以下、図1〜図7を参照して、この発明を電子鍵盤楽器の鍵盤装置に適用した一実施形態について説明する。
この鍵盤装置は、図1に示すように、合成樹脂製の鍵盤シャーシ1と、この鍵盤シャーシ1上に配列されて上下方向にそれぞれ回転可能に取り付けられた複数の鍵2と、これら複数の鍵2の押鍵操作に伴って各鍵2にそれぞれアクション荷重を付与する複数のハンマー部材3と、複数の鍵2の押鍵動作に応じてそれぞれオン信号を出力するスイッチ部4とを備えている。
鍵盤シャーシ1は、楽器ケース(図示せず)内に配置されるものである。この鍵盤シャーシ1の前端部(図1では右端部)には、図1に示すように、前脚部5が底部から上方に突出して形成されている。この前脚部5の上部には、鍵2の横振れを防ぐための鍵ガイド部6が各鍵2にそれぞれ対応して設けられている。
また、この鍵盤シャーシ1における前脚部5の後部側(図1では左側部)には、図1に示すように、ハンマー載置部7が前脚部5よりも少し高い高さで形成されている。このハンマー載置部7の下面には、ハンマー部材3を支持するためのハンマー支持部8が下側に向けて突出して設けられている。このハンマー支持部8には、ハンマー部材3を上下方向に回転可能に支持する支持軸8aが設けられている。
また、この鍵盤シャーシ1の前後方向(図1では左右方向)におけるほぼ中間部、つまりハンマー鍵載置部7の上部後方には、図1に示すように、基板載置部10が一段低い高さで形成されている。この基板載置部10の上方には、スイッチ部4がハンマー載置部7と基板支持部11との両方に跨った状態で取り付けられている。この場合、基板支持部11は、基板載置部10の後部側(図1では左側)の上面に起立して設けられている。
さらに、この鍵盤シャーシ1の後部、つまり基板載置部10の後部側には、図1に示すように、鍵載置部12が鍵ガイド部6の上部とほぼ同じ高さで形成されている。この鍵載置部12の上面には、鍵支持部13が上方に突出して形成されている。この鍵支持部13には、鍵2の後端部を上下方向に回転可能に支持する支持軸13aが設けられている。
また、この鍵盤シャーシ1における鍵載置部12の後端部には、図1に示すように、鍵盤シャーシ1の後端部を支持する後脚部14が鍵盤シャーシ1の上部から底部に向けて垂下されている。この後脚部14の下端部には、ハンマー部材3の下限位置を規制するためのフェルトなどの下限ストッパ部15が設けられている。
一方、鍵2は、白鍵と黒鍵とを有している。ただし、この実施形態では、1つの白鍵について説明する。この鍵2は、図1に示すように、その後端部(図1では左端部)が鍵盤シャーシ1の鍵載置部12上に設けられた鍵支持部13に支持軸13aによって上下方向に回転可能に支持されている。この鍵2の前後方向(図1では左右方向)におけるほぼ中間部には、鍵盤シャーシ1の基板載置部10上に取り付けられたスイッチ部4を押圧するためのスイッチ押圧部16が下側に突出して形成されている。
この場合、スイッチ部4は、図1に示すように、スイッチ基板17上に配置されたゴムシート18を備え、このゴムシート18にドーム状の膨出部18aが鍵2のスイッチ押圧部16に対応して形成された構成になっている。スイッチ基板17は、その前端部(図1では右端部)がハンマー載置部7上に配置され、他端部(図1では左端部)が基板載置部10上に設けられた基板支持部11上に配置され、この状態で基板載置部10の上方に位置した状態で取り付けられている。
また、このスイッチ部4は、図1に示すように、ゴムシート18の膨出部18aがスイッチ押圧部16によって押圧された際に、図2〜図4に示すように、膨出部18aが弾性変形して、その内部の可動接点がスイッチ基板17の固定接点(いずれも図示せず)に接触してオン信号を出力するように構成されている。
さらに、鍵2のスイッチ押圧部16の前側(図1では右側)に位置する鍵2の箇所には、図1に示すように、ハンマー押圧部20が鍵2の下側に向けて突出して形成されている。このハンマー押圧部20の下部には、ハンマー部材3の後述する鍵当接摺動部26を摺動可能に保持するハンマー保持部21が設けられている。
一方、ハンマー部材3は、図1に示すように、ハンマー本体23と、このハンマー本体23の後部(図1では左側部)に設けられた錘部24と、ハンマー本体23の前部側(図2では右側部)に設けられて、ハンマー本体23の回転中心となる合成樹脂製の回転取付部25と、ハンマー本体23の前側に位置する先端部(図1では右端部)に設けられた鍵当接摺動部26とを備えている。
