JP2013161027A - 鍵盤装置 - Google Patents

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好典 林
Akihiko Komatsu
昭彦 小松
Shigeru Muramatsu
繁 村松
Hisashi Takeyama
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Abstract

【課題】弱押鍵時にだけ明瞭なクリック感を発生させる。
【解決手段】基部10は、弾性体32を介して軸支部Jの軸部31に弾性的に軸支される。押圧駆動力の方向に作用した荷重により弾性体32が弾性変形して基部10の回動中心位置C0が偏心し、それに応じて可動係合部15の先端P3の移動軌跡も変化する。押鍵行程においては、ハンマ体HMの慣性力の作用により、押圧駆動力の大きさに応じて実際の回動中心位置C0の偏心量が変化する。先端P3の押鍵行程における移動軌跡は、弱押鍵時には曲線L1を辿り、強押鍵時には曲線L2を辿る。先端P3が曲線L1を辿るときは固定係合部26に当接・接触して固定係合部26を乗り越え、押鍵に対する反力が一時的に増加して、押鍵感触におけるクリック感が生じる。先端P3が曲線L2を辿るときは固定係合部26に当接することがなくクリック感が生じない。
【選択図】図1

Description

本発明は、押鍵動作に慣性を与えるハンマ体を有した鍵盤装置に関する。
従来、押鍵動作に慣性を与えるために、アコースティックピアノのハンマに相当するハンマ体を有した鍵盤装置が知られている。また、アコースティックピアノで、押鍵行程においてジャックが抜ける際に生じるクリック感に近いものを実現する工夫がなされたものが知られている。
例えば、特許文献1の装置では、鍵の下面にクリック感付与用の凹部または突起を設けると共に、ハンマ体にはそれに対応する摺接用突起または凹部を設け、押鍵行程において凹部と突起とが摺接するときにクリック感が生じるようになっている。
アコースティックピアノにおいては押鍵の態様は様々であり、ゆっくりとした押鍵(弱押鍵)であれば鍵とハンマとが押鍵行程の全てで当接関係となる。しかし、所定以上の強い(速い)押鍵になると押鍵途中で鍵からハンマが分離し、ハンマが自由に回動していく態様となる場合もある。従って、ジャック抜けの感触は弱押鍵時に生じるが強押鍵時には生じない。
特開平4−166994号公報
しかしながら、特許文献1の装置では、凹部と突起とが押鍵の強さにかかわらず係合するため、強押鍵時にもクリック感が発生し、押鍵感触がアコースティックピアノのものとは異質なものになってしまう。一方、仮に強押鍵時のクリック感を回避するためにクリック発生機構の作用を弱めに設計すると、弱押鍵時のクリック感が不明瞭となってしまう。
本発明は上記従来技術の問題を解決するためになされたものであり、その目的は、弱押鍵時にだけ明瞭なクリック感を発生させることができる鍵盤装置を提供することにある。
上記目的を達成するために本発明の請求項1の鍵盤装置は、軸支部(J)を有する楽器本体(20)と、押鍵操作により鍵回動軸(27)を中心に回動する鍵(K)と、可動係合部(15)及び被駆動部(12a)を有し、前記鍵に対応して設けられ、前記楽器本体の前記軸支部に回動自在に弾性的に軸支され、押鍵操作により前記対応する鍵に前記被駆動部が押圧駆動されることで回動して押鍵操作に慣性を与えるハンマ体(HM)と、前記ハンマ体の前記可動係合部に対応して設けられ、前記楽器本体に固定された固定係合部(26)とを有し、前記ハンマ体が往方向に回動する際、前記可動係合部が前記固定係合部に当接し乗り越えたときに押鍵感触におけるクリック感が生じ、押鍵行程においては、前記ハンマ体の慣性力の作用により、前記押圧駆動力の大きさに応じて前記軸支部と前記ハンマ体との間の弾性変形量が異なることで、前記ハンマ体が回動する際の実際の回動中心位置(C0)の偏心量が変化し、前記押圧駆動力の大きさが所定未満の場合は前記可動係合部が前記固定係合部に当接する一方、前記押圧駆動力の大きさが所定以上の場合は前記可動係合部が前記固定係合部に当接しないことを特徴とする。
