JP6247847B2 - 皮膚のしわ形成防止・改善剤、ヒアルロン酸生成促進剤、コラーゲン生成促進剤及びmmp阻害剤 - Google Patents

皮膚のしわ形成防止・改善剤、ヒアルロン酸生成促進剤、コラーゲン生成促進剤及びmmp阻害剤 Download PDF

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Description

本発明は、新規な皮膚のしわ形成防止・改善剤、ヒアルロン酸生成促進剤、コラーゲン生成促進剤及びMMP阻害剤に関する。
皮膚は、紫外線、乾燥、寒冷、熱、薬物等のさまざまな物理的及び化学的ストレスに日々さらされている。その結果、皮膚の機能低下が引き起こされ、さまざまな皮膚の老化現象が顕在化する。皮膚の老化現象の一つに、しわがある。しわには、表皮性のしわと、真皮性のしわの二種類が存在することが知られている。表皮性のしわは小じわと呼ばれ、皮膚の乾燥により、表皮角質層中の水分量が低下することによって一時的に生じるしわである。小じわの改善方法としては、保湿効果を有する化粧品の使用が一般的である。一方、真皮性のしわは、太陽光線に含まれる紫外線や加齢によって形成されるしわである。その形成メカニズムとしては、紫外線や加齢による真皮線維芽細胞におけるコラーゲン合成能の低下や、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)の増加によるコラーゲンの分解促進が挙げられる。
乾燥に起因する表皮性のしわと真皮性のしわでは、組織学的形態、発症メカニズム、治療方法が異なり、紫外線や加齢により生じる真皮性のしわは、保湿効果を有する化粧品の使用によって改善させることはできない。
これまでに、紫外線によって生じる真皮性のしわを改善することを目的として、加水分解アーモンドを有効成分とする皮膚のしわ形成防止・改善剤(特許文献1)、ジョチョウケイ、テンキシ及びキセンウの抽出物を有効成分とする紫外線照射に起因するしわの改善剤(特許文献2)が報告されている。
また、真皮には線維芽細胞やコラーゲンが存在し、I型コラーゲンが全体の80%を占める。I型コラーゲンのほかにはIII、V、XII及びXIV型コラーゲンの存在が知られている。しわやたるみの原因の一つとして、I型コラーゲンの減少があげられる。従って、I型コラーゲンの生成を促進させることが、しわ・たるみの予防・改善に有効であると考えられる。また、I型コラーゲンの生成促進は皮膚の創傷治癒の改善にも有効である。
また、線維芽細胞はコラーゲンなどのタンパク質およびヒアルロン酸などのグリコサミノグリカンを産生して真皮結合組織を形成し、皮膚のハリを保っている。この結合組織が収縮力を失い、さらに弾力性を失う結果として皮膚のシワやタルミが発生すると考えられている。
特にヒアルロン酸は結合組織に広く分布する高分子多糖体として知られており、真皮中でゲル状の形態を呈し、肌の弾力を維持している。従って、ヒアルロン酸の変質や減少が皮膚老化において重要であると考えられている。また、ヒアルロン酸は高分子であるため、それを配合した化粧料を皮膚に直接塗布しても吸収されにくいという問題があった。そこで、これまで、線維芽細胞を活性化することで、細胞自らのコラーゲンやヒアルロン酸の合成を促進させることができる皮膚外用剤が模索されてきた(特許文献3)。また、ヒアルロン酸は、関節にも存在しており、関節の荷重の衝撃を和らげたり、関節の動きを滑らかにしたりする機能を果たしていることが知られている。変形性関節症、慢性関節リウマチ、化膿性関節炎、痛風性関節炎などの場合は、関節液中のヒアルロン酸量が低下したり、加齢によって低下したりすることが知られている。このような疾患において、潤滑機能の改善、関節軟骨の被覆や保護、痛みの抑制及び病的関節液の改善若しくは正常化のために、関節液中のヒアルロン酸量を増加させることが考えられる。例えば、慢性関節リウマチ、外傷性関節症、骨関節炎及び変形性関節症の患者にヒアルロン酸ナトリウムの関節注入療法を行うと上記症状の改善が認められることが知られている。しかし、これらの治療は長期にわたる。従って、日常生活の中で手軽に治療できるヒアルロン酸生成促進剤を含有させた医薬品が望まれている。また、熱傷後の治癒過程で、肉芽中にヒアルロン酸が著しく増加することが知られており、熱傷の初期の治療薬としても、ヒアルロン酸生成促進剤が期待されている。
