JP6242725B2 - 金属タリウムの製造方法 - Google Patents
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Description
しかし、Tl4PbI6などの複合ヨウ化物の形態で3%〜25%の鉛(Pb)を含むヨウ化タリウムでは、上記の方法を利用できるものの、高純度のタリウムを得るにはPbを分離するために硫酸浴での電解精製を追加しなければ99.9%(3N)程度まで高純度化した金属タリウムは得られない。この金属タリウムの回収方法について図1に示す。
以上のことから、電解精製の工程以前に鉛を除去することが望まれていた。
即ち、本発明では、不純物を含むハロゲン化タリウムとアルカリ金属炭酸塩を含む溶液とを混合し、更に酸性溶液を添加して混合した後に、固液分離で固体分を回収する工程、回収した固体分をアルカリ金属塩及び還元源を加えて溶融し粗タリウムを得る工程、粗タリウムを電解精製により高純度金属タリウムとする工程、を行う。
本発明の他の形態では、不純物を含むハロゲン化タリウムとアルカリ性溶液とを混合し、固液分離で固体分を回収する工程、回収した固体分をアルカリ金属塩及び還元源を加えて溶融し粗タリウムを得る工程、電解精製により粗タリウムから高純度金属タリウムを得る工程、を行う。
本発明の金属タリウムの製造方法は、脱不純物工程と、溶融還元工程と、電解精製工程を含んでなる。以下、各工程について説明する。
本発明の金属タリウムの製造方法の第一の製造方法では、まず、不純物を含むハロゲン化タリウムとアルカリ金属炭酸塩を含む溶液とを混合し、更に酸性溶液を添加して混合する。その後に固液分離で固体分を回収することで不純物のみをアルカリ浸出させる。
本工程では、不純物を含むハロゲン化タリウムとアルカリ金属炭酸塩を含む溶液とを混合するに、加熱をすることが、不純物の炭酸塩化を効率よくするために好ましい。
前記ハロゲン化タリウムとしては、例えば、ヨウ化タリウム、臭化タリウム、塩化タリウムなどが挙げられる。
前記脱鉛方法では、まず、前記鉛を含むヨウ化タリウムに水をスラリー濃度325g/L以下になるように加える。前記スラリー濃度は、高いほど処理効率が良好なので、スラリー濃度100g/L〜325g/Lが好ましい。
炭酸ソーダを加えて60℃以上、pH8以上で撹拌し、固液分離する。撹拌速度は、直径90mmの撹拌羽を用いた場合には、600rpm以上である。前記pHは8〜10が好ましい。次に、炭酸塩化した原料に水をスラリー濃度325g/L以下になるように加え、常温でpH2.5以下になるように酸を加えて攪拌し固液分離する。前記酸はスルファミン酸、酢酸、珪弗酸、過塩素酸、硝酸など鉛の溶解度が高いものが好ましい。ただし酸化力のある濃硝酸ではヨウ素の遊離が生じ、タリウムも液中に浸出されるので不適当である。前記pHは0.5〜2.5が好ましい。
前記撹拌羽の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、2段タービン羽などが挙げられる。
前記固液分離としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、
加圧ろ過が好ましい。
上記以外の脱鉛方法として、前記鉛を含むヨウ化タリウムのスラリーに苛性ソーダを加えて40℃以上、pH12.5以上で撹拌し、固液分離する方法がある。
前記脱鉛工程により、タリウム以外の不純物元素、例えば、Pb(鉛)、Bi(ビスマス)等がろ液として浸出液に分離される。一方、未浸出分のPb(鉛)、Tl(タリウム)等が脱鉛したヨウ化タリウムに残る。また鉛に化合していたヨウ素も炭酸塩化后液または苛性ソーダ浸出液に分離される。
鉛の酸浸出液は、硫酸を添加することで鉛の回収と同時に酸を回収することができる。一方、鉛のアルカリ浸出液は、硫酸中和や硫化により鉛を回収することができる。
以上のことから脱鉛工程において、処理時間を短縮するならばアルカリ溶解する方法が好ましく、薬剤費を抑えるならば炭酸塩化後に酸浸出する方法が好ましい。
ここで、前記アルカリ性溶液としては、NaOH及びKOHの少なくとも1種を用いることが好ましい。
本発明の金属タリウムの製造方法の溶融還元工程では、上述の脱不純物工程で回収した固体分をアルカリ金属塩及び還元源を加えて溶融し粗タリウムを得る。このときの溶融は700℃以上の温度で行うことがよい。
前記脱鉛工程の残渣または前記鉛を含むヨウ化タリウムに、アルカリ金属塩と還元剤を加えて加熱溶融することで、粗タリウム金属とアルカリ金属ヨウ化物のスラグに分離する工程である。
前記溶融還元工程により、タリウムとヨウ素は金属とスラグに分離される。前記金属中のタリウム以外の不純物元素としては、鉛が挙げられる。
加熱温度は700℃以上が望ましく、より高温で収率は向上するが、ヨウ化物のスラグであるため揮発が激しくなることや加熱コスト、設備負荷を考慮すると700℃で十分である。収率は加熱時間より温度の影響の方が大きい。
前記鉛を含むヨウ化タリウム(Pb/Tl=0.40)で溶融還元した場合、重量比で苛性ソーダは0.73に増やす必要があり、これ以下では収率が極端に低下することがある。
