以下の実施の形態において、便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。
また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。
また、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
また、「Aからなる」、「Aよりなる」、「Aを有する」、「Aを含む」と言うときは、特にその要素のみである旨明示した場合等を除き、それ以外の要素を排除するものでないことは言うまでもない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
また、以下の実施の形態で用いる図面においては、平面図であっても図面を見易くするためにハッチングを付す場合もある。また、以下の実施の形態を説明するための全図において、同一機能を有するものは原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。以下、本実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
また、以下の実施の形態においては、被エッチング膜を加工する際に用いる自己組織化材料のPS材料からなるパターンを「マスクパターン」と言い、マスクパターンを用いて加工された被エッチン膜のパターンを「回路パターン」と言う。
まず、実施の形態によるドライ現像におけるプラズマ処理方法がより明確になると思われるため、本発明者らが比較検討を行ったドライ現像におけるプラズマ処理方法の課題について説明する。
一般に、半導体製造工程では、リソグラフィ技術が用いられる。基板上に膜を形成し、この膜上にレジスト材料を塗布した後、露光装置によって紫外線等を照射する。これにより、マスクに描画されたパターンをレジスト材料に転写し、さらに現像を行うことにより、レジスト材料からなるマスクパターンが形成される。
LSI(Large Scale Integration)の微細化に対応するため、露光装置の解像度の向上が進められている。一般には、露光波長(λ)、レンズ開口数(NA)、並びにレジスト性能および転写プロセスによって決まるプロセス定数(k1)等の改善が実施されている。また、ArFレーザ(λ=193nm)の採用による露光波長の短波長化、および液浸露光技術によるレンズ開口数(NA)の改善等が実施されている。
さらに、露光パターンの最小ピッチを拡大してプロセス定数(k1)を改善するダブルパターニング技術が採用されている。ダブルパターニング技術に関しては、露光および現像に様々な方法が提案されている。例えば露光を2回続けて行う2重露光法、1回目の露光後に被エッチング膜をエッチングし、その後2回目の露光を行う方法、および露光によりハードマスクを形成した後にスペーサを成膜し、そのスペーサをマスクとして被エッチング膜をエッチングする自己整合法等がある。しかし、このダブルパターニング技術は、工程数の増加、スループットの低下、および製造コストの増大という課題を有する。
そこで、近年、自己組織化材料を用いたDSA(Directed Self Assembly)技術によりマスクパターンを形成する方法が検討されている。自己組織化材料では、特別な露光装置を必要とせず、材料自体の相分離を利用してマスクパターンを形成することができる。
自己組織化材料としては親水性部分と疎水性部分とが化学的に結合したジブロックコポリマーが使用され、代表的なものとしてはPMMA材料とPS材料とが化学的に結合したジブロックコポリマーがある。PMMA材料とPS材料との体積分率、および鎖長を変化させることによって、形成されるパターンタイプが変わる。マスクパターンを形成する工程は、塗布前の基板処理と塗布後のベークのみであり、極めてシンプルである。その後、プラズマを用いてPMMA材料を除去して、PS材料からなるマスクパターンを形成する。この工程はドライ現像と呼ばれる。
PMMA材料とPS材料とが化学的に結合したジブロックコポリマーを用いたドライ現像については、例えば前記特許文献1〜3などに記載されている。PMMA材料およびPS材料はプラズマエッチング耐性が極めて低い材料であるが、両者のわずかな組成の違いを利用して選択的にPMMA材料を除去して、PS材料からなる所定形状のマスクパターンを形成している。例えばプラズマの主成分ガスに酸素(O2)ガスを添加して、その流量を制御することにより、PS材料に比べてPMMA材料のエッチングレートを高くするドライ現像が採用されている。
ジブロックコポリマーを用いたDSA技術では、例えば以下に説明する方法によって、所望する寸法の微細なマスクパターンを形成している。まず、マスクに描画されたパターンを転写したい被エッチング膜上に下地膜を塗布する。続いて、この下地膜上にジブロックコポリマーを塗布した後、ベーク炉等を用いてジブロックコポリマーに熱アニールを実施する。その後、プラズマを用いてPMMA材料を除去することにより(ドライ現像)、PS材料からなる微細なマスクパターンを形成する。
ジブロックコポリマーを単純に塗布しただけでは、PMMA材料とPS材料とは無秩序に並んでいる。しかし、PMMA材料とPS材料とが無秩序に並んだこのジブロックコポリマーに対して熱アニールを実施すると、PMMA材料同士またはPS材料同士がそれぞれ集まる自己組織化現象が起こり、マスクパターンとなる周期構造が形成される。従って、上記熱アニールを実施する際に、PMMA材料同士またはPS材料同士がそれぞれ集まり自己組織化するためには、PMMA材料とPS材料との相互作用パラメータの値が大きくなければならない。この相互作用パラメータの値が大きい場合に、PMMA材料とPS材料とは完全に相分離して、周期構造が形成される。
しかしながら、ジブロックコポリマーを用いたDSA技術については、以下に説明する種々の技術的課題が存在する。
すなわち、実際のジブロックコポリマーでは、上記相互作用パラメータが理想的な値にならず、PMMA材料とPS材料とが完全に相分離しない。つまり、PMMA材料のパターン領域(回路設計上、PMMA材料のみが形成される本来のパターン領域を言う)にPS材料が混在することがある。このため、ドライ現像において、PMMA材料のパターン領域のエッチングが進行せず、所定形状のマスクパターンが得られない。
1.第1の課題
ジブロックコポリマーの下地膜には中性層が用いられ、この中性層は、PMMA材料およびPS材料に対して、完全に中性の状態を保っていることが理想的である。しかし、実際には、中性層は完全に中性の状態を保つことが難しく、ジブロックコポリマーと中性層との界面付近で、例えばPMMA材料またはPS材料の組成濃度が高くなるような現象が観察される。つまり、ドライ現像において、PMMA材料のパターン領域と中性層との界面付近においてPS材料の組成濃度が高くなり、PS材料に対して選択的にPMMA材料のエッチングを進行させるドライ現像を適用しても、PMMA材料のパターン領域のエッチングが進行せず、エッチングストップまたはエッチング残渣と呼ばれる現象が生じる。このような中性層との界面付近における不完全な相分離は、中性層との界面付近で一様に発生せず、熱アニールを実施した際に形成されるPMMA材料とPS材料とが交互に形成された第1方向と中性層の上面で直交する第2方向に確認されることが多い。