コラーゲンは、哺乳動物組織の約1/3を占める主要な構造タンパク質であり、軟骨、骨、腱、及び皮膚を含む多くのマトリックス組織の必須な成分である。マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)に属するコラゲナーゼ(MMP−1)により1箇所を切断されると、通常の組織内では安定なコラーゲン分子は、変性して一本鎖のゼラチンとなり、他の様々なプロテアーゼにより分解されるようになる。その結果、マトリックス組織の構造の完全性が失われてしまう。
MMPに属するゼラチナーゼは、線維芽細胞や内皮細胞、ガン細胞等が産生する酵素であり、コラーゲン、ゼラチン、エラスチン(動脈、腱、皮膚など弾性組織の特殊成分をなす構造タンパク質)等の基質を分解する。従って、ゼラチナーゼに対して阻害活性を有する物質は、ガン組織における血管新生やガンの転移を抑制する効果が期待され、ガン疾患の予防、治療に有用であると考えられる。さらにMMPはガン疾患のみならず、潰瘍形成、慢性関節リウマチ、骨粗鬆症、歯周炎等の種々の病態での細胞外基質の分解に関与していることが報告されている。よって、MMPの阻害活性を有すれば、ガンの転移、潰瘍形成、慢性関節リウマチ、骨粗鬆症、歯周炎等、MMPの亢進が原因で起こる各種疾患の治療及び改善に有用である。
アケビの公知文献としては、保湿効果(特許文献4、5)が示されているが、これは表皮性の肌性状変化を改善するものであり、真皮性のしわの形成を防止・改善するものではない。また、これらのヒアルロン酸生成促進効果、コラーゲン生成促進効果、MMP阻害効果を有する植物由来の天然原料として、アケビは検討されていなかった。
特開2000−119125号公報 特開2006−199611号公報 特開2007−1924号公報 特開2000−72616号公報 特開2001−226249号公報
本発明は、皮膚のしわ形成防止・改善剤、ヒアルロン酸生成促進剤、コラーゲン生成促進剤及びMMP阻害剤を提供することを課題とする。
本発明者は、この問題点を解決すべく、鋭意研究を重ねた結果、アケビの抽出物及び/又は種子油に、ヒアルロン酸生成促進効果、コラーゲン生成促進効果及びMMP阻害効果を有し、優れたしわ形成防止・改善効果などが発揮されることを発見し、本発明を完成するに至った。
本発明に用いるアケビの抽出物とは、アケビ科アケビ属アケビ(学名:Akebia quinata)、ミツバアケビ(学名:Akebia trifolia)、ゴヨウアケビ(学名:Akebia pentaphylla)、ホザキアケビ(学名:Akebia longeracemosa)などが用いられ、部位としては、花、花穂、果実、茎、葉、枝、枝葉、根、種子等の植物体の一部又は全草を用いて抽出したものである。その抽出方法は特に限定されず、例えば、加熱抽出したものであっても良いし、常温抽出したものであっても良い。中でも、効果の面で果皮や種子が好ましい。
抽出溶媒としては、例えば、水、低級アルコール類(メタノール、エタノール、1‐プロパノール、2‐プロパノール、1‐ブタノール、2‐ブタノール等)、液状多価アルコール(1,3‐ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン等)、アセトニトリル、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチル等)、炭化水素類(ヘキサン、ヘプタン、流動パラフィン等)、エーテル類(エチルエーテル、テトラヒドロフラン、プロピルエーテル等)が挙げられる。好ましくは、水、低級アルコール及び液状多価アルコール等の極性溶媒が良く、特に好ましくは、水、エタノール、1,3‐ブチレングリコール及びプロピレングリコールが良い。これらの溶媒は一種でも二種以上を混合して用いても良い。