このハンマー部材3は、図1に示すように、ハンマー本体23の鍵当接摺動部26を鍵盤シャーシ1のハンマー載置部7の前下り部9に設けられた開口部9aに挿入させた状態で、ハンマー本体23の回転取付部25をハンマー載置部7の下面に設けられたハンマー支持部8の支持軸8aに回転可能に取り付けることにより、ハンマー本体23がハンマー支持部8の支持軸8aを中心に上下方向に回転するように構成されている。
また、このハンマー部材3は、図1に示すように、ハンマー本体23の回転取付部25がハンマー支持部8の支持軸8aに回転可能に取り付けられた際に、ハンマー本体23の前側に位置する先端部(図1では右端部)に設けられた鍵当接摺動部26が、鍵2のハンマー押圧部20に形成されたハンマー保持部21内に、摺動可能に挿入されるように構成されている。
これにより、ハンマー部材3は、図1に示すように、通常の状態で、ハンマー本体23が錘部24の重量によってハンマー支持部8の支持軸8aを中心に反時計回りに回転し、ハンマー本体23の錘部24側の後端部(図1では左端部)が下限ストッパ部15に当接して位置規制されると共に、ハンマー本体23の鍵当接摺動部26が鍵2のハンマー押圧部20を押し上げて鍵2を上限位置に位置規制するように構成されている。
また、このハンマー部材3は、図2〜図4に示すように、鍵2が上方から押鍵されると、鍵2のハンマー押圧部20によってハンマー本体23の鍵当接摺動部26がハンマー本体23の錘部24の重量に抗して押し下げられ、これに伴ってハンマー本体23がハンマー支持部8の支持軸8aを中心に時計回りに回転し、ハンマー本体23の錘部24側の後端部が鍵盤シャーシ1の鍵載置部12の下面に設けられたフェルトなどの上限ストッパ27に当接して、ハンマー本体23の回転が停止するように構成されている。
ところで、このハンマー部材3には、図1〜図4に示すように、鍵2の押鍵動作に伴って上下方向に移動する操作突起部28が上方に向けて突出して設けられている。この操作突起部28は、ハンマー部材3の回転取付部25がハンマー本体23に沿って後方(図1では左側)に延出された個所に設けられている。これにより、操作突起部28は、その先端部28aが鍵盤シャーシ1の基板載置部10に対応し、この状態でハンマー部材3の回転に伴って上下方向に移動するように構成されている。
また、鍵盤シャーシ1の基板載置部10には、図1〜図4に示すように、鍵荷重制動部材30がハンマー部材3の操作突起部28の移動軌跡に対応して設けられている。すなわち、この鍵荷重制動部材30は、鍵盤シャーシ1の基板載置部10上に起立した状態で設けられている。この場合、鍵盤シャーシ1の基板載置部10には、ハンマー部材3の操作突起部28が上下方向に移動可能に挿入するスリット孔29が上下に貫通して設けられている。
鍵荷重制動部材30は、図5および図6に示すように、鍵盤シャーシ1の基板載置部10に鍵2の前後方向(図5では左右方向)に変位可能に設けられた本体部31と、この本体部31に緩やかに湾曲して設けられて、操作突起部28が接触して本体部31を鍵2の前後方向に変位させる第1突起部32と、鍵2の押鍵力が弱いときに操作突起部28の先端部28aが当接して乗り越え、かつ鍵2の押鍵力が強いときに操作突起部28の先端部28aが当接せずに通過する第2突起部33と、を有している。
この鍵荷重制動部材30は、図5に示すように、本体部31、第1突起部32、第2突起部33が、ゴムやエラストマなどの弾性材料によって一体に形成されている。これにより、本体部31は、図1〜図4に示すように、鍵2の前後方向(図5では左右方向)に弾力的に変位するように構成されている。この場合、本体部31には、くびれ部31aが第1突起部32よりも鍵盤シャーシ1側に位置して設けられている。これにより、本体部31は、くびれ部31aによって鍵2の前後方向に弾力的に変位し易い構成になっている。
また、第1突起部32は、図5および図6に示すように、操作突起部28の先端部28aの移動軌跡側に位置する本体部31の側面のほぼ中間部に、その側方である鍵2の前側に向けて緩やかに湾曲した状態で突出して設けられている。これにより、第1突起部32は、操作突起部28の先端部28aが上下方向に滑らかに接触して、本体部31を鍵2の後方に向けて弾力的に変位させるように構成されている。
すなわち、この第1突起部32は、図6(a)および図6(b)に示すように、鍵2の押鍵力が弱いときに操作突起部28の先端部28aがゆっくり接触して摺動することにより、本体部31をくびれ部31aによって鍵2の後方に向けて弾力的にゆっくり変位させるように構成されている。
