JP6241807B2 - 交流電動機の駆動制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、三相交流電動機の電流をフィードバック制御して、電動機を駆動制御する駆動制御装置に関する。特に、三相交流電流の内の一相の相電流のみを検出する駆動制御装置に関する。なお、本発明が対象とする「交流電動機」とは、電動機の三相巻線端子に三相交流電力を印加して駆動する電動機の総称である。本発明が対象とする「交流電動機」は、回転形電動機、リニア形電動機を包含しているが、本発明の説明では、説明の簡明性と具体性を確保すべく、回転形の例を取り上げる。回転形電動機の固定子、回転子は、各々、リニア形電動機の巻線側部分、非巻線側部分に対応させれば、回転形電動機を用いた説明は、無修正で、リニア形の説明となる。
三相交流電動機の高性能な制御は、いわゆるベクトル制御法により達成することができる。ベクトル制御法の基本は、電動機の電流をベクトル量として捕らえフィードバック制御する点にある。これには、基本的にu相、v相、w相の三相電流を知る必要がある。相電流の総和はゼロである点を利用するならば、三相の内の二相分の相電流を検出すれば、未検出の相電流は容易に定めることができる。このため、従来、交流電動機の駆動制御装置においては、相電流検出に際して、2個の交流電流検出器(カレントトランスなど)が広く用いられてきた。
近年、製造コストの一段の低下を目指して、1個の交流電流検出器のみを用いた交流電動機駆動制御装置の開発が進められている。この種の装置に関する先行発明としては、先行技術文献欄に列挙した特許文献1〜4がある。特許文献1〜4において提案された方法は、「三相電流の内の未検出の他三相電流を推定する(たとえば、u相電流を検出する場合には、未検出のv相電流、w相電流を推定する)」と言う共通の特徴を有している。このため、以下に列挙する諸点の幾つかを解決すべき課題として有していた。▲1▼電流推定に電動機パラメータを必要とする。このため、電動機パラメータに変動に対して脆弱である。▲2▼大きな時定数をもつフィルタによる処理を必須とし、電流推定に大きな時間を要する。このため、電流制御応答の速応性を図ろうとすると、電流制御系が不安定化する。▲3▼電流の制御周期が電動機回転速度により支配され、低リプルな制御が不可能あるいは安定的な制御が困難である。▲4▼概して、電流推定のためのアルゴリズムが煩雑であり、電流推定に多大な演算量を必要とする。ひいては高速な演算素子(マイコンなど)を必要とし、製造コストを向上させる。▲5▼未検出の他三相電流の推定に際しては、正相成分のみの直接的推定を目指しており、これが電流推定と電流制御の速応性・安定性の低下の遠因となっている。
海田英俊:「電力変換器制御方式」、特開平10−225199号(1997−2−6) 酒井慶次郎・奥山俊昭:「インバータの制御方法および装置」、特開2001−145398号(1999−11−12) 藤本覚:「3相交流電動機の制御装置」、特開2004−159391号(2002−11−5) 橋本栄一郎・比田一:「モータ制御装置」、特開2008−86139号(2006−9−28)
新中新二:「永久磁石同期モータのベクトル制御技術、上巻(原理から最先端まで)」、電波新聞社(2008−12)
本発明は上記背景の下になされたものであり、その目的は、三相交流電流の一相分のみを検出しながらも、▲1▼フィードバック電流制御に際し、全三相あるいは三相内の二相の相電流の検出を必要とする従前の駆動制御装置と同程度の速応性能を有する、▲2▼軽演算量である、▲3▼電流制御系は高い安定性を有する、といった優れた特性を備えた三相交流電動機駆動制御装置を提供することである。
上記目的を達成するために、三相交流電動機の固定子電流をフィードバック制御し、該電動機を駆動する三相交流電動機駆動制御装置であって、該電動機の固定子u相、v相、w相巻線の中心方向をu軸、v軸、w軸とするuvw座標系上で定義されうる三相の相電流iu、iv、iwの内の、いずれか一相の相電流を検出する電流検出手段と、検出した一相電流と、d軸、q軸の直交2軸からなるdq回転座標系上の二相電流指令値id*、iq*と、u軸から見たd軸の位相θαとを用い、擬似三相電流偏差Δilt〜を次の3式(絶対変換時にはK2=√(2/3)、相対変換時にはK2=2/3)
Figure 0006241807
のいずれか1つと同一値あるいはいずれか1つの相等値として合成する擬似電流偏差合成手段と、合成した擬似三相電流偏差を用いて三相電圧指令値を生成する三相電圧指令値生成手段と、三相電圧指令値に従い三相電圧を発生し該電動機に印加する電力印加手段とを備えることを特徴とする。
請求項2の発明は、三相交流電動機の固定子電流をフィードバック制御し、該電動機を駆動する三相交流電動機駆動制御装置であって、該電動機の固定子u相、v相、w相巻線の中心方向をu軸、v軸、w軸とするuvw座標系上で定義されうる三相の相電流iu、iv、iwの内の、いずれか一相の相電流を検出する電流検出手段と、検出した一相電流と、d軸、q軸の直交2軸からなるdq回転座標系上の二相電流指令値id*、iq*と、u軸から見たd軸の位相θαとを用い、u軸と同一の軸をα軸としα軸と直交するβ軸からなるαβ固定座標系上の擬似二相電流偏差Δils〜を次の3式(絶対変換時にはK3=√6、相対変換時にはK3=3)
Figure 0006241807
のいずれか1つと同一値あるいはいずれか1つの相等値として合成する擬似電流偏差合成手段と、合成した擬似二相電流偏差を用いて三相電圧指令値を生成する三相電圧指令値生成手段と、三相電圧指令値に従い三相電圧を発生し該電動機に印加する電力印加手段とを備えることを特徴とする。
