以下、本発明の実施の形態に係る建設機械用キャブを、クローラ式の油圧ショベルに設けた場合を例に挙げ、添付図面に従って詳細に説明する。
図1ないし図9は、本発明の第1の実施の形態を示している。図1において、1は土砂の掘削作業等に用いられる建設機械の代表例としての油圧ショベルを示している。この油圧ショベル1は、例えば運転質量が6トン未満のミニショベルと呼ばれるもので、旋回動作時に上部旋回体4の後部が下部走行体2の車幅寸法内にほぼ収まる超小旋回型の油圧ショベルとして構成されている。そして、油圧ショベル1は、自走可能なクローラ式の下部走行体2と、該下部走行体2上に旋回装置3を介して旋回可能に設けられた上部旋回体4と、該上部旋回体4の前側に俯仰動可能に設けられた作業装置5とにより構成されている。
上部旋回体4は、支持構造体を形成する旋回フレーム6と、該旋回フレーム6の左前側に搭載された後述のキャブ11と、該キャブ11の後側に位置して旋回フレーム6に搭載され、エンジン、油圧ポンプ、制御弁等(いずれも図示せず)を覆う建屋カバー7と、該建屋カバー7の後側に位置して旋回フレーム6の後部に取付けられ、作業装置5との重量バランスをとるカウンタウエイト8とを含んで構成されている。
次に、油圧ショベル1に設けられたキャブ11の構成について説明する。
11は旋回フレーム6の左前側に搭載された建設機械用キャブとしての油圧ショベル1用のキャブを示している。このキャブ11は、油圧ショベル1を操作するためにオペレータが搭乗するものである。そして、キャブ11は、フロア部材12、キャブボックス13、下前窓24、上前窓25、ドア26、右上側窓27、桟部材29等により構成されている。
12は旋回フレーム6上に設けられキャブ11の底板を形成するフロア部材である。このフロア部材12は、前,後方向に長尺な長方形状の板体として形成されている。フロア部材12は、後述のキャブボックス13内に配設され、その四隅を含む複数箇所が防振マウント(図示せず)を介して旋回フレーム6に支持されている。一方、フロア部材12の前,後方向の中間部から後側には、ステップ状をした運転席取付台12Aが設けられている。
13はフロア部材12上に取付けられたキャブボックスを示している。このキャブボックス13は、キャブ11の外殻を構成するもので、オペレータが搭乗する運転室を画成している。キャブボックス13は、図1ないし図4に示すように、前,後方向の前側に配置された前面部位14と、該前面部位14と前,後方向で対面する後面部位15と、前面部位14および後面部位15を挟んで左,右方向で対面する左側面部位16,右側面部位17と、前面部位14,後面部位15,左,右の側面部位16,17の上端側を閉塞する天面部位18とによって囲まれたボックス体として形成されている。
前面部位14は、上,下方向に長尺な四角形状に開口する前窓枠部材14Aによって枠状に形成されている(図2参照)。前窓枠部材14Aは、十分に大きな横幅寸法、高さ寸法を有し、これにより、上,下方向、左,右方向に十分に広い前方視界を提供している。そして、この前窓枠部材14Aの下側位置は、後述の下前窓24により閉塞され、上側位置は後述の上前窓25により閉塞されている。一方、後面部位15の上側位置には、角枠状の後窓枠部材15Aが形成されている(図4参照)。この後窓枠部材15Aには、例えば透明なガラス板からなる後窓19が嵌め込まれている。この後窓19により、オペレータに後方の視界を提供している。
左側面部位16は、前,後方向の中間部よりも前側部分が、上,下方向に長尺な四角形状に開口したドア枠部材16Aとなっている(図3参照)。ドア枠部材16A内の開口は、オペレータがキャブボックス13内に乗降するための乗降口16A1となっている。ドア枠部材16Aには、後述のドア26が取付けられる構成となっている。また、左側面部位16の前端側の内面には、後述の下前窓24、上前窓25を案内するための後述の下ガイドレール、上ガイドレール(いずれも図示せず)が設けられている。
さらに、左側面部位16の後部側は、左側窓枠部材16Bによって枠状に形成されている。この左側窓枠部材16Bには、例えば透明なガラス板からなる左側窓20が嵌め込まれている(図3参照)。この左側窓20により、オペレータに左側の視界を提供している。
