JP3767693B2 - オフセット輪転印刷用塗被紙 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、オフセット輪転印刷に際してヒジワおよびブリスタの発生が少なく、しかも印刷仕上がりが良好なオフセット輪転印刷用塗被紙に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、印刷業界においても、省力化に伴い、高速で印刷後工程の自動化の進んだオフセット輪転(以後、オフ輪と称す)印刷機の採用が年々増加する傾向にある。しかし、オフ輪印刷では、印刷後に印刷物が高温で乾燥されるために、他の印刷方式では見られない火ぶくれ(所謂、ブリスタ)や、紙が流れ方向に沿って波打つ現象、所謂ヒジワ(以後、オフ輪じわと称す)が発生し易い。ブリスタやオフ輪じわの発生は、印刷物の外観を著しく悪化せしめ、商品価値を大きく損うため、オフ輪印刷に供してもブリスタやオフ輪じわを発生しない印刷用塗被紙が渇望させている。
【0003】
ブリスタとは次のような現象として理解されている。即ち、オフセット輪転印刷用塗被紙は、オフセット輪転印刷の工程で熱乾燥される際に塗被紙中の水分が瞬時に水蒸気となり、紙層外に逸散しようとする。しかしながら、顔料塗被層がそのバリアとして作用するために、水蒸気は逃げ場を失って、水蒸気圧の上昇を招き、ついには紙層を破壊してブリスタ(火ぶくれ現象)を発生させる。
ブリスタを起こさせない抵抗力(以後、耐ブリスタ適性と称す)を得る方法としては、従来より、原紙の内部強度を上げる方法や顔料塗被層をポーラスにして、塗被紙の透気度を下げる方法等が知られている。因みに、原紙の内部強度を上げる方法としては、例えば、抄紙段階あるいはサイズプレスにおいて各種加工澱粉、ポリアクリルアミド等の紙力増強剤や接着剤を付加することが行われている。
【0004】
また、顔料塗被層を透気度の低いポーラスな構造とする手段としては、顔料塗被層の構成成分の1つである顔料として、嵩密度の低い軽質炭酸カルシウムを多用したり、接着剤としてガラス転移温度(Tg)の高いラテックスを使用したり、あるいはゲル含有量の少ない共重合体ラテックスを使用することが提案されている。しかし、これらの手段はいずれも顔料塗被層の表面強度を低下させるという問題がある。
【0005】
オフ輪じわの発生要因については、幾つかの研究がなされており、オフ輪じわは、高温乾燥による非画線部と画線部の収縮差に起因すると考えられている。即ち、印刷後の乾燥工程で、画線部の表面はインキ塗膜で覆われているため、非画線部に比較し紙中の水分が蒸発し難い。そのために非画線部が画線部よりも先に収縮し始め、画線部に横方向の圧縮力がかるので、画線部にシワが発生する。このとき、紙層の内部強度が高くて繊維間結合が強いと、乾燥工程中の収縮量が大きくなり、オフ輪じわのレベルがより悪くなるため、内部強度を出来るだけ下げたいが、内部強度の減少は、上述のごとく耐ブリスタ適性面から望ましくない。
【0006】
特開昭58−186700号公報には、オフ輪印刷用塗被紙における原紙のパルプのフリーネスを特定範囲に保持すると共に、当該原紙の透気度を規定することで、オフ輪じわの発生が抑制できることが教示されている。しかし、オフ輪印刷用塗被紙は、パルプ調成、抄紙、塗工、キャレンダによる加圧仕上げおよび巻取り等の一連の工程を経て製品化するものであるから、単純にパルプのフリーネスや原紙の透気度を調整しただけでは、必ずしも所期のオフ輪印刷用塗被紙を得ることができないのが現状である。
特開平9−291496号公報には、巻取り水分と原紙の内部層間強度を規定することにより、オフ輪じわを解消若しくは軽減する技術が教示されているが、内部層間強度を下げることは、オフ輪印刷用塗被紙のもう一つの課題であるブリスタ(火ぶくれ)の発生を助長する。これを抑制するためには、塗被紙水分を低くしておく必要があるが、水分低下はその後の折り工程で塗被紙の表面が割れてしまう現象、いわゆる「折り割れ」を発生させる虞がある。
【0007】
