JP6206391B2 - 表面に液層を有する構造体 - Google Patents
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Description
この多層構造ボトルは、最内層が油性内容物に対する濡れ性に優れており、この結果、ボトルを倒立させたり、或いは傾斜させたりすると、マヨネーズ等の油性内容物は、最内層表面に沿って広がりながら落下していき、ボトル内壁面(最内層表面)に付着残存することなく、綺麗に排出することができるというものである。
例えば、特許文献4には、一次粒子平均径が3〜100nmの疎水性酸化物微粒子が内面に付着している容器が提案されている。
また、特許文献5には、平均粒径が1μm〜20μmの樹脂粒子により形成された樹脂膜の表面に平均粒径が5nm〜100nmの酸化物微粒子が分散付着している構造の撥水性膜が表面に形成されている蓋体が提案されている。
しかるに、このような微細な凹凸面を形成した場合では、水性の内容物に対する非付着性が高められるものの、内容物と微細な凹凸面が常時接触する場合、微細な凹凸面の凹部では水分の凝縮が非常におこりやすく、水分凝縮により凹部が埋まるためにその滑り性が悪化していく問題があり、さらなる滑り性の向上が求められている。
即ち、これらは、何れも内容物と非混和性の液体による液層を形成することにより内容物に対する滑り性を従来公知のものに比して格段に向上させることに成功したものであり、容器を倒立或いは傾倒せしめることにより、容器内壁に付着・残存させることなく、内容物を速やかに容器外に排出することが可能となっている。
このように表面に液層を形成した構造の成形体は、容器の形態に限らず、フィルム等の形態を有する成形体にも適用できるものであり、液体の種類を適宜選択することにより、表面の性質を大幅に改質することができる。
しかしながら、液層を表面に有するプラスチック容器などの樹脂構造体に関しては、未だ十分な解析が行われておらず、どのような形態で液層が形成されている場合に、表面の性質を大幅に且つ安定して改善できるか、十分に解明されておらず、このため目下、種々の改良等が行われているのが現状である。
前記液層は、前記流動体と非混和性の液体により形成されており、
前記液層を支持している表面には、局部的に突出している部分が形成されており、この突出している部分に対応して、該液層の表面にも局部的に突出している部分が形成されていることを特徴とする構造体が提供される。
(1)前記液層の表面には、0.7μm以上の高さを有する微細突起が20〜100個/mm2の密度で分布していること、
(2)前記液層の表面には、0.7μm以上の高さの微細突起が、平均して100〜300μmの間隔で観測されること、
(3)前記液層は、0.5乃至30g/m2の量で前記成形体表面に存在していること、
(4)前記液層を支持している表面が樹脂製であること、
(5)前記流動体が収容された容器の形態を有していること、
が好適である。
例えば、フッ素系液体、フッ素系の界面活性剤、シリコーンオイルや植物油などの油性の液体により形成されている場合には、水等の水性物質に対する滑り性や非付着性を大幅に向上させることができるのであるが、後述する実施例及び比較例の実験結果に示されているように、液状凸部が形成されているときのマヨネーズの滑り速度は、液状凸部が形成されていない場合に比して、約2倍も向上していることが判る。同様に、本発明では、液層が撥油性の液体により形成されているときには、油性物質に対する滑り性や非付着性を大幅に高めることができる。