一方、右側面部位17の上部側は、前,後方向のほぼ全長に亘って略四角形状に開口する枠部材としての右上側窓枠部材17Aとなっている。また、右側面部位17の前部側で右上側窓枠部材17Aの下側には、略楕円形状に開口する右下側窓枠部材17Bが形成されている。右上側窓枠部材17Aは、後述の右上側窓27により閉塞され、右下側窓枠部材17Bは、右下側窓21により閉塞されている。また、右側面部位17の前端側の内面には、後述の下ガイドレール22と上ガイドレール23とが設けられている。
ここで、右上側窓枠部材17Aのうち下側に位置する下枠部17Cは、図6、図7に示すように、後述の右上側窓27の下端側を固着する逆L字状の取付枠17C1と、該取付枠17C1の下側に溶接等により固着されクランク状に折曲げられた外枠17C2と、該外枠17C2の内面側に溶接等により固着されL字状に折曲げられた内枠17C3とにより構成されている。そして、図4、図5に示すように、下枠部17Cの内枠17C3には、後述の下前窓下端受け31が前,後方向に間隔をもって2個設けられている。
22はキャブボックス13の左,右の側面部位16,17の前端側の内面にそれぞれ設けられた左,右の下ガイドレール(図4中に右側のみ図示)を示している。これら左,右の下ガイドレール22は、左,右方向で対向して開口する断面U字状の凹陥溝として形成されている。下ガイドレール22は、左,右の側面部位16,17の下端側から上,下方向の中間位置まで延びている。ここで、下ガイドレール22は、上端側が開放されており、この開放部分を通して下前窓24を取付け、取外し可能に案内するものである。
23は下ガイドレール22の上側に位置して左,右の側面部位16,17の前端側の内面にそれぞれ設けられた左,右の上ガイドレール(図4中に右側のみ図示)を示している。これら左,右の上ガイドレール23は、下ガイドレール22とほぼ同様に、左,右方向で対向して開口する断面U字状の凹陥溝として形成されている。上ガイドレール23は、下ガイドレール22の上端の位置から上方に向けて延びた後、屈曲して天面部位18に沿って後方に延びることにより略L字状に形成されている。そして、上ガイドレール23は、後述の上前窓25を前面部位14の前窓枠部材14A上部を閉塞する位置と、天面部位18の下側に格納する位置とに案内するものである。
24は前面部位14の下側位置に取付け、取外し可能に設けられた下前窓で、この下前窓24は、例えば略長方形状の透明なガラス板として形成されている。下前窓24は、左,右方向の両端が下ガイドレール22に摺動可能に嵌合し、下端24Aが前窓枠部材14Aの下側に嵌合する。また、下前窓24の上端24Bは、後述する上前窓25の下端と当接している。これにより、下前窓24は、前面部位14の下側位置を閉塞している。
さらに、下前窓24は、下ガイドレール22から上方に引抜くことにより、前面部位14(前窓枠部材14A)から取外すことができる。これにより、前窓枠部材14Aを通じてキャブボックス13の内部と外部との間で空気を流通させることができ、換気等を行うことができる。この場合、前窓枠部材14Aから取外された下前窓24は、下前窓24を右上側窓27に重なるように対面させた状態で、後述の下前窓上端受け36と下前窓下端受け31とにより保持される構成となっている。
25は下前窓24の上側に位置して前窓枠部材14Aに設けられた上前窓で、この上前窓25は、例えば下前窓24よりも上,下方向に長い略長方形状の透明なガラス板として形成されている。上前窓25は、左,右方向の両端がガイドローラ(図示せず)を介して上ガイドレール23に移動可能に支持されている。これにより、上前窓25は、上,下方向に延びた状態で前面部位14の前窓枠部材14Aを閉塞する閉塞位置と、前,後方向に延びた状態で天面部位18の下側に格納される格納位置との間で移動できる構成となっている。
26は左側面部位16のドア枠部材16Aに設けられたドアを示している(図3参照)。このドア26は、オペレータがキャブボックス13に出入りするときに開閉されるもので、その後端縁がドア枠部材16Aにヒンジ部26Aを介して回動可能に取付けられている。これにより、ドア26を開いた状態で、オペレータはキャブボックス13の乗降口16A1を通って乗降することができる。また、ドア26には、上,下方向に間隔をもって上側ドア窓26Bと下側ドア窓26Cが設けられ、左側窓20と共にオペレータに左側の視界を提供している。
