本発明のフィルムに含有されるビニルアセタール系重合体(B)は、ヒドロキシメチル基含有ビニルアルコール系重合体(A)をその原料とし、該ビニルアルコール系重合体(A)は、式(1):
に示される構造単位を有する。
本発明のフィルムに含有されるビニルアセタール系重合体(B)を製造するためのヒドロキシメチル基含有ビニルアルコール系重合体(A)は、前記式(1)に示される構造単位(つまり、重合体の主鎖に1,3−ジオール構造を有する構造)を有することにより、ビニルアルコール系重合体の結晶性を低下させ、アセタール化工程での溶解性や粘度安定性などの取り扱い性を向上させることができる。
本発明のフィルムに含有されるビニルアセタール系重合体を製造するためのヒドロキシメチル基含有ビニルアルコール系重合体(A)における式(1)に示される構造単位の含有率は特に限定されないが、重合体(A)中の全構造単位を100モル%に対して、0.1〜30モル%であることが好ましく、0.2〜20モル%であることがより好ましく、0.3〜10モル%であることがさらに好ましい。式(1)に示される構造単位の含有率が0.1モル%未満であると合わせガラスにした際に高温下での耐クリープ性が低下することがある。式(1)に示される構造単位の含有率が30モル%を超えると、可塑剤との相溶性が低下することがある。なお、本発明においてビニルアルコール系重合体中の構造単位とは、ビニルアルコール系重合体を構成する繰り返し単位のことをいう。
本発明のフィルムに含有されるビニルアセタール系重合体(B)を製造するためのヒドロキシメチル基含有ビニルアルコール系重合体のJIS K6726に準拠して測定した粘度平均重合度は特に限定されない。ヒドロキシメチル基含有ビニルアルコール系重合体(A)の粘度平均重合度は100〜7,000であることが好ましく、200〜5,000であることがより好ましく、200〜4,000であることがさらに好ましい。粘度平均重合度が100未満になると、フィルムの強度が低下することがある。粘度平均重合度が7,000を超える場合には、原料であるヒドロキシメチル基含有ビニルアルコール系重合体(A)の工業的な製造が難しい。
本発明のフィルムに含有されるビニルアセタール系重合体(B)を製造するためのヒドロキシメチル基含有ビニルアルコール系重合体(A)のけん化度(すなわち、ヒドロキシメチル基含有ビニルアルコール系重合体(A)における水酸基とエステル結合との合計に対する水酸基のモル分率)は特に限定されないが、本発明のフィルムの強度の観点から、80〜99.9モル%であることが好ましく、90〜99.5モル%であることがより好ましい。けん化度が80モル%未満になると、本発明のフィルムの十分な皮膜強度を得られないことがある。けん化度が99.9モル%より高い場合には、原料のビニルアルコール系重合体(A)は、一般に製造が難しい。
本発明のフィルムに含有されるビニルアセタール系重合体(B)を製造するためのヒドロキシメチル基含有ビニルアルコール系重合体(A)の製造方法は特に限定されない。例えば、ビニルエステル系単量体と、それと共重合が可能であり、且つ、式(1)で表される構造単位に変換が可能な不飽和単量体とを共重合し、得られた共重合体のビニルエステル単位をビニルアルコール単位に変換し、且つ、式(1)で表される構造単位に変換が可能な不飽和単量体に由来する構造単位を式(1)で表される構造単位に変換する方法が挙げられる。式(1)で表される構造単位に変換可能な不飽和単量体としては、式(3):
で表される化合物があげられる。式(3)において、R2及びR3は炭素数1〜10のアルキル基を示し、同じ基であっても、異なる基であっても良い。R2及びR3の構造としては特に限定されず、一部に分岐、環状構造を有していても良い。R2及びR3は好ましくは炭素数1〜5のアルキル基であり、具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基などの直鎖または分岐を有するアルキル基が挙げられる。また、R2及びR3は、アルキル基の炭素原子に結合している水素原子の一部が他の官能基で置換されていてもよい。このような置換基としては、アルコキシ基、ハロゲン原子、水酸基などが挙げられる。
式(3)で示される不飽和単量体としては、例えば、1,3−ジアセトキシ−2−メチレンプロパン、1,3−ジプロピオニルオキシ−2−メチレンプロパン、1,3−ジブチロニルオキシ−2−メチレンプロパンなどが挙げられる。中でも、製造が容易である点で、1,3−ジアセトキシ−2−メチレンプロパンが好ましく用いられる。
式(3)で示されるビニリデン型不飽和単量体は、一般的にビニルアルコール系重合体の変性に用いられる他のアリル型不飽和単量体(例えば、アリルグリシジルエーテル等)に比べ、ビニルエステル系単量体との共重合反応が進行し易い。従って、ヒドロキシメチル基含有ビニルアルコール系重合体(A)は、重合時における変性量や重合度の制約が少なく、変性量及び重合度を高くすることができる。また、ヒドロキシメチル基含有ビニルアルコール系重合体は、重合終了時に残留する未反応のビニリデン型不飽和単量体の量も少ないため、工業的に製造する場合に環境への影響も少なく、且つ、製造のためのコスト面においても優れている。
本発明のビニルアセタール系重合体(B)を製造するためのヒドロキシメチル基含有ビニルアルコール重合体(A)の製造に用いられるビニルエステル系単量体は特に限定されないが、例えば、蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、カプロン酸ビニル、カルリル酸ビニル、ラウリル酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、オレイン酸ビニル、安息香酸ビニルである。中でも、製造コストの観点から酢酸ビニルが好ましい。
式(3)で示される不飽和単量体とビニルエステル系単量体とを共重合する重合方式は、回分重合、半回分重合、連続重合、半連続重合のいずれでもよく、重合方法には塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法などの公知の方法を適用できる。無溶媒またはアルコールなどの溶媒中で重合を進行させる塊状重合法または溶液重合法が、通常採用される。高重合度のビニルエステル系共重合体を得る場合には、乳化重合法の採用が選択肢の一つとなる。溶液重合法の溶媒は特に限定されないが、例えばアルコールがあげられる。溶液重合法の溶媒に使用されるアルコールは、例えばメタノール、エタノール、プロパノールなどの低級アルコールである。重合系における溶媒の使用量は、目的とするビニルアルコール重合体の粘度平均重合度に応じて、溶媒の連鎖移動を考慮して選択すればよい。例えば、溶媒がメタノールの場合、溶媒の使用量は、溶媒と重合系に含まれる全単量体との質量比{=(溶媒)/(全単量体)}にして0.01〜10の範囲、好ましくは0.05〜3の範囲となるように調整すればよい。