図1を参照して、本発明の樹脂構造体(全体として10で示す)は、樹脂成形体1と、該樹脂成形体1の表面を被覆している液層3とから形成されているものであるが、特に重要な特徴は、液層3の表面に液状凸部3aが形成されており、液状凸部3aの間はフラットな面3bとなっている。即ち、図1から理解されるように、樹脂成形体1の表面には、比較的大きな突起1aと比較的小さな突起1bとが混在しているが、液層3の表面は、大まかに言って、このような突起1a,1bが混在している樹脂成形体1の表面に沿った形態を有しており、比較的大きな突起1aに対応して液状凸部3aが形成され、フラットな面3bの部分では、比較的小さな突起1bを覆っている。
本発明では、このような液層3の特異的な表面形状により、優れた滑り性を発現させることができるのである。
しかるに、本発明では、図2(b)に示されているように、流動体5が樹脂成形体1上を滑るとき、流動体5は液層3に接触するものの、全面接触とはならず、液状凸部3aが形成されている部分で部分的に液層3に接触して滑ることとなる。即ち、本発明では、液層3の表面に液状凸部3aが形成され、流動体5と液層3とが部分的に接触して滑ることにより、図2(a)のように、流動体5と液層3とが全面接触して滑る場合に比して、流動体5に対する滑り性がさらに大幅に向上することとなる。
即ち、流動体5が液層3の表面を滑るときの流動体5の流れは流速が直線分布となるクエット流に相当するので、流動体5が液層3から受ける摩擦力Fは、下記式;
F=ηVA/h
式中、ηは液層3を形成する液体の粘性、
Vは、流動体5の流速V、
Aは、流動体5と液層3との接触面積、
hは、液層3の厚みである、
で表される。
この摩擦力Fを、図2(a)の場合の流動体5の流れと図2(b)の場合の流れとで比較すると、図2(b)の流れの場合の方が接触面積が著しく小さく(ηは液の種類によるものであるから両者は同じである)、従って、摩擦力Fは、図2(b)の流れの方がかなり小さくなることが理解される。即ち、本発明のように、液状凸部3aを液層3の表面に形成することにより、流動体5の滑りに対する摩擦力Fが極めて小さくなっており、この結果、滑り速度は極めて大となり、滑り性が大幅に向上するものと推定される。要するに、図2(a)の場合は、液層3を形成する液体の化学的性質のみによって滑り性が向上するのであるが、本発明では、液体の化学的性質に加え、接触面積減少による摩擦力低減という物理的な作用も加わっているため、さらなる滑り性の向上が得られるのである。
即ち、上記のような高さの液状凸部3aの間隔(L)が上記範囲よりも狭い(液状凸部3aが密に形成されている)ときには、流動体5が滑り落ちるときの液層3との接触面積が大きくなってしまうため、摩擦力Fの低減化が望めず、滑り性向上効果が小さくなってしまう傾向がある。また、液状凸部3aの間隔Lが上記範囲よりも大きい(液状凸部3aが疎に形成されている)ときにも、流動体5が滑り落ちるときの液層3との接触面積は大きくなってしまう。液状凸部3a間が広くなってしまうため、当然、フラットな面3b上でも流動体5と液層3との接触を生じてしまうからである。特に、流動体5が粘稠な流動体のような場合には、その形状が変化するため、接触面積の増大傾向は特に著しい。従って、この場合にも、摩擦力Fの低減は望めず、滑り性向上効果が小さくなってしまう。
また、上記のような間隔Lを満足するように液状凸部3aが形成されていたとしても、その高さΔhが上記範囲よりも低い場合には、やはり、流動体5が滑り落ちるときの液層3との接触面積が大きくなってしまい、摩擦力Fの低減化が望めず、滑り性向上効果が小さくなってしまう。
F=(cosθ−cosθB)/(cosθA−cosθB) (1)
式中、
θは、前記樹脂構造体10表面での水接触角であり、
θAは、前記液層3を形成する液体上での水接触角であり、
θBは、前記樹脂成形体1を形成するプラスチック単体上での水接触角である、
で算出される液層3の被覆率Fが0.5以上、好ましくは0.6以上となるように形成されるべきである。即ち、樹脂構造体10の表面での水接触角θと液層3上での水の接触角水θAが同じである場合には、被覆率Fは1.0であり樹脂成形体1の全体が液層3で覆われていることになる。
