JP6254569B2 - 冬虫夏草子実体の人工培養方法及び冬虫夏草を含有する機能性食品 - Google Patents
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Description
冬虫夏草の子実体(一般にキノコと呼ばれる部分)は不老長寿の妙薬として古来より貴重な漢方薬として珍重されてきた。
本発明の目的は、高品質の冬虫夏草子実体及びそれを含む機能性食品を提供することである。
本発明者らは、生きた蚕や死んだ蚕のサナギを用いずに、天然に生育する冬虫夏草と同等の品質を有し、かつ安全性に優れ、臭気等に問題の生じない冬虫夏草子実体の人口栽培方法を鋭意研究した。その結果、冬虫夏草に養分を与える昆虫、即ち、宿主の代替物として絹糸フィブロイン膜及び所定の成分を含有する培養液を用いることにより、上記目的が達成できることを見出し、本発明を完成させた。
1.冬虫夏草子実体の人工栽培方法であって、
宿主代替物として絹糸フィブロイン膜を用い、当該膜の一部が空気中に露出するように培養液を入れた培地を準備する工程、
前記培地の絹糸フィブロイン膜の前記空気中に露出した部分に冬虫夏草の種菌を接種する工程、及び
前記冬虫夏草の種菌を培養して冬虫夏草の子実体を形成させる工程
を含む冬虫夏草子実体の人工栽培方法。
2.前記冬虫夏草の種菌が、サナギタケ(学名:Cordyceps militaris)である1に記載の冬虫夏草子実体の人口栽培方法。
3.前記絹糸フィブロイン膜が、天蚕絹糸フィブロインからなる1又は2に記載の冬虫夏草子実体の人口栽培方法。
4.上記培養液が、麦芽エキス1.0〜3重量%、酵母エキス0.1〜0.4重量%、及びグルコース0.5〜1.5重量%を含む1〜3のいずれかに記載の冬虫夏草子実体の人口栽培方法。
5.前記絹糸フィブロイン膜を予め水に浸漬して含水させて用いる1〜4のいずれかに記載の冬虫夏草子実体の人口栽培方法。
6.1〜5のいずれかに記載の冬虫夏草子実体の人口栽培方法によって得られた冬虫夏草子実体及び宿主代替物である前記絹糸フィブロイン膜を凍結乾燥した後、粉砕する冬虫夏草子実体粉体の製造方法。
7.6に記載の冬虫夏草子実体粉体の製造方法で得られた冬虫夏草子実体粉体に、水を加えてオートクレーブで加圧・加熱して抽出液を得る工程、
前記抽出液を遠心分離して上清を得る工程、及び
前記上清を凍結乾燥して粉末を得る工程
を含む冬虫夏草子実体粉末の製造方法。
8.7に記載の冬虫夏草子実体粉末の製造方法で得られた冬虫夏草子実体粉末を含有する機能性食品。
本発明によれば、高品質の冬虫夏草子実体を季節に関係無く安定して供給することができる。
本発明の冬虫夏草子実体の人工栽培方法(以下、本発明の方法という)は、
宿主代替物として絹糸フィブロイン膜を用い、当該膜の一部が空気中に露出するように培養液を入れた培地を準備する工程、
前記培地の絹糸フィブロイン膜の前記空気中に露出した部分に冬虫夏草の種菌を接種する工程、及び
前記冬虫夏草の種菌を培養して冬虫夏草の子実体を形成させる工程
を含むことを特徴とする。
図1に示したリストのうち、サナギタケ(学名:Cordyceps militaris)が特に有効成分を豊富に含有しており価値が高く、好ましい。
尚、本発明において「天蚕」とは、ヤママユだけでなく、ブナアオシャチホコも含む。
天蚕絹糸フィブロインは、天蚕絹糸から製造することもできるが、天蚕の繭層及び天蚕を繰糸する際の副産物である諸糸やビスを精錬して得ることが経済的で望ましい。精錬は、天蚕絹糸フィブロインに、例えば、0.67%のマルセル石鹸を100倍容加え、98℃で40分間加熱を2回繰り返すことが好ましい。
