JP6224886B2 - 伝動ベルト及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、伝動ベルト及びその製造方法に関する。
Vリブドベルトは、一般的には、ベルト長手方向に平行に延びて並列状態に配置され、複数のリブが形成された圧縮ゴム層と、この圧縮ゴム層上に積層され、コードからなる心線が埋設された心線支持層と、この心線支持層の背面側に縫合された帆布で構成された伸張ゴム層とを備えている。そして、このようなVリブドベルトにおける伸張ゴム層としての帆布は、ベルトの耐縦亀裂性を保持するために設けられているものであり、例えば、経糸と緯糸とを織り込んだ平織布にゴム引き処理を施すことで形成されている。
しかし、上述したような一般的なVリブドベルトを駆動プーリと従動プーリとに掛架し、背面をアイドラープーリに接触係合させると、周期的に異音が発生することが多い。この周期的な異音は、帆布の縫合領域にて発生し易いが、この縫合領域以外の領域でも発生する。そして、このような非縫合領域における異音は、縫合領域を平坦面となるように形成しても発生する。
このような非縫合領域での異音発生の原因の一つとして、帆布の背面状態の影響が想定される。すなわち、バイアス帆布や筒状帆布を成形中に、あるいは筒状帆布をベルト成形体に嵌入中に、帆布が機械的に変形して経糸と緯糸との交差角や経糸と緯糸とによって形成される開口部の大きさが変化し、開口部の大きい部分と小さい部分との差が広がってしまい、糸が局部的に収束する領域が発生する。このため、糸が局部的に収束した領域での帆布背面の凹凸等の形態が他の領域の形態と異なることによって異音が発生することが想定される。また、帆布を積層したVリブドベルトは、充分な背面摩擦係数が確保できないため、所望とする伝達性能が得難いという問題もあった。
そこで、異音発生の抑制、並びに伝達性能向上の観点から、背面に帆布を積層しないVリブドベルト、すなわち、伸張ゴム層をゴム組成物で構成したVリブドベルトが提案されている。しかし、このようなVリブドベルトは、ベルト背面においてゴムが直接露出している状態となるため、アイドラープーリに当接係合するときに、背面にて粘着磨耗が発生し易く、このことによって逆にスリップ音等の異音が発生し易くなってしまうという問題があった。
このため、このような問題を解消すべく、種々のベルトが開発されつつある。例えば、粘着磨耗や異音の発生を抑制するため、特開2004−162899号公報(特許文献1)には、一方向に配向した短繊維が混入された短繊維入りゴムによりベルト背面が補強された摩擦伝動ベルトであって、上記短繊維入りゴムは、短繊維の配合方向がベルト幅方向に対して角度をなすようにベルト背面に一体に設けられている摩擦伝動ベルトが開示されている。しかし、この文献のように、単に、短繊維を含有するゴム組成物で背面ゴム層を形成するだけでは、その製造過程においてベルト背面にガスが残留して凹部が形成されることがあり、この凹部から亀裂が発生しやすい問題があった。また、ベルト背面の端部からベルト幅方向に亀裂が発生しやすい問題もあった。さらに、この文献では、背面ゴム層と、圧縮ゴム層との間に、心線を埋設するための接着ゴム層を設けることが必須である。
また、特許第4800794号公報(特許文献2)では、腹面にベルト長手方向に延びる複数のリブを配設し、背面が伸張ゴム層で構成されたVリブドベルトの製造方法において、内型に植毛層を介して伸張ゴム層を配置し、内周側に背面、外周側に腹面が位置するように未加硫ベルトスリーブを形成する工程、該未加硫ベルトスリーブを加硫することにより、表面に植毛層を有する加硫ベルトスリーブを形成する工程を備え、伸張ゴム層は短繊維を含有し、短繊維がベルト幅方向に配向するように配置されるVリブドベルトの製造方法が開示されている。しかし、この文献のように、伸張ゴム層の背面に植毛層を設けたVリブドベルトでは、ベルト走行中に植毛層が背面から飛散するため、その効果は短期的なものにとどまる。
特開2004−162899号公報(特許請求の範囲、図4) 特許第4800794号公報(特許請求の範囲、図)
従って、本発明の目的は、ベルト表面(ベルト背面側の表面)の溝(又は凹凸)の発生を防止できる伝動ベルト及びその製造方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、金型で成形しても、ベルト表面を平坦(又は平滑)にでき、ベルト背面における亀裂発生を防止して、ベルト寿命を効率よく向上できる伝動ベルト及びその製造方法を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、伸張ゴム層と圧縮ゴム層との間に心線が介在しても、接着ゴム層を設けることなく、両層間の高い接着性を実現できる伝動ベルト及びその製造方法を提供することにある。
