<第1の実施形態>
以下、図面を参照して、本発明に係る第1の実施形態について説明する。なお、本実施形態では、まず本発明の概要を説明し、次に本発明を適用した画像形成装置10について説明する。その後、本発明の詳細(構成と演算方法)について述べ、最後に画像形成装置への適用システム例について説明する。
まず、図2を用いて本発明の概要について説明する。即ち本発明は、測定対象である像担持体(感光体)とアンテナとの間の距離に拘わらず像担持体の表面電位を正確に測定する電位センサに関するものである。その方法として、2つのアンテナ201,202を像担持体である感光ドラム101に対向させ、検出部3でそれぞれの信号を検出する。2つのアンテナ201,202は、感光ドラム101に対する静電容量が互いに異なっている。検出部3は、演算部4を介して制御部80(図1、図10、図13参照)に接続されている。演算部4は、アンテナ201,202の各検出信号に基づき、感光ドラム101に対する距離変動に起因する共通の変動成分を打ち消すように演算する。
図2では、アンテナ201,202の静電容量を異ならせるために、感光ドラム101に対する各アンテナ201,202の距離を変えている。アンテナ201,202は、1つの部材に固定され、感光ドラム101に対する距離変動が、決まった時間差でほぼ同じ量だけ起こるように構成されている。なお、この構成に対し、C=εS/dの関係から、アンテナ201,202と感光ドラム101間の各距離を同じにした状態で、一方のアンテナを感光ドラム101に向けて露出させ、他方のアンテナを誘電体で覆うようにして誘電率を変えることも可能である。
上記構成により、アンテナ201,202の各検出信号に基づき、感光ドラム101に対する距離変動に起因する共通の変動成分を打ち消すように演算できる。その結果、演算値は、感光ドラム101の表面電位(Qp/Cp)と、アンテナ201,202間の静電容量の差であるCaと、感光ドラム101の静電容量Cpとに依存する値となる。ここで、静電容量Caと静電容量Cpは既知であるので、アンテナ201,202の各検出信号を演算することで、感光ドラム101に対する距離に影響されることなく、感光ドラム101の表面電位を正確に算出することができる。
ここで、重要な留意点について2点述べておく。まず1つ目は、感光ドラム101の静電容量Cpの変化の影響である。感光ドラム101の静電容量Cpは既知であると述べたが、変化してしまう場合もある。一般的な電子写真方式の画像形成装置では、感光ドラム表面にクリーニングブレードを当接させてクリーニングを行なうため、徐々に感光ドラムの表面が削れる。
すなわち、感光ドラム101の静電容量Cpが画像形成装置の使用時間により変化するのである。ただし、この静電容量の変化は非常に緩やかに起こるため、以下2つの方法で把握することが可能である。
(i)工場出荷時の膜厚検査と、使用時間・環境等による膜厚変化の予測
(ii)帯電ローラのV−I特性の測定による膜厚の把握(特開2011−13431号公報参照)
これらの方法(i),(ii)は、従来より電子写真方式の画像形成装置では用いられており、感光ドラムの寿命管理等に適用されている。したがって、上記2つの方法(i),(ii)のいずれかにより、感光ドラム101の静電容量Cpを把握しておくことが可能である。
そして、2つ目は測定値に関することである。具体的には、本発明を適用した電位センサ102は、感光ドラム101の表面電位の絶対値を測定するものではなく、表面電位の変化量(相対値)を測定するということである。一般に静電容量型の電位センサは、アンテナに誘導電流を発生させ、その誘導電流を測定することにより測定対象の電位を算出する。
ここで、アンテナに誘導電流を発生させるためには、Q=CVの関係から、測定対象(ここでは感光ドラム101)の表面電位を変化させるか、アンテナの静電容量を変化させる必要がある。本発明を適用した電位センサ102は、感光ドラム101の表面電位を変化させることでアンテナ201,202に誘導電流を発生させ、表面電位の変化量を算出する。
すなわち、電位の変化前後の電位差を測定するのである。電子写真方式の画像形成装置では、一般的に感光体を帯電しその後に露光することで、感光体の表面電位分布(静電潜像)を形成する。この画像形成装置に適用した場合の電位センサ102は、帯電・露光プロセスを経て形成された静電潜像をアンテナ付近で移動させることで、静電潜像の電位の凹凸(相対値)を測定するのである。これに代えて、電位センサ102を、感光ドラム101上の静電潜像に対して移動させるように構成することも可能であり、その場合にも同様の効果を得ることが可能である。また、この電位の相対値を絶対値に変換する方法については、本実施形態の最後に、電子写真システムを用いた例で述べる。
[画像形成装置]
次に、本発明に係る本実施形態の画像形成装置10について説明する。図1は、本実施形態の画像形成装置10の構成の概略を示す図である。
図1に示す画像形成装置10は、四色のタンデム型方式を適用した装置であり、色毎に、移動可能な像担持体としての感光ドラム101上にトナー像を形成し、中間転写ベルト115上に四色のトナー像を重ね合わせてカラー画像を得る。図1において、各符号の後に付した文字Y、M、C、Kは形成するトナー像の色を表し、Yはイエロー、Mはマゼンタ、Cはシアン、Kはブラックを表す。
図1に示すように、画像形成装置10は装置本体10aを備えており、装置本体10a内には、CPU、ROM及びRAMを有して各部を制御する、制御手段としての制御部80が設けられている。また、装置本体10a内の上下方向中央部には、中間転写体としての中間転写ベルト115を有する中間転写ベルトユニット70が配置されている。装置本体10aにおける中間転写ベルトユニット70の上方には、各色に対応する画像形成部71Y,71M,71C,71Kが中間転写ベルト115の回転方向(矢印Aの方向)に沿って順に配置されている。
装置本体10a内における中間転写ベルトユニット70の下方には、給紙カセット72と、給紙カセット72内に収納された記録材(シート)Pを上位のものから送り出す給紙ローラ116とが配置されている。さらに、給紙ローラ116により送り出された記録材Pを一枚ずつ分離して搬送する分離搬送ローラ対73と、この送り出された記録材Pを下流に搬送する搬送ローラ対74a,74b,74cを有する搬送路75と、レジストローラ対74dとが配置されている。搬送路75の下流には、搬送されてきた記録材Pを定着ローラ107aと加圧ローラ107b間の定着ニップ部で加熱及び加圧してトナー像を定着させる定着装置107と、この記録材Pを排紙トレイ117に排出する排紙ローラ対78とが配置されている。