請求項3の発明は、三相交流電動機の固定子電流をフィードバック制御し、該電動機を駆動する三相交流電動機駆動制御装置であって、該電動機の固定子u相、v相、w相巻線の中心方向をu軸、v軸、w軸とするuvw座標系上で定義されうる三相の相電流iu、iv、iwの内の、いずれか一相の相電流を検出する電流検出手段と、検出した一相電流と、d軸、q軸の直交2軸からなるdq回転座標系上の二相電流指令値id*、iq*と、u軸から見たd軸の位相θαとを用い、行列Q(θα)を次式のように定義するとき、
Figure 0006241807
dq回転座標系上の擬似二相電流偏差Δilr〜を次の3式(絶対変換時にはK3=√6、相対変換時にはK3=3)
Figure 0006241807
のいずれか1つと同一値あるいはいずれか1つの相等値として合成する擬似電流偏差合成手段と、合成した擬似二相電流偏差を用いて三相電圧指令値を生成する三相電圧指令値生成手段と、三相電圧指令値に従い三相電圧を発生し該電動機に印加する電力印加手段とを備えることを特徴とする。
請求項4の発明は、三相交流電動機の固定子電流をフィードバック制御し、該電動機を駆動する三相交流電動機駆動制御装置であって、該電動機の固定子u相、v相、w相巻線の中心方向をu軸、v軸、w軸とするuvw座標系上で定義されうる三相の相電流iu、iv、iwの内の、いずれか一相の相電流を検出する電流検出手段と、検出した一相電流と、d軸、q軸の直交2軸からなるdq回転座標系のu軸から見たd軸の位相θαとを用い、擬似二相電流il〜を次の3式(絶対変換時にはK3=√6、相対変換時にはK3=3)
Figure 0006241807
のいずれか1つと同一値あるいはいずれか1つの相等値として合成し、合成した擬似二相電流の逆相成分の抑圧または正相成分の抽出により、二相電流推定値を生成する二相電流推定手段と、二相電流推定値とdq回転座標系上の二相電流指令値とを用い、二相電流偏差推定値を生成する電流偏差推定手段と、二相電流偏差推定値を用いて三相電圧指令値を生成する三相電圧指令値生成手段と、三相電圧指令値に従い三相電圧を発生し該電動機に印加する電力印加手段とを備えることを特徴とする。
以上の説明のように、本発明は、従前の発明と異なり、三相電流の内の未検出の他三相電流の推定は一切行なわない。一方、検出の一相信号(一相電流)を用いて、真の信号と基本的に同一の正相成分を含有する擬似信号を合成・利用する点に大きな特徴がある。また、電流推定の必要がある場合には、uvw座標系上の未検出の他三相電流を推定することなく、2軸直交座標系上の二相電流を直接的に推定する点に特徴がある。
発明の効果の簡明な説明を期して、これに有益な諸事項を予め整理しておく。3種の座標系を表示した図1を考える。uvw座標系のu軸、v軸、w軸は、各々、固定子u相、v相、w相巻線の空間的中心位置に対応した軸であり、位相(位置と同義)2π/3[rad]のひらきをもつ。αβ固定座標系のα軸は、u軸と同一であり、β軸はα軸と直交している。uvw座標系、αβ固定座標系はともに電動機固定子に関係した固定座標系である。これに対して、直交のd軸、q軸からなるdq回転座標系は、空間回転のベクトル物理量に関係した回転座標系である。d軸は、u軸、α軸からみた場合、速度ωd≠0[rad/s]で回転し、位相θαをもつものとしている。したがって、d軸の速度ωdと位相θαに関しては、次の関係が成立している。
Figure 0006241807
d軸位相は、たとえば、同期電動機の場合にはN極位相(あるいは同推定値)に、誘導電動機の場合には回転子磁束位相(あるいは同推定値)などに対応させることができる。なお、位相推定値、速度推定値においては、(6)式の関係は近似的に成立することになる。
本発明では、三相信号、二相信号に含まれ、特に相順の観点から分類された成分である正相成分と逆相成分を以下のように定義する。正相成分とは、dq回転座標系の速度ωdの極性と同一の相順をもつ成分であり、逆相成分とは、dq回転座標系の速度ωdの極性と逆の相順をもつ成分である。具体的には、速度ωdが正の場合、座標系の正方向へ回転する成分が正相成分、負方向へ回転する成分が逆相成分と定義する。一方、速度ωdが負の場合、座標系の負方向へ回転する成分が正相成分、正方向へ回転する成分が逆相成分と定義する。本発明では、正相成分と逆相成分とを同程度の振幅レベルで含有する信号に対して、「擬似」なる用語を用いる。擬似信号は、原則、頭符〜をつけて表示する。先行発明に対する本発明の大きな特徴が、「擬似信号の利用」にある。一方、真の信号の推定値である推定信号(基本的には正相成分のみを有する信号)に対しては、頭符∧をつけて表示する
本発明においては、固定子電流、固定子電圧の指令値は、同応答値に頭符*を付して表現する。たとえば、dq回転座標系上の二相電流をid、iqとするとき、この指令値はid*、iq*と表現、uvw座標系上の相電流をiu、iv、iwとするとき、この指令値はiu*、iv*、iw*と表現する。本発明では、uvw座標系上、αβ固定座標系上、dq回転座標系上で定義されたベクトル信号に関して、定義された座標系を明示する必要がある場合には、ベクトル信号に対して各々脚符t、s、rを付与する。
uvw座標系上の三相信号とαβ固定座標系あるいはdq回転座標系上の二相信号との相互変換には、絶対変換と相対変換が存在する。当業者においては既に周知のように、両変換の相違は、基本的には、変換時における係数√(2/3)、あるいは係数√(3/2)の相違があるに過ぎない。「近年、絶対変換が広く利用されている事実」を考慮し、以降では、説明の具体性と明瞭性を確保すべく、特に断らない限り絶対変換の利用を想定して、本発明を説明する。絶対変換、相対変換のいずれをの利用を想定する場合にも、説明の内容に本質的違いはない。なお、絶対変換においては、(1)式、(2)式、(4)式、(5)式に用いた係数K2、K3は次式となる。
Figure 0006241807
先ず、請求項1の発明の効果を説明する。uvw座標系上の電流指令値とdq回転座標系上の電流指令値との間には、次の関係が成立している。
Figure 0006241807