好ましくは、前記楽器本体の前記軸支部(J)は軸部(31)を有すると共に前記ハンマ体は軸支穴(10a)を有し、前記ハンマ体の前記軸支穴が前記軸支部の前記軸部に弾性体(32)を介して支持される(請求項2)。
好ましくは、前記楽器本体の前記軸支部(J)は軸支穴(30a)を有すると共に前記ハンマ体は軸部(19)を有し、前記ハンマ体の前記軸部が前記軸支部の前記軸支穴に弾性体(33)を介して支持される(請求項3)。
好ましくは、押鍵行程と離鍵行程とで前記回動中心位置が同じ偏心量にて前記可動係合部が前記固定係合部に当接する場合を比較して、押鍵行程のときよりも離鍵行程のときの方が、前記可動係合部が前記固定係合部を乗り越える際の負荷が小さくなるように、側面視における前記可動係合部と前記固定係合部との互いの当接する面の角度が設定されている(請求項4)。
上記目的を達成するために本発明の請求項5の鍵盤装置は、鍵側係合部(15)が設けられたハンマ駆動部(28)を有し、押鍵操作により回動する鍵(K)と、被駆動部(36)を有し、前記鍵に対応して設けられ、対応する鍵の前記ハンマ駆動部によって前記被駆動部が押圧駆動されることで回動して押鍵動作に慣性を与えるハンマ体(HM)とを有し、押鍵行程において、前記ハンマ駆動部と前記被駆動部とが摺動し得るよう構成され、前記被駆動部は、ハンマ側係合部(26)が設けられ且つ前記ハンマ体の本体(10)に対して位置が固定された固定部(39)と、前記ハンマ駆動部によって直接に駆動される摺接面(37a)を持つ摺接受け部(37)とを有し、前記摺接受け部は、前記固定部に対して弾性体(38)を介して固着され、前記ハンマ駆動部から押圧駆動力を受けて前記弾性体の弾性変形により前記固定部に対する前記摺接面の位置が変化するように構成され、前記ハンマ駆動部が前記被駆動部に対して摺動しつつ前記ハンマ体が往方向に回動する際、前記押圧駆動力の方向において前記鍵側係合部が前記ハンマ側係合部と干渉して前記鍵側係合部が前記ハンマ側係合部を乗り越えたときに押鍵感触におけるクリック感が生じ、押鍵行程においては、前記ハンマ体の慣性力の作用により、前記押圧駆動力の大きさに応じて前記弾性体の弾性変形量が異なることで、前記押圧駆動力の方向における前記ハンマ側係合部に対する前記鍵側係合部の位置が異なり、前記押圧駆動力の大きさが所定未満の場合は前記鍵側係合部が前記ハンマ側係合部に干渉する一方、前記押圧駆動力の大きさが所定以上の場合は前記鍵側係合部が前記ハンマ側係合部に干渉しないことを特徴とする。
好ましくは、前記押圧駆動力の方向における前記鍵側係合部の位置が押鍵行程と離鍵行程とで同じ状態で前記鍵側係合部が前記ハンマ側係合部に干渉する場合を比較して、押鍵行程のときよりも離鍵行程のときの方が、前記鍵側係合部が前記ハンマ側係合部を乗り越える際の負荷が小さくなるように、側面視における前記鍵側係合部と前記ハンマ側係合部との互いの当接する面の角度が設定されている(請求項6)。
なお、上記括弧内の符号は例示である。
本発明の請求項1、5によれば、弱押鍵時にだけ明瞭なクリック感を発生させることができる。
請求項4、6によれば、離鍵行程における違和感を抑制することができる。
本発明の第1の実施の形態に係る鍵盤装置の1つの鍵に着目した要部の側面視による模式図(図(a))、ハンマ体の基部周辺の拡大図(図(b))、図1(b)のA−A線に沿う断面図である。 押鍵行程における弱押鍵時、強押鍵時の押鍵ストロークと押鍵反力との関係を示す図である。 第2の実施の形態におけるハンマ体の基部周辺の拡大図(図(a))、図3(a)のB−B線に沿う断面図(図(b))、可動係合部及び固定係合部の関係を示す拡大図(図(c))である。 第3の実施の形態におけるハンマ体の基部周辺の拡大図(図(a))、被駆動部の周辺の拡大側面図(図(b))、正面図(図(c))である。 第4の実施の形態における被駆動部の周辺の拡大側面図、正面図である。