2.第2の課題
熱アニールを実施した際に、ジブロックコポリマーの上面(下地膜と接する界面と反対側の面)と接する雰囲気、例えば大気またはパージガスは、PMMA材料およびPS材料に対して、完全に中性の雰囲気を保っていることが理想的である。しかし、実際には、ジブロックコポリマーの上面と接する雰囲気は完全に中性の雰囲気を保つことが難しく、雰囲気に接するジブロックコポリマーの上面で、例えばPMMA材料またはPS材料の組成濃度が高くなるような現象が観察される。つまり、ドライ現像において、ジブロックコポリマーの上面のPMMA材料のパターン領域付近においてPS材料の組成濃度が高くなり、PS材料に対して選択的にPMMA材料のエッチングを進行させるドライ現像を適用しても、PMMA材料のパターン領域のエッチングが進行せず、エッチングストップと呼ばれる現象が生じる。なお、上記ジブロックコポリマーと中性層との界面付近で生じるPS材料の組成濃度の上昇と、上記ジブロックコポリマーの上面のPMMA材料のパターン領域付近で生じるPS材料の組成濃度の上昇とは、それぞれ単独で発生する現象である。
このように、ジブロックコポリマーを用いたDSA技術では、PMMA材料とPS材料との不完全な相分離が生じるため、PS材料に対して選択的にPMMA材料のエッチングを進行させるドライ現像を適用しても、所定形状のマスクパターンが得られない。そのため、このようなマスクパターンを用いて被エッチング膜をエッチングすると、被エッチング膜からなる回路パターンにパターン寸法の差等が生じて、半導体デバイスの特性に大きな影響を与え、半導体デバイスの歩留まりの低下を招く。なお、前記特許文献1〜3には、親水性部分と疎水性部分との不完全な相分離により形成されたマスクパターンに関するドライ現像についての記載はない。
本実施例1によるマイクロ波ECR(Electron Cyclotron Resonance)エッチング装置を用いたジブロックコポリマーのプラズマ処理方法を説明する。
図1を用いて、本実施例1によるプラズマ処理装置について説明する。図1は、本実施例1によるプラズマ処理装置の概略図である。
プラズマ処理装置は、チャンバ101、被処理基板102を配置するウエハ載置電極103、およびチャンバ101の上面に設置されたエッチングガスを導入するためのシャワープレート104(例えば石英製)とマイクロ波を透過する誘電体窓105(例えば石英製)を有し、密封することにより処理室106を形成する。処理室106の内部は高真空排気をすることができる。被処理基板102は、例えばシリコン基板上に被エッチング膜(例えば後述の図2(a)に示すように、多結晶シリコン膜および酸化膜(例えばSiO2膜)が下層から順に積層された積層膜)が形成された構造となっており、その被エッチング膜上にPMMA材料およびPS材料からなるパターンが形成されている。
シャワープレート104には、処理室106にエッチングガスを供給するためのガス供給装置107が接続されている。また、プラズマを生成するための電力を処理室106に伝送するため、誘電体窓105の上方には電磁波を放射する導波管108が設けられている。導波管108へ伝送される電磁波(プラズマ生成用高周波)は電磁波発生用電源109から発振される。電磁波の周波数は特に限定されないが、例えば2.45GHzのマイクロ波を使用することができる。処理室106の外周部には、磁場を形成する磁場発生コイル110が設けられており、電磁波発生用電源109から発振された電力は、形成された磁場との相互作用により、処理室106の内部に高密度プラズマ111を生成する。
また、処理室106の内部にプラズマを間欠的に生成させる場合、電磁波発生用電源109は、処理室106の内部へエネルギの供給を周期的に断ったり続けたりする。プラズマを間欠的に生成させるため、所定の時間範囲(例えば電磁波発生用電源の変調パルス信号がHigh値をとる開始時刻(オンになる開始時間)と終了時刻との間として表現した場合、1マイクロ秒から1秒等)で、電磁波発生用電源109からエネルギを供給し、プラズマを生成させ、処理室106の内部のイオンまたはラジカルの生成量を増加させる。また、プラズマを間欠的に生成させるため、所定の時間範囲(例えば電磁波発生用電源の変調パルス信号がLow値をとる開始時刻(オフになる開始時間)と終了時刻との間として表現した場合、1マイクロ秒から1秒等)で、電磁波発生用電源109からエネルギの供給を断ち、処理室106の内部のイオンおよびラジカルの生成量を低下させる。電磁波発生用電源109から供給するエネルギとしては、電磁波発生用電源109より発振される電力を用いる。電磁波発生用電源109にはパルス変調回路112が取り付けられている。
ウエハ載置電極103の表面は溶射膜(図示は省略)で被覆されている。ウェハ載置電極103には、高周波フィルター113を介して直流電源114が接続され、マッチング回路115を介して高周波電源(バイアス用高周波電源)116が接続されている。また、ウエハ載置電極103には、温度調整器(図示は省略)が接続されている。
処理室106の内部に搬送された被処理基板102は、直流電源114から印加される直流電圧の静電気力によってウエハ載置電極103上に吸着され、温度調整される。処理室106の内部にガス供給装置107によって所定のエッチングガスを供給した後、処理室106の内部を所定の圧力とし、処理室106の内部にプラズマを発生させる。ウエハ載置電極103に接続された高周波電源116からバイアス用高周波電力を印加することにより、プラズマから被処理基板102へイオンが引き込まれて、被処理基板102がプラズマ処理される。
次に、図2(a)を用いて、自己組織化材料を用いたリソグラフィ技術で形成されるマスクパターンの構造について説明する。図2(a)は、本実施例1による被処理基板の構造、並びにPMMA材料とPS材料とが化学的に結合したジブロックコポリマーからなるパターンを示す斜視図である。
被処理基板102は、シリコン基板201上に多結晶シリコン膜202および酸化膜(例えばSiO2膜)203が下層から順に積層された構造となっている。シリコン基板201は、例えばウエハと称する平面略円形状の半導体の薄板である。
酸化膜203上には、PMMA材料204とPS材料205とが化学的に結合したジブロックコポリマーからなるパターンが形成されており、PMMA材料204とPS材料205とを25nm程度の線幅(L)で相分離させている。なお、本実施例1では、シリコン基板201上には多結晶シリコン膜202および酸化膜203からなる積層膜を形成したが、これに限定されるものではない。
次に、図2(b)を用いて、自己組織化材料の成分および組成について説明する。図2(b)は、本実施例1によるジブロックコポリマーの分子構造の一例を示す図である。
自己組織化材料としては、親水性部分と疎水性部分とが化学的に結合したジブロックコポリマーが使用される。代表的なものが、PMMA材料とPS材料とが化学的に結合したジブロックコポリマーである。PMMA材料とPS材料との体積分率、および鎖長を変化させることによって、形成されるパターンタイプが変わる。PMMA材料およびPS材料はプラズマエッチング耐性が極めて低い材料であり、僅かな組成の違いを利用して選択的にエッチングを進行させることができる。