また、特開平11−350391公報及び特開2000−45199号公報には、基紙の両面にケン化度が85モル%以上であるポリビニルアルコールを、乾燥重量で1〜6g/m2塗工して原紙とし、この原紙に顔料塗被層を設けたオフセット輪転印刷用塗被紙が提案されている。このオフセット輪転印刷用塗被紙は、顔料塗被層が設けられる原紙の両面を、ポリビニルアルコール含有層で被覆しておくことで、その印刷用塗被紙に印刷を施した際の非画線部からの水分の蒸発を抑制し、以って画線部と非画線部との乾燥収縮差を解消させることを目論んでいる。
ポリビニルアルコール含有層を表裏両面に備えた原紙に、顔料塗被層を設けた上記のオフセット輪転印刷用塗被紙は、耐ブリスタ適性の点でも、またオフ輪じわの発生を防止できる点でも、実用上満足できる結果を与えている。しかしながら、当該印刷用塗被紙にオフセット輪転印刷を施した後の印刷仕上がりは、必ずしも一様ではなく、印刷仕上がりの優劣は、顔料塗被層に存在する特定な細孔の密度(単位面積あたりの個数)に密接に関係することを、本発明者らは見出した。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、耐ブリスタ適性に優れるばかりでなく、オフ輪じわの発生をも許容できる程度に抑制することができ、しかも、オフセット輪転印刷後の印刷仕上がりも満足できるオフセット輪転印刷用塗被紙を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
先に述べたとおり、表裏両面にポリビニルアルコール含有層を有する原紙の片面又は両面に、顔料塗被層を設けることによって得られる印刷用塗被紙は、ポリビニルアルコールのケン化度や塗工量が所定の範囲に維持されていれば、実用上満足できる耐ブリスタ適性を備え、実用上満足できる範囲にオフ輪じわの発生を抑制することができるものの、その印刷用塗被紙にオフセット輪転印刷を施した場合の印刷仕上がりは、必ずしも一様ではない。そして、印刷仕上がりの良否が、原紙上に顔料塗被層を設ける際の条件、とりわけ、原紙に顔料塗被組成物を塗工する際に使用する塗工装置のタイプや塗被組成物物性に支配されることから、本発明者等は印刷仕上がりの良否と、顔料塗被層に存在する細孔の寸法及び個数との関係について検討した。
【0010】
それによれば、印刷仕上がりを損なう元凶は、顔料塗被層に存在する直径35μm超の細孔であること、こうした大口径の細孔の出現を抑止する共に、顔料塗被層に存在する直径10〜35μmの細孔の個数を、顔料塗被層1mm平方当り80〜200個の範囲に維持することによって、印刷仕上がりを高水準に維持できること、そして、上記の印刷用塗被紙におけるポリビニルアルコール含有層及び顔料塗被層のいすれか一方又は両方に、所定量の湿潤剤を配合させることにより、顔料塗被組成物の塗工に使用する塗工装置のタイプが変化しても、顔料塗工層に存在する直径10〜35μmの細孔の個数を、顔料塗被層1mm平方当り80〜200個の範囲に常に維持できることを見出した。
【0011】
本発明に係るオフセット輪転印刷用塗被紙は、原紙の少なくとも片面に、顔料および接着剤を主成分とする顔料塗被層を1層以上設けてなるオフセット輪転印刷用塗被紙において、前記の原紙がケン化度85モル%以上のポリビニルアルコールを含有する層を表裏両面に有し、片面当り当該ポリビニルアルコールを0.5〜6g/m 2 の範囲で含有するポリビニルアルコール層が、湿潤剤をポリビニルアルコール100重量部に対して0.01〜0.08重量部含有し、前記の顔料塗被層が、湿潤剤を顔料100重量部に対して0.01〜0.15重量部の範囲で含有すると共に、直径10〜35μmの細孔を1平方mm当り80〜200個有することを特徴とする。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明のオフセット輪転印刷用塗被紙の最大の特徴は、そのポリビニルアルコール含有層及び顔料塗被層に、湿潤剤を配合させたことにあるので、先ずこの点を説明する。