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
(第1の実施の形態)
図1(a)は、本発明の第1の実施の形態に係る鍵盤装置の1つの鍵に着目した要部の側面視による模式図である。本鍵盤装置は並列配置された複数の鍵Kとそれらに対応するハンマ体HMとを有し、電子鍵盤楽器に好適である。本発明に関し、鍵Kには白鍵及び黒鍵が該当するが、それらの構成、及びそれらに対応する構成要素の構成は基本的に同様である。以降、図1(a)の右方を前方とする。
本鍵盤装置は棚板やシャーシ等でなる楽器本体20を有する(一部のみ図示)。楽器本体20の後部上部22にハンマ上限ストッパ24が配設され、楽器本体20の後部下部23にハンマ下限ストッパ25が配設される。鍵Kは、押鍵操作により鍵回動軸27を中心に回動(揺動)自在に配設される。鍵回動軸27は楽器本体20に軸支されている。鍵Kの前部にはアクチュエータ28が垂下突設されている。
ハンマ体HMは対応する鍵Kの下方に配置される。ハンマ体HMは樹脂等でなる基部10を本体として有する。楽器本体20には支持部30が突設され、支持部30の上部に軸支部Jが構成されている。ハンマ体HMは軸支部Jに回動自在に軸支され、対応する鍵Kの押鍵操作によって回動中心位置C0を中心に回動(揺動)する。詳細は後述するように、軸支部Jは基部10を弾性的に軸支しており、軸支部Jと基部10との間の弾性変形量が異なることで、ハンマ体HMが回動する際の実際の回動中心位置C0が偏心(変化)し得る。
基部10からは、後方に延びる後方延設部13と前方に延びる前方延設部12とが設けられている。ハンマ体HMは、後方延設部13の自由端部に質量集中部14を有し、主に質量集中部14の質量により図1(a)の反時計方向に常に付勢されている。ハンマ体HMの前方延設部12の前部が、押鍵操作により鍵Kのアクチュエータ28から押圧駆動力を受ける被駆動部12aとなる。
非押鍵状態では、ハンマ体HMはその自重により後方延設部13がハンマ下限ストッパ25に当接しており、鍵K及びハンマ体HMは図1(a)で示される初期位置(レスト位置)に位置する。押鍵操作されると、鍵Kのアクチュエータ28が被駆動部12aを駆動し、ハンマ体HMが図1(a)の時計方向に回動して押鍵動作に慣性を与える。ハンマ体HMの後方延設部13がハンマ上限ストッパ24に当接すると、鍵K及びハンマ体HMの回動終了位置(エンド位置)が規制される。なお、被駆動部12aに摩擦発生部材を配設してもよい。楽器本体20の前半部21に固定係合部26が固定されている。
図1(b)は、ハンマ体HMの基部10周辺の拡大図である。図1(c)は、図1(b)のA−A線に沿う断面図である。
支持部30の上部において、軸支部Jは鍵Kの並び方向に平行な軸部31を有する。軸部31の周りには弾性体32が配設され、弾性体32の周りに基部10の軸支穴10aが嵌っている。すなわち、基部10は、弾性体32を介して軸部31に弾性的に軸支される。弾性体32は、例えば高分子材料で構成されるが、弾性を有すればよく、ゴム、スポンジやバネでもよい。
軸支穴10aは、側面視で長穴に形成され、弾性体32の側面視形状もそれに対応している(図1(b))。押鍵行程において、弾性体32は主に上部前部の領域が縮むことになるため、当該領域の肉部を厚くとっている。しかし、当該領域の十分な弾性変形が確保されればよく、軸支穴10a、弾性体32の側面視形状は問わず、円形、円環型でもよい。
固定係合部26は、ゴム等の弾性を有する部材でなり、上下方向における鍵Kとハンマ体HMとの間に配置される。前後方向においては、固定係合部26は、アクチュエータ28と軸部31との間に位置する。基部10に可動係合部15が設けられている。可動係合部15は基部10と一体に形成されるが、別体でもよい。可動係合部15は弾性を有する。