すなわち、本体部31は、図6(a)および図6(b)に示すように、鍵2が弱い力で押鍵された際に、操作突起部28の先端部28aが第1突起部32に沿ってゆっくり摺動することにより、操作突起部28の先端部28aの上下動に追従して鍵2の後方に向けて弾力的に変位するように構成されている。これにより、操作突起部28は、その先端部28aが第2突起部33に下側から当接して、鍵荷重が急激に重くなるように構成されている。
また、この第1突起部32は、図6(c)に示すように、鍵2の押鍵力が強いときに、操作突起部28の先端部28aが第1突起部32の緩やかな湾曲に沿って速い速度で勢いよく接触することにより、本体部31のくびれ部31aを中心に本体部31をその慣性力によって鍵2の後方に向けて勢いよく変位させるように構成されている。
すなわち、本体部31は、図6(c)に示すように、鍵2が強い力で押鍵された際に、操作突起部28の先端部28aが第1突起部32に沿って勢いよく摺動することにより、本体部31に慣性力が生じ、この慣性力によって本体部31がくびれ部31aを中心に鍵2の後方に向けて大きく変位するように構成されている。
このため、本体部31は、図6(c)に示すように、鍵2が強い力で押鍵された際に、操作突起部28の先端部28aの上下動に追従せずに、鍵2の後方に向けて大きく変位し、第2突起部33の先端部を操作突起部28の先端部28aの移動軌跡上から鍵2の後方に変位させるように構成されている。これにより、操作突起部28は、その先端部28aが第2突起部33に当接せずに通過し、鍵荷重がほとんど重くならないように構成されている。
また、第2突起部33は、図5に示すように、操作突起部28の移動軌跡側に位置する本体部31の側面の上部に、その側方である鍵2の前側に向けて第1突起部32よりも突出して設けられている。これにより、第2突起部33は、図6(a)および図6(b)に示すように、操作突起部28の先端部28aが第1突起部32に接触して本体部31が操作突起部28の上方への移動に追従して鍵2の後方に向けて変位した際に、操作突起部28の先端部28aが下側から当接して乗り越えるように構成されている。
すなわち、この第2突起部33は、図6(a)に示すように、鍵2が弱い力で押鍵された際に、操作突起部28の先端部28aが下側から当接することにより、鍵荷重を急激に重くするように構成されている。また、この第2突起部33は、図6(b)に示すように、操作突起部28の先端部28aによって本体部31を鍵2の後方に変位させて、操作突起部28の先端部28aが乗り越えることにより、鍵荷重を急激に軽くし、鍵2にレットオフ感を付与するように構成されている。
また、この第2突起部33は、図6(c)に示すように、鍵2が強い力で押鍵されて、操作突起部28の先端部28aが第1突起部32に勢いよく接触し、本体部31をその慣性力によって鍵2の後方に向けて大きく変位させた際に、操作突起部28の先端部28aが下側から当接せずに通過するように構成されている。これにより、第2突起部33は、鍵2が強い力で押鍵された際に、鍵荷重がほとんど重くならないため、鍵2にレットオフ感が付与されないように構成されている。
この場合、操作突起部28は、図6(a)〜図6(c)に示すように、その先端部28aが第2突起部33を乗り越えた後に、ハンマー部材3の錘部24の重量およびスイッチ部4のゴムシート18における膨出部18aの弾性復帰力によって、ハンマー部材3が反時計回りに回転して鍵2が初期位置に戻る離鍵時に、操作突起部28の先端部28aが本体部31の第2突起部33および第1突起部32を順次摺動して下側に移動するように構成されている。
これにより、操作突起部28は、図6(a)〜図6(c)に示すように、鍵2が初期位置に戻る離鍵時に、操作突起部28の先端部28aが、第2突起部33および第1突起部32に引っ掛かることがなく、第2突起部33および第1突起部32を上側から下側に向けて滑らかに摺動することにより、鍵2にほとんど負荷を付与しないように構成されている。
次に、このような鍵盤装置の作用について説明する。
まず、鍵2が押鍵操作されていない初期状態のときには、図1に示すように、ハンマー部材3が錘部24の重量によってハンマー支持部8の支持軸8aを中心に反時計回りに回転し、このハンマー部材3の錘部24側の後端部が鍵盤シャーシ1の後脚部14における下端部に設けられた下限ストッパ15に当接している。
このときには、図1に示すように、鍵2のハンマー押圧部20のハンマー保持部21がハンマー本体23の先端部(図1では右端部)に位置する鍵当接摺動部26によって押し上げられるので、鍵2が鍵盤シャーシ1の鍵載置部12上に設けられた鍵支持部13の支持軸13aを中心に反時計回りに回転して上限位置に規制されている。この状態では、鍵2のスイッチ押圧部16がスイッチ部4の上方に位置して離れている。