本発明の湿潤剤には、例えば、硫酸エステル型陰イオン界面活性剤、スルホン酸型陰イオン界面活性剤、第四級アンモニウム塩、アミン誘導体、両性界面活性剤、ポリオキシエチレン系非イオン界面活性剤等が使用できる。その中でも、硫酸エステル型陰イオン界面活性剤、スルホン酸型陰イオン界面活性剤が好ましい。
ポリビニルアルコール含有層に湿潤剤を配合する場合、その配合量はポリビニルアルコール100重量部当り0.01〜0.08重量部、好ましくは0.02〜0.06重量部の範囲で選ばれる。この配合量が0.01重量部未満であると、顔料塗被層に出現する細孔の直径を35μm以下に抑えることが難しくなることに加えて、直径10〜35μmの細孔の顔料塗被層における存在密度が200個/mm2を超えるため、良好な印刷仕上がりを期待できない。また、湿潤剤の配合量が0.08重量部を超えると、ポリビニルアルコール含有層のバリア性が劣化するため、オフ輪じわの発生を効果的に防止できない。
【0013】
一方、顔料塗被層に湿潤剤を配合する場合は、その配合量が顔料100重量部当り0.01〜0.15重量部、好ましくは0.03〜0.08重量部の範囲で選ばれる。この配合量が0.01重量部未満であると、顔料塗被層に出現する細孔の直径を35μm以下に抑えることが難しくなることに加えて、直径10〜35μmの細孔の顔料塗被層における存在密度が200個/mm2を超えるため、良好な印刷仕上がりを期待できない。また、湿潤剤の配合量が0.15重量部を超えた場合は、オフセット輪転印刷時にパイリング等のトラブルを起こす恐れがある。
なお、湿潤剤をポリビニルアルコール含有層及び顔料塗被層の両方に添加する場合は、ポリビニルアルコール含有層にはポリビニルアルコール100重量部当り0.01〜0.04重量部の湿潤剤を含有させ、顔料塗被層には顔料100重量部当り0.01〜0.06重量部の湿潤剤を含有させることが好ましい。
【0014】
本発明のオフセット輪転印刷用塗被紙は、ポリビニルアルコール含有層及び顔料塗被層に、所定量の湿潤剤を配合させる点を除くと、従前のオフセット輪転印刷用塗被紙と同様、表裏両面にポリビニルアルコール含有層を備えた原紙の片面又は両面に、顔料と接着剤を主成分とする顔料塗被層を設けることによって製造することができる。
本明細書において、「原紙」とは、本発明の最終製品である印刷用塗被紙を得るに当たって使用する紙シートを指し、当該紙シートは両面にポリビニルアルコール含有層が設けられた紙シートであって、顔料塗被層が未だ設けられていない紙シートを意味する。そして、表裏両面にポリビニルアルコール含有層が設けられていない紙シートを「基紙」と称し、「原紙」と区別する。
なお、本発明で言う「基紙」には、当業界で塗被紙用原紙と通称される紙シートが包含される。この塗被紙用原紙は、一般に、2ロールサイズプレスコータ、ロールコータ、ブレードコータ、ゲートロールサイズプレスコータ、フィルムメタリングサイズプレスコータ等を使用して、紙シートの表面に澱粉または澱粉と顔料などの混合物が予備塗工されている。
【0015】
上記した基紙のパルプ構成は特に限定されない。例えば、広葉樹晒クラフトパルプ、針葉樹晒クラフトパルプ、高歩留りパルプ、古紙パルプ等の中から任意選択して配合され、離解工程等を経て、酸性あるいは中性乃至はアルカリ性抄紙法にて基紙が製造される。
基紙を抄紙するにあたって、パルプ繊維の配向性を小さくするとオフ輪じわがより改善されるので、例えばマイクロ波分子配向計(王子計測株式会社製)で測定したマイクロ波透過強度の最大値と最小値の比(MOR値)が1.10〜1.50の範囲となるように抄造するのが好ましい。パルプ繊維の配向性を調整する方法としては、パルプ繊維の種類や配合割合、抄紙速度、パルプスラリーのワイヤー上への流出速度とワイヤー速度との比(ジェット/ワイヤー比)、フォーミングボードあるいはハイドロフォイルのアレンジメント、およびワイヤーシェーキングあるいはダンディーロールの適性化等が挙げられ、これらの条件を適宜組合せることで、上記範囲に調節することができる。