非押鍵状態における可動係合部15の先端P3は、軸部31よりも上方且つ前方である。押鍵操作により被駆動部12aがアクチュエータ28から受ける押圧駆動力により、基部10には、軸部31を中心とした図1(b)の時計方向の回転モーメントが作用すると共に、押圧駆動力の方向(ほぼ下方)への荷重が作用する。
その回転モーメントによって基部10が押鍵方向に対応した往方向(時計方向)に回動することになる。その際、押圧駆動力の方向に作用した荷重によって、弾性体32の上部からやや前部にかけての領域(「主変形領域R1」と呼称する)が縮小する方向に弾性変形する。その結果、往方向に回動するときの基部10の回動中心位置C0が下方からやや後方に偏心することになる。押鍵行程において回動中心位置C0が変化するということは、可動係合部15の先端P3の移動軌跡もそれに応じて変化することを意味する。
また、ハンマ体HMは比較的大きな慣性を有している。そのため、主変形領域R1の弾性変形量は、鍵Kの押鍵ストローク位置が同じであっても、押鍵の強さ(速さ)によって異なる。例えば弱押鍵時には、ハンマ体HMの慣性の影響を大きく受けないので、主変形領域R1の弾性変形量は小さく、鍵Kの押鍵ストローク位置にほぼ応じた回動位置にハンマ体HMは回動変位する。
一方、強押鍵時には、ハンマ体HMの慣性の影響を大きく受けるので、押鍵行程においてハンマ体HMが十分に回動する前に主変形領域R1が大きく縮む結果、回動中心位置C0の偏心量は大きくなる。
図1(b)に示すように、可動係合部15及び固定係合部26はそれぞれ、側面視において(鍵Kの並び方向からみて)先細の三角形の形状をしている。固定係合部26は下方に尖り、可動係合部15に上方に尖って、互いにオーバーラップしている。すなわち、軸部31の軸中心から可動係合部15の先端P3までの距離は、回動中心位置C0の偏心によって変化する。
非押鍵状態においては、軸部31の軸中心から固定係合部26の先端までの距離(一定)よりも軸部31の軸中心から可動係合部15の先端P3までの距離の方が長い。しかし、上述したように、押鍵強さによって回動中心位置C0の偏心量が変わるため、先端P3の移動軌跡が変わり、特に、固定係合部26に先端P3が最接近するときの軸部31の軸中心から可動係合部15の先端P3までの距離が押鍵強さによって変わる。
ここで、アコースティックピアノにおいて、クリック感が生じる場合と生じない場合の境界となる押鍵速度(あるいは押圧駆動力の大きさ)を「所定値」とする。本実施の形態では、所定値未満の押圧駆動力となる押鍵を弱押鍵とし、所定値以上の押圧駆動力となる押鍵を強押鍵であるとする。
従って、弱押鍵は、非常にゆっくりとした速度(2mm/sec程度)での押鍵であり、アコースティックピアノでいえば、押鍵行程においてジャックが抜ける際にクリック感が生じるような押鍵態様である。強押鍵は、アコースティックピアノでいえば、押鍵途中で鍵からハンマが分離し、ハンマが自由に回動していくような押鍵態様である。
図1(b)に示すように、本実施の形態では、押鍵行程における可動係合部15の先端P3の移動軌跡は、弱押鍵時には曲線L1を辿り、強押鍵時には曲線L2を辿る。そして、押鍵行程において先端P3が曲線L1を辿るとき、先端P3は固定係合部26に当接(干渉ないし接触)し、弾性体32の一時的な弾性変形(厳密には可動係合部15及び固定係合部26の変形も加わる)の変化によって固定係合部26を乗り越える。
可動係合部15が固定係合部26を乗り越えるときに、負荷、すなわち押鍵に対する反力が一時的に増加する。それが押鍵感触におけるクリック感として演奏者に感じられる。
一方、押鍵行程において可動係合部15の先端P3が曲線L2を辿るときには、先端P3は曲線L1に比べ軸部31に近い内側の領域を通り、固定係合部26に当接することなく通り過ぎる。従って、クリック感を感じることはない。このように可動係合部15と固定係合部26との位置関係が設定されている。