27は右側面部位17に設けられた側窓としての右上側窓を示している。この右上側窓27は、周囲が両面テープ、接着剤等からなる固着部材28により右上側窓枠部材17Aに固着され、右側面部位17の上側位置を閉塞している。右上側窓27は、右側面部位17の上,下方向の中間位置から上方に大きく(広く)亘って設けられており、これによりオペレータに右側の視界を提供している。
29A,29Bは右上側窓27の内側位置を前,後方向に延びて取付けられた複数本、例えば上,下2本の桟部材を示している(全体として桟部材29という)。この桟部材29は、強度を有する金属製のパイプ(丸棒)等により形成され、前端側と後端側が右上側窓枠部材17A(右側面部位17)に取付けられている。
上桟部材29Aと下桟部材29Bとは、上,下方向に所定の間隔をもって設けられている。これにより、桟部材29は、後述の運転席41に着座したオペレータを保護している。即ち、桟部材29は、例えば岩石等の障害物が右上側窓27に衝突して右上側窓27が損傷したとしても、岩石等がキャブボックス13内に侵入するのを阻止することができる。また、桟部材29は、右上側窓27が割れた状態でオペレータが右上側窓27から手や頭を出さないように阻止することができる。
各桟部材29A,29Bには、それぞれ前,後方向に間隔をもって2個のブロック体30が設けられている。各ブロック体30は、例えば弾性を有するゴム材料等により形成され、図9に示すように、右上側窓27の内面に当接している。これにより、各ブロック体30は、各桟部材29A,29Bと右上側窓27との間に所定の隙間を形成している。その結果、各ブロック体30は、例えば右上側窓27が振動してもその振動を吸収することができ異音の発生を抑制している。
31は右側面部位17を構成する右上側窓枠部材17Aのうち下側に位置する下枠部17Cに設けられた下前窓下端受けを示している。この下前窓下端受け31は、前面部位14から取外された下前窓24を右上側窓27に重ねて配置したときに、下前窓24の下端24Aを保持するものである。下前窓下端受け31は、下前窓24の幅寸法よりも小さな間隔をもって下枠部17Cに2個設けられている。図6、図7に示すように、下前窓下端受け31は、保持板32と、押え板33と、係合弾性体35とにより構成されている。
保持板32は、下枠部17Cの内枠17C3の上端側に溶接等により固着された取付板部32Aと、該取付板部32Aの上端から左,右方向の左側(運転席41側)に向けて延びる水平板部32Bと、該水平板部32Bの左端から上方に向けて延びる突出板部32Cとによりクランクの曲げ板として形成されている。
押え板33は、前,後方向に長尺な直方体形状の板体により形成され、突出板部32Cと対面して水平板部32B上の左,右方向の外側(右上側窓27側)に溶接等により固着されている。突出板部32Cと押え板33との間の間隔寸法は、下前窓24の厚さ寸法よりも大きな寸法に設定されている。そして、水平板部32Bと突出板部32Cと押え板33とによって囲まれた空間は、上方が開口した略コ字状ないし略U字状の弾性体取付凹部34となっている。
係合弾性体35は、例えばゴム材料等により上方が開口した略コ字状ないし略U字状に形成され、弾性体取付凹部34内に固着されている。係合弾性体35の左,右方向の両端側には、上端側から内側に向けて折返された折返し部35Aがそれぞれ設けられている。左,右方向で互いに対面した折返し部35Aの先端側の隙間寸法は、下前窓24の厚さ寸法よりも若干小さな寸法に設定されている。
これにより、下前窓24の下端24Aを係合弾性体35内に係合させたときには、各折返し部35Aによって下前窓24を挟むことができる。その結果、下前窓24と係合弾性体35(折返し部35A)との摩擦抵抗を大きくすることができるので、下前窓24を安定して保持することができる。従って、係合弾性体35は、例えば油圧ショベル1の振動等により下前窓24が下前窓下端受け31からずれないように確実に保持することができる。