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、短繊維を含む伸張ゴム層と、心線と、圧縮ゴム層とを備えた特定の伝動ベルトにおいて、伸張ゴム層の少なくとも一部の表面を熱可塑性樹脂で形成されたフィルム状のスキン層で被覆することにより、金型で成形(特に圧縮ゴム層のリブ部を研磨により形成することなく金型で成形)しても、成形において発生するガスに起因するベルト表面の溝(凹凸)の発生を効率よく抑えることができたり、伸張ゴム層に心線を効率よく埋設させ、接着ゴム層を設けなくても伸張ゴム層と圧縮ゴム層との高い密着性を担保できることなどにより、優れた耐久性を実現できること、また、このような耐久性を向上させつつ、異音や騒音の発生を効率よく抑制できること(特に、伝達性能や耐摩耗性といったベルト特性を損なうことなく、異音(発音)を高いレベルで抑えることができること)を見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明の伝動ベルトは、短繊維を含む伸張ゴム層(ベルト背面部を構成する伸張ゴム層)と、心線と、伸張ゴム層上に積層された圧縮ゴム層(ベルト腹面部を構成する圧縮ゴム層)とを備えた伝動ベルトであって、伸張ゴム層の表面(伸張ゴム層のベルト背面側の表面)が、熱可塑性樹脂で形成されたフィルム状の(又は平滑な)スキン層で被覆され、かつ心線がベルト長手方向に沿って伸張ゴム層に埋設されている伝動ベルトである。
熱可塑性樹脂は、伸張ゴム層(および圧縮ゴム層)の加硫温度以下の融点又は軟化点を有していてもよい。また、熱可塑性樹脂は、例えば、オレフィン系樹脂及び熱可塑性エラストマーから選択された少なくとも1種であってもよい。なお、熱可塑性樹脂は、通常、架橋されていなくてもよい。
スキン層は、代表的には、スキン層が熱可塑性樹脂繊維で形成された布帛(例えば、不織布)の溶融物であってもよい。また、スキン層の平均厚みは、0.01〜0.5mm程度であってもよい。
スキン層は、ベルトの幅方向に沿って伸張ゴム層の一端から他端にわたって伸張ゴム層の表面を被覆(例えば、伸張ゴム層の表面をベルトの幅方向に沿って一端から他端にわたって帯状に被覆、伸張ゴム層の表面全体を被覆など)していてもよい。このような場合、スキン層は、ベルトの長さの5%以上の平均幅で被覆していてもよい。
本発明では、前記スキン層を設けることにより、ベルト背面に凹凸や溝を形成することがなく、また、心線を主として伸張ゴム層に埋設させることができる。そのため、本発明の伝動ベルトは、伸張ゴム層側のベルト表面に、凹凸又は溝を有していないベルトであってもよい。また、本発明の伝動ベルトでは、心線の全体積の半分以上が伸張ゴム層に埋設されていてもよい(又は少なくとも心線の中心又は軸心が伸張ゴム層側に存在していてもよい)。
前記伝動ベルトでは、さらに、圧縮ゴム層の表面が補強層(例えば、補強布)で被覆されていてもよい。
本発明の伝動ベルトは、特に、Vリブドベルト(詳細には、圧縮ゴム層がベルト長手方向に延びる複数のリブ部を有するVリブドベルト)であってもよい。
本発明には、上記伝動ベルトの製造方法、例えば、円筒状ドラムに、スキン層を形成するための熱可塑性樹脂シート、短繊維を含む伸張ゴム層を形成するための未加硫ゴムシート(伸張ゴム層用ゴムシート)、心線、および圧縮ゴム層を形成するための未加硫ゴムシート(圧縮ゴム層用ゴムシート)を、順次(この順に)巻き付けて未加硫のベルトスリーブを作製する巻付工程と、この巻付工程で得られた未加硫のベルトスリーブを金型に押し付けて加硫成形する加硫成形工程とを含む伝動ベルトの製造方法が含まれる。
この方法では、巻付工程において、伸張ゴム層を形成するための未加硫ゴムシートに熱可塑性樹脂シートを積層(例えば、未加硫ゴムシートの表面全体に積層、未加硫ゴムシートの幅方向に沿って帯状の熱可塑性樹脂シートを積層など)した積層シートを、熱可塑性樹脂シート側の面を円筒状ドラム側として、円筒状ドラムに巻き付けてもよい。
前記方法では、加硫成形工程において、加硫成形とともに、熱可塑性樹脂シートを溶融させてフィルム状のスキン層を形成してもよい。また、熱可塑性樹脂シートは、特に、熱可塑性樹脂繊維で形成された布帛(例えば、不織布)であってもよい。このような布帛を用いると、加硫成形においてガス抜きしつつ効率よくフィルム状のスキン層を形成できる。そのため、前記方法において、熱可塑性樹脂シートが熱可塑性樹脂繊維で形成された布帛であり、加硫成形工程において、加硫成形とともに熱可塑性樹脂シートを溶融させつつ発生するガスを脱気してもよい。
また、前記方法において、補強層を設けた伝動ベルトを得る場合には、例えば、巻付工程において、圧縮ゴム層を形成するための未加硫ゴムシートを巻き付けた後、さらに補強層(例えば、補強布)を巻き付けて未加硫のベルトスリーブを作製してもよい。
本発明では、短繊維を含む伸張ゴム層と、心線と、圧縮ゴム層とを備えた特定の伝動ベルトにおいて、伸張ゴム層の少なくとも一部の表面を熱可塑性樹脂で形成されたフィルム状のスキン層で被覆することにより、フィルム状のスキン層の原料となる布帛などがフィルム形成前(溶融前)において、ガス(又はエア)抜き材として作用するためか、成形過程で発生するガス(エア溜まり)によるベルト表面の溝(又は凹凸)の発生を効率よく防止できる。すなわち、本発明の伝動ベルトにおいて、スキン層は平滑なフィルム状で、ベルト本体に接着一体化しているため、成形過程において溶融しない不織布を用いて表面に凹凸が発生した場合に、不織布を除去し、ベルト表面を平坦にする処理を要しない。そのため、金型で成形しても、ベルト表面を平坦(又は平滑)にでき、ベルト背面における亀裂発生を防止して、ベルト寿命を効率よく向上できる。また、圧縮ゴムのリブ部の研磨などを要することがなく、高い生産性で、ベルト背面における摩擦係数の低い伝動ベルトを製造することができる。
さらに、本発明では、スキン層を形成することにより、伸張ゴム層を加圧又は押圧できるためか、意外にも、伸張ゴム層を圧縮ゴム層側に侵入させやすくなり、結果として心線を伸張ゴム層に接触させる程度ではなく、効率よく埋設(例えば、心線の体積の少なくとも半分を埋設)させることができる。そのため、伸張ゴム層と圧縮ゴム層との間に心線が介在しても、接着ゴム層を設けることなく、両層間の高い接着性を実現できる。そのため、本発明では、このような高い接着性や前記のようなベルト表面の溝の発生の防止又は抑制効果などにより、優れた耐久性の伝動ベルトを効率よく得ることができる。