(8)式を考慮するならば、請求項1の発明による(1)式の擬似三相電流偏差ilt〜は、以下の特性をもつことが明らかである。(a)三相電流の検出値は三相電流の内の一相分であり、擬似三相電流偏差Δilt〜には、三相電流偏差真値の内の一相分が利用される。(b)擬似三相電流偏差Δilt〜の各相成分は一相分電流偏差真値に比例し、これが非ゼロの場合には擬似三相電流偏差も非ゼロとなる。(c)擬似三相電流偏差Δilt〜はゼロ相成分を有しない。
三相電流偏差真値Δiltの成分は正相成分(ωd成分)のみとするならば、ゼロ相成分を有しない擬似三相電流偏差Δilt〜は、正相成分(ωd成分)と逆相成分(−ωd成分)のみから構成されることになる。しかも3種の擬似三相電流偏差は、互いに循環的で、その信号レベルは同一である。これは、「3種の擬似三相電流偏差は、各々、三相電流偏差真値と同一レベルの正相成分を有すると同時に、同一レベルの逆相成分をも有する」事実を意味する
本事実を考慮の上、擬似三相電流偏差を用いて三相電圧指令値を生成する三相電圧指令値生成手段として、逆相成分を抑圧し、正相成分に感応する電流制御器を利用するならば、正相成分のみからなる三相電流偏差真値を用いた場合と同様な三相電圧指令値を生成することができる。このような三相用電流制御器としては、たとえば3入力3出力(以下、3×3と略記)D因子制御器が知られている。3×3D因子制御器に関しては、n次の一般的な形で、非特許文献1で詳しく説明されている。
この点を考慮し、ここでは、PI形の電流制御を遂行する例を紹介する。次の1×1PI形制御器を考える。
Figure 0006241807
(9)式に対応した3×3PI形D因子制御器は次式となる。
Figure 0006241807
Figure 0006241807
上の3×3D因子制御器を用いた電流制御の構成的様子を、図2に示した。同図より明白なように、D因子制御器は、通常の制御器に比較し、(10c)式の3行3列(以下、3×3と略記)交代行列Jnに従い、積分器の出力信号を交差フィードバックしているに過ぎず、簡単に実現される。必要とされる演算量は、(9)式のPI形制御器を3個使用する場合と同程度である。なお、本図では、簡明性を確保すべく、三相のベクトル信号を1本の太い信号線で表現している。以下のブロック図表現も本表現ルールを踏襲する。
3×3D因子制御器の出力である三相電圧指令値vlt*(三相電流偏差真値を用いた場合と同等な三相電圧指令値となっている)を電力印加手段に用いれば、所期の三相電圧vltが発生され、ひいては所期の電流応答を得ることができる。
以上の説明より既に明白なように、請求項1の発明によれば、三相交流電流の一相分のみを検出しながらも、▲1▼フィードバック電流制御に際し、全三相あるいは三相内の二相の相電流の検出を必要とする従前の駆動制御装置と同程度の速応性能を有する、▲2▼軽演算量である、▲3▼電流制御系は高い安定性を有する、といった優れた特性を備えた三相交流電動機駆動制御装置を提供することができるという効果を得る。
つづいて、請求項2の発明の効果を説明する。請求項2の発明によるαβ固定座標系上の擬似二相電流偏差Δils〜は、請求項1の発明による擬似三相電流偏差Δilt〜と三相二相変換器STを介した次の関係を有する。
Figure 0006241807
なお、頭符Tは転置を意味する。
(11)式の関係より、請求項2の発明による擬似二相電流偏差Δils〜は、請求項1の発明による擬似三相電流偏差Δilt〜と同等の特性を有することが明らかである。すなわち、請求項2の発明による(2)式の擬似二相電流偏差Δils〜は、以下の特性をもつ。(a)三相電流の検出値は三相電流の内の一相分であり、擬似二相電流偏差Δils〜には、三相電流偏差真値の内の一相分が利用される。(b)擬似二相電流偏差Δils〜の各相成分は一相分電流偏差真値に比例する。(c)擬似二相電流偏差Δils〜はゼロ相成分を有しない。
二相電流偏差真値の成分は正相成分(ωd成分)のみとするならば、擬似二相電流偏差Δils〜は、正相成分(ωd成分)と逆相成分(−ωd成分)のみから構成されることになる。しかも3種の擬似二相電流偏差は、u軸、v軸、w軸の位相に対応した位相を有し、その信号レベルは同一である。これは、「3種の擬似二相電流偏差Δils〜は、各々、二相電流偏差真値と同一レベルの正相成分を有すると同時に、同一レベルの逆相成分をも有する」事実を意味する
本事実を考慮の上、擬似二相電流偏差を用いて、二相電圧指令値を生成する電流制御器として、逆相成分を抑圧し、正相成分に感応する二相電流制御器を利用するならば、正相成分のみからなる二相電流偏差真値を用いた場合と同様な二相電圧指令値を生成することができる。このような二相電流制御器としては、たとえば2×2D因子制御器が知られている。2×2D因子制御器に関しては、n次の一般的な形で、非特許文献1で詳しく説明されている。
この点を考慮し、ここでは、PI形の電流制御を遂行する例を紹介する。(9)式の1×1PI形制御器を考える。(9)式に対応した2×2PI形D因子制御器は次式となる。
Figure 0006241807
上の2×2D因子制御器を用いた電流制御の構成的様子を、図3に示した。同図より明白なように、D因子制御器は、通常の制御器に比較し、(12c)式の2×2交代行列Jに従い、積分器の出力信号を交差フィードバックしているに過ぎず、簡単に実現される。必要とされる演算量は、(9)式のPI形制御器を2個使用する場合と同程度である。なお、図3では、簡明性を確保すべく、二相のベクトル信号を1本の太い信号線で表現している。
2×2D因子制御器の出力である二相電圧指令値vls*(二相電流偏差真値を用いた場合と同等な二相相電圧指令値となっている)を、二相三相変換器Sを利用して三相電圧指令値vlt*に変換後、電力印加手段に用いれば、所期の三相電圧vltが発生され、ひいては所期の電流応答を得ることができる。