36は上側に位置する上桟部材29Aの中間位置に設けられた下前窓保持部材としての下前窓上端受けを示している。この下前窓上端受け36は、下前窓下端受け31よりも下前窓24の上,下方向寸法(高さ寸法)と同等の寸法分だけ上側に配置されている。下前窓上端受け36は、前面部位14から取外された下前窓24を右上側窓27に重ねた状態で下前窓24の上端24Bを保持するものである。そして、下前窓上端受け36は、取付板37と、挟持部材38とにより構成されている。
取付板37は、上桟部材29Aに取付けられる下板部37Aと、該下板部37Aの上端から右側(右上側窓27側)に向けて傾斜した傾斜板部37Bと、該傾斜板部37Bの上端から上方に向けて延び挟持部材38が取付けられる上板部37Cとにより構成されている。取付板37は、下板部37Aをボルト39により上桟部材29Aに取付けることにより上桟部材29Aに固定されている。なお、下板部37Aは、溶接等により上桟部材29Aに取付ける構成としてもよい。また、上板部37Cには、3個のめねじ孔37C1(図9で2個のみ図示)が設けられている。
挟持部材38は、下前窓24の上端24Bを挟むことにより下前窓24を保持する所謂クリップとして形成されている。挟持部材38は、例えば金属部材、樹脂部材等により形成され、2個の下前窓下端受け31の間位置で、下前窓下端受け31と上,下方向で対応する位置に設けられている。そして、図8、図9に示すように、挟持部材38は、上段部38A、中段部38B、下段部38C、下前窓挟持部38Dにより構成されている。
上段部38Aは、挟持部材38の上,下方向の中間位置よりも上側で、かつ前,後方向に間隔をもって配置されている。前,後の上段部38Aには、それぞれボルト挿通孔38Eが穿設されている。2個のボルト挿通孔38Eは、取付板37の上側に位置する2個のめねじ孔37C1に対応している。
中段部38Bは、挟持部材38の上,下方向の中間位置よりも下側で、かつ前,後方向に間隔をもって配置されている。前,後の中段部38Bは、上段部38Aの下端側から右側(取付板37側)に向けて下前窓24の厚さ寸法と同等の寸法で一段下がった平坦面として形成されている。各中段部38Bは、下前窓24を挟持部材38で保持したときに、下前窓挟持部38Dとの間で下前窓24の上端24Bを挟んで固定するものである。
下段部38Cは、挟持部材38の前,後方向の中間に位置している。即ち、下段部38Cは、前,後方向の両端側に位置する上段部38A、中段部38B間に位置し、中段部38Bから一段下がっている。そして、下段部38Cには、上板部37Cの下端に位置するめねじ孔37C1に対応する位置にボルト挿通孔38Eが穿設されている。そして、挟持部材38は、各ボルト挿通孔38Eに挿通したボルト40を取付板37の各めねじ孔37C1に螺合することにより、取付板37に一体的に取付けることができる。
下前窓挟持部38Dは、前,後の上段部38A間に位置している。下前窓挟持部38Dは、下段部38Cのボルト挿通孔38Eの上側から左側(運転席41側)に向けて延びる薄板状の板ばね部38D1と、該板ばね部38D1の先端側に設けられた下前窓押え部38D2とにより構成されている。下前窓押え部38D2は、上段部38Aよりも左側に向けて突出しており、下前窓押え部38D2と中段部38Bとの間の左,右方向の間隔寸法は、下前窓24の厚さ寸法よりも若干小さく形成されている。
これにより、下前窓24の上端24Bを中段部38Bと下前窓押え部38D2との間に挟持させると、板ばね部38D1が下前窓押え部38D2を下前窓24に押付けるので下前窓24を安定的に保持することができる構成となっている。
なお、41はキャブ11内の運転席取付台12A上に設けられた運転席で、この運転席41は、オペレータが着座するものである。運転席41の周囲には、作業装置5等を操作する操作レバー42、下部走行体2を操作する走行レバー・ペダル、各種のスイッチ類(いずれも図示せず)が設けられている。
第1の実施の形態によるキャブ11を搭載した油圧ショベル1は上述の如き構成を有するもので、次に、その動作について説明する。
まず、オペレータは、キャブ11内に搭乗して運転席41に着席し、左,右の走行レバー・ペダル(図示せず)を操作することにより、油圧ショベル1を作業場所まで走行させる。そして、オペレータは、左,右の操作レバー42を操作することにより、旋回装置3、作業装置5を駆動させて土砂の掘削作業等を行うことができる。