式(3)で示される不飽和単量体とビニルエステル系単量体との共重合に使用される重合開始剤は、公知の重合開始剤、例えば、アゾ系開始剤、過酸化物系開始剤、レドックス系開始剤から重合方法に応じて選択される。アゾ系開始剤は、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)である。過酸化物系開始剤は、例えばジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジエトキシエチルパーオキシジカーボネートなどのパーカーボネート系化合物;t−ブチルパーオキシネオデカネート、α−クミルパーオキシネオデカネートなどのパーエステル化合物;アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキシド;2,4,4−トリメチルペンチル−2−パーオキシフェノキシアセテートである。過硫酸カリルム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素などを上記開始剤に組み合わせて重合開始剤としてもよい。レドックス系開始剤は、例えば上記の過酸化物系開始剤と亜硫酸水素ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、酒石酸、L−アスコルビン酸、ロンガリットなどの還元剤とを組み合わせた重合開始剤である。
重合開始剤の使用量は、重合触媒により異なるために一概には決められないが、重合速度に応じて選択される。例えば、重合開始剤にアゾビスイソブチロニトリルあるいは過酸化アセチルを用いる場合、重合開始剤の使用量は、ビニルエステル系単量体に対して0.01〜0.2モル%であることが好ましく、0.02〜0.15モル%であることがより好ましい。重合温度は特に限定されないが、室温〜150℃程度が適当であり、40℃以上かつ使用する溶媒の沸点以下であることが好ましい。
式(3)で示される不飽和単量体とビニルエステル系単量体との共重合は、本発明の効果が得られる限り、連鎖移動剤の存在下で行ってもよい。連鎖移動剤は、例えばアセトアルデヒド、プロピオンアルデヒドなどのアルデヒド類;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;2−ヒドロキシエタンチオールなどのメルカプタン類;ホスフィン酸ナトリウム一水和物などのホスフィン酸塩類などである。なかでもアルデヒド類及びケトン類が好適に用いられる。重合系への連鎖移動剤の添加量は、添加する連鎖移動剤の連鎖移動係数及び目的とするビニルアルコール系重合体の重合度に応じて決定されるが、一般にビニルエステル系単量体100質量部に対して0.1〜10質量部であることが好ましい。
式(3)に示される不飽和単量体とビニルエステル系単量体との共重合により得られたビニルエステル系共重合体をけん化して、ヒドロキシメチル基含有ビニルアルコール系重合体(A)を得ることができる。該ビニルエステル系共重合体をけん化することによって、共重合体中のビニルエステル単位はビニルアルコール単位に変換される。また、式(3)で示される不飽和単量体に由来する単位のエステル結合も加水分解され、式(1)で表される1,3−ジオール構造に変換される。したがって、本発明のヒドロキシメチル基含有ビニルアルコール系重合体は、けん化後にさらに加水分解等の反応を行わなくても製造することができる。
ビニルエステル系共重合体のけん化は、例えば、ビニルアルコールまたは含水アルコールにビニルエステル系共重合体が溶解した状態で行う。けん化に使用するアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノールなどの低級アルコールがあげられる。中でも、メタノールが好ましい。けん化に使用する溶媒は、アルコールの全質量の40質量%以下であれば、アセトン、酢酸メチル、酢酸エチル、ベンゼンなどの溶媒を用いてもよい。
けん化に使用する触媒としては、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属の水酸化物、ナトリウムメチラートなどのアルカリ触媒、鉱酸などの酸触媒があげられる。中でも、工業的に安価に使用できる点、残存する金属イオンがビニルアセタール系重合体の力学物性に影響を及ぼしにくい点で水酸化ナトリウムが好ましい。
けん化を行う温度は限定されないが、20〜60℃の範囲が好適である。けん化の進行に従ってゲル状の生成物が析出してくる場合には、生成物を粉砕した後、洗浄、乾燥して、ヒドロキシメチル基含有ビニルアルコール系重合体(A)を得ることができる。けん化方法は、前述した方法に限らず公知の方法を適用できる。
本発明で用いられるヒドロキシメチル基含有ビニルアルコール系重合体(A)は、本発明の効果が得られる限り、式(1)で示される構造単位、ビニルアルコール単位及びビニルエステル単位以外の構造単位をさらに有することができる。該構造単位は、例えば、ビニルエステルと共重合可能であり、且つ、式(1)で示される構造単位に変換可能な不飽和単量体及びビニルエステルと共重合可能なエチレン性不飽和単量体に由来する構造単位である。該エチレン性不飽和単量体としては、例えばエチレン、プロピレン、n−ブテン、イソブチレン、1−ヘキセンなどのα−オレフィン類;アクリル酸及びその塩;アクリル酸エステル基を有する不飽和単量体;メタクリル酸及びその塩;メタクリル酸エステル基を有する不飽和単量体;アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、アクリルアミドプロパンスルホン酸及びその塩、アクリルアミドプロピルジメチルアミン及びその塩(例えば4級塩);メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、メタクリルアミドプロパンスルホン酸及びその塩、メタクリルアミドプロピルジメチルアミン及びその塩(例えば、4級塩);メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテル、2,3−ジアセトキシ−1−ビニルオキシプロパンなどのビニルエーテル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアン化ビニル類;塩化ビニル、フッ化ビニルなどのハロゲン化ビニル類;塩化ビニリデン、フッ化ビニリデンなどのハロゲン化ビニリデン類;酢酸アリル、2,3−ジアセトキシ−1−アリルオキシプロパン、塩化アリルなどのアリル化合物;マレイン酸、イタコン酸、フマル酸などの不飽和ジカルボン酸及びその塩またはエステル;ビニルトリメトキシシランなどのビニルシリル化合物、酢酸イソプロペニルなどがあげられる。