アケビの種子の場合は、そのまま前記溶媒にて抽出することができるが、場合によっては、炭化水素類(ヘキサン、ヘプタン等)、エーテル類(エチルエーテル、テトラヒドロフラン、プロピルエーテル等)によって油脂を除き、脱脂したものについて、さらに前記の抽出溶媒にて抽出することができる。種子は、圧搾や抽出後の残渣を使用することもできる。このように抽出を行うことにより、薬効を高めることができる。例としては、アケビ種子の圧搾後の残渣を炭化水素類で抽出し、その残渣を水、低級アルコール類、液状多価アルコール、ケトン類、炭化水素類の抽出溶媒(一種でも二種以上を混合して用いても良い)で抽出することが好ましく、水、エタノール、ヘキサンの抽出溶媒(一種でも二種以上を混合して用いても良い)がより好ましく、含水エタノール(水とエタノールの混液)又はエタノールが最も好ましい。
上記抽出物は、抽出した溶液のまま用いても良く、必要に応じて、濃縮、希釈及び濾過処理、活性炭等による脱色、脱臭処理等をして用いても良い。更には、抽出した溶液を濃縮乾固、噴霧乾燥、凍結乾燥等の処理を行い、乾燥物として用いても良い。
また、本発明に用いるアケビの種子油とは、アケビ科アケビ属アケビ(学名:Akebia quinata)、ミツバアケビ(学名:Akebia trifolia)、ゴヨウアケビ(学名:Akebia pentaphylla)、ホザキアケビ(学名:Akebia longeracemosa)などの種子から得られた油である。
上記種子油は、圧搾や抽出など、食用油脂分野において通常行われる方法によって得ることができる。また、これらの種子油を脱ガム、脱酸、脱色、脱ロウ、脱臭のいずれか一つ以上の処理を行ってもよい。
本発明の皮膚のしわ形成防止・改善剤、ヒアルロン酸生成促進剤、コラーゲン生成促進剤及びMMP阻害剤には、上記抽出物及び/又は種子油をそのまま使用しても良く、効果を損なわない範囲内で、油脂類、ロウ類、炭化水素類、脂肪酸類、アルコール類、エステル類、界面活性剤、金属石鹸、pH調整剤、防腐剤、香料、保湿剤、粉体、紫外線吸収剤、増粘剤、色素、酸化防止剤、美白剤、キレート剤、乳糖、ショ糖、ソルビット、マンニット、澱粉、沈降性炭酸カルシウム、重質酸化マグネシウム、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、セルロース又はその誘導体、アミロペクチン、ポリビニルアルコール、ゼラチン、界面活性剤、水、生理食塩水、エタノール、グリセリン、プロピレングリコール、カカオ脂、ワセリン、パラフィン、高級アルコール等の成分を配合することができる。
本発明の皮膚のしわ形成防止・改善剤、ヒアルロン酸生成促進剤、コラーゲン生成促進剤及びMMP阻害剤は、化粧品、医薬部外品、医薬品、食品のいずれにも用いることができ、その剤形としては、例えば、化粧水、クリーム、乳液、ゲル剤、エアゾール剤、エッセンス、パック、洗浄剤、浴用剤、ファンデーション、打粉、口紅、軟膏、パップ剤、錠菓、カプセル剤、チョコレート、ガム、飴、飲料、散剤、顆粒剤、錠剤、糖衣錠剤、カプセル剤、シロップ剤、丸剤、懸濁剤、液剤、乳剤、坐剤、注射用溶液等が挙げられる。
本発明に用いる上記抽出物及び/又は種子油の配合量は、本発明の皮膚のしわ形成防止・改善剤、ヒアルロン酸生成促進剤、コラーゲン生成促進剤及びMMP阻害剤に対し、抽出物の場合には固形物に換算し、種子油の場合にはその重量(溶媒を含まない状態の重量)にて、0.0001重量%以上、好ましくは0.001〜50重量%、さらに好ましくは0.01〜20重量%の配合が良い。0.0001重量%未満では十分な効果は望みにくい。50重量%を越えて配合した場合、効果の増強は認められにくく不経済である。また、添加の方法については、予め加えておいても、製造途中で添加しても良く、作業性を考えて適宜選択すれば良い。
本発明のアケビの抽出物及び/又は種子油は、優れたヒアルロン酸生成促進効果、コラーゲン生成促進効果及びMMP阻害効果を有しており、医薬品、医薬部外品、化粧品、食品の分野において貢献できるものである。
次に本発明を詳細に説明するため、実施例として本発明に用いる抽出物及び/又は種子油の製造例、実験例及び処方例を挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。製造例に示す%とは重量%を、処方例に示す配合量の部とは重量部を示す。
製造例1 アケビ果皮の熱水抽出物