以上の説明より既に明白なように、請求項2の発明によれば、請求項1の発明と同様に、三相交流電流の一相分のみを検出しながらも、▲1▼フィードバック電流制御に際し、全三相あるいは三相内の二相の相電流の検出を必要とする従前の駆動制御装置と同程度の速応性能を有する、▲2▼軽演算量である、▲3▼電流制御系は高い安定性を有する、といった優れた特性を備えた三相交流電動機駆動制御装置を提供することができるという効果を得る。
つづいて、請求項3の発明の効果を説明する。請求項3の発明によるdq回転座標系上の擬似二相電流偏差Δilr〜は、請求項2の発明による擬似二相電流偏差Δils〜とベクトル回転器RTを介した次の関係を有する。
Figure 0006241807
Figure 0006241807
(13)式の関係を考慮し、さらに下の(14)式の関係に注意すると、(4)式の擬似二相電流偏差Δilr〜は、(15)式のように書き改めることもできる。
Figure 0006241807
Figure 0006241807
(13)式、(15)式の関係より、請求項3の発明による擬似二相電流偏差Δilr〜は、請求項2の発明による擬似二相電流偏差Δils〜と同等の特性を、ひいては請求項1の発明による擬似三相電流偏差Δilt〜と同等の特性を有することが明らかである。すなわち、請求項3の発明による(4)式の擬似二相電流偏差Δilr〜は、以下の特性をもつ。(a)三相電流の検出値は三相電流の内の一相分であり、擬似二相電流偏差Δilr〜には、三相電流偏差真値の内の一相分が利用される。(b)擬似二相電流偏差Δilr〜の各相成分は一相分電流偏差真値に比例する。(c)擬似二相電流偏差Δilr〜はゼロ相成分を有しない。
二相電流偏差真値の成分は正相成分(直流的な成分)のみとするならば、擬似二相電流偏差Δilr〜は、正相成分(直流成分)と逆相成分(−2ωd成分)のみから構成されることになる。しかも3種の擬似二相電流偏差は、その信号レベルは同一である。これは、「3種の擬似二相電流偏差は、各々、二相電流偏差真値と同一レベルの正相成分を有すると同時に、同一レベルの逆相成分をも有する」事実を意味する。
本事実を考慮の上、擬似二相電流偏差を用いて、二相電圧指令値を生成する電流制御器として、逆相成分を抑圧し、正相成分に感応する二相電流制御器を利用するならば、正相成分のみからなる二相電流偏差真値を用いた場合と同様な二相電圧指令値を生成することができる。「dq回転座標系上では、正相成分は周波数的にゼロ相当であり、逆相成分は周波数的に−2ωd相当である」ことを併せて考慮するならば、このための二相電流制御器としては、低周波数でハイゲイン、高周波数でローゲイン特性をもつ通常の2×2制御器が使用できることが理解される。PI形の電流制御を遂行する場合には、通常の2×2制御器は、(9)式の1×1PI形制御器を2個並列に配したものでよい。図4に、本例を示した。なお、図4では、簡明性を確保すべく、二相のベクトル信号を1本の太い信号線で表現している。
通常の2×2制御器の出力である二相電圧指令値vlr*(二相電流偏差真値を用いた場合と同等な二相相電圧指令値となっている)を、ベクトル回転器Rを用いてαβ固定座標系上の二相電圧指令値vls*に変換し、さらに二相三相変換器Sを利用してuvw座標系上の三相電圧指令値vlt*に変換し、この上で後、電力印加手段に用いれば、所期の三相電圧vltが発生され、ひいては所期の電流応答を得ることができる。
以上の説明より既に明白なように、請求項3の発明によれば、請求項1、2の発明と同様に、三相交流電流の一相分のみを検出しながらも、▲1▼フィードバック電流制御に際し、全三相あるいは三相内の二相の相電流の検出を必要とする従前の駆動制御装置と同程度の速応性能を有する、▲2▼軽演算量である、▲3▼電流制御系は高い安定性を有する、といった優れた特性を備えた三相交流電動機駆動制御装置を提供することができるという効果を得ることができる。
つづいて、請求項4の発明の効果を説明する。請求項4における位相θは、(−θα)〜(+θα)の範囲で選定される。特に、位相θをθ=0とする場合には、請求項4の発明による擬似二相電流il〜は、αβ固定座標系上の擬似二相電流ils〜となる。また、特に、位相θをθ=(−θα)とする場合には、請求項4の発明による擬似二相電流il〜は、dq回転座標系上の擬似二相電流ilr〜となる。αβ固定座標系上の擬似二相電流偏差Δils〜を利用した請求項2の発明効果の説明で、また、dq回転座標系上の擬似二相電流偏差Δilr〜を利用した請求項3の発明効果の説明で明らかにしたように、一般に擬似二相電流偏差は、正相成分に加えて、これと同レベルの逆相成分を有する。本事実は、擬似二相電流偏差の構成要素である擬似二相電流(すなわち(5)式の擬似二相電流)は、正相成分に加えて、これと同レベルの逆相成分を有することを意味する。
請求項4の発明では、二相電流推定手段により、この擬似二相電流の逆相成分の抑圧または正相成分の抽出により、二相電流推定値を生成する。ひいては、生成された二相電流推定値は、基本的に二相電流真値と同様の正相成分のみから構成されることになる。電流偏差推定手段は、当該二相電流推定値を、(必要に応じてdq回転座標系上の二相電流推定値に変換した上で、)dq回転座標系上の二相電流指令値とともに利用し二相電流偏差推定値を生成する。生成された二相電流偏差推定値も、当然のことながら、二相電流偏差真値と同様の正相成分のみから構成されることになる。すなわち、請求項4の発明で生成されたdq回転座標系上の二相電流偏差推定値は同真値と同等の特性をもつ。
したがって、dq回転座標系上の二相電流偏差推定値に対して、通常の三相電圧指令値生成手段を用いて処理して、通常の電力印加手段により三相電力を発生し電動機に印加するようにすれば、所期の効果を難なく得ることができる(簡易な構成法は、図9〜図12を用いた実施例を通じ具体的に説明する)。