この状態で、鍵2を弱い力で押鍵操作すると、図2に示すように、鍵2が鍵支持部13の支持軸13aを中心に時計回りに回転して、ハンマー押圧部20のハンマー保持部21がハンマー部材3の鍵当接摺動部26をゆっくり押し下げる。これにより、ハンマー部材3が錘部24の重量に抗して、図2において時計回りにゆっくり回転する。このときには、ハンマー部材3のハンマー本体23の回転によって、鍵2にアクション荷重が付与されるので、図7(a)に曲線A1で示すように、鍵荷重が急に重くなる。
そして、鍵2が押鍵操作に伴って回転し、鍵2のスイッチ押圧部16がスイッチ部4を押圧すると、ゴムシート18の膨出部18aが弾性変形する。このときには、ゴムシート18の膨出部18aの弾性変形によって、図7(a)に曲線B1で示すように、鍵荷重が緩やかに上昇して重くなる。この状態で、鍵2が更に回転して鍵2のスイッチ押圧部16がスイッチ部4を更に押圧すると、ゴムシート18の膨出部18aが更に弾性変形して、スイッチ部4がスイッチ信号を出力する。
この後、鍵2が更にハンマー本体23を回転させると、このハンマー本体23の回転に伴って操作突起部28が鍵盤シャーシ1の基板載置部10に設けられたスリット孔29内を上方に向けて移動して、鍵盤シャーシ1の基板載置部10に設けられた鍵荷重制動部材30の第1突起部32に接近する。そして、操作突起部28の先端部28aが鍵荷重制動部材30の第1突起部32に滑らかに接触すると、本体部31を鍵2の後方に向けて弾力的にゆっくり変位させる。
このときには、鍵2の押鍵力が弱いので、図2および図6(a)に示すように、操作突起部28の先端部28aが鍵荷重制動部材30の第1突起部32に接触してゆっくり摺動する。このため、本体部31は、操作突起部28の先端部28aの上下動に追従して、くびれ部31aを中心に鍵2の後方に向けてゆっくり変位する。これにより、操作突起部28の先端部28aが第1突起部32を通過して、第2突起部33にその下側から当接する。このときには、図7(a)に曲線C1で示すように、鍵荷重が急激に上昇して重くなる。
そして、鍵2が更に回転し、ハンマー本体23が鍵2と共に更に回転すると、図3および図6(b)に示すように、操作突起部28の先端部28aが第2突起部33を押し上げるので、鍵荷重制動部材30の本体部31が更に鍵2の後方に向けて変位する。これにより、操作突起部28の先端部28aが第2突起部33を乗り越える。このときには、図7(a)に曲線D1で示すように、鍵荷重が急激に降下して軽くなる。これにより、鍵2にレットオフ感が付与される。
この後、更に鍵2が回転し、ハンマー本体23が更に回転すると、ハンマー部材23の後端部(図3では左端部)が鍵盤シャーシ1の鍵載置部13の下面に設けられたフェルトなどの上限ストッパ27に当接し、ハンマー本体23が上限位置に規制されて、ハンマー部材3の回転が急に停止する。このときには、図7(a)に曲線E1で示すように、鍵荷重が再び急激に上昇して重くなる。
そして、鍵2から指が離れて鍵2が離鍵動作を開始すると、図2に示すように、ハンマー部材3のハンマー本体23が、その錘部24の重量およびスイッチ部4のゴムシート18における膨出部18aの弾性復帰力によって、ハンマー支持部8の支持軸8aを中心に反時計回りに回転する。このときには、図7(a)に曲線F1で示すように、鍵荷重が急激に降下して軽くなる。
この後、ハンマー部材3の操作突起部28の先端部28aが、鍵荷重制動部材30の第2突起部33から下側に移動して、第1突起部32に接触する。このときには、操作突起部28の先端部28aが、第1突起部32に引っ掛かることがなく、第1突起部32に接触した状態で上側から下側に向けて滑らかに摺動する。このため、鍵2に負荷がほとんど付与されることがないので、図7(a)に曲線G1で示すように、鍵荷重が緩やかに降下して軽くなる。
そして、操作突起部28の先端部28aが鍵荷重制動部材30の第1突起部32から下側に移動すると、スイッチ部4のゴムシート18の膨出部18aが弾性復帰を開始し、このゴムシート18の膨出部18aの弾性復帰力とハンマー部材3の錘24の重量とによって、ハンマー本体23がハンマー支持部8の支持軸8aを中心に反時計回りに回転し、これに伴って鍵2が鍵支持部13の支持軸13aを中心に反時計回りに回転する。このときには、図7(a)に曲線H1で示すように、鍵荷重が緩やかに降下して更に軽くなる。
