本発明を具体的に説明する前に、本明細書で使用するいくつかの用語を定義又は説明する。
本明細書において、フッ素樹脂とは、部分結晶性フルオロポリマーであり、フッ素ゴムではなく、フルオロプラスチックスである。フッ素樹脂は、融点を有し、熱可塑性を有するが、溶融加工性であっても、非溶融加工性であってもよい。
本明細書において、溶融加工性とは、押出機および射出成形機などの従来の加工機器を用いて、ポリマーを溶融して加工することが可能であることを意味する。従って、溶融加工性のフッ素樹脂は、後述する測定方法により測定されるメルトフローレートが0.01〜100g/10分であることが通常である。
本明細書において、パーフルオロ樹脂とは、ポリマーの主鎖を構成する炭素原子に結合した一価の原子が全てフッ素原子であるパーフルオロポリマーからなる樹脂である。但し、ポリマーの主鎖を構成する炭素原子には、一価の原子(フッ素原子)の他、アルキル基、フルオロアルキル基、アルコキシ基、フルオロアルコキシ基等の基が結合していてもよい。ポリマーの主鎖を構成する炭素原子に結合しているフッ素原子のいくつかが塩素原子で置換されていてもよい。ポリマー末端基、すなわち、ポリマー鎖を終わらせる基にフッ素原子以外の他の原子が存在してもよい。ポリマー末端基は、大抵、重合反応のために使用した重合開始剤又は連鎖移動剤に由来する基である。
本明細書において、フッ素ゴムとは、非晶質フルオロポリマーである。「非晶質」とは、フルオロポリマーの示差走査熱量測定〔DSC〕(昇温温度10℃/分)あるいは示差熱分析〔DTA〕(昇温速度10℃/分)において現われた融解ピーク(ΔH)の大きさが4.5J/g以下であることをいう。フッ素ゴムは、架橋することにより、エラストマー特性を示す。エラストマー特性とは、ポリマーを延伸することができ、ポリマーを延伸するのに必要とされる力がもはや適用されなくなったときに、その元の長さを保持できる特性を意味する。
本明細書において、部分フッ素化ゴムとは、フルオロモノマー単位を含み、全重合単位に対するパーフルオロモノマー単位の含有量が90モル%未満のフルオロポリマーであって、20℃以下のガラス転移温度を有し、4.5J/g以下の融解ピーク(ΔH)の大きさを有するフルオロポリマーである。
本明細書において、パーフルオロゴムとは、全重合単位に対するパーフルオロモノマー単位の含有量が90モル%以上のフルオロポリマーであって、20℃以下のガラス転移温度を有し、4.5J/g以下の融解ピーク(ΔH)の大きさを有するフルオロポリマーであり、更に、フルオロポリマーに含まれるフッ素原子の濃度が71質量%以上であるポリマーである。本明細書において、フルオロポリマーに含まれるフッ素原子の濃度は、フルオロポリマーを構成する各モノマーの種類と含有量より、フルオロポリマーに含まれるフッ素原子の濃度(質量%)を計算により求めるものである。
本明細書において、パーフルオロモノマーとは、分子中に炭素原子−水素原子結合を含まないモノマーである。上記パーフルオロモノマーは、炭素原子及びフッ素原子の他、炭素原子に結合しているフッ素原子のいくつかが塩素原子で置換されたモノマーであってもよく、炭素原子の他、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子を有するものであってもよい。上記パーフルオロモノマーとしては、全ての水素原子がフッ素原子に置換されたモノマーであることが好ましい。上記パーフルオロモノマーには、架橋部位を与えるモノマーは含まれない。
架橋部位を与えるモノマーとは、硬化剤により架橋を形成するための架橋部位をフルオロポリマーに与える架橋性基を有するモノマー(キュアサイトモノマー)である。
本明細書において、ポリテトラフルオロエチレン〔PTFE〕は、全重合単位に対するテトラフルオロエチレンの含有量が99モル%以上であるフルオロポリマーであることが好ましい。
本明細書において、フッ素樹脂(但し、ポリテトラフルオロエチレンを除く)及びフッ素ゴムは、いずれも、全重合単位に対するテトラフルオロエチレンの含有量が99モル%未満であるフルオロポリマーであることが好ましい。
本明細書において、フルオロポリマーを構成する各モノマーの含有量は、NMR、FT−IR、元素分析、蛍光X線分析をモノマーの種類によって適宜組み合わせることで算出できる。
次に、本発明を具体的に説明する。
本発明の製造方法は、フルオロポリマー粒子(a)を含む水性分散液を製造する工程(1)及びフルオロポリマー粒子(b)を含む水性分散液を製造する工程(2)を含む。
工程(1)では、含フッ素界面活性剤及び重合開始剤の存在下、フルオロモノマーの重合を水性媒体中で行うことによりフルオロポリマー粒子(a)を含む水性分散液を製造する。
フルオロポリマー粒子(a)は、体積平均粒子径が0.1〜10nmである。体積平均粒子径が上記範囲にあるフルオロポリマー粒子を工程(2)に供することによって、フルオロポリマーを含む水性分散液を高い生産性で製造することができる。フルオロポリマー粒子(a)の体積平均粒子径は、0.5nm以上であることが好ましく、1.0nm以上であることがより好ましく、8nm以下であることが好ましく、5nm以下であることがより好ましく、3nm以下であることが更に好ましい。
上記体積平均粒子径は、動的光散乱法により測定する。重合により得られた水性分散液を、純水で10倍希釈し、粒子径測定用の水性分散液を作成し、ELSZ−1000S(大塚電子株式会社製)を使用して25℃、積算70回にて測定する。溶媒:水の屈折率1.3328、溶媒の粘度は0.8878とする。体積分布の平均値を粒子径とする。
フルオロポリマー粒子(a)は、当量重量(EW)が6,000以上であるフルオロポリマーからなる。すなわち、フルオロポリマー粒子(a)は、フッ素化アイオノマーの粒子とは異なる。当量重量(EW)は、イオン交換基1当量当たりの乾燥重量であり、フルオロポリマーの当量重量(EW)が大きいことは、フルオロポリマーを構成するモノマーにイオン性基を有するモノマーがほとんど含まれないことを意味する。上記フルオロポリマーは、イオン性基を有するモノマーがほとんど含まれないにも関わらず、驚くべきことに極めて小さな体積平均粒子径を有する。当量重量(EW)は、10,000以上であることがより好ましく、上限は特に限定されないが、50,000,000以下であることが好ましい。
上記当量重量は、次の方法により測定することができる。
フルオロポリマー粒子(a)を含む水性分散液を、塩酸あるいは硝酸を用いてフルオロポリマーを凝析させる。凝析したフルオロポリマーは、洗浄液が中性になるまで純水にて洗浄を行なった後、水分がなくなるまで110℃以下で真空加熱乾燥させる。乾燥させたフルオロポリマーのおよそ0.3gを、25℃の飽和NaCl水溶液30mLに浸漬し、攪拌しながら30分間放置する。次いで、飽和NaCl水溶液中のプロトンを、フェノールフタレインを指示薬として0.01N水酸化ナトリウム水溶液を用いて中和滴定する。中和後に得られたイオン交換基の対イオンがナトリウムイオンの状態となっているフルオロポリマーを、純水ですすぎ、さらに真空乾燥して秤量する。中和に要した水酸化ナトリウムの物質量をM(mmol)、イオン交換基の対イオンがナトリウムイオンのフルオロポリマーの質量をW(mg)とし、下記式より当量重量EW(g/eq)を求める。
EW=(W/M)−22
工程(1)により得られるフルオロポリマー粒子(a)を含む水性分散液は、フルオロポリマー粒子(a)の粒子数が5×1015個/cc以上であることが好ましい。このように粒子数が多いと、重合速度が速くなりフルオロポリマーの生産性が向上する点で有利である。粒子数は、含フッ素界面活性剤の使用量、撹拌速度、フルオロモノマーの投入量等を調整することにより調整することができる。粒子数の下限は1×1017個/ccであることがより好ましく、1×1018個/ccであることが更に好ましい。上限は特に限定されないが、5×1021個/ccであることが好ましい。上記粒子数の測定方法は、後述の実施例における測定方法として説明するとおりである。
工程(1)により得られるフルオロポリマー粒子(a)を含む水性分散液は、固形分濃度が1質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、18質量%であることが更に好ましい。このように固形分濃度が高いと、フルオロポリマー粒子(a)の粒子径が同じであれば、単位水性媒体量に対する粒子数が多くなり、工程(1)での目的であるフルオロポリマー粒子(a)の合成の生産性が向上する。すなわち、工程(2)を行なうために工程(1)を行なうが、工程(2)の生産回数に対して、工程(1)の生産回数を減らすことができる。また、工程(1)で得られる粒子数が多くなるので、工程(2)の生産においても、粒子数を多くすることができ、工程(2)の重合速度を高め、工程(2)の生産性を高めることも可能となる。上限は特に限定されないが、30質量%であることが好ましい。上記固形分濃度の測定方法は、後述の実施例における測定方法として説明するとおりである。
工程(1)において、フルオロモノマーの重合を行うことにより、フルオロポリマー粒子(a)を含む水性分散液が得られる。
フルオロモノマーとしては、二重結合を少なくとも1つ有するものが好ましい。
フルオロモノマーとしては、テトラフルオロエチレン[TFE]、ヘキサフルオロプロピレン[HFP]、クロロトリフルオロエチレン[CTFE]、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン[VDF]、トリフルオロエチレン、フルオロアルキルビニルエーテル、フルオロアルキルエチレン、トリフルオロプロピレン、ペンタフルオロプロピレン、トリフルオロブテン、テトラフルオロイソブテン、ヘキサフルオロイソブテン、一般式(6):CH2=CFRf61(式中、Rf61は炭素数1〜12の直鎖又は分岐したフルオロアルキル基)で表されるフルオロモノマー、及び、架橋部位を与えるモノマーからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
上記フルオロアルキルビニルエーテルとしては、例えば、
一般式(5):CF2=CF−ORf8 (5)
(式中、Rf8は、パーフルオロ有機基を表す。)で表されるフルオロモノマー、
一般式(9):CF2=CF−OCH2−Rf91
(式中、Rf91は、炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基)で表されるフルオロモノマー、
一般式(10):CF2=CFOCF2ORf101
(式中、Rf101は炭素数1〜6の直鎖又は分岐状パーフルオロアルキル基、炭素数5〜6の環式パーフルオロアルキル基、1〜3個の酸素原子を含む炭素数2〜6の直鎖又は分岐状パーフルオロオキシアルキル基である。)で表されるフルオロモノマー、
一般式(11):CF2=CFO(CF2CF(Y)O)m(CF2)nF
(式中、Yはフッ素原子又はトリフルオロメチル基を表す。mは1〜4の整数である。nは1〜4の整数である。)で表されるフルオロモノマー、及び、
一般式(18):CF2=CF−O−(CF2CFY1−O)n−(CFY2)m−A2
(式中、Y1は、フッ素原子、塩素原子又はパーフルオロアルキル基を表す。nは、0〜3の整数を表す。n個のY1は、同一であってもよいし異なっていてもよい。Y2は、フッ素原子又は塩素原子を表す。mは、1〜5の整数を表す。m個のY2は、同一であってもよいし異なっていてもよい。A2は、−SO2Xを表す。Xは、ハロゲン原子を表す。)で表されるフルオロモノマー
からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
本明細書において、上記「パーフルオロ有機基」とは、炭素原子に結合する水素原子が全てフッ素原子に置換されてなる有機基を意味する。上記パーフルオロ有機基は、エーテル酸素を有していてもよい。
一般式(5)で表されるフルオロモノマーとしては、Rf8が炭素数1〜10のパーフルオロアルキル基であるフルオロモノマーが挙げられる。上記パーフルオロアルキル基の炭素数は、好ましくは1〜5である。
一般式(5)におけるパーフルオロ有機基としては、例えば、パーフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロペンチル基、パーフルオロヘキシル基等が挙げられる。
一般式(5)で表されるフルオロモノマーとしては、更に、上記一般式(5)において、Rf8が炭素数4〜9のパーフルオロ(アルコキシアルキル)基であるもの、Rf8が下記式:
(式中、mは、0又は1〜4の整数を表す。)で表される基であるもの、Rf8が下記式:
(式中、nは、1〜4の整数を表す。)で表される基であるもの等が挙げられる。
一般式(5)で表されるフルオロモノマーとしては、なかでも、
一般式(8):CF2=CF−ORf81
(式中、Rf81は、炭素数1〜10のパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるフルオロモノマーが好ましい。Rf81は、炭素数が1〜5のパーフルオロアルキル基であることが好ましい。
フルオロアルキルビニルエーテルとしては、一般式(8)、(10)及び(11)で表されるフルオロモノマーからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
一般式(8)で表されるフルオロモノマーとしては、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)、及び、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)、及び、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)からなる群より選択される少なくとも1種がより好ましい。