すなわち、請求項4の発明によれば、三相交流電流の一相分のみを検出しながらも、▲1▼フィードバック電流制御に際し、全三相あるいは三相内の二相の相電流の検出を必要とする従前の駆動制御装置と同程度の速応性能を有する、▲2▼軽演算量である、▲3▼電流制御系は高い安定性を有する、といった優れた特性を備えた三相交流電動機駆動制御装置を提供することができるという効果を得る。
「3種の座標系とd軸位相の1関係例を示す図」 「3入力3出力PI形D因子制御器を示すブロック図」 「2入力2出力PI形D因子制御器を示すブロック図」 「2入力2出力PI形(通常)制御器を示すブロック図」 「請求項1の1実施例のための駆動制御システムを示すブロック図」 「請求項2の1実施例のための駆動制御システムを示すブロック図」 「請求項3の1実施例のための駆動制御システムを示すブロック図」 「請求項3の1実施例のための駆動制御システムを示すブロック図」 「請求項4の1実施例のための駆動制御システムを示すブロック図」 「請求項4の1実施例のための駆動制御システムを示すブロック図」 「請求項4の1実施例のための駆動制御システムを示すブロック図」 「請求項4の1実施例のための駆動制御システムを示すブロック図」
以下、図面を用いて、本発明の実施例を詳細に説明する。代表的な交流電動機である永久磁石同期電動機に対し、請求項1の発明の駆動制御装置を備えた駆動制御システムの1例を図5に示す。1は交流電動機(同期電動機)を、2は一相電流検出器を、3は電力変換器(インバータ)を、4は位相検出器(エンコーダ等)を、5は擬似電流偏差合成器を、6は電流制御器を、7は速度検出器を、各々示している。本図では、簡明性を確保すべく、二相あるいは三相のベクトル信号を1本の太い信号線で表現している。
図5の実施例は、検出すべき一相の電流としてu相電流を選定した例となっている。一相電流検出器2で検出されたu相電流は、擬似電流偏差合成器5へ送られている。擬似電流偏差合成器5には、u相電流検出値iuに加え、dq回転座標系上の二相電流指令値id*、iq*と、d軸の位相(本例では、回転子のN極位相)θαが送られている。d軸位相は、極性反転後に余弦正弦信号に変換されている。同図では、図の簡明性を確保すべく、余弦正弦信号は(14a)式に従って2×1ベクトルとして、また、二相電流指令値は以下のように2×1ベクトルとして、簡略表現している。
Figure 0006241807
u相電流を検出している本例の擬似電流偏差合成器5では、(1a)式に従い擬似三相電流偏差Δilt〜を合成している。図中のベクトル化器5−2は、(1a)式の右辺で明示した3要素を2、−1、−1としたベクトルによる乗算処理を遂行している。合成された擬似三相電流偏差は、電流制御器6へ送られ、三相電圧指令値が生成されている。図5では、電流制御器としては、3×3D因子制御器を利用する例を示している。簡単なD因子制御器としては、図2のPI形D因子制御器を利用すればよい。電流制御器で生成された三相電圧指令値は、電力変換器3へ送られる。電力変換器3は、指令値に応じた交流電力を発生し、同期電動機1へ印加しこれを駆動する。
本例では、一相の相電流を検出する電流検出手段は、一相電流検出器2により実現されている。また、擬似電流偏差合成手段は、擬似電流偏差合成器5により実現されている。三相電圧指令値生成手段は、電流制御器6、速度検出器7により実現されている。電力印加手段は、電力変換器3により実現されている。
図5では、擬似三相電流偏差を、(1a)式が示す正確値に一致するように合成する例を示したが、実用的には、正確値に代わって、この相等値(代表的相等値としては、比例値がある)であってもよい。
検出すべき一相の電流をv相電流、w相電流とする場合には、各々、(1b)式、(1c)式に基づいて、擬似三相電流偏差を合成するようにすればよい。この場合の擬似電流偏差合成器5の構成は、図5の場合と基本的に同じである。若干の相違が、余弦正弦信号の違いに有るに過ぎない(後掲の図6〜8参照)。この相違は、図5の例による説明で当業者には既に自明であるので、これ以上の説明は省略する。
代表的な交流電動機である永久磁石同期電動機に対し、請求項2の発明の駆動制御装置を備えた駆動制御システムの1例を図6に示す。各機器の意味は、図5と同一である。なお8は二相三相変換器を意味する。
図6の実施例は、検出すべき一相の電流としてv相電流を選定した例となっている。一相電流検出器2で検出されたv相電流は、擬似電流偏差合成器5へ送られている。擬似電流偏差合成器5には、v相電流検出値ivに加え、dq回転座標系上の二相電流指令値id*、iq*と、d軸の位相(本例では、回転子のN極位相)θαが送られている。d軸位相は、極性反転と2π/3の位相補正の処理後に余弦正弦信号に変換されている。
v相電流を検出している本例の擬似電流偏差合成器5では、(2b)式に従いαβ固定座標系上の擬似二相電流偏差Δils〜を合成している。図中のベクトル化器5−2は、(2b)式の右辺で明示した2×1ベクトルによる乗算処理を遂行している。合成された擬似二相電流偏差は、電流制御器6へ送られ、αβ固定座標系上の二相電圧指令値が生成されている。図6では、電流制御器としては、2×2D因子制御器を利用する例を示している。簡単なD因子制御器としては、図3のPI形D因子制御器を利用すればよい。電流制御器で生成された二相電圧指令値は、二相三相変換器8で三相電圧指令値に変換され、電力変換器3へ送られている。電力変換器3は、指令値に応じた交流電力を発生し、同期電動機1へ印加しこれを駆動している。
本例では、一相の相電流を検出する電流検出手段は、一相電流検出器2により実現されている。また、擬似電流偏差合成手段は、擬似電流偏差合成器5により実現されている。三相電圧指令値生成手段は、電流制御器6、速度検出器7、二相三相変換器8により実現されている。電力印加手段は、電力変換器3により実現されている。
図6では、αβ固定座標系上の擬似二相電流偏差を、(2b)式が示す正確値に一致するように合成する例を示したが、実用的には、正確値に代わって、この相等値(代表的相等値としては、比例値がある)であってもよい。
