JP6948557B2 - ポリ塩化ビニル樹脂組成物、ポリ塩化ビニル樹脂組成物シート、絶縁電線及びケーブル - Google Patents

ポリ塩化ビニル樹脂組成物、ポリ塩化ビニル樹脂組成物シート、絶縁電線及びケーブル Download PDF

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Description

本発明は、アンチモン化合物を含有しない環境に配慮したポリ塩化ビニル樹脂組成物、並びにその樹脂組成物を用いたシート、絶縁電線及びケーブルに関する。
ポリ塩化ビニル樹脂は、各種の添加剤を広く含有させることができる。そのため、ポリ塩化ビニル樹脂組成物は、広範囲の機械的特性その他の諸特性を実現することができる。
ポリ塩化ビニル樹脂組成物には、硬質のポリ塩化ビニル樹脂組成物と軟質のポリ塩化ビニル樹脂組成物とがある。硬質のポリ塩化ビニル樹脂組成物は、航空機、車両等の輸送機の外装、家具、事務用品等の日用雑貨、家電機器などのハウジング材、半導体装置の部品などの成形品に用いられる。軟質のポリ塩化ビニル樹脂組成物は、柔軟性を付与する可塑剤を多量に含有しており、可撓性が求められる電線やケーブルなどの絶縁層に用いられる。
電線・ケーブルの中でも、鉄道車両用配線に使用される電線の場合、用いられる絶縁層には高い難燃性(例えば鉄道車両用燃焼試験にて難燃性に分類されること)が求められる。このため、絶縁層を構成するポリ塩化ビニル樹脂組成物には難燃性を付与するため種々の難燃剤が添加含有されている。
難燃剤が添加される軟質のポリ塩化ビニル樹脂組成物については、本出願人において既に提案がなされている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1によれば、難燃剤として、ホウ酸亜鉛、金属水酸化物、および三酸化アンチモンを組み合わせ、難燃剤や可塑剤を所定量配合することで難燃性、耐熱性、耐寒性、および体積抵抗率に優れるポリ塩化ビニル樹脂組成物とすることができる。
しかし、難燃剤として使用されるアンチモン化合物は、環境や人体に対する悪影響への懸念から、近年使用が控えられる傾向にある。例えば三酸化アンチモンは皮膚や粘膜に対する弱い刺激性が認められ劇物に指定されている。その毒性としては、ラットに55週間、空気中で投与した実験により、肺がんの発がん性が指摘されている。この発がん性により、アンチモン化合物は、国際がん研究機構(IARC)において、人に対する発がん分類でグループ2B(人に対して発がん性があるかもしれない)に分類されている。
また、鉱物資源としてのアンチモン化合物は、産地が偏在していると共に、需給が逼迫する傾向にある。このことから、アンチモン化合物を用いることは、供給不安定や価格上昇といったリスクがある。
鉄道車両用電線では、社団法人日本鉄道車両機械技術協会が定める鉄道車両用燃焼試験にて、下記表1に示す区分が「難燃性」以上の認定を取得することが求められる。そのためには、下記表1の通り燃焼時に発生する煙の量の低減が必要となる。三酸化アンチモンを用いたポリ塩化ビニル樹脂組成物は、燃焼時にオキシハライド化合物を形成し、重い不燃性のガスを発生することが知られている。このガスの発生は試験基準に適してないことは言うまでもない。
Figure 0006948557
注)1)炭化、変形の寸法は長径で表す。 2)異常発炎するものは1級下げる。
こうしたなか、電線の絶縁層を構成する樹脂組成物としては、アンチモン化合物を含有しない軟質の難燃性ポリ塩化ビニル樹脂組成物が求められている。例えば三酸化アンチモンの代替物として錫酸亜鉛とホウ酸亜鉛とを組み合わせて用いる樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献2参照)。特許文献2によれば、難燃剤として錫酸亜鉛およびホウ酸亜鉛を併用することで、三酸化アンチモンを含有しない軟質の難燃性ポリ塩化ビニル樹脂組成物とすることができる。