例えばPS材料に対して選択的にPMMA材料のエッチングが進行するプラズマを用いたドライ現像では、酸素(O2)ガスに不活性ガスを含んだ混合ガスを用い、酸素(O2)ガスの流量が全混合ガスの流量の20%未満としたプラズマ処理が用いられる。上記不活性ガスには、例えばアルゴン(Ar)ガス、窒素(N2)ガスまたはアルゴン(Ar)ガスと窒素(N2)ガスとの混合ガスが用いられる。酸素(O2)ガスの流量が全混合ガスの流量の20%以上になると、PMMA材料だけでなくPS材料のエッチングも進行するが、酸素(O2)ガスの流量が全混合ガスの流量の20%未満であれば、PS材料はエッチングされずPMMA材料だけ選択的にエッチングが進行する。
図3(a)は、熱アニール後のPMMA材料とPS材料の理想的な相分離状態を示す断面図である。
図3(a)に示すように、相分離する度合いの強さとして用いられる相互作用パラメータの値が大きい場合は、PMMA材料204とPS材料205とが完全に相分離したパターンが形成される。
図3(b)は、ドライ現像後の理想的な形状のマスクパターンを示す断面図である。
PMMA材料204とPS材料205との2つの相のわずかな組成の違いを利用して選択的にPMMA材料204をエッチングすることができる。前記図3(a)に示した完全に相分離したパターンに対してドライ現像を適用すると、図3(b)に示すように、選択的にPMMA材料204をエッチングして、PS材料205からなる所定形状のマスクパターンを形成することができる。
しかし、実際には、前述したように、PMMA材料とPS材料とが理想的に相分離して、前記図3(a)に示したような相分離状態となることは極めて少ない。すなわち、実際のジブロックコポリマーでは、相互作用パラメータの値は理想的に大きくなく、PMMA材料とPS材料とは完全に相分離しない。つまり、ドライ現像において、PMMA材料のパターン領域においてPS材料がある組成濃度で混在し、PS材料に対して選択的にPMMA材料のエッチングを進行させるドライ現像を適用しても、PMMA材料のパターン領域のエッチングが進行せず、エッチングストップと呼ばれる現象が生じて、所定形状のマスクパターンが得られない。
前記第1の課題で説明したように、ジブロックコポリマーの下地膜には中性層が用いられ、この中性層は、PMMA材料およびPS材料に対して、完全に中性の状態を保っていることが理想的である。しかし、実際には、中性層は完全に中性の状態を保つことが難しく、ジブロックコポリマーと中性層との界面付近で、例えばPMMA材料またはPS材料の組成濃度が高くなるような現象が観察される。
図4(a)は、ジブロックコポリマーと中性層との界面付近でPS材料の組成濃度が高くなった場合における熱アニール後のPMMA材料とPS材料の不完全な相分離状態を示す断面図である。
図4(a)に示すように、ドライ現像において、PMMA材料204のパターン領域と中性層301との界面付近においてPS材料205の組成濃度が高くなる場合がある。このような場合は、PS材料205に対して選択的にPMMA材料204のエッチングを進行させるドライ現像を適用しても、PMMA材料204のパターン領域のエッチングが進行せず、エッチングストップまたはエッチング残渣と呼ばれる現象が生じて、所定形状のマスクパターンが得られない。
図4(b)は、ジブロックコポリマーと中性層との界面付近でPS材料の組成濃度が高くなった場合におけるドライ現像後の不良形状のマスクパターンを示す断面図である。
図4(b)に示すように、PMMA材料204のパターン領域と中性層301との界面付近において、エッチングストップまたはエッチング残渣が発生している。このような中性層301との界面付近おける不完全な相分離は、中性層301との界面付近で一様に発生せず、熱アニールを実施した際に形成されるPMMA材料とPS材料とが交互に形成された第1方向と中性層の上面で直交する第2方向に確認されることが多い。
また、前記第2の課題で説明したように、熱アニールを実施した際に、ジブロックコポリマーの上面と接する雰囲気、例えば大気またはパージガスは、PMMA材料およびPS材料に対して、完全に中性の雰囲気を保っていることが理想的である。しかし、実際には、ジブロックコポリマーの上面と接する雰囲気は完全に中性の雰囲気を保つことが難しく、雰囲気に接するジブロックコポリマーの上面で、例えばPMMA材料またはPS材料の組成濃度が高くなるような現象が観察される。
図5(a)は、ジブロックコポリマーの上面のPMMA材料のパターン領域付近でPS材料の組成濃度が高くなった場合における熱アニール後のPMMA材料とPS材料の不完全な相分離状態を示す断面図である。
図5(a)に示すように、ドライ現像において、ジブロックコポリマーの上面のPMMA材料204のパターン領域付近においてPS材料205の組成濃度が高くなる場合がある。このような場合は、PS材料205に対して選択的にPMMA材料204のエッチングを進行させるドライ現像を適用しても、PMMA材料204のパターン領域のエッチングが進行せず、エッチングストップと呼ばれる現象が生じて、所定形状のマスクパターンが得られない。
図5(b)は、ジブロックコポリマーの上面のPMMA材料のパターン領域付近でPS材料の組成濃度が高くなった場合におけるドライ現像後の不良形状のマスクパターンを示す断面図である。
図5(b)に示すように、PMMA材料204のパターン領域において、エッチングストップが発生している。なお、上記PMMA材料204のパターン領域と中性層301との界面付近で生じるPS材料205の組成濃度の上昇と、上記ジブロックコポリマーの上面のPMMA材料204のパターン領域付近で生じるPS材料205の組成濃度の上昇とは、それぞれ単独で発生する現象である。
このように、ジブロックコポリマーを用いたDSA技術では、PMMA材料とPS材料との不完全な相分離により、所定形状のマスクパターンが得られない。
次に、本実施例1によるPMMA材料とPS材料とが化学的に結合したジブロックコポリマーに対するプラズマ処理方法を図6〜図11を用いて説明する。
<第1のプラズマ処理方法>
図6および図7は、本実施例1によるジブロックコポリマーと中性層との界面付近でPS材料の組成濃度が高くなった場合におけるプラズマエッチングを用いたドライ現像を説明する図である。図6(a)は、本実施例1によるジブロックコポリマーと中性層との界面付近でPS材料の組成濃度が高くなった場合におけるPMMA材料およびPS材料からなるパターンを示す断面図である。図6(b)は、本実施例1によるジブロックコポリマーと中性層との界面付近でPS材料の組成濃度が高くなった場合におけるドライ現像後のマスクパターンを示す断面図である。図7は、本実施例1によるジブロックコポリマーと中性層との界面付近でPS材料の組成濃度が高くなった場合におけるドライ現像の工程図である。
前記図4を用いて説明したドライ現像と異なり、本実施例1による第1のプラズマ処理方法では、エッチング条件が連続的に変化する複数のステップのドライ現像を適用することにより、不完全な相分離が生じたジブロックコポリマーでも、エッチングストップまたはエッチング残渣を生じることなく所定形状のマスクパターンを形成することができる。