検出すべき一相の電流をu相電流、w相電流とする場合には、各々、(2a)式、(2c)式に基づいて、擬似二相電流偏差を合成するようにすればよい。この場合の擬似電流偏差合成器5の構成は、図6の場合と基本的に同じである。若干の相違が、余弦正弦信号の違いに有るに過ぎない(図5、図7〜8参照)。この相違は、図6の例による説明で当業者には既に自明であるので、これ以上の説明は省略する。
代表的な交流電動機である永久磁石同期電動機に対し、請求項3の発明の駆動制御装置を備えた駆動制御システムの1例を図7に示す。各機器の意味は、図5、図6と同一である。なお9はベクトル回転器を意味する。
図7の実施例は、検出すべき一相の電流としてw相電流を選定した例となっている。一相電流検出器2で検出されたw相電流は、擬似電流偏差合成器5へ送られている。擬似電流偏差合成器5には、w相電流検出値iwに加え、dq回転座標系上の二相電流指令値id*、iq*と、d軸の位相(本例では、回転子のN極位相)θαが送られている。d軸位相は、極性反転と−2π/3の位相補正の処理後に、余弦正弦信号に変換されている。
w相電流を検出している本例の擬似電流偏差合成器5では、(4c)式に従いdq回転座標系上の擬似二相電流偏差Δilr〜を合成している。同図では、2×2行列[I+Q]を(14b)式の関係に従い算定する例を示している。当然のことながら、2×2行列[I+Q]は、位相θaを用いて、直接的に算定してもよいし、また他の算定法により算定してもよい。合成された擬似二相電流偏差は、電流制御器6へ送られ、dq回転座標系上の二相電圧指令が生成されている。図7の電流制御器としては、通常の電流制御器を利用すればよい。簡単には、図4のPI形制御器を利用すればよい。電流制御器で生成された二相電圧指令値は、ベクトル回転器9でαβ固定座標系上の二相電圧指令値に変化され、さらには二相三相変換器8で三相電圧指令値に変換され、電力変換器3へ送られている。電力変換器3は、指令値に応じた交流電力を発生し、同期電動機1へ印加しこれを駆動している。
図8は、請求項3の発明の第2実施例である。本例では、擬似電流偏差合成器5への入力信号は、図7の例と同一としている。図7と図8の違いは、擬似電流偏差合成器5の構造の違いにある。図8は、(15)式に直接的に従った構造を採用している。特に、本例では、(15c)式に直接的に従った構造としている。他の機器に関しては、図7と同一であるので、これらの説明は省略する。請求項3の発明による擬似二相電流偏差Δilr〜の合成手順(計算手順)に関しては、図7、図8の例より明白なように、種々のバリエーションが存在することを指摘しておく。
図7、図8の例では、一相の相電流を検出する電流検出手段は、一相電流検出器2により実現されている。また、擬似電流偏差合成手段は、擬似電流偏差合成器5により実現されている。三相電圧指令値生成手段は、電流制御器6、ベクトル回転器9、二相三相変換器8により実現されている。電力印加手段は、電力変換器3により実現されている。
図7、図8では、dq回転座標系上の擬似二相電流偏差を、(4c)式が示す正確値に一致するように合成する例を示したが、実用的には、正確値に代わって、この相等値(代表的相等値としては、比例値がある)であってもよい。
検出すべき一相の電流をu相電流、v相電流とする場合には、各々、(4a)式、(4b)式に基づいて、擬似二相電流偏差を合成するようにすればよい。この場合の擬似電流偏差合成器5の構成は、図7、図8の場合と基本的に同じである。若干の相違が、余弦正弦信号の違いに有るに過ぎない(図5、図6参照)。この相違は、図7、図8の例による説明で当業者には既に自明であるので、これ以上の説明は省略する。
代表的な交流電動機である永久磁石同期電動機に対し、請求項4の発明の駆動制御装置を備えた駆動制御システムの1例を図9に示す。機器1〜4、6、8、9の意味は、図7、図8と同一である。
図9の実施例は、位相θとして「θ=0」を選定し、検出すべき一相の電流としてu相電流を選定した例となっている。一相電流検出器2で検出されたu相電流は、二相電流推定器10へ送られている。二相電流推定器10には、u相電流検出値iuに加え、d軸の位相(本例では、回転子のN極位相)θαが送られている。d軸の位相θαは、二相電流偏差推定器11にも送られている。
u相電流を検出している本例の二相電流推定器10では、(5a)式に従いαβ固定座標系上の擬似二相電流ils〜を合成している。位相「θ=0」の選定は、αβ固定座標系の選定を意味し、αβ固定座標系上の擬似二相電流は、特に脚符「s」を付してils〜として表現している。合成された擬似二相電流ils〜は、正相逆相分離フィルタ10−2へ送られ、αβ固定座標系上の二相電流推定値ils^が生成されている。図9では、正相逆相分離フィルタとしては、2×2D因子フィルタを利用する例を示している。D因子フィルタは、入力信号に対して、これに含まれる逆相成分の抑圧または正相成分の抽出を行なう機能を有する。なお、D因子フィルタに関しては、非特許文献1に詳しく説明され当業者には既知であるので、この詳細な説明は省略する。D因子フィルタには、抑圧逆相成分の周波数−ωd、または抽出正相成分の周波数ωdが必要とされる。図9では、d軸位相θαから速度検出器を利用して得る例を示している。
二相電流偏差推定器11における処理過程は次の通りである。二相電流偏差推定器11へ送られたαβ固定座標系上の二相電流推定値ils^は、ベクトル回転器11−1で、dq回転座標系上の二相電流推定値ilr^に変換される。dq回転座標系上の二相電流推定値ilr^は、同座標系上の二相電流指令値ilr*とにより、二相電流偏差推定値が生成され、これは二相電流偏差推定器11から出力されている。
生成されたdq回転座標系上の二相電流偏差推定値に対する機器6、9、8、3による処理は、図7、図8の実施例と同一であるので、この説明は省略する。
