JP6252214B2 - 七フッ化ヨウ素の製造方法 - Google Patents

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本発明は、七フッ化ヨウ素の製造方法に関する。
七フッ化ヨウ素は、フッ素化剤、或いは半導体産業におけるエッチングガス、クリーニングガスとして用いられている。
七フッ化ヨウ素の製造方法としては、フッ素ガスと五フッ化ヨウ素ガスとを反応させることによって七フッ化ヨウ素を製造する方法が一般的であり、非特許文献1では、70〜80℃に加熱した五フッ化ヨウ素の液にフッ素ガスを吹き込み、得られる五フッ化ヨウ素ガスと同伴するフッ素ガスを、280〜290℃に加熱した反応器に導入し、フッ素と五フッ化ヨウ素を反応させる七フッ化ヨウ素の製造方法が報告されている。特許文献1では、フッ素ガスが流通する蒸発器に五フッ化ヨウ素の液滴を加えて蒸発・混合させた後、この混合ガスを300℃に加熱した反応器に導入し、フッ素と五フッ化ヨウ素を反応させる七フッ化ヨウ素の製造方法において、五フッ化ヨウ素を基準とした七フッ化ヨウ素の収率は60%であることが報告されている。特許文献2では、フッ素ガスと五フッ化ヨウ素ガスを予め合流させて、230℃に加熱した反応器に導入して反応させ、生成物である七フッ化ヨウ素を冷却捕集し、未反応物である五フッ化ヨウ素を冷却捕集して原料として再利用すると共に、未反応のフッ素ガスをコンプレッサで循環供給する、フッ素循環方式による七フッ化ヨウ素の製造方法が報告されている。
その他、フッ素とヨウ素とを反応させることによって七フッ化ヨウ素を製造する方法も知られている。この場合、フッ素とヨウ素との直接反応はきわめて激しく反応し、局所的に膨大な発熱を発生させる為、特許文献3では、ヨウ素とフッ素を原料として反応器に投入する際に、七フッ化ヨウ素が存在している反応器に、フッ素含有ガスとヨウ素含有ガスをそれぞれ供給し、反応器中のガスを循環させながら反応させることにより、穏和に反応を進行させることが出来る七フッ化ヨウ素の製造方法が報告されている。
特開2000−159505号公報 特開2006−265057号公報 特開2009−23896号公報
Walter C. Schumb,Maurice A. Lynch, Jr. Ind.Eng.Chem.,42、1383(1950)
特許文献1に記載の方法では七フッ化ヨウ素の収率が60%と低いこと、特許文献2に記載の方法では五フッ化ヨウ素を回収して再利用、並びにフッ素を循環して再利用する必要がある。
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、反応器内でフッ素ガスと五フッ化ヨウ素ガスを反応させることによって七フッ化ヨウ素ガスを製造する方法において、五フッ化ヨウ素を基準とした七フッ化ヨウ素の収率を70%以上に向上させることが目的である。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、フッ素ガスと五フッ化ヨウ素ガスを、金属フッ化物の存在下で反応させることにより上記目的を達成できることを見出し、本発明に至った。
すなわち、反応器内でフッ素ガスと五フッ化ヨウ素ガスとを反応させることにより七フッ化ヨウ素を製造する方法において、金属フッ化物を含有する充填物を内部に充填した前記反応器を用い、前記金属フッ化物が、NiF 、FeF 、及びCoF の中から、少なくとも1種類以上を含み、前記充填物の存在下でフッ素ガスと五フッ化ヨウ素ガスとを反応させることを特徴とする、七フッ化ヨウ素の製造方法を提供するものである。
又は、前記金属フッ化物の温度を200℃以上330℃以下で反応させることを特徴とする上記の七フッ化ヨウ素の製造方法である。
本発明により、五フッ化ヨウ素を基準とした七フッ化ヨウ素の収率を70%以上に向上できる。
本発明で使用される充填物に含有する金属フッ化物として、金属をフッ素化したものであれば特に限定されない。例えば、NiF、FeF、CoF、LiF、NaF、KF、CsF、MgF、CaFなどが挙げられるが、安価且つ収率向上の寄与が大きいことを考慮すると、遷移金属のフッ化物であるNiF、FeF、及びCoFのいずれか1種類以上からなるものが好ましい。