アケビ(Akebia quinata)の果皮の乾燥物20gに精製水400mLを加え、95〜100℃で2時間抽出した後、濾過し、その濾液を濃縮し、凍結乾燥してアケビの熱水抽出物を9.7g得た。
製造例2 アケビ果皮の50%エタノール抽出物
アケビ(Akebia quinata)の果皮の乾燥物20gに50%エタノール400mLを加え、常温で7日間抽出した後、濾過し、その濾液を濃縮乾固して、アケビの50%エタノール抽出物を9.4g得た。
製造例3 アケビ果皮のエタノール抽出物
アケビ(Akebia quinata)の果皮の乾燥物50gにエタノール1000mLを加え、常温で7日間抽出した後、濾過し、その濾液を濃縮乾固して、アケビのエタノール抽出物を7.6g得た。
製造例4 アケビ果皮の50%1,3‐ブチレングリコール抽出物
アケビ(Akebia quinata)の果皮の乾燥物20gに50%1,3‐ブチレングリコール400mLを加え、常温で7日間抽出した後、濾過し、アケビの50%1,3‐ブチレングリコール抽出物を380g得た。
製造例5 アケビ油
アケビ(Akebia quinata)の種子の乾燥物70kgを圧搾し、未精製油17kgを得た。これに脱ガム処理を施し、アケビ油15.6kgを得た。
製造例6 アケビ種子の熱水抽出物1
アケビ(Akebia quinata)の種子の圧搾後の残渣20gに精製水400mLを加え、95〜100℃で2時間抽出した後、濾過し、その濾液を濃縮し、凍結乾燥してアケビの熱水抽出物を3.4g得た。
製造例7 アケビ種子の50%エタノール抽出物1
アケビ(Akebia quinata)の種子の圧搾後の残渣20gに50%エタノール400mLを加え、常温で7日間抽出した後、濾過し、その濾液を濃縮乾固して、アケビの50%エタノール抽出物を4.1g得た。
製造例8 アケビ種子のエタノール抽出物1
アケビ(Akebia quinata)の種子の圧搾後の残渣50gにエタノール1000mLを加え、常温で7日間抽出した後、濾過し、その濾液を濃縮乾固して、アケビのエタノール抽出物を7.0g得た。
製造例9 アケビ種子の50%1,3‐ブチレングリコール抽出物1
アケビ(Akebia quinata)の種子の圧搾後の残渣20gに50%1,3‐ブチレングリコール400mLを加え、常温で7日間抽出した後、濾過し、アケビの50%1,3‐ブチレングリコール抽出物を380g得た。
製造例10 アケビ種子の熱水抽出物2
アケビ(Akebia quinata)の種子の圧搾後の残渣をヘキサンに浸漬し撹拌後、濾過し、残渣を減圧乾燥した。得られた残渣20gに精製水400mLを加え、95〜100℃で2時間抽出した後、濾過し、その濾液を濃縮し、凍結乾燥してアケビ種子の熱水抽出物を4.0g得た。
製造例11 アケビ種子の50%エタノール抽出物2
アケビ(Akebia quinata)の種子の圧搾後の残渣をヘキサンに浸漬し撹拌後、濾過し、残渣を減圧乾燥した。得られた残渣20gに50%エタノール400mLを加え、常温で7日間抽出した後、濾過し、その濾液を濃縮乾固して、アケビ種子の50%エタノール抽出物を4.7g得た。
製造例12 アケビ種子のエタノール抽出物2
アケビ(Akebia quinata)の種子の圧搾後の残渣をヘキサンに浸漬し撹拌後、濾過し、残渣を減圧乾燥した。得られた残渣50gにエタノール1000mLを加え、常温で7日間抽出した後、濾過し、その濾液を濃縮乾固して、アケビ種子のエタノール抽出物を8.0g得た。
製造例13 アケビ種子の50%1,3‐ブチレングリコール抽出物2
アケビ(Akebia quinata)の種子の圧搾後の残渣をヘキサンに浸漬し撹拌後、濾過し、残渣を減圧乾燥した。得られた残渣20gに50%1,3‐ブチレングリコール400mLを加え、常温で7日間抽出した後、濾過し、アケビ種子の50%1,3‐ブチレングリコール抽出物を380g得た。
製造例14 アケビ種子のアセトン抽出物
アケビ(Akebia quinata)の種子の圧搾後の残渣をヘキサンに浸漬し撹拌後、濾過し、残渣を減圧乾燥した。得られた残渣50gにアセトン1000mLを加え、常温で7日間抽出した後、濾過し、その濾液を濃縮乾固して、アケビ種子のアセトン抽出物を6.7g得た。
製造例15 アケビ種子のヘキサン抽出物