本発明のフィルムに含有されるビニルアセタール系重合体(B)を製造するためのヒドロキシメチル基含有ビニルアルコール系重合体(A)における式(1)で示される構造単位、ビニルアルコール単位及びその他任意の構成単位の配列順序には特に制限はなく、ランダム、ブロック、交互などのいずれであってもよい。
本発明のフィルムに含有されるビニルアセタール系重合体(B)は、ビニルアルコール系重合体(A)を従来公知の方法に従ってアセタール化することにより得られる。この際のアセタール化度は65〜90モル%である必要がある。アセタール化度を上記範囲とすることで、可塑剤との相溶性に優れ、合わせガラスにした際の高温下での耐クリープ性を十分に発揮させることができる。ビニルアセタール系重合体(B)のアセタール化度としては、70〜90モル%が好ましい。ビニルアセタール系重合体(B)のアセタール化度を調整するには、ヒドロキシメチル基含有ビニルアルコール系重合体(A)に対するアルデヒドあるいは酸触媒の添加量、アルデヒドと酸触媒を添加した後の反応時間等を適宜調整すればよい。なお、高アセタール化度のビニルアセタール系重合体(B)を得るためには、高けん化度のビニルアルコール系重合体(A)をアセタール化することが好ましい。
ここで、ビニルアセタール系重合体(B)のアセタール化度とは、ビニルアセタール系重合体を構成する全単量体単位のモル数に対する、アセタール化されたビニルアルコール単位およびアセタール化されたヒドロキシメチル基の合計モル数を表す。アセタール化度は、例えば、JIS K6728(1977年)の方法に準拠して測定できる。通常のポリビニルアルコールは、例えば、5つのビニルアルコール単位が連続したセグメントがあった場合に、このセグメントの両端で、ビニルアルコール単位が2つずつアセタール化されると、孤立した中央のビニルアルコール単位の有する水酸基はアセタール化されずに残ることになる。本発明で用いられるヒドロキシメチル基含有ビニルアルコール系重合体であれば、5つの連続したセグメントの端から2,3,4番目のいずれかに式(1)で示される構造単位が存在すれば、このセグメントの両端でビニルアルコール単位がアセタール化されたとしても、このセグメントの中央の孤立したビニルアルコール単位(又は、式(1)で示される構造単位)の水酸基は、隣接する単位間で(又は、式(1)で示される構造単位内で)、さらにアセタール化することができる。その結果、アセタール化度を高めることができる。
さらに、アセタール化反応の進行にともなって、アセタール環の組み換えが起こるが、組み換えが起こりうる水酸基の選択肢が多いことも、本発明のフィルムに含有されるビニルアセタール系重合体(B)のアセタール化度が高まりやすい理由である。
ヒドロキシメチル基含有ビニルアルコール系重合体(A)をアセタール化する方法としては、例えば、(1)ヒドロキシメチル基含有ビニルアルコール系重合体(A)を水に加熱溶解して5〜30質量%の濃度の水溶液を調製し、これを5℃〜50℃まで冷却した後、所定量のアルデヒドを加えて−10℃〜30℃まで冷却し、酸を添加することにより水溶液のpHを1以下にしてアセタール化を開始する方法、(2)ヒドロキシメチル基含有ビニルアルコール系重合体(A)を水に加熱溶解して5〜30質量%の濃度の水溶液を調製し、これを5℃〜50℃まで冷却し、酸を添加することにより水溶液のpHを1以下にした後、−10℃〜30℃まで冷却し、所定量のアルデヒドを加えてアセタール化を開始する方法等が挙げられる。
アセタール化に用いるアルデヒドとしては、例えば、ホルムアルデヒド(パラホルムアルデヒドを含む)、アセトアルデヒド(パラアセトアルデヒドを含む)、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、2−エチルブチルアルデヒド、バレルアルデヒド、ピバルアルデヒド、アミルアルデヒド、ヘキシルアルデヒド、ヘプチルアルデヒド、2−エチルヘキシルアルデヒド、オクチルアルデヒド、ノニルアルデヒド、デシルアルデヒド、ドデシルアルデヒド等の脂肪族アルデヒド;シクロペンタンアルデヒド、メチルシクロペンタンアルデヒド、ジメチルシクロペンタンアルデヒド、シクロヘキサンアルデヒド、メチルシクロヘキサンアルデヒド、ジメチルシクロヘキサンアルデヒド、シクロヘキサンアセトアルデヒド等の脂環族アルデヒド;シクロペンテンアルデヒド、シクロヘキセンアルデヒド等の環式不飽和アルデヒド;ベンズアルデヒド、2−メチルベンズアルデヒド、3−メチルベンズアルデヒド、4−メチルベンズアルデヒド、ジメチルベンズアルデヒド、メトキシベンズアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、β−フェニルプロピオンアルデヒド、クミンアルデヒド、ナフチルアルデヒド、アントラアルデヒド、シンナムアルデヒド、クロトンアルデヒド、アクロレインアルデヒド、7−オクテン−1−アール等の芳香族又は不飽和結合含有アルデヒド;フルフラール、メチルフルフラール等の複素環アルデヒド等が挙げられる。
これらのうち、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、ヘキシルアルデヒド及びベンズアルデヒドからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましく、ブチルアルデヒドが特に好ましい。このようなアルデヒドを用いることで、ヒドロキシメチル基含有ビニルアルコール系重合体(A)のアセタール化をより効率よく行うことができる。
また、本発明の効果を損なわない範囲で、水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、アミノ基等の官能基を有するアルデヒドを使用してアセタール化を行ってもよい。或いは、該官能基を保護された基として有するアルデヒドを使用してアセタール化を行ってもよい。
アセタール化に用いる酸としては、特に限定されないが、例えば酢酸、パラトルエンスルホン酸、硝酸、硫酸、塩酸等が挙げられる。これらの中でも塩酸、硫酸、硝酸が好ましく、塩酸、硝酸がより好ましく、これらを2種以上併用してもよい。
