JP6255748B2 - 滑水性に優れた表面を有する樹脂成形体 - Google Patents
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Description
しかしながら、かかる技術では、含水物質に対する非付着性という点では満足し得るものの、滑り性(滑落性)という点では未だ満足し得るものではなく、従って、粘稠な含水物質に対する滑落性についてはさらなる改良が必要である。
この多層構造ボトルは、最内層が油性内容物に対する濡れ性に優れており、この結果、ボトルを倒立させたり、或いは傾斜させたりすると、マヨネーズ等の油性内容物は、最内層表面に沿って広がりながら落下していき、ボトル内壁面(最内層表面)に付着残存することなく、綺麗に排出することができるというものである。
また、上記の技術では、酸化物微粒子を表面に付着させることが必要であることから、特にボトルの形態を有する容器には適用が困難であるという欠点もある。延伸成形に代表されるブローボトルのような形態の容器では、口部が細く、酸化物微粒子を分散させた液を吹き付けによって容器の内面に付着させるという手法を採用することが難しいからである。
さらに、酸化物微粒子を、表面を形成する樹脂に分散させておき、このような樹脂を用いてボトルの形態に成形することにより、ボトルの内表面に酸化物微粒子を分布させることも考えられるが、本発明者等の研究によると、ある程度の滑落性を発現させるためには多量の酸化物微粒子を分散させなければならないことが確認されている。
疎水性微粒子が分散している樹脂層を表面に有しており且つ粗面加工されていない樹脂成形体において、
前記疎水性微粒子は、疎水性官能基が粒子表面に導入されたシリカ微粒子からなり且つ400m 2 /g以上のBET比表面積を有していると共に、
前記表面の樹脂層には、樹脂100重量部当り40〜100重量部の量で前記疎水性微粒子が配合され、且つ該疎水性微粒子の一部が該表面に分布していることを特徴とする樹脂成形体が提供される。
(1)前記疎水性微粒子が分布している樹脂成形体表面は、該表面に純水30mgを滴下したとき、この純水が滑落する該表面の角度として定義される転落角が5°以下であること、
(2)前記疎水性微粒子が、シリカ表面に疎水性官能基が導入されたものであること、
(3)前記疎水性官能基が、アルキルシリル基、アルキル基、フルオロアルキルシリル基、フルオロアルキル基であること、
(4)前記アルキルシリル基がジメチルシリル基である
(5)フィルムの形態を有しており、該フィルムの表面樹脂層に前記疎水性微粒子が分散され且つその一部が表面に分布していること、
(6)ボトルの形態を有しており、該ボトルの内面または口部の表面樹脂層に前記疎水性微粒子が分散され且つその一部が表面に分布していること、
(7)注出具またはキャップの形態を有しており、注出具またはキャップでの内容液の注ぎ出し流路となる部分の表面樹脂層に前記疎水性微粒子が分散され且つその一部が表面に分布している
(8)トレーの形態を有しており、該トレーの内面の表面樹脂層に前記疎水性微粒子が分散され且つその一部が表面に分布している
(9)カップの形態を有しており、該カップの内面の表面樹脂層に前記疎水性微粒子が分散され且つその一部が表面に分布している
このことから理解されるように、BET比表面積が300m2/g以下の疎水性微粒子を用いて滑水性を発現させる場合には、樹脂の成形性が大きく損なわれてしまうため、外添(外部からの付着)によらざるを得ず、従って、フィルムやボトルのような形態の成形体に高い滑水性を発現させることは不可能といってよい。一方、本発明にしたがって、BET比表面積が300m2/gよりも大きな疎水性微粒子を用いた場合には、少量で高い滑水性が発現するため、樹脂の成形性の低下が少なく、高い滑水性を発現させることができる。
樹脂に配合されている疎水性微粒子は、BET比表面積が大きいため、滑水性に有効な疎水性基が多量に分布している。しかも、BET比表面積が大きな疎水性微粒子は、細孔が非常に多く存在するため空気をかみ込みやすく純水が浸透しにくい。そのため液体との接触面積は小さくなり、この結果、樹脂成形体表面に露出している疎水性微粒子の量が少なくても、極めて優れた滑水性が発現するものと考えられる。一般に、物質が滑落するとき、空気を巻き込み易くするためには、粗面加工等により滑落表面に凹凸を形成するという手法が考えられるが、本発明では、このような凹凸面をあえて形成する必要はなく、このことは、BET比表面積が400m 2 /g以上の疎水性微粒子の使用により、空気を巻き込みやすくなっていることを裏付けている。
特に本発明の樹脂成形体においては、所定の疎水性微粒子を表面に分布せしめることが可能であり、フィルム、ボトル、トレーやカップの形態として、さらには、スパウトなどの注出具やキャップなどの形態においても、液が接触する部分や液が流れる流路となる部分に疎水性微粒子を分布させて滑水性を付与することができる。