使用する充填物の形状は、フッ素ガスと五フッ化ヨウ素ガスが効率よく接触し、且つ、流通させる両原料のガスが閉塞しなければ特に限定されない。充填物は、例えば、メッシュ状の金属片をフッ素ガス、三フッ化塩素ガス、七フッ化ヨウ素ガス等によりフッ素化することにより、該金属表面に金属フッ化物が生成した形で得られたり、又は粉体状の金属フッ化物をペレット形状に成型して得ることができる。
また、上記金属フッ化物は、フッ素ガスと五フッ化ヨウ素ガスの反応に用いる反応器の材質として用いることができる。この場合、本発明の効果を得るためには、該反応器にさらに上記充填物を充填する必要がある。
上記充填物を充填する反応器の材質として、上記金属フッ化物の他に、ニッケル、インコネル、ハステロイ、モネル、アルミニウム、アルミナ、ステンレス鋼等も使用できるが、反応器の温度が200℃超となる場合、耐腐食性を考慮すると、ニッケル、インコネル、ハステロイ、モネル、又はアルミナが好ましい。
反応器の形状としては、充填物を充填することができ、充填物を充填した状態でガスを流通又は封入することができる空洞を有し、且つ、上記材質で組成されていれば、特に限定されず、例えば、管を使用することができる。管を使用する場合は、内部が粗面であると、ガスの滞留、圧力損失の増大、又は局所的な反応等が生じ易くなり効率が低下する恐れがあるので、内部が平滑な管、例えば、光輝焼鈍管、が好ましい。
反応器の方式は、フッ素ガスと五フッ化ヨウ素ガスが充填物と接触できれば、特に限定されず、例えば、流通式、及び、密閉式を使用できる。流通式では、フッ素ガスと五フッ化ヨウ素ガスを同時に反応器に導入する必要がある。密閉式では、フッ素ガスと五フッ化ヨウ素ガスを混合したガスを反応器に導入する、または、それぞれ個別に反応器に導入することができる。それぞれ個別に導入する場合、導入の順番は特に限定されず、フッ素ガスと五フッ化ヨウ素ガスを同時に、または、何れか一方を先に導入してもよい。いずれの方式においても、フッ素ガス及び五フッ化ヨウ素ガスと充填物との効率的な接触を考慮すると、フッ素ガスと五フッ化ヨウ素ガスを混合したガスを反応器に導入する方法が好ましい。
フッ素ガスと五フッ化ヨウ素ガスを反応させる時の充填物の温度は、150℃以上350℃以下が好ましい。150℃未満ではフッ素と五フッ化ヨウ素の反応速度が遅くなる虞があり、350℃超では生成した七フッ化ヨウ素がフッ素と五フッ化ヨウ素に分解する逆反応が進行する虞がある。特に、200℃以上330℃以下が好ましい。また、充填物を充填した状態で反応器を電気ヒータや蒸気などで加熱することにより、充填物を所望の温度にできる。
反応器の滞在時間として、逆反応が顕著とならない反応温度であれば、滞在時間の増加とともに収率は増加するが、生産性は滞在時間の増加により低下する虞がある。したがって、滞在時間は、所望の収率と生産性を考慮し、種々選択できる。生産性を考慮する場合、滞在時間は短い方が望まれる。例えば、F/IFのモル比が1以上でフッ素ガスと五フッ化ヨウ素ガスを反応させる場合、金属フッ化物の温度が200℃以上330℃以下であれば、少なくとも滞在時間は4秒以上あれば、収率は80%以上得ることができる。
上記流通式の場合のフッ素ガスと五フッ化ヨウ素ガスの導入時の流量比や、上記密閉式の場合のフッ素ガスと五フッ化ヨウ素ガスの混合比は、いずれもフッ素と五フッ化ヨウ素のモル比(F/IF)で1以上が好ましい。特に、該モル比が1.3以上では、滞在時間4秒以上で収率80%以上を得ることができるが、該モル比を35以上とすると、収率の向上に対し、フッ素ガスの使用量増加による経済性の低下が顕著になるため好ましくない。また該モル比が1未満では、未反応の五フッ化ヨウ素が増加するため七フッ化ヨウ素の収率が低下する虞がある。
使用するフッ素ガスと五フッ化ヨウ素ガスの純度としては、本発明を実施する上で特に制約されることは無く、フッ素ガスと五フッ化ヨウ素ガスの濃度が前記モル比の範囲であれば良い。但し、使用するフッ素ガス及び、五フッ化ヨウ素ガスの純度は、生成する七フッ化ヨウ素ガスの純度に影響するため、例えば99%以上の七フッ化ヨウ素ガスを得るためには、純度99%以上のフッ素ガス及び、五フッ化ヨウ素ガスを用いることが好ましい。
反応器への充填物の充填方法として、フッ素ガス及び五フッ化ヨウ素ガスと充填物とが効率よく接触し、且つ、流通するガスが閉塞しなければ特に限定されない。