図2(a)、(b)は、押鍵行程における弱押鍵時、強押鍵時の押鍵ストロークと押鍵反力との関係を示す図である。弱押鍵時には、押鍵途中で反力がコブ状に一時的に増加する(図2(a))。一方、強押鍵時の押鍵初期には、ハンマ体HMの慣性質量が反力として作用するため初期反力が大きいが、その後に一時的に反力が大きく増加することはない(図)2(b)。
本実施の形態によれば、押鍵行程においては、ハンマ体HMの慣性力の作用により、押圧駆動力の大きさに応じて実際の回動中心位置C0の偏心量が変化する。そして、押圧駆動力の大きさが所定値未満の場合は可動係合部15が固定係合部26に当接する一方、押圧駆動力の大きさが所定値以上の場合は可動係合部15が固定係合部26に当接しない。これにより、強押鍵時にはクリック感を生じさせることなく、弱押鍵時にだけ明瞭なクリック感を発生させることができ、押鍵感触がアコースティックピアノのものに近くなる。
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態では、第1の実施の形態に対してハンマ体HMが軸支部Jに軸支される構成が異なり、軸部と軸支穴との関係が逆になる。その他の構成については変わりはない。
図3(a)は、第2の実施の形態におけるハンマ体HMの基部10周辺の拡大図である。図3(b)は、図3(a)のB−B線に沿う断面図である。
図3(a)、(b)に示すように、支持部30の上部において、軸支部Jは軸支穴30aを有する。ハンマ体HMの基部10には、鍵Kの並び方向に平行な軸部19が左右に突設されている。軸部19と軸支穴30aとの間に弾性体33が配設される。すなわち、基部10は、弾性体33を介して軸部19に弾性的に軸支される。弾性体33の材質は第1の実施の形態における弾性体32と同様である。
軸支穴30aは、側面視で長穴に形成され、弾性体33の側面視形状もそれに対応している(図3(a))。押鍵行程において、弾性体33は主に下部後部の領域が縮むことになるため、当該領域の肉部を厚くとっている。しかし、当該領域の十分な弾性変形が確保されればよく、軸支穴30a、弾性体33の側面視形状は問わず、円形、円環型でもよい。
押鍵操作により被駆動部12aがアクチュエータ28から受ける押圧駆動力により、基部10には、軸部19を中心とした図3(a)の時計方向の回転モーメントが作用すると共に、押圧駆動力の方向(ほぼ下方)への荷重が作用する。
その回転モーメントによって基部10が押鍵方向に対応した往方向(時計方向)に回動することになる。その際、押圧駆動力の方向に作用した荷重によって、弾性体33の下部からやや後部にかけての領域(「主変形領域R2」と呼称する)が縮小する方向に弾性変形する。その結果、第1の実施の形態と同様に、往方向に回動するときの基部10の回動中心位置C0が下方からやや後方に偏心することになる。
ハンマ体HMが有する慣性力の作用によって、主変形領域R2の弾性変形量は強押鍵時により大きく、回動中心位置C0の偏心量は大きくなる点は、第1の実施の形態と同様である。従って、押鍵行程における可動係合部15の先端P3の移動軌跡も、図1(b)に示すのと同様に、弱押鍵時には曲線L1を辿り、強押鍵時には曲線L2を辿る。
本実施の形態によれば、強押鍵時にはクリック感を生じさせることなく、弱押鍵時にだけ明瞭なクリック感を発生させることに関し、第1の実施の形態と同様の効果を奏することができる。
ところで、第1、第2の実施の形態において、可動係合部15と固定係合部26の形状は例示した形状に限定されず、可動係合部15が固定係合部26を乗り越えることが可能な形状であればよい。可動係合部15と固定係合部26のうち、いずれか一方の先端が他方の面に当接するという関係でもよい。
例えば、図3(c)に示すように、可動係合部15の先端P3が、押鍵、離鍵の双方において、固定係合部26の当接面26a、26bに摺接する構成が考えられる。しかし、押鍵行程では可動係合部15または固定係合部26の一方の先端が他方の当接面に当接し、離鍵行程では可動係合部15または固定係合部26の他方の先端が一方の当接面に当接するといった、先端と面との当接関係が往復で逆になる構成であってもよい。