図10は、請求項4の発明の駆動制御装置を備えた駆動制御システムの第2実施例を示したものである。本実施例は、位相θとして「θ=θα」を選定し、検出すべき一相の電流としてv相電流を選定した例となっている。図9との相違は、二相電流推定器10、二相電流偏差推定器11にあるに過ぎない。このため、これら2機器に関する相違点を中心に説明する。
v相電流を検出している本例の二相電流推定器10では、先ず、余弦正弦信号発生器10−1において、「θ=θα」の設定の下で、(5b)式右辺で明示した処理を遂行している。処理後の擬似二相電流に関しては、逆相成分の周波数が実質的にゼロ周波数になっている。本信号は、正相逆相分離フィルタ10−2へ送られている。正相逆相分離フィルタ10−2は、実質的にゼロ周波数の逆相成分を抑圧するものであり、図10では、ゼロ周波数成分抑圧機能を有するハイパスフィルタFh(s)を利用する例を示している。本フィルタは、ゼロ周波数成分抑圧機能を有する他のフィルタで置換することも可能である。フィルタ処理後の信号は、正相成分を主要成分とする信号となっている。特に、周波数シフトされた状態R(θα)ils^となっている。本信号は、二相電流偏差推定器11へ向け出力されている。
二相電流偏差推定器11における処理過程は次の通りである。二相電流偏差推定器11へ送られた周波数シフトの二相電流推定値R(θα)ils^は、ベクトル回転器11−1のRT(2θα)で、一気に、dq回転座標系上の二相電流推定値ilr^に変換される。dq回転座標系上の二相電流推定値ilr^は、同座標系上の二相電流指令値ilr*とにより、二相電流偏差推定値が生成され、これは二相電流偏差推定器11から出力されている。以降の処理は、図7〜9の例と同一であるので、この説明は省略する。
図11は、請求項4の発明の駆動制御装置を備えた駆動制御システムの第3実施例を示したものである。本実施例は、位相θとして「θ=−θα」を選定し、検出すべき一相の電流としてu相電流を選定した例となっている。一相電流検出器2で検出されたu相電流は、二相電流推定器10へ送られている。二相電流推定器10には、u相電流検出値iuに加え、d軸の位相(本例では、回転子のN極位相)θαが送られている。
u相電流を検出している本例の二相電流推定器10では、「θ=−θα」の設定の下、(5a)式に従いdq回転座標系上の擬似二相電流ilr〜を合成している。位相「θ=−θα」の選定は、dq回転座標系の選定を意味し、dq回転座標系上の擬似二相電流は、特に脚符「r」を付してilr〜として表現している。図中の余弦正弦発生器10−1は、(5a)式の右辺で明示した2×1ベクトルとしての余弦正弦信号を発生している。合成された擬似二相電流は、正相逆相分離フィルタ10−2へ送られ、dq回転座標系上の二相電流推定値ilr^が生成されている。図11では、正相逆相分離フィルタとしては、2×2D因子フィルタを利用する例を示している。このD因子フィルタは、dq回転座標系上では、周波数−2ωdをもつ逆相成分を抑圧する機能を発揮するものである。周波数(dq座標系の速度と同一)ωdは、図9と同様に検出する例としている。
二相電流偏差推定器11における処理過程は次の通りである。二相電流偏差推定器11へ送られたdq回転座標系上の二相電流推定値ilr^は、同座標系上の二相電流指令値ilr*とにより、二相電流偏差推定値が生成され、これは二相電流偏差推定器11から出力されている。
生成されたdq回転座標系上の二相電流偏差推定値に対する機器6、9、8、3による処理は、図7〜10の実施例と同一であるので、この説明は省略する。
図12は、請求項4の発明の駆動制御装置を備えた駆動制御システムの第4実施例を示したものである。本実施例は、位相θとして「θ=−θα」を選定し、検出すべき一相の電流としてu相電流を選定した例となっている。図11との相違は、二相電流推定器10にあるに過ぎない。このため、二相電流推定器10に関する相違点を中心に説明する。
相違点の明白化のため、一相検出電流は、図11と同様のu相電流としている。この結果、(5a)式に従ったdq回転座標系上の擬似二相電流ilr〜の合成までの過程は、図11の実施例と同一である。唯一の違いが、正相逆相分離フィルタ10−2にある。本例では、正相逆相分離フィルタ10−2としては、通常のローパスフィルタを利用するものとしている。dq回転座標系上では、擬似二相電流ilr〜の正相成分の周波数は、実質的にゼロとなる。一方、擬似二相電流ilr〜の逆相成分の周波数は、実質的に−2ωdとなる。従って、ゼロ周波数の成分を抽出可能な通常のローパスフィルタにより、正相成分の抽出が可能となる。正相成分の抽出により得られたdq回転座標系上の二相電流推定値は、二相電流偏差推定器11へ向け出力されている。なお、二相電流偏差推定器11以降の処理は、既に述べたように、図7〜図11の実施例と同一であるので、この説明は省略する。
図7〜図12の例では、一相の相電流を検出する電流検出手段は、一相電流検出器2により実現されている。また、二相電流推定手段は、二相電流推定器10により実現されている。二相電流偏差推定手段は、二相電流偏差推定器11により実現されている。三相電圧指令値生成手段は、電流制御器6、ベクトル回転器9、二相三相変換器8により実現されている。電力印加手段は、電力変換器3により実現されている。
図7〜図12では、擬似二相電流il〜を、(5)式が示す正確値に一致するように合成する例を示したが、実用的には、この相等値であってもよい。
図9、図11、図12の実施例では、擬似二相電流il〜を合成するための一相電流として、u相電流を利用した例とした。v相電流またはw相電流を利用する例はこれらと同様であることは、当業者には既に自明であるので、この説明は省略する。また、図10の実施例では、擬似二相電流il〜を合成するための一相電流として、v相電流を利用した例とした。u相電流またはw相電流を利用する例はこれらと同様であることは、当業者には既に自明であるので、この説明は省略する。
