JP6248567B2 - 工程紙基材用キャスト塗工原紙およびキャスト塗工紙 - Google Patents
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すなわち、前記課題は以下の本発明により解決される。
原紙の少なくとも片面に、顔料と接着剤を含有する塗工層をキャスト塗
工方式により設けた工程紙基材用キャスト塗工紙の原紙であって、前記原紙が下式1で定義されるシェーキング強度が10,000〜20,000(範囲)となるようワイヤーシェーキング装置を用いて抄紙機のワイヤーを振動させて抄造されたものである、工程紙基材用キャスト塗工原紙。
(式1)
シェーキング強度=振動数(Hz)2×振幅(mm)/抄速(m/分)
(2)(1)に記載の原紙の少なくとも片面に、顔料と接着剤を含有する塗工層をキャスト塗工方式により設けた工程紙基材用キャスト塗工紙。
(3)キャスト塗工層が湿潤状態の塗工層を凝固液でゲル化させて鏡面ドラムに圧着・乾燥して形成されたことを特徴とする(2)に記載の工程紙基材用キャスト塗工紙。
(4)引張強度の縦横比(T/Y比)が2.2以下である、(2)または(3)に記載の工程紙基材用キャスト塗工紙。
工程紙基材用キャスト塗工紙
本発明の工程紙基材用キャスト塗工紙は、引張強度の縦横比(T/Y)比が、2.20以下、好ましくは2.00以下、より好ましくは、1.90以下である。本発明の引張強度は、JIS P 8113に従って測定されるもので、紙の縦と横方向で、既定の条件によって引っ張り、破断する前の最大引張荷重を幅1m当たりに換算した値である。紙の縦方向とは、抄紙時の繊維の流れ方向をいい、横方向とは、繊維の流れ方向に直行する方向を言う。引張強度の縦方向の値と横方向の値が、同じ値に近づけば近づくほど、すなわちT/Y比が1に近くなればなるほど、紙の寸法安定性は向上する。特に、乾燥工程における加熱時の寸法収縮は小さくなり、工程紙基材用キャスト塗工紙として品質適性・加工適性が向上する。
本発明の工程紙基材用キャスト塗工紙は、下記式1で定義されるシェーキング強度が、10,000〜20,000、好ましくは、11,000〜20,000であるワイヤーシェーキング装置を用いて、抄紙機のワイヤーを振動させて抄造されたものである。
式1
シェーキング強度=振動数(Hz)2×振幅(mm)/ワイヤー速度(m/分)
[原料パルプ]
本発明で製造される工程紙基材用キャスト塗工原紙のパルプ原料としては、特に限定されるものではなく、グランドパルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、脱墨パルプ(DIP)、針葉樹クラフトパルプ(NKP)など、一般的に抄紙原料として使用されているものであればよい。
本発明の原紙に使用される填料は、紙中灰分が紙の絶乾重量に対し、5重量%以上となるように添加することが好ましい。灰分の上限は特にないが、紙の強度や操業性を考慮すると、15重量%以下であることが好ましい。
原紙に添加する填料としては、例えば、重質炭酸カルシウムや軽質炭酸カルシウムなどの炭酸カルシウム、酸化チタン、クレー、シリカ、タルク、カオリン、焼成カオリン、デラミカオリン、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、酸化亜鉛、酸化珪素、非晶質シリカ、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、酸化チタン、ベントナイトなどの無機填料;尿素−ホルマリン樹脂、ポリスチレン樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、微小中空粒子等の有機填料;を単独または適宜2種類以上を組み合わせて使用することができる。また、製紙スラッジや脱墨フロス等を原料とした再生填料も使用することができる。