中間転写ベルト115は、その内周側に配置された駆動ローラ77、テンションローラ105及び二次転写内ローラ114によって回転可能に張架されている。感光ドラム101Y,101M,101C,101Kに夫々対向する中間転写ベルト115の内周側には、中間転写ベルト115を介して感光ドラム101Y〜101Kに夫々圧接される一次転写ローラ113Y,113M,113C,113Kが配置される。一次転写ローラ113Y〜113Kが中間転写ベルト115を感光ドラム101Y〜101K側に圧接することで、各感光ドラム101Y〜101Kと中間転写ベルト115との間に一次転写ニップ部(一次転写部)N1が形成されている。
二次転写内ローラ114に対向する位置には、二次転写外ローラ76が配置されている。二次転写内ローラ114と、この二次転写内ローラ114に中間転写ベルト115を介して圧接される二次転写外ローラ76とにより、二次転写ニップ部(二次転写部)N2が形成されている。二次転写ニップ部N2は、搬送路75を搬送されてきた記録材Pに対し、中間転写ベルト115上のトナー像を二次転写する。
画像形成部71Yでは、感光ドラム101Yの回転方向(矢印Bの方向)に沿って帯電装置108Y、レーザ光100Yを感光ドラム101Yに照射するレーザスキャナ103Yが配置されている。さらに、電位センサ102Y、現像スリーブ111Yを有する現像装置104Y、クリーニング装置106Yが配置されている。他の画像形成部71M,71C,71Kは画像形成部71Yと同様の構成を有するため、これら画像形成部71M〜71Kでは、画像形成部71Yにおける各符号の後に付した文字YをM、C、Kに読み替えるものとする。このような読み替えは、必要に応じて、他の構成部分においても同様に行うものとする。また、感光ドラム101Y〜101Kのように、各符号の後に文字Y、M、C、Kを付している構成部分を総称する場合には、文字Y、M、C、Kを除去して単に感光ドラム101のように記述するが、これについても必要に応じて、他の構成部分でも同様に行う。
なお、レーザスキャナ103(103Y,103M,103C,103K)は、像担持体としての感光ドラム101(101Y,101M,101C,101K)に夫々に静電像を形成する静電像形成手段を構成している。また、電位センサ102(102Y〜102K)は、感光ドラム101(101Y〜101K)の表面に対して非接触状態で対向し、感光ドラム101との間の静電容量が異なる第1及び第2のアンテナ電極を有する電位検出手段を構成する。本実施形態では、アンテナ201が第1のアンテナ電極を構成し、アンテナ202が第2のアンテナ電極を構成している。
また、感光ドラム上にトナー画像を形成し中間転写ベルト上にトナー像を重ね合わせる工程は、各色で同様であるため、以下の説明では色の表記を省略する。異なる図面においても、同一部品や共通する機能については同じ番号を付している。
[画像形成装置の作用]
次に、画像形成装置10の作用について説明するが、画像形成部71Y〜71Kは互いに同様の構成を有するため、以下では、画像形成部71Y〜71Kにおける各符号の後に付した文字Y〜Kを省略した形で説明する。
すなわち、画像形成装置10では、プリント開始信号が入力されると、感光ドラム101の表面が帯電装置108により所定の電位になるように帯電される。さらに、レーザスキャナ103から画像信号に基づいて変調されたレーザ光100が感光ドラム101上に照射され、感光ドラム101上に静電潜像が形成される。
現像装置104は、内部に収容された現像剤中のトナー粒子の帯電量を後述のように増加させた後、静電潜像と現像スリーブ111間に形成される電界によりトナー粒子を静電力で移動させ、静電潜像を可視化したトナー像として感光ドラム上に形成する。中間転写ベルト115は感光ドラム101と一次転写ローラ113に挟持されており、これにより一次転写部(N1)が形成されている。感光ドラム101上に形成されたトナー像は、一次転写ローラ113により中間転写ベルト115上に一次転写される。
以上の工程をイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色分を順次繰り返すことにより、中間転写ベルト115上に四色が重なったトナー像として形成される。なお、トナー像を一次転写した後の感光ドラム101の表面は、転写しきれなかったトナー等の付着物をクリーニング装置106で除去され、繰り返し画像形成に使用される。
給紙カセット72内に収容された記録材Pは、給紙ローラ116で送り出されて分離搬送ローラ対73で一枚ずつ分離され、搬送路75を経由してレジストローラ対74dに到達する。この記録材Pは、レジストローラ対74dにより、中間転写ベルト115上に担持されたトナー像にタイミングを合わせて二次転写ニップ部(二次転写部)N2に送り込まれる。これにより、中間転写ベルト115上のトナー像が二次転写ニップ部N2で記録材Pに二次転写され、定着装置107で加熱及び加圧されて定着される。画像を定着された記録材Pは、排紙ローラ対78を介して排紙トレイ117上に排紙される。
以上が一般的な中間転写体方式を用いたタンデム型カラー電子写真方式の画像形成装置10の画像出力の工程である。
本実施形態では、上述の画像形成工程のレーザ光100と現像装置104との間に、電位センサ102を配置している。そして、電位センサ102により感光ドラム101上の静電潜像の電位の凹凸を測定する工程と、その測定値を用いてレーザ光100の光量制御及び帯電装置108の帯電制御を行なう工程を有している。
[電位センサの構成]
次に、図3及び図4(a),(b)を用いて、本実施形態における電位センサ102の構成について説明する。なお、図3は、電位センサ102におけるセンサヘッド部2を示す正面図、図4(a)はセンサヘッド部2の断面図、図4(b)はセンサヘッド部2を支持した状態で示す側面図である。図4(a)は、図3のIV−IV線で断面した状態を示している。
図3に示すように、電位センサ102のセンサヘッド部2は、アンテナ201,202と、ガード電極204と、絶縁部205と、アンテナ201,202夫々からの信号を引き出すための引き出し線部2a(図4(b))とを有している。
図3において、例えば、アンテナ幅wは1[mm]、アンテナ長さlaは10[mm]、引き出し線長さlhは30[mm]として製作されている。これらの寸法で安定して製造するために、一般に電気製品の内部配線に使われているフレキシブル基板(ポリイミド製のフレキシブルプリント基板)を採用した。このフレキシブル基板では、例えば厚さ25[μm]のベースフィルムの上に電極層を形成し、ウェットエッチングにより電極パターンを形成することが可能である。また、フィルムを重ね合わせることにより、多層の電極パターンも容易に製作することができる。
図4(a)に示すように、各アンテナ201,202の感光ドラム101に対する静電容量を互いに異ならせるため、感光ドラム101に対する高さ(距離)を相互に変えた電極が3層のフレキシブル基板として製作している。具体的には、アンテナ201とアンテナ202との間の距離d1は例えば200[μm]とした。また、アンテナ201,202に電磁ノイズが入らないように、感光ドラム101に近い面以外は、接地したガード電極204が近接するように構成している。