本発明の金属タリウムの製造方法の電解精製工程では、前記粗タリウム金属からアノードを鋳造し、硫酸浴の電解液中でカソードにタリウムを電着させる。
電解液中の硫酸濃度は100g/L、タリウム濃度は50g/L、電流密度は60A/m2で電解を実施できる。液中タリウム濃度が低下するとカソードへの電着はスポンジ状になり不純物品位が上昇するので、タリウム濃度は10g/L以上が好ましい。
以上により99.99%(4N)の金属タリウムを得ることができる。
プロセスを示す工程図である。
まず、鉛を含むヨウ化タリウムに水を加え、温度60℃でpH8になるように炭酸ソーダを加えて撹拌し、固液分離する(脱鉛工程-炭酸塩化)。さらに得られた残渣を常温でpH1.0になるように硝酸を加えて撹拌し、固液分離する(脱鉛工程-酸浸出)。前記工程では、鉛を含むヨウ化タリウムに水をスラリー濃度325g/L以下になるように加える。固液分離としては加圧ろ過が好ましい。
以上により99.99%(4N)の金属タリウムを得ることができる。
実施例で用いた非鉄製錬工程にて発生した鉛を含むヨウ化タリウムの組成について、下記の表1に示す。なお、Tl、PbはICP、ICP−MS法で測定した(以下同様に測定した)。
温度60℃で、10Lビーカー内で、含水率20%ケーキ状の前記鉛を含むヨウ化タリウム2.6kgに水を加えて8Lにし、炭酸ソーダ180gを加えて600rpmで1時間撹拌した。なお、撹拌にはバッフル4枚、直径90mmの2段タービン羽を用いた。次に炭酸塩化残渣を加圧ろ過して回収した(脱鉛工程-炭酸塩化)。炭酸塩化残渣は含水率19%
で2.46kg得られた。鉛に化合していたヨウ素はろ液に分配され、炭酸塩化残渣は炭酸鉛の影響で白みを帯びた黄色となる。
この浸出残渣の組成について、下記の表2に示す。ヨウ素は差数法I=100−(Tl+Pb)%の値である*。
次に、上記と同様にして得たメタルから1.0〜1.2kg/枚のアノードを4枚、SUS304のカソードを3枚用意し交互に並べ、温度40℃、硫酸濃度100g/L、タリウム濃度50g/L、膠濃度800mg/L、電流密度60A/m2の条件で通電した(電解精製工程)。アノードには敷島カンバス株式会社製 商品名「T70C」製の隔膜を用いて電解スライムの飛散を防いでいる。
電解液中のタリウム濃度は、アノードでの不働態化が生じない為に、開始72時間で70g/Lに上昇した。
上記電解工程により99.99%の高純度の金属タリウムが得られた。得られた金属タリウムの分析結果を表4に示す。分析値は、すべて質量基準であり、質量%、質量ppmである。
温度60℃で、10Lビーカー内で、含水率20%ケーキ状の前記鉛を含むヨウ化タリウム2.6kgに水を加えて8Lにし、苛性ソーダ1.2kgを加えて600rpmで1時間撹拌した。なお、撹拌にはバッフル4枚、直径90mmの2段タービン羽を用いた。アルカリ浸出残渣は加圧ろ過した(脱鉛工程)。アルカリ浸出残渣は含水率18%で2.26kg得られた。鉛とそれに化合していたヨウ素はろ液に分配される。この浸出残渣の組成について、下記の表5に示す。ヨウ素は差数法I=100−(Tl+Pb)%の値である*。
100℃で24時間乾燥させた表1組成の原料を600g、還元剤として粒状活性炭38.5g、苛性ソーダ432gを鉄るつぼに添加して800℃で1時間保持した。なお、坩堝の底から、前記浸出残渣、苛性ソーダ、還元剤の順で層状に並べている。これによりメタル321g、スラグ742gを得られた。この粗タリウムメタルの品位について、下記の表7に示す。
上記電解工程により99.9%の金属タリウムが得られた。得られた金属タリウムの分析結果を表8に示す。分析値は、すべて質量基準であり、質量%、質量ppmである。
Claims (6)
- 不純物を含むハロゲン化タリウムとアルカリ金属炭酸塩を含む溶液とを混合し、更に酸性溶液を添加して混合した後に、固液分離で固体分を回収する工程、回収した固体分をアルカリ金属塩及び還元源を加えて溶融し粗タリウムを得る工程、粗タリウムを電解精製により高純度金属タリウムとする工程、を行うことを特徴とする金属タリウムの製造方法。
- 前記ハロゲン化タリウムが、ヨウ化タリウム、臭化タリウム及び塩化タリウムの少なくとも1種であり、不純物として鉛を含むことを特徴とする請求項1に記載の金属タリウムの製造方法。
- 前記アルカリ金属炭酸塩が、Na 2 CO 3 及びK 2 CO 3 の少なくとも1種であり、前記酸性溶液が、スルファミン酸、酢酸、珪弗酸、過塩素酸及び硝酸の少なくとも1種であることを特徴とする請求項1又は2に記載の金属タリウムの製造方法。
- 前記アルカリ金属塩がNaOH及びKOHの少なくとも1種であり、前記還元源がコークス及び活性炭の少なくとも1種であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1つの項に記載の金属タリウムの製造方法。
- 前記溶融を700℃以上で行うことを特徴とする請求項1から4のいずれか1つの項に記載の金属タリウムの製造方法。
- 前記電解精製は、アノード中の鉛品位を10質量%以下で行うことを特徴とする請求項1から5のいずれか1つの項に記載の金属タリウムの製造方法。
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