さらにまた、本発明では、異音や騒音の発生を効率よく抑制できる。特に、このような伝動ベルトでは、伝達性能や耐摩耗性を損なうことがないため、伝達性能や耐磨耗性と、耐発音性と、耐久性とを高いレベルでバランス良く実現できる。
図1は、本発明の伝動ベルトの一例を示す概略断面図である。 図2は、実施例において、円筒状の成形ドラムに伝動ベルトの原料である各部材シートを巻き付けた状態を示す概略断面図である。 図3は、各部材シートを巻き付けた図2の成形ドラムを加硫型内にセットした状態を示す概略斜視図(a)及び概略断面図(b)である。 図4は、図3の成形ドラムにおける可撓性ジャケットを膨張させた状態を示す概略斜視図(a)及び概略断面図(b)である。 図5は、図1の部分拡大図である。 図6は、比較例2で得られた伝動ベルトの部分拡大図である。
[伝動ベルト]
本発明の伝動ベルトは、短繊維を含む伸張ゴム層(ベルト背面部を構成する伸張ゴム層)と、ベルト長手方向に沿って埋設された複数の心線と、伸張ゴム層上に積層された圧縮ゴム層(ベルト腹面部を構成する圧縮ゴム層)とを備えた伝動ベルトであって、伸張ゴム層の表面(伸張ゴム層のベルト背面側の表面)は、熱可塑性樹脂で形成されたフィルム状の(又は平滑な)スキン層で被覆されている。そして、このような伝動ベルトでは、通常、心線が伸張ゴム層に埋設されている。
すなわち、本発明の伝動ベルトでは、伸張ゴム層表面を熱可塑性樹脂で形成されたフィルム状の平滑なスキン層で被覆することで、スキン層を成形過程におけるガス抜き材として作用できるためか、伸張ゴム層表面の凹凸構造の発生が防止又は抑制されている。しかも、金型における成形圧力を効率よく伸張ゴム層に伝えることができるためか、心線を効率よく伸張ゴム層に埋設させることができ、接着ゴム層を要することなく(すなわち、伸張ゴム層が接着ゴム層の役割を果たし)、伸張ゴム層と圧縮ゴム層との間の高い密着性を実現できる。
図1は、本発明の伝動ベルト(Vリブドベルト)の一例を示す概略断面図であり、伝動ベルトをベルト幅方向に切断した概略断面図である。
この例では、Vリブドベルト1は、ベルト本体の内周面(ベルト腹面又はベルト腹面側)に、ベルトの長手方向に沿って複数列で延びるリブ部7を有しており、このリブ部7の長手方向に対して直交する方向における断面形状は、ベルト外周側(リブ部を有さず、プーリと係合しない側)から内周側に向かって幅が小さくなる(先端に向かって先細る)台形状である。
Vリブドベルト1は、積層構造を有しており、ベルト本体の外周側(又はベルト背面側)から内周側(ベルト腹面側)に向かって、短繊維4を含有するゴム組成物で形成された伸張ゴム層5、心線3、リブ部7を有する圧縮ゴム層(リブゴム層)6、補強布8が順次積層されており、伸張ゴム層5の表面(ベルト背面側の表面)全体が、熱可塑性樹脂で形成されたフィルム状のスキン層2で被覆されている。
詳細には、スキン層2は、熱可塑性樹脂が完全にもしく一部溶融した溶融物(又は融解物)により、ほぼ均一な厚みで平滑なフィルム状の層を形成している。そして、このフィルム状のスキン層9により、ベルト表面(又は伸張ゴム層5側の表面)には、溝(又は凹凸)が発生していない。なお、このような溝が発生していない理由としては、後述するように、スキン層9の存在により、金型における成形過程で発生したガスの効率よい脱気(ガス抜き又はエア抜き又はエア溜まりの解消)が行われることによる。
また、心線3は、各心線3が所定の間隔を保持しながら、ベルト長手方向に沿って、伸張ゴム層5に埋設されている。すなわち、心線3は、伸張ゴム層5に接触するレベルではなく、主に伸張ゴム層5に埋設[例えば、各心線3の全体積の半分を超えて(例えば、体積の60%以上が)伸張ゴム層5に埋設]されている。換言すれば、各心線3の中心(又は軸心)を結ぶラインLが、伸張ゴム層5内に存在している(又は伸張ゴム層5がラインLを超えて圧縮ゴム層6側に向かって侵入している)。このように心線3を伸張ゴム層5に埋設できることで、別途接着ゴム層を設けなくても、伸張ゴム層5と圧縮ゴム層6との高い密着性(又は接着性)を実現している。なお、このように心線3を伸張ゴム層5に主に埋設できる理由としては、後述するように、スキン層9の存在により、金型における成形過程で発生したガス抜き(ガスの脱気)が効率よく行われつつ、成形圧力が伸張ゴム層5(又はその未加硫ゴムシート)に効率よく伝わる(又は伝播する)ことによる。
なお、伸張ゴム層5に含まれる短繊維4はランダム方向に配向しており、圧縮ゴム層6は短繊維を含んでいない。
(スキン層)
スキン層は、熱可塑性樹脂で形成され、かつ伸張ゴム層の表面を被覆(略均一な厚みで被覆)している。このようなスキン層により、ベルト背面の摩擦係数を低下させ、効率よく走行時の異音や騒音の発生を抑制できる。また、伸張ゴム層の表面又はベルト背面における溝の発生を抑えることができ、この溝に起因するベルトの亀裂やその伝播や、背面駆動時の異音を抑制できる。しかも、心線を効率よく伸張ゴム層に埋設でき、接着ゴム層を設けることなく、伸張ゴム層と圧縮ゴム層との高い密着性を実現できる。