その他の寸法として、例えば、絶縁部205における表面誘電層の厚みd2を15[μm]とし、アンテナ201,202及びガード電極204の各電極厚みd3を15[μm]とする。さらに、アンテナ202とその背面(図の上側)の裏面ガード電極204との間の距離d4を15[μm]となるように製作した。絶縁部205はポリイミド製であり、その比誘電率εは3程度である。なお、図4(a)では、アンテナ201,202の静電容量を異ならせるために、感光ドラム101に対する距離(d1)を設けているが、これに代えて、C=εS/dの関係から誘電率を変えるように構成することも可能である。
また、図4(b)に示すように、検出部3に支持部材79を介して支持されたセンサヘッド部2は、アンテナ201,202で検知した検知信号(電気的出力)を、引き出し線部2aを介して検出部3に出力する。検出部3は、演算部4(図2)を介して制御部80(図1)に接続されており、アンテナ201,202から入力した検知信号を演算部4に送る。演算部4は、その演算結果を制御部80に送る。また、センサヘッド部2は、アンテナ201,202を安定して感光ドラム101に対向させるために、アンテナ201,202、ガード電極204及び絶縁部205からなるアンテナ部の裏面が、塗布された接着層5により支持ブロック6側に固定されている。
上記のように、電位検出手段としての電位センサ102は、検出部3及び演算部4を有している。検出部3は、静電潜像(静電像)が電位センサ102に対して移動することによって、第1及び第2のアンテナ電極としてのアンテナ201,202に夫々発生した誘導電流を夫々検出する検出回路を構成する。なお、電位センサ102を、感光ドラム101上の静電潜像に対して移動させるように構成することも可能であり、相対的な移動構成にできる。その場合にも同様の効果を得ることができる。これは、後述する各例(第2の実施形態を含む)においても同様である。
演算手段である演算部4は、感光ドラム表面に形成された静電潜像が移動する時にアンテナ201,202に夫々発生する電気的出力に基づき、アンテナ201,202の夫々と感光ドラム101との間の静電容量の変化成分を打ち消すように演算する。そして演算部4は、感光ドラム101表面(像担持体表面)に形成された静電像の電位を算出する。この演算部4は、検出部(検出回路)3から出力された検知信号(電気的出力)に基づいて静電像の電位を算出する。
制御手段としての制御部80は、静電像形成手段としてのレーザスキャナ103(103Y,103M,103C,103K)を、本実施形態においても、後述する第2の実施形態においても、以下のように制御する。即ち、制御部80は、電位検出手段としての電位センサ102(102Y〜102K)から取得した感光ドラム101表面に形成された静電潜像(静電像)の電位に基づいてレーザスキャナ103(103Y〜103K)を制御する。
支持ブロック6は、例えば画像形成装置10の筐体に固定されている。一般的に画像形成装置10の感光ドラム101は、回転周期で数十[μm]の偏芯を持つため、図4(b)に示した固定方法では、アンテナ201,202と感光ドラム101との間の距離が数十[μm]は変動する可能性がある。さらに、筐体や支持ブロック6の製作公差や取り付け誤差により、センサヘッド部2を取り付けたときに、設計した高さから0.5[mm]程度ずれてしまう虞もある。
本実施形態は、これら偏芯による変動や、取り付け誤差によるずれの影響を除去して、感光ドラム101の表面電位を正確に測定することを可能にするものである。したがって、距離変動の影響を除去するために、高精度な位置制御・補正や、高圧電源(ゼロ位法)を必要としないため、電位センサ102を安価に製作することが可能である。
以上が電位センサ102の構成である。次に、距離変動の影響を除去するための演算方法について、図5(a),(b)及び図6(a),(b)を参照して説明する。なお、図5(a),(b)及び図6(a),(b)は、アンテナ信号の検出方法について説明するための図である。
[電位センサの演算方法]
ここで、感光ドラム101に対して静電容量の異なる2つのアンテナ201,202の信号を検出・演算することによって、感光ドラム101に対する距離変動による影響を除去して、感光ドラム101の表面電位を測定する方法を説明する。ここでは、2つのアンテナ201,202の信号の検出方法と演算方法とについて述べる。
以下、検出方法や演算方法を説明するために、図5(a),(b)に示した等価回路図を用いる。まず、図5(a)に示す接地電極109、感光ドラム101、アンテナ201及びガード電極204を等価回路で表わすと、図5(b)に示すようにCp、Ca、Csの3つの静電容量の直列回路で表わされる。
ここで、Cpは、感光ドラム101の静電容量、即ち接地電極109〜感光ドラム101表面における静電容量である。Caは、アンテナ201,202間の静電容量の差である。Csは、アンテナ201とガード電極204間の静電容量である。感光ドラム101に静電潜像が形成されると、等価回路では、感光ドラム101の静電容量Cpと、アンテナ201,202間の静電容量の差であるCaとの間に、感光ドラム101の表面電荷Qpが注入される。
次に、図6(a),(b)は、アンテナ201,202のアンテナ信号を測定するための2つの方法を示したものである。アンテナ信号を測定するには、検出部(検出回路)3のインピーダンスを、静電容量Csによるインピーダンスより十分小さくして検出部3の回路に積極的に誘導電流を流して電流を検知する方法(以下、電流法と呼ぶ)がある。また、検出部(検出回路)3のインピーダンスを静電容量Csより十分大きくして検出部3の回路に誘導電流を流さずにアンテナの電位変化を測定する方法(以下、電位法と呼ぶ)がある。
図6(a)に示した電流法では、回路に流れる誘導電流を積分することで、Caの誘導電荷量を測定することが可能であり、CaとCpの大きさから感光ドラム101の表面電荷Qpを算出することができる。さらに、Vp=Qp/Caの関係から、感光ドラム101の表面電位Vpを算出することができる。
一方、図6(b)に示した電位法では、アンテナの電位変化を測定することが可能で、Cs、Ca、Cpの大きさから感光ドラム101の表面電荷Qaを算出することができる。電位法においても、Vp=Qp/Caの関係から、感光ドラム101の表面電位Vpを算出することができる。図6(a),(b)において、検出部3はオペアンプ3aを有しており、これは他の図においても同様である。
以上の電流法、電位法ともに、アンテナ201,202に誘導電流が発生した前後の電荷及び電位の変化量を測定するため、感光ドラム101の表面電荷Qaの絶対値を測定することはできない。ただし、画像形成装置10のシステムを用いて、感光ドラム101の表面電位の絶対値を算出することは可能である。この方法については、本実施形態の最後に述べる。