一般式(10)で表されるフルオロモノマーとしては、CF2=CFOCF2OCF3、CF2=CFOCF2OCF2CF3、及び、CF2=CFOCF2OCF2CF2OCF3からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
一般式(11)で表されるフルオロモノマーとしては、CF2=CFOCF2CF(CF3)O(CF2)3F、CF2=CFO(CF2CF(CF3)O)2(CF2)3F、及び、CF2=CFO(CF2CF(CF3)O)2(CF2)2Fからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
一般式(18)で表されるフルオロモノマーとしては、CF2=CFOCF2CF2SO2F及びCF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2SO2Fからなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
一般式(6)で表されるフルオロモノマーとしては、Rf61が直鎖のフルオロアルキル基であるフルオロモノマーが好ましく、Rf61が直鎖のパーフルオロアルキル基であるフルオロモノマーがより好ましい。Rf61の炭素数は1〜6であることが好ましい。一般式(6)で表されるフルオロモノマーとしては、CH2=CFCF3、CH2=CFCF2CF3、CH2=CFCF2CF2CF3、CH2=CFCF2CF2CF2H、CH2=CFCF2CF2CF2CF3等が挙げられ、なかでも、CH2=CFCF3で示される2,3,3,3−テトラフルオロプロピレンが好ましい。
フルオロアルキルエチレンとしては、
一般式(7):CH2=CH−(CF2)n−X2
(式中、X2はH又はFであり、nは3〜10の整数である。)で表されるフルオロアルキルエチレンが好ましく、CH2=CH−C4F9、及び、CH2=CH−C6F13からなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましい。
架橋部位を与えるモノマーとしては、
一般式(12):CX3 2=CX3−Rf 121CHR121X4
(式中、X3は、水素原子、フッ素原子又はCH3、Rf 121は、フルオロアルキレン基、パーフルオロアルキレン基、フルオロ(ポリ)オキシアルキレン基又はパーフルオロ(ポリ)オキシアルキレン基、R121は、水素原子又はCH3、X4は、ヨウ素原子又は臭素原子である。)で表されるフルオロモノマー、
一般式(13):CX3 2=CX3−Rf 131X4
(式中、X3は、水素原子、フッ素原子又はCH3、Rf 131は、フルオロアルキレン基、パーフルオロアルキレン基、フルオロポリオキシアルキレン基又はパーフルオロポリオキシアルキレン基、X4は、ヨウ素原子又は臭素原子である。)で表されるフルオロモノマー、
一般式(14):CF2=CFO(CF2CF(CF3)O)m(CF2)n−X5
(式中、mは0〜5の整数、nは1〜3の整数、X5は、シアノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、ヨウ素原子、臭素原子、又は、−CH2Iである。)で表されるフルオロモノマー、及び、
一般式(15):CH2=CFCF2O(CF(CF3)CF2O)m(CF(CF3))n−X6
(式中、mは0〜5の整数、nは1〜3の整数、X6は、シアノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、ヨウ素原子、臭素原子、又は−CH2OHである。)で表されるフルオロモノマー、及び、
一般式(16):CR162R163=CR164−Z−CR165=CR166R167
(式中、R162、R163、R164、R165、R166及びR167、は、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基である。Zは、直鎖又は分岐状で酸素原子を有していてもよい、炭素数1〜18のアルキレン基、炭素数3〜18のシクロアルキレン基、少なくとも部分的にフッ素化している炭素数1〜10のアルキレン基若しくはオキシアルキレン基、又は、
−(Q)p−CF2O−(CF2CF2O)m(CF2O)n−CF2−(Q)p−
(式中、Qはアルキレン基またはオキシアルキレン基である。pは0または1である。m/nが0.2〜5である。)で表され、分子量が500〜10000である(パー)フルオロポリオキシアルキレン基である。)で表されるモノマー
からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
X3は、フッ素原子であることが好ましい。Rf121及びRf131は炭素数が1〜5のパーフルオロアルキレン基であることが好ましい。R121は、水素原子であることが好ましい。X5は、シアノ基、アルコキシカルボニル基、ヨウ素原子、臭素原子、又は、−CH2Iであることが好ましい。X6は、シアノ基、アルコキシカルボニル基、ヨウ素原子、臭素原子、又は−CH2OHであることが好ましい。
架橋部位を与えるモノマーとしては、CF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2CN、CF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2COOH、CF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2CH2I、CF2=CFOCF2CF2CH2I、CH2=CFCF2OCF(CF3)CF2OCF(CF3)CN、CH2=CFCF2OCF(CF3)CF2OCF(CF3)COOH、CH2=CFCF2OCF(CF3)CF2OCF(CF3)CH2OH、CH2=CHCF2CF2I、CH2=CH(CF2)2CH=CH2、CH2=CH(CF2)6CH=CH2、及び、CF2=CFO(CF2)5CNからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、CF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2CN及びCF2=CFOCF2CF2CH2Iからなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましい。
工程(1)において、フルオロモノマーとフッ素非含有モノマーとを重合してもよい。上記フッ素非含有モノマーとしては、上記フルオロモノマーと反応性を有する炭化水素系モノマー等が挙げられる。上記炭化水素系モノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン等のアルケン類;エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、n−酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、吉草酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、カプリン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、パラ−t−ブチル安息香酸ビニル、シクロヘキサンカルボン酸ビニル、モノクロル酢酸ビニル、アジピン酸ビニル、アクリル酸ビニル、メタクリル酸ビニル、クロトン酸ビニル、ソルビン酸ビニル、桂皮酸ビニル、ウンデシレン酸ビニル、ヒドロキシ酢酸ビニル、ヒドロキシプロピオイン酸ビニル、ヒドロキシ酪酸ビニル、ヒドロキシ吉草酸ビニル、ヒドロキシイソ酪酸ビニル、ヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸ビニル等のビニルエステル類;エチルアリルエーテル、プロピルアリルエーテル、ブチルアリルエーテル、イソブチルアリルエーテル、シクロヘキシルアリルエーテル等のアルキルアリルエーテル類;エチルアリルエステル、プロピルアリルエステル、ブチルアリルエステル、イソブチルアリルエステル、シクロヘキシルアリルエステル等のアルキルアリルエステル類等が挙げられる。
上記フッ素非含有モノマーとしては、また、官能基含有炭化水素系モノマー(但し、架橋部位を与えるモノマーを除く)であってもよい。上記官能基含有炭化水素系モノマーとしては、例えば、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシプロピルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、ヒドロキシイソブチルビニルエーテル、ヒドロキシシクロヘキシルビニルエーテル等のヒドロキシアルキルビニルエーテル類;イタコン酸、コハク酸、無水コハク酸、フマル酸、無水フマル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、パーフルオロブテン酸等のカルボキシル基を有するフッ素非含有モノマー;グリシジルビニルエーテル、グリシジルアリルエーテル等のグリシジル基を有するフッ素非含有モノマー;アミノアルキルビニルエーテル、アミノアルキルアリルエーテル等のアミノ基を有するフッ素非含有モノマー;(メタ)アクリルアミド、メチロールアクリルアミド等のアミド基を有するフッ素非含有モノマー等が挙げられる。これらの官能基含有炭化水素系モノマーの使用量は、工程(1)で得られるフルオロポリマーの当量重量が6000を超えないように、少量とするべきであり、工程(1)においては使用しないことも好ましい。
工程(1)において、フルオロモノマーとしては、パーフルオロモノマーが好ましい。
パーフルオロモノマーとしては、
テトラフルオロエチレン〔TFE〕、
へキサフルオロプロピレン〔HFP〕、
一般式(8):CF2=CF−ORf81
(式中、Rf81は、炭素数1〜8のパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるフルオロモノマー〔PAVE〕、
一般式(10):CF2=CFOCF2ORf101
(式中、Rf101は炭素数1〜6の直鎖又は分岐状パーフルオロアルキル基、炭素数5〜6の環式パーフルオロアルキル基、1〜3個の酸素原子を含む炭素数2〜6の直鎖又は分岐状パーフルオロオキシアルキル基である。)で表されるフルオロモノマー、及び、
一般式(11):CF2=CFO(CF2CF(Y)O)m(CF2)nF
(式中、Yはフッ素原子又はトリフルオロメチル基を表す。mは1〜4の整数である。nは1〜4の整数である。)で表されるフルオロモノマー
からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
工程(1)において、上記フルオロモノマーの1種又は2種以上を重合することにより、所望のフルオロポリマーの粒子を得ることができる。
工程(1)では、モノマーとして、パーフルオロモノマーのみ、又は、パーフルオロモノマー及び架橋部位を与えるモノマーのみの重合を行うことが好ましい。パーフルオロモノマーのみ、又は、パーフルオロモノマー及び架橋部位を与えるモノマーのみの重合を行うことにより、ポリテトラフルオロエチレン、溶融加工性のパーフルオロ樹脂又はパーフルオロゴムの粒子を製造することができる。
工程(1)において製造するフルオロポリマー粒子(a)としては、フッ素樹脂及びフッ素ゴムからなる群より選択される少なくとも1種の粒子であることが好ましく、ポリテトラフルオロエチレン、溶融加工性のフッ素樹脂(但し、ポリテトラフルオロエチレンを除く)、部分フッ素化ゴム及びパーフルオロゴムからなる群より選択される少なくとも1種の粒子であることがより好ましく、ポリテトラフルオロエチレン、溶融加工性のパーフルオロ樹脂(但し、ポリテトラフルオロエチレンを除く)及びパーフルオロゴムからなる群より選択される少なくとも1種の粒子であることが更に好ましい。
上記フッ素樹脂は、融点が100〜360℃であることが好ましく、140〜360℃であることがより好ましく、160〜360℃であることが更に好ましく、180〜360℃であることが特に好ましい。
本明細書において、上記フッ素樹脂の融点は、示差走査熱量計〔DSC〕を用いて10℃/分の速度で昇温したときの融解熱曲線における極大値に対応する温度である。
上記フッ素樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン〔PTFE〕、TFE/PAVE共重合体〔PFA〕、TFE/HFP共重合体〔FEP〕、エチレン〔Et〕/TFE共重合体〔ETFE〕、Et/TFE/HFP共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン〔PCTFE〕、CTFE/TFE共重合体、Et/CTFE共重合体、ポリフッ化ビニル〔PVF〕、フルオロモノマー/ビニルエステル共重合体、一般式(18)で表されるフルオロモノマーの重合体等が挙げられる。
上記PTFEとしては、ホモPTFEであっても、変性PTFEであってもよい。変性PTFEは、TFE単位とTFEと共重合可能な変性モノマーに基づく変性モノマー単位とを含む。また、上記PTFEは、非溶融加工性及びフィブリル化性を有する高分子量PTFEであってもよいし、溶融加工性を有し、フィブリル化性を有しない低分子量PTFEであってもよい。
上記変性モノマーとしては、TFEとの共重合が可能なものであれば特に限定されず、例えば、ヘキサフルオロプロピレン〔HFP〕等のパーフルオロオレフィン;クロロトリフルオロエチレン〔CTFE〕等のクロロフルオロオレフィン;トリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン〔VDF〕等の水素含有フルオロオレフィン;フルオロアルキルビニルエーテル;フルオロアルキルエチレン;エチレン;ニトリル基を有するフッ素含有ビニルエーテル等が挙げられる。また、用いる変性モノマーは1種であってもよいし、複数種であってもよい。
上記フルオロアルキルビニルエーテルとしては特に限定されず、例えば、下記一般式(5)
CF2=CF−ORf8 (5)