アケビ(Akebia quinata)の種子の圧搾後の残渣50gにヘキサン1000mLを加え、常温で7日間抽出した後、濾過し、その濾液を濃縮乾固して、アケビ種子のヘキサン抽出物を1.8g得た。
次に、本発明の効果を詳細に説明するため、実験例を挙げる。
実験例1 ヒアルロン酸合成酵素2(HAS2)、1型コラーゲン(COL1A)、MMP−1及びMMP−2 mRNA発現量の測定
ヒト線維芽細胞NB1RGBを60mm dishに1×10個播種し、コンフルエントになった時点で、終濃度が10μg/mLになるように試料を添加した。コントロールには、試料を希釈した溶媒を添加した。24時間培養後、総RNAの抽出を行った。細胞からの総RNAの抽出はTRIZOL Reagent(Invitrogen)を用いて行い、総RNA量は分光光度計(NanoDrop)を用いて260nmにおける吸光度により求めた。mRNA発現量の測定は、細胞から抽出した総RNAを基にしてリアルタイムRT−PCR法により行った。リアルタイムRT−PCR法には、SuperScriptIII Platinum Two−Step qRT−PCR Kit with SYBR Green(Invitrogen)を用いた。すなわち、500ngの総RNAを逆転写反応後、PCR反応(95℃:15秒間、60℃:30秒間、40cycles)を行った。その他の操作は定められた方法に従い、HAS2、COL1A、MMP−1及びMMP−2 mRNAの発現量を、内部標準であるβ―actin mRNAの発現量に対する割合として求めた。HAS2発現率は、コントロールのHAS2 mRNAの発現量に対する試料添加群のHAS2 mRNAの発現量の比率として算出した。COL1A発現率及びMMP発現率についても、同様に算出した。尚、各遺伝子の発現量の測定に使用したプライマーは次の通りである。
HAS2用のプライマーセット
TGGATGACCTACGAAGCGATTA(配列番号1)
GCTGGATTACTGTGGCAATGAG(配列番号2)
COL1A用のプライマーセット
AGGACAAGAGGCATGTCTGGTT(配列番号3)
TTGCAGTGGTAGGTGATGTTCTG(配列番号4)
MMP−1用のプライマーセット
GGGAGATCATCGGGACAACTC(配列番号5)
TGAGCATCCCCTCCAATACC(配列番号6)
MMP−2用のプライマーセット
CCGTCGCCCATCATCAA(配列番号7)
CTTCTGCATCTTCTTTAGTGTGTCCTT(配列番号8)
β―Actin用のプライマーセット
CACTCTTCCAGCCTTCCTTCC(配列番号9)
GTGTTGGCGTACAGGTCTTTG(配列番号10)
これらの実験結果を表1〜4に示した。その結果、本発明のアケビの抽出物及び/又は種子油には、優れたHAS2発現促進効果(ヒアルロン酸生成促進効果)、COL1A発現促進効果(コラーゲン生成促進効果)及びMMP発現抑制効果(MMP阻害効果)が認められた。
処方例1 化粧水
処方 配合量(部)
1.アケビ果皮の熱水抽出物(製造例1) 1.0
2.1,3‐ブチレングリコール 8.0
3.グリセリン 2.0
4.キサンタンガム 0.02
5.クエン酸 0.01
6.クエン酸ナトリウム 0.1
7.エタノール 5.0
8.パラオキシ安息香酸メチル 0.1
9.ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(40E.O.) 0.1
10.香料 適量
11.精製水にて全量を100とする
[製造方法]成分1〜6及び11と、成分7〜10をそれぞれ均一に溶解し、両者を混合し濾過して製品とする。
処方例1において、アケビ果皮の熱水抽出物を製造例6及び10に置き換えたものを処方例2及び3とした。
処方例4 クリーム
処方 配合量(部)
1.アケビ果皮の50%エタノール抽出物(製造例2) 0.5
2.スクワラン 5.5
3.オリーブ油 3.0
4.ステアリン酸 2.0
5.ミツロウ 2.0
6.ミリスチン酸オクチルドデシル 3.5
7.ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.O.) 3.0
8.ベヘニルアルコール 1.5
9.モノステアリン酸グリセリン 2.5