上記錫酸亜鉛やホウ酸亜鉛などの亜鉛化合物に含まれる亜鉛は、ポリ塩化ビニル樹脂中の塩化水素を脱離させ炭化を促進させる触媒として作用し、ポリ塩化ビニル樹脂の難燃性に寄与する。以下に亜鉛がポリ塩化ビニル樹脂の難燃性に寄与する構造について説明する。
ポリ塩化ビニル樹脂は、加熱で分解されて着火した後に燃焼するが、加熱に際して塩化水素を脱離(脱塩化水素反応)する。亜鉛は脱塩化水素反応を促進させるとともに、脱離した塩化水素と反応して塩化亜鉛を生成することで脱塩化水素反応をさらに促進させる。塩化水素の脱離によってポリ塩化ビニル樹脂は劣化して最終的に炭化層となる。炭化層は断熱効果を有しており、ポリ塩化ビニル樹脂の着火・燃焼を抑制することができる。このように、難燃剤としての亜鉛化合物によれば、ポリ塩化ビニル樹脂の脱塩化水素反応を促進させて樹脂の燃焼よりも先に樹脂を劣化させる(炭化層とする)ことで、樹脂の難燃性に寄与することができる。
上記特許文献2の樹脂組成物で構成される絶縁層は、燃焼温度域(一般的に300℃以上)で加熱された場合、亜鉛によって脱塩化水素反応が促進し速やかに炭化する。そして、絶縁層の表面は炭化層で被覆されて燃焼が抑制されることになる。
ところで、ポリ塩化ビニル樹脂組成物は所定温度で加熱されて電線の絶縁層などへ成形加工される。成形加工の際の加熱温度(成形加工温度域)は120℃〜190℃となっている。
この点、上記特許文献2のポリ塩化ビニル樹脂組成物は成形加工時の加熱によって劣化が生じ、成形される絶縁層などの特性が低下するという問題があった。ポリ塩化ビニル樹脂は、燃焼温度域と比較して小さくはあるが、成形加工温度域においても脱塩化水素反応を起こす。このため、亜鉛化合物を含有する特許文献2に記載のポリ塩化ビニル樹脂組成物においては脱塩化水素反応が促進され、樹脂の劣化が進行することになる。
すなわち、亜鉛化合物は脱塩化水素反応を促進する触媒として作用するが(燃焼温度域では触媒作用によってポリ塩化ビニル樹脂の難燃性に寄与するが)、成形加工温度域では触媒作用のためにポリ塩化ビニル樹脂の劣化を促して樹脂の熱負荷に対する安定性(耐熱性)を低下させることになる。
しかも、上記特許文献2に記載のポリ塩化ビニル樹脂組成物は、難燃剤として錫酸亜鉛およびホウ酸亜鉛を併用しており、樹脂組成物中の亜鉛含有量が結果的に増加するため、脱塩化水素反応が高く、樹脂の耐熱性がさらに低下することになる。
このように、特許文献2に記載のポリ塩化ビニル樹脂組成物は、有害なアンチモン化合物を含有しないが、代替物である錫酸亜鉛およびホウ酸亜鉛を併用するため、少なくとも難燃性および耐熱性を両立することは困難であった。
これらの問題を解決した先行技術として特許文献3がある。特許文献3には、三酸化アンチモンを含有せず、難燃性、耐熱性、耐寒性および電気絶縁性のバランスに優れるポリ塩化ビニル樹脂組成物について開示されている。
特開2009−126963号公報 特開平11−80474号公報 特許第5716653号
しかし、特許文献3のポリ塩化ビニル樹脂組成物について行っている難燃試験は、UL規定のVW−1試験であり、その場合に難燃性が合格となるものであって、上記した鉄道車両用燃焼試験を行った場合、不合格となることが判明した。燃焼時樹脂組成物が変形し、難燃効果を阻害することが理由である。
本発明は、このような問題に鑑みて成されたもので、本発明の目的は、アンチモン化合物を含有せず、鉄道車両用燃焼試験において「難燃性」以上の認定条件を満足し、耐寒性、電気絶縁性、耐油性のバランスに優れるポリ塩化ビニル樹脂組成物、並びにその樹脂組成物を用いたシート、絶縁電線及びケーブルを提供することにある。
本発明は、上記目的を達成するために、下記のポリ塩化ビニル樹脂組成物、並びにその樹脂組成物を用いたシート、絶縁電線及びケーブルを提供する。