(式中、Rf8は、パーフルオロ有機基を表す。)で表されるフルオロモノマー等が挙げられる。本明細書において、上記「パーフルオロ有機基」とは、炭素原子に結合する水素原子が全てフッ素原子に置換されてなる有機基を意味する。上記パーフルオロ有機基は、エーテル酸素を有していてもよい。
上記フルオロアルキルビニルエーテルとしては、例えば、上記一般式(5)において、Rf8が炭素数1〜10のパーフルオロアルキル基を表すものであるフルオロモノマーが挙げられる。上記パーフルオロアルキル基の炭素数は、好ましくは1〜5である。
上記フルオロアルキルビニルエーテルにおけるパーフルオロアルキル基としては、例えば、パーフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロペンチル基、パーフルオロヘキシル基等が挙げられるが、パーフルオロアルキル基がパーフルオロプロピル基であるパープルオロ(プロピルビニルエーテル)〔PPVE〕が好ましい。
上記フルオロアルキルビニルエーテルとしては、更に、上記一般式(5)において、Rf8が炭素数4〜9のパーフルオロ(アルコキシアルキル)基であるもの、Rf8が下記式:
(式中、mは、0又は1〜4の整数を表す。)で表される基であるもの、Rf8が下記式:
(式中、nは、1〜4の整数を表す。)で表される基であるもの等が挙げられる。
上記フルオロアルキルエチレンとしては特に限定されず、(パーフルオロアルキル)エチレンが好ましく、例えば、(パーフルオロブチル)エチレン(PFBE)、(パーフルオロヘキシル)エチレン等が挙げられる。
ニトリル基を有するフッ素含有ビニルエーテルとしては、CF2=CFORf9CN(式中、Rf9は2つの炭素原子間に酸素原子が挿入されていてもよい炭素数が2〜7のアルキレン基を表す。)で表されるフッ素含有ビニルエーテルがより好ましい。
上記変性PTFEにおける変性モノマーとしては、HFP、CTFE、VDF、PAVE、(パーフルオロアルキル)エチレン及びエチレンからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。より好ましくは、HFP、PAVE及びCTFEからなる群より選択される少なくとも1種であり、更に好ましくは、HFP及びPAVEからなる群より選択される少なくとも1種であり、特に好ましくはHFPである。
工程(1)において得られるPTFEは、溶融粘度(MV)が1.0×10Pa・S以上であることが好ましく、1.0×102Pa・S以上であることがより好ましく、1.0×103Pa・S以上であることが更に好ましい。
上記溶融粘度は、ASTM D 1238に準拠し、フローテスター(島津製作所社製)及び2φ−8Lのダイを用い、予め測定温度(380℃)で5分間加熱しておいた2gの試料を0.7MPaの荷重にて上記温度に保って測定することができる。
上記PTFEは、融点が324〜360℃であることが好ましい。
溶融加工性のフッ素樹脂としては、PFA、FEP、ETFE、Et/TFE/HFP共重合体、PCTFE、CTFE/TFE共重合体、Et/CTFE共重合体、及び、PVFからなる群より選択される少なくとも1種のフッ素樹脂であることが好ましく、PFA及びFEPからなる群より選択される少なくとも1種のパーフルオロ樹脂であることがより好ましい。
PFAとしては、特に限定されないが、TFE単位とPAVE単位とのモル比(TFE単位/PAVE単位)が70/30以上99/1未満である共重合体が好ましい。より好ましいモル比は、70/30以上98.9/1.1以下であり、更に好ましいモル比は、80/20以上98.5/1.5以下である。TFE単位が少なすぎると機械物性が低下する傾向があり、多すぎると融点が高くなりすぎ成形性が低下する傾向がある。上記PFAは、TFE及びPAVEと共重合可能な単量体に由来する単量体単位が0.1〜10モル%であり、TFE単位及びPAVE単位が合計で90〜99.9モル%である共重合体であることも好ましい。TFE及びPAVEと共重合可能な単量体としては、HFP、CZ3Z4=CZ5(CF2)nZ6(式中、Z3、Z4及びZ5は、同一若しくは異なって、水素原子又はフッ素原子を表し、Z6は、水素原子、フッ素原子又は塩素原子を表し、nは2〜10の整数を表す。)で表されるビニル単量体、及び、CF2=CF−OCH2−Rf7(式中、Rf7は炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるアルキルパーフルオロビニルエーテル誘導体等が挙げられる。
上記PFAは、融点が180〜340℃であることが好ましく、230〜330℃であることがより好ましく、280〜320℃であることが更に好ましい。
上記PFAは、MFRが0.1〜100g/10分であることが好ましく、0.5〜90g/10分であることがより好ましく、1.0〜85g/10分であることが更に好ましい。
本明細書において、MFRは、ASTMD1238に準拠し、温度372℃、荷重5kgで測定して得られる値である。
FEPとしては、特に限定されないが、TFE単位とHFP単位とのモル比(TFE単位/HFP単位)が70/30以上99/1未満である共重合体が好ましい。より好ましいモル比は、70/30以上98.9/1.1以下であり、更に好ましいモル比は、80/20以上97/3以下である。TFE単位が少なすぎると機械物性が低下する傾向があり、多すぎると融点が高くなりすぎ成形性が低下する傾向がある。FEPは、TFE及びHFPと共重合可能な単量体に由来する単量体単位が0.1〜10モル%であり、TFE単位及びHFP単位が合計で90〜99.9モル%である共重合体であることも好ましい。TFE及びHFPと共重合可能な単量体としては、PAVE、アルキルパーフルオロビニルエーテル誘導体等が挙げられる。
上記FEPは、融点が150〜320℃であることが好ましく、200〜300℃であることがより好ましく、240〜280℃であることが更に好ましい。
上記FEPは、MFRが0.01〜100g/10分であることが好ましく、0.1〜80g/10分であることがより好ましく、1〜60g/10分であることが更に好ましく、1〜50g/10分であることが特に好ましい。
ETFEとしては、TFE単位とエチレン単位とのモル比(TFE単位/エチレン単位)が20/80以上90/10以下である共重合体が好ましい。より好ましいモル比は37/63以上85/15以下であり、更に好ましいモル比は38/62以上80/20以下である。ETFEは、TFE、エチレン、並びに、TFE及びエチレンと共重合可能な単量体からなる共重合体であってもよい。共重合可能な単量体としては、下記式
CH2=CX5Rf3、CF2=CFRf3、CF2=CFORf3、CH2=C(Rf3)2
(式中、X5は水素原子又はフッ素原子、Rf3はエーテル結合を含んでいてもよいフルオロアルキル基を表す。)で表される単量体が挙げられ、なかでも、CF2=CFRf3、CF2=CFORf3及びCH2=CX5Rf3で表される含フッ素ビニルモノマーが好ましく、HFP、CF2=CF−ORf4(式中、Rf4は炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)及びRf3が炭素数1〜8のフルオロアルキル基であるCH2=CX5Rf3で表される含フッ素ビニルモノマーがより好ましい。また、TFE及びエチレンと共重合可能な単量体としては、イタコン酸、無水イタコン酸等の脂肪族不飽和カルボン酸であってもよい。TFE及びエチレンと共重合可能な単量体は、含フッ素重合体に対して0.1〜10モル%が好ましく、0.1〜5モル%がより好ましく、0.2〜4モル%が特に好ましい。
上記ETFEは、融点が140〜340℃であることが好ましく、160〜300℃であることがより好ましく、195〜275℃であることが更に好ましい。
上記ETFEは、MFRが1〜100g/10分であることが好ましく、2〜50g/10分であることがより好ましく、4〜40g/10分であることが更に好ましい。
上述した共重合体の各単量体単位の含有量は、NMR、FT−IR、元素分析、蛍光X線分析を単量体の種類によって適宜組み合わせることで算出できる。
上記フッ素ゴムとしては、部分フッ素化ゴムであってもよいし、パーフルオロゴムであってもよい。
部分フッ素化ゴムとしては、ビニリデンフルオライド(VdF)系フッ素ゴム、テトラフルオロエチレン(TFE)/プロピレン(Pr)系フッ素ゴム、テトラフルオロエチレン(TFE)/プロピレン/ビニリデンフルオライド(VdF)系フッ素ゴム、エチレン/ヘキサフルオロプロピレン(HFP)系フッ素ゴム、エチレン/ヘキサフルオロプロピレン(HFP)/ビニリデンフルオライド(VdF)系フッ素ゴム、エチレン/ヘキサフルオロプロピレン(HFP)/テトラフルオロエチレン(TFE)系フッ素ゴム等が挙げられる。なかでも、ビニリデンフルオライド系フッ素ゴム及びテトラフルオロエチレン/プロピレン系フッ素ゴムからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
上記ビニリデンフルオライド系フッ素ゴムは、ビニリデンフルオライド45〜85モル%と、ビニリデンフルオライドと共重合可能な少なくとも1種の他のモノマー55〜15モル%とからなる共重合体であることが好ましい。より好ましくは、ビニリデンフルオライド50〜80モル%と、ビニリデンフルオライドと共重合可能な少なくとも1種の他のモノマー50〜20モル%とからなる共重合体である。
上記ビニリデンフルオライドと共重合可能な少なくとも1種の他のモノマーとしては、テトラフルオロエチレン〔TFE〕、へキサフルオロプロピレン〔HFP〕、フルオロアルキルビニルエーテル、クロロトリフルオロエチレン〔CTFE〕、トリフルオロエチレン、トリフルオロプロピレン、ペンタフルオロプロピレン、トリフルオロブテン、テトラフルオロイソブテン、ヘキサフルオロイソブテン、フッ化ビニル、一般式(6):CH2=CFRf61(式中、Rf61は炭素数1〜12の直鎖又は分岐したフルオロアルキル基)で表されるフルオロモノマー、一般式(7):CH2=CH−(CF2)n−X2(式中、X2はH又はFであり、nは3〜10の整数である。)で表されるフルオロモノマー、架橋部位を与えるモノマー等のモノマー;エチレン、プロピレン、アルキルビニルエーテル等の非フッ素化モノマーが挙げられる。これらをそれぞれ単独で、又は、任意に組み合わせて用いることができる。これらのなかでも、TFE、HFP、フルオロアルキルビニルエーテル及びCTFEからなる群より選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。フルオロアルキルビニルエーテルとしては、一般式(8)で表されるフルオロモノマーが好ましい。
ビニリデンフルオライド系フッ素ゴムの具体例としては、VdF/HFP系ゴム、VdF/HFP/TFE系ゴム、VdF/CTFE系ゴム、VdF/CTFE/TFE系ゴム、VDF/一般式(6)で表されるフルオロモノマー系ゴム、VDF/一般式(6)で表されるフルオロモノマー/TFE系ゴム、VDF/パーフルオロ(メチルビニルエーテル)〔PMVE〕系ゴム、VDF/PMVE/TFE系ゴム、VDF/PMVE/TFE/HFP系ゴム等が挙げられる。VDF/一般式(6)で表されるフルオロモノマー系ゴムとしては、VDF/CH2=CFCF3系ゴムが好ましく、VDF/一般式(6)で表されるフルオロモノマー/TFE系ゴムとしては、VDF/TFE/CH2=CFCF3系ゴムが好ましい。
上記VDF/CH2=CFCF3系ゴムは、VDF40〜99.5モル%、及び、CH2=CFCF30.5〜60モル%からなる共重合体であることが好ましく、VDF50〜85モル%、及び、CH2=CFCF320〜50モル%からなる共重合体であることがより好ましい。
上記テトラフルオロエチレン/プロピレン系フッ素ゴムは、テトラフルオロエチレン45〜70モル%、プロピレン55〜30モル%、及び、架橋部位を与えるフルオロモノマー0〜5モル%からなる共重合体であることが好ましい。
上記フッ素ゴムは、パーフルオロゴムであってもよい。上記パーフルオロゴムとしては、TFEを含むパーフルオロゴム、例えばTFE/一般式(8)、(10)又は(11)で表されるフルオロモノマー共重合体及びTFE/一般式(8)、(10)又は(11)で表されるフルオロモノマー/架橋部位を与えるモノマー共重合体からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
その組成は、TFE/PMVE共重合体の場合、好ましくは、45〜90/10〜55(モル%)であり、より好ましくは、55〜80/20〜45であり、更に好ましくは、55〜70/30〜45である。
TFE/PMVE/架橋部位を与えるモノマー共重合体の場合、好ましくは、45〜89.9/10〜54.9/0.01〜4(モル%)であり、より好ましくは、55〜77.9/20〜49.9/0.1〜3.5であり、更に好ましくは、55〜69.8/30〜44.8/0.2〜3である。
TFE/炭素数が4〜12の一般式(8)、(10)又は(11)で表されるフルオロモノマー共重合体の場合、好ましくは、50〜90/10〜50(モル%)であり、より好ましくは、60〜88/12〜40であり、更に好ましくは、65〜85/15〜35である。
TFE/炭素数が4〜12の一般式(8)、(10)又は(11)で表されるフルオロモノマー/架橋部位を与えるモノマー共重合体の場合、好ましくは、50〜89.9/ 10〜49.9/0.01〜4(モル%)であり、より好ましくは、60〜87.9/12〜39.9/0.1〜3.5であり、更に好ましくは、65〜84.8/15〜34.8/0.2〜3である。
これらの組成の範囲を外れると、ゴム弾性体としての性質が失われ、樹脂に近い性質となる傾向がある。