図6(a)に示すように、ジブロックコポリマーに熱アニールを実施すると、不完全な相分離が発生して、PMMA材料204のパターン領域と中性層301との界面付近においてPS材料205の組成濃度が高くなる場合がある。
エッチング開始時は、エッチングを進行させたいPMMA材料204のパターン領域におけるPS材料205の組成濃度は低いので、エッチングに用いる混合ガスにおいて、全混合ガスに対する酸素(O2)ガスの流量比を低くする(図7のステップ1)。これにより、PS材料205のエッチングを抑制して、PMMA材料204のみのエッチングを進行させる。PMMA材料204のパターン領域と中性層301との界面付近でPS材料205の組成濃度が高い部分にエッチングが到達するまでは、全混合ガスに対する酸素(O2)ガスの流量比を低くする。
PMMA材料204のパターン領域と中性層301との界面付近でPS材料205の組成濃度が高い部分にエッチングが到達したところで、全混合ガスに対する酸素(O2)ガスの流量比を上昇させる(図7のステップ2)。これにより、PS材料205のエッチングレートが増加するので、PMMA材料204のパターン領域と中性層301との界面付近でPS材料205の組成濃度が高い部分においてもエッチングが進行し、図6(b)に示すように、エッチングが中性層301の界面まで達して、所定形状のマスクパターンを形成することができる。
つまり、図7に示すステップを有するドライ現像を適用することにより、不完全な相分離が生じたジブロックコポリマーでも、エッチングストップまたはエッチング残渣を生じることなく所定形状のマスクパターンを形成することができる。エッチングに用いる混合ガスにおいて、全混合ガスに対する酸素(O2)ガスの流量比はジブロックコポリマーの組成により変化するが、本実施例1による第1のプラズマ処理方法では、ステップ1の酸素(O2)ガスの流量比を20%未満、ステップ2の酸素(O2)ガスの流量比を20%以上とした。
本実施例1による第1のプラズマ処理方法では、酸素(O2)ガスの流量比を調整したが、不活性ガスの流量比を調整してもよく、同様の効果を得ることができる。
また、本実施例1による第1のプラズマ処理方法では、ドライ現像のステップ数を2ステップとして、酸素(O2)ガスの流量比を変化させた。しかし、PMMA材料204のパターン領域におけるPS材料205の組成濃度がジブロックコポリマーの上面から中性層301との界面へ向かって連続的に変化していることを鑑み、3ステップ以上の複数ステップに分けて、連続的に酸素(O2)ガスの流量比を変化させてもよく、同様の効果を得ることができる。
また、本実施例1による第1のプラズマ処理方法では、各ステップにおいて、酸素(O2)ガスの流量比を変化させたが、PS材料205に対するPMMA材料204の選択的エッチングレートを変化させるプラズマパラメータとして、ウエハ(前記図1に示す被処理基板102)に印加するRFバイアス電力を連続的に変化させてもよい。例えばステップ1のRFバイアス電力を0W、ステップ2のRFバイアス電力を0Wより高く、好ましくは100W以上とすることで、同様の効果を得ることができる。
<第2のプラズマ処理方法>
図8および図9は、本実施例1によるジブロックコポリマーの上面のPMMA材料のパターン領域付近でPS材料の組成濃度が高くなった場合におけるプラズマエッチングを用いたドライ現像を説明する図である。図8(a)は、本実施例1によるジブロックコポリマーの上面のPMMA材料のパターン領域付近でPS材料の組成濃度が高くなった場合におけるPMMA材料およびPS材料からなるパターンを示す断面図である。図8(b)は、本実施例1によるジブロックコポリマーの上面のPMMA材料のパターン領域付近でPS材料の組成濃度が高くなった場合におけるドライ現像後のマスクパターンを示す断面図である。図9は、本実施例1によるジブロックコポリマーの上面のPMMA材料のパターン領域付近でPS材料の組成濃度が高くなった場合におけるドライ現像の工程図である。
前記図5を用いて説明したドライ現像と異なり、本実施例1による第2のプラズマ処理方法では、エッチング条件が連続的に変化する複数のステップのドライ現像を適用することにより、不完全な相分離が生じたジブロックコポリマーでも、エッチングストップまたはエッチング残渣を生じることなく所定形状のマスクパターンを形成することができる。
図8(a)に示すように、ジブロックコポリマーに熱アニールを実施すると、不完全な相分離が発生して、ジブロックコポリマーの上面のPMMA材料204のパターン領域付近においてPS材料205の組成濃度が高くなる場合がある。
エッチング開始時は、エッチングを進行させたいPMMA材料204のパターン領域におけるPS材料205の組成濃度は高いので、エッチングに用いる混合ガスにおいて、全混合ガスに対する酸素(O2)ガスの流量比を高くする(図9のステップ1)。これにより、PS材料205の組成濃度の高いPMMA材料204のパターン領域のエッチングを進行させる。PS材料205の組成濃度が低い部分にエッチングが到達するまでは、全混合ガスに対する酸素(O2)ガスの流量比を高くする。
PS材料205の組成濃度が低い部分にエッチングが到達したところで、全混合ガスに対する酸素(O2)ガスの流量比を下降させる(図9のステップ2)。これにより、PS材料205に対してPMMA材料204が選択的にエッチングされるので、PS材料205をマスクパターンとして残しながら、図8(b)に示すように、エッチングが中性層301の界面まで達して、所定形状のマスクパターンを形成することができる。
つまり、図9に示すステップを有するドライ現像を適用することにより、不完全な相分離が生じたジブロックコポリマーでも、エッチングストップまたはエッチング残渣を生じることなく所定形状のマスクパターンを形成することができる。エッチングに用いる混合ガスにおいて、全混合ガスに対する酸素(O2)ガスの流量比はジブロックコポリマーの組成により変化するが、本実施例1による第2のプラズマ処理方法では、ステップ1の酸素(O2)ガスの流量比を20%以上、ステップ2の酸素(O2)ガスの流量比を20%未満とした。
本実施例1による第2のプラズマ処理方法では、ドライ現像のステップ数を2ステップとして、酸素(O2)ガスの流量比を変化させた。しかし、PMMA材料204のパターン領域におけるPS材料205の組成濃度がジブロックコポリマーの上面から中性層301との界面へ向かって連続的に変化していることを鑑み、3ステップ以上の複数ステップに分けて、連続的に酸素(O2)ガスの流量比を変化させてもよく、同様の効果を得ることができる。
また、本実施例1による第2のプラズマ処理方法では、各ステップにおいて、酸素(O2)ガスの流量比を変化させたが、PS材料205に対するPMMA材料204の選択的エッチングレートを変化させるプラズマパラメータとして、ウエハ(前記図1に示す被処理基板102)に印加するRFバイアス電力を連続的に変化させてもよい。例えばステップ1のRFバイアス電力を0Wより高く、好ましくは100W以上とし、ステップ2のRFバイアス電力を0Wとすることで、同様の効果を得ることができる。
<第3のプラズマ処理方法>