熱可塑性樹脂は、成形工程(加硫工程)において溶融させてフィルム状のスキン層を形成するという観点から、伸張ゴム層(および圧縮ゴム層)の加硫温度以下の融点(又は軟化点)を有するのが好ましく、例えば、前記加硫温度よりも0〜100℃、好ましくは3〜80℃、さらに好ましくは5〜70℃(特に10〜60℃)低い融点を有していてもよい。熱可塑性樹脂の融点が高すぎると、加硫工程で熱可塑性樹脂が融解せず、均一なスキン層の形成が困難となり、逆に低すぎると、スキン層の機械的特性が低下し、走行時の摩擦により破損し易くなる。圧縮ゴム層の加硫温度は150〜180℃程度である場合が多く、熱可塑性樹脂の融点は、例えば、165℃以下(例えば、80〜165℃)、好ましくは150℃以下(例えば、90〜150℃)、さらに好ましくは130℃以下(例えば、100〜130℃)程度であってもよい。
なお、熱可塑性樹脂としては、伸張ゴム層(および圧縮ゴム層)の加硫工程で融解して均一化されるとともに、適度な摩擦係数を確保できる点から、実質的に架橋されていない樹脂が使用される。
熱可塑性樹脂としては、例えば、オレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ビニル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリウレタン系樹脂、セルロース系樹脂、熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
これらの熱可塑性樹脂のうち、凹凸の少ない平滑な表面を形成し易く、摩擦係数を低減でき、かつ汎用性も高い点から、オレフィン系樹脂、熱可塑性エラストマーが好ましい。
(1)オレフィン系樹脂
オレフィン系樹脂は、エチレン、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、3−メチルペンテン、4−メチルペンテンなどのα−オレフィン(特に、エチレン、プロピレンなどのα−C2−6オレフィン)を主要な重合成分とする重合体であってもよい。
前記α−オレフィン以外の共重合性単量体としては、例えば、(メタ)アクリル系単量体[例えば、(メタ)アクリル酸メチルや(メタ)アクリル酸エチルなどの(メタ)アクリル酸C1−6アルキルエステルなど]、不飽和カルボン酸類(例えば、無水マレイン酸など)、ビニルエステル類(例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなど)、ジエン類(ブタジエン、イソプレンなど)などが挙げられる。これらの単量体は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
オレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン系樹脂[低、中又は高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン−1共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン−1共重合体、エチレン−(4−メチルペンテン−1)共重合体など]、ポリプロピレン系樹脂(ポリプロピレン、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−ブテン−1共重合体、プロピレン−エチレン−ブテン−1共重合体など)などが挙げられる。オレフィン系樹脂の融点は、共重合性単量体を特定の割合で共重合させることにより制御してもよく、例えば、ポリプロピレン系樹脂にエチレンを共重合して融点を低下させてもよい。これらのオレフィン系樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
これらのオレフィン系樹脂のうち、ポリエチレンなどのポリエチレン系樹脂、ポリプロピレンなどのポリプロピレン系樹脂が好ましく、加硫温度で容易に融解する点から、低密度ポリエチレンなどのポリエチレン系樹脂が特に好ましい。
(2)熱可塑性エラストマー
熱可塑性エラストマーとしては、例えば、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマーなどが挙げられる。
オレフィン系エラストマーとしては、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィンで形成されたハードセグメントと、オレフィン系ゴム、ジエン系ゴム、アクリル系ゴム、ブチルゴム、ニトリルゴム、天然ゴムなどのゴム成分で形成されたソフトセグメントとを有するエラストマーなどが例示できる。
スチレン系エラストマーとしては、ポリスチレンなどのスチレン系重合体で形成されたハードセグメントと、ポリブタジエン、ポリイソプロピレンなどのジエン系ゴム又はその水添物などのゴム成分で形成されたソフトセグメントとを有するエラストマーなどが例示できる。
ポリエステル系エラストマーとしては、ポリブチレンテレフタレートやポリブチレンナフタレートなどのポリアルキレンアリレートで形成されたハードセグメントと、脂肪族ポリエーテルや脂肪族ポリエステルなどで形成されたソフトセグメントとを有するエラストマーなどが例示できる。
ポリアミド系エラストマーとしては、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド12などの脂肪族ポリアミドで形成されたハードセグメントと、脂肪族ポリエーテル、脂肪族ポリエステル、脂肪族炭酸エステルなどで形成されたソフトセグメントとを有するエラストマーなどが例示できる。