この後は、ハンマー本体23がその錘部24の重量によってハンマー支持部8の支持軸8aを中心に反時計回りに更に回転し、これに伴って鍵2が鍵支持部13の支持軸13aを中心に反時計回りに更に回転し、ハンマー本体23の錘部24側の後端部が鍵盤シャーシ1の後脚部14における下端部に設けられた下限ストッパ15に当接する。このときには、図7(a)に曲線J1で示すように、鍵荷重が急に降下して軽くなる。
これにより、鍵2は、図1に示すように、ハンマー押圧部20のハンマー保持部21がハンマー本体23の先端部(図1では右端部)に位置する鍵当接摺動部26によって押し上げられるので、鍵2が鍵支持部13の支持軸13aを中心に反時計回りに回転して上限位置に規制される。この状態では、鍵2が初期位置に戻り、鍵2のスイッチ押圧部16がスイッチ部4の上方に位置して離れる。
次に、鍵2を強い力で押鍵操作した場合について説明する。
このときには、図4に示すように、鍵2が鍵支持部13の支持軸13aを中心に時計回りに回転して、ハンマー押圧部20のハンマー保持部21がハンマー部材3の鍵当接摺動部26を速い速度で押し下げる。これにより、ハンマー部材3が錘部24の重量に抗して、図4において時計回りに速い速度で回転する。このときには、ハンマー部材3のハンマー本体23の回転によって、鍵2にアクション荷重が付与されるので、図7(b)に曲線A2で示すように、鍵荷重が急に重くなる。
そして、鍵2が押鍵操作に伴って回転し、鍵2のスイッチ押圧部16がスイッチ部4を押圧すると、ゴムシート18の膨出部18aが弾性変形する。このときには、ゴムシート18の膨出部18aの弾性変形によって、図7(b)に曲線B2で示すように、鍵荷重が緩やかに上昇して重くなる。この状態で、鍵2が更に回転して鍵2のスイッチ押圧部16がスイッチ部4を更に押圧すると、ゴムシート18の膨出部18aが更に弾性変形して、スイッチ部4がスイッチ信号を出力する。
この後、鍵2が強い力で更にハンマー本体23を回転させると、このハンマー本体23の回転に伴って操作突起部28が鍵盤シャーシ1の基板載置部10に設けられたスリット孔29から上側に向けて移動して、鍵盤シャーシ1の基板載置部10に設けられた鍵荷重制動部材30の第1突起部32に接近する。そして、操作突起部28の先端部28aが鍵荷重制動部材30の第1突起部32に勢いよく接触すると、本体部31を鍵2の後方に向けて弾力的に大きく変位させる。
このときには、操作突起部28の先端部28aが第1突起部32の緩やかな湾曲に沿って速い速度で勢いよく摺動することにより、図4および図6(c)に示すように、本体部31に慣性力が生じ、この慣性力によって本体部31がくびれ部31aを中心に鍵2の後方に向けて大きく変位する。このため、本体部31は、操作突起部28の先端部28aの上下動に追従せずに、鍵2の後方に向けて大きく変位し、第2突起部33の先端部を操作突起部28の先端部28aの移動軌跡上から鍵2の後方に変位させる。
これにより、操作突起部28の先端部28aが鍵荷重制動部材30の第1突起部32を通過すると、第2突起部33に当接することなく、この第2突起部33を通過する。このため、操作突起部28に第2突起部33による負荷がほとんど付与されないので、図7(b)に曲線C2で示すように、鍵荷重が緩やかに上昇して重くなるが、鍵2にレットオフ感が付与されることはない。
この後、更に鍵2が回転し、ハンマー本体23が更に回転すると、ハンマー部材23の後端部(図4では左端部)が鍵盤シャーシ1の鍵載置部13の下面に設けられたフェルトなどの上限ストッパ27に当接し、ハンマー本体23が上限位置に規制されて、ハンマー部材3の回転が急に停止する。このときには、図7(b)に曲線D2で示すように、鍵荷重が急激に上昇して重くなる。
そして、鍵2から指が離れて鍵2が離鍵動作を開始すると、図2に示したように、ハンマー部材3のハンマー本体23が、その錘部24の重量およびスイッチ部4のゴムシート18における膨出部18aの弾性復帰力によって、ハンマー支持部8の支持軸8aを中心に反時計回りに回転する。このときには、図7(b)に曲線E2で示すように、鍵荷重が急激に降下して軽くなる。
この後、ハンマー部材3の操作突起部28の先端部28aが鍵荷重制動部材30の第2突起部33から下側に移動して、第1突起部32に接触する。このときには、操作突起部28の先端部28aが、第1突起部32に引っ掛かることがなく、第1突起部32に接触した状態で上側から下側に向けて滑らかに摺動する。このため、鍵2に負荷がほとんど付与されることがないので、図7(b)に曲線F2で示すように、鍵荷重が緩やかに降下して軽くなる。