上記パーフルオロゴムとしては、TFE/一般式(11)で表されるフルオロモノマー/架橋部位を与えるフルオロモノマー共重合体、TFE/一般式(11)で表されるパーフルオロビニルエーテル共重合体、TFE/一般式(8)で表されるフルオロモノマー共重合体、及び、TFE/一般式(8)で表されるフルオロモノマー/架橋部位を与えるモノマー共重合体からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
上記パーフルオロゴムとしては、国際公開第97/24381号パンフレット、特公昭61−57324号公報、特公平4−81608号公報、特公平5−13961号公報等に記載されているパーフルオロゴムも挙げることができる。
上記フッ素ゴムは、高温における圧縮永久歪みに優れる点から、ガラス転移温度が−70℃以上であることが好ましく、−60℃以上であることがより好ましく、−50℃以上であることが更に好ましい。また、耐寒性が良好であるという点から、5℃以下であることが好ましく、0℃以下であることがより好ましく、−3℃以下であることが更に好ましい。
上記ガラス転移温度は、示差走査熱量計(メトラー・トレド社製、DSC822e)を用い、試料10mgを10℃/minで昇温することによりDSC曲線を得て、DSC曲線の二次転移前後のベースラインの延長線と、DSC曲線の変曲点における接線との2つの交点の中点を示す温度として求めることができる。
上記フッ素ゴムは、耐熱性が良好な点で、170℃におけるムーニー粘度ML(1+20)が30以上であることが好ましく、40以上であることがより好ましく、50以上であることが更に好ましい。また、加工性が良好な点で、150以下であることが好ましく、120以下であることがより好ましく、110以下であることが更に好ましい。
上記フッ素ゴムは、耐熱性が良好な点で、140℃におけるムーニー粘度ML(1+20)が30以上であることが好ましく、40以上であることがより好ましく、50以上であることが更に好ましい。また、加工性が良好な点で、180以下であることが好ましく、150以下であることがより好ましく、110以下であることが更に好ましい。
上記フッ素ゴムは、耐熱性が良好な点で、100℃におけるムーニー粘度ML(1+10)が10以上であることが好ましく、20以上であることがより好ましく、30以上であることが更に好ましい。また、加工性が良好な点で、120以下であることが好ましく、100以下であることがより好ましく、80以下であることが更に好ましい。
上記ムーニー粘度は、ALPHA TECHNOLOGIES社製 ムーニー粘度計MV2000E型を用いて、170℃又は140℃、100℃において、JIS K6300に従い測定することができる。
工程(1)における含フッ素界面活性剤の使用量は、水性媒体の2000〜500000ppmに相当する量であることが好ましい。含フッ素界面活性剤の使用量が少なすぎると、粒子径が小さいフルオロポリマー粒子(a)を含む水性分散液を得ることができないおそれがあり、使用量が多すぎると、使用量に見合った効果が得られず経済的に不利である。含フッ素界面活性剤の使用量は、4600ppm以上であることがより好ましく、5000ppm以上であることが更に好ましく、10,000ppm以上であることがより更に好ましく、20,000ppm以上であることが特に好ましく、40,000ppm以上であることが最も好ましく、400,000ppm以下であることがより好ましく、300,000ppm以下であることが更に好ましい。
工程(1)における含フッ素界面活性剤は、LogPOWが3.4以下であることが好ましい。上記LogPOWは、1−オクタノールと水との分配係数であり、LogP[式中、Pは、含フッ素界面活性剤を含有するオクタノール/水(1:1)混合液が相分離した際のオクタノール中の含フッ素界面活性剤濃度/水中の含フッ素界面活性剤濃度比を表す]で表されるものである。上記LogPOWは、1.5以上であることが好ましく、フルオロポリマー粒子(b)から除去しやすい点で、3.0以下であることがより好ましく、2.8以下であることが更に好ましい。パーフルオロポリエーテルと酸基を有するパーフルオロポリオキシアルキレンとからなる水性マイクロエマルジョンを使用すると、生成したフルオロポリマーから除去することが困難であり、ポリマー中に残留しやすいのに対し、LogPOWが3.4以下である含フッ素界面活性剤を使用すると、生成したフルオロポリマーからの除去が容易である。
LogPOWが3.4以下の含フッ素界面活性剤としては、含フッ素アニオン性界面活性剤が好ましく、米国特許出願公開第2007/0015864号明細書、米国特許出願公開第2007/0015865号明細書、米国特許出願公開第2007/0015866号明細書、米国特許出願公開第2007/0276103号明細書、米国特許出願公開第2007/0117914号明細書、米国特許出願公開第2007/142541号明細書、米国特許出願公開第2008/0015319号明細書、米国特許第3250808号明細書、米国特許第3271341号明細書、特開2003−119204号公報、国際公開第2005/042593号パンフレット、国際公開第2008/060461号パンフレット、国際公開第2007/046377号パンフレット、国際公開第2007/119526号パンフレット、国際公開第2007/046482号パンフレット、国際公開第2007/046345号パンフレットに記載されたもの等を使用できる。
LogPOWが3.4以下の含フッ素界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤であることが好ましい。
上記アニオン性界面活性剤としては、例えば、カルボン酸系界面活性剤、スルホン酸系界面活性剤等が好ましく、これらの界面活性剤としては、下記一般式(I)で表されるパーフルオロカルボン酸(I)、下記一般式(II)で表されるω−Hパーフルオロカルボン酸(II)、下記一般式(III)で表されるパーフルオロポリエーテルカルボン酸(III)、下記一般式(IV)で表されるパーフルオロアルキルアルキレンカルボン酸(IV)、下記一般式(V)で表されるパーフルオロアルコキシフルオロカルボン酸(V)、下記一般式(VI)で表されるパーフルオロアルキルスルホン酸(VI)、及び/又は、下記一般式(VII)で表されるパーフルオロアルキルアルキレンスルホン酸(VII)からなるものが挙げられる。
上記パーフルオロカルボン酸(I)は、下記一般式(I)
F(CF2)n1COOM (I)
(式中、n1は、3〜6の整数であり、Mは、H、NH4又はアルカリ金属元素である。)で表されるものである。
上記一般式(I)において、重合反応の安定性の点で、上記n1の好ましい下限は4である。また、上記Mは、得られるフルオロポリマー粒子(b)の水性分散液の加工時に残存しにくいという点で、NH4であることが好ましい。
上記パーフルオロカルボン酸(I)としては、例えば、F(CF2)6COOM、F(CF2)5COOM、F(CF2)4COOM(各式中、Mは、上記定義したものである。)等が好ましい。
上記ω−Hパーフルオロカルボン酸(II)は、下記一般式(II)
H(CF2)n2COOM (II)
(式中、n2は、4〜8の整数であり、Mは、上記定義したものである。)で表されるものである。
上記一般式(II)において、重合反応の安定性の点で、上記n2の好ましい上限は6である。また、上記Mは、得られるフルオロポリマー粒子(b)の水性分散液の加工時に残存しにくいという点で、NH4であることが好ましい。
上記ω−Hパーフルオロカルボン酸(II)としては、例えば、H(CF2)8COOM、H(CF2)7COOM、H(CF2)6COOM、H(CF2)5COOM、H(CF2)4COOM(各式中、Mは、上記定義したものである。)等が好ましい。
上記パーフルオロポリエーテルカルボン酸(III)は、下記一般式(III)
Rf1−O−(CF(CF3)CF2O)n3CF(CF3)COOM (III)
(式中、Rf1は、炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基であり、n3は、0〜3の整数であり、Mは、上記定義したものである。)で表されるものである。
上記一般式(III)において、上記Rf1は、重合時の安定性の点で、炭素数4以下のパーフルオロアルキル基であることが好ましく、n3は、0又は1であることが好ましく、上記Mは、得られるフルオロポリマー粒子(b)の水性分散液の加工時に残存しにくいという点で、NH4であることが好ましい。
上記パーフルオロポリエーテルカルボン酸(III)としては、例えば、
C4F9OCF(CF3)COOM、C3F7OCF(CF3)COOM、
C2F5OCF(CF3)COOM、CF3OCF(CF3)COOM、
CF3OCF(CF3)CF2OCF(CF3)COOM
(各式中、Mは上記定義したものである。)等が好ましく、重合時の安定性と除去効率とが共によい点で、
CF3OCF(CF3)COOM、CF3OCF(CF3)CF2OCF(CF3)COOM
(各式中、Mは上記定義したものである。)等がより好ましい。
上記パーフルオロアルキルアルキレンカルボン酸(IV)は、下記一般式(IV)
Rf2(CH2)n4Rf3COOM (IV)
(式中、Rf2は、炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基であり、Rf3は、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜3のパーフルオロアルキレン基、n4は、1〜3の整数であり、Mは、上記定義したものである。)で表されるものである。
上記一般式(IV)において、上記Rf2は、炭素数2以上のパーフルオロアルキル基、又は、炭素数4以下のパーフルオロアルキル基であることが好ましい。上記Rf3は、炭素数1又は2のパーフルオロアルキレン基であることが好ましく、−(CF2)−又は−CF(CF3)−であることがより好ましい。上記n4は、1又は2であることが好ましく、1であることがより好ましい。上記Mは、得られるフルオロポリマー粒子(b)の水性分散液の加工時に残存しにくいという点で、NH4であることが好ましい。
上記パーフルオロアルキルアルキレンカルボン酸(IV)としては、例えば、
C4F9CH2CF2COOM、C3F7CH2CF2COOM、
C2F5CH2CF2COOM、C4F9CH2CF(CF3)COOM、
C3F7CH2CF(CF3)COOM、C2F5CH2CF(CF3)COOM、
C4F9CH2CH2CF2COOM、C3F7CH2CH2CF2COOM、
C2F5CH2CH2CF2COOM
(各式中、Mは上記定義したものである。)等が好ましい。
上記パーフルオロアルコキシフルオロカルボン酸(V)は、下記一般式(V)
Rf4−O−CY1Y2CF2−COOM (V)
(式中、Rf4は、炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基であり、Y1及びY2は、同一若しくは異なって、H又はFであり、Mは、上記定義したものである。)で表されるものである。
上記一般式(V)において、上記Rf4は、重合安定性の点で、炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基であることが好ましく、炭素数3のパーフルオロアルキル基がより好ましい。上記Mは、得られるフルオロポリマー粒子(b)の水性分散液の加工時に残存しにくいという点で、NH4であることが好ましい。
上記パーフルオロアルコキシフルオロカルボン酸(V)としては、
C3F7OCH2CF2COOM、C3F7OCHFCF2COOM、
C3F7OCF2CF2COOM
(各式中、Mは上記定義したものである。)等が好ましい。
上記パーフルオロアルキルスルホン酸(VI)は、下記一般式(VI)
F(CF2)n5SO3M (VI)
(式中、n5は、3〜6の整数であり、Mは、上記定義したものである。)で表されるものである。
上記一般式(VI)において、上記n5は、重合安定性の点で、4又は5の整数であることが好ましく、上記Mは、得られるフルオロポリマー粒子(b)の水性分散液の加工時に残存しにくいという点で、NH4であることが好ましい。
上記パーフルオロアルキルスルホン酸(VI)としては、例えば、
F(CF2)5SO3M、F(CF2)5SO3M
(各式中、Mは上記定義したものである。)等が好ましい。
上記パーフルオロアルキルアルキレンスルホン酸(VII)は、下記一般式(VII)
Rf5(CH2)n6SO3M (VII)
(式中、Rf5は、1〜5のパーフルオロアルキル基であり、n6は、1〜3の整数であり、Mは、上記定義したものである。)で表されるものである。
上記一般式(VII)において、Rf5は、炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基であることが好ましく、炭素数3のパーフルオロアルキル基であることがより好ましい。上記n6は、1又は2であることが好ましく、1であることがより好ましい。上記Mは、得られるフルオロポリマー粒子(b)の水性分散液の加工時に残存しにくい点で、NH4であることが好ましい。
上記パーフルオロアルキルアルキレンスルホン酸(VII)としては、例えば、
C3F7CH2SO3M
(式中、Mは上記定義したものである。)等が好ましい。
LogPOWが3.4以下の含フッ素界面活性剤としては、下記一般式(1)
X−(CF2)m1−Y (1)
(式中、XはH又はFを表し、m1は3〜5の整数を表し、Yは−SO3M、−SO4M、−SO3R、−SO4R、−COOM、−PO3M2、−PO4M2(MはH、NH4又はアルカリ金属を表し、Rは炭素数1〜12のアルキル基を表す。)を表す。)で表される含フッ素化合物、一般式(II)で表されるω−Hパーフルオロカルボン酸(II)、一般式(III)で表されるパーフルオロポリエーテルカルボン酸(III)、一般式(IV)で表されるパーフルオロアルキルアルキレンカルボン酸(IV)、一般式(V)で表されるパーフルオロアルコキシフルオロカルボン酸(V)、及び、一般式(VII)で表されるパーフルオロアルキルアルキレンスルホン酸(VII)からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