次に、キャブ11内の温度、湿度等を調整するために換気を行う場合について説明する。
まず、上前窓25を上ガイドレール23に沿って上方に向けてスライド移動させ、前,後方向に延びた状態で天面部位18の下側に格納する。さらに、下前窓24を下ガイドレール22に沿って上方に向けてスライド移動させることにより、キャブボックス13の前面部位14から下前窓24を取外す。これにより、キャブボックス13の前面部位14を外部に対して開放することができ、キャブボックス13内に外気を取込むことができる。
ここで、キャブボックス13の前面部位14から取外された下前窓24は、下前窓下端受け31、下前窓上端受け36により右側面部位17に設けられた右上側窓27と左,右方向で重ねた状態で収納することができる。具体的には、取外した下前窓24を右上側窓27に対面させた状態で、下前窓24の下端24Aを下枠部17Cに設けた2個の下前窓下端受け31の係合弾性体35内に差込む。この状態で、下前窓24の上端24Bを上桟部材29Aに設けられた下前窓上端受け36の挟持部材38の中段部38Bと下前窓押え部38D2との間に挟み込む。
この場合、下前窓下端受け31の係合弾性体35の折返し部35Aは、下前窓24の下端24Aを弾性力をもって挟むことができ、大きな摩擦抵抗をもって安定的に支持することができる。また、下前窓上端受け36の挟持部材38の下前窓挟持部38Dは、板ばね部38D1の付勢力により下前窓24の上端24B側を挟持部材38の中段部38Bと下前窓押え部38D2との間に確実に挟持することができる。
これにより、下前窓24は、桟部材29の内側位置に配置された状態で、2個の下前窓下端受け31と、下前窓上端受け36との3箇所で安定して保持される構成となっている。また、下前窓24は、右上側窓27に重ねた状態で収納されているので、下前窓24を透して右側の視界を得ることができる。さらに、下前窓24と右上側窓27との間には、桟部材29が配設されているので、例えば油圧ショベル1が振動した場合でも、下前窓24と右上側窓27とを離した状態とすることができる。
一方、下前窓24を下前窓下端受け31と下前窓上端受け36とから取外すときには、下前窓上端受け36(挟持部材38)の下前窓押え部38D2の上端側を押込むことにより、板ばね部38D1を弾性変形させて中段部38Bと下前窓押え部38D2との間に挟持された下前窓24の上端24B側の挟持(係合)を解除する。そして、下前窓24を手前(左側)に引きつつ上方に向けて移動させることにより、下前窓下端受け31の係合弾性体35から離脱させることができる。
かくして、第1の実施の形態によれば、キャブボックス13の前面部位14から取外された下前窓24は、下前窓上端受け36に保持されることにより、ドア26と反対側に位置する右側面部位17の右上側窓27に重ねた状態で配置することができる。この場合、下前窓上端受け36は、オペレータを保護するために設けられた既存の桟部材29を利用しているから、簡単な構成で容易に設けることができる。
この結果、キャブボックス13が、例えば小型の油圧ショベル1に用いられる小さなものでも、下前窓24を邪魔にならないように収納することができる。しかも、下前窓24は、下前窓上端受け36に取付けるだけであるから、簡単に収納することができ、また簡単に取外すことができる。
また、下前窓上端受け36は、複数本の桟部材29A,29Bのうち上側に位置する上桟部材29Aに設けているので、上,下方向に長尺な下前窓24を余裕をもって収納することができる。さらに、収納した下前窓24を運転席41の周囲に配設された機器やスイッチ類等から上方に離間させることができ、オペレータの作業性を向上することができる。
さらに、下前窓上端受け36は、下前窓24を下前窓下端受け31との間に挟み込むように保持できるから、下前窓24の上部と下部の両方を安定的に保持することができる。この結果、油圧ショベル1の走行時、作業時に振動が生じても下前窓上端受け36と下前窓下端受け31とにより下前窓24を確実に保持することができ、信頼性等を向上することができる。