例えば、被覆率Fが上記範囲よりも小さいと、液量が多量にあっても、表面に液体が点在するような形態で液層3が形成され、十分な表面特性を発揮することが困難となってしまう。
cosθ=FAcosθA+FBcosθB
=FAcosθA+(1−FA)cosθB
式中、
FAは、A成分の割合を示し、
FBは、B成分の割合を示し(但し、FA+FB=1)、
θAは、A成分単体上での液体の接触角を示し
θBは、B成分単体上での液体の接触角を示す。
本発明において、上述した樹脂構造体10の表面構造は、樹脂成形体1(下地面)を形成するための樹脂に、粗面化用添加剤と液層3を形成するための液体とを配合し、このような樹脂組成物を用いての成形により樹脂成形体1の表面(下地面)を形成することにより実現できる。
尚、微細粒子の平均粒子径は、微細粒子の種類や大きさによっても異なるが、一般的には、透過型電子顕微鏡や走査型電子顕微鏡など電子顕微鏡観察による方法や、レーザ回折式粒度分布測定装置などのレーザ回折・散乱法による方法等によって測定することができる。微粒子の平均粒子径は、電子顕微鏡観察による測定においては測定した粒子の平均径として定義され、また、レーザ回折・散乱法による測定においては得られた粒度分布における体積換算での積算値50%での粒子径として定義される。なお、シリカなどの一次粒子径が0.2μm以下の微粒子においては、一次粒子のまま単独で存在させることが極めて困難であるため、二次粒子の粒子径が平均粒子径として定義される。
このようにして、適度に粗面化された樹脂成形体1の下地面上に液体が滲出し、液状凸部3aを表面に有する液層3が形成されることとなる。
また、液層3を形成する液体をスプレーや浸漬等の方法により外添することにより液層3を形成する手法も考えられるが、液状凸部3aを有する液層3はかなり薄層であり、このような液体を外添する手法には適しておらず、かかる液層3の形成も液体を内添した樹脂組成物を用いるのがよい。
上述した表面構造を有する本発明の樹脂構造体10は、そのまま単独で使用することもできるが、通常は、この表面構造を残したまま、他の材料からなる層が積層された多層構造体として使用することが好ましい。例えば、液層3を支持する下地面を形成している樹脂成形体の下側に液拡散防止層を設けた多層構造を採用することが好適である。
即ち、下地樹脂層1’は前述した樹脂成形体1に相当し、下地樹脂層1’と液層3との組み合わせが図1の樹脂構造体10に相当する。
即ち、一定の量の液体が下地樹脂層1’に配合され、この液体の滲出により液層3が形成されていたとしても、該液体が下地樹脂層1’の反対側の面にも徐々に移行していくため、その液層3を形成している液量が経時と共に減少し、この結果、液層3に付与される表面特性が経時と共に失われていくおそれがある。しかるに、図3の態様では、液拡散防止層20の存在により、液層3(或いは下地樹脂層1’)からの液の浸透拡散が遮断されるため、液層3の液量減少が有効に抑制され、表面特性の経時的損失を回避することが可能となる。
この基材23の材質は、多層構造体30の使用形態に応じて選択されるが、一般的には、各種プラスチックや紙などから形成され、複数の層から形成されていてもよい。例えば、この基材23を、前述した液拡散防止層20と同じ機能を有する樹脂層を含む多層構造とすることもできるし、さらに、この構造体30を成形する際に生じるバリなどのスクラップ樹脂を含むリプロ層を基材23中に形成することもできる。
即ち、この多層構造体30を、内容物を絞り出すスクイズ容器として使用する場合には、スクイズ性の観点から、低密度ポリエチレンや直鎖低密度ポリエチレン、ポリプロピレンを用いて基材23が形成される。この場合、基材23と液拡散防止層20との間に適宜接着材樹脂層を設けることもできるし、上記で説明したように、基材23よりも内部の層(液層3とは逆側の層)として、さらにガスバリア―樹脂層(液拡散防止層としても機能する)やリプロ層を設けることができる。