これらの熱可塑性エラストマーは、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの熱可塑性エラストマーのうち、加硫温度で容易に融解する点から、ポリエチレンなどのポリオレフィンで形成されたハードセグメントと、エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合体ゴム(EPDM)などのオレフィン系ゴムで形成されたソフトセグメントとを有するオレフィン系エラストマーが好ましい。
本発明では、スキン層は、熱可塑性樹脂繊維で形成された布帛の溶融物であるのが好ましい。このような布帛を用いると、成形時におけるエア溜まりによる凹凸の発生を効率よく抑制しつつ、溶融後は伸張ゴム層に対する成形圧力を効率よく伝播でき、さらに、最終的には、繊維構造が部分的又は完全に消失し、表面に凹凸のない平滑なフィルム状のスキン層を形成できる。
布帛は、繊維構造を有していれば、特に限定されず、例えば、不織布、織布、編布などであってもよい。これらのうち、通気性が高く、エア溜まりの抑制効果が高い点から、不織布が好ましい。
不織布の製造方法は、例えば、スパンボンド法、ケミカルボンド法、サーマルボンド法、ニードルパンチ法などが挙げられる。これらの製造方法のうち、スパンボンド法、サーマルボンド法などが好ましい。なお、スパンボンド法で得られたスパンボンド不織布は、構成繊維がフィラメントであるため、熱圧着して得られる不織布が引張強度、引裂強度が大きく、ベルト成形時の巻き付け工程において、寸法安定性が高く、作業性を向上できる。
布帛(特に不織布)の目付は、10〜100g/m(例えば、12〜90g/m)程度の範囲から選択でき、例えば、15〜80g/m、好ましくは18〜75g/m、さらに好ましくは20〜70g/m程度である。目付が小さすぎると、不織布の引張強度、引裂強度が小さくなり、また融解してもフィルムの厚みが不均一になり易い。一方、目付が大きすぎると、繊維量が多くなり、熱伝導率が低下して繊維の融解によるフィルム化が困難になる上に、通気性が低下し、エア溜まりが発生し易い。
布帛(特に不織布)の平均厚みは、例えば、0.1〜1mm、好ましくは0.2〜0.6mm、さらに好ましくは0.3〜0.5mm程度である。
なお、布帛は、薄肉の布帛(不織布)を複数回(複数層)積層して、スキン層の厚みが所定の範囲になるように調整してもよい。複数回積層する場合、積層回数は、例えば、2〜10回、好ましくは2〜6回、さらに好ましくは2〜4回程度であってもよい。
布帛を構成する繊維の形状は、特に限定されず、横断面形状(繊維の長さ方向に垂直な断面形状)は、例えば、略円形状、楕円状、扁平状、多角形状などが挙げられる。これらの形状のうち、均一な厚みを有するフィルムを形成し易い点から、略円形状が好ましい。
繊維は、単独の熱可塑性樹脂で形成された繊維に限定されず、複数種の熱可塑性樹脂を組み合わせた複合繊維であってもよい。複合繊維は、横断面構造の相違によって、例えば、芯鞘型、海島型、ブレンド型、並列型(多層貼合型)、放射型などに分類される。これらのうち、鞘部が低融点の熱可塑性樹脂で形成された芯鞘型複合繊維などであってもよいが、不織布が十分に融解して均一な厚みを有するスキン層を形成し易い点から、低融点の熱可塑性樹脂単独で形成された単相の繊維、又は低融点の熱可塑性樹脂同士の組み合わせで形成された複合繊維が特に好ましい。
繊維の平均繊度は、例えば、5〜60dtex、好ましくは5〜40dtex、さらに好ましくは15〜30dtex程度である。繊度が小さすぎると、不織布の強度が低下し、取り扱い性が低下し、大きすぎると、均一なフィルムの形成が困難となる。
スキン層は、少なくともフィルム状部(平滑部又は非繊維部)を有している。スキン層全体に対するフィルム状部の面積割合は、例えば、50%以上、好ましくは60%以上、さらに好ましくは70%以上(特に90%以上)であり、略全面がフィルム状(略100%)である層が特に好ましい。すなわち、スキン層は、繊維構造を有する布帛を融解して得られた層であっても、熱可塑性樹脂の融解により繊維形状が消失し、実質的に繊維構造を有していない層が特に好ましい。フィルム状部の割合が少ないと、ベルト表面の均一性が低下し、走行時に異音や騒音が発生し易くなる。
なお、本発明では、スキン層全体に対するフィルム状部の面積割合は、フィルム表面を肉眼で観察し、フィルム状部(繊維状又は粒状表面を有さない平滑部)と、非フィルム状部(繊維状又は粒状表面を有する非平滑部)の面積比率を算出して求めることができ、フィルム内部に残存する繊維構造や粒状構造は考慮しない割合とする。
スキン層は、伸張ゴム層の少なくとも一部の表面を被覆すればよく、例えば、帯状、スポット状などの形態で伸張ゴム層の表面を被覆してもよい。スキン層は、代表的には、ベルト(又は伸張ゴム層)の幅方向に沿って、伸張ゴム層(又はベルト)の一端から他端にわたって被覆(すなわち、連続的に被覆)してもよい。
このような幅方向に沿って被覆する場合、スキン層の平均幅は、例えば、ベルト(又は伸張ゴム層)の長さ(長手方向の長さ)の3%以上(例えば、4〜100%)、好ましくは5%以上(例えば、5〜100%)、さらに好ましくは10%以上(例えば、10〜100%)程度であってもよい。なお、伸張ゴム層の表面全体(又はベルト背面の全周)を被覆する場合には、このスキン層の幅は100%である。
伸張ゴム層の表面の一部をベルト幅方向に沿って被覆(すなわち、帯状のスキン層で被覆)する場合、スキン層(帯状のスキン層)の平均幅は、例えば、3〜80%(例えば、4〜60%)、好ましくは5〜50%(例えば、7〜40%)、さらに好ましくは8〜30%(例えば、10〜20%)程度であってもよい。なお、伸張ゴム層の表面を複数の帯状のスキン層で被覆してもよい。