以下、電流法及び電位法について、さらに詳しく説明する。
[電流法]
まず、図6(c),(d)及び図7(a),(b)を用いて、電流法によって2つのアンテナ信号を演算する方法と、その効果について述べる。なお、図6(c)は、アンテナ201を等価回路で示したものであり、図6(d)は、アンテナ202を等価回路で示したものである。アンテナ201とアンテナ202は近傍に設置してあるので、図6(c)と図6(d)で、感光ドラム101の静電容量Cpと表面電荷Qpは共通である。また、アンテナ201,202とガード電極204間の静電容量Csは、電流が流れず、回路計算には影響しないので、省略している。
以下、電流法において、感光ドラム101の表面電荷Qpを、感光ドラム101表面とアンテナ201間並びに感光ドラム101表面とアンテナ202間の各静電容量Ca1及びCa2に依らずに算出できることについて述べる。なお、図6(c),(d)におけるQd1及びQd2はそれぞれ、感光ドラム101の静電容量Cpに対応する誘導電荷である。
まず、電流法ではアンテナ201,202の電位は固定されているので、ここではアンテナ201,202の各電位を0Vとする。この場合、アンテナ201に関してアンテナ誘導電荷Qa1と感光体表面電荷Qpとの間には、次式(4)の関係がある。
アンテナ202についても同様にして、アンテナ誘導電荷Qa2と感光体表面電荷Qpとの間には、次式(5)の関係がある。
ここで、アンテナ静電容量Ca1とアンテナ静電容量Ca2の静電容量の差をCaと定義すると、Caは、次式(6)のように表わされる。
ここで、図4(a)に示したように、アンテナ201とアンテナ202は、1つの部材である絶縁部205で固定されているので、Caは固定値である。上記の式(4)〜(6)から、アンテナ静電容量Ca1及びCa2を消去してQpについて整理すると、次式(7)のようになる。
式(7)では、アンテナ誘導電荷Qa1及びQa2は測定値であり、感光ドラム101の静電容量Cp、並びに、固定値であるアンテナ静電容量Ca1とCa2の静電容量の差Caは固定値である。Caは工場出荷時に測定しておけば良い。また、Cpに関しては、前述したように、
(i)工場出荷時の膜厚検査と、使用時間・環境等による膜厚変化の予測
(ii)帯電ローラのV−I特性の測定による膜厚の把握(特開2011−13431号公報参照)のいずれかにより、把握しておくことが可能である。
以上から、2つのアンテナ201,202を用いることで、アンテナと感光ドラム101との間の距離(つまり、アンテナ静電容量Ca1及びCa2)に依らずに、感光ドラム101の表面電荷Qpを算出可能であることが示された。また、Vp=Qp/Cpの関係から、感光体の表面電位Vpを算出することが可能である。
図7(a)に、電流法によって測定されたアンテナ201,202の電荷量Qa1及びQa2を示す。なお、アンテナ202はアンテナ201よりも、感光ドラム101に対する距離が例えば200[μm]だけ離れている。また、横軸の距離d0は、アンテナ201と感光ドラム101間の距離であり、感光ドラム表面は600[V]としている。図7(a)から、距離d0が大きくなるにつれて、測定される電荷量[pC]は小さくなっていることが分かる。
また、図7(b)には、測定電荷(pC)から算出された感光ドラム101の表面電位を示す。2つのアンテナ201,202を有する本実施形態の形式(2つアンテナ)では、式(7)の計算式を用いて算出した。また、1つのアンテナを有する形式(1つアンテナ)では、距離d0が1[mm]のときに、与えた電位600[V]となるように係数を決めている。
図7(b)から、距離d0が大きくなるにつれて1つアンテナから算出された電位は小さくなっていることが分かる。特に、設定値1[mm]の前後をみると、設置が±0.5[mm]ずれただけで、算出電位[V]は±数百Vの誤差を持ってしまうことが分かる。これに対して、2つアンテナから算出された電位は、距離d0に依らずに、感光ドラム101に与えた電位600[V]が算出できていることが分かる。
このように演算部4は、感光ドラム表面に形成された静電潜像が移動する時にアンテナ201,202に夫々発生する電気的出力(電流)に基づき、アンテナ201,202の夫々と感光ドラム101との間の静電容量の変化成分を打ち消すように演算する。そして演算部4は、感光ドラム101表面に形成された静電像の電位を算出する。つまり、演算部4は、検出部3で検出されて検出部3から出力された電気的出力(電流)に基づいて静電像の電位を算出する。このように、電位センサ102はその構成が簡略化されている。
以上の本実施形態では、電流法を用いて演算部4は、アンテナ201,202夫々の電気的出力としての誘導電荷をQa1、Qa2とし、アンテナ201,202間の静電容量をCaとし、感光ドラム101の静電容量をCpとするとき、以下のことができる。即ち演算部4は、誘導電荷Qa1及びQa2を発生させる感光ドラム101の表面電荷Qpを、上記式(7)により算出し、Vp=Qp/Cpにより算出された感光ドラム101の表面電位Vpに基づいて、静電潜像の電位を算出する。
以上のように電流法において、式(7)の演算をすることで、アンテナ201,202と感光ドラム101間の距離に依らずに、感光ドラム101の表面電位が正確に算出できることが分かる。
[電位法]
次に、図8(a),(b)を用いて、電位法によって2つのアンテナ信号を演算する方法と、その効果について述べる。なお、図8(a)は、アンテナ201を等価回路で示したものであり、図8(b)は、アンテナ202を等価回路で示したものである。電位法においても、アンテナ201とアンテナ202は近傍に設置してあるので、図8(a)と図8(b)で、感光ドラム101の静電容量Cpと、表面電荷Qpは共通である。
以下、電位法において、感光ドラム101の表面電荷Qpを、感光ドラム101表面とアンテナ201間並びに感光ドラム101表面とアンテナ202間の各静電容量Ca1及びCa2に依らずに算出できることについて述べる。
まず、図8(a)において、静電容量Ca1と静電容量Cs1の合成容量Cas1は、次式(8)のように表わされる。
また、測定電位Va1と感光ドラム101の電位Vd1には、直列回路の分圧計算から、次式(9)の関係がある。
式(8)と式(9)から、Cas1を消去し、Ca1について整理すると、次式(10)のようになる。
また、図8(b)に関しても、同様にして、次式(11)が得られる。
電位法においても、前述の式(6)は同様に成立するので、式(6)、式(10)、式(11)からCa1及びCa2を消去し、Qpについて整理すると、次式(12)のようになる。