また、LogPOWが3.4以下の含フッ素界面活性剤としては、下記一般式(1)
X−(CF2)m1−Y (1)
(式中、XはH又はFを表し、m1は3〜5の整数を表し、Yは−SO3M、−SO4M、−SO3R、−SO4R、−COOM、−PO3M2、−PO4M2(MはH、NH4又はアルカリ金属を表し、Rは炭素数1〜12のアルキル基を表す。)を表す。)で表される含フッ素化合物、下記一般式(3)
CF3OCF(CF3)CF2OCF(CF3)COOX (3)
(式中、Xは水素原子、NH4又はアルカリ金属原子を表す。)で表される含フッ素化合物、及び、下記一般式(4)
CF3CF2OCF2CF2OCF2COOX (4)
(式中、Xは水素原子、NH4又はアルカリ金属原子を表す。)で表される含フッ素化合物からなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましい。
また、LogPOWが3.4以下の含フッ素界面活性剤としては、下記一般式(1)
X−(CF2)m1−Y (1)
(式中、XはH又はFを表し、m1は3〜5の整数を表し、Yは−SO3M、−SO4M、−SO3R、−SO4R、−COOM、−PO3M2、−PO4M2(MはH、NH4又はアルカリ金属を表し、Rは炭素数1〜12のアルキル基を表す。)を表す。)で表される含フッ素化合物が更に好ましい。
上記重合開始剤としては、油溶性ラジカル重合開始剤、または水溶性ラジカル重合開始剤を使用できる。
油溶性ラジカル重合開始剤としては、公知の油溶性の過酸化物であってよく、たとえばジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジsec−ブチルパーオキシジカーボネートなどのジアルキルパーオキシカーボネート類、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシピバレートなどのパーオキシエステル類、ジt−ブチルパーオキサイドなどのジアルキルパーオキサイド類などが、また、ジ(ω−ハイドロ−ドデカフルオロヘプタノイル)パーオキサイド、ジ(ω−ハイドロ−テトラデカフルオロヘプタノイル)パーオキサイド、ジ(ω−ハイドロ−ヘキサデカフルオロノナノイル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロブチリル)パーオキサイド、ジ(パーフルバレリル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロヘキサノイル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロヘプタノイル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロオクタノイル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロノナノイル)パーオキサイド、ジ(ω−クロロ−ヘキサフルオロブチリル)パーオキサイド、ジ(ω−クロロ−デカフルオロヘキサノイル)パーオキサイド、ジ(ω−クロロ−テトラデカフルオロオクタノイル)パーオキサイド、ω−ハイドロ−ドデカフルオロヘプタノイル−ω−ハイドロヘキサデカフルオロノナノイル−パーオキサイド、ω−クロロ−ヘキサフルオロブチリル−ω−クロ−デカフルオロヘキサノイル−パーオキサイド、ω−ハイドロドデカフルオロヘプタノイル−パーフルオロブチリル−パーオキサイド、ジ(ジクロロペンタフルオロブタノイル)パーオキサイド、ジ(トリクロロオクタフルオロヘキサノイル)パーオキサイド、ジ(テトラクロロウンデカフルオロオクタノイル)パーオキサイド、ジ(ペンタクロロテトラデカフルオロデカノイル)パーオキサイド、ジ(ウンデカクロロドトリアコンタフルオロドコサノイル)パーオキサイドのジ[パーフロロ(またはフルオロクロロ)アシル]パーオキサイド類などが代表的なものとしてあげられる。
水溶性ラジカル重合開始剤としては、公知の水溶性過酸化物であってよく、たとえば、過硫酸、過ホウ酸、過塩素酸、過リン酸、過炭酸などのアンモニウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩、t−ブチルパーマレエート、t−ブチルハイドロパーオキサイドなどがあげられる。サルファイト類、亜硫酸塩類のような還元剤も併せて含んでもよく、その使用量は過酸化物に対して0.1〜20倍であってよい。
30℃以下の低温で重合を実施する場合、重合開始剤として、酸化剤と還元剤を組み合わせるレドックス開始剤を用いるのが好ましい。酸化剤としては、過硫酸塩が好ましく、還元剤としては、亜硫酸塩が好ましい。過硫酸塩としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウムが挙げられる。亜硫酸塩としては、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸アンモニウムが挙げられる。開始剤の分解速度を上げるため、レドックス開始剤の組み合わせには、銅塩、鉄塩を加えることも好ましい。銅塩としては、硫酸銅(II)、鉄塩としては硫酸鉄(II)が挙げられる。
重合開始剤の添加量は、特に限定はないが、重合速度が著しく低下しない程度の量(たとえば、数ppm対水濃度)以上を重合の初期に一括して、または逐次的に、または連続して添加すればよい。上限は、装置面から重合反応熱を除熱できる範囲である。
上記水性媒体は、重合を行わせる反応媒体であって、水を含む液体を意味する。上記水性媒体は、水を含むものであれば特に限定されず、水と、例えば、アルコール、エーテル、ケトン等のフッ素非含有有機溶媒、及び/又は、沸点が40℃以下であるフッ素含有有機溶媒とを含むものであってもよい。
工程(1)における重合を連鎖移動剤の存在下に行ってもよい。上記連鎖移動剤としては、たとえばマロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、コハク酸ジメチルなどのエステル類のほか、イソペンタン、メタン、エタン、プロパン、イソプロパノール、アセトン、各種メルカプタン、四塩化炭素、シクロヘキサンなどがあげられる。
連鎖移動剤として臭素化合物又はヨウ素化合物を使用してもよい。臭素化合物又はヨウ素化合物を使用して行う重合方法としては、たとえば、実質的に無酸素状態で、臭素化合物又はヨウ素化合物の存在下に、水性媒体中でフルオロモノマーの重合を行う方法があげられる(ヨウ素移動重合法)。使用する臭素化合物又はヨウ素化合物の代表例としては、たとえば、一般式:
R2IxBry
(式中、xおよびyはそれぞれ0〜2の整数であり、かつ1≦x+y≦2を満たすものであり、R2は炭素数1〜16の飽和もしくは不飽和のフルオロ炭化水素基またはクロロフルオロ炭化水素基、または炭素数1〜3の炭化水素基であり、酸素原子を含んでいてもよい)で表される化合物があげられる。臭素化合物又はヨウ素化合物を使用することによって、ヨウ素または臭素が重合体に導入され、架橋点として機能する。
ヨウ素化合物としては、たとえば1,3−ジヨードパーフルオロプロパン、2−ヨードパーフルオロプロパン、1,3−ジヨード−2−クロロパーフルオロプロパン、1,4−ジヨードパーフルオロブタン、1,5−ジヨード−2,4−ジクロロパーフルオロペンタン、1,6−ジヨードパーフルオロヘキサン、1,8−ジヨードパーフルオロオクタン、1,12−ジヨードパーフルオロドデカン、1,16−ジヨードパーフルオロヘキサデカン、ジヨードメタン、1,2−ジヨードエタン、1,3−ジヨード−n−プロパン、CF2Br2、BrCF2CF2Br、CF3CFBrCF2Br、CFClBr2、BrCF2CFClBr、CFBrClCFClBr、BrCF2CF2CF2Br、BrCF2CFBrOCF3、1−ブロモ−2−ヨードパーフルオロエタン、1−ブロモ−3−ヨードパーフルオロプロパン、1−ブロモ−4−ヨードパーフルオロブタン、2−ブロモ−3−ヨードパーフルオロブタン、3−ブロモ−4−ヨードパーフルオロブテン−1、2−ブロモ−4−ヨードパーフルオロブテン−1、ベンゼンのモノヨードモノブロモ置換体、ジヨードモノブロモ置換体、ならびに(2−ヨードエチル)および(2−ブロモエチル)置換体などがあげられ、これらの化合物は、単独で使用してもよく、相互に組み合わせて使用することもできる。
これらのなかでも、重合反応性、架橋反応性、入手容易性などの点から、1,4−ジヨードパーフルオロブタン、1,6−ジヨードパーフルオロヘキサン、2−ヨードパーフルオロプロパンを用いるのが好ましい。
上記連鎖移動剤の使用量は、通常、供給されるフルオロモノマー全量に対して、1〜50,000ppmであり、好ましくは1〜20,000ppmである。
上記連鎖移動剤は、重合開始前に一括して反応容器中に添加してもよいし、重合開始後に一括して添加してもよいし、重合中に複数回に分割して添加してもよいし、また、重合中に連続的に添加してもよい。
重合温度、重合圧力及び重合時間は、溶媒や重合開始剤の種類によって異なるが、−15〜150℃、大気圧〜6.5MPa、1〜48時間であってよい。フッ素原子を含有する油溶性ラジカル重合開始剤を使用する場合、重合温度が30〜95℃であることが好ましい。重合開始剤として水溶性ラジカル重合開始剤を使用する場合、重合温度が0〜100℃であることが好ましく、10〜95℃であることがより好ましい。
上記重合は、0.1〜3.9MPaGで行うことが好ましく、0.6MPaG以上で行うことがより好ましく、3.0MPaG以下で行うことがより好ましい。
上記重合は、重合反応器に、フルオロモノマーを仕込み、反応器の内容物を撹拌し、そして反応器を所定の重合温度に保持し、次に重合開始剤を加え、重合反応を開始することにより行う。あるいは、重合反応器に内容物を仕込み、攪拌し、所定の重合温度に保持した後、フルオロモノマーを仕込み、次に重合開始剤を加え、重合反応を開始することにより行なっても良い。重合反応開始前に、必要に応じて、水性媒体、添加剤等を反応器に仕込んでもよい。重合反応開始後に、目的に応じて、フルオロモノマー、重合開始剤、連鎖移動剤等を追加添加してもよい。
工程(1)における重合は、下記一般式(2)
X−(CF2)m2−Y (2)
(式中、XはH又はFを表し、m2は6以上の整数を表し、Yは−SO3M、−SO4M、−SO3R、−SO4R、−COOM、−PO3M2、−PO4M2(MはH、NH4又はアルカリ金属を表し、Rは炭素数1〜12のアルキル基を表す。)を表す。)で表される含フッ素化合物の非存在下に行うことが好ましい。本発明の製造方法によれば、このような従来の長鎖含フッ素界面活性剤を使用しなくても、粒子径の充分小さいフルオロポリマー粒子を含む水性分散液を製造することができる。
工程(1)における重合は、乳化重合であることが好ましい。工程(1)における重合は、ラジカル重合であることが好ましい。
本発明の製造方法は、工程(1)の後に、圧力開放を行う工程を含むこともできる。圧力開放を行うことにより、モノマーは実質的に全量が反応系から取り除かれる。上記圧力開放の後、後述の工程(2)において反応系にフルオロモノマーを供給した場合、上記圧力開放を行うまでに形成した粒状体に対し、その外表面を被覆するようにフルオロモノマー単位を含む層が形成されるものと考えられる。
上記圧力開放時における反応系の圧力は、通常、大気圧0.1MPaとすることができる。
工程(1)の後に、フルオロポリマー粒子(a)を含む水性分散液をモノマーの非存在下に加熱処理することが好ましい。加熱処理することにより、フルオロポリマー粒子(a)を含む水性分散液を製造する工程において使用した重合開始剤の未分解残存分を失活させることができる。未分解残存分があれば、工程(2)の重合準備段階において、重合反応が進行し、副反応を起こす可能性がある。加熱処理の条件は、工程(1)に使用する重合開始剤の分解速度により、分解速度が速いものは、低温、短時間で行なうことができ、逆の場合は、逆となる。過硫酸塩の場合、80℃以上で3時間以上行なうことが望ましい。
工程(1)の後に、工程(1)で得られた水性分散液に水を添加して希釈されたフルオロポリマー粒子(a)を含む水性分散液を得る工程(1−2)を含むことが好ましい。工程(1−2)を含むことにより、工程(2)に供する水性分散液中のフルオロポリマー粒子(a)の粒子数及び含フッ素界面活性剤濃度を調整することができる。
工程(1−2)では、フルオロポリマー粒子(a)の粒子数を5×1015個/cc以上かつ1×1019個以下に調整することが好ましい。粒子数が多すぎると、工程(2)でフルオロポリマー粒子を安定化させるために多量の含フッ素界面活性剤が必要となるおそれがあり、粒子数が少なすぎると、重合速度が遅くなるおそれがある。
工程(1−2)では、含フッ素界面活性剤濃度を水性媒体に対して10〜10,000ppmに相当する量に調整することが好ましく、50〜5,000ppmに相当する量に調整することがより好ましい。量の調整のために、必要に応じ、含フッ素界面活性剤を工程(1−2)で添加してもよい。
工程(2)では、フルオロポリマー粒子(a)及び重合開始剤の存在下、更に、フルオロモノマーの重合を水性媒体中で行うことにより、フルオロポリマー粒子(b)を含む水性分散液を製造する。
フルオロポリマー粒子(b)は、コアがフルオロポリマー粒子(a)を構成するフルオロポリマーから形成されており、シェルが工程(2)で重合して得られるフルオロポリマーから形成されているコア−シェル構造を有するものと推測され、粒子全体として、工程(2)で重合して得られるフルオロポリマーに期待される物性を示す。従って、工程(2)で重合して得られるフルオロポリマーが溶融加工性のフッ素樹脂である場合には、フルオロポリマー粒子(a)が非溶融加工性のPTFE粒子であったとしても、フルオロポリマー粒子(b)を構成するフルオロポリマーは溶融加工性のフッ素樹脂である。同様に、工程(2)で重合して得られるフルオロポリマーがフッ素ゴムである場合には、フルオロポリマー粒子(a)がフッ素樹脂粒子であったとしても、フルオロポリマー粒子(b)を構成するフルオロポリマーは、非晶質フルオロポリマーであり、融解ピーク(ΔH)の大きさが4.5J/g以下である。但し、フルオロポリマー粒子(a)がフッ素樹脂であるから、フルオロポリマー粒子(b)は、通常のフッ素ゴムと異なり、融点を有することがある。