フィブロイン溶解溶液に銅イオン解離剤溶液を加えて銅イオンを解離させた後、フィブロイン溶液を透析して銅イオンを除去し、再生天蚕絹糸フィブロイン溶液を得る。
フィブロイン膜が十分に含水されていると、冬虫夏草の種菌への養分の供給が促進される。
冬虫夏草の子実体の形成に用いる種菌は、例えば、上述したNBRCから入手した菌株を、上述したのと同様の培養液に寒天を添加した寒天培地に接種して、15〜25℃の温度で数日培養して菌糸体を成長させた寒天種菌であることが好ましい。寒天種菌は、菌糸体が成長した寒天培地を例えば、直径5mm程度に小さく切断して用いることができ好ましい。
培養温度は、室温程度でよく、例えば、20℃が好ましい。
本発明の冬虫夏草子実体粉体の製造方法は、上記本発明の方法によって得られた冬虫夏草子実体及び宿主代替物である前記絹糸フィブロイン膜を凍結乾燥した後、粉砕することを特徴とする。
本発明の方法では、虫体を用いていないため、培地であるフィブロイン膜ごと生成物を凍結乾燥し粉砕した粉体には不純物が少なく、臭気等にも問題は生じない。
本発明の冬虫夏草子実体粉末の製造方法は、
上記本発明の冬虫夏草子実体粉体の製造方法で得られた冬虫夏草子実体粉体に、水を加えてオートクレーブで加圧・加熱して抽出液を得る工程、
前記抽出液を遠心分離して上清を得る工程、及び
前記上清を凍結乾燥して粉末を得る工程
を含むことを特徴とする。
用いる水は、超純水であることが好ましい。
具体的には、1回目のオートクレーブによる抽出液を遠心分離し、濾過して濾液(上清)を回収する。残渣に再び超純水を添加し、1回目と同様にオートクレーブ処理によって得た抽出液を濾過して得た濾液(上清)を1回目の濾液と合わせ、吸引濾過して濾液を回収する。このように抽出操作を2回繰り返すことで、さらに不純物を低減した高純度の子実体粉末が得られる。
本発明の機能性食品は、上記本発明の冬虫夏草子実体粉末の製造方法で得られた冬虫夏草子実体粉末を含有することを特徴とする。
本発明の冬虫夏草子実体粉末の製造方法で得られた子実体粉末は、従来の人口栽培方法によって得られる子実体粉末に比べて純度が高く、異臭等もないため、ヒトや動物の医薬や機能性食品の有効成分として有用であり、かつ使用しやすい。
子実体粉末の投与量は、剤型や目的とする効能等に応じて濃度を調整してヒトや動物に投与すればよい。投与量は、特に制限されるものではないが、ヒトであれば、子実体粉末投与量が10〜50mg/(kg・day)の範囲が好ましく、25mg/(kg・day)程度がより好ましい。
絹糸繊維の表面を被覆しているセリシンや単繊維間を固着させているセリシン等を除去するために、マルセル石鹸を混合溶解した精練液に原料の天蚕繭層(1/4カット)を浸漬して精錬を行った。その後、繭層フィブロインを乾燥させた。
この溶解溶液のpHを7.4〜7.7に調整し、透析チューブへ充填し、20℃の水道水で3日、さらに純水で1日透析を行って銅イオンを除去し、再生フィブロイン分散溶液を得た。
下記実施例1では、得られたフィブロイン膜を3×3cmのサイズにカットして用いた。
麦芽エキス2.0重量%、酵母エキス0.2重量%、グルコースを1.0重量%添加して培養液を作成した。この培養液は、実施例1で子実体形成用の培地に用いた他、製造例3の種菌の作成にも用いた。
麦芽エキス2.0重量%、酵母エキス0.2重量%、グルコースを1.0重量%添加した培養液に寒天を添加して寒天培地を作成した。この寒天培地にサナギタケを接種して、15〜25℃の温度で培養して菌糸体を育成した。