本発明の工程紙基材用キャスト塗工原紙の紙中灰分は、5重量%以上15重量%以下であることが好ましい。紙中灰分を、5重量%以上15重量%以下とするためには、原紙に添加する填料の量を調整する。本発明において灰分は、JIS P 8251に規定される紙および板紙の灰分試験方法に準拠し、燃焼温度を525±25℃に設定した方法で測定される。一般に灰分は、紙に含まれる無機物の量を示すため、基本的に紙中に含まれる填料の量を反映する。紙の灰分は、紙料に添加されるフレッシュな填料に由来するものと、DIP(古紙パルプ、脱墨パルプ)などのパルプ原料によって持ち込まれるもので構成される。DIPによって持ち込まれる灰分としては、炭酸カルシウムが比較的多いが、炭酸カルシウム以外の無機成分も含まれ、炭酸カルシウムと他の無機成分との割合は、新聞古紙や雑誌古紙などの古紙の種類や回収状況などによって異なる。
本発明においては、紙中灰分が5重量%以上において、原紙のシェーキング強度を10,000以上とすることにより、地合が良好で合成皮革加工工程中における乾燥後の塗工面感に優れた工程紙基材用キャスト塗工紙を製造することができる。
本発明においては、内添用として、公知の製紙用添加剤を使用することができる。製紙用薬品は、特に制限されず、種々の薬品を単独または組み合わせて用いることができる。例えば、歩留剤、濾水性向上剤、凝結剤、硫酸バンド、ベントナイト、シリカ、サイズ剤、乾燥紙力剤、湿潤紙力剤、嵩高剤、填料、染料、蛍光増白剤、pH調整剤、消泡剤、紫外線防止剤、退色防止剤、ピッチコントロール剤、スライムコントロール剤などの製紙用薬品を用いることができる。中でも、短時間で紙料との混合ができるという本発明の効果を大きく享受できる点で、製紙用薬品として歩留剤を添加することが特に好ましい。歩留剤の他、本発明の製紙用薬品として好適に使用できるものとしては、ポリアクリルアミド系高分子、ポリビニルアルコール系高分子、カチオン性澱粉、各種変性澱粉、尿素・ホルマリン樹脂、メラミン・ホルマリン樹脂などの内添乾燥紙力増強剤;ポリアミドポリアミンエピクロロヒドリン樹脂などの内添湿潤紙力増強剤;ロジン系サイズ剤、AKD系サイズ剤、ASA系サイズ剤、石油系サイズ剤、中性ロジンサイズ剤などの内添サイズ剤;などを挙げることができる。
上記のようにして製紙用薬品を混合された紙料は、ヘッドボックスに送られ、ヘッドボックスからワイヤーに噴射されて抄紙される。本発明は、種々の抄紙機や抄紙法に適用することができる。抄紙機としては例えば、長網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機等で適宜抄紙できるが、特に地合が悪化しやすいツインワイヤー抄紙機でも、本発明の効果を有意に発揮させることができる。ツインワイヤー抄紙機としては、ギャップフォーマー、オントップフォーマーなどが挙げられる。
本発明の抄紙系は、特に制限されず、中性紙でも酸性紙でもよいが、本発明の紙が炭酸カルシウムを比較的多く含有する場合、中性紙であることが好ましい。具体的には、本発明においては、紙面pHが6.0〜9.0であることが好ましく、6.8〜8.0であることがより好ましい。抄紙速度は、特に限定されない。
本発明の原紙の坪量は特に限定されないが、41g/m2を超えることが好ましい。原紙の坪量の上限は特に制限されないが、例えば、220g/m2とすることができる。さらに、本発明においては、抄造した原紙に種々の表面処理を施すことができる。
