JP6241892B2 - 災害時トイレ - Google Patents
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Description
搬送式の簡易トイレは、キャビネットと貯留槽を備え、使用中の環境が確保されやすいが、し尿の貯蔵能力に限度がある。成人が排出するし尿の量は300g/回、1.6リットル/日とされている。このため、多数の被災者が集まった避難場所では満杯となった貯留槽のし尿を頻繁に処理する必要が生じる。また、キャビネットがかさばるために、平時の保管場所に苦労する。
マンホールトイレとしては、その鉄蓋を直接に便器として利用するものや、別途準備した便器をマンホール上に載せて、マンホールの地中空間をし尿の貯留や放流のために利用するものがある。
特許文献2も同様にマンホール用蓋体を便器として利用する防災用トイレシステムである。
特許文献3,4は、マンホールの蓋そのものではなく、この蓋に合わせて別途準備した蓋様体を便器として利用するものである。
特許文献5は、マンホール型の災害時トイレとして公園や校庭に特別に設置されるもので、排便管31は下水管あるいはこれにつながる配管につながっているものと考えられる。このトイレの蓋体13は通常はマンホールの蓋であるが、反転させることによりハンドル18を備えた便器となる。
すなわち、従来のマンホールトイレは、鉄蓋を直接に利用するものはもちろん、アダプターを介して便器を下水へ接続するものであっても、用便口は下水へつながる空間と直接につながっていて下水側空間から吹き上がる風によって臭気がつよく、また、拡散しやすい。さらに、場合によっては深い地中空間(下水側空間)が視界に入りその深さから恐怖感が沸いたり、内部が見えて強い不快感を抱いたりする。
受け部はダンパー板を備え、ダンパー板はし尿の重量で下方へ開いてし尿を地中空間に落下させるとともに、し尿の無いとき上方へ閉じているものとする。
ダンパー板が閉じられているとき、受け板によって前記便器が配置された上方開口と地中空間とが直接につながるのが遮断される。
地中空間の上方開口を閉じる蓋に用便口を設けて便器とし、蓋の地中空間側面であって前記用便口に筒状をした落とし込み部を取り付け、落とし込み部に前記受け部を備えた構成としてもよい。
さらに、前記受け部には、下方からの風圧を上方へ抜く圧抜き弁を設けることがある。
さらに、便器の下方に受け板が存在することによって、用便口から地中空間が直接には見えず、トイレ使用者の恐怖感、不快感を軽減することができる。
受け板にダンパー板が設けられているので、受け止めたし尿を地中空間へ排出することと地中空間から吹き上げる風の遮断とを両立させることができる。
図1において、災害時トイレ1は、収納ボックス2と便器3及び蓋4を備える。
収納ボックス2は、この実施例において、鋼板で形成された断面正方形の角筒状であって、避難場所である公園や校庭などの地中に構築した地中空間5にはめ込まれている。
収納ボックス2は、図2,3に示すように、上縁に外側へ張り出す上縁係合部6を有すると共に下縁に内側に張り出す下縁係合部7を有している。上縁係合部6は地中空間5の上縁に係合可能であり、地中空間5の上端縁に固定される鉄枠8の段差部に懸垂状態で取り付けられる。下縁係合部7は、後述の便器3を懸垂状態で取り付けたり、天地を逆にした収納ボックス2に載せて固定したりする際に用いる。
収納ボックス2の各寸法は、この実施例において高さ370mm、上縁係合部6の一辺(外周)645mm、下縁係合部7の一辺(外周)は580mm、下縁係合部7の一辺(内周)は564mmである。
便座9は、台板12、座板13、座面部材14、腕ガード15及び背ガード16とからなる。
受け部11は、図2,5,6のように、第1の斜板20、第2の斜板21、ダンパー板22及び磁石取り付け部材23を備える。これらはいずれも鋼板製であり、上面を滑面とするためにテフロン(登録商標)樹脂がコーティングされている。なお、他の滑面材であっても良い。
第2の斜板21は、側方から見て約30°の下り傾斜で配置され、一端(後端)が角筒19の後壁26に固定されると共に左右の側辺が角筒19の左右側壁に固定されている。
ダンパー板22の屈曲縁27の前面には錘29が固定されている。
第1の斜板20の下面に回動自在に取り付けられたダンパー板22は、通常時は錘29の重量と永久磁石31による引力とにより、後端部が第2の斜板21の前端辺(下端辺)に当接して停止している。
錘29の重量と永久磁石31による引力との共同作用は、この実施例において、ダンパー板22に約200g(小人1回のし尿量)の重量以下で通常の閉じ状態を維持できる大きさとしてある。
図5,6において、符号32はクッションであり、第2の斜板21の下縁に左右方向にとりつけられている。通常位置にあるダンパー板22の後端はこのクッションに密接している。
受け部11は以上の構造であって、ダンパー板22が通常の位置にあるとき、落とし込み部10の内部空間は、受け部11によって遮断され、上下に分断されている。
落とし込み部10における角筒19の各寸法は、この実施例において、高さ340mm、側面視400mm、正面視290mmの断面長方形であり、受け部11を構成する第1の斜板20、第2の斜板21、及びダンパー板22の正面視の幅寸法は176mmである。また、ダンパー板22の幅寸法は回動しやすいように、第1、第2の斜板20,21よりもわずかに小さくしてある。なお、角筒19の内部は、第1、第2の斜板20,21の側面と密接するように幅が狭められている。
台板12は下面四隅に設けてあるダボ17を下縁係合部7のダボ孔に嵌合することによって位置決めと安定した取り付けが行なわれる。