10.香料 0.1
11.パラオキシ安息香酸メチル 0.25
12.1,3‐ブチレングリコール 8.5
13.精製水にて全量を100とする
[製造方法]成分2〜9を加熱溶解して混合し、70℃に保ち油相とする。成分1及び11〜13を加熱溶解して混合し、75℃に保ち水相とする。油相に水相を加えて乳化して、かき混ぜながら冷却し、45℃で成分10を加え、更に30℃まで冷却して製品とする。
処方例4において、アケビ果皮の50%エタノール抽出物を製造例7及び11に置き換えたものを処方例5及び6とした。
処方例7 乳液
処方 配合量(部)
1.アケビ果皮のエタノール抽出物(製造例3) 1.0
2.スクワラン 5.0
3.オリーブ油 5.0
4.ホホバ油 5.0
5.セタノール 1.5
6.モノステアリン酸グリセリン 2.0
7.ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.O.) 3.0
8.ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(20E.O.) 2.0
9.香料 0.1
10.プロピレングリコール 1.0
11.グリセリン 2.0
12.パラオキシ安息香酸メチル 0.2
13.精製水にて全量を100とする
[製造方法]成分2〜8を加熱溶解して混合し、70℃に保ち油相とする。成分1及び10〜13を加熱溶解して混合し、75℃に保ち水相とする。油相に水相を加えて乳化して、かき混ぜながら冷却し、45℃で成分9を加え、更に30℃まで冷却して製品とする。
処方例7において、アケビ果皮のエタノール抽出物を製造例8及び12に置き換えたものを処方例8及び9とした。
処方例10 ゲル剤
処方 配合量(部)
1.アケビ果皮の熱水抽出物(製造例1) 0.001
2.エタノール 5.0
3.パラオキシ安息香酸メチル 0.1
4.ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(60E.O.) 0.1
5.香料 適量
6.1,3‐ブチレングリコール 5.0
7.グリセリン 5.0
8.キサンタンガム 0.1
9.カルボキシビニルポリマー 0.2
10.水酸化カリウム 0.2
11.精製水にて全量を100とする
[製造方法]成分2〜5と、成分1及び6〜11をそれぞれ均一に溶解し、両者を混合して製品とする。
処方例11 パック
処方 配合量(部)
1.アケビ種子の熱水抽出物1(製造例6) 0.1
2.アケビ油(製造例5) 0.1
3.ポリビニルアルコール 12.0
4.エタノール 5.0
5.1,3‐ブチレングリコール 8.0
6.パラオキシ安息香酸メチル 0.2
7.ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(20E.O.) 0.5
8.クエン酸 0.1
9.クエン酸ナトリウム 0.3
10.香料 適量
11.精製水にて全量を100とする
[製造方法]成分1〜11を均一に溶解し製品とする。
処方例12 ファンデーション
処方 配合量(部)
1.アケビ果皮の50%1,3‐ブチレングリコール抽出物(製造例4)1.0
2.ステアリン酸 2.4
3.ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート(20E.O.) 1.0
4.ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.O.) 2.0
5.セタノール 1.0
6.液状ラノリン 2.0
7.流動パラフィン 3.0
8.ミリスチン酸イソプロピル 6.5
9.カルボキシメチルセルロースナトリウム 0.1
10.ベントナイト 0.5
11.プロピレングリコール 4.0
12.トリエタノールアミン 1.1
13.パラオキシ安息香酸メチル 0.2
14.二酸化チタン 8.0
15.タルク 4.0
16.ベンガラ 1.0
17.黄酸化鉄 2.0
18.香料 適量
19.精製水にて全量を100とする