ところで、離鍵行程においてはクリック感は必要でない。そこで、離鍵行程(ハンマ体HMの復行程)において、円滑な乗り越えを実現するためには、例えば図3(c)に例示するように構成する。すなわち、押鍵行程で対向する可動係合部15の当接面15aと固定係合部26の当接面26aとが成す角度を、離鍵行程で対向する可動係合部15の当接面15bと固定係合部26の当接面26bとが成す角度よりも小さくするのがよい。
これにより、押鍵行程と離鍵行程とで回動中心位置C0が同じ偏心量にて可動係合部15が固定係合部26に当接する場合を比較して、押鍵行程のときよりも離鍵行程のときの方が、乗り越える際の負荷が小さくなる。従って、離鍵行程における違和感を抑制することができる。
(第3の実施の形態)
第1、第2の実施の形態では、ハンマ体HMの実際の回動中心位置C0が偏心するように構成した。これに対し本発明の第3の実施の形態では、回動中心位置は偏心しないが、アクチュエータ28によって駆動される被駆動部の面の位置が弾性的に変化することを利用して、可動係合部15と固定係合部26との係合関係を変化させる。
図4(a)は、第3の実施の形態におけるハンマ体HMの基部10周辺の拡大図である。ハンマ体HMの基部10はハンマ回動軸34にて楽器本体20に軸支されている。前方延設部12の前部が、押鍵操作により鍵Kのアクチュエータ28から押圧駆動力を受ける被駆動部36となる。その他の構成については第1の実施の形態と変わりはない。
図4(b)、(c)はそれぞれ、被駆動部36の周辺の拡大側面図、正面図である。被駆動部36は、最下部の固定部39、弾性体38、及び最上部の摺接受け部37を有する。固定部39の上に弾性体38が固着され、弾性体38の上に摺接受け部37が固着される。摺接受け部37の上面が、アクチュエータ28によって直接に駆動される摺接面37aとなる。固定部39は、基部10に対して固定的な部分である。
図4(b)、(c)に示すように、アクチュエータ28からは、鍵側係合部として、上方に凸の可動係合部15が左右に突設されている。一方、固定部39からは、左右に突設された腕部35が上方に延び、その上部に下方に凸の固定係合部26が、ハンマ側係合部として設けられている。可動係合部15及び固定係合部26の材質は、第1の実施の形態のものと同様である。
腕部35が設けられる前後方向の位置は、アクチュエータ28の摺動可能範囲、すなわち、レスト位置からエンド位置までの範囲に対応する範囲内である。その範囲のうち特に、アコースティックピアノで押鍵行程においてジャック抜けによりクリック感が生じるような押鍵ストローク位置に相当する位置である。非押鍵状態においては、正面視(図4(c))において可動係合部15と固定係合部26とは上下方向にオーバーラップしている。弾性体38が弾性変形すると可動係合部15が下がるため、弾性変形量がある程度大きくなると両者はオーバーラップしなくなる。
押鍵操作により被駆動部36がアクチュエータ28から受ける押圧駆動力により、被駆動部36には押圧駆動力の方向(ほぼ下方)への荷重が作用すると共に、基部10には、ハンマ回動軸34を中心とした図4(a)の時計方向の回転モーメントが作用する。
その回転モーメントによって基部10が押鍵方向に対応した往方向(時計方向)に回動することになる。その際、押圧駆動力の方向に作用した荷重によって、弾性体38が縮小する方向に弾性変形する。
押鍵行程において、アクチュエータ28は摺接面37aに対してハンマ回動軸34に近づく方向(図4(a)の左方)に移動し、弱押鍵であれば全行程で摺動関係となる。摺接受け部37は、押圧駆動力を受けて弾性体38の弾性変形(縮小)により下方に沈み、固定部39に対する摺接面37aの位置が下方に変位する。それに伴い可動係合部15の位置も下方に変位する。