既に述べたように、下地樹脂層1’中には液層3を形成する液体がブレンドされており、下地樹脂層1’からの液の滲出により液層3が形成されるが、図4の態様では、液拡散調節層25中にも液体が浸透し拡散していくこととなり、下地樹脂層1’の表面に滲出する液の量を適度な範囲に調節し、過剰量の液の滲出を防止し、適正な液量により液状凸部3aを液面に有する液層3を形成する上で有利である。
本発明の樹脂構造体10及びこの樹脂構造体10が積層されている多層構造体30は、種々の形態を有することができ、その形態に応じて液層3を形成する液体を選択して所望の表面特性を発揮させることができる。
このような場合、多層構造体30の下地樹脂層1’の表面及び液拡散防止層20(或いは基材23)の裏面には、適宜、粘着剤などを介してシリコンペーパーやポリエステルフィルムなどの剥離フィルムを設けておき、使用に先立って、この剥離フィルムを引き剥がし、下地樹脂層1’の表面が露出するように所定の表面に貼り付ければよい。このような形態で本発明の多層構造体30を使用する場合には、任意の場所に液層3による表面特性を発現させることができる。例えば、液層3を形成する液体としてフッ素系界面活性剤を使用し、浴室の鏡などに多層構造体30を貼付すれば、水滴が鏡の表面に付着せず、速やかに流れ落ちるため、鏡の曇り止めとしての機能を発揮させることができる。
上記の使用形態は、図1に示す単層構造の樹脂構造体10においても全く同様である。
また、フィルム形状の多層構造体30の2枚を貼り付けることにより、袋状の容器とすることもできる。
図1の単層構造の樹脂成形体も基本的には同じである。
例えば、ケチャップ、各種ソース類、蜂蜜、マヨネーズ、マスタード、ジャム、チョコレートシロップ、乳液などは、水分を含む親水性物質であり、液層5を形成する液体としては、シリコーンオイル、グリセリン脂肪酸エステル、食用油などの食品添加物として認可されている油性液体が好適に使用される。
尚、以下の実施例等で行った各種の特性、物性等の測定方法及び樹脂構造体(容器)の成形に用いた樹脂等は次の通りである。
後述の方法で作製した容量500gの樹脂構造体である多層容器の胴部から10mm×60mmの試験片を切り出した。23℃50%RHの条件下、固液界面解析システムDropMaster700(協和界面化学(株)製)を用い、試験片の内層が上になるように固定し、3μLの純水を試験片にのせ、水接触角θを測定した。得られた水接触角を用いて、下記式(1)より、樹脂構造体表面での液層の被覆率Fを求めた。
F=(cosθ−cosθB)/(cosθA−cosθB) (1)
式中、θは、樹脂構造体表面での水接触角であり、
θAは、液層を形成する液体上での水接触角であり、
θBは、樹脂成形体を形成するプラスチック単体上での水接触角である。
液層の被覆率Fを求めるにあたり、θAとθBの値として、下記水接触角の値を用いた。
θB:100.1°
(樹脂成形体を形成する高圧法低密度ポリエチレン(MFR=0.3)単体での値)
θA:80.3°
(中鎖脂肪酸トリグリセライド(液体)上での値)
後述の方法で作製した容量500gの多層容器を用いて、容器内面に形成された液層を、液層と混和性の溶剤(ヘプタン)30mLで回収し、エバポレーターを用いて濃縮した後、残留物を蒸発皿へ移し取り、液層成分の重さを求めた。得られた重さを容器内面の面積で除し、ボトル内面における液層被覆量(g/m2)とした。この値が小さい程、容器内面には薄い液層が形成されている。
後述の方法で作製した容量500gの樹脂構造体である多層容器の胴部から20mmx70mmの試験片を切り出した。23℃50%RHの条件下、固液界面解析システムDropMaster700(協和界面化学(株)製)を用い、試験片の内層が上になるように固定し、70mgの流動性内容物を試験片にのせ、45°の傾斜角における滑落挙動をカメラで撮影し、滑落挙動を解析し、移動距離−時間のプロットから滑落速度を算出した。この滑落速度を滑落性の指標とした。前記滑落速度の値が大きい程、内容物の滑落性が優れている。用いた流動性内容物は下記の通りである。なお、内容物の粘度として、音叉型振動式粘度系SV−10((株)エー・アンド・デイ製)を用いて25℃で測定した値も共に示す。