また、アセタール化の反応に要する時間としては、通常1時間〜10時間程度であり、反応は攪拌下に行うことが好ましい。また、上述した温度条件でアセタールを行った場合に、ビニルアセタール系重合体のアセタール化度が上昇しない場合には、50℃〜80℃程度の高い温度で反応を継続してもよい。
アセタール化後に得られる粒状の反応生成物を濾別してこれを水で十分に洗浄し、アルカリ等の中和剤を添加し、洗浄、乾燥することにより、目的とするビニルアセタール系重合体が得られる。中和剤として用いられるアルカリ化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。
このようにして製造された本発明のビニルアセタール系重合体は、少なくとも式(1)または式(2)で示される構造単位を含む。式(2)は、ビニルアルコール単位と式(1)で示される構造単位がアセタール化反応をすることにより得られる構造単位である。R1は、水素、メチル基、エチル基、プロピル基、ペンチル基又はフェニル基であることが好ましく、プロピル基であることが特に好ましい。
本発明のフィルムにおいて、前記ビニルアセタール系重合体と共に可塑剤を用いることも本発明の好適な実施態様である。前記可塑剤としては、本発明の効果を損なわず、ビニルアセタール系重合体との相溶性に問題がなければ特に制限はない。可塑剤として、両末端に水酸基を有するオリゴアルキレングリコールとカルボン酸とのモノまたはジエステル、ジカルボン酸と水酸基含有化合物とのジエステルなどを用いることができる。これらは単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。両末端に水酸基を有するオリゴアルキレングリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,2−プロピレングリコールの二量体および三量体、1,3−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコールの二量体および三量体、1,2−ブチレングリコール、1,2−ブチレングリコールの二量体および三量体、1,4−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコールの二量体および三量体、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,2−オクタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,2−デカンジオール、1,4−シクロヘキサンジオールなどが挙げられる。カルボン酸としては、酢酸、プロパン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、2−エチルヘキサン酸、ノナン酸、デカン酸などが挙げられる。ここで、オリゴアルキレングリコールとカルボン酸との組み合わせは任意であり、複数のオリゴアルキレングリコールと複数のカルボン酸との組み合わせでも良い。これらの中でも、トリエチレングリコールと2−エチルヘキサン酸のモノエステルおよびジエステルが取り扱い性(成形時の揮発性)などの観点で好ましい。特にトリエチレングリコール−ジ2−エチルヘキサノエートが好ましい。また、ジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸などのアルキレンジカルボン酸や、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸などの芳香族ジカルボン酸などが挙げられる。水酸基含有化合物としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、2−エチルヘキサノール、ノナオール、デカノール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−プロポキシエタノール、2−ブトキシエタノールなどが挙げられる。ここで、ジカルボン酸と水酸基含有化合物の組み合わせは任意であり、複数のジカルボン酸と複数の水酸基含有化合物との組み合わせでも良い。
フィルム中の可塑剤の添加量は、特に制限はないが、ビニルアセタール系重合体100質量部に対して好ましくは0〜200質量部、より好ましくは2〜150質量部、更に好ましくは5〜100質量部である。可塑剤の添加量が200質量部を超える場合には、可塑剤がブリードアウトしやすくなることがある。特にフィルムを合わせガラス用中間膜の少なくとも一層として用いる場合の上記可塑剤の添加量は、ビニルアセタール系重合体100質量部に対して好ましくは5〜100質量部、より好ましくは10〜90質量部、更に好ましくは15〜80質量部である。可塑剤添加量が5質量部未満である場合には、合わせガラス用中間膜として所望の柔軟性が得られない場合がある。100質量部を超える場合には、所望する力学物性、特に合わせガラスの高温下での耐クリープ性などが低下する場合がある。
本発明のフィルムは、本発明の主旨に反しない限り、酸化防止剤、紫外線吸収剤、接着性調整剤、顔料、染料、その他従来公知の添加剤を含んでいても良い。
上記酸化防止剤としては、その種類は特に限定されないが、例えばフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤などが挙げられ、これらの中でもフェノール系酸化防止剤が好ましく、アルキル置換フェノール系酸化防止剤が特に好ましい。