工程(2)において使用できるフルオロモノマーとしては、工程(1)で使用できるフルオロモノマーとして記載したものと同じものが挙げられる。
工程(2)では、
一般式(17):CF2=CF−O−(CF2CFY1−O)n−(CFY2)m−A1
(式中、Y1は、フッ素原子、塩素原子又はパーフルオロアルキル基を表す。nは、0〜3の整数を表す。n個のY1は、同一であってもよいし異なっていてもよい。Y2は、フッ素原子又は塩素原子を表す。mは、1〜5の整数を表す。m個のY2は、同一であってもよいし異なっていてもよい。A1は、−SO2X又は−COZ1を表す。Xは、ハロゲン原子、−OM3又は−OM4 1/2を表し、M3は、アルカリ金属又はNR9R10R11R12を表し、M4は、アルカリ土類金属を表し、R9、R10、R11及びR12は、同一又は異なって、水素原子若しくは炭素数1〜4のアルキル基を表す。Z1は、炭素数1〜4のアルコキシル基を表す。)で表されるフルオロモノマーを重合してもよい。
A1としては、非イオン性の基が好ましい。Xとしては、ハロゲン原子が好ましい。A1としては、−SO2Xが好ましく、−SO2Fがより好ましい。
一般式(17)で表されるフルオロモノマーとしては、CF2=CFOCF2CF2SO2F及びCF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2SO2Fからなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
工程(2)において使用することが好適なフルオロモノマーも工程(1)のところで好適と説明したフルオロモノマーと同じであるが、なかでも、パーフルオロモノマーが好ましく、
テトラフルオロエチレン〔TFE〕、
へキサフルオロプロピレン〔HFP〕、
一般式(8):CF2=CF−ORf81
(式中、Rf81は、炭素数1〜8のパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるフルオロモノマー、
一般式(10):CF2=CFOCF2ORf101
(式中、Rf101は炭素数1〜6の直鎖又は分岐状パーフルオロアルキル基、炭素数5〜6の環式パーフルオロアルキル基、1〜3個の酸素原子を含む炭素数2〜6の直鎖又は分岐状パーフルオロオキシアルキル基である。)で表されるフルオロモノマー、
一般式(11):CF2=CFO(CF2CF(Y)O)m(CF2)nF
(式中、Yはフッ素原子又はトリフルオロメチル基を表す。mは1〜4の整数である。nは1〜4の整数である。)で表されるフルオロモノマー、及び、
一般式(17):CF2=CF−O−(CF2CFY1−O)n−(CFY2)m−A1
(式中、Y1は、フッ素原子、塩素原子又はパーフルオロアルキル基を表す。nは、0〜3の整数を表す。n個のY1は、同一であってもよいし異なっていてもよい。Y2は、フッ素原子又は塩素原子を表す。mは、1〜5の整数を表す。m個のY2は、同一であってもよいし異なっていてもよい。A1は、−SO2X又は−COZ1を表す。Xは、ハロゲン原子、−OM3又は−OM4 1/2を表し、M3は、アルカリ金属又はNR9R10R11R12を表し、M4は、アルカリ土類金属を表し、R9、R10、R11及びR12は、同一又は異なって、水素原子若しくは炭素数1〜4のアルキル基を表す。Z1は、炭素数1〜4のアルコキシル基を表す。)で表されるフルオロモノマー
からなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましい。
工程(2)において、上記フルオロモノマーの1種又は2種以上を重合することにより、所望のフルオロポリマー粒子(b)を得ることができる。
工程(2)では、モノマーとして、パーフルオロモノマーのみ、又は、パーフルオロモノマー及び架橋部位を与えるモノマーのみの重合を行うことが好ましい。パーフルオロモノマーのみ、又は、パーフルオロモノマー及び架橋部位を与えるモノマーのみの重合を行うことにより、溶融加工性のパーフルオロ樹脂(但し、ポリテトラフルオロエチレンを除く)又はパーフルオロゴムの粒子を製造することができる。
工程(2)において製造するフルオロポリマー粒子(b)としては、フルオロポリマー(但しポリテトラフルオロエチレンを除く)の粒子であることが好ましく、フッ素樹脂(但し、ポリテトラフルオロエチレンを除く)及びフッ素ゴムからなる群より選択される少なくとも1種の粒子であることがより好ましく、溶融加工性のフッ素樹脂(但し、ポリテトラフルオロエチレンを除く)、部分フッ素化ゴム及びパーフルオロゴムからなる群より選択される少なくとも1種の粒子であることが更に好ましく、溶融加工性のパーフルオロ樹脂(但し、ポリテトラフルオロエチレンを除く)及びパーフルオロゴムからなる群より選択される少なくとも1種の粒子であることが特に好ましく、パーフルオロゴムの粒子であることが最も好ましい。
フルオロポリマー粒子(b)は、ポリテトラフルオロエチレン粒子でないことが好ましく、全重合単位に対するテトラフルオロエチレンの含有量が99モル%未満であるフルオロポリマーの粒子でないことが好ましい。ポリテトラフルオロエチレンとしては、ホモPTFEであっても、変性PTFEであってもよい。変性PTFEは、TFE単位とTFEと共重合可能な変性モノマーに基づく変性モノマー単位とを含む。また、上記PTFEは、非溶融加工性及びフィブリル化性を有する高分子量PTFEであってもよいし、溶融加工性を有し、フィブリル化性を有しない低分子量PTFEであってもよい。
上記溶融加工性のパーフルオロ樹脂及びパーフルオロゴムは、モノマーとして、パーフルオロモノマーのみ、又は、パーフルオロモノマー及び架橋部位を与えるモノマーのみの重合を行うことにより製造することができる。パーフルオロモノマーは、部分フッ素化モノマーや非フッ素化モノマーと比べて、重合速度が遅い。また、パーフルオロモノマーは爆発しやすい性質を持っていることから、重合速度を上げるためにパーフルオロモノマーの重合を高圧で行うことは困難である。しかし、驚くべきことに、本発明の製造方法に従って、体積平均粒子径が極めて小さいフルオロポリマー粒子(a)の存在下にパーフルオロモノマーを重合すると、重合速度が劇的に改善され、多数の粒子が分散した水性分散液を製造することができる。
上記フッ素樹脂及びフッ素ゴムは、フルオロポリマー粒子(a)を構成するフルオロポリマーとして説明したものと同様である。
上記パーフルオロゴムとしては、TFEを含むパーフルオロゴム、例えばTFE/一般式(8)、(10)又は(11)で表されるフルオロモノマー共重合体及びTFE/一般式(8)、(10)又は(11)で表されるフルオロモノマー/架橋部位を与えるモノマー共重合体からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
その組成は、TFE/PMVE共重合体の場合、好ましくは、45〜90/10〜55(モル%)であり、より好ましくは、55〜80/20〜45であり、更に好ましくは、55〜70/30〜45である。
TFE/PMVE/架橋部位を与えるモノマー共重合体の場合、好ましくは、45〜89.9/10〜54.9/0.01〜4(モル%)であり、より好ましくは、55〜79.9/20〜49.9/0.1〜3.5であり、更に好ましくは、55〜69.8/30〜44.8/0.2〜3である。
TFE/炭素数が4〜12の一般式(8)、(10)又は(11)で表されるフルオロモノマー共重合体の場合、好ましくは、50〜90/10〜50(モル%)であり、より好ましくは、60〜88/12〜40であり、更に好ましくは、65〜85/15〜35である。
TFE/炭素数が4〜12の一般式(8)、(10)又は(11)で表されるフルオロモノマー/架橋部位を与えるモノマー共重合体の場合、好ましくは、50〜89.9/ 10〜49.9/0.01〜4(モル%)であり、より好ましくは、60〜87.9/12〜39.9/0.1〜3.5であり、更に好ましくは、65〜84.8/15〜34.8/0.2〜3である。
これらの組成の範囲を外れると、ゴム弾性体としての性質が失われ、樹脂に近い性質となる傾向がある。
上記一般式(8)、(10)及び(11)で表されるフルオロモノマー並びに架橋部位を与えるフルオロモノマーについての詳細は、上述したとおりである。
上記パーフルオロゴムとしては、TFE/一般式(11)で表されるパーフルオロビニルエーテル/架橋部位を与えるフルオロモノマー共重合体、TFE/一般式(11)で表されるパーフルオロビニルエーテル共重合体、TFE/一般式(8)で表されるパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体、及び、TFE/一般式(8)で表されるパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)/架橋部位を与えるモノマー共重合体からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
上記パーフルオロゴムとしては、国際公開第97/24381号パンフレット、特公昭61−57324号公報、特公平4−81608号公報、特公平5−13961号公報等に記載されているパーフルオロゴムも挙げることができる。
工程(2)で使用する水性媒体としては、工程(1)で使用する水性媒体と同じものが挙げられる。工程(2)で使用する水性媒体は、工程(1)において使用した水性媒体と同じ種類であってもよいし、異なる種類であってもよい。
工程(2)において、工程(1)又は工程(1−2)で得られた水性分散液を含む水性媒体中で重合を行うことも好ましい。
工程(2)における重合を重合開始剤及び連鎖移動剤の存在下に行ってもよい。工程(2)で使用する重合開始剤及び連鎖移動剤としては、工程(1)で使用できる重合開始剤及び連鎖移動剤と同じものが挙げられる。
工程(2)における重合は、重合反応器に、工程(1)で得られたフルオロポリマー粒子(a)粒子を仕込み、モノマーの存在する反応器の内容物を撹拌し、そして反応器を所定の重合温度に保持し、次に重合開始剤を加え、重合反応を開始することにより行う。重合反応器に、工程(1)で得られたフルオロポリマー粒子(a)を仕込むには、重合反応器に、工程(1)又は工程(1−2)で得られたフルオロポリマー粒子(a)を含む水性分散液を仕込めばよい。重合反応開始前に、必要に応じて、水性媒体、界面活性剤、添加剤等を反応器に仕込んでもよい。重合反応開始後に、目的に応じて、フルオロモノマー、フッ素非含有モノマー、重合開始剤、界面活性剤、連鎖移動剤等を追加添加してもよい。
工程(2)における重合では、重合反応開始時における水性媒体中のフルオロポリマー粒子(a)の含有量(固形分濃度)が、水性媒体の100〜50000ppmに相当する量であることが好ましい。より好ましくは200〜20000ppmに相当する量である。更に好ましくは、500〜10000ppmに相当する量である。
工程(2)における重合では、工程(2)の重合反応開始時におけるフルオロポリマー粒子(a)の粒子数が、5×1015個/cc以上かつ1×1019個以下であることが好ましい。
工程(2)における重合で使用することができる界面活性剤としては、上述したLogPOWが3.4以下の含フッ素界面活性剤が挙げられる。工程(2)で使用する界面活性剤は、工程(1)において使用した界面活性剤と同じ種類であってもよいし、異なる種類であってもよい。また、工程(2)で添加してもよいが、工程(1)で使用した界面活性剤が充分な量で残留している場合には、工程(2)で更に界面活性剤を追加することは不要である。
工程(2)における重合での界面活性剤の使用量は、水性媒体の10〜200,000ppmに相当する量であることが好ましい。より好ましくは50〜100,000ppmに相当する量である。
工程(2)における重合は、下記一般式(2)
X−(CF2)m2−Y (2)
(式中、XはH又はFを表し、m2は6以上の整数を表し、Yは−SO3M、−SO4M、−SO3R、−SO4R、−COOM、−PO3M2、−PO4M2(MはH、NH4又はアルカリ金属を表し、Rは炭素数1〜12のアルキル基を表す。)を表す。)で表される含フッ素化合物の非存在下に行うことが好ましい。本発明の製造方法によれば、このような従来の長鎖含フッ素界面活性剤を使用しなくても、粒子径の充分小さいフルオロポリマー粒子を含む水性分散液を製造することができる。
工程(1)及び(2)における重合を、下記一般式(2)
X−(CF2)m2−Y (2)
(式中、XはH又はFを表し、m2は6以上の整数を表し、Yは−SO3M、−SO4M、−SO3R、−SO4R、−COOM、−PO3M2、−PO4M2(MはH、NH4又はアルカリ金属を表し、Rは炭素数1〜12のアルキル基を表す。)を表す。)で表される含フッ素化合物の非存在下に行うことは、本発明の好適な実施形態の1つである。
本発明の製造方法により得られる水性分散液に含まれるフルオロポリマー粒子(b)は、上述したとおり、コアがフルオロポリマー粒子(a)を構成するフルオロポリマーから形成されており、シェルが工程(2)で重合して得られるフルオロポリマーから形成されているコア−シェル構造を有するものと推測される。フルオロポリマー粒子(b)は、粒子に対して0.01〜4質量%のコアを含むことが好ましく、0.5〜3質量%のコアを含むことがより好ましい。コアの量が多すぎると、所望の特性を有するフルオロポリマー粒子(b)が製造できないおそれがあり、コアの量が少なすぎると、生産性に劣るおそれがある。フルオロポリマー粒子(b)に占めるコアの量は重合条件から計算により算出することができる。