式(12)では、電位Va1及びVa2は電位法で測定されたアンテナ201,202の各電位の測定値であり、Cs1、Cs2、Ca(固定値である静電容量Ca1とCa2の静電容量の差)、及びCpは固定値である。以上から、電位法においても、2つのアンテナ201,202を用いることにより、アンテナと感光ドラム101間の距離(つまり、アンテナ静電容量Ca1及びCa2)に依らずに、感光ドラム101の表面電荷Qpを正確に算出できることが示された。また、Vp=Qp/Cpの関係から、感光ドラム101の表面電荷Vpを算出することができる。
図9(a)には、電位法によって測定されたアンテナ201,202の各電位Va1及びVa2を示す。アンテナ202はアンテナ201よりも、感光ドラム101に対する距離が例えば200[μm]だけ離れている。また、横軸の距離d0は、アンテナ201と感光ドラム101間の距離であり、感光ドラム表面は600[V]とした。図9(a)から、距離d0が大きくなるにつれて、測定される電位は小さくなっていることが分かる。
また、図9(b)には、測定電荷から算出された感光ドラム101の表面電位を示す。アンテナを2つ有する形式(2つアンテナ)は、式(12)の計算式を用いて算出した。また、アンテナを1つ有する形式(1つアンテナ)は、距離d0が1[mm]のときに、与えた電位600[V]になるように係数を決めている。図9(b)から、距離d0が大きくなるにつれて1つアンテナから算出された電位は小さくなっていることが分かる。特に、設定値1[mm]の前後をみると、設置が±0.5[mm]ずれただけで、算出電位は±数百Vの誤差を持ってしまうことが分かる。これに対して、2つアンテナから算出された電位は、距離d0に依らずに、感光ドラム101に与えた電位600[V]が算出できていることが分かる。
ここで、検出回路としての検出部3は、静電潜像(静電像)が移動することによってアンテナ201,202に夫々発生した電位を夫々検出する。演算手段としての演算部4は、検出部3から出力された電気的出力(電位)に基づいて静電像の電位を算出する。
以上のように本実施形態では、アンテナ201,202と感光ドラム101との間の領域から外れた位置に、アンテナ201,202とそれぞれ静電容量を有するように配置されたガード電極204を有している。電位法を用いる演算部4は、アンテナ201,202夫々の電気的出力としての電位をVa1、Va2とし、アンテナ201,202夫々とガード電極204との間の静電容量をCs1、Cs2とする。さらに、感光ドラム101の静電容量をCpとし、アンテナ201,202間の静電容量をCaとする。このとき演算部4は、電位Va1及びVa2を発生させる感光ドラム101の表面電荷Qpを、上記式(12)により算出し、Vp=Qp/Cpにより算出された感光ドラム101の表面電位Vpに基づいて、静電潜像の電位を算出する。
以上のように電位法においても、式(12)の演算をすることで、アンテナ201,202と感光ドラム101間の距離に依らずに、感光ドラム101の表面電位を正確に算出できることが分かる。
以上、電流法と電位法に関して、2つのアンテナ出力を用いて、アンテナ201,202と感光ドラム101間の距離に依らずに、感光ドラム101の表面電位を算出する演算方法について説明した。
[画像形成装置への適用システム]
ここでは、本発明を適用した電位センサ102を、電子写真方式の画像形成装置10に組み込んだ場合のシステムについて説明する。
本電位センサ102は、ゼロ位法の電位センサに比べて、高圧回路を持たないため、応答性が早いという特徴がある。この特徴により、紙間で電位を測定し、常時帯電の印加電圧や露光強度にフィードバックすることができる。また、電位センサ102の演算方法で述べたように、本電位センサ102は電位の変化量(相対値)を測定するものであるので、電位の絶対値を求めるためには、画像形成装置10のシステムと組み合わせる必要がある。
以下、(A)紙間での電位検知と、(B)システム組み合わせによる電位の絶対値測定、を踏まえて、適用システムの説明を行なう。
[ローラ帯電を用いた画像形成装置]
まず、図10、図11、図12を用いて、ローラ帯電を用いた画像形成装置への適用について説明する。なお、図10は、図1における1つの画像形成部を抜粋して示す図であり、この画像形成部では、帯電装置108は帯電ローラで構成されている。図11は、ローラ帯電を用いた画像形成装置において電位を測定したときの測定波形と潜像パッチを示す図である。図12は、図10における画像形成部を動作させる場合の処理を示すフローチャートである。
図10に示した帯電ローラ(108)は、一般的な電子写真方式の画像形成装置に用いられるタイプである。帯電ローラ(108)は、図示しない高圧電源に接続され、交流(例えば2[kHz]、1[kVpp])と直流(例えば、−700[V])の高圧バイアスが印加される。図10において、レーザスキャナ103及び帯電ローラ(108)は制御部80(図1参照)に接続されている。
帯電ローラ(108)による感光ドラム101の帯電は、電位収束性が良く、感光ドラム101の帯電電位Vdは印加電圧の直流成分とほぼ等しくなる。また、帯電後にレーザスキャナ103によって所定の大きさの潜像パッチを感光ドラム101に形成し、その潜像パッチを電位センサ102で測定することで、露光前後の電位差(Vl−Vd)を把握することができる。つまり、帯電ローラ(108)の印加電圧から感光ドラム101の帯電電位Vdを把握し、電位センサ102で感光ドラム101の露光部電位Vlを測定するのである。
図11では、感光ドラム101上の潜像パッチを破線で示しており、電位センサ102の測定波形を実線で示している。ここでは、アンテナを感光ドラム101から1[mm]の高さに設置した。このとき、アンテナが測定する範囲は、電界の拡がりにより感光ドラム上で約3.5[mm]となった。つまり、測定波形は、露光部電位Vlのエッジ部分では3.5[mm]広がる。ここで、電位センサ102の応答性は、回路の時定数によるのみで、十分早い(回路の時定数は無視できるほど小さい)。そのため、電界の拡がりのみを考慮すれば良く、潜像パッチの大きさはVl長さを5[mm]、パッチ間距離を12[mm]とすることで、VlとVdを十分区別して測定することができる。
また、一般的な電子写真方式の画像形成装置では、A4サイズを印字するとき、紙間を50[mm]程度に設定することが多い。つまり、上記潜像パッチは、紙間で3周期分だけ形成することができる。また、感光ドラム101の非露光部電位(帯電電位)Vdを−600[V]とし、露光部電位Vlを−100[V]とした。先ほど述べたように、感光ドラム101の帯電電位Vdは帯電ローラのDC印加電圧となり、電位センサ102がVl−Vdを測定することで、非露光部電位(帯電電位)Vdと露光部電位Vlの絶対値を把握することができる。さらに、潜像パッチを3周期分測定し、その平均値を取ることで、ノイズの影響を低減させることができる。
上述したように、本電位センサ102は応答性が早いため、紙間で電位を測定し、随時帯電の印加電圧や露光強度にフィードバックすることができる。この動作について、図12に示したフローチャートを用いて説明する。