フェノール系酸化防止剤の例としては、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2,4−ジt−アミル−6−(1−(3,5−ジt−アミル−2−ヒドロキシフェニル)エチル)フェニルアクリレートなどのアクリレート系化合物;2,6−ジt−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジt−ブチル−4−エチルフェノール、オクタデシル−3−(3,5−)ジt−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデン−ビス(6−t−ブチル−m−クレゾール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、ビス(3−シクロヘキシル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)メタン、3,9−ビス(2−(3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ)−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジt−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス(メチレン−3−(3’,5’−ジt−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)メタン、トリエチレングリコールビス(3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート)などのアルキル置換フェノール系化合物;6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジt−ブチルアニリノ)−2,4−ビス−オクチルチオ−1,3,5−トリアジン、6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルアニリノ)−2,4−ビス−オクチルチオ−1,3,5−トリアジン、6−(4−ヒドロキシ−3−メチル−5−t−ブチルアニリノ)−2,4−ビス−オクチルチオ−1,3,5−トリアジン、2−オクチルチオ−4,6−ビス−(3,5−ジt−ブチル−4−オキシアニリノ)−1,3,5−トリアジンなどのトリアジン基含有フェノール系化合物などが挙げられる。
リン系酸化防止剤としては、例えば、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2−t−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、トリス(シクロヘキシルフェニル)ホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジt−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10−(3,5−ジt−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10−デシロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレンなどのモノホスファイト系化合物;4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−ジトリデシルホスファイト)、4,4’−イソプロピリデン−ビス(フェニル−ジアルキル(C12〜C15)ホスファイト)、4,4’−イソプロピリデン−ビス(ジフェニルモノアルキル(C12〜C15)ホスファイト)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ジトリデシルホスファイト−5−t−ブチルフェニル)ブタン、テトラキス(2,4−ジt−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンホスファイトなどのジホスファイト系化合物が挙げられる。中でもモノホスファイト系化合物が好ましい。
硫黄系酸化防止剤としては、例えば、ジラウリル3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル3,3’−チオジプロピオネート、ラウリルステアリル3,3’−チオジプロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス−(β−ラウリル−チオプロピオネート)、3,9−ビス(2−ドデシルチオエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンが挙げられる。
これらの酸化防止剤は単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。酸化防止剤の配合量は、特に制限はないが、ビニルアセタール系重合体100質量部に対して好ましくは0.001〜5質量部、より好ましくは0.01〜1質量部である。
また、本発明のフィルムは、紫外線吸収剤を含んでいても良い。使用される紫外線吸収剤としては、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α’−ジメチルベンジル)フェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジt−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジt−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジt−アミル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤;2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルベンゾエート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−2−(3,5−ジt−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロネート、4−(3−(3,5−ジt−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ)−1−(2−(3−(3,5−ジt−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ)エチル)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなどのヒンダードアミン系紫外線吸収剤;2,4−ジt−ブチルフェニル−3,5ジt−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、ヘキサデシル−3,5−ジt−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエートなどのベンゾエート系紫外線吸収剤;マロン酸[(4−メトキシフェニル)−メチレン]−ジメチルエステル等のマロン酸エステル系紫外線吸収剤、2−エチル−2’−エトキシ−オキサルアニリド等のシュウ酸アニリド系紫外線吸収剤などが挙げられる。これらの紫外線吸収剤は単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。フィルム中の紫外線吸収剤の含有量は、特に制限はないが、紫外線吸収剤の合計が質量基準で10〜50,000ppmであることが好ましく、100〜10,000ppmの範囲であることがより好ましい。添加量が10ppmより少ないと十分な効果が発現しないことがあり、また50,000ppmより多くしても含有量を増やすことによる効果の向上が望めない。