用いた流動性内容物;
キユーピーハーフ
キユーピー(株)製マヨネーズ風低カロリー食品
粘度=1260mPa・s
後述の方法で成形した樹脂構造体である多層容器の底から50mmの位置での胴部水平断面における層構成を偏光顕微鏡にて観察し、多層樹脂構造体中における液拡散防止層の深さ・厚み、および全体厚みを求めた。断面に対し、0°、90°、180°、270°の位置での構成を観察し、4方向での平均値を多層樹脂構造体中における液拡散防止層の深さ・厚み、および全体厚みとした。
後述の方法で作製した容量500gの樹脂構造体である多層容器の胴部から10mmx10mmの試験片を切り出した。非接触表面形状測定機(NewView7300,zygo社製)を用いて、樹脂構造体の表面の画像解析及び形状測定を行った。
画像解析及び表面形状の測定には、アプリケーションとして、MetroPro(Ver.9.1.4 64−bit)を用いた。
1.40mmx1.05mmの範囲を測定し、得られた生データから、ノイズ除去のため高周波成分の波長6.576μm以下をカットし、測定データとした。測定データから、0.7μm以上の高さの突起に対し、突起密度(1mm2面積当たりの突起個数)、平均突起間隔、最大突起高さ、平均突起高さ、および突起高さの標準偏差を求めた。
中鎖脂肪酸トリグリセライド(MCT)
表面張力:28.8mN/m(23℃)
粘度:33.8mPa・s(23℃)
沸点:210℃以上
引火点:242℃(参考値)
尚、液体の表面張力は固液界面解析システムDropMaster700(協和界面科学(株)製)を用いて23℃にて測定した値を用いた。また、液体の表面張力測定に必要な液体の密度は、密度比重計DA−130(京都電子工業(株)製)を用いて23℃で測定した値を用いた。さらに、液体の粘度は音叉型振動式粘度計SV−10((株)エー・アンド・デイ製)を用いて23℃にて測定した値を示した。
低密度ポリエチレン(LDPE)
密度:0.922g/cm3
結晶化度:0.37
エチレン・ビニルアルコール共重合体(EVOH)
密度:1.20g/cm3
Tg:60℃
無水マレイン酸変性ポリエチレン
低密度ポリエチレン(LDPE)
密度:0.922g/cm3
結晶化度:0.37
疎水性シリカ
架橋ポリメタクリル酸メチルA(架橋PMMA−A)
平均粒子径:3μm
架橋ポリメタクリル酸メチルB(架橋PMMA−B)
平均粒子径:20μm
超高分子量ポリエチレン(超高分子量PE)
平均粒子径:10μm
使用した樹脂のうち、低密度ポリエチレンに対しては、示差走査熱量計(PERKIN ELMER社製Diamond DSC)を用いて、下記条件で測定を行い、樹脂の結晶化度を求めた。
樹脂約7mgの試料に対し、25℃から200℃まで昇温速度10℃/minで走査し、200℃にて3分間保持し、200℃から−50℃まで降温速度10℃/minで走査し、−50℃にて3分間保持した。その後、−50℃から200℃まで昇温速度10℃/minで走査した際に得られたプロファイルから、樹脂の融解熱(ΔH)を求めた。測定で得られた融解熱(ΔH)を低密度ポリエチレンに対しては、完全結晶の融解熱(ΔH0)=293J/gで除し、各々の結晶化度を算出した。
下記組成の下地層形成用樹脂組成物を用意した。
低密度ポリエチレン(LDPE) 95重量部
粗面化用添加剤 1重量部
日本アエロジル(株)製R972
(ジメチルシリル基被覆疎水性シリカ)
液層形成用液体 4重量部
中鎖脂肪酸トリグリセライド(MCT)