また、伸張ゴム層の表面(一方の面)を被覆するスキン層の割合(面積割合)もまた、上記平均幅と同様の範囲(例えば、5%以上など)から選択できる。
前記のように、本発明の伝動ベルトでは、このようなフィルム状のスキン層で伸張ゴム層を被覆しているため、ベルト表面(伸張ゴム層側のベルト表面、ベルト背面側の表面、スキン層の表面、又は伸張ゴム層の表面)は、凹凸(又は溝)を有しておらず、平滑である。なお、このような凹凸は、前記のように、成形過程における効率よいガス抜きに起因しているためか、スキン層が伸張ゴム層の表面の一部を被覆する場合においても発生しない。
スキン層の平均厚みは、例えば、0.01〜0.5mm、好ましくは0.02〜0.3mm(例えば、0.03〜0.2mm)、さらに好ましくは0.04〜0.15mm、特に0.05〜0.12mm程度である。スキン層の耐久性、可撓性(剥離や割れ防止)、成形時における伸張ゴム層に対する適度な圧力の伝播などの観点から、このような範囲とすることが好ましい。
(伸張ゴム層)
伸張ゴム層を形成するゴム組成物(伸張ゴム層用ゴム組成物)は、特に制限されないが、通常、ゴム成分と加硫剤又は架橋剤とを含むゴム組成物が使用される。本発明は、特に、硫黄や有機過酸化物を含むゴム組成物(特に有機過酸化物加硫型ゴム組成物)で未加硫ゴム層を形成し、未加硫ゴム層を加硫又は架橋するのに有用である。
ゴム成分としては、加硫又は架橋可能なゴム、例えば、ジエン系ゴム(天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(ニトリルゴム)、水素化ニトリルゴム、水素化ニトリルゴムと不飽和カルボン酸金属塩との混合ポリマーなど)、エチレン−α−オレフィンエラストマー、クロロスルフォン化ポリエチレンゴム、アルキル化クロロスルフォン化ポリエチレンゴム、エピクロルヒドリンゴム、アクリル系ゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴムなどが例示できる。これらのゴム成分は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
これらのうち、有害なハロゲンを含まず、耐オゾン性、耐熱性、耐寒性を有し、経済性にも優れる点から、エチレン−α−オレフィンエラストマー(エチレン−α−オレフィン系ゴム)が好ましい。さらに、エチレン−α−オレフィンエラストマーは、他のゴムに比べて水濡れ性が低いため、動力伝動性や静音性を著しく向上できる。
エチレン−α−オレフィンエラストマー(エチレン−α−オレフィン系ゴム)としては、例えば、エチレン−α−オレフィンゴム、エチレン−α−オレフィン−ジエンゴムなどが挙げられる。
α−オレフィンとしては、例えば、プロピレン、ブテン、ペンテン、メチルペンテン、ヘキセン、オクテンなどの鎖状α−C3−12オレフィンなどが挙げられる。α−オレフィンは、単独又は2種以上組み合わせて使用できる。これらのα−オレフィンのうち、プロピレンなどのα−C3−4オレフィン(特にプロピレン)が好ましい。
ジエンモノマーとしては、通常、非共役ジエン系単量体、例えば、ジシクロペンタジエン、メチレンノルボルネン、エチリデンノルボルネン、1,4−ヘキサジエン、シクロオクタジエンなどが例示できる。これらのジエンモノマーは単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
代表的なエチレン−α−オレフィンエラストマーとしては、例えば、エチレン−α−オレフィンゴム(エチレン−プロピレンゴム(EPR))、エチレン−α−オレフィン−ジエンゴム(エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDMなど))などが例示できる。好ましいエチレン−α−オレフィンエラストマーはEPDMである。
エチレン−α−オレフィンゴムにおいて、エチレンとα−オレフィンとの割合(質量比)は、前者/後者=40/60〜90/10、好ましくは45/55〜85/15(例えば、50/50〜82/18)、さらに好ましくは55/45〜80/20(例えば、55/45〜75/25)程度であってもよい。また、ジエンの割合は、4〜15質量%程度の範囲から選択でき、例えば、4.2〜13質量%(例えば、4.3〜12質量%)、好ましくは4.4〜11.5質量%(例えば、4.5〜11質量%)程度であってもよい。なお、ジエン成分を含むエチレン−α−オレフィンゴムのヨウ素価は、例えば、3〜40(好ましくは5〜30、さらに好ましくは10〜20)程度であってもよい。ヨウ素価が小さすぎると、ゴム組成物の加硫が不十分になって磨耗や粘着が発生し易く、またヨウ素価が大きすぎると、ゴム組成物のスコーチが短くなって扱い難くなると共に耐熱性が低下する傾向がある。
有機過酸化物としては、通常、ゴム、樹脂の架橋に使用されている有機過酸化物、例えば、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステル、ジアルキルパーオキサイド(例えば、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、1,1−ジ−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)−ヘキサン、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシ−イソプロピル)ベンゼン、ジ−t−ブチルパーオキサイドなど)などが挙げられる。これらの有機過酸化物は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。さらに、有機過酸化物は、熱分解による1分間の半減期が150〜250℃(例えば、175〜225℃)程度の過酸化物が好ましい。