本発明のフィルムのガラス転移温度は特に限定されず、目的に応じて適宜選択可能であるが、0〜50℃の範囲であることが好ましく、0〜45℃であることがより好ましく、0〜40℃であることがさらに好ましい。特に本発明のビニルアセタール系重合体組成物をシート状に成形して合わせガラス中間膜として使用する場合にガラス転移温度が上記範囲であることが好ましい。
前記フィルムを少なくとも一層として有する合わせガラス用中間膜も本発明の好適な実施態様である。前記中間膜には、本発明のフィルムのみからなる合わせガラス用中間膜も含まれる。本発明の合わせガラス用中間膜を、ガラスとの接着性を適切に調節する必要がある用途に使用する場合、前記フィルムを構成する組成物には接着性調整剤が含有されていてもよい。接着性調整剤としては従来公知のものが使用可能であるが、例えば酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ヘキサン酸、2−エチルブタン酸、2−エチルヘキサン酸などの有機酸のナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩などが用いられる。これらは単独で、あるいは2種類以上を組み合わせて使用できる。接着性調整剤の最適な含有量は、使用する接着性調整剤により異なるが、得られるフィルムのガラスへの接着力が、パンメル試験(Pummel test;国際公開公報第WO2003/033583号等に記載)において一般には3〜10になるように調整することが好ましい。特に高い耐貫通性を必要とする場合は3〜6になるように含有量を調整することが好ましく、高いガラス飛散防止性を必要とする場合は7〜10になるように含有量を調整することが好ましい。高いガラス飛散防止性が求められる場合は、接着性調整剤を添加しないことも有用な方法である。通常、フィルムを構成する組成物中の接着性調整剤の含有量としては、0.0001〜1質量%であることが好ましく、0.0005〜0.1質量%がより好ましく、0.001〜0.03質量%が更に好ましい。
また、上記接着性を調整するための他の調整剤としてはシランカップリング剤が挙げられる。フィルムを構成する組成物中のシランカップリング剤の含有量は、0.01〜5質量%が好ましい。
本発明のフィルムは透明性および柔軟性に優れる。そのため、合わせガラス用中間膜として好適に使用される。本発明のフィルムの厚さは特に限定されないが、0.05〜5.0mmであることが好ましく、0.1〜2.0mmであることがより好ましく、0.1〜1.2mmであることがさらに好ましい。
本発明のフィルムは、前記ビニルアセタール系重合体(B)、前記可塑剤、及びその他の成分を従来公知の方法で混合して得られた組成物を製膜することで得ることができる。例えば、前記ビニルアセタール系重合体(B)、可塑剤及びその他の成分を有機溶剤に溶解又は分散させたものを製膜した後、前記有機溶剤を留去する方法;押出機等を用いてその他の成分を可塑剤に溶解あるいは分散させたものをビニルアセタール系重合体(B)と共に溶融混練し、製膜する方法などが挙げられる。公知の製膜方法の中でも特に押出機を用いて製膜する方法が好適に用いられる。押出し時の樹脂温度は150〜250℃が好ましく、170〜230℃がより好ましい。樹脂温度が高くなりすぎるとビニルアセタール系重合体が分解を起こし、製膜後の中間膜中の揮発性物質の含有量が多くなる。逆に温度が低すぎると、押出機での揮発分除去が不十分となり、製膜後の中間膜中の揮発性物質の含有量は多くなる。揮発性物質を効率的に除去するためには、押出機内を減圧することによりベント口から揮発性物質を除去することが好ましい。
本発明のフィルムの表面の形状は特に限定されないが、合わせガラス用中間膜として用いる場合は特に、ガラスとラミネートする際の取り扱い性(泡抜け性)を考慮すると、ガラスと接触する面にメルトフラクチャー、エンボスなど、従来公知の方法で凹凸構造が形成されていることが好ましい。エンボス高さについては特に制限はないが、5μm〜500μmであることが好ましく、7μm〜300μmであることがより好ましく、10μm〜200μmであることが更に好ましい。エンボス高さが5μmに満たない場合には、ガラスへのラミネートの際にガラスと中間膜との間にできる気泡を効率よく除去できない場合があり、500μmを超える場合にはエンボスの形成が難しい。またエンボスをフィルムの片面に施してもよいし、両面でもよいが、通常、両面に施すのが好ましい。
エンボスの凹凸模様は、上述した特定の条件を満たすものであれば特に限定されず、規則的に分布していてもよく、ランダムに分布していてもよい。
このようなエンボスを形成するには、従来と同様に、エンボスロール法、異形押出法、
メルトフラクチャーを利用した押出リップエンボス法等が採用される。特に均一で微細な凹凸が形成されたエンボスフィルムを安定的に得るにはエンボスロール法が好適である。
エンボスロール法で用いられるエンボスロールは例えば、所望の凹凸模様を有する彫刻ミル(マザーミル)を用い、この凹凸模様を金属ロール表面に転写することにより作製できる。また、レーザーエッチングを用いても作製できる。さらに上記のようにしてロール表面に微細な凹凸模様を形成した後、その表面に酸化アルミニウムや酸化珪素やガラスビ−ズなどの研削材を用いてブラスト処理を行ってさらに微細な凹凸模様を形成することもできる。
またエンボスロール法で用いられるエンボスロールは離形処理を施すことが好ましい。離形処理がないロールを用いた場合、条件によってはロールから剥離できないトラブルが発生しやすい。離形処理はシリコーン処理、テフロン(登録商標)処理、プラズマ処理、等の公知の技術が利用できる。