40mm押出機に上記の下地層形成用樹脂組成物、30mm押出機Aに接着層形成用樹脂(無水マレイン酸変性ポリエチレン)、30mm押出機Bに液拡散防止層形成用樹脂(エチレン・ビニルアルコール共重合体)、50mm押出機に基材形成用樹脂(低密度ポリエチレン)を、それぞれ供給し、温度210℃の多層ダイヘッドより溶融パリソンを押し出し、金型温度20℃にてダイレクトブロー成形を行い、内容量500g、重量20gの多層構造体から成る容器を作製した。
作製した容器を用い、液層の被覆率、液層の被覆量、流動性内容物の滑落速度、液拡散防止層の深さ・厚み、および全体厚みの測定、ならびに容器内面の表面観察を行った。
得られた表面形状の3次元像と任意断面での形状プロファイルを図5に示す。
成形後1日区の段階において、液層の被覆率の測定の結果から、成形した多層構造体の表面には液層が形成されていることが確認された。
また、成形後の容器を22℃60%RHに所定の期間保管し、液層の被覆率の測定および流動性内容物の滑落速度測定を行った。結果をまとめて表1に示す。
液層/下地層(35)/接着層(10)/液拡散防止層(20)/接着層(10)
/基材(340)、
液拡散防止層の深さ(45)
全体厚み(415)
ここで、括弧内は各層の厚み(μm)を示す(以下同様)。
下記組成の下地層形成用樹脂組成物を用意した。
低密度ポリエチレン(LDPE) 94.7重量部
粗面化用添加剤 0.3重量部
架橋PMMA−A
液層形成用液体 5重量部
中鎖脂肪酸トリグリセライド(MCT)
上記の下地層形成用樹脂組成物を用いた以外は実施例1と同様に多層構造体から成る容器を作製した。作製した容器を用いて実施例1と同様に各種測定を行った。結果をまとめて表1に示す。
尚、これらの容器の層構成は、液層を内面としており、以下の通りである。
液層/下地層(80)/接着層(10)/液拡散防止層(25)/接着層(10)
/基材(370)
液拡散防止層の深さ(90)
全体厚み(495)
下記組成の下地層形成用樹脂組成物を用意した。
低密度ポリエチレン(LDPE) 94重量部
粗面化用添加剤 1重量部
架橋PMMA−B
液層形成用液体 5重量部
中鎖脂肪酸トリグリセライド(MCT)
上記の下地層形成用樹脂組成物を用いた以外は実施例1と同様に多層構造体から成る容器を作製した。作製した容器を用いて実施例1と同様に各種測定を行った。結果をまとめて表1に示す。
尚、これらの容器の層構成は、液層を内面としており、以下の通りである。
液層/下地層(80)/接着層(10)/液拡散防止層(20)/接着層(10)
/基材(300)
液拡散防止層の深さ(90)
全体厚み(420)
下記組成の下地層形成用樹脂組成物を用意した。
低密度ポリエチレン(LDPE) 92重量部
粗面化用添加剤 3重量部
架橋PMMA−B
液層形成用液体 5重量部
中鎖脂肪酸トリグリセライド(MCT)
上記の下地層形成用樹脂組成物を用いた以外は実施例1と同様に多層構造体から成る容器を作製した。作製した容器を用いて実施例1と同様に各種測定を行った。結果をまとめて表1に示す。
尚、これらの容器の層構成は、液層を内面としており、以下の通りである。
液層/下地層(80)/接着層(10)/液拡散防止層(20)/接着層(10)
/基材(350)
液拡散防止層の深さ(90)
全体厚み(470)
下記組成の下地層形成用樹脂組成物を用意した。
低密度ポリエチレン(LDPE) 94.5重量部
粗面化用添加剤 0.5重量部
超高分子量PE
液層形成用液体 5重量部
中鎖脂肪酸トリグリセライド(MCT)
上記の下地層形成用樹脂組成物を用いた以外は実施例1と同様に多層構造体から成る容器を作製した。作製した容器を用いて実施例1と同様に各種測定を行った。結果をまとめて表1に示す。
尚、これらの容器の層構成は、液層を内面としており、以下の通りである。
液層/下地層(80)/接着層(15)/液拡散防止層(25)/接着層(10)
/基材(340)
液拡散防止層の深さ(95)
全体厚み(470)