すなわち、本発明の製造方法は、フルオロポリマー粒子(b)に占めるコアの量が上述の範囲になるように、工程(1)及び(2)を行うことが好ましい。
フルオロポリマー粒子(b)は、体積平均粒子径が12〜700nmであることが好ましく、体積平均粒子径が15〜500nmであることがより好ましい。体積平均粒子径が上記範囲にあるフルオロポリマー粒子(b)は、水性分散体中に安定して存在することができる。フルオロポリマー粒子(b)が、パーフルオロゴムの粒子である場合の体積平均粒子径は、12nm以上であることがより好ましく、20nm以上であることが更に好ましく、700nm以下であることがより好ましく、500nm以下であることが更に好ましい。
フルオロポリマー粒子(b)がフッ素ゴムである場合、該フッ素ゴムは、高温における圧縮永久歪みに優れる点から、ガラス転移温度が−70℃以上であることが好ましく、−60℃以上であることがより好ましく、−50℃以上であることが更に好ましい。また、耐寒性が良好であるという点から、5℃以下であることが好ましく、0℃以下であることがより好ましく、−3℃以下であることが更に好ましい。
上記ガラス転移温度は、示差走査熱量計(メトラー・トレド社製、DSC822e)を用い、試料10mgを10℃/minで昇温することによりDSC曲線を得て、DSC曲線の二次転移前後のベースラインの延長線と、DSC曲線の変曲点における接線との2つの交点の中点を示す温度として求めることができる。
フルオロポリマー粒子(b)がフッ素ゴムである場合、該フッ素ゴムは、耐熱性が良好な点で、170℃におけるムーニー粘度ML(1+20)が30以上であることが好ましく、40以上であることがより好ましく、50以上であることが更に好ましい。また、加工性が良好な点で、150以下であることが好ましく、120以下であることがより好ましく、110以下であることが更に好ましい。
フルオロポリマー粒子(b)がフッ素ゴムである場合、該フッ素ゴムは、耐熱性が良好な点で、100℃におけるムーニー粘度ML(1+10)は、10以上が好ましく、20以上であることがより好ましく、30以上であることが更に好ましい。また、加工性が良好な点で、120以下であることが好ましく、100以下であることがより好ましく、80以下であることが更に好ましい。
上記ムーニー粘度は、ALPHA TECHNOLOGIES社製 ムーニー粘度計MV2000E型を用いて、100℃又は170℃において、JIS K6300に従い測定することができる。
本発明は、含フッ素界面活性剤及び重合開始剤の存在下、TFEとHFPの重合を水性媒体中で行うことによりFEP粒子(a1)を含む水性分散液を製造する工程(1)、並びに、FEP粒子(a1)及び重合開始剤の存在下、TFEとHFPの重合を水性媒体中で行うことにより、FEP粒子(b1)を含む水性分散液を製造する工程(2)、を含み、FEP粒子(a1)は、当量重量(EW)が6,000以上であるフルオロポリマーからなり、体積平均粒子径が0.1〜10nmであることを特徴とするフルオロポリマー水性分散液の製造方法であることが好ましい。
本発明はまた、含フッ素界面活性剤及び重合開始剤の存在下、TFEとPAVEの重合を水性媒体中で行うことによりPFA粒子(a2)を含む水性分散液を製造する工程(1)、並びに、PFA粒子(a2)及び重合開始剤の存在下、TFEとPAVEの重合を水性媒体中で行うことにより、PFA粒子(b2)を含む水性分散液を製造する工程(2)、を含み、PFA粒子(a2)は、当量重量(EW)が6,000以上であるフルオロポリマーからなり、体積平均粒子径が0.1〜10nmであることを特徴とするフルオロポリマー水性分散液の製造方法であることも好ましい。
本発明はまた、含フッ素界面活性剤及び重合開始剤の存在下、フルオロモノマーとビニルエステルの重合を水性媒体中で行うことによりフルオロモノマー/ビニルエステル共重合体粒子(a3)を含む水性分散液を製造する工程(1)、フルオロモノマー/ビニルエステル共重合体粒子(a3)及び重合開始剤の存在下、フルオロモノマーとビニルエステルの重合を水性媒体中で行うことにより、フルオロモノマー/ビニルエステル共重合体粒子(b3)を含む水性分散液を製造する工程(2)、並びに、フルオロモノマー/ビニルエステル共重合体粒子(b3)を加水分解することにより、フルオロモノマー/ビニルアルコール共重合体粒子(c3)を含む水性分散液を製造する工程(3)を含み、フルオロモノマー/ビニルエステル共重合体粒子(a3)は、当量重量(EW)が6,000以上であるフルオロポリマーからなり、体積平均粒子径が0.1〜10nmであることを特徴とするフルオロポリマー水性分散液の製造方法であることも好ましい。
工程(3)におけるフルオロモノマー/ビニルエステル共重合体粒子(b3)を加水分解する方法は、従来からよく知られており、従来公知の方法を本発明でも行うことができる。フルオロモノマー/ビニルエステル共重合体粒子(b3)を加水分解することによって、アセテート基が水酸基に変換され、フルオロモノマー/ビニルアルコール共重合体粒子(c3)が得られる。
上記ケン化度は、1H−NMRにより、ケン化前後での2.1ppm付近のアセチル基(CH3C(=O)−)由来のプロトンの積分値と、2.2〜2.7ppmの主鎖メチレン基(−CH2−CH−)由来のプロトンの積分値を定量することにより測定できる。
1H−NMR:Varian社製のGEMINI−300
本発明はまた、含フッ素界面活性剤及び重合開始剤の存在下、TFEの重合を水性媒体中で行うことによりPTFE粒子(a4)を含む水性分散液を製造する工程(1)、並びに、PTFE粒子(a4)及び重合開始剤の存在下、一般式(17):CF2=CF−O−(CF2CFY1−O)n−(CFY2)m−A1
(式中、Y1は、フッ素原子、塩素原子又はパーフルオロアルキル基を表す。nは、0〜3の整数を表す。n個のY1は、同一であってもよいし異なっていてもよい。Y2は、フッ素原子又は塩素原子を表す。mは、1〜5の整数を表す。m個のY2は、同一であってもよいし異なっていてもよい。A1は、−SO2X又は−COZ1を表す。Xは、ハロゲン原子、−OM3又は−OM4 1/2を表し、M3は、アルカリ金属又はNR9R10R11R12を表し、M4は、アルカリ土類金属を表し、R9、R10、R11及びR12は、同一又は異なって、水素原子若しくは炭素数1〜4のアルキル基を表す。Z1は、炭素数1〜4のアルコキシル基を表す。)で表されるフルオロモノマーの重合を水性媒体中で行うことにより、フルオロポリマー粒子(b4)を含む水性分散液を製造する工程(2)、を含み、Xがハロゲンである場合、フルオロポリマー粒子(b4)を加水分解することにより、フルオロポリマー粒子(c4)を含む水性分散液を製造する工程(3)を含み、PTFE粒子(a4)は、当量重量(EW)が6,000以上であるフルオロポリマーからなり、体積平均粒子径が0.1〜10nmであることを特徴とするフルオロポリマー水性分散液の製造方法であることも好ましい。
工程(2)では、一般式(17)で表されるフルオロモノマーと、TFEとを重合することが好ましい。
工程(2)において得られるフルオロポリマー粒子(b4)は、TFE/一般式(17)で表されるフルオロモノマー共重合体であることが好ましく、TFE/CF2=CFOCF2CF2SO2F共重合体又はTFE/CF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2SO2F共重合体がより好ましい。
工程(2)において得られるフルオロポリマー粒子(b4)を加水分解する方法は、従来からよく知られており、従来公知の方法を本発明でも行うことができる。工程(2)において得られるフルオロポリマー粒子(b4)を加水分解することによって、該フルオロポリマー粒子(b4)中の−SO2X(Xはハロゲンを表す。)が−SO3M3又は−SO3M4 1/2に変換される。
本発明はまた、含フッ素界面活性剤及び重合開始剤の存在下、一般式(18):CF2=CF−O−(CF2CFY1−O)n−(CFY2)m−A2
(式中、Y1は、フッ素原子、塩素原子又はパーフルオロアルキル基を表す。nは、0〜3の整数を表す。n個のY1は、同一であってもよいし異なっていてもよい。Y2は、フッ素原子又は塩素原子を表す。mは、1〜5の整数を表す。m個のY2は、同一であってもよいし異なっていてもよい。A2は、−SO2Xを表す。Xは、ハロゲン原子を表す。)で表されるフルオロモノマーの重合を水性媒体中で行うことによりフルオロポリマー粒子(a5)を含む水性分散液を製造する工程(1)、並びに、フルオロポリマー粒子(a5)及び重合開始剤の存在下、一般式(17):CF2=CF−O−(CF2CFY1−O)n−(CFY2)m−A1
(式中、Y1は、フッ素原子、塩素原子又はパーフルオロアルキル基を表す。nは、0〜3の整数を表す。n個のY1は、同一であってもよいし異なっていてもよい。Y2は、フッ素原子又は塩素原子を表す。mは、1〜5の整数を表す。m個のY2は、同一であってもよいし異なっていてもよい。A1は、−SO2X又は−COZ1を表す。Xは、ハロゲン原子、−OM3又は−OM4 1/2を表し、M3は、アルカリ金属又はNR9R10R11R12を表し、M4は、アルカリ土類金属を表し、R9、R10、R11及びR12は、同一又は異なって、水素原子若しくは炭素数1〜4のアルキル基を表す。Z1は、炭素数1〜4のアルコキシル基を表す。)で表されるフルオロモノマーの重合を水性媒体中で行うことにより、フルオロポリマー粒子(b5)を含む水性分散液を製造する工程(2)、を含み、Xがハロゲンである場合、フルオロポリマー粒子(b5)を加水分解することにより、フルオロポリマー粒子(c5)を含む水性分散液を製造する工程(3)を含み、フルオロポリマー粒子(a5)は、当量重量(EW)が6,000以上であるフルオロポリマーからなり、体積平均粒子径が0.1〜10nmであることを特徴とするフルオロポリマー水性分散液の製造方法であることも好ましい。
工程(1)及び工程(2)では、一般式(18)又は一般式(17)で表されるフルオロモノマーと、TFEとを重合することが好ましい。
工程(2)において得られるフルオロポリマー粒子(b5)は、TFE/一般式(17)で表されるフルオロモノマー共重合体であることが好ましく、TFE/CF2=CFOCF2CF2SO2F共重合体又はTFE/CF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2SO2F共重合体がより好ましい。
工程(2)において得られるフルオロポリマー粒子(b5)を加水分解する方法は、従来からよく知られており、従来公知の方法を本発明でも行うことができる。工程(2)において得られるフルオロポリマー粒子(b5)を加水分解することによって、該フルオロポリマー粒子(b5)中の−SO2X(Xはハロゲンを表す。)が−SO3M3又は−SO3M4 1/2に変換される。
本発明の製造方法により得られるフルオロポリマー水性分散液に含まれるフルオロポリマー粒子(b)を凝析させて、フルオロポリマーの粉末やクラムを製造することができる。上記凝析は、硫酸アルミニウム等の無機塩又は無機酸を添加するか、機械的な剪断力を与えるか、分散液を凍結した後、解凍することによって行うことができる。
本発明の製造方法により得られるフルオロポリマー水性分散液及び上記フルオロポリマーの粉末やクラムは、従来公知のフルオロポリマーと比べても何ら劣ることのない優れた物性を有し、従来公知のフルオロポリマーと同じ方法で使用でき、同じ用途に使用することができる。
つぎに本発明を実施例をあげて説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
実施例の各数値は以下の方法により測定した。
(工程1で得られた水性分散液中の粒子数)
下記式により算出した。
式中、ポリマー粒子の個数は水1ccあたりであり、比重は、工程1で合成されるポリマーの比重の実測値を用いる。工程1で合成されるポリマーがPTFEである場合は、比重は2.28を用いる。
(工程(1)で得られる水性分散液に水及び含フッ素界面活性剤水溶液を添加して、工程2に用いる場合の工程2に用いられる水性分散液のフルオロポリマー粒子(a)の個数の計算方法)
下記式により算出した。
{工程(1)で得られる水性分散液のフルオロポリマー粒子(a)の個数×工程(2)に用いる工程(1)の水性分散液の量×(100−工程(1)で得られる水性分散液の固形分濃度)/100}/{〔工程(2)に用いる工程(1)の水性分散液の量×(100−工程(1)の水性分散液の固形分濃度)/100〕+工程(2)での添加水量+工程(2)での添加含フッ素界面活性剤水溶液量×(100−工程(2)での添加含フッ素界面活性剤水溶液の濃度)/100}
上記式において、含フッ素界面活性剤水溶液の濃度は、質量パーセント濃度(wt%)の値を用いる。
(体積平均粒子径)
動的光散乱法により測定する。重合により得られた水性分散液を、純水で10倍希釈し、粒子径測定用の水性分散液を作成し、ELSZ−1000S(大塚電子株式会社製)を使用して25℃、積算70回にて測定した。溶媒:水の屈折率1.3328、溶媒の粘度は0.8878とした。体積分布の平均値を粒子径とした。
(溶融粘度(MV))
ASTM D 1238に準拠し、フローテスター(島津製作所社製)及び2φ−8Lのダイを用い、予め測定温度(380℃)で5分間加熱しておいた2gの試料を0.7MPaの荷重にて上記温度に保って測定した。
(PTFEの融点)
示差走査熱量計〔DSC〕を用いて10℃/分の速度で昇温したときの融解熱曲線における極大値に対応する温度として求めた。
(パーフルオロゴム中のPTFEの融点、融解熱)
示差熱分析〔DTA〕を用いて10℃/分の速度で昇温したときの融解熱曲線における極大値に対応する温度として求めた。融点における融解熱は標準物質として、融解熱既知(23.1J/g)の鉛を用いて計算した。
(パーフルオロゴムのガラス転移温度)