[1]ポリ塩化ビニル樹脂(A)及び部分架橋ポリ塩化ビニル樹脂(B)、若しくは部分架橋ポリ塩化ビニル樹脂(B)と、フタル酸ジイソノニル(C)と、水酸化アルミニウム(D)を含むポリ塩化ビニル樹脂組成物において、前記成分(A)のK値が69以上79以下であり、前記成分(C)の原料のイソノニルアルコール組成が原料全体を100質量部としてジメチルへプタノール25質量部以上、モノメチルオクタノール20質量部以上、n−ノナール15質量部以下、その他30質量部以下であり、前記成分(D)のナトリウム、カルシウム、カリウムの元素質量濃度が0.2質量%以下であり、前記成分(A)と前記成分(B)の質量比(A)/(B)=0〜60/40〜100からなり、前記成分(A)と前記成分(B)の和100質量部に対し、前記成分(D)が15質量部以上35質量部以下であり、樹脂組成物の総量が170質量部から200質量部であるポリ塩化ビニル樹脂組成物。
[2]前記成分(A)、(B)、(C)、(D)以外に、さらに安定剤、充填剤およびそ
の他の添加剤を含む前記[1]に記載のポリ塩化ビニル樹脂組成物。
[3]前記[1]または前記[2]に記載のポリ塩化ビニル樹脂組成物を用いた厚さが0.1mm以上のポリ塩化ビニル樹脂組成物シート。
[4]導体と、前記導体の外周に被覆された、前記[1]または前記[2]に記載のポリ塩化ビニル樹脂組成物からなる絶縁層とを備えてなる絶縁電線。
[5]前記[1]または前記[2]に記載のポリ塩化ビニル樹脂組成物からなるシースを備えたケーブル。
本発明によれば、アンチモン化合物を含有せず、鉄道車両用燃焼試験において「難燃性」以上の認定条件を満足し、耐寒性、電気絶縁性、耐油性のバランスに優れるポリ塩化ビニル樹脂組成物、並びにその樹脂組成物を用いたシート、絶縁電線及びケーブルを提供することができる。
本発明の実施の形態に係る絶縁電線の一例を示す横断面図である。 本発明の実施の形態に係るケーブルの一例を示す横断面図である。
上述したように、車両用電線の絶縁層に用いる樹脂組成物には所定の難燃性や耐油性、電気特性、耐寒性が要求される。例えば、60℃定格のWV電線(Wheel Vinyl電線)の絶縁層に用いる樹脂組成物の場合、燃焼特性としては、鉄道車両用燃焼試験において「難燃性」以上の認定条件を満足することが要求される。また、電気特性、耐油性、耐寒性においても、JISK6723第1種1号規定の規格値を満足する必要がある。
しかしながら、アンチモン化合物の代替物として錫酸亜鉛などの亜鉛化合物を含有するポリ塩化ビニル樹脂組成物では、低添加では効果が発現せず、高添加とすると電気特性を満足することが困難となっていた。
そこで、本発明者らは、電気特性を低下させず、上記した燃焼特性を満足させる方法として、高分子量のPVCレジンの利用と可塑化させる可塑剤の構造、難燃剤として利用する水酸化アルミニウムの組成の観点から新しい配合処方の検討を行った。
その結果、本発明者らは、K値が69以上79以下からなるポリ塩化ビニル樹脂(A)及び、部分架橋ポリ塩化ビニル樹脂(B)(若しくは成分(B)のみ)に、原料のイソノニルアルコール組成がジメチルへプタノール25質量%以上、モノメチルオクタノール20質量%以上、n−ノナール15質量%以下、その他30質量%以下からなるフタル酸ジイソノニル(C)を含有させてポリ塩化ビニル樹脂組成物を構成すれば、成形加工時脱水発泡する可能性のある水酸化アルミニウムを大量に添加できることを見出した。また、添加する水酸化アルミニウム(D)は、ナトリウム、カルシウム、カリウムの元素質量濃度が0.2質量%以下からなるものを選定することで規定の電気特性が得られることを見出した。さらに、添加剤の含有量に関しては、樹脂成分100重量部に対しポリ塩化ビニル樹脂組成物の総量として170質量部から200質量部にコントロールすることにより耐寒性、耐油性を両立できることを見出した。
以下に、本発明の一実施形態に係るポリ塩化ビニル樹脂組成物について説明する。
(ポリ塩化ビニル樹脂)
ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)としては、塩化ビニルのホモポリマー、つまりポリ塩化ビニルの他、塩化ビニルと他の共重合可能なモノマーとの共重合体、およびこれらのブレンド物が挙げられる。ポリ塩化ビニル樹脂はK値が69以上79以下からなるポリ塩化ビニル樹脂(A)と部分架橋ポリ塩化ビニル樹脂(B)とをブレンドしたものとする。K値とはポリ塩化ビニル樹脂の比粘度を示した値で、重合度と相関を示す。K値は、JIS K7367−2或いはISO 1628−2の試験法により求めた値である。
なお、部分架橋ポリ塩化ビニル樹脂(B)としては、K値が69以上79以下でTHF不溶分が10%〜30%の部分架橋ポリ塩化ビニル樹脂(B)を用いるのが好ましい。
THF不溶分を10%以上とすることで、樹脂組成物表面のつや消し効果を維持でき架橋PVC粒が目立つのを抑制し、表面粒外観を向上させることができる。
ポリ塩化ビニル樹脂のTHF(テトラヒドロフラン)に対する不溶分(THF不溶分)の測定方法は以下の通りである。
PVC試料1.0gを100mL比色管に採取し、THFを加える。これを振動させながら75℃で1時間保持し、その後室温まで放冷する。溶液が100mLになるようにTHFを加え、更に一昼夜放置した後、上澄み液を10mL採取し、蒸発乾固後の残留樹脂量を精秤する。THF不溶分の算出式は下記の通り。
THF不溶分[%] = 100 − 残留樹脂量[g] × 10 × 100
部分架橋ポリ塩化ビニル樹脂(B)のK値はTHF可溶分を前記の方法で測定したものである。
ブレンド割合としては(A)と(B)の和が100質量部で、(A)と(B)の質量比が(A)/(B)=0〜60/40〜100となるようにする。(A)の割合は60質量部以下だと鉄道車両用燃焼試験時、ポリ塩化ビニル樹脂シートの軟化を抑制し、燃焼を抑えることができるため難燃性が向上する。また、電線外観の悪化も抑制できる。(A)の割合は0質量部〜60質量部の範囲で調整するのが好ましい。押出成形性を容易にし、コストを考慮する場合は添加割合が多い方が良く、電気特性や耐寒性を重視する場合は少ない方が良い。
(可塑剤)
可塑剤は、ポリ塩化ビニル樹脂に柔軟性を付与し、加工をし易くするための添加剤である。本実施形態においては、可塑剤としてフタル酸ジイソノニルを用いる。フタル酸ジイソノニルとしては原料のイソノニルアルコール組成が次の(a)〜(d)からなることが好ましい。(a)ジメチルへプタノール25質量部以上、(b)モノメチルオクタノール20質量部以上、(c)n−ノナール15質量部以下、(d)その他のアルコール30質量部以下。これら(a)〜(d)の割合からなるアルコール(合計で100質量部)と無水フタル酸とのエステル合成により本発明のフタル酸ジイソノニルは作製される。
前述の(a)や(b)は各々25質量部、20質量部以上で、(c)が15質量部以下でなければ、本発明の目的として挙げている電気特性は発現しない。
また、(c)は耐寒性付与の観点から4質量部以上に調整した方が好ましい。(d)は炭素量が7から12までのアルコールであれば、その構造は直鎖型、側鎖型のどちらでも良く、混合物であっても良い。
(水酸化アルミニウム)
水酸化アルミニウムは、難燃性を付与するための添加剤である。本実施形態においては、ナトリウム、カルシウム、カリウムの元素質量濃度が0.2質量%以下からなるものを選定する。0.2質量%を超えるとコストは安価となるものの電気特性が満足しなくなるためである。添加量は水酸化アルミニウムは15質量部以上35質量部以下であることが好ましい。15質量部以上だと難燃性が良く、35質量部以下だと電気特性に尤度があり、また耐寒性、耐油性が向上するためである。
水酸化アルミニウムの平均粒径は、押出外観の観点から0.5〜5μmにあることが好ましい。必要応じステアリン酸やシラン化合物、チタン化合物で表面処理を施しているものを用いても良い。
