスが発生することが確認された。
比較例5は、(A)金属水酸化物の含有量を、比較例3よりも少なくして8質量部とした例である。比較例5では、難燃成分が少ないため、VW−1試験に合格するような難燃性を得られないことが確認された。また、非鉛安定剤の含有量が多く、塩化ビニル樹脂組成物において、外部活性が大きく働いたためか、成形加工性が悪いことが確認された。
比較例6は、(A)金属水酸化物の種類を、比較例5で用いた(a1)水酸化アルミニウムから、粒径の大きな(a3)水酸化アルミニウムに変更した例である。比較例6では、比較例5と同様に難燃性が低いばかりか、水酸化アルミニウムの粒径を大きくしたために、耐寒性がさらに低下した。
比較例7は、比較例5に三酸化アンチモンをさらに添加した例である。比較例7では、難燃成分の含有量が少ないため、比較例5と同様の結果となることが確認された。
1 絶縁電線
10 導体
11 絶縁被覆

Claims (5)

  1. 塩化ビニル樹脂と、可塑剤と、非晶質シリカと、ハイドロタルサイトと、焼成クレーと、を含有し、金属水酸化物を含有しない難燃性塩化ビニル樹脂組成物であって、前記塩化ビニル樹脂100質量部に対して、前記可塑剤を35質量部以上60質量部以下、前記非晶質シリカを4質量部以上15質量部以下、前記ハイドロタルサイトを5質量部以上30質量部以下、前記焼成クレーを4質量部以上15質量部以下含有することを特徴とする難燃性塩化ビニル樹脂組成物。
  2. 導体と、前記導体の外周上に、請求項1に記載の難燃性塩化ビニル樹脂組成物から形成される絶縁被覆と、を備える絶縁電線。
  3. 前記絶縁被覆が架橋されている、請求項2に記載の絶縁電線。
  4. 請求項1に記載の難燃性塩化ビニル樹脂組成物を導体の外周上に押出被覆して絶縁被覆を形成する工程を有する、絶縁電線の製造方法。
  5. 前記絶縁被覆を架橋する工程をさらに有する、請求項4に記載の絶縁電線の製造方法。
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