以上の実施例では、dq回転座標系の位相と速度を、位相検出器4と速度検出器から得る例とした。検出器を利用せず、推定的に定めた位相と速度を、dq回転座標系の位相と速度としてもよいことを指摘しておく。
以上の実施例は、説明の簡明性を確保すべく、駆動制御すべき交流電動機としては永久磁石同期電動機とした例を用いた。本発明は、例示の実施例を実質的に無修正の形で、他の交流電動機に利用できることを指摘しておく。
本発明は、交流電動機を電流制御し駆動する応用の中で、特に、コスト低減の上、中〜高速領域で駆動する用途に好適である。
1 交流電動機(同期電動機)
2 一相電流検出器
3 電力変換器
4 位相検出器
5 擬似電流偏差合成器
5−1 余弦正弦信号発生器
5−2 ベクトル化器
6 電流制御器
7 速度検出器
8 二相三相変換器
9 ベクトル回転器
10 二相電流推定器
10−1 余弦正弦信号発生器
10−2 正相逆相分離フィルタ
10−3 速度検出器
11 二相電流偏差推定器
11−1 ベクトル回転器

Claims (4)

  1. 三相交流電動機の固定子電流をフィードバック制御し、該電動機を駆動する三相交流電動機駆動制御装置であって、
    該電動機の固定子u相、v相、w相巻線の中心方向をu軸、v軸、w軸とするuvw座標系上で定義されうる三相の相電流iu、iv、iwの内の、いずれか一相の相電流を検出する電流検出手段と、
    検出した一相電流と、d軸、q軸の直交2軸からなるdq回転座標系上の二相電流指令値id*、iq*と、u軸から見たd軸の位相θαとを用い、擬似三相電流偏差Δilt〜を次の3式(絶対変換時にはK2=√(2/3)、相対変換時にはK2=2/3)
    Figure 0006241807
    のいずれか1つと同一値あるいはいずれか1つの相等値として合成する擬似電流偏差合成手段と、
    合成した擬似三相電流偏差を用いて三相電圧指令値を生成する三相電圧指令値生成手段と、
    三相電圧指令値に従い三相電圧を発生し該電動機に印加する電力印加手段とを
    備えることを特徴とする三相交流電動機駆動制御装置。
  2. 三相交流電動機の固定子電流をフィードバック制御し、該電動機を駆動する三相交流電動機駆動制御装置であって、
    該電動機の固定子u相、v相、w相巻線の中心方向をu軸、v軸、w軸とするuvw座標系上で定義されうる三相の相電流iu、iv、iwの内の、いずれか一相の相電流を検出する電流検出手段と、
    検出した一相電流と、d軸、q軸の直交2軸からなるdq回転座標系上の二相電流指令値id*、iq*と、u軸から見たd軸の位相θαとを用い、u軸と同一の軸をα軸としα軸と直交するβ軸からなるαβ固定座標系上の擬似二相電流偏差Δils〜を次の3式(絶対変換時にはK3=√6、相対変換時にはK3=3)
    Figure 0006241807
    のいずれか1つと同一値あるいはいずれか1つの相等値として合成する擬似電流偏差合成手段と、
    合成した擬似二相電流偏差を用いて三相電圧指令値を生成する三相電圧指令値生成手段と、
    三相電圧指令値に従い三相電圧を発生し該電動機に印加する電力印加手段とを
    備えることを特徴とする三相交流電動機駆動制御装置。
  3. 三相交流電動機の固定子電流をフィードバック制御し、該電動機を駆動する三相交流電動機駆動制御装置であって、
    該電動機の固定子u相、v相、w相巻線の中心方向をu軸、v軸、w軸とするuvw座標系上で定義されうる三相の相電流iu、iv、iwの内の、いずれか一相の相電流を検出する電流検出手段と、
    検出した一相電流と、d軸、q軸の直交2軸からなるdq回転座標系上の二相電流指令値id*、iq*と、u軸から見たd軸の位相θαとを用い、行列Q(θα)を次式のように定義するとき、
    Figure 0006241807
    dq回転座標系上の擬似二相電流偏差Δilr〜を次の3式(絶対変換時にはK3=√6、相対変換時にはK3=3)
    Figure 0006241807
    のいずれか1つと同一値あるいはいずれか1つの相等値として合成する擬似電流偏差合成手段と、
    合成した擬似二相電流偏差を用いて三相電圧指令値を生成する三相電圧指令値生成手段と、
    三相電圧指令値に従い三相電圧を発生し該電動機に印加する電力印加手段とを
    備えることを特徴とする三相交流電動機駆動制御装置。
  4. 三相交流電動機の固定子電流をフィードバック制御し、該電動機を駆動する三相交流電動機駆動制御装置であって、
    該電動機の固定子u相、v相、w相巻線の中心方向をu軸、v軸、w軸とするuvw座標系上で定義されうる三相の相電流iu、iv、iwの内の、いずれか一相の相電流を検出する電流検出手段と、
    検出した一相電流と、d軸、q軸の直交2軸からなるdq回転座標系のu軸から見たd軸の位相θαとを用い、擬似二相電流il〜を次の3式(絶対変換時にはK3=√6、相対変換時にはK3=3)
    Figure 0006241807
    Figure 0006241807
    のいずれか1つと同一値あるいはいずれか1つの相等値として合成し、合成した擬似二相電流の逆相成分の抑圧または正相成分の抽出により、二相電流推定値を生成する二相電流推定手段と、
    二相電流推定値とdq回転座標系上の二相電流指令値とを用い、二相電流偏差推定値を生成する電流偏差推定手段と、
    二相電流偏差推定値を用いて三相電圧指令値を生成する三相電圧指令値生成手段と、
    三相電圧指令値に従い三相電圧を発生し該電動機に印加する電力印加手段とを
    備えることを特徴とする三相交流電動機駆動制御装置。
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