(安定剤、充填剤他添加剤)
安定剤は、カルシウム−亜鉛系、バリウム−亜鉛系など、公知の複合安定剤を用いることができる。複合安定剤としては、環境や人体に対する悪影響が指摘される鉛含有以外のものが好ましく、例えばハイドロタルサイトを主成分とするものがあげられる。ハイドロタルサイトは、樹脂組成物の成形加工時などの熱負荷の際に発生する塩化水素をイオン交換により補足することができる。
充填剤は、焼成クレー、炭酸カルシウム、タルク、シリカなど、公知の充填剤を用いることができる。この中でも焼成クレーの適用は電気特性向上の観点から好ましい。
他の添加剤としては、酸化防止剤、着色剤、紫外線吸収剤、銅害防止剤、加工助剤などがあげられるが、これら以外にも前記指定外のポリマや可塑剤、難燃剤を添加することができる。
安定剤、充填剤他添加剤の添加量は、ポリ塩化ビニル樹脂成分100質量部に対しポリ塩化ビニル樹脂組成物の総量が170質量部から200質量部になるように構成することが、耐寒性、耐油性の観点から好ましい。
上記した本発明の一実施形態に係るポリ塩化ビニル樹脂組成物によれば、アンチモン化合物を含有せず、1mm以下の肉厚でも鉄道車両用燃焼試験において「難燃性」以上の認定条件を満足し、耐寒性、電気絶縁性、耐油性のバランスに優れるポリ塩化ビニル樹脂組成物とすることができる。
(電線)
図1は、本発明の実施の形態に係る絶縁電線の一例を示す横断面図である。
図1に示すように、本実施の形態に係る絶縁電線10は、導体1と、導体1の外周に被覆された絶縁層2とを備える。被覆される導体1としては、例えば外径0.15〜7mmφ程度の銅または銅合金などの金属材料から形成された導体を使用することができる。錫めっき軟銅線を撚り合わせた導体などを好適に使用することができる。導体1は、図1のように1本である場合に限られず、複数本であってもよく、導体径や材質について特に限定されず、用途に応じて最適なものを適宜選択することができる。また、絶縁層の厚さは特に限定されず、仕様に応じて最適な厚さが選択される。
次に、絶縁電線の製造方法について説明する。
まず、ポリ塩化ビニル樹脂に所定量の可塑剤および難燃剤を添加し均一に混練することで、ポリ塩化ビニル樹脂組成物を形成する。混練する方法としては、樹脂組成物の各成分を実質的に均一に分散、混合、混練する方法であればよく、例えばバンバリーミキサー、コニーダー、同方向二軸押出機、異方向型二軸押出機、ロール式混練機、バッチ式混練機などで混練することができる。続いて、公知の電線被覆用押出機を用いて導体の外周にポリ塩化ビニル樹脂組成物を押出被覆して、電線を製造する。
(ケーブル)
本発明の実施形態に係るケーブルは、本発明の実施形態に係る上記ポリ塩化ビニル樹脂組成物を被覆材料(シースないし絶縁層及びシース)として使用したことを特徴とする。
図2は、本発明の実施の形態に係るケーブルの一例を示す横断面図である。
図2に示すように、本実施の形態に係るケーブル30は、導体1に絶縁層2を被覆した絶縁電線10、3本を紙等の介在4と共に撚り合わせた三芯撚り線と、三芯撚り線の外周に施された押え巻きテープ5と、その外周に押出被覆されたシース3とを備える。三芯撚り線に限らず、絶縁電線1本(単芯)でもよく、三芯以外の多芯撚り線であってもよい。
シース3は、本発明の実施の形態に係る上記のポリ塩化ビニル樹脂組成物から構成されている。絶縁層2も上記のポリ塩化ビニル樹脂組成物から構成されていてもよい。押出被覆等の成形手段により絶縁層やシース層として被覆しケーブルを得ることができる。
本実施の形態においては、シースを、単層で構成してもよく、また、多層構造とすることもできる。さらに、必要に応じて、セパレータ、編組等を施してもよい。
本発明の実施形態に係る絶縁電線ないしケーブルの外径は、例えば0.4〜11mmφである。
本発明の実施の形態に係る絶縁電線及びケーブルは、鉄道車両用の電線及びケーブルに好適に使用できる。