本発明の樹脂成形体は、疎水性微粒子が分布している表面を有しているものであり、かかる疎水性微粒子は、フロータビリティが40%以上であり、極めて高い疎水性を示すものである。
尚、フロータビリティは、混合比が種々異なる水とメタノールとの混合溶媒を用意し、これらの混合溶媒に微粒子をゆっくりと加えたとき、該微粒子が沈降するときの混合溶媒のメタノール含有率(体積分率)である。例えば、表面処理がされていないシリカ微粒子は、親水性が高く、フロータビリティはほとんどゼロ%である。一方、テフロン(登録商標)のような疎水性の高い粉末は、水には沈まないため、フロータビリティは、ほぼ100%である。従って、本発明で用いる疎水性微粒子は、フロータビリティが40%以上であることから、特に高い疎水性を示す。
この疎水性官能基としては、30mJ/m2以下の臨界表面張力を示す官能基、例えば、メチル基等のアルキル基、メチルシリル基などのアルキルシリル基、フルオロアルキル基、フルオロアルキルシリル基などが挙げられる。
このような疎水性官能基による修飾は、これらの官能基を有する疎水化剤(例えばシラン化合物、シロキサン化合物、シラザン化合物、チタンアルコキシド化合物など)を用いてのカップリングやコーティングにより行われる。
本発明において、特に好適に使用されるのは、コストや入手のし易さから、疎水性シリカ微粒子であり、ジメチルシリル基で表面修飾されている疎水性シリカ微粒子が最も好ましい。
本発明において、樹脂成形体の製造に用いる樹脂は、疎水性微粒子が表面に分布した表面(以下、滑水性表面と呼ぶ)を形成し得るものであれば特に制限されず、用途に応じて各種の樹脂を使用することができ、例えば熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂の何れも使用することができるが、疎水性微粒子を外添して滑水性表面を形成する場合には、疎水性微粒子を分散媒に分散した分散液を使用することが好ましい。また、疎水性微粒子を内添して滑水性表面を形成する場合には、熱可塑性樹脂を使用することが好ましい。
特に、包装材料の分野で使用する場合には、ポリオレフィン等のオレフィン系樹脂やポリエステルが好ましい。
また、これらの樹脂から成形される樹脂成形体は、疎水性微粒子が分布している滑水性表面が形成される限りにおいて、多層構造を有していてもよいし、さらに用途に応じて、適宜の添加剤(例えば酸化防止剤、着色剤など)が配合されていてよい。
上述した本発明の樹脂成形体は、疎水性微粒子の表面分布により優れた滑水性表面を有しているため、その特性を活かして種々の用途、例えば防水性や撥水性が要求される用途に好適に使用でき、当該用途に適した形態(例えばフィルム、シート、トレーやカップなど)を有することができる。また、スパウト等の注出具やキャップの形態とすることもできる。
図1において、基材13の上に疎水性微粒子11を有し、基材13と疎水性微粒子11層との積層体10を示す。疎水性微粒子11層上に対象物が接触することで積層体10が滑水性の表面特性を有する。
尚、実施例1,2は本発明例であるが、実施例3,4は、本発明の範囲外の参考例となっている。
また、以下の実施例等で行った各種の特性、物性等の測定方法及びフィルムの作製に用いた樹脂等は次の通りである。
BET比表面積測定;
前処理として各種疎水性微粒子を真空乾燥し、流動式比表面積自動測定装置FlowSorbII2300(島津製作所(株)製)を用いてBET比表面積を測定した。
混合比が種々異なる純水とメタノールとの混合溶媒を用意し、各種混合溶媒に微粒子をゆっくりと加え、沈降するかどうか確認した。該微粒子が沈降したときの混合溶媒中のメタノール含有率(体積分率)をフロータビリティと定義した。
後述の方法で作成したフィルムを、固液界面解析システムDropMaster700(協和界面科学(株)製)の試料台に測定面が上になるように固定した。23℃、50%RHの条件下で30mgの蒸留水をのせ、徐々に基材を傾けていき、水滴が転落した最終の傾斜角度を測定した。
後述の方法で作成したフィルムを、固液界面解析システムDropMaster700(協和界面科学(株)製)の試料台に測定面が上になるように固定した。23℃、50%RHの条件下で3μLの蒸留水をのせ、該フィルムと水滴のなす角度(接触角)を測定した。
ポリエステル樹脂(vylon200;東洋紡(株)製)0.50g、メチルエチルケトン(和光純薬社製、以下MEKとする)10.0gをバイアル瓶に秤量し、スターラーで撹拌させながらポリエステル樹脂を溶解させた。さらに疎水性微粒子a(疎水性シリカ;BET比表面積 510m2/g、表面官能基 ジメチルシリル基、フロータビリティ 40%)を0.20g添加し、スターラーで2時間撹拌した。作製した混合液を厚さ100μmのPETフィルム(ルミラー100T60;東レ社製)にバーコーター(#9)を用いて塗布した後、120℃に加熱したオーブン中で3分間乾燥させた。作製したフィルムを用いて、転落角(WSA)および接触角(WCA)測定を行った。結果を表1に示す。