加硫剤又は架橋剤(特に有機過酸化物)の割合は、ゴム成分(エチレン−α−オレフィンエラストマーなど)100質量部に対して、固形分換算で、1〜10質量部、好ましくは1.2〜8質量部、さらに好ましくは1.5〜6質量部(例えば、2〜5質量部)程度である。
ゴム組成物は、さらに加硫促進剤を含んでいてもよい。加硫促進剤としては、例えば、チウラム系促進剤、チアゾ−ル系促進剤、スルフェンアミド系促進剤、ビスマレイミド系促進剤、ウレア系促進剤などが挙げられる。これらの加硫促進剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。加硫促進剤の割合は、固形分換算で、ゴム成分100質量部に対して、例えば、0.5〜15質量部、好ましくは1〜10質量部、さらに好ましくは2〜5質量部程度である。
ゴム組成物は、架橋度を高め、粘着摩耗などを防止するために、さらに共架橋剤(架橋助剤、又は共加硫剤)を含んでいてもよい。共架橋剤としては、慣用の架橋助剤、例えば、多官能(イソ)シアヌレート[例えば、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、トリアリルシアヌレート(TAC)など]、ポリジエン(例えば、1,2−ポリブタジエンなど)、不飽和カルボン酸の金属塩[例えば、(メタ)アクリル酸亜鉛、(メタ)アクリル酸マグネシウムなど]、オキシム類(例えば、キノンジオキシムなど)、グアニジン類(例えば、ジフェニルグアニジンなど)、多官能(メタ)アクリレート[例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートなど]、ビスマレイミド類(N,N’−m−フェニレンビスマレイミドなど)などが挙げられる。これらの架橋助剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。架橋助剤の割合(複数種を組み合わせる場合は合計量)は、固形分換算で、ゴム成分100質量部に対して、例えば、0.01〜10質量部、好ましくは0.05〜8質量部、さらに好ましくは0.1〜5質量部程度である。
ゴム組成物は、必要に応じて、慣用の添加剤、例えば、加硫助剤、加硫促進剤、加硫遅延剤、増強剤(カーボンブラック、含水シリカなどの酸化ケイ素など)、充填剤(クレー、炭酸カルシウム、タルク、マイカなど)、金属酸化物(例えば、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化鉄、酸化銅、酸化チタン、酸化アルミニウムなど)、軟化剤(パラフィンオイル、ナフテン系オイル、プロセスオイルなどのオイル類など)、加工剤又は加工助剤(ステアリン酸、ステアリン酸金属塩、ワックス、パラフィン、脂肪酸アマイドなど)、老化防止剤(酸化防止剤、熱老化防止剤、屈曲き裂防止材、オゾン劣化防止剤など)、着色剤、粘着付与剤、可塑剤、カップリング剤(シランカップリング剤など)、安定剤(紫外線吸収剤、酸化防止剤、オゾン劣化防止剤、熱安定剤など)、潤滑剤、難燃剤、帯電防止剤などを含んでいてもよい。なお、金属酸化物は架橋剤として作用してもよい。これらの添加剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
これらの添加剤の割合は、種類に応じて慣用の範囲から選択でき、例えば、ゴム成分100質量部に対して増強剤(カーボンブラック、シリカなど)の割合は10〜200質量部(特に20〜150質量部)程度であってもよく、金属酸化物(酸化亜鉛など)の割合は1〜15質量部(特に2〜10質量部)程度であってもよく、軟化剤(パラフィンオイルなどのオイル類)の割合は1〜30質量部(特に5〜25質量部)程度であってもよく、加工剤(ステアリン酸など)の割合は0.1〜5質量部(特に0.5〜3質量部)程度であってもよい。
特に、伸張ゴム層は、背面駆動時に背面ゴムの粘着により発生する異音を抑制するために、通常、さらに短繊維を含有していてもよい。短繊維を構成する繊維としては、例えば、天然繊維(綿、麻など)、再生繊維(レーヨン、アセテートなど)、合成繊維(ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン繊維、ポリスチレンなどのスチレン系繊維、ポリフルオロエチレンなどのフッ素系繊維、アクリル系繊維、ポリビニルアルコールなどのビニルアルコール系繊維、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、全芳香族ポリエステル繊維、アラミド繊維など)などが挙げられる。前記繊維のうち、高モジュラスの点から、エチレンテレフタレート、エチレン−2,6−ナフタレートなどのC2−4アルキレンアリレートを主たる構成単位とするポリエステル繊維(ポリアルキレンアリレート系繊維)、アラミド繊維などの合成繊維などが挙げられる。これらの短繊維は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
これらの繊維のうち、綿やレーヨンなどのセルロース系繊維、ポリエステル系繊維[例えば、ポリエチレンテレフタレート系繊維(PET繊維)、ポリエチレンナフタレート系繊維(PEN繊維)、ポリトリメチレンテレフタレート繊維(PTT繊維)]など(PET繊維など)、ポリアミド繊維(ポリアミド6、ポリアミド66などの脂肪族ポリアミド繊維、アラミド繊維など)などが汎用される。