まず、制御部80は、ジョブ(JOB)を開始(S1)した後、準備動作として感光ドラム101、中間転写ベルト115、現像装置104を駆動させ、帯電バイアスをONとする(S2)。続いて、制御部80は、レーザスキャナ103を駆動して、電位検知用の潜像パッチを感光ドラム101上に形成し、電位センサ102により潜像パッチの電位を測定する(S3)。このとき、現像装置104や一次転写ローラ113のバイアスはOFFになっているので、潜像パッチは現像や転写がされず、帯電ローラ(108)により消去される。
次に、制御部80は、電位センサ102による測定値が目標範囲に入っているか否かを確認する(S4)。目標範囲に入っていない場合は、露光強度を制御する(S5)。具体的には、電位センサ102で測定した露光部電位Vlが目標値よりも大きい場合(例えば、目標値−100[V]に対し、測定値−50[V]のとき)は、露光強度を弱くして露光部電位Vlを小さくする。逆に、測定値が目標値よりも小さい場合(例えば、目標値−100[V]に対し、測定値−150[V]のとき)は、露光強度を強くして露光部電位Vlを大きくする。この露光強度制御を繰り返し、露光部電位が目標値に入ったら、印字を開始する(S6)。
制御部80は、印字開始後、まず現像装置104及び一次転写ローラ113の各バイアスをONにする(S7)。印字中、画像形成をしていない紙間で潜像パッチを形成し、電位センサ102により電位の測定を行なう(S8)。制御部80は、印字終了の判断を行ない(S9)、印字が終了しない場合には、測定電位が目標範囲に入るように常時、上記露光強度制御を行なう(S10)。本電位センサ102は、応答性が早いため、紙間で潜像パッチを測定し、常時電位制御を行なうことができる。制御部80は、最後に印字を終了すると、各バイアス及び駆動を停止し(S11)、JOBを終了する(S12)。
以上のように、帯電ローラ(108)を用いてローラ帯電を行う画像形成装置において、非露光部電位(帯電電位)Vd及び露光部電位Vlの絶対値の把握と、紙間電位検知による感光ドラム101の高精度な電位制御が可能となる。
[コロナ帯電器を用いた画像形成装置]
次に、図13、図14、図15を用いて、コロナ帯電器を用いた画像形成装置への適用について説明する。なお、図13は、図1における1つの画像形成部を抜粋して示す図であり、この画像形成部では、帯電装置108はコロナ帯電器で構成されている。図14は、コロナ帯電器を用いた画像形成装置で、電位を測定したときの測定波形と潜像パッチを示した図である。図15は、図13の画像形成部を動作させる場合の処理を示すフローチャートである。
図13に示したコロナ帯電器(108)は、一般的な電子写真方式の画像形成装置に用いられている。コロナ帯電器(108)は、例えば、放電ワイヤと、これを囲むように設けられた「コの字状」の導電性シールドと、このシールドの開口部に設置されたグリッド電極とを有するスコロトロン・タイプである。コロナ帯電器(108)は、直流電圧の帯電バイアスが、放電ワイヤ及びグリッド電極に印加される構成となっており、電源から印加された帯電バイアスにより、感光ドラム101の表面を帯電位置において負極性の電位に一様に帯電処理する機能を有している。
図13に示すように、コロナ帯電器(108)と電位センサ102との間に、感光ドラム101表面に対し所定距離をあけて対向するようにVdセンサ120が配置されている。コロナ帯電器(108)及びVdセンサ120は、制御部80(図1参照)に接続された帯電制御装置118にそれぞれ接続されている。
コロナ帯電器(108)の特徴として、一般的に、ローラ帯電と比べて耐久性は非常に優れるが、電位収束性が劣るという点が挙げられる。そのため、本例では、Vdセンサ120及び帯電制御装置118を用いて、非露光部電位(帯電電位)Vdの制御を行なう。Vdセンサ120とは、例えば、ゼロ位法を用いた電位センサで、感光ドラム101の電位の絶対値を測定することが可能なセンサである。
ローラ帯電と同様、帯電後にレーザスキャナ103により所定の大きさの潜像パッチを感光ドラム101表面に形成し、その潜像パッチを電位センサ102で測定することにより、露光前後の電位差(Vl−Vd)を把握することができる。つまり、Vdセンサ120で非露光部電位(帯電電位)Vdを把握し、電位センサ102で露光部電位Vlを測定するのである。
ここで、電位センサ102により露光部電位Vlを測定するのは、応答時間が早いからである。つまり、Vdセンサ120は、応答時間が遅いために、紙間での電位検知(Vd、Vl)は困難なのである。この理由について具体的に述べる。Vdセンサ120は、コストの面から、応答時間が1[kV]の立ち上がりで60[msec]程度のものが現実的である。感光ドラム101の速度が300[mm/sec]であるとすると、この応答時間は感光ドラム101上で、60m[sec]×300[mm/sec]=18[mm]となる。
Vdセンサ120により露光部電位Vlを測定しようとすると、この応答時間18[mm]に例えば前後5[mm]の余裕を加えると、潜像パッチの大きさは28[mm]となる。したがって、電界の拡がり(前後3.5[mm])も考慮すると、合計で18[mm]+10[mm]+7[mm]=35[mm]となり、紙間50[mm]に潜像パッチは1つしか入らない。潜像パッチが1つであると、信号の平均化処理が行なえないため、電位測定に十分な精度がとれない。以上から、Vdセンサ120を用いて、紙間で露光部電位Vlを測定することは困難であるといえる。
図14では、感光ドラム101上の潜像パッチを破線で示し、電位センサ102の測定波形を実線で示している。ここでは、アンテナを感光ドラム101から1[mm]の高さに設置した。このとき、アンテナが測定する範囲は、電界の拡がりにより感光ドラム上で約3.5[mm]となった。
したがって、測定波形は露光部電位Vlのエッジ部分では3.5[mm]拡がる。電位センサ102の応答性は回路の時定数によるのみで十分早いため(回路の時定数は無視できるほど小さい)、電界の拡がりのみを考慮すれば良い。そして、潜像パッチの大きさはVl長さを5[mm]、パッチ間距離を12[mm]とすることで、非露光部電位(帯電電位)Vdと露光部電位Vlを十分区別して測定することができる。紙間を50[mm]とすれば、潜像パッチを3周期分測定し、その平均値をとることで、ノイズの影響を低減させることができる。また、非露光部電位(帯電電位)Vdは、Vdセンサ120によって、常時測定する。つまり、非露光部電位VdはVdセンサ120によって測定し、電位センサ102がVl−Vdを測定することで、VdとVlの絶対値を把握することができる。
上述したように、本実施形態における電位センサ102は応答性が早いため、紙間で電位を測定し、随時帯電の印加電圧や露光強度にフィードバックすることができる。この動作について、図15に示したフローチャートを用いて説明する。