以下に、本発明を実施例、比較例及び参考例に基づいて更に詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
ポリ塩化ビニル樹脂組成物及び図1の構造の絶縁電線10を下記の通りの方法で製造し、評価を行なった。
(1)ポリ塩化ビニル樹脂組成物の作製
表2〜3に示す各材料を記載された割合で配合し、170℃に設定した6インチミキシングロールで、5分混練した後、シート化した。用いた配合剤の材料は、表4に示す通りである。
Figure 0006948557
Figure 0006948557
Figure 0006948557

(2)評価用シートの作製
シート化した各樹脂混和物を、熱プレス機にて170℃で3分予熱後、100kgf/cmで加圧しながら温度を2分保持して、5分で室温まで冷却して、厚さを変えた5種類(0.3mm、0.6mm、0.8mm、1mm、2mm)の各評価用シートを製造した。
(3)絶縁電線の作製
シート化した各樹脂混和物について、それぞれ2mm角のペレットに裁断した。裁断したそれぞれのペレットをシリンダー温度180℃、ヘッド温度185℃、線速200m/分に設定した40mm押出機にて導体に押出被覆して、図1に示す電線をそれぞれ製造した。押出作業は、それぞれ2時間連続して行った。導体は外径0.94mmの錫めっき銅線(外径0.16mmの素線26本撚り)を使用し、被覆厚は0.6mm、被覆後の外径は2.16mmとした。
(4)評価方法
作製した各評価用シートについて、耐油性、耐寒性、電気絶縁性、および鉄道車両用燃焼試験における「難燃性」の認定条件を満たすか否かを評価した。また、作製した各絶縁電線について、押出成形性(外観)を評価した。それぞれの評価方法について以下に説明する。
(耐油性)
耐油性は、JIS K 6723に準じて、評価用シート(厚さ1mm)を用いて実施した。混和物の材料分類は1種1号(一般絶縁体)とし、1種2号絶縁油に70℃・4hr浸漬させたあとの引張強さ残率と伸び残率を求めた。規格を満たす引張強さ残率85%以上、かつ伸び残率80%以上を○とし、規格を満たさないものを×とした。
(耐寒性)
耐寒性は、JIS K 6723に準じて、評価用シート(厚さ2mm)を用いて実施した。混和物の材料分類は1種1号(一般絶縁体)とし、規格を満たす耐寒性−15℃以下を○とし、規格を満たさないものを×とした。
(電気絶縁性)
電気絶縁性は、JIS K 6723(6.8項の体積抵抗率試験における6.8.1測定器及び電極、6.8.2試験片及び試験片の厚さの測定)に準じて30℃での体積抵抗率を測定し、規格を満たす5×1013Ω・cm以上を○とし、規格を満たさないものを×とした。
(押出成形性)
各絶縁電線について、表面肌荒れ、表面粒、焼け(変色)、発泡によるコブ検出エラー及び、スパークテスターエラーが無く、絶縁電線の被覆面を爪で擦っても白化が発生無いものを○とした。表面肌荒れ、表面粒、焼け(変色)、コブ検出エラー、スパークテスターエラー、擦れ白化のいずれかが発生したものを×とした。
(難燃性)
社団法人日本鉄道車両機械技術協会で規定する燃焼試験(鉄道車両用非金属材料)に準じて、評価用シート(厚さ0.3mm、0.6mm、0.8mmの3種類を試験片とした)を用いて実施した。試験片をB5判(182mm×257mm)に形成し、該試験片を45°傾斜に保持し、燃料容器の底の中心が、試験片の下面(燃焼面)中心の垂直下方25.4mm(1インチ)の所に来るように、コルクのような熱伝導率の低い材質の台に載せ、純エチルアルコール0.5ccを入れて着火し、燃料が燃え尽きるまで放置する試験法である。
燃焼判定は、アルコールの燃焼中と燃焼後とに分けて、燃焼中は試験片への着火、着炎、発煙状態、炎の状態等を観察し、燃焼後は、残炎、残じん、炭化、変形状態を調査し分類認定される。試験片3種全て「難燃性」に認定されたものを○、「緩燃性」若しくは、「可燃性」に認定されたものは×とした。
(5)評価結果