ハンマ体HMが有する慣性力の作用によって、弾性体38の弾性変形量は強押鍵時により大きく、可動係合部15の変位量は大きくなる。従って、押鍵行程における可動係合部15の先端の移動軌跡は、弱押鍵時よりも強押鍵時の方が下方の位置を辿る。所定値以上の押圧駆動力となる強押鍵時に可動係合部15が固定係合部26に干渉しないようになっている。
押鍵行程において可動係合部15が固定係合部26と干渉(当接ないし接触)して可動係合部15が固定係合部26を乗り越えたときに押鍵感触におけるクリック感が生じる。しかし、可動係合部15が固定係合部26に干渉しないで通り過ぎたときはクリック感が生じない。押鍵行程における弱押鍵時、強押鍵時の押鍵ストロークと押鍵反力との関係は、図2(a)、(b)に示したのと同様である。
本実施の形態によれば、強押鍵時にはクリック感を生じさせることなく、弱押鍵時にだけ明瞭なクリック感を発生させることに関し、第1の実施の形態と同様の効果を奏することができる。
ところで、第3の実施の形態においては、強押鍵時や離鍵時を含む往復の全行程において、被駆動部36からアクチュエータ28が離れないように連結し、アクチュエータ28が摺接面37aに常時当接するように構成してもよい。
(第4の実施の形態)
第3の実施の形態では、固定部39に腕部35を突設して、可動係合部15と固定係合部26とをアクチュエータ28の左右両側の位置で干渉させた。しかし、これとは関係を逆にし、可動係合部15と固定係合部26とを固定部39の左右両側の位置で干渉させるようにしてもよい。その他の構成は第3の実施の形態と同様である。
図5(a)、(b)はそれぞれ、第4の実施の形態における被駆動部36の周辺の拡大側面図、正面図である。
アクチュエータ28からは左右に突設された腕部35が下方に延び、その下部に上方に凸の可動係合部15が設けられている。一方、固定部39には、下方に凸の固定係合部26が左右に突設されている。可動係合部15及び固定係合部26の材質は、第3の実施の形態のものと同様である。
腕部35が設けられる前後方向の位置は、アクチュエータ28の摺動可能範囲、すなわち、レスト位置からエンド位置までの範囲に対応する範囲であって、アコースティックピアノでクリック感が生じるような押鍵ストローク位置に相当する位置に設定されている。非押鍵状態においては、正面視(図5(b))において可動係合部15と固定係合部26とはオーバーラップしている。弾性体38が弾性変形すると可動係合部15が下がるため、弾性変形量がある程度大きくなると両者はオーバーラップしなくなる。
押鍵行程における可動係合部15及び固定係合部26の係合関係は第3の実施の形態と同様である。従って、本実施の形態では、第3の実施の形態と同様の効果を奏することができる。
なお、第3、第4の実施の形態において、押鍵行程のときよりも離鍵行程のときの方が、可動係合部15が固定係合部26を乗り越える際の負荷が小さくなるようにして、離鍵行程における違和感を抑制するのが望ましい。そのために、図3(c)で例示した可動係合部15が固定係合部26の互いの当接する面の角度の設定を第3、第4の実施の形態にも適用するのがよい。
以上、本発明をその好適な実施形態に基づいて詳述してきたが、本発明はこれら特定の実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の様々な形態も本発明に含まれる。上述の実施形態の一部を適宜組み合わせてもよい。
K 鍵、 HM ハンマ体、 J 軸支、 C0 回動中心位置、 10 基部(本体)、 10a、30a 軸支穴、 12a、36 被駆動部、 15 可動係合部(鍵側係合部)、 32、33、38 弾性体、 19、31 軸部、 20 楽器本体、 26 固定係合部(ハンマ側係合部)、 27 鍵回動軸、 28 アクチュエータ(ハンマ駆動部)、 37 摺接受け部、 37a 摺接面、 39 固定部

Claims (6)

  1. 軸支部を有する楽器本体と、
    押鍵操作により鍵回動軸を中心に回動する鍵と、