まず、制御部80は、JOBを開始(S21)した後、準備動作として感光ドラム101、中間転写ベルト115、現像装置104を駆動させ、帯電バイアスをONとする(S22)。Vdセンサ120によって、非露光部電位(帯電電位)Vdを測定し(S23)、非露光部電位Vdが目標範囲内に入っているか否かを判断する(S24)。目標範囲に入っていない場合、制御部80は、非露光部電位Vdが目標範囲に入るように帯電制御装置118に指令を送って帯電バイアスを制御する(S25)。
続いて、制御部80は、レーザスキャナ103により、電位検知用の潜像パッチを感光ドラム101表面に形成し、電位センサ102により潜像パッチの電位を測定する(S29)。このとき、現像装置104や一次転写ローラ113のバイアスはOFFになっているので、潜像パッチは現像や転写がされず、帯電装置であるコロナ帯電器(108)で消去される。
次に、制御部80は、電位センサ102の測定値が目標範囲に入っているか否かを確認する(S30)。目標範囲に入っていない場合は、帯電制御装置118に指令を送って露光強度を制御する(S31)。具体的には、電位センサ102で測定した露光部電位Vlが目標値よりも大きい場合(例えば、目標値−100[V]に対し、測定値−50[V]のとき)は、露光強度を弱くして露光部電位Vlを小さくする。逆に、測定値が目標値よりも小さい場合(例えば、目標値−100[V]に対し、測定値−150[V]のとき)は、露光強度を強くして露光部電位Vlを大きくする。
また、この間も、Vdセンサ120による非露光部電位(帯電電位)Vdの制御を行い(S26〜S28)、非露光部電位Vdを常に一定の範囲内に制御する。制御部80は、この帯電制御及び露光強度制御を繰り返し、非露光部電位(帯電電位)Vd及び露光部電位Vlが目標値に入ったら、印字を開始する(S32)。
制御部80は、印字開始後、まず現像装置104及び一次転写ローラ113のバイアスをONにする(S33)。印字中も、Vd測定及び帯電制御(S34〜36)や、紙間でのVl測定及び露光制御を行い(S37、S35、S38)、常時、非露光部電位(帯電電位)Vd及び露光部電位Vlが目標範囲に入るように制御する。制御部80は、最後に印字を終了すると、各バイアス及び駆動を停止し(S39)、JOBを終了する(S40)。
以上のように、コロナ帯電器を用いた画像形成装置では、Vdセンサ120による常時Vd検知と、電位センサ102による紙間Vl検知で、非露光部電位Vd及び露光部電位Vlを常に安定させることができ、その結果、良好な画像を得ることができる。
以上の本実施形態をまとめると、本電位センサ102は、静電容量の異なる2つのアンテナ201,202を設置してその信号を解析することで、ゼロ位法のように高圧電源や駆動系を必要としない簡易かつ安価な構成を備えることができる。また、アンテナ201,202と測定対象の感光ドラム101との距離に影響されずに、感光ドラム101の電位を正確に検出することができる。その特徴は応答性が早いことであり、画像形成装置10に応用したことで、紙間電位測定による常時電位(Vd及びVl)の制御が可能となる。
<第2の実施形態>
次に、本発明に係る第2の実施形態について説明する。なお、本実施形態では、第1の実施形態と同一の部材には同一符号を付すと共に、構成、機能が同じものについてはその説明を省略する。
本実施形態では、電位センサが設置時の取り付け誤差や温度変化等々により、感光ドラム101に対して傾いた場合の影響について述べる。具体的には、第1の実施形態で述べたアンテナ201,202を有する電位センサ102が傾いた場合、固定値だとしたアンテナ201,202の静電容量Ca1とCa2の静電容量の差Ca(式(6)で定義)が変化してしまい、算出電位に誤差が生じてしまう。本実施形態では、この電位センサの傾きによる影響を除去するため、3つのアンテナ出力による演算を実施する。なお、本実施形態では、アンテナ201が第1のアンテナ電極を構成し、アンテナ202,203が第2のアンテナ電極を構成している。
本実施形態では、第1のアンテナ電極としての1つのアンテナ201を有すると共に、第1のアンテナ電極との間の静電容量が同じになるように配置した2つの第2のアンテナ電極としてのアンテナ202,203を有している。
本実施形態においても、電位センサ102が電位検出手段を構成し、図2に示したような検出部3及び演算部4を同様に有している。本実施形態の検出部3は、静電潜像(静電像)が移動することによってアンテナ201,202,203に夫々発生した誘導電流を夫々検出する検出回路を構成している。本実施形態の演算部4は、感光ドラム表面に形成された静電潜像が移動する時にアンテナ201,202,203に夫々発生する電気的出力に基づき、アンテナ201〜203夫々と感光ドラム101との間の静電容量の変化成分を打ち消すように演算する。そして演算部4は、感光ドラム101表面に形成された静電像の電位を算出する。つまり、演算手段としての演算部4は、検出部3から出力された電気的出力(電流、電圧)に基づいて静電像の電位を算出する。
以下、本実施形態の特徴的な点を中心に説明する。図16(a)は、本実施形態における電位センサ102のセンサヘッド部2が傾いた様子を示した模式図である。図16(a)に示すように、本実施形態における電位センサ102は、センサヘッド部2に3つのアンテナ201,202,203を有している。
アンテナ202とアンテナ203は、アンテナ201を頂点とする三角形の底辺の左右両端に配置され、図3及び図4で説明した絶縁部205に埋め込まれることで相互の位置関係が固定された状態に保持されている(図18参照)。アンテナ201,202,203は、図3及び図4の場合と同様に、周囲のガード電極204とそれぞれに所定の距離を維持するように位置決めされている。
第1の実施形態では、2つのアンテナ201,202間の静電容量の差Caが固定値だとしたが、図16(a)のようにセンサヘッド部2が傾いた場合は、静電容量の差Caは変化してしまう。その理由について説明する。
まず、図16(a)における破線のように、センサヘッド部2が傾いていない場合には、アンテナ201,202,203の厚みが十分薄いとすると、アンテナ201とアンテナ203との間の静電容量Ca1は、次式(13)のように定義される。
一方で、図16(a)における実線のように、アンテナ201を中心にセンサヘッド部2が角度θだけ傾いた場合、アンテナ201とアンテナ203の、感光ドラム101に対する距離の差はd11のように変化する。ここで、アンテナ201とアンテナ203が傾いていない場合の水平方向の距離をg1とすると、距離d1と距離d11の関係は、次式(14)のようになる。
したがって、センサヘッド部2が傾いた場合の、アンテナ201とアンテナ203間の静電容量の差Ca11は、次式(15)となり、静電容量の差Ca11は角度θに依存してしまうことが分かる。