以上の、収納ボックス2ごと便器3を地中空間5から取り出す作用や、収納ボックス2から便器3を取り出す作業は2,3人が協力すれば、誰でも簡単にできることであって、災害時トイレ1を設置するために、特別な担当者や専門家は必要としない。
しかも、必要とする部材はその場ですべてが整い、すばやく、使用可能な状態とすることができる。
そして、周囲をテントなどの目隠し部材(図示していない)で覆って災害時トイレ1が完成する。テントなどの目隠し部材も折り畳んで収納ボックス2に収納しておくことが好ましい。また、座面部材は小人用も準備しておくことが好ましい。
トイレの使用で排出されたし尿は、当初受け部11のダンパー板22の先端部に堆積する。その量が重量で、約200gを越えるとダンパー板22は開き、し尿は、ダンパー板22の表面がテフロン(登録商標)でコーティングされているのと尿による潤滑作用で一気に下方へ落下する。
このとき、ダンパー板22は、徐々に開くのではなく、永久磁石31の引力で設定重量まで持ちこたえた(図8)後、一挙に開く(図9)作用となる。そのため、し尿は落下しやすい。そして、し尿が落下すると、ダンパー板22は錘29の作用で後端が上方に回動し、閉じ方向の最終段階では、永久磁石31の引力で確実に通常の閉じ位置となり、また、閉じ状態が維持される。この状態でダンパー板22の後端は第2の斜板21のクッション32に密着する。
地中空間5は十分に大きな容積を備えたものに形成できるから、し尿の貯留能力は大きく、2,3日というような短期間で満杯になってしまう恐れがない。
配設管で下水へ放流する構造のものでは、し尿を貯留する容量について心配する必要がない。
図10は、実施例1の蓋4をサイドテーブル33として利用するものである。収納ボックス2に4本の支持脚34をあわせ格納しておき、蓋4の下面四隅にボルト(図示していない)で固定する。サイドテーブル33は、設置した災害時トイレ1とは独立しているのでどこにおいてもよいが、災害時トイレ1の近くに配置すると、ちょっとした手荷物や衣類あるいは乳幼児を目の届く範囲におけるので重宝である。
図11は、実施例1の蓋4に用便口18を設けて便器とし、その下面側に実施例1の便器3と同様な落とし込み部10を取り付けたものである。用便口18は通常時では子蓋35で閉鎖されている。子蓋35を取り去り、もう一つ別の地中空間5(マンホール)に落とし込み部10を差し込み、地中空間5の上方に蓋4を掛け渡すことで、本来の便器3を用いた洋式トイレとは別にもう一つの災害時トイレ36(和式)として利用できる。この場合の落とし込み部10の大きさは、便器3が納められた収納ボックス2の内部において、便座の台板12より上方の空間に収まる大きさである。
実施例3は、災害時に必要なトイレの数を増やすことができると共に、その必要が生じない場合には、図11のように、サイドテーブルとしても利用することができる。
図12〜15は、実施例4を示し、基本的に実施例1の便器3だけで構成され、収納ボックス2に相当するものは備えていない。また、下水道のマンホールに適合させており、地上開口部の鉄枠8が円形なので、これにあわせ台板12や背ガード16は、円形で鉄枠8の半径以内の大きさとしている。落とし込み部10は、角筒状であり、断面における長辺が鉄枠8の半径以内である。落とし込み部10の内部は受け部11で上下に遮断されている。受け部11の具体的な構成は実施例1の場合と同様である。
符号37はマンホールの鉄蓋であり、台板12の上方に載せてマンホールが閉じられる。
災害時は、鉄蓋37を取り去り、便器3をマンホールから抜き出す。ついで、便器3を正立させ、その台板12を再び鉄枠8にはめ込んで災害時トイレ1を完成する(図14,15)。
トイレとしての機能と使用の態様は実施例1の場合と同様である。
圧抜き弁38は通常の吹き上げ程度では開かないように、ばねなどで閉じ方向に付勢されている。また、角筒19の周囲壁で受け部11より上方の箇所など、他の箇所に設けてもよい。
2 収納ボックス
3 便器
4 蓋
5 地中空間
6 上縁係合部
7 下縁係合部
8 鉄枠
9 便座
10 落とし込み部
11 受け部
12 台板
13 座板
14 座面部材
15 腕ガード
16 背ガード
17 ダボ
18 用便口
19 角筒
20 第1の斜板
21 第2の斜板
22 ダンパー板
23 磁石取り付け部材
24 前壁
25 遮断縁
26 後壁
27 屈曲縁
28 ヒンジ
29 錘
30 立ち上げ縁
31 永久磁石
32 クッション
33 サイドテーブル
34 支持脚
35 子蓋
36 もう一つの災害時トイレ
37 マンホールの鉄蓋
38 圧抜き弁
Claims (2)
- 地中空間の上方開口を閉じる蓋に用便口を設けて便器とし、蓋の下面側であって前記用便口に筒状の落とし込み部を取り付け、落とし込み部は受け部を備え、受け部はダンパー板を備え、ダンパー板は、上面が滑面であって閉じ方向へ付勢されていると共に、停止位置において開放側が低い下り傾斜の状態とされており、
ダンパー板に対する前記の付勢は、ダンパー板がし尿の重量で下方へ開いてし尿を地中空間に落下させるとともに、し尿の無いとき上方へ閉じて停止している勢力であり、
ダンパー板が閉じられているとき、受け部によって前記便器が配置された上方開口と地中空間とが直接につながるのが遮断されることを特徴とした災害時トイレ。 - 前記受け部に、下方からの風圧を上方へ抜く圧抜き弁が設けられていることを特徴とした請求項1に記載の災害時トイレ。
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