図10および図11は、本実施例1によるジブロックコポリマーと中性層との界面付近およびジブロックコポリマーの上面のPMMA材料のパターン領域付近でPS材料の組成濃度が高くなった場合におけるプラズマエッチングを用いたドライ現像を説明する図である。図10(a)は、本実施例1によるジブロックコポリマーと中性層との界面付近およびジブロックコポリマーの上面のPMMA材料のパターン領域付近でPS材料の組成濃度が高くなった場合におけるPMMA材料およびPS材料からなるパターンを示す断面図である。図10(b)は、本実施例1によるジブロックコポリマーと中性層との界面付近およびジブロックコポリマーの上面のPMMA材料のパターン領域付近でPS材料の組成濃度が高くなった場合におけるドライ現像後のマスクパターンを示す断面図である。図11は、本実施例1によるジブロックコポリマーと中性層との界面付近およびジブロックコポリマーの上面のPMMA材料のパターン領域付近でPS材料の組成濃度が高くなった場合におけるドライ現像の工程図である。
前記図4および前記図5を用いて説明したドライ現像と異なり、本実施例1による第3のプラズマ処理方法では、エッチング条件が連続的に変化する複数のステップのドライ現像を適用することにより、不完全な相分離が生じたジブロックコポリマーでも、エッチングストップまたはエッチング残渣を生じることなく所定形状のマスクパターンを形成することができる。
図10(a)に示すように、ジブロックコポリマーに熱アニールを実施すると、不完全な相分離が発生して、PMMA材料204のパターン領域と中性層301との界面付近およびジブロックコポリマーの上面のPMMA材料204のパターン領域付近においてPS材料205の組成濃度が高くなる場合がある。
エッチング開始時は、エッチングを進行させたいPMMA材料204のパターン領域におけるPS材料205の組成濃度は高いので、エッチングに用いる混合ガスにおいて、全混合ガスに対する酸素(O2)ガスの流量比を高くする(図11のステップ1)。これにより、PS材料205の組成濃度の高いPMMA材料204のパターン領域のエッチングを進行させる。PS材料205の組成濃度が低い部分にエッチングが到達するまでは、全混合ガスに対する酸素(O2)ガスの流量比を高くする。
PS材料205の組成濃度が低い部分にエッチングが到達したところで、全混合ガスに対する酸素(O2)ガスの流量比を下降させる(図11のステップ2)。
その後、PMMA材料204のパターン領域と中性層301との界面付近でPS材料205の組成濃度が高い部分にエッチングが到達したところで、全混合ガスに対する酸素(O2)ガスの流量比を上昇させる(図11のステップ3)。これにより、PS材料205のエッチングレートが増加するので、PMMA材料204のパターン領域と中性層301との界面付近でPS材料205の組成濃度が高い部分においてもエッチングが進行し、図10(b)に示すように、エッチングが中性層301の界面まで達して、所定形状のマスクパターンを形成することができる。
つまり、図11に示すステップを有するドライ現像を適用することにより、不完全な相分離が生じたジブロックコポリマーでも、エッチングストップまたはエッチング残渣を生じることなく所定形状のマスクパターンを形成することができる。プラズマエッチングに用いる混合ガスにおいて、全混合ガスに対する酸素(O2)ガスの流量比はジブロックコポリマーの組成により変化するが、本実施例1による第3のプラズマ処理方法では、ステップ1およびステップ3の酸素(O2)ガスの流量比を20%以上、ステップ2の酸素(O2)ガスの流量比を20%未満とした。
本実施例1による第3のプラズマ処理方法では、酸素(O2)ガスの流量比を調整したが、不活性ガスの流量比を調整してもよく、同様の効果を得ることができる。
また、本実施例1による第3のプラズマ処理方法では、ドライ現像のステップ数を3ステップとして、酸素(O2)ガスの流量比を変化させた。しかし、PMMA材料204のパターン領域におけるPS材料205の組成濃度がジブロックコポリマーの上面から中性層301との界面へ向かって連続的に変化していることを鑑み、4ステップ以上の複数ステップに分けて、連続的に酸素(O2)ガスの流量比を変化させてもよく、同様の効果を得ることができる。
また、本実施例1による第3のプラズマ処理方法では、各ステップにおいて、酸素(O2)ガスの流量比を変化させたが、PS材料205に対するPMMA材料204の選択的エッチングレートを変化させるプラズマパラメータとして、ウエハ(前記図1に示す被処理基板102)に印加するRFバイアス電力を連続的に変化させてもよい。例えばステップ1およびステップ3のRFバイアス電力を0Wより高く、好ましくは100W以上とし、ステップ2のRFバイアス電力を0Wとすることで、同様の効果を得ることができる。
本実施例2によるジブロックコポリマーのプラズマ処理方法を説明する。なお、前記実施例1と重複する部分の説明は省略し、相違する内容について説明する。
前記実施例1において説明したように、ジブロックコポリマーに熱アニールを実施すると、不完全な相分離が発生する。しかし、この不完全な相分離状態、すなわちPMMA材料のパターン領域におけるPS材料の組成濃度分布は、予め計算機により計算されたシミュレーション結果または予め組成分析装置により分析された結果から得ることができる。
図12(a)は、本実施例2によるジブロックコポリマーの上面のPMMA材料のパターン領域付近でPS材料の組成濃度が高くなった場合におけるPMMA材料およびPS材料からなるパターンを示す断面図である。図12(b)は、本実施例2によるPMMA材料のパターン領域におけるPS材料の組成濃度とPMMA材料のパターン領域の高さ(h)との関係の一例を説明するグラフ図である。図12(c)は、本実施例2によるジブロックコポリマーのエッチング(プラズマ処理)中における酸素(O2)ガスの流量比の時間制御方法の一例を説明するグラフ図である。ここで、PMMA材料のパターン領域の高さ(h)とは、ジブロックコポリマーと中性層との界面を0(ゼロ)として、ジブロックコポリマーの上面までの高さを言う。
熱アニールを実施した際に、ジブロックコポリマーの上面と接する雰囲気、例えば大気またはパージガスは、PMMA材料およびPS材料に対して、完全に中性の雰囲気を保っていることが理想的である。しかし、実際には、ジブロックコポリマーの上面と接する雰囲気は完全に中性の雰囲気を保つことが難しく、雰囲気と接するジブロックコポリマーの上面で、例えばPMMA材料またはPS材料の組成濃度が高くなるような現象が観察される。
しかし、PMMA材料のパターン領域に含まれるPS材料の組成濃度が予め計算または分析により得られている場合は、予め得られているそのPMMA材料のパターン領域におけるPS材料の組成濃度の変化に対応したパラメータ制御をエッチング(プラズマ処理)中に実施することができる。
例えば予め決められた酸素(O2)ガスの流量比となるように、酸素(O2)ガスの流量を連続的に変化させることにより、図12(a)に示す不完全な相分離状態のPMMA材料204およびPS材料205からなるパターンにおいても、エッチングストップまたはエッチング残渣を生じることなく所定形状のマスクパターンを形成することができる。