そして、操作突起部28の先端部28aが鍵荷重制動部材30の第1突起部32から下側に移動すると、スイッチ部4におけるゴムシート18の膨出部18aが弾性復帰を開始する。これにより、ゴムシート18の膨出部18aの弾性復帰力とハンマー本体23の錘部24の重量とによって、ハンマー本体23がハンマー支持部8の支持軸8aを中心に反時計回りに回転し、これに伴って鍵2が鍵支持部13の支持軸13aを中心に反時計回りに回転する。このときには、図7(b)に曲線G2で示すように、鍵荷重が緩やかに降下して更に軽くなる。
この後は、ハンマー本体23がその錘部24の重量によってハンマー支持部8の支持軸8aを中心に反時計回りに更に回転し、これに伴って鍵2が鍵支持部13の支持軸13aを中心に反時計回りに更に回転し、ハンマー本体23の錘部34側の後端部が鍵盤シャーシ1の後脚部14における下端部に設けられた下限ストッパ15に当接する。このときには、図7(b)に曲線H2で示すように、鍵荷重が急に降下して軽くなる。
これにより、鍵2は、図1に示すように、ハンマー押圧部20のハンマー保持部21がハンマー本体23の先端部(図1では右端部)に位置する鍵当接摺動部26によって押し上げられるので、鍵2が鍵支持部13の支持軸13aを中心に反時計回りに回転して上限位置に規制される。この状態では、鍵2が初期位置に戻り、鍵2のスイッチ押圧部16がスイッチ部4の上方に位置して離れる。
このように、この鍵盤装置によれば、鍵盤シャーシ1上に上下方向に回転可能に取り付けられた鍵2の押鍵動作に伴って上下方向に移動する操作突起部28と、鍵盤シャーシ1に鍵2の前後方向に変位可能に設けられた本体部31、この本体部31に緩やかに湾曲して設けられ、操作突起部28が接触して本体部31を変位させる第1突起部32、および鍵2の押鍵力が弱いときに操作突起部28の先端部28aが当接して乗り越え、かつ鍵2の押鍵力が強いときに操作突起部28の先端部28aが当接せずに通過する第2突起部33を有する鍵荷重制動部材30と、を備えているので、鍵2の押鍵強さに応じて鍵2にレットオフ感を付与することができ、これによりアコースティックピアノの鍵タッチ感に近似した鍵タッチ感を得ることができる。
すなわち、この鍵盤装置では、鍵2を弱く押鍵すると、操作突起部28の先端部28aが鍵荷重制動部材30の第1突起部32に滑らかに接触して、鍵荷重制動部材30の本体部31をゆっくり変位させることができ、これにより操作突起部28の先端部28aを鍵荷重制動部材30の第2突起部33に当接させて乗り越えさせることができるので、鍵荷重を重くして急激に軽くするレットオフ感を鍵2に付与することができる。
また、この鍵盤装置では、鍵2を強く押鍵すると、操作突起部28の先端部28aが鍵荷重制動部材30の第1突起部32に勢いよく接触して、鍵荷重制動部材30の本体部31を急激に変位させることができ、これにより操作突起部28の先端部28aを第2突起部33に当接させずに通過させることができるので、鍵2にレットオフ感が付与されないようにすることができる。これにより、鍵2の押鍵強さに応じて鍵2にレットオフ感を付与することができるので、アコースティックピアノの鍵タッチ感に近似した鍵タッチ感を得ることができる。
この場合、鍵荷重制動部材30の第1突起部32は、鍵2の押鍵力が弱いときに操作突起部28の先端部28aが接触して、本体部31を操作突起部28の上下動に追従させて鍵2の前後方向に変位させることにより、操作突起部28の先端部28aを第2突起部33に当接させるので、鍵2の押鍵力が弱いときに、操作突起部28の先端部28aを第2突起部33に確実に当接させることができると共に、操作突起部28の先端部28aが本体部31を更に変位させて第2突起部33を良好に乗り越えることができるので、鍵荷重を重くして急激に軽くするレットオフ感を鍵2に確実に付与することができる。
また、この鍵荷重制動部材30の第1突起部32は、鍵2の押鍵力が強いときに操作突起部28の先端部28aが本体部31をその慣性力によって鍵2の前後方向に大きく変位させ、操作突起部28の先端部28aを第2突起部33に当接させずに通過させることにより、鍵2の押鍵力が強いときに、操作突起部28の先端部28aを第2突起部33に当接させずに良好に通過させることができるので、鍵2にレットオフ感が付与されないようにすることができる。
すなわち、この鍵荷重制動部材30の第1突起部32は、鍵2の押鍵力が強いと、操作突起部28の先端部28aが勢いよく接触するので、本体部31に慣性力が生じ、この慣性力によって本体部31を鍵2の前後方向に大きく変位させることができ、これにより第2突起部33を操作突起部28の先端部28aの移動軌跡上から外れた位置に変位させることができる。このため、操作突起部28の先端部28aを第2突起部33に当接させずに良好に通過させることができる。