疎水性微粒子aを0.50gとした以外は実施例1と同様にしてフィルムを作製し、測定を行った。結果を表1に示す。
疎水性微粒子aを0.80gとした以外は実施例1と同様にしてフィルムを作製し、測定を行った。結果を表1に示す。
ポリエステル樹脂を使用しなかった以外は実施例2と同様にしてフィルムを作製し、測定を行った。結果を表1に示す。
疎水性微粒子aを0.15gとした以外は実施例1と同様にしてフィルムを作製し、測定を行った。結果を表1に示す。
疎水性微粒子としてaの代わりに、疎水性微粒子b(RX300;日本アエロジル(株)製、BET比表面積 210m2/g、表面官能基 トリメチルシリル基、フロータビリティ 65%)を用いた以外は実施例1と同様にしてフィルムを作製し、測定を行った。結果を表1に示す。
疎水性微粒子bを0.50gとした以外は比較例1と同様にしてフィルムを作製し、測定を行った。結果を表1に示す。
疎水性微粒子bを0.80gとした以外は比較例1と同様にしてフィルムを作製し、測定を行った。結果を表1に示す。
ポリエステル樹脂を使用しなかった以外は比較例2と同様にしてフィルムを作製し、測定を行った。結果を表1に示す。
疎水性微粒子としてaの代わりに、疎水性微粒子c(R972;日本アエロジル(株)製、BET比表面積 110m2/g、表面官能基 ジメチルシリル基、フロータビリティ 45%)を用いた以外は実施例1と同様にしてフィルムを作製し、測定を行った。結果を表1に示す。
疎水性微粒子cを0.50gとした以外は比較例5と同様にしてフィルムを作製し、測定を行った。結果を表1に示す。
疎水性微粒子cを0.80gとした以外は比較例5と同様にしてフィルムを作製し、測定を行った。結果を表1に示す。
ポリエステル樹脂を使用しなかった以外は比較例6と同様にしてフィルムを作製し、測定を行った。結果を表1に示す。
疎水性微粒子を使用しなかった以外は比較例1と同様にしてフィルムを作製し、測定を行った。結果を表1に示す。
また表面官能基がトリメチルシリル基でBET比表面積が210m2/gである疎水性微粒子を使用した比較例1〜4では、疎水性微粒子のフロータビリティが65%と比較的高い値であるにも関わらず、疎水性微粒子を樹脂100重量部当たり160重量部以上加えなければ、高い滑水性が得られなかった。一方で表面官能基がジメチルシリル基でBET比表面積が520m2/gである疎水性微粒子を使用した実施例1〜4では、疎水性微粒子のフロータビリティが40%と低い値であるが、樹脂100重量部当たり40重量部の添加量で高い滑水性を示した。なお、樹脂100重量部当たり40重量部の添加量の実施例1は、樹脂100重量部当たり30重量部の参考例1に比べて、高い滑水性を発現していることがわかる。
11:疎水性微粒子
13:基材
Claims (10)
- 疎水性微粒子が分散している樹脂層を表面に有しており且つ粗面加工されていない樹脂成形体において、
前記疎水性微粒子は、疎水性官能基が粒子表面に導入されたシリカ微粒子からなり且つ400m 2 /g以上のBET比表面積を有していると共に、
前記表面の樹脂層には、樹脂100重量部当り40〜100重量部の量で前記疎水性微粒子が配合され、且つ該疎水性微粒子の一部が該表面に分布していることを特徴とする樹脂成形体。 - 前記疎水性微粒子が分布している樹脂成形体表面は、該表面に純水30mgを滴下したとき、この純水が滑落する該表面の角度として定義される転落角が5°以下である、請求項1に記載の樹脂成形体。
- 前記疎水性微粒子が、シリカ表面に疎水性官能基が導入されたものである、請求項1または2に記載の樹脂成形体。
- 前記疎水性官能基が、アルキルシリル基、アルキル基、フルオロアルキルシリル基、フルオロアルキル基である、請求項1〜3の何れかに記載の樹脂成形体。
- 前記アルキルシリル基がジメチルシリル基である請求項4に記載の樹脂成形体。
- フィルムの形態を有しており、該フィルムの表面樹脂層に前記疎水性微粒子が分散され且つその一部が表面に分布している、請求項1〜5の何れかに記載の樹脂成形体。
- ボトルの形態を有しており、該ボトルの内面または口部の表面樹脂層に前記疎水性微粒子が分散され且つその一部が表面に分布している、請求項1〜5の何れかに記載の樹脂成形体。
- 注出具またはキャップの形態を有しており、注出具またはキャップでの内容液の注ぎ出し流路となる部分の表面樹脂層に前記疎水性微粒子が分散され且つその一部が表面に分布している、請求項1〜5の何れかに記載の樹脂成形体。
- トレーの形態を有しており、該トレーの内面の表面樹脂層に前記疎水性微粒子が分散され且つその一部が表面に分布している、請求項1〜5の何れかに記載の樹脂成形体。
- カップの形態を有しており、該カップの内面の表面樹脂層に前記疎水性微粒子が分散され且つその一部が表面に分布している、請求項1〜5の何れかに記載の樹脂成形体。
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