(実施例1〜7)
表2に本発明の実施例1〜7の評価内容を示す。実施例1〜7は、表2に示した通り、ポリ塩化ビニル樹脂、フタル酸ジイソノニル、水酸化アルミニウムを使用しポリ塩化ビニル樹脂混和物の総量を170質量部〜200質量部に調整した例である。もちろん三酸化アンチモンは使用していない。
実施例1〜7の各特性(耐油性、耐寒性、電気絶縁性、難燃性)や押出成形性は、表2に示すように、いずれも評価は○であった。
(比較例1〜6、参考例1)
表3に比較例1〜6及び参考例1の評価内容を示す。
比較例1は、ナトリウム、カリウム、カルシウムの総量が0.3質量%となる水酸化アルミニウムを用いた例である。電気絶縁性が規格値を満足することができなかった。
比較例2は、比較例1のポリ塩化ビニル樹脂をA(K値が72のポリ塩化ビニル樹脂)のみとした例である。電気絶縁性に加え難燃性も×であった。
比較例3は、樹脂成分100質量部に対するポリ塩化ビニル樹脂組成物の総量(A+B+C+D+E)を167質量部と本発明の範囲外(少量)とした例である。難燃性が×であった。
比較例4は、ポリ塩化ビニル樹脂のグレードを本発明の範囲外とした例である。押出時発泡によるスパーク抜けが発生し、押出成形性が×であった。また、電気絶縁性も×であった。
比較例5は、本発明の範囲外の組成からなるフタル酸ジイソノニル(可塑剤DINP3)を使用した例である。電気絶縁性、難燃性、耐寒性とも×であった。
比較例6は、樹脂成分100質量部に対するポリ塩化ビニル樹脂組成物の総量(A+B+C+D+E)を204質量部と本発明の範囲外(多量)とした例である。耐寒性、耐油性、電気絶縁性が規格外となり×であった。
参考例1は、三酸化アンチモンを用いた例である。燃焼時発生するアンチモンのオキシハライドガスの影響で、煙量多との判断となり難燃性が×であった。また、部分架橋ポリ塩化ビニル樹脂(B)の架橋度が高いため、押出成形性も×であった。
1:導体
2:絶縁層
3:シース
4:介在
5:押え巻きテープ
10:絶縁電線
30:ケーブル

Claims (5)

  1. ポリ塩化ビニル樹脂(A)及びTHF不溶分が10%〜30%の部分架橋ポリ塩化ビニル樹脂(B)、若しくはTHF不溶分が10%〜30%の部分架橋ポリ塩化ビニル樹脂(B)と、
    フタル酸ジイソノニル(C)と、
    水酸化アルミニウム(D)を含むポリ塩化ビニル樹脂組成物において、
    前記成分(A)のK値が69以上79以下であり、
    前記成分(B)のK値が69以上79以下であり、
    前記成分(C)の原料のイソノニルアルコール組成が原料全体を100質量部としてジメチルへプタノール25質量部以上、モノメチルオクタノール20質量部以上、n−ノナール15質量部以下、その他30質量部以下であり、
    前記成分(D)のナトリウム、カルシウム、カリウムの元素質量濃度が0.2質量%以下であり、
    前記成分(A)と前記成分(B)の質量比(A)/(B)=0〜60/40〜100からなり、前記成分(A)と前記成分(B)の和100質量部に対し、前記成分(D)が15質量部以上35質量部以下であり、樹脂組成物の総量が170質量部から200質量部であるポリ塩化ビニル樹脂組成物。
  2. 前記成分(A)、(B)、(C)、(D)以外に、さらに安定剤、充填剤およびその他
    の添加剤を含む請求項1に記載のポリ塩化ビニル樹脂組成物。
  3. 請求項1または請求項2に記載のポリ塩化ビニル樹脂組成物を用いた厚さが0.1mm以上のポリ塩化ビニル樹脂組成物シート。
  4. 導体と、前記導体の外周に被覆された、請求項1または請求項2に記載のポリ塩化ビニル樹脂組成物からなる絶縁層とを備えてなる絶縁電線。
  5. 請求項1または請求項2に記載のポリ塩化ビニル樹脂組成物からなるシースを備えたケーブル。
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