具体的には、エッチングを用いたドライ現象を実施する装置に、図12(b)に示すPMMA材料のパターン領域におけるPS材料の組成濃度とPMMA材料のパターン領域の高さ(h)との関係を記憶させる。そして、エッチング(プラズマ処理)中に、装置に記憶させたPS材料の組成濃度の変化に対応して、例えば図12(c)に示すように、酸素(O2)ガスの流量を連続的に変化させる。すなわち、エッチング時間に依存して全混合ガスに対する酸素(O2)ガスの流量比を制御する。これにより、不完全な相分離が生じたジブロックコポリマーでも、エッチングストップまたはエッチング残渣を生じることなく所定形状のマスクパターンを形成することができる。
本実施例2によるプラズマ処理方法では、エッチング時間に依存して制御するパラメータとして、全混合ガスに対する酸素(O2)ガスの流量比を用いたが、ウエハ(前記図1に示す被処理基板102)に印加するRFバイアス電力の大きさを連続的に変化させてもよく、同様の効果を得ることができる。
本実施例3によるジブロックコポリマーのプラズマ処理方法を説明する。なお、前記実施例1と重複する部分の説明は省略し、相違する内容について説明する。
前記実施例1において説明したように、ジブロックコポリマーに熱アニールを実施すると、不完全な相分離が発生する。
熱アニールを実施した際に、ジブロックコポリマーの上面と接する雰囲気、例えば大気またはパージガスは、PMMA材料およびPS材料に対して、完全に中性の雰囲気を保っていることが理想的である。しかし、実際には、前記図5(a)に示したように、ジブロックコポリマーの上面と接する雰囲気は完全に中性の雰囲気を保つことが難しく、雰囲気と接するジブロックコポリマーの上面で、例えばPMMA材料またはPS材料の組成濃度が高くなるような現象が観察される(前記第2の課題)。
つまり、ドライ現像において、ジブロックコポリマーの上面のPMMA材料のパターン領域付近においてPS材料の組成濃度が高くなり、PS材料に対して選択的にPMMA材料のエッチングを進行させるドライ現像を適用しても、PMMA材料のパターン領域のエッチングが進行せず、エッチングストップと呼ばれる現象が生じる。
図13は、本実施例3によるジブロックコポリマーの上面のPMMA材料のパターン領域付近でPS材料の組成濃度が高くなった場合におけるドライ現像の工程図である。
本実施例3では、図13に示すように、エッチング条件が連続的に変化する複数のステップのドライ現像を適用する。すなわち、あるステップから次のステップに移行する場合、PMMA材料のパターン領域がエッチングされて、PS材料からなるパターンの凹凸が確認された後に、あるステップから次のステップに移行する。これにより、不完全な相分離が生じたジブロックコポリマーでも、エッチングストップまたはエッチング残渣を生じることなく所定形状のマスクパターンを形成することができる。
以下、具体的に、本実施例3によるジブロックコポリマーのプラズマ処理方法を説明する。
前記図8(a)に示したように、ジブロックコポリマーに熱アニールを実施すると、不完全な相分離が発生して、ジブロックコポリマーの上面のPMMA材料204のパターン領域付近においてPS材料205の組成濃度が高くなる場合がある。
エッチング開始時は、エッチングを進行させたいPMMA材料204のパターン領域におけるPS材料205の組成濃度は高いので、エッチングに用いる混合ガスにおいて、全混合ガスに対する酸素(O2)ガスの流量比を高くする(図13のステップ1)。これにより、PS材料205の組成濃度の高いPMMA材料204のパターン領域のエッチングを進行させる。PS材料205の組成濃度が低い部分にエッチングが到達するまでは、全混合ガスに対する酸素(O2)ガスの流量比を高くする。
次に、PS材料205の組成濃度が低い部分にエッチングが到達したところで、エッチングが進行したPMMA材料204とPS材料205とからなる周期パターンの凹凸を検出し、次のステップへ移行する(図13のPS/PMMA凹凸検出?)。
次に、全混合ガスに対する酸素(O2)ガスの流量比を下降させる(図13のステップ2)。これにより、PS材料205に対してPMMA材料204が選択的にエッチングされるので、PS材料205をマスクパターンとして残しながら、前記図8(b)に示すように、エッチングが中性層301の界面まで達して、所定形状のマスクパターンを形成することができる。
つまり、図13に示すステップを有するドライ現像を適用することにより、不完全な相分離が生じたジブロックコポリマーでも、エッチングストップまたはエッチング残渣を生じることなく所定形状のマスクパターンを形成することができる。
ところで、予めPMMA材料のパターン領域に含まれるPS材料の組成濃度が計算または分析により分かっている場合は、前記実施例2において説明したエッチング方法(前記図12参照)によって所定形状のエッチングパターンが得られる。これに対して、予めPMMA材料のパターン領域に含まれるPS材料の組成濃度が計算または分析により分かっていない場合は、PS材料の組成濃度が変化する点を予測することができず、所定形状のエッチングパターンを得ることが難しい。
しかし、本実施例3では、PS材料の組成濃度の変化を、例えばエッチングが進行したPMMA材料とPS材料とから形成される周期的な凹凸によって検出し、この周期的な凹凸の程度に対応したエッチング(プラズマ処理)を複数のステップで行うことができる。従って、予めPMMA材料のパターン領域に含まれるPS材料の組成濃度が計算または分析により分からない場合でも、所定形状のエッチングパターンを得ることができる。
ジブロックコポリマーを用いて周期的パターンを形成するドライ現像では、エッチングを開始する前の相分離しただけのジブロックコポリマーの上面は平坦であり、エッチングが進行するに従い、ジブロックコポリマーの上面にPMMA材料とPS材料とからなる凹凸が発現してくるので、その検出は容易である。
エッチングに用いる混合ガスにおいて、全混合ガスに対する酸素(O2)ガスの流量比はジブロックコポリマーの組成により変化するが、本実施例3によるプラズマ処理方法では、ステップ1の酸素(O2)ガスの流量比を20%以上、ステップ2の酸素(O2)ガスの流量比を20%未満とした。
本実施例3によるプラズマ処理方法では、ドライ現像のステップ数を2ステップとして、酸素(O2)ガスの流量比を変化させた。しかし、PMMA材料のパターン領域におけるPS材料の組成濃度がジブロックコポリマーの上面から中性層との界面へ向かって連続的に変化していることを鑑み、3ステップ以上の複数ステップに分けて、連続的に酸素(O2)ガスの流量比を変化させてもよく、同様の効果を得ることができる。
また、本実施例3によるプラズマ処理方法では、各ステップにおいて、酸素(O2)ガスの流量比を変化させたが、PS材料に対するPMMA材料の選択的エッチングレートを変化させるプラズマパラメータとして、ウエハ(前記図1に示す被処理基板102)に印加するRFバイアス電力を連続的に変化させてもよい。例えばステップ1のRFバイアス電力を0Wより高く、好ましくは100W以上とし、ステップ2のRFバイアス電力を0Wとすることで、同様の効果を得ることができる。
図14は、本実施例3によるドライ現像において発現するPMMA材料とPS材料とからなる周期パターンの凹凸を検出する方法の一例を説明する図である。ここでは、周期パターンの凹凸の検出には回折光を用いている。