本発明においては、原紙の片面または両面に、澱粉系高分子を含むクリア塗工液を塗布し、クリア(透明)塗工層を有することが望ましい。本発明においてクリア塗工とは、例えば、ポンド式2ロールサイズプレス、フィルム転写方式としてゲートロールコーターやロッドメタリングサイズプレス、カーテンコーター、スプレーコーターなどのコーター(塗工機)を使用して、クリア塗工液を原紙上に塗布することをいう。合成皮革などの対象素材から剥離した工程紙基材用キャスト塗工紙は巻き取られ繰り返し使用されるが、剥離時の塗工紙自体が層間剥離した場合は繰り返し使用ができない。よって、工程紙基材用キャスト塗工紙は層間強度を付与するため、ポンド式2ロールサイズプレスで塗工することが好ましい。
[顔料塗工]
本発明の工程紙基材用キャスト塗工紙は、前記工程により製造した塗工原紙に顔料・接着剤、並びに助剤を含む塗工層を1層以上有し、最外層の塗工層はキャスト塗工方式により塗工する。1層の場合は、クリア塗工した原紙にキャスト塗工層を直接設けてもよく、2層以上の場合は、キャスト塗工層を設ける紙に顔料・接着剤、並びに助剤を含むアンダー塗工層を設けることもできる。
原紙へのキャスト塗工量は、原紙の片面当たり固形分で10〜35g/m2の範囲であるのが好ましい。塗工量が10g/m2未満の場合は、耐溶剤性が低下し、35g/m2より多い場合は乾燥負荷が大きくなるため塗工速度が低下し、生産性が低下する。
原紙にアンダー塗工液、キャスト塗工液を塗工する方式としては、ブレードコーター、エアナイフコーター、ロールコーター、コンマコーター、ブラッシュコーター、キスコーター、スクイズコーター、カーテンコーター、バーコーター、グラビアコーター等の公知の塗工機を用いた方法の中から適宜選択することができる。
本発明の工程紙基材用キャスト塗工紙の紙質は、下記に規定される方法に準じて測定した。
(1)坪量:ISO536
(2)紙中灰分:ISO1762
(3)引張強度(kN/m):JIS P 8113に基づいて、紙の縦(抄紙流れ)方向と横方向(抄紙流れと直行する方向)を測定した。
(4)フロックインテンシティー:地合指数、ハネウェル社製のBM計(型式Mx Open)に搭載している地合計のフロックインテンシティーにより測定した。フロックインテンシティーの数値が小さいほど地合は良好である。
(5)収縮率
プレスパートのセンターロール出口のシート巾(a)、並びにリールパートのシート巾(b)を測定した上で、下記計算式によりマシン乾燥工程による収縮率を算出した。
式2
収縮率(%)={(a)−(b)}/(a)×100
(6)加熱乾燥後の紙表面凹凸
紙サンプルを金属製の枠にセットして4隅をクリップで止めた状態で、200℃に設定した乾燥機で3分間乾燥させる。乾燥機から取り出した直後の紙表面凹凸を目視判定した。○:凹凸なし、△:やや凹凸あり、×:凹凸ありと区分しており、○・△であれば工程紙加工の実用上問題ない紙表面凹凸である。
(原紙の抄造)
製紙用原料パルプとしてLBKP(濾水度400ml、CSF)のスラリーに、パルプ固形分に対し液体硫酸バンドを0.5重量%(有姿)添加し、灰分が10%になるように填料として軽質炭酸カルシウム(奥多摩工業社製「TP−121」)を添加し、対パルプ固形分250ppmの歩留まり向上剤を添加した後、ツインワイヤー型抄紙機を用いてワイヤー速度400m/分で坪量130g/m2となるように抄紙し、オンマシンの2ロールサイズプレスを用いて、ヒドロキシエチル化澱粉(Tate&Lyle社製Ethylex2015)を合計3.0g/m2塗工し、マシンカレンダーで処理し、工程紙用キャスト塗工原紙を得た。抄紙時のシェーキングは、振幅25mm、振動数475Hz、シェーキング強度は14,102であった。
クレー(商品名:アストラグレーズ、イメリス社製)50部、軽質炭酸カルシウム(商品名:タマパールTP121−7C、奥多摩工業社製)50部、有機顔料として密実型のプラスチックピグメント(商品名:Nipol V1004 ゼオン社製、融点:80℃)1部の顔料スラリーを調製した。これに、接着剤としてスチレン・ブタジエン系共重合体ラテックス(商品名:PA0330、日本A&L社製)5部、澱粉3部を加えてアンダー層用塗工液を調製した。上記の方法により調製したアンダー層用塗工液を用い、キャスト塗被紙原紙の片面に、乾燥塗工量が10g/m2となるようにアンダー層塗工液をブレードコーターで塗工し、乾燥させた。