また、この鍵盤装置では、鍵荷重制動部材30がゴムやエラストマなどの弾性材料で形成されていることにより、本体部31、第1突起部32、および第2突起部33を備えていても、これらを弾性材料で一体に形成することができる。この場合、鍵荷重制動部材30は、本体部31が弾性材料で形成されているので、本体部31を鍵盤シャーシ1に取り付けても、本体部31を鍵2の前後方向に良好に弾性変形させて変位させることができる。
また、第2突起部33は、弾性材料で形成されていることにより、鍵2を弱い力で押鍵した際に、操作突起部28の先端部28aが下側から当接して、鍵荷重を確実にかつ良好に重くすることができ、また操作突起部28の先端部28aが第2突起部33を乗り越える際に、本体部31を弾性変形させることができるので、操作突起部28の先端部28aを良好に乗り越えさせることができ、これにより確実に鍵2にレットオフ感を付与することができる。
この場合、鍵荷重制動部材30の本体部31には、くびれ部31aが第1突起部32よりも鍵盤シャーシ1側に設けられていることにより、このくびれ部31aによって本体部31を確実にかつ良好に鍵2の前後方向に弾力的に変位させることができ、これにより鍵2の押鍵強さに応じて、本体部31の変位量を変化させ易くすることができる。
このため、この鍵荷重制動部材30の本体部31は、鍵2が弱い力で押鍵されて、操作突起部28の先端部28aが第1突起部32にゆっくり接触して摺動する際に、くびれ部31aによって本体部31を弾力的にゆっくり変位させることができ、これにより本体部31を操作突起部28の上下動に追従させて変位させることができる。
また、鍵荷重制動部材30の本体部31は、鍵2が弱い力で押鍵されて、操作突起部28の先端部28aが第2突起部33を乗り越える際に、くびれ部31aによって本体部31を弾力的に変位させることができるので、操作突起部28の先端部28aが第2突起部33を良好に乗り越えることができ、これにより確実に鍵2にレットオフ感を付与することができる。
また、鍵荷重制動部材30の本体部31は、鍵2が強い力で押鍵されて、操作突起部28の先端部28aが第1突起部32に勢いよく接触して、本体部31に慣性力が生じた際に、くびれ部31aによって本体部31をその慣性力に応じて大きく変位させることができるので、第2突起部33を操作突起部28の先端部28aの移動軌跡上から外れた位置に変位させることができ、これにより操作突起部28の先端部28aを第2突起部33に当接させずに良好に通過させることができる。
また、鍵荷重制動部材30の本体部31は、操作突起部28の先端部28aが第2突起部33を乗り越えた後に、ハンマー部材3が反時計回りに回転して鍵2が初期位置に戻る離鍵時に、くびれ部31aによって本体部31を操作突起部28に向けて弾力的に接触させることができるので、操作突起部28の先端部28aが第2突起部33および第1突起部32に引っ掛からないようにすることができる。
これにより、この鍵荷重制動部材30の本体部31では、操作突起部28の先端部28aを第2突起部33および第1突起部32に上側から下側に向けて滑らかに摺動させることができる。このため、鍵2が初期位置に戻る離鍵時に、鍵2に負荷がほとんど付与されないようにすることができるので、これによってもアコースティックピアノの鍵タッチ感に近似した鍵タッチ感を得ることができる。
さらに、この鍵盤装置では、鍵2の押鍵操作に伴って回転し、鍵2にアクション荷重を付与するハンマー部材3を備えていることにより、鍵2を弱い力で押鍵操作しても、また鍵2を強い力で押鍵操作しても、鍵2の押鍵操作に伴ってハンマー部材3が回転することにより、鍵2にアクション荷重を付与して、鍵荷重を重くすることができ、これによってもアコースティックピアノの鍵タッチ感に近似した鍵タッチ感を得ることができる。
また、この鍵盤装置では、操作突起部28がハンマー部材3に設けられているので、鍵2の押鍵操作に伴ってハンマー部材3が回転すると、このハンマー部材3の回転に伴って操作突起部28を上下方向に移動させることができ、これにより操作突起部28を鍵盤シャーシ1に設けられた鍵荷重制動部材30の第1突起部32に接触させることができるので、本体部31を鍵2の前後方向に変位させることができ、これによりハンマー部材3を介して鍵2にレットオフ感を付与することができる。