基紙には、通常、填料が内添され、かかる填料としては、一般に使用されているものを使用することでき、特に限定されるものではないが、例えば、クレー、焼成クレー、ケイソウ土、タルク、カオリン、焼成カオリン、デラミカオリン、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ケイ素、非晶質シリカ、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛等の無機填料、尿素−ホルマリン樹脂、ポリスチレン樹脂、フェノール樹脂、微小中空粒子などの有機填料を、単独もしくは適宜2種類以上を組み合わせて使用される。上記填料の配合割合は、パルプ100重量部に対して5〜20重量部が好ましい。なお、填料の配合割合が多くなると、紙の層間強度が低くなるので、ブリスタ等の紙質との調和を図ることが必要である。
【0016】
上記の一般填料の他に繊維間結合を低減させる物質をブリスタ適性が損なわれない程度に、紙料中に内添するとオフ輪じわの発生が低減されて、より好ましい。繊維間結合を低減させる物質とは、分子内に疎水基と親水基の両方を有するもので、高級アルコールのエチレンオキサイド付加物、高級アルコールのプロピレンオキサイド付加物、高級アルコールのブチレンオキサイド付加物、多価アルコールと脂肪酸のエステル化合物等のノニオン界面活性剤、脂肪族ポリアミドアミン、ポリアルキレングリコールなどを例示することができる。現在販売されている薬品の中で代表的なものは、BASF社のスルゾールVL、Bayer社のバイボリュームPリキッド、三晶(株)のリアクトペイク、花王(株)のKB−110といった薬品である。いずれも、パルプ繊維の繊維間に入り込み定着し繊維間の結合距離を増加させることにより、繊維間結合を低減する。その結果、印刷時の加熱乾燥収縮量が低減されるため、オフ輪じわの発生が低減されるものと考えられる。繊維間結合を低減させる物質の添加量は、パルプ100重量部当り0.1〜5重量部の範囲が好ましい。ちなみに0.1重量部未満であると、効果が認められず、5重量部を超えると繊維間結合が低下し、ブリスタ適性が劣るため好ましくない。また、繊維間結合を低減させる物質を外添塗料に含有させて、2ロールサイズプレスやゲートロールコーターで塗布しても良い。外添の場合は、紙料に添加して内添する場合と比較して効果が劣るので、添加量は、繊維間結合低減物質以外の固形分100重量部に対して5〜30重量部が好ましい。5重量部未満ではオフ輪じわの低減効果が見られず、30重量部を超えると、繊維間結合が低下し、ブリスタ適性が劣るため好ましくない。
【0017】
基紙の両面に塗工するポリビニルアルコールとしては、ケン化度が85モル%以上、好ましくは90モル%以上であるポリビニルアルコールを使用する必要がある。ケン化度が85モル%未満のポリビニルアルコールの塗工では、オフ輪じわの発生を満足できる程度に抑制することができない。
基紙の表裏両面に塗工されるケン化度85モル%以上のポリビニルアルコール乾燥塗布量は、片面当り0.5〜6g/m2の範囲で選ばれる。この量が0.5g/m2未満であると、オフ輪じわの発生を充分に抑制することができず、6g/m2を超える過度の塗布は、経済上好ましくない。
ポリビニルアルコールの塗布に際しては、ポリビニルアルコールの水性液中に、重質又は軽質の炭酸カルシウムで例示される顔料を配合することができ、また、消泡剤を配合することもできる。
【0018】
なお、本発明者等の研究によると、ポリビニルアルコールを基紙へ塗布する際、基紙のステキヒトサイズ度を1秒以上、より好ましくは10秒以上に調整しておくと、ポリビニルアルコールの基紙層への浸透が抑えられ、本発明が所望する効果を得る上でより好ましい実施態様となるものである。なお、基紙のステキヒトサイズ度の上限については、特に限定するものではないが、紙料の調整や抄紙条件等を考慮すると、上限は50秒程度であると推定される。
【0019】
ポリビニルアルコールを基紙の両面に塗工するに際しては、一般の塗被紙製造分野で使用される塗工装置が使用でき、例えば、ブレードコーター、エアーナイフコーター、ロールコーター、リバースロールコーター、バーコーター、カーテンコーター、ダイスロットコーター、グラビアコーター、チャンプレックスコーター、2ロールサイズプレスコーター、ゲートロールサイズプレスコーター等の塗工装置が、オンマシンあるいはオフマシンで使用できる。