図14に示すように、前記図13に示すステップ1のエッチングが終了すると、PMMA材料とPS材料とのプラズマエッチング耐性の違いからジブロックコポリマーDCPの上面に凹凸が生じる。この凹凸は回折格子となり、この回折格子に、PS材料205のパターンに対して高さ方向に配置された光源1401から光信号を入射すると、高次の回折光1402,1403,1404が生じる。この高次の回折光1402,1403,1404は、プラズマ処理装置の内部に設置された回折光検出センサー1405によって光強度信号となって検出される。エッチングの前は、ジブロックコポリマーDCPの上面に凹凸がないため、高次の回折光1402,1403,1404は検出されないが、エッチングが進むとジブロックコポリマーDCPの上面に凹凸が形成されるので、高次の回折光1402,1403,1404を検出することができる。
本実施例4によるジブロックコポリマーのプラズマ処理方法を説明する。なお、前記実施例1と重複する部分の説明は省略し、相違する内容について説明する。
前記実施例1において説明したように、ジブロックコポリマーに熱アニールを実施すると、不完全な相分離が発生する。
熱アニールを実施した際に、ジブロックコポリマーの下地膜には中性層が用いられ、この中性層は、PMMA材料およびPS材料に対して、完全に中性の状態を保っていることが理想的である。しかし、実際には、前記図4(a)に示したように、中性層は完全に中性の状態を保つことが難しく、ジブロックコポリマーと中性層との界面付近で、例えばPMMA材料またはPS材料の組成濃度が高くなるような現象が観察される(前記第1の課題)。
つまり、ドライ現像において、PMMA材料のパターン領域と中性層との界面付近においてPS材料の組成濃度が高くなり、PS材料に対して選択的にPMMA材料のエッチングを進行させるドライ現像を適用しても、PMMA材料のパターン領域のエッチングが進行せず、エッチングストップと呼ばれる現象が生じる。
図15は、本実施例4によるジブロックコポリマーと中性層との界面付近でPS材料の組成濃度が高くなった場合におけるドライ現像の工程図である。
本実施例4では、図15に示すように、エッチング条件が連続的に変化する複数のステップのドライ現像を適用する。すなわち、あるステップから次のステップに移行する場合、PMMA材料のパターン領域がエッチングされて、PMMA材料のパターン領域と中性層との界面付近に混在するPS材料によって形成された凹凸が確認された後に、あるステップから次のステップに移行する。これにより、不完全な相分離が生じたジブロックコポリマーでも、エッチングストップまたはエッチング残渣を生じることなく所定形状のマスクパターンを形成することができる。
以下、具体的に、本実施例4によるジブロックコポリマーのプラズマ処理方法を説明する。
前記図6(a)に示したように、ジブロックコポリマーに熱アニールを実施すると、不完全な相分離が発生して、PMMA材料204のパターン領域と中性層301との界面付近においてPS材料205の組成濃度が高くなる場合がある。
エッチング開始時は、エッチングを進行させたいPMMA材料204のパターン領域におけるPS材料205の組成濃度は低いので、エッチングに用いる混合ガスにおいて、全混合ガスに対する酸素(O2)ガスの流量比を低くする(図15のステップ1)。これにより、PS材料205のエッチングを抑制して、PMMA材料204のみのエッチングを進行させる。PMMA材料204のパターン領域と中性層301との界面付近でPS材料205の組成濃度が高い部分にエッチングが到達するまでは、全混合ガスに対する酸素(O2)ガスの流量比を低くする。
次に、PMMA材料204のパターン領域と中性層301との界面付近でPS材料205の組成濃度が高い部分にエッチングが到達したところで、エッチングが進行したPMMA材料204とPS材料205とからなる周期パターンの凹凸を検出し、次のステップへ移行する(図15のPS/PMMA凹凸検出)。
次に、全混合ガスに対する酸素(O2)ガスの流量比を上昇させる(図15のステップ2)。これにより、PS材料205のエッチングレートが増加するので、PMMA材料204のパターン領域と中性層301との界面付近でPS材料205の組成濃度が高い部分においてもエッチングが進行し、前記図6(b)に示すように、エッチングが中性層301の界面まで達して、所定形状のマスクパターンを形成することができる。
つまり、図15に示すステップを有するドライ現像を適用することにより、不完全な相分離が生じたジブロックコポリマーでも、エッチングストップまたはエッチング残渣を生じることなく所定形状のマスクパターンを形成することができる。
ところで、予めPMMA材料のパターン領域に含まれるPS材料の組成濃度が計算または分析により分かっている場合は、前記実施例2において説明したエッチング方法(前記図12参照)によって所定形状のエッチングパターンが得られる。これに対して、予めPMMA材料のパターン領域に含まれるPS材料の組成濃度が計算または分析により分かっていない場合は、PS材料の組成濃度が変化する点を予測することができず、所定形状のエッチングパターンを得ることが難しい。
しかし、本実施例4では、PS材料の組成濃度の変化を、例えばエッチングが進行したPMMA材料とPS材料とから形成される周期的な凹凸によって検出し、この周期的な凹凸の程度に対応したエッチング(プラズマ処理)を複数のステップで行うことができる。従って、予めPMMA材料のパターン領域に含まれるPS材料の組成濃度が計算または分析により分からない場合でも、所定形状のエッチングパターンを得ることができる。
ジブロックコポリマーを用いて周期的パターンを形成するドライ現像では、エッチングが開始されて暫くの間はPMMA材料のエッチング面は平坦であるが、エッチングが進行するに従い、PMMA材料のパターン領域に混在するPS材料によって形成される凹凸が発現してくるので、その検出は容易である。
プラズマエッチングに用いる混合ガスにおいて、全混合ガスに対する酸素(O2)ガスの流量比はジブロックコポリマーの組成により変化するが、本実施例4によるプラズマ処理方法では、ステップ1の酸素(O2)ガスの流量比を20%未満、ステップ2の酸素(O2)ガスの流量比を20%以上とした。
本実施例4によるプラズマ処理方法では、ドライ現像のステップ数を2ステップとして、酸素(O2)ガスの流量比を変化させた。しかし、PMMA材料のパターン領域におけるPS材料の組成濃度がジブロックコポリマーの上面から中性層との界面へ向かって連続的に変化していることを鑑み、3ステップ以上の複数ステップに分けて、連続的に酸素(O2)ガスの流量比を変化させてもよく、同様の効果を得ることができる。
また、本実施例4によるプラズマ処理方法では、各ステップにおいて、酸素(O2)ガスの流量比を変化させたが、PS材料に対するPMMA材料の選択的エッチングレートを変化させるプラズマパラメータとして、ウエハ(前記図1に示す被処理基板102)に印加するRFバイアス電力を連続的に変化させてもよい。例えばステップ1のRFバイアス電力を0W、ステップ2のRFバイアス電力を0Wより高く、好ましくは100W以上とすることで、同様の効果を得ることができる。