本発明のフィルムを少なくとも一層として有する合わせガラス用中間膜を有する合わせガラスが本発明の好適な実施態様である。本発明の合わせガラスは、本発明の中間膜を少なくとも2枚のガラス板で挟み、中間膜を加熱し接着させることによって製造することができる。本発明の合わせガラスに使用するガラスは特に限定されず、フロート板ガラス、強化板ガラス、磨き板ガラス、型板ガラス、網入り板ガラス、熱線吸収板ガラスなどの無機ガラスのほか、ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネートなどの従来公知の有機ガラス等が使用できる。これらは無色、有色、あるいは透明、非透明のいずれであってもよい。また、これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。ガラスの厚みは特に限定されないが、100mm以下であることが好ましい。上記ガラスの形状については特に制限はなく、単純な平面状の板ガラスであっても、自動車フロントガラスなどの曲率を有するガラスであっても良い。
本発明の合わせガラスは従来公知の方法で製造が可能であり、例えば真空ラミネーター装置を用いる方法、真空バッグを用いる方法、真空リングを用いる方法、ニップロールを用いる方法等が挙げられる。またこれらの方法を用いて仮圧着させた後に、得られた積層体をオートクレーブに投入する方法も挙げられる。
真空ラミネーター装置を用いる場合、その作製条件の一例を示すと、1×10−6〜3×10−2MPaの減圧下、100〜200℃、特に130〜160℃の温度でガラスと中間膜がラミネートされる。真空バッグまたは真空リングを用いる方法は、例えば、欧州特許第1235683号明細書に記載されており、例えば約2×10−2MPaの圧力下、130〜145℃でラミネートされる。
ニップロールを用いた製造方法としては、フィルムを構成する組成物の流動開始温度以下の温度でロールにより脱気した後、さらに流動開始温度に近い温度で圧着を行う方法が挙げられる。具体的には、例えば、赤外線ヒーターなどで30〜70℃に加熱した後、ロールで脱気し、さらに50〜120℃に加熱した後ロールで圧着させる方法が挙げられる。
上述の方法を用いて圧着させた後にオートクレーブに投入してさらに圧着を行う場合、オートクレーブ工程の運転条件は、合わせガラスの厚さや構成により適宜選択されるが、例えば1.0〜1.5MPaの圧力下、130〜145℃の温度で0.5〜3時間処理することが好ましい。
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。以下、ビニルアルコール系重合体をPVAと略記することがある。また、ビニルアセタール系重合体をVAPと略記することがある。なお、実施例、比較例中の「%」及び「部」は特に断りのない限り、それぞれ「質量%」及び「質量部」を表す。
<ビニルアルコール系共重合体の評価>
各実施例及び比較例で得られたビニルアルコール系共重合体について、以下の方法で評価を行った。
(重合度)
ビニルアルコール系共重合体の粘度平均重合度PをJIS K6726に準じて測定した。けん化度が99.5モル%未満の場合には、けん化度99.5モル%以上になるまで、再けん化したビニルアルコール系重合体1gを水100mlに加えて加熱溶解し、30℃まで冷却した。得られた水溶液を粘度計に量り採り、30℃で測定した極限粘度[η](g/dl)を測定した。極限粘度[η]から、下記の式(a)により粘度平均重合度(P)を算出した。
(変性量の測定)
ビニルアルコール系重合体の一次構造については、500MHzの1H−NMRにより測定した。より具体的には、ビニルアルコール系重合体0.3mgを3mlの重水素化DMSOに溶解して、核磁気共鳴装置(日本電子株式会社製、LAMDA500)を用いて1H−NMRの測定を実施した。得られたスペクトルから、ビニルアルコール系重合体の全構造単位に対する式(1)に示される構造単位の導入量(変性量)を測定した。
(けん化度の測定)
ビニルアルコール系共重合体について、JIS K6726に記載されている、けん化度の測定方法により測定した。
<ビニルアセタール系重合体の評価>
各実施例及び比較例で得られたビニルアセタール系重合体について、以下の方法で評価を行った。
(アセタール化度の測定)
ビニルアセタール系重合体のアセタール化度をJIS K6728に記載された方法に準拠して分析した。
(可塑剤との相溶性)
合成したポリビニルアセタール(ビニルアセタール系重合体)の粉体50質量部と、可塑剤としてトリエチレングリコール−ジ2−エチルヘキサノエート19質量部とを、株式会社東洋精機製作所製ラボプラストミル「Cモデル」を用い、170℃、50rpmにて5分間溶融混練した。溶融混練中、容器内に窒素(100mL/分)を吹き込み続けた。得られた混練物を150℃、5MPa、30分間熱プレスして、厚み800μmのフィルムを作製した。得られたフィルムを23℃28%RH下で1週間放置し、表面に可塑剤がブリードするか否かを観察した。
(合わせガラスの耐クリープ性)
前記(可塑剤との相溶性)と同様の条件にて、フィルムを作製した。得られたフィルムを厚さ3mmの2枚の透明なガラス板(30cm×20cm)の間に挟み、ガラス板とシートの間の空気を押出しながら110℃にてプレスロールを通すことにより予備接着を行った。予備接着後の積層体をオートクレーブにて135℃、1.2MPaで30分間静置することにより合わせガラスを作製した。但し、この際に、ガラス板の長辺部を意図的に5cmずらして合わせガラスを作製した。従って、フィルムで合わされたガラスとフィルムの接触面の大きさは、(25cm×20cm)となるように作製した(図1)。得られた合わせガラスを図1のように垂直になるよう設置し、90℃および110℃の乾燥機中に2週間静置し、床面と接触していないガラスの自重によりガラスがずれた距離(図1の3a)を測定した。
[実施例1]
攪拌機、還流冷却管、アルゴン導入管、開始剤の添加口を備えた反応器に、酢酸ビニル640g、メタノール223g、コモノマーとして1,3−ジアセトキシ−2−メチレンプロパン(DAMP)6.43gを仕込み、アルゴンバブリングをしながら30分間系内をアルゴン置換した。反応器の昇温を開始し、内温が60℃となったところで、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.15gを添加し、重合を開始した。60℃で218分重合した後、冷却して重合を停止した。重合停止時の重合率は40%であった。続いて、30℃、減圧下でメタノールを時々添加しながら未反応のモノマーの除去を行い、酢酸ビニル−1,3−ジアセトキシ−2−メチレンプロパン共重合体(DAMP変性PVAc)のメタノール溶液(濃度33.5%)を得た。