なお、上述した実施形態では、操作突起部28をハンマー本体23のほぼ中間部に設けた場合について述べたが、これに限らず、例えばハンマー本体23の後端部に設けても良く、またハンマー本体23の前端部に設けても良い。また、これに限らず、操作突起部28を鍵2に設けて良い。この場合には、鍵荷重制動部材30を上下反転させた状態で鍵盤シャーシ1に設ければ良い。このように操作突起部28を鍵2に設けた構成にすれば、必ずしもハンマー部材3を備えている必要はないので、部品点数の削減を図り、構造の簡素化を図ることができる。
また、上述した実施形態では、鍵荷重制動部材30をゴムやエラストマなどの弾性材料で形成した場合について述べたが、これに限らず、例えば硬質の合成樹脂など、弾性を有しない金属などの材料で形成しても良い。この場合には、回転軸などのヒンジ部を介して鍵荷重制動部材30を鍵盤シャーシ1に取り付ければ良い。また、この場合には、鍵荷重制動部材30をばね部材や弾性部材などの付勢部材によって一定位置に弾力的に位置規制するように構成すれば良い。
なお、上述した実施形態において、鍵2を弱い力で押鍵操作した場合と、強い力で押鍵操作した場合の動作の説明を行っているが、ここでいう「弱い」や「強い」については、相対的な押鍵力の強弱を表すものであって良い。すなわち、相対的に弱い第1の押鍵力で押鍵された場合に「弱い力」の押鍵操作に対応した動作が行われ、相対的に強い第2の押鍵力で押鍵された場合に「強い力」の押鍵操作に対応した動作が行われる構成とすることが可能である。
つまり、ハンマー部材3が錘部24の重量に抗して時計回りにゆっくり回転する状態を、相対的に弱い又は第1の押鍵力と、ハンマー部材3が錘部24の重量に抗して時計回りに高速に回転する状態を、相対的に強い又は第2の押鍵力とする構成であれば種々の形で実施することが可能である。さらに、例えば、所定のしきい値より弱い押鍵力の場合に第1の押鍵力と、また当該しきい値より強い押鍵力の場合に第2の押鍵力として動作する構成となっていてもよい。
以上、この発明の一実施形態について説明したが、この発明は、これに限られるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲を含むものである。
以下に、本願の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
(付記)
請求項1に記載の発明は、鍵盤シャーシ上に上下方向に回転可能に取り付けられた鍵と、この鍵の押鍵動作に伴って上下方向に移動する操作突起部と、前記鍵盤シャーシに前記鍵の前後方向に変位可能に設けられた本体部、この本体部に湾曲して設けられ、前記操作突起部が接触して前記本体部を変位させる第1突起部、および前記鍵が相対的に弱く押鍵されたときに前記操作突起部の先端部が当接して乗り越え、かつ前記押鍵時よりも相対的に強く押鍵されたときに前記操作突起部の前記先端部が当接せずに通過する第2突起部を有する鍵荷重制動部材と、を備えていることを特徴とする鍵盤装置である。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の鍵盤装置において、前記鍵が押鍵されたときに、前記操作突起部の前記先端部が前記鍵荷重制動部材の前記第1突起部に接触して、前記本体部を前記操作突起部の上下動に追従させて前記鍵の前後方向に変位させ、更に前記操作突起部の前記先端部を前記第2突起部に当接させ、
前記押鍵時よりも強く押鍵されたときは、前記操作突起部の前記先端部が前記本体部を当該本体部の慣性力で前記鍵の前後方向に大きく変位させ、更に前記操作突起部の前記先端部を前記第2突起部に当接させずに通過させることを特徴とする鍵盤装置である。
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の鍵盤装置において、前記鍵荷重制動部材は、弾性材料で形成されていることを特徴とする鍵盤装置である。
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の鍵盤装置において、前記鍵荷重制動部材の前記本体部には、前記第1突起部よりも前記鍵盤シャーシ側にくびれ部が設けられていることを特徴とする鍵盤装置である。
請求項5に記載の発明は、請求項1〜請求項4のいずれかに記載の鍵盤装置において、前記鍵の押鍵操作に伴って回転し、前記鍵にアクション荷重を付与するハンマー部材を備えていることを特徴とする鍵盤装置である。
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の鍵盤装置において、前記操作突起部は前記鍵と前記ハンマー部材とのいずれか一方に設けられていることを特徴とする鍵盤装置である。