下記組成の下地層形成用樹脂組成物を用意した。
低密度ポリエチレン(LDPE) 94重量部
粗面化用添加剤 1重量部
超高分子量PE
液層形成用液体 5重量部
中鎖脂肪酸トリグリセライド(MCT)
上記の下地層形成用樹脂組成物を用いた以外は実施例1と同様に多層構造体から成る容器を作製した。作製した容器を用いて実施例1と同様に各種測定を行った。結果をまとめて表1に示す。
尚、これらの容器の層構成は、液層を内面としており、以下の通りである。
液層/下地層(85)/接着層(10)/液拡散防止層(25)/接着層(10)
/基材(350)
液拡散防止層の深さ(95)
全体厚み(480)
下記組成の下地層形成用樹脂組成物を用意した。
低密度ポリエチレン(LDPE) 96重量部
液層形成用液体 4重量部
中鎖脂肪酸トリグリセライド(MCT)
上記の下地層形成用樹脂組成物を用いた以外は実施例1と同様に多層構造体から成る容器を作製した。作製した容器を用いて実施例1と同様に各種測定を行った。結果をまとめて表1に示す。また、容器(樹脂構造体)内面の表面観察から得られた表面形状の3次元像と任意断面での形状プロファイルを図6に示す。
尚、これらの容器の層構成は、液層を内面としており、以下の通りである。
液層/下地層(40)/接着層(10)/液拡散防止層(20)/接着層(10)
/基材(320)
液拡散防止層の深さ(50)
全体厚み(400)
下記組成の下地層形成用樹脂組成物を用意した。
低密度ポリエチレン(LDPE) 95重量部
液層形成用液体 5重量部
中鎖脂肪酸トリグリセライド(MCT)
上記の下地層形成用樹脂組成物を用いた以外は実施例1と同様に多層構造体から成る容器を作製した。作製した容器を用いて実施例1と同様に各種測定を行った。結果をまとめて表1に示す。
尚、これらの容器の層構成は、液層を内面としており、以下の通りである。
液層/下地層(50)/接着層(10)/液拡散防止層(10)/接着層(10)
/基材(335)
液拡散防止層の深さ(60)
全体厚み(415)
これらの表面上での滑落性を見ると、0.7μm以上の高さの微細突起が20〜100個/mm2の密度範囲で存在し、かつ平均突起間隔Lが100〜300μmの範囲にある微細突起表面上に液膜を形成させた実施例1〜6においては、いずれの例においても12mm/min以上の滑落速度を示すのに対し(最大で18.5mm/min)、0.7μm以上の高さの微細突起の突起密度が2個/mm2未満である表面上に液膜を形成させた比較例1、2においては、滑落速度が最大でも8.5mm/minとなっており、実施例1〜6において滑落速度が向上していることが理解できる。
3:液層
3a:液状凸部
5:物質
10:樹脂構造体
20:液拡散防止層
23:基材
25:液拡散調節層
30:多層構造体
Claims (6)
- 表面に液層を有する成形体からなり、該液層上に流動体が存在している構造体において、
前記液層は、前記流動体と非混和性の液体により形成されており、
前記液層を支持している表面には、局部的に突出している部分が形成されており、この突出している部分に対応して、該液層の表面にも局部的に突出している部分が形成されていることを特徴とする構造体。 - 前記液層の表面には、0.7μm以上の高さを有する微細突起が20〜100個/mm2の密度で分布している請求項1記載の構造体。
- 前記液層の表面には、0.7μm以上の高さの微細突起が、平均して100〜300μmの間隔で観測される請求項2に記載の構造体。
- 前記液層は、0.5乃至30g/m2の量で前記成形体表面に存在している請求項1に記載の構造体。
- 前記液層を支持している表面が樹脂製である請求項1〜4の何れかに記載の構造体。
- 前記流動体が収容された容器の形態を有している請求項1〜5の何れかに記載の構造体。
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