(キャスト層塗工液)
カオリン(商品名:ウルトラホワイト90、エンゲルハルド社製)50部、軽質炭酸カルシウム(商品名:タマパールTP121−7C、奥多摩工業社製)50部の顔料スラリーを調製した。これに、接着剤としてアンモニアを用いて溶解したカゼイン水溶液(固形分濃度17%)6部及び、スチレン・ブタジエン系共重合体ラテックス(商品名:PA0330、日本A&L社製)16部を加え、離型剤(SN−3035、サンノプコ社製)2部配合し、最後に水、アンモニアを加えて固形分濃度51%、pHを10に調製してキャスト層用塗工液を得た。
(凝固液及びアンダー層とキャスト層形成方法)
凝固液として、固形分濃度として10%のギ酸カルシウム、1%の酸化亜鉛、1%の離型剤(SN−3035、サンノプコ社製)を混合し水溶液を調製した。
次いで、乾燥塗工量15g/m2となるようにキャスト層用塗工液をロールコーターで塗被し、湿潤状態にあるキャスト層用塗工層を凝固液に接触させて塗工層を凝固させた後、直径750mmのプレスロールと表面温度105℃、直径3000mmのキャストドラムにプレス圧150kg/cmで圧着し、乾燥後テークオフロールでキャストドラムから剥離してキャスト層形成済塗工紙を得た。
[実施例2]
ワイヤー速度480m/分、原紙坪量を100g/m2とした以外は実施例1と同様にして、工程紙基材用キャスト塗工紙を得た。シェーキング強度は11,751であった。
[実施例3]
ワイヤー速度300m/分、原紙坪量を170g/m2とした以外は実施例1と同様にして、工程紙基材用キャスト塗工紙を得た。シェーキング強度は18,802であった。
[実施例4]
抄紙時のシェーキング条件を、振幅15mm、振動数570Hzとした以外は、実施例1と同様にして、工程紙基材用キャスト塗工紙を得た。シェーキング強度は12,184であった。
[比較例1]
抄紙時にシェーキングなしとした以外は、実施例1と同様にして、工程紙基材用キャスト塗工紙を得た。
[比較例2]
抄紙時にシェーキングなしとした以外は、実施例2と同様にして、工程紙基材用キャスト塗工紙を得た。
[比較例3]
抄紙時にシェーキングなしとした以外は、実施例3と同様にして、工程紙基材用キャスト塗工紙を得た。
[比較例4]
抄紙時のシェーキング条件を、振幅5mm、振動数475Hzとした以外は、実施例1と同様にして、工程紙基材用キャスト塗工紙を得た。シェーキング強度は2,820であった。
Claims (4)
- 原紙の少なくとも片面に、顔料と接着剤を含有する塗工層をキャスト塗工方式により設けた工程紙基材用キャスト塗工紙の原紙の製造方法であって、前記原紙が下式1で定義されるシェーキング強度が10,000〜20,000(範囲)となるようワイヤーシェーキング装置を用いて抄紙機のワイヤーを振動させて抄造されたものである、工程紙基材用キャスト塗工原紙の製造方法。
(式1)
シェーキング強度=振動数(Hz)2×振幅(mm)/抄速(m/分) - 請求項1に記載の原紙の少なくとも片面に、顔料と接着剤を含有する塗工層をキャスト塗工方式により設けた工程紙基材用キャスト塗工紙の製造方法。
- キャスト塗工層が湿潤状態の塗工層を凝固液でゲル化させて鏡面ドラムに圧着・乾燥して形成されたことを特徴とする請求項2に記載の工程紙基材用キャスト塗工紙の製造方法。
- 引張強度の縦横比(T/Y比)が2.20以下である、請求項2、または請求項3に記載の工程紙基材用キャスト塗工紙の製造方法。
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