したがって、センサヘッド部2が傾いた場合に、前述した式(7)や式(12)の演算を行なっても、実際には、静電容量Caが変化しているため、算出電位に誤差が生じてしまう。具体的な誤差量に関しては後述する。本実施形態では、このセンサヘッド部2が傾いたときの影響を除去して補正するために、3つ目のアンテナ202を導入している。
[3つアンテナの演算方法]
次に、図16(b)及び図17を用いて、3つアンテナの演算方法について説明する。ここでは、電流法のみについて説明をする。なお、図16(b)は、3つアンテナの演算を行なう際の、計算を簡易化するための近似モデルを示した模式図である。図17は、3つアンテナの等価回路を示したものである。
図16(b)の近似モデルでは、アンテナ201を中心に傾きが生じた場合に、アンテナ202が距離dxだけ感光ドラム101に近づくように、アンテナ203が距離dxだけ感光ドラム101から遠ざかるように位置が変化するとして考える。なお、ここでは電流法を用いて演算を行なうため、アンテナ201,202,203それぞれの誘導電荷Qa1,Qa2,Qa3が測定値となる。
図17に示すように、3つのアンテナ201,202,203は近傍に位置しているため、感光ドラム101の表面電荷Qp及び静電容量Cpは、各等価回路において共通である。以下、センサヘッド部2の傾き(図16(b)のdx参照)に依らずに、感光ドラム101の表面電位が算出できることを示す。
まず、アンテナ201とアンテナ202間の静電容量Ca12と、アンテナ201とアンテナ203間の静電容量Ca13は、次式(16)、(17)のように表わされる。
ここで、距離d1は、アンテナ201と、アンテナ202及び203との距離であり、センサヘッド部2を製作したときの寸法(固定値)である。次に、式(16)と、式(17)から、dxを消去すると、次式(18)の関係が得られる。
一方、第1の実施形態における式(7)を、アンテナ201とアンテナ202、及びアンテナ201とアンテナ203の関係に適用すると、次式(19)、(20)のようになる。
ここで、式(18)〜(20)を用いて、アンテナ201,202間の静電容量Ca12と、アンテナ201,203間の静電容量Ca13を消去し、Qpで整理すると、次式(21)のようになる。
ただし、式(21)のCaは、Ca=εS/d1で定義しており、この値はセンサヘッド部2が傾いていない場合の、アンテナ201と、アンテナ202及び203との間の静電容量である。この静電容量Caは、センサヘッド部2を製作したときに測定しておけば良く、センサヘッド部2の取り付け誤差等に依らない値、すなわち固定値である。
したがって、式(21)では、感光ドラム101の静電容量Cp、及び、センサヘッド部2が傾いていない場合の、アンテナ201と、アンテナ202及び203との間の静電容量Caが固定値となる。そして、アンテナ201,202,203夫々の誘導電荷Qa1,Qa2,Qa3が測定値となる。したがって、3つのアンテナ201,202,203を用いることで、センサヘッド部2の傾きに影響せず、感光ドラム101の表面電荷Qpを算出することができる。Qpが算出されれば、感光ドラム101の表面電位Vp=Qp/Cpという関係から、表面電位Vpが算出できる(Vp:感光ドラム101の表面電位Vp、Qp:感光ドラム101の表面電荷、Cp:感光ドラム101の静電容量)。以上が、3つアンテナの演算方法である。
このように、電流法を用いる演算部4は、アンテナ201,202,203夫々の誘導電荷をQa1、Qa2,Qa3とし、感光ドラム101の静電容量をCpとする。さらに、アンテナ201〜203を有するセンサヘッド部2が感光ドラム101に対して傾いていない場合の、アンテナ(第1のアンテナ電極)201と、アンテナ(第2のアンテナ電極)202,203との間の静電容量をCaとする。このとき演算部4は、誘導電荷Qa1、Qa2,Qa3を発生させる感光ドラム101の表面電荷Qpを、上記式(21)により算出し、Vp=Qp/Cpにより算出された感光ドラム101の表面電位Vpに基づいて、静電潜像(静電像)の電位を算出する。
次に、図18及び図19(a),(b)を用いて、3つアンテナの演算による効果について述べる。
図18は、3つのアンテナ201,202,203を有するセンサヘッド部2の断面を示している。ここで、寸法として、アンテナ201と、アンテナ202及び203の垂直方向の距離d1を200[μm]、各アンテナの水平方向の距離g1を1[mm]とした。また、絶縁部205の比誘電率εは、ε=3として計算した。なお、図18では、3つのアンテナ201,202,203の静電容量を異ならせるために、感光ドラム101に対する距離を変えているが、C=εS/dの関係から、誘電率を変えるように構成しても良い。
図19(a)は、センサヘッド部2がアンテナ201を中心に傾いた場合の、各アンテナの測定電位を示したものである。感光ドラム101の表面電位は600[V]としている。図16(a),(b)等に示したように、アンテナ201の測定電荷はセンサヘッド部2が傾いても変化しない。しかし、アンテナ202及び203は、センサヘッド部2が傾くと感光ドラム101に対して距離が変化してしまうので、測定電荷は変化してしまう。
図19(b)は、2つアンテナ及び3つアンテナの演算を行なった際の、感光ドラム101の算出電位を示した図である。2つアンテナの演算は式(7)を用いており、3つアンテナの演算は式(21)を用いている。図19(b)から分かるように、センサヘッド部2の傾きに応じて、2つのアンテナ201,202から算出された表面電位は誤差が生じていることが分かる。一方、3つのアンテナ201,202,203から算出された表面電位は、傾きに拘わらず、設定値である600[V]が算出できていることが分かる。
すなわち、式(21)の演算により、センサヘッド部2が傾いた影響を除去して補正し、感光ドラム101の表面電位をより正確に算出できることが分かる。したがって、本実施形態によれば、第1の実施形態とほぼ同様の効果が得られると共に、センサヘッド部2の傾きの影響を補正して、感光ドラム101の表面電位をより正確に算出できるという効果を得ることができる。
以上のように、従来は感光体の表面電位を測定する電位センサは、感光体とプローブの距離が変化すると、測定値に誤差が生じていた。また、この距離変化の影響を除去するために、プローブに感光体と同じ電位を印加する方法が取られていたが、この方法ではコストが高くなるほか、高圧回路の応答性を上げられない。そのため、電位検出タイミングに制限があり、常時感光体の電位を一定に保つということができなかった。しかし、本発明を適用した第1及び第2の実施形態では、感光ドラム101に対して静電容量が異なるアンテナを少なくとも2つ設置し、その出力を演算することで、アンテナと感光ドラム101との距離に依存せず、感光ドラム表面電位を正確に算出できる。これにより、電位変動に起因する画像濃度や、色味の変動を有効に抑制することができる。