ガラス転移温度は、示差走査熱量計(メトラー・トレド社製、DSC822e)を用い、試料10mgを10℃/minで昇温することによりDSC曲線を得て、DSC曲線の二次転移前後のベースラインの延長線と、DSC曲線の変曲点における接線との2つの交点の中点を示す温度として求めることができる。
(固形分濃度)
水性分散液1gを、送風乾燥機中で150℃、12時間の条件で乾燥し、水性分散液の質量(1g)に対する、加熱残分の質量の割合を百分率で表した値を採用した。
(ポリマーのモノマー単位組成)
19F−NMRによって測定した。
(ムーニー粘度)
上記ムーニー粘度は、ALPHA TECHNOLOGIES社製 ムーニー粘度計MV2000E型を用いて、JIS K6300に従い測定した。
(合成例 水性分散液1の合成)
内容量6Lの撹拌機付きSUS製反応器に、3560gの脱イオン水、94gのパラフィンワックス(日本精鑞株式会社製SP−0145)及び358gのF(CF2)5COONH4を入れた。次いで反応器の気相の気体を85℃まで加熱しながら吸引すると同時にTFEでパージして反応器内の酸素を除いた。その後、0.17gのエタンガスを反応器に加え、内容物を280rpmで攪拌した。反応器中にTFEを0.73MPaGの圧力となるまで加えた。開始剤として、20gの脱イオン水に溶解した0.72gの過硫酸アンモニウム(APS)を反応器に注入し、TFEで反応器を0.83MPaGの圧力にした。開始剤の注入後に圧力の低下が起こり重合の開始が観測された。TFE単量体を反応器に加えて圧力を保ち、850gのTFEが反応し終わるまで重合を続けた。その後に、反応器内の圧力が常圧になるまで排気し、内容物を反応器から取り出して冷却した。上澄みのパラフィンワックスをPTFE水性分散液から取り除いた。
得られたPTFE水性分散液の固形分濃度は19.2質量%であった。
得られたPTFE水性分散液の一部を脱イオン水で固形分濃度が約13重量%となるように希釈し、高速撹拌条件下で凝固させた。凝固した湿潤粉末を150℃で18時間乾燥した。このときのPTFE粉末の溶融粘度は3.0×103Pa・S、融点は327.3℃であった。
得られたPTFE水性分散液の一部、1156gを攪拌翼の付いた3L容積のステンレス製オートクレーブに入れ、窒素置換後、攪拌下、内温80℃で5時間加熱した後、内温を室温に戻し、PTFE水性分散液を取り出した。
得られたPTFE水性分散液(水性分散液1)の固形分濃度は20.0質量%であった。動的光散乱法で測定された体積平均粒子径は、1.2nmであった。ポリマー粒子の個数は1.2×1020個/ccと計算される。
実施例1
(CN基含有パーフルオロゴムの重合)
純水1123g、53.2gの水性分散液1、F(CF2)5COONH4の50wt%水溶液14.8g、及び、炭酸アンモニウム0.105gを混合し、重合用水溶液1とした。この重合用水溶液1のポリマー粒子の個数は、4.4×1018と計算される。
着火源をもたない内容積3リットルのステンレススチール製オートクレーブ(マックスブレンドタイプの攪拌翼と邪魔板2枚が付属)に、重合用水溶液1を入れた後、系内を窒素ガスで充分に置換した後、脱気し、600rpmで撹拌しながら、52℃に昇温し、テトラフルオロエチレン(TFE)とパーフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)の混合ガス(TFE/PMVE=24/76モル%比)を、内圧が0.82MPa・Gになるように仕込んだ。ついで、CF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2CN(CNVE)を0.85g窒素で圧入した後、過硫酸アンモニウム(APS)6.15gを水15gに溶解し、窒素で圧入して反応を開始した。
重合の進行に伴い、槽内圧力が低下するので、圧力が0.735MPa・Gとなった時に、TFE7gおよびPMVE8gをオートクレーブに導入し、昇圧した。反応の進行にともない同様にTFE及びPMVEを60.1/39.9モル%の比率で圧入し、0.735MPa・G〜約0.84MPa・Gの間で、昇圧、降圧を繰り返し、重合終了までにTFEを163gとPMVEを180g圧入した。重合中にCF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2CNを8回、TFEの総仕込み量が18、36、54、72、91、109、127、145gに達した時点で、0.85gずつ分割して窒素で圧入した。その後、オートクレーブを冷却し、未反応モノマーを放出して、固形分濃度22.6質量%の水性分散液1573gを得た。重合時間は15.2時間であった。水性分散液には、凝集ポリマーは全く無く、水性分散液を取り出した後のオートクレーブの攪拌翼、槽内壁、邪魔板などの槽内には付着ポリマーは全く無かった。
(CN基含有パーフルオロゴムの後処理)
得られた水性分散液900gに純水900gを加え、混合希釈した。この混合希釈液を3.5%塩酸水溶液7500gに滴下した。滴下は、塩酸水溶液を攪拌しながら行なった。塩酸水溶液中に、ポリマーが凝析されるので、凝析されたポリマーをろ別し、純水10000gに移し、10分間攪拌しながら、洗浄した。10分後、再びポリマーをろ別し、純水10000gに移し、10分間攪拌しながら洗浄した。この純水10000gでの洗浄操作を6回繰り返した後、ポリマーをろ別した。ろ別されたポリマーは、70℃で60時間、真空乾燥させた。得られたポリマーは199gであった。
(CN基含有パーフルオロゴムの分析)
19F−NMR(固体NMR)分析の結果、乾燥後のポリマーのモノマー単位組成は、TFE/PMVE/CNVE=58.4/41.1/0.43モル%であった。170℃でのムーニー粘度は、ML(1+20)が60であった。ガラス転移温度は、−5℃であった。DTA測定の結果、水性分散液1中のPTFEに由来する321℃にピークが観察され、その融解熱は、1.4J/gであった。
使用した水性分散液1の量、CN基含有パーフルオロゴムの水性分散液の質量および固形分濃度から、CN基含有パーフルオロゴムは、3.0wt%のコアを含むと計算される。
実施例2(含ヨウ素パーフルオロゴムの製法)
(含ヨウ素パーフルオロゴムの重合)
純水1441g、68.3gの水性分散液1、F(CF2)5COONH4の50wt%水溶液19.0g、及び、炭酸アンモニウム0.138gを混合し、重合用水溶液2とする。この重合用水溶液2のポリマー粒子の個数は、4.4×1018個/ccと計算される。
着火源をもたない内容積3リットルのステンレススチール製オートクレーブ(マックスブレンドタイプの攪拌翼と邪魔板2枚が付属)に、重合用水溶液2を入れた後、系内を窒素ガスで充分に置換した後、脱気し、600rpmで撹拌しながら、50℃に昇温し、テトラフルオロエチレン(TFE)とパーフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)の混合ガス(TFE/PMVE=26/74モル%比)を、内圧が0.830MPa・Gになるように仕込んだ。
過硫酸アンモニウム(APS)0.0987gを水2.0gに溶解し、窒素で圧入して反応を開始した。反応の進行にともない槽内圧力が低下するので、圧力が0.735MPa・Gになった時に、TFE9g、PMVE8gをオートクレーブに導入し、昇圧した。続いて、I(CF2CF2)2I 2.93gを水2gとともに窒素で圧入した。反応の進行にともないTFE及びPMVEを62.9/37.1モル%の比率で圧入し、約0.735〜0.90MPa・Gのあいだで、昇圧、降圧を繰り返し、重合終了までにTFE324gとPMVE317gを圧入した。重合開始後、0.33hr.、0.67hr.、1.03hr.、1.50hr.、1.83hr.、3.80hr.、5.32hr.にAPSをそれぞれ0.5g,1.0g,1.0g,1.0g,2.0g,2.0g,2.0gを水3.5gに溶かした水溶液として添加した。その後、オートクレーブを冷却し、未反応モノマーを放出して、重合を終了した。重合時間は19.45時間であった。
固形分濃度29.4質量%の水性分散液2232gを得た。
水性分散液には、凝集ポリマーは全く無く、水性分散液を取り出した後のオートクレーブの攪拌翼、槽内壁、邪魔板などの槽内には付着ポリマーは全く無かった。
(含ヨウ素パーフルオロゴムの後処理)
実施例2の(含ヨウ素パーフルオロゴムの重合)で得られた水性分散液900gに純水900gを加え、混合希釈した。この混合希釈液を3.5%塩酸水溶液7500gに滴下した。滴下は、塩酸水溶液を攪拌しながら行なった。塩酸水溶液中に、ポリマーが凝析されるので、凝析されたポリマーをろ別し、純水10000gに移し、10分間攪拌しながら、洗浄した。10分後、再びポリマーをろ別し、純水10000gに移し、10分間攪拌しながら洗浄した。この純水10000gでの洗浄操作を6回繰り返し、ポリマーをろ別した。ろ別されたポリマーは、135℃で15時間、真空乾燥させた。得られたポリマーは260gであった。
(含ヨウ素パーフルオロゴムの分析)
19F−NMR(270℃加熱による溶融NMR)分析の結果、この重合体のモノマー単位組成は、TFE/PMVE=64.1/35.9モル%であった。
100℃でのムーニー粘度は、ML(1+10)が、53であった。元素分析によるヨウ素含量は、0.17wt%であった。
ガラス転移温度は、−4℃であった。
DTA測定の結果、水性分散液1中のPTFEに由来する326℃にピークが観察され、その融解熱は、1.1J/gであった。
使用した水性分散液1の量、ヨウ素末端パーフルオロゴムの水性分散液の質量および固形分濃度から、含ヨウ素パーフルオロゴムは、2.1wt%のコアを含むと計算される。
実施例3(含ヨウ素パーフルオロゴムの製法)
(含ヨウ素パーフルオロゴムの重合)
純水1161g、54.1gの水性分散液1、F(CF2)5COONH4の50wt%水溶液232.1g、NaCl 3.918g、及び、Na2SO32.112gを混合し、重合用水溶液3とした。この重合用水溶液3のポリマー粒子の個数は、4.0×1018個/ccと計算される。
着火源をもたない内容積3リットルのステンレススチール製オートクレーブ(マックスブレンドタイプの攪拌翼と邪魔板2枚が付属)に、重合用水溶液3を入れた後、系内を窒素ガスで充分に置換した。その後、脱気し、600rpmで撹拌しながら、15℃に温調し、CF3CF2CF2(OCF(CF3)CF2)2OCF=CF2 360gを圧入した後、テトラフルオロエチレン(TFE)を、内圧が0.226MPa・Gになるように仕込んだ。過硫酸アンモニウム(APS)0.009gを水2gに溶解し、窒素で圧入して反応を開始した。重合の進行に伴い、槽内圧力が低下するので、内圧が0.209MPa・Gとなったとき、I(CF2CF2)2I 1.536gを水2gとともに窒素で圧入した。重合の進行に伴い、槽内圧力が低下するので、圧力が0.147MPa・Gになった時に、TFEを槽内圧力が0.243MPa・Gになるまでオートクレーブに導入し、昇圧した。その後、同様の操作を繰り返し、0.147〜0.243MPa・Gの間で、昇圧、降圧を繰り返し、重合終了までにTFEを74g圧入した。重合開始後、3.00hr.、5.07hr.、11.38hr.、13.72hr.、19.30hr.、23.67hrに、APSをそれぞれ0.009g、0.018g、0.720g、0.720g、0.36g、0.36gを水2.0gに溶かした水溶液として添加した。また、重合開始後、4.00hr.,4.63hr.,7.47hr.,10.22hr.,11.02hr.,13.72hr.,19.30hrhr.,に、CuSO4・5H2Oをそれぞれ、0.00029g、0.00029g、0.00058g、0.00116g、0.0574g、0.0574g、0.0287gを水2.0gに溶解した水溶液を窒素で圧入した。また、重合中、TFEを合計50gを圧入した後、CF2=CFOCF2CF2CH2I 2.23gを水2gとともに圧入した。重合時間は27.9時間であった。水性分散液1978gを得た。水性分散液は、2層分離しており、下層を分取して計量すると229gであった。上層の固形分濃度は、12.5wt%であった。
水性分散液には、凝集ポリマーは全く無かったが、水性分散液を取り出した後のオートクレーブ内部の攪拌翼、槽内壁、邪魔板などに微量の低粘度の付着物が存在した。
(含ヨウ素パーフルオロゴムの後処理)
この水性分散液の上層のうち500gとアセトン17.9gを1000mlポリビンに入れ、混合した。このポリビンを−20℃の冷凍庫に60時間入れ、凍結させた。凍結した水性分散液を約40℃の水に浸し、溶解させた。パーフルオロゴムが凝析しているので、パーフルオロゴムと水溶液をろ別し、ポリマーは、流水で洗浄後、ジューサーミキサーに洗浄用の純水とともに入れて攪拌洗浄し、パーフルオロゴムをろ別した。洗浄水に泡立ちがなくなるまで、ジューサーミキサーによる攪拌洗浄を繰り返す。洗浄後のポリマーは、135℃で13時間真空乾燥させた。上記の後処理を繰り返し、得られた水性分散液の上層1557gから乾燥したパーフルオロゴム161gを得た。
(含ヨウ素パーフルオロゴムの分析)
得られたパーフルオロゴムを19F−NMR(270℃加熱溶融での分析)で分析を行った。19F−NMRの分析では、CF3CF2CF2(OC(CF3)CF2)2OCF=CF2モノマー単位と、CF2=CFOCF2CF2CH2Iモノマー単位は、区別できないので、CF2=CFOCF2CF2CH2Iは、CF3CF2CF2(OC(CF3)CF2)2OCF=CF2として計算し、得られたパーフルオロゴムは、TFE/CF3CF2CF2(OC(CF3)CF2)2OCF=CF2 のモノマー単位組成として、計算を行なった。結果、この重合体のモノマー単位組成は、TFE/CF3CF2CF2(OC(CF3)CF2)2OCF=CF2=82.8/17.2モル%であった。元素分析によるヨウ素含量は、0.44wt%であった。100℃でのムーニー粘度ML(1+10)は、46であった。ガラス転移温度は、−19℃であった。DTA測定の結果、水性分散液1中のPTFEに由来する323℃にピークが観察され、融解熱は、4.2J/gであった。