図16は、本実施例4によるドライ現像において発現するPMMA材料とPS材料とからなる周期パターンの凹凸を検出する方法の一例を説明する図である。図16(a)は、PMMA材料とPS材料とが交互に形成された第1方向に沿ったジブロックコポリマーの断面図である。図16(b)は、第1方向と中性層の上面で直交する第2方向に沿ったジブロックコポリマーの断面図である。ここでは、周期パターンの凹凸の検出には回折光を用いる。
図16に示すように、前記図15に示すステップ1のエッチングが終了すると、PMMA材料204とPS材料205とのプラズマエッチング耐性の違いからPMMA材料204のエッチング面に凹凸が生じる。この凹凸は回折格子となり、この回折格子に、PS材料205のパターンに対して長手方向に配置された光源1401から光信号を入射すると、高次の回折光1402,1403,1404が生じる。この高次の回折光1402,1403,1404は、プラズマ処理装置の内部に設置された回折光検出センサー1405によって光強度信号となって検出される。エッチングが開始されて暫くの間は、PMMA材料204のエッチング面に凹凸がないため、高次の回折光1402,1403,1404は検出されないが、エッチングが進むとPMMA材料2045のエッチング面に凹凸が形成されるので、高次の回折光1402,1403,1404を検出することができる。
本実施例5によるジブロックコポリマーのプラズマ処理方法を説明する。なお、前記実施例1と重複する部分の説明は省略し、相違する内容について説明する。
前記実施例1において説明したように、ジブロックコポリマーに熱アニールを実施すると、不完全な相分離が発生する。
つまり、ドライ現像において、ジブロックコポリマーの上面のPMMA材料のパターン領域付近およびPMMA材料のパターン領域と中性層との界面付近においてPS材料の組成濃度が高くなる(前記第1および第2の課題)。このため、PS材料に対して選択的にPMMA材料のエッチングを進行させるドライ現像を適用しても、PMMA材料のパターン領域のエッチングが進行せず、エッチングストップと呼ばれる現象が生じる。
以下、具体的に、本実施例5によるジブロックコポリマーのプラズマ処理方法を説明する。
前記図10(a)に示したように、ジブロックコポリマーに熱アニールを実施すると、不完全な相分離が発生して、ジブロックコポリマーの上面のPMMA材料204のパターン領域付近およびPMMA材料204のパターン領域と中性層301との界面付近においてPS材料205の組成濃度が高くなる場合がある。
エッチング開始時は、エッチングを進行させたいPMMA材料204のパターン領域におけるPS材料205の組成濃度は高いので、エッチングに用いる混合ガスにおいて、全混合ガスに対する酸素(O2)ガスの流量比を高くする(ステップ1)。これにより、PS材料205の組成濃度の高いPMMA材料204のパターン領域のエッチングを進行させる。PS材料205の組成濃度が低い部分にエッチングが到達するまでは、全混合ガスに対する酸素(O2)ガスの流量比を高くする。
次に、PS材料205の組成濃度が低い部分にエッチングが到達したところで、エッチングが進行したPMMA材料204とPS材料205とからなる周期パターンの凹凸を検出し、次のステップへ移行する。
次に、全混合ガスに対する酸素(O2)ガスの流量比を下降させる。これにより、PMMA材料204のパターン領域と中性層301との界面付近でPS材料205の組成濃度が高い部分にエッチングが到達するまでは、全混合ガスに対する酸素(O2)ガスの流量比を低くする(ステップ2)。
次に、PS材料205の組成濃度が高い部分にエッチングが到達したところで、エッチングが進行したPMMA材料204のエッチング面の凹凸を検出し、次のステップへ移行する。
次に、全混合ガスに対する酸素(O2)ガスの流量比を上昇させる(ステップ3)。これにより、PMMA材料204のパターン領域と中性層301との界面付近でPS材料205の組成濃度が高い部分においてもエッチングが進行し、エッチングが中性層301の界面まで達して、所定形状のマスクパターンを形成することができる。
つまり、上記したステップを有するドライ現像を適用することにより、不完全な相分離が生じたジブロックコポリマーでも、エッチングストップまたはエッチング残渣を生じることなく所定形状のマスクパターンを形成することができる。
プラズマエッチングに用いる混合ガスにおいて、全混合ガスに対する酸素(O2)ガスの流量比はジブロックコポリマーの組成により変化するが、本実施例5によるプラズマ処理方法では、ステップ1およびステップ3の酸素(O2)ガスの流量比を20%以上、ステップ2の酸素(O2)ガスの流量比を20%未満とした。
本実施例5によるプラズマ処理方法では、ドライ現像のステップ数を3ステップとして、酸素(O2)ガスの流量比を変化させた。しかし、PMMA材料のパターン領域におけるPS材料の組成濃度がジブロックコポリマーの上面から中性層との界面へ向かって連続的に変化していることを鑑み、4ステップ以上の複数ステップに分けて、連続的に酸素(O2)ガスの流量比を変化させてもよく、同様の効果を得ることができる。
また、本実施例5によるプラズマ処理方法では、各ステップにおいて、酸素(O2)ガスの流量比を変化させたが、PS材料に対するPMMA材料の選択的エッチングレートを変化させるプラズマパラメータとして、ウエハ(前記図1に示す被処理基板102)に印加するRFバイアス電力を連続的に変化させてもよい。例えばステップ1およびステップ3のRFバイアス電力を0Wより高く、好ましくは100W以上とし、ステップ2のRFバイアス電力を0Wとすることで、同様の効果を得ることができる。
また、回折光検出機構を用いて、前記実施例3で説明したPMMA材料とPS材料とからなる周期パターンの凹凸、および前記実施例4で説明したPMMA材料のエッチング面の凹凸を検出してもよい。この凹凸の発現の検出には、例えば回折光を用いる。
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
前記実施例1〜5では、本発明を半導体デバイスの前工程に適用したが、半導体デバイスの後工程(配線接続、スーパーコネクト)、マイクロマシン、MEMS(Micro Electro Mechanical System)分野(例えばディスプレイ分野、光スイッチ分野、通信分野、ストレージ分野、センサー分野、イメージャ分野、小型発電機分野、小型燃料電池分野、マイクロプローバ分野、プロセス用ガス制御システム分野および医学バイオ分野の関係も含む)等のエッチング加工技術に適用しても同様の作用効果を得ることができる。
また、前記実施例1〜5では、マイクロ波ECR放電を利用したエッチング装置を用いたプラズマ処理方法について説明したが、他の放電(例えば有磁場UHF(Ultra High Frequency)放電、容量結合型放電、誘導結合型放電、マグネトロン放電、表面波励起放電およびトランスファー・カップルド放電)を利用したドライエッチング装置においても同様の作用効果を得ることができる。ただし、ECR放電を用いた場合、主要なプラズマ生成領域とウエハとの距離の制御性、高解離度のプラズマによる反応性ラジカルの密度増加等によって、より高精度の効果を得ることができることから、より最適な効果を得るためにはECR放電がより好ましい。