次に、図10は本発明の第2の実施の形態を示している。本実施の形態の特徴は、2本の桟部材のうち、下側に位置する桟部材に下前窓下端受けを設けたことにある。なお、第2の実施の形態では、上述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略するものとする。
51は桟部材29に設けられた下前窓保持部材を示し、この下前窓保持部材51は、前面部位14から取外された下前窓24を右上側窓27に重ねた状態で下前窓24を取付け、取外し可能に保持するものである。下前窓保持部材51は、後述の下前窓下端受け52、下前窓上端受け53とにより構成されている。
52は第1の実施の形態による下前窓下端受け31に代えて用いられる下前窓下端受けを示している。この下前窓下端受け52は、下側に位置する下桟部材29Bに設けられている。下前窓下端受け52は、断面C字状ないし断面U字状をした金属材からなり、下前窓24の下端24A側を保持するようにU字状に配設されている。
即ち、下前窓下端受け52は、下前窓24を前,後方向で挟む縦枠52Aと、該各縦枠52Aの下端に亘って前,後方向に延びた横枠52Bとにより構成されている。そして、各縦枠52Aの上端が下桟部材29Bに溶接等により固着されている。また、各枠52A,52B内には、ゴム材料等により形成された係合弾性体(図示せず)が固着され、この係合弾性体内に下前窓24の下端24A側が係合する構成となっている。
53は上桟部材29Aに設けられた第2の実施の形態による下前窓保持部材としての下前窓上端受けを示している。この下前窓上端受け53は、第1の実施の形態による下前窓上端受け36と同様の構成となっている。
かくして、このように構成された第2の実施の形態においても、上述した第1の実施の形態とほぼ同様の作用および効果を奏することができる。特に、第2の実施の形態においては、下前窓下端受け52を下側に位置する下桟部材29Bに設け、下前窓上端受け53を下桟部材29Bよりも上方に位置する上桟部材29Aに設けているので、キャブボックス13の右側面部位17や、右上側窓27に加工を施す必要がない。これにより、キャブボックス13内の機器や装置の配置に手を加えることなくキャブボックス13内に下前窓24を容易に収納することができる。
次に、図11は、本発明の第3の実施の形態を示している。本実施の形態の特徴は、右上側窓の内側位置に3本の桟部材を設けたことにある。なお、第3の実施の形態では、上述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略するものとする。
61A,61B,61Cは右上側窓27の内側位置を前,後方向に延びて取付けられた複数本、例えば3本の桟部材を示している(全体として桟部材61という)。この桟部材61は、第1の実施の形態による桟部材29A,29Bと同様に、例えば金属製のパイプ(丸棒)等により形成され、前端側と後端側が右上側窓枠部材17A(右側面部位17)に取付けられている。そして、上桟部材61A,中桟部材61B,下桟部材61Cは、上,下方向に間隔をもって上側から順次配置されている。これにより、桟部材61は、運転席41に着座したオペレータを保護している。
62は桟部材61に設けられた下前窓保持部材を示し、この下前窓保持部材62は、前面部位14から取外された下前窓24を右上側窓27に重ねた状態で下前窓24を取付け、取外し可能に保持するものである。下前窓保持部材62は、後述の下前窓下端受け63、下前窓上端受け64とにより構成されている。
63は第1の実施の形態による下前窓下端受け31に代えて用いられる下前窓下端受けを示している。この下前窓下端受け63は、第1の実施の形態による下前窓下端受け31と同様の構成となっており、下前窓24の幅寸法よりも小さな間隔をもって最も下側に位置する下桟部材61Cに2個設けられている。そして、下前窓下端受け63は、保持板63Aが下桟部材61Cに溶接等により固着されている。
64は上桟部材61Aに設けられた第3の実施の形態による下前窓保持部材としての下前窓上端受けを示している。この下前窓上端受け64は、第1の実施の形態による下前窓上端受け36と同様の構成となっている。