菌糸体が成長した寒天培地を直径5mm程度となるようにカットして寒天種菌とした。
(1)製造例1で製造した乾燥した天蚕絹糸フィブロイン膜を1時間水に浸漬して十分に含水させた後、試験管に入れ、ここに製造例2で作成した培養液1mLを注入し、フィブロインゲルの一部が空気中に露出するようにした。
この後、オートクレーブで120℃、30分間の加熱滅菌を行い、子実体形成のための培地とした。
製造例3で作成した寒天種菌を、上記(1)の培地のフィブロイン膜の空気中に露出した部分に載せて接種した。
この後、通気性を有する栓を試験管の上部開口部に取り付けて、20℃の培養室で培養した。
培養開始から28日で分生子が形成され、44日には子実体が形成された。培養開始から子実体形成までの日数は、例えば、特許文献1の栽培方法と同等であった。
実施例1で得られた子実体を、培地のフィブロイン膜と共に凍結乾燥させた後、粉砕し、子実体粉体を得た。
実施例2で得られた子実体粉体63gに、500mL(子実体粉体の約8倍容(W/V))の超純水を加え、オートクレーブで105℃、60分間処理して抽出液を得た。
この抽出液を4℃で、10,000rpmで10分間遠心分離を行い、上清を定性濾紙で濾過し回収した。
定性濾紙上に残った残渣に再び超純水500mLを添加し、上記と同じ条件で2回目の抽出を行った。
2回目の抽出液を濾過して得た濾液を回収し、1回目の抽出で得られた上清(濾液)と混合し、吸引濾過を行って濾液を回収した。
吸引濾過で得られた濾液を凍結乾燥し、子実体粉末を得た。
また、冬虫夏草の主な有効成分の1つであるβ−グルカンについては、従来の約1.5倍と多く含まれることがわかる。
Claims (8)
- 冬虫夏草子実体の人工栽培方法であって、
宿主代替物として絹糸フィブロイン膜を用い、当該膜の一部が空気中に露出するように培養液を入れた培地を準備する工程、
前記培地の絹糸フィブロイン膜の前記空気中に露出した部分に冬虫夏草の種菌を接種する工程、及び
前記冬虫夏草の種菌を培養して冬虫夏草の子実体を形成させる工程
を含む冬虫夏草子実体の人工栽培方法。 - 前記冬虫夏草の種菌が、サナギタケ(学名:Cordyceps militaris)である請求項1に記載の冬虫夏草子実体の人口栽培方法。
- 前記絹糸フィブロイン膜が、天蚕絹糸フィブロインからなる請求項1又は2に記載の冬虫夏草子実体の人口栽培方法。
- 上記培養液が、麦芽エキス1.0〜3重量%、酵母エキス0.1〜0.4重量%、及びグルコース0.5〜1.5重量%を含む請求項1〜3のいずれかに記載の冬虫夏草子実体の人口栽培方法。
- 前記絹糸フィブロイン膜を予め水に浸漬して含水させて用いる請求項1〜4のいずれかに記載の冬虫夏草子実体の人口栽培方法。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の冬虫夏草子実体の人口栽培方法によって得られた冬虫夏草子実体及び宿主代替物である前記絹糸フィブロイン膜を凍結乾燥した後、粉砕する冬虫夏草子実体粉体の製造方法。
- 請求項6に記載の冬虫夏草子実体粉体の製造方法で得られた冬虫夏草子実体粉体に、水を加えてオートクレーブで加圧・加熱して抽出液を得る工程、
前記抽出液を遠心分離して上清を得る工程、及び
前記上清を凍結乾燥して粉末を得る工程
を含む冬虫夏草子実体粉末の製造方法。 - 請求項7に記載の冬虫夏草子実体粉末の製造方法で得られた冬虫夏草子実体粉末を含有する機能性食品。
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