【0020】
表裏両面にポリビニルアルコール含有層を備えた原紙の片面又は両面には、顔料塗被層が1層以上設けられる。顔料塗被層の形成には、顔料と接着剤を主成分とする塗被組成物が使用される。顔料は特別なものである必要はなく、従来公知公用のものが何れも使用可能である。例えば、クレー、カオリン、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、二酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛、サチンホワイト、硫酸カルシウム、タルク、プラスチックピグメント、有機中空微粒子等の塗被紙製造分野で使用されている顔料の1種以上を適宜選択して使用できる。接着剤も特別のものである必要はなく、例えば、澱粉、カゼイン、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ポリアクリル酸等の水溶性高分子やスチレン−ブタジエン共重合体ラテックス、スチレン−アクリル酸系共重合体ラテックス等の天然系および合成系の接着剤の1種又は2種以上が適宜使用できる。
なお、顔料塗被層を原紙の片面あたり2層以上設ける場合は、原紙に近い顔料塗被層(下塗り層)には比較的安価な炭酸カルシウム等の顔料を多用し、最外層には印刷適性を高めるような顔料、例えばカオリン、プラスチックピグメントを多く配合することが経済的にも好ましい。
【0021】
塗被組成物における顔料と接着剤との配合比率は、所望の顔料塗被層が得られる範囲で調整される。通常は、固形分対比で顔料100重量部に対し、接着剤5〜50重量部、より好ましくは5〜30重量部の範囲が選ばれる。塗被組成物中には、必要に応じて、消泡剤、着色剤、離型剤、流動変性剤等の各種助剤を配合することができる。塗被組成物の塗工量は、一般的に、乾燥重量で片面当り3〜30g/m2、より好ましくは5〜25g/m2の範囲にある。なお、顔料塗被層を例えば原紙の片面あたり2層設ける場合には、合計の乾燥塗工量が片面当り3〜30g/m2となる範囲内で、所望する印刷品質等を考慮し、下塗り層と最外層の塗工量が30:70〜70:30の割合となるように配分すればよい。
【0022】
原紙に塗被組成物を塗工するに際しては、一般の塗被紙製造分野で使用される塗工装置が使用でき、例えば、ブレードコーター、エアーナイフコーター、ロールコーター、リバースロールコーター、バーコーター、カーテンコーター、ダイスロットコーター、グラビアコーター、チャンプレックスコーター、2ロールサイズプレスコーター、ゲートロールサイズプレスコーター等の塗工装置が、オンマシン又はオフマシンで使用可能である。
【0023】
このようにして得られたオフ輪印刷用塗被紙は、通常キャレンダーに通紙して加圧平滑化処理が施された後、巻取り製品として仕上げられる。この場合のキャレンダー装置についても特に限定されるものではなく、グロスあるいはマットキャレンダーとして、例えばスーパーキャレンダー、グロスキャレンダー、ソフトコンパクトキャレンダー等の金属またはドラムと弾性ロールより構成される各種キャレンダーが、オンマシンまたはオフマシン仕様で、任意に選択、使用される。
【0024】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は、それらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例および比較例中の「部」および「%」は特に断らない限り、それぞれ固形分換算した「重量部」および「重量%」を示す。
【0025】
実施例1
(基紙の製造)