反応時の反応器内の圧力は、フッ素、五フッ化ヨウ素、七フッ化ヨウ素に毒性があるために、漏洩を防止するために大気圧以下が好ましく、経済性を考慮すると40kPa(絶対圧)以上が好ましい。
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例に限定されない。
粉末のNiF(純度99%、Apollo Scientific Limited製)を加圧成型によりペレット状(4mm×4mm×2mm)にした金属フッ化物を総量で48g(0.5モル)を、反応器として用いる電気ヒータ及び圧力計を備えたニッケル製の光輝焼鈍管(内径22.1mm、長さ0.3m)に充填した。該電気ヒータにより該光輝焼鈍管を加熱することにより充填物の温度を270℃とした。この温度で、FとIFの混合ガス(モル比(F/IF)=30.3(F濃度96.8体積%、IF濃度3.20体積%))を該光輝焼鈍管の両端の一方(入口)から導入し、他方(出口)から排出させた。この時、該光輝焼鈍管内の圧力を66.7kPa(絶対圧)とし、該混合ガスの流量を1730cm/min(滞在時間4秒)で1時間流通させた。また、該混合ガスの流通時に、該反応器出口からのガスを冷却捕集器に導入した。該冷却捕集器の冷媒として液体アルゴン(温度:−186℃)を用いてIFとIFを冷却捕集した。該混合ガスの流通完了後、該冷却捕集器内の捕集物の質量測定及びFT−IR(株式会社島津製作所製Prestige21)によるIFとIFの組成を分析した。質量測定及び組成分析結果に基づき、IFの供給量を基準としたIFの理論捕集量に対する収率を算出したところ、IFを基準としたIFの収率は99.8%だった。
金属フッ化物として、粉末のFeF(Strem Chemicals製、製品番号93−2610)を加圧成型によりペレット状にした金属フッ化物を総量で56g(0.5モル)を使用する以外は、実施例1と同様に行い、収率を算出したところ、IFを基準としたIFの収率は90.6%だった。
金属フッ化物として、粉末のCoF(Sigma Aldrich製、製品番号236128)を加圧成型によりペレット状にした金属フッ化物を総量で48g(0.5モル)を使用する以外は、実施例1と同様に行い、収率を算出したところ、IFを基準としたIFの収率は84.4%だった。
メッシュ状(100メッシュ)に成形されたニッケル製のNiメッシュを総量で29g(0.5モル)を反応器に充填し、反応器を350℃に加熱させて圧力66.7kPa(絶対圧)、フッ素ガスを500cm/minで3時間流通させることでNiメッシュの表面にNiFを生成した。金属フッ化物として表面にNiFが生成したNiメッシュを使用する以外は、実施例1と同様に行い、収率を算出したところ、IFを基準としたIFの収率は98.4%だった。
金属フッ化物として、粉末のNiFを加圧成型によりペレット状にした金属フッ化物を総量で24g(0.25モル)と、粉末のFeFを加圧成型によりペレット状にした金属フッ化物を総量で28g(0.25モル)の混合物を使用する以外は、実施例1と同様に行い、収率を算出したところ、IFを基準としたIFの収率は93.8%だった。
金属フッ化物の温度を150℃とする以外は、実施例1と同様に行い、収率を算出したところ、IFを基準としたIFの収率は72.2%だった。
金属フッ化物の温度を200℃とする以外は、実施例1と同様に行い、収率を算出したところ、IFを基準としたIFの収率は80.0%だった。
金属フッ化物の温度を330℃とする以外は、実施例1と同様に行い、収率を算出したところ、IFを基準としたIFの収率は83.8%だった。
金属フッ化物の温度を350℃とする以外は、実施例1と同様に行い、収率を算出したところ、IFを基準としたIFの収率は79.7%だった。
流量を863cm/min(滞在時間8秒)とする以外は、実施例7と同様に行い、収率を算出したところ、IFを基準としたIFの収率は99.4%だった。
流量を863cm/min(滞在時間8秒)とする以外は、実施例1と同様に行い、収率を算出したところ、IFを基準としたIFの収率は99.9%だった。
ガスとIFガスの混合ガスのモル比(F/IF)を1.0(F濃度50.0体積%、IF濃度50.0体積%)とする以外は、実施例1と同様に行い、収率を算出したところ、IFを基準としたIFの収率は71.6%だった。