[製造方法]成分2〜8を加熱溶解し、80℃に保ち油相とする。成分19に成分9をよく膨潤させ、続いて、成分1及び10〜13を加えて均一に混合する。これに粉砕機で粉砕混合した成分14〜17を加え、ホモミキサーで撹拌し75℃に保ち水相とする。この水相に油相をかき混ぜながら加え、冷却し、45℃で成分18を加え、かき混ぜながら30℃まで冷却して製品とする。
処方例13 浴用剤
処方 配合量(部)
1.アケビ果皮の熱水抽出物(製造例1) 5.0
2.アケビ油(製造例5) 1.0
3.炭酸水素ナトリウム 50.0
4.黄色202号(1) 適量
5.香料 適量
6.硫酸ナトリウムにて全量を100とする
[製造方法]成分1〜6を均一に混合し製品とする。
処方例14 軟膏
処方 配合量(部)
1.アケビ種子のアセトン抽出物(製造例14) 0.5
2.ポリオキシエチレンセチルエーテル(30E.O.) 2.0
3.モノステアリン酸グリセリン 10.0
4.流動パラフィン 5.0
5.セタノール 6.0
6.パラオキシ安息香酸メチル 0.1
7.プロピレングリコール 10.0
8.精製水にて全量を100とする
[製造方法]成分3〜6を加熱溶解して混合し、70℃に保ち油相とする。成分1、2及び7、8を加熱溶解して混合し、75℃に保ち水相とする。油相に水相を加えて乳化して、かき混ぜながら30℃まで冷却して製品とする。
処方例14において、アケビ種子のアセトン抽出物を製造例15に置き換えたものを処方例15とした。
処方例16 散剤
処方 配合量(部)
1.アケビ果皮の熱水抽出物(製造例1) 20.0
2.乾燥コーンスターチ 30.0
3.微結晶セルロース 50.0
[製造方法]成分1〜3を混合し、散剤とする。
処方例17 錠剤
処方 配合量(部)
1.アケビ果皮のエタノール抽出物(製造例3) 5.0
2.乾燥コーンスターチ 29.0
3.カルボキシメチルセルロースカルシウム 20.0
4.微結晶セルロース 40.0
5.ポリビニルピロリドン 7.0
6.タルク 3.0
[製造方法]成分1〜4を混合し、次いで成分5の水溶液を結合剤として加えて顆粒成形する。成形した顆粒に成分6を加えて打錠する。1錠0.52gとする。
処方例18 錠菓
処方 配合量(部)
1.アケビ油(製造例5) 1.0
2.乾燥コーンスターチ 50.0
3.エリスリトール 40.0
4.クエン酸 5.0
5.ショ糖脂肪酸エステル 3.0
6.香料 適量
7.精製水にて全量を100とする
[製造方法]成分1〜4及び7を混合し、顆粒成形する。成形した顆粒に成分5及び6を加えて打錠する。1粒1.0gとする。
処方例19 飲料
処方 配合量(部)
1.アケビ果皮の熱水抽出物(製造例1) 2.0
2.果糖ブドウ糖液糖 12.5
3.クエン酸 0.1
4.香料 0.05
5.精製水にて全量を100とする
[製造方法]成分1〜5を混合し、飲料とする。
処方例20 粉末飲料
処方 配合量(部)
1.アケビ果皮の熱水抽出物(製造例1) 10.0
2.粉糖 65.0
3.粉末ピーチ果汁 15.0
4.L−アスコルビン酸 8.0
5.結晶クエン酸 1.2
6.クエン酸ナトリウム 0.75
7.アスパルテーム 0.02
8.粉末ピーチ香料 0.03
[製造方法]成分1〜8を混合し、粉末飲料とする。
以上のことから、アケビの抽出物及び/又は種子油は、ヒアルロン酸生成促進効果、コラーゲン生成促進効果及びマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)阻害効果を有し、優れたしわ形成防止・改善剤などとして有効である。

Claims (4)

  1. アケビの果皮の、水、低級アルコール及び液状多価アルコールから選ばれる一種又は二種以上の溶媒による抽出物及び/又は種子の水抽出物を含有することを特徴とする関節用又は熱傷の初期の治療用ヒアルロン酸生成促進剤。
  2. アケビの果皮の、水、低級アルコール及び液状多価アルコールから選ばれる一種又は二種以上の溶媒による抽出物を含有することを特徴とするコラーゲン生成促進剤。
  3. アケビの種子油を含有することを特徴とするMMP−1阻害剤。
  4. アケビの果皮の低級アルコール抽出物及び/又は圧搾後の残渣を脱脂したアケビ種子の含水エタノール抽出物を含有することを特徴とするMMP-2阻害剤

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