次に、このメタノール溶液149g(溶液中のDAMP変性PVAcは50gである)にメタノール95.8gを加え、さらに、4.72gの水酸化ナトリウムメタノール溶液(濃度13.3%)を添加して、40℃でけん化を行った(けん化溶液のDAMP変性PVAcの濃度は20%であり、DAMP変性PVAc中の酢酸ビニル単位に対する水酸化ナトリウムのモル比は0.03である)。水酸化ナトリウムメタノール溶液を添加した後、約7分でゲル化物が生成したので、これを粉砕機にて粉砕し、さらに40℃で53分間放置してけん化を進行させた後、酢酸メチル200gを加えて残存するアルカリを中和した。フェノールフタレイン指示薬を用いて中和が終了したことを確認した後、濾別して白色固体を得た。得られた白色固体にメタノール500gを加えて、1時間加熱還流した。上記の洗浄操作を3回繰り返した後、遠心脱水して得られた白色固体を真空乾燥機にて、40℃で24時間乾燥させ、式(1)で示される構造単位を含むヒドロキシメチル基含有ビニルアルコール系重合体PVA−1を得た。重合度は1700、けん化度は98.7モル%、変性量(すなわち、ヒドロキシメチル基含有ビニルアルコール系重合体における式(1)に示される構造単位の含有率)は0.9モル%であった。PVA−1の分析値を表2に示す。
(ビニルアセタール系重合体の合成)
480gのPVA−1を、5,520mLの水中に投入し、撹拌しながら溶液の温度を90℃まで昇温して溶解させた後、30℃まで冷却した。この水溶液に20%濃度の塩酸水溶液400gを添加した。その後、水溶液を14℃まで冷却し、ブチルアルデヒド267gを10分間かけて滴下して反応を開始させた。14℃で40分間反応を行った後、約0.6℃/分の昇温速度で65℃まで昇温し、65℃で300分間維持した。その後、反応溶液を室温まで冷却し、析出した粒状物を濾別してこれを水で十分に洗浄した。得られた生成物を0.3%水酸化ナトリウム溶液に投入し、70℃に加温して中和した。引き続き、水で洗浄してアルカリ性化合物を除去した後、生成物を乾燥し、ビニルアセタール系重合体(VAP−1)を得た。得られたビニルアセタール系重合体のアセタール化度をJIS K6728に記載された方法に準拠して分析したところ、71.5モル%であった。
VAP−1をビニルアセタール系重合体として用いて上記(可塑剤と相溶性)の条件によりフィルムを作製し、可塑剤との相溶性並びに合わせガラスの90℃および110℃の耐熱クリープを評価した。結果を表2に示す。
[実施例2〜7]
酢酸ビニル及びメタノールの仕込み量、重合時に使用するコモノマーの種類や添加量等の重合条件、けん化時における変性PVAcの濃度、酢酸ビニル単位に対する水酸化ナトリウムのモル比等のけん化条件を表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様の方法により、PVA−2〜PVA−7を製造した。各PVAの分析値を表2に示す。
PVA−1の代わりにPVA−2〜PVA−7をそれぞれ用い、添加するブチルアルデヒドの量を表2に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして、ビニルアセタール系重合体VAP−2〜VAP−7を得た。VAP−2〜VAP−7の分析値、および実施例1と同様にして作製した、VAP−2〜VAP−7を含有するフィルムの評価結果を表2に示す。
[比較例1]
攪拌機、還流冷却管、アルゴン導入管、開始剤の添加口を備えた反応器に、酢酸ビニル700g、メタノール300gを仕込み、アルゴンバブリングをしながら30分間系内をアルゴン置換した。反応器の昇温を開始し、内温が60℃となったところで、AIBN0.25gを添加し重合を開始した。60℃で180分重合した後、冷却して重合を停止した。重合停止時の重合率は40%であった。続いて、30℃、減圧下でメタノールを時々添加しながら未反応のモノマーの除去を行い、ポリ酢酸ビニル(PVAc)のメタノール溶液(濃度30%)を得た。
次に、これにメタノールを加えて調製したPVAcのメタノール溶液497g(溶液中のPVAc100gである)に、14.0gの水酸化ナトリウムメタノール溶液(濃度10.0%)を添加して、40℃でけん化を行った(けん化溶液のPVAc濃度は20%であり、PVAc中の酢酸ビニル単位に対する水酸化ナトリウムのモル比は0.03である)。水酸化ナトリウムメタノール溶液を添加した後、約1分でゲル化物が生成したので、これを粉砕機にて粉砕し、さらに40℃で59分間放置してけん化を進行させた後、酢酸メチル500gを加えて残存するアルカリを中和した。フェノールフタレイン指示薬を用いて中和が終了したことを確認した後、濾別して白色固体を得た。得られた白色固体にメタノール2000gを加えて1時間加熱還流した。上記の洗浄操作を3回繰り返した後、遠心脱水して得られた白色固体を真空乾燥機にて、40℃で24時間乾燥させ、無変性のポリビニルアルコールPVA−C1を得た。重合度は1700、けん化度は98.5モル%であった。分析値を表2に示す。また、PVA−1の代わりにPVA−C1を用い、添加するブチルアルデヒドの量を表2に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にしてビニルアセタール系重合体VAP−C1を得た。VAP−C1の分析値、および実施例1と同様にして作製したフィルムの評価結果を表2に示す。
[比較例2]
酢酸ビニル単位に対する水酸化ナトリウムのモル比を表1に示すように変更して、水酸化ナトリウムメタノール溶液を添加したこと以外は、比較例1と同様にして無変性のポリビニルアルコールPVA−C2を製造した。物性を表2に示す。また、PVA−1の代わりにPVA−C2を用いた以外は、実施例1と同様にしてビニルアセタール系重合体VAP−C2を得た。VAP−C2の評価結果を表2に示す。
[比較例3]
アセタール化反応において、添加するブチルアルデヒドの量を表2に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして、ビニルアセタール系重合体VAP−C3を得た。VAP−C3の分析値、および実施例1と同様にして作製したフィルムの評価結果を表2に示す。
[比較例4]
アセタール化反応において、添加するブチルアルデヒドの量を表2に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして、ビニルアセタール系重合体VAP−C4を得た。VAP−C4の分析値、および実施例1と同様にして作製したフィルムの評価結果を表2に示す。
表2の評価結果より、本発明の規定を満たす実施例1〜7のフィルムは、可塑剤との相溶性に優れ、かつ、合わせガラスとしたときの耐熱クリープ性に優れていた。一方で本発明の規定を満たさない比較例1〜4は、可塑剤との相溶性または合わせガラスとしたときの耐熱クリープ性が劣るものとなった。