    可動係合部及び被駆動部を有し、前記鍵に対応して設けられ、前記楽器本体の前記軸支部に回動自在に弾性的に軸支され、押鍵操作により前記対応する鍵に前記被駆動部が押圧駆動されることで回動して押鍵操作に慣性を与えるハンマ体と、
    前記ハンマ体の前記可動係合部に対応して設けられ、前記楽器本体に固定された固定係合部とを有し、
    前記ハンマ体が往方向に回動する際、前記可動係合部が前記固定係合部に当接し乗り越えたときに押鍵感触におけるクリック感が生じ、
    押鍵行程においては、前記ハンマ体の慣性力の作用により、前記押圧駆動力の大きさに応じて前記軸支部と前記ハンマ体との間の弾性変形量が異なることで、前記ハンマ体が回動する際の実際の回動中心位置の偏心量が変化し、前記押圧駆動力の大きさが所定未満の場合は前記可動係合部が前記固定係合部に当接する一方、前記押圧駆動力の大きさが所定以上の場合は前記可動係合部が前記固定係合部に当接しないことを特徴とする鍵盤装置。
  2. 前記楽器本体の前記軸支部は軸部を有すると共に前記ハンマ体は軸支穴を有し、前記ハンマ体の前記軸支穴が前記軸支部の前記軸部に弾性体を介して支持されたことを特徴とする請求項1記載の鍵盤装置。
  3. 前記楽器本体の前記軸支部は軸支穴を有すると共に前記ハンマ体は軸部を有し、前記ハンマ体の前記軸部が前記軸支部の前記軸支穴に弾性体を介して支持されたことを特徴とする請求項1記載の鍵盤装置。
  4. 押鍵行程と離鍵行程とで前記回動中心位置が同じ偏心量にて前記可動係合部が前記固定係合部に当接する場合を比較して、押鍵行程のときよりも離鍵行程のときの方が、前記可動係合部が前記固定係合部を乗り越える際の負荷が小さくなるように、側面視における前記可動係合部と前記固定係合部との互いの当接する面の角度が設定されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の鍵盤装置。
  5. 鍵側係合部が設けられたハンマ駆動部を有し、押鍵操作により回動する鍵と、
    被駆動部を有し、前記鍵に対応して設けられ、対応する鍵の前記ハンマ駆動部によって前記被駆動部が押圧駆動されることで回動して押鍵動作に慣性を与えるハンマ体とを有し、
    押鍵行程において、前記ハンマ駆動部と前記被駆動部とが摺動し得るよう構成され、
    前記被駆動部は、ハンマ側係合部が設けられ且つ前記ハンマ体の本体に対して位置が固定された固定部と、前記ハンマ駆動部によって直接に駆動される摺接面を持つ摺接受け部とを有し、
    前記摺接受け部は、前記固定部に対して弾性体を介して固着され、前記ハンマ駆動部から押圧駆動力を受けて前記弾性体の弾性変形により前記固定部に対する前記摺接面の位置が変化するように構成され、
    前記ハンマ駆動部が前記被駆動部に対して摺動しつつ前記ハンマ体が往方向に回動する際、前記押圧駆動力の方向において前記鍵側係合部が前記ハンマ側係合部と干渉して前記鍵側係合部が前記ハンマ側係合部を乗り越えたときに押鍵感触におけるクリック感が生じ、
    押鍵行程においては、前記ハンマ体の慣性力の作用により、前記押圧駆動力の大きさに応じて前記弾性体の弾性変形量が異なることで、前記押圧駆動力の方向における前記ハンマ側係合部に対する前記鍵側係合部の位置が異なり、前記押圧駆動力の大きさが所定未満の場合は前記鍵側係合部が前記ハンマ側係合部に干渉する一方、前記押圧駆動力の大きさが所定以上の場合は前記鍵側係合部が前記ハンマ側係合部に干渉しないことを特徴とする鍵盤装置。
  6. 前記押圧駆動力の方向における前記鍵側係合部の位置が押鍵行程と離鍵行程とで同じ状態で前記鍵側係合部が前記ハンマ側係合部に干渉する場合を比較して、押鍵行程のときよりも離鍵行程のときの方が、前記鍵側係合部が前記ハンマ側係合部を乗り越える際の負荷が小さくなるように、側面視における前記鍵側係合部と前記ハンマ側係合部との互いの当接する面の角度が設定されていることを特徴とする請求項5記載の鍵盤装置。
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