LBKP70部(フリーネス400ml/csf)、NBKP30部(フリーネス480ml/csf)からなるパルプスラリーに、填料として軽質炭酸カルシウムを紙灰分が6.5%となるように添加し、さらにパルプに対して、内添サイズ剤としてAKDサイズ剤(商品名:サイズパインK−902/荒川化学製)0.1%および硫酸アルミニウム0.5%をそれぞれ添加した紙料を調成し、抄速750m/分で抄紙し、さらに連続して予め糊化した酸化澱粉(商品名:エースA/王子コーンスターチ製)で2ロールサイズプレスコータを使用してサイズプレス(酸化澱粉塗工量は両面で2.5g/m2)処理して基紙を得た。なお、マイクロ波分子配向計(MOA−3001A、王子計測製)で測定したマイクロ波透過強度の最大値と最小値の比(MOR値)は1.32、配向角は6°であった。
【0026】
(塗工原紙の製造)
これとは別に、重合度500、ケン化度98モル%のポリビニルアルコール(商品名:ポバール105/クラレ製)100部に対して、0.06部の消泡剤(商品名:SNデフォーマ777/サンノプコ製)を添加して、これを加熱糊化して濃度15%の水性液を得た。さらにこの水性液にカルボキシメチルセルロースのナトリウム塩(商品名:SG-AGガム/第一工業製薬製)を1.8部配合してポリビニルアルコール含有水性液を得た。また、平均粒子径0.6μmの重質炭酸カルシウム(商品名:FMT90/ファイマテック製)を分散した水分散液を用意し、この水分散液と前記のポリビニルアルコール含有水性液とを、前者100部対後者167部(固形分対比)の割合で混合した。得られた混合液の固形分濃度は、30.5%であった。この混合液に、湿潤剤(商品名:ノプコウェット50/サンノプコ製)を、ポリビニルアルコール100部に対して0.03部添加して攪拌して塗料を調製し、この塗料を先に調製した基紙の両面に塗工した。塗工にはブレードコータを用い、塗工量は乾燥重量で片面当り2.8g/m2とし、塗工スピードは800m/分とした。得られた原紙の米坪は75g/m2であった。
【0027】
(顔料組成物の調製)
重質炭酸カルシウム(商品名:FMT90/ファイマテック製)40部、エンジニアードカオリン(商品名:ミラクリプスPG/エンゲルハード製)60部からなる顔料を、コーレス分散機で水中に分散して顔料スラリを得た。このスラリにスチレン−ブタジエン共重合体ラテックス(商品名:PA−9000/日本エイアンドエル製)10部(固形分)、予め糊化した酸化澱粉(商品名:エースA/前出)1.0部(固形分)を添加し、湿潤剤(商品名:ノプコウェット50/サンノプコ製)を、組成物中の顔料100重量部当り0.05部添加して、最終的に固形分濃度64%の顔料塗被層形成用顔料組成物を調製した。
【0028】
(印刷用塗被紙の製造)
この顔料組成物を、上記した原紙に、片面当たり乾燥重量で15g/m2 になるようにブレードコータで片面づつ塗工、乾燥して両面塗被紙を得た。次いで、この両面塗被紙を、金属ロール(ロール温度120℃)と樹脂ロールよりなる加熱ソフトカレンダーに密度が1.2g/cm3となるように、それぞれの面が2回金属ロールに接触するように通紙して印刷用塗被紙を得た。
【0032】
実施例2
実施例1において使用したポリビニルアルコールを、重合度1000、ケン化度88モル%のポリビニルアルコール(商品名:ポバール210/クラレ製)に変更し、実施例1で使用した顔料組成物に、湿潤剤(商品名:ノプコウェット50/サンノプコ製)を0.04部添加した以外は実施例1と同様な方法で印刷用塗被紙を得た。
【0035】
比較例1
実施例1において基紙の両面に塗工したポリビニルアルコール含有混合液及び顔料組成物への湿潤剤の配合を取り止めた以外は、実施例1と全く同様にして印刷用塗被紙を得た。
【0036】
比較例2
重質炭酸カルシウム(商品名:FMT90/ファイマテック製)100部からなる顔料をコーレス分散機で水中に分散して顔料スラリを得た。このスラリにスチレン−ブタジエン共重合体ラテックス(商品名:PA−9000/日本エイアンドエル製)9部(固形分)、予め糊化した酸化澱粉(商品名:エースA/前出)3.0部(固形分)を添加し、最終的に固形分濃度64%の顔料塗被層形成用顔料組成物を得た。