ガスとIFガスの混合ガスのモル比(F/IF)を1.2(F濃度55.0体積%、IF濃度45.0体積%)とする以外は、実施例1と同様に行い、収率を算出したところ、IFを基準としたIFの収率は77.8%だった。
ガスとIFガスの混合ガスのモル比(F/IF)を1.4(F濃度58.0体積%、IF濃度42.0体積%)とする以外は、実施例1と同様に行い、収率を算出したところ、IFを基準としたIFの収率は80.7%だった。
ガスとIFガスの混合ガスのモル比(F/IF)を24.0(F濃度96.0体積%、IF濃度4.0体積%)とする以外は、実施例1と同様に行い、収率を算出したところ、IFを基準としたIFの収率は99.0%だった。
ガスとIFガスの混合ガスのモル比(F/IF)を36.0(F濃度97.3体積%、IF濃度2.7体積%)とする以外は、実施例1と同様に行い、収率を算出したところ、IFを基準としたIFの収率は99.8%だった。
反応器として、電気ヒータと圧力計とを備え、さらに入口と出口にそれぞれ仕切弁が設置された、ニッケル製の光輝焼鈍管(内径22.1mm、長さ0.3m)を使用し、実施例1と同様に金属フッ化物を充填し、金属フッ化物を270℃に加熱した。FガスとIFガスの混合ガス(モル比(F/IF)=30.3(F濃度96.8体積%、IF濃度3.20体積%))を圧力66.7kPa(絶対圧)となるように入口側の仕切弁から反応器に導入して、両側の仕切弁を閉じ密閉した。密閉してから120秒経過(滞在時間)後、反応器内のガスの一部を抜き出して実施例1と同様にFT−IRで分析して収率を算出したところ、IFを基準としたIFの収率は98.8%だった。
密閉時間を240秒にする以外は、実施例17と同様に行い、収率を算出したところ、IFを基準としたIFの収率は99.8%だった。
IFガス、次いで、Fガスを、モル比(F/IF)=30.3(F濃度96.8体積%、IF濃度3.20体積%))、圧力66.7kPa(絶対圧)となるように仕切弁から別々に反応器に導入する以外は、実施例17と同様に行い、収率を算出したところ、IFを基準としたIFの収率は95.5%だった。
[比較例1]
反応器に金属フッ化物を充填しない以外は、実施例1と同様に行い、収率を算出したところ、IFを基準としたIFの収率は33.8%だった。
[比較例2]
反応器の充填物として、粉末のα―Al(Strem Chemicals製、製品番号13−0750、純度99.5%、)を加圧成型によりペレット状にした充填物を総量で51g(0.5モル)を使用する以外は、実施例1と同様に行い、収率を算出したところ、IFを基準としたIFの収率は34.4%だった。
[比較例3]
反応器の温度を150℃とする以外は、比較例1と同様に行い、収率を算出したところ、IFを基準としたIFの収率は4.7%だった。
[比較例4]
流量を863cm/min(滞在時間8秒)とする以外は、比較例1と同様に行い、収率を算出したところ、IFを基準としたIFの収率は39.1%だった。
[比較例5]
反応器に金属フッ化物を充填しない以外、は実施例17と同様で試験して、収率を算出したところ、IFを基準としたIFの収率は48.4%だった。
[比較例6]
密閉時間を240秒にする以外は、比較例5と同様で試験して、収率を算出したところ、IFを基準としたIFの収率は57.5%だった。
表1に上記の実施例及び比較例の結果を示す。
Figure 0006252214
本発明の製造方法は、フッ素化剤、或いは半導体の製造に用いられるエッチングガスやクリーニングガスとして、従来から用いられている七フッ化ヨウ素の効率的な製造方法として利用できる。

Claims (2)

  1. 反応器内でフッ素ガスと五フッ化ヨウ素ガスとを反応させることにより七フッ化ヨウ素を製造する方法において、
    金属フッ化物を含有する充填物を内部に充填した前記反応器を用い、
    前記金属フッ化物が、NiF 、FeF 、及びCoF の中から、少なくとも1種類以上を含み、
    前記充填物の存在下でフッ素ガスと五フッ化ヨウ素ガスとを反応させることを特徴とする、七フッ化ヨウ素の製造方法。
  2. 前記金属フッ化物の温度を200℃以上330℃以下で反応させることを特徴とする、請求項に記載の七フッ化ヨウ素の製造方法。
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