かくして、このように構成された第3の実施の形態においても、上述した第1の実施の形態と同様の作用および効果を奏することができる。特に、第3の実施の形態では、下前窓上端受け64は、複数本の桟部材61のうち最も上側に位置する上桟部材61Aに設けているので、上,下方向に長尺な下前窓24を余裕をもって収納することができる。さらに、収納した下前窓24を運転席41の周囲に配設された機器やスイッチ類等から上方に離間させることができ、オペレータの作業性を向上することができる。
次に、図12は本発明の参考例を示している。本参考例の特徴は、下前窓保持部材を桟部材から吊り下げられた袋体として形成したことにある。なお、参考例では、上述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略するものとする。
71は上桟部材29Aに吊り下げられた下前窓保持部材としての袋体を示している。この袋体71は、下前窓24の重量に十分に耐え得る耐久力のある透明または透過可能な樹脂材料、例えば透明な樹脂シートに強度をもった紐体(ワイヤ)を埋め込んだものや、紐体を袋状に編み込んだもの等により形成されている。そして、袋体71は、上桟部材29Aに着脱可能に取付けられた取付部71Aと、該取付部71Aの下端側に取付けられた袋部71Bとにより構成されている。取付部71Aは、上桟部材29Aの前,後方向に間隔をもって2個設けられている。また、各取付部71Aは、上桟部材29Aに掛けるように着脱可能に取付けられている。
袋部71Bは、内部に下前窓24を収納することができる大きさに形成されている。また、袋部71Bは、上端側が開口し前,後方向の両端側に図示しないファスナ(スライドファスナ)が設けられている。そして、前面部位14から取外された下前窓24は、袋部71Bのファスナを開状態にすることにより、袋部71Bの内部に収納することができる構成となっている。この場合、袋部71Bは、透視可能な材料により形成されているので、上桟部材29Aに袋部71Bを吊り下げてもオペレータの右側の視界を良好に確保することができる。
かくして、このように構成された参考例においても、上述した第1の実施の形態と同様の作用および効果を奏することができる。特に、参考例では、下前窓24を袋部71Bに収納しないときには、袋体71を小さく折畳んでコンパクトにすることができる。この場合、例えば取付部71Aを上桟部材29Aに取付けた状態で、袋部71Bを折畳むことや、取付部71Aを上桟部材29Aから取外して袋体71を小さく折畳み、この袋体71をキャブ11内の片隅に収容することができる。
なお、上述した第1の実施の形態では、桟部材29を上桟部材29Aと下桟部材29Bとの2本を設ける構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば桟部材を3本以上としてもよい。この場合、最も上側に位置する桟部材に下前窓保持部材を設けることにより、下前窓を簡単に下前窓保持部材に取付けることができる。
また、上述した第1の実施の形態では、下前窓保持部材として下前窓24の上端24Bを保持する下前窓上端受け36を上桟部材29Aに設けた場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば桟部材に下前窓の前端および/または後端を保持する下前窓保持部材を設けてもよい。
また、上述した第1の実施の形態では、下前窓24の上端24Bを保持する下前窓保持部材としての下前窓上端受け36と、下前窓24の下端24Aを保持する下前窓下端受け31とを設けた場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば下前窓下端受けを設けずに下前窓上端受けのみで強固に上前窓を保持してもよい。
また、上述した第1の実施の形態では、下前窓上端受け36を上桟部材29Aに1個設けた場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば下前窓上端受けを2個以上設けてもよい。このことは、第2,第3の実施の形態についても同様である。
さらに、上述した実施の形態では、建設機械用キャブとしてクローラ式の油圧ショベル1に搭載されたキャブ11を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えばホイール式の油圧ショベル、油圧クレーン等に搭載される他の建設機械用キャブにも広く適用することができる。