この顔料組成物を、実施例1で使用したのと同一の基紙(酸化澱粉塗工量は両面で2.5g/m2)に、乾燥重量で片面9g/m2となるようにブレードコータを用い、塗工スピード800m/分で、片面ずつ両面塗工し、乾燥して塗工原紙を得た。
こうして得た塗工原紙に、湿潤剤の配合を取り止めた以外は実施例1で使用したのと同一の顔料組成物を片面あたり乾燥重量で9g/m2となるようにブレードコータで片面づつ両面塗工し、乾燥して両面塗被紙を得た。この両面塗被紙を実施例1と全く同様に処理して印刷用塗被紙を得た。
【0037】
上記した各実施例及び比較例で調製した印刷用塗被紙それぞれについて、電子顕微鏡を使用して顔料塗被層の表面写真を撮影し、その写真から顔料塗被層に存在する個々の細孔の直径を計測した。そして、顔料塗被層の1mm平方当りに存在する直径10〜35μmの細孔の個数をカウントした。
それによれば、実施例1〜実施例2で得た各印刷用塗被紙の顔料塗被層には、直径35μmを超える細孔の存在は認められなかったが、比較例1で得た印刷用塗被紙の顔料塗被層には、直径40〜60μmの細孔が15個/mm2認められ、直径10〜35μmの細孔は、230個/mm2認められた。一方、比較例2で得た印刷用塗被紙の顔料塗被層には、直径10μmを超える細孔が全く認められなかった。
【0038】
各実施例及び比較例で得られた印刷用塗被紙それぞれに、次に示すようなオフセット輪転印刷を施し、印刷された各塗被紙について、ブリスタ発生の有無、オフ輪じわ発生の有無、印刷仕上がりの良否を、それぞれ次の基準で評価した。結果を表1に示す。
[オフセット輪転印刷]
三菱重工製のオフセット輪転印刷機(三菱リソピアL-BT3-1100)を用いて、4色ベタ図柄の両面印刷を行った。印刷条件としては、印刷速度600rpm、乾燥機出口での紙面温度140℃を採用し、乾燥機通過後の冷却ロールには10℃の冷却水を通した。
[ブリスタの発生]
◎:ブリスタの発生が認められない。
○:小さいブリスタの発生が僅かに認められる。
×:ブリスタの発生が多く、実用に適さない。
[オフ輪じわの発生]
○:軽度のオフ輪じわの発生が認められる。
△:明確なオフ輪じわの発生が認められるが、実用上耐えうるレベル。
×:きついオフ輪じわの発生が認められ、製本した場合など波うちとなり実用に適さないレベル。
[印刷仕上がりの良否]
○:印刷の画線部の表面が滑らかである。
×:印刷の画線部の表面が荒れていて実用に適さない。
【0039】
【表1】
【0040】
表1に示す結果から明らかなように、ポリビニルアルコール含有層及び顔料塗被層に湿潤剤を含有させた実施例1〜実施例2の印刷用塗被紙は、オフセット輪転印刷に際してのブリスタ及びオフ輪じわの発生が、実用上許容できる範囲にあり、しかも印刷仕上がりも好結果である。これに対し、比較例1の印刷用塗被紙は、ポリビニルアルコール含有層上に顔料塗被層を設けている点で、各実施例の印刷用塗被紙と類似するが、湿潤剤が配合されていないため、顔料塗被層に直径10〜35μmの細孔が多数出現し、これに原因して満足な印刷仕上がりを得ることができない。比較例2の印刷用塗被紙は、ポリビニルアルコール含有層を備えていないため、印刷仕上がりの点では満足できる結果が得られるものの、ブリスタ及びオフ輪じわの発生が著しく、オフセット輪転印刷には適さない。
以上
Claims (1)
- 原紙の少なくとも片面に、顔料および接着剤を主成分とする顔料塗被層を1層以上設けてなるオフセット輪転印刷用塗被紙において、前記の原紙がケン化度85モル%以上のポリビニルアルコールを含有する層を表裏両面に有し、片面当り当該ポリビニルアルコールを0.5〜6g/m 2 の範囲で含有するポリビニルアルコール層が、湿潤剤をポリビニルアルコール100重量部に対して0.01〜0.08重量部含有し、前記の顔料塗被層が、湿潤剤を顔料100重量部に対して0.01〜0.15重量部の範囲で含有すると共に、直径10〜35μmの細孔を1平方mm当り80〜200個有することを特徴とするオフセット輪転印刷用塗被紙。
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