短繊維は、ゴム組成物中での分散性や接着性を向上させるため、慣用の接着処理(又は表面処理)、例えば、レゾルシン−ホルマリン−ラテックス(RFL)液などで処理してもよい。
短繊維の平均繊維長は、例えば、0.01〜10mm、好ましくは0.05〜5mm、さらに好ましくは0.1〜3mm(例えば、0.2〜1mm)程度であってもよい。短繊維の平均繊維径は、例えば、5〜50μm、好ましくは7〜40μm、さらに好ましくは10〜30μm程度である。このような繊維長とすることにより、効率よく心線間に短繊維を侵入でき、また、伸張ゴム層を効率よく補強し、粘着摩耗の発生を効率よく抑えることができる。
短繊維の割合は、ゴム成分100質量部に対して、例えば、1〜50質量部、好ましくは5〜40質量部、さらに好ましくは10〜35質量部程度である。
伸張ゴム層中での短繊維の配向方向は、特に限定されず、ランダムな方向に配向してもよく、ベルト方向などの所定の方向に配向してもよい。これらのうち、多方向からの裂きや亀裂の発生を抑制できる点から、ランダムな方向に配向するのが好ましい。さらに、短繊維をランダムな方向に配向させ、かつ短繊維として屈曲部を有する短繊維(例えば、ミルドファイバー)を用いると、より多方向から作用する力に対して耐性を発現できる。
伸長ゴム層の厚み(平均厚み、圧縮ゴム層との接触部までの厚み)は、例えば、0.2〜6mm、好ましくは0.3〜5mm、さらに好ましくは0.5〜3mm程度であってもよい。
(心線)
心線は、ベルト本体中において、ベルト長手方向に延びて埋設されている。心線は、通常、複数本の心線が、ベルトの長手方向に平行に所定のピッチで並列的に埋設されており、隣接する心線の間隔(スピニングピッチ)は、例えば、0.5〜3mm、好ましくは0.8〜1.5mm、さらに好ましくは1〜1.3mm程度である。
心線としては、通常、マルチフィラメント糸を使用した撚りコード(例えば、諸撚り、片撚り、ラング撚りなど)を使用できる。心線の平均線径(撚りコードの繊維径)は、例えば、0.5〜3mm、好ましくは0.6〜2mm、さらに好ましくは0.7〜1.5mm程度である。
心線を構成する繊維としては、例えば、天然繊維(綿、麻など)、再生繊維(レーヨン、アセテートなど)、合成繊維(ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン繊維、ポリスチレンなどのスチレン系繊維、ポリフルオロエチレンなどのフッ素系繊維、アクリル系繊維、ポリビニルアルコールなどのビニルアルコール系繊維、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、全芳香族ポリエステル繊維、アラミド繊維など)などが挙げられる。前記繊維のうち、高モジュラスの点から、エチレンテレフタレート、エチレン−2,6−ナフタレートなどのC2−4アルキレンアリレートを主たる構成単位とするポリエステル繊維(ポリアルキレンアリレート系繊維)、アラミド繊維などの合成繊維などが汎用され、ポリエステル繊維[ポリエチレンテレフタレート系繊維(PET繊維)、ポリエチレンナフタレート系繊維(PEN繊維)、ポリトリメチレンテレフタレート繊維(PTT繊維)]、アラミド繊維が好ましい。ポリエステル繊維は、熱による収縮があるため、ベルトの張力維持性に優れている。一方、アラミド繊維は、ポリエステル繊維よりも引張強度が高いため、高張力、高負荷の要求に対して、ポリエステル繊維では実現できない部分を補うことができる。
繊維はマルチフィラメント糸であってもよい。マルチフィラメント糸の繊度は、例えば、2000〜10000デニール(特に4000〜8000デニール)程度であってもよい。
ゴムとの接着性を改善するため、心線には接着処理を施してもよい。接着処理では、一般的に、繊維をレゾルシン−ホルマリン−ラテックス液(RFL液)に浸漬後、加熱乾燥して表面に均一に接着層を形成することが行うことができる。なお、この接着処理に限らず、心線の繊維を、慣用の接着性成分、例えば、エポキシ化合物(エポキシ樹脂など)、イソシアネート化合物などの反応性化合物(接着性化合物)で前処理した後、RFL液で処理してもよい。RFL液は、レゾルシンとホルマリンとの初期縮合物(プレポリマー)をラテックスに混合した組成物である。ラテックスとしては、例えば、クロロプレン、スチレン−ブタジエン−ビニルピリジン三元共重合体、水素化ニトリルゴム(H−NBR)、NBRなどが例示できる。
本発明の伝動ベルトでは、心線は伸張ゴム層に埋設されている。すなわち、心線は、特許文献1の図4のように接着ゴム層に埋設されている態様、特許文献2の図4のように伸張ゴム層に接触する態様ではなく、伸張ゴム層に埋設されている。
心線は、その少なくとも一部において伸張ゴム層に埋設していればよい(すなわち、残部が圧縮ゴム層に埋設してもよい)が、本発明では、通常、主として伸張ゴム層に埋設されていてもよい。このように心線が伸張ゴム層に埋設されていることで、接着ゴム層を要することなく、伸張ゴム層と圧縮ゴム層との間で高い密着性又は接着性を担保することができる。心線が伸張ゴム層に埋設する程度は、例えば、心線(各心線)の全体積(又は心線の全周又は心線の断面又は心線径を100%としたときの伸張ゴム層に対する心線の侵入又は埋設の程度)の平均30%以上(例えば、35〜100%)の範囲から選択でき、例えば、40%以上(例えば、45〜99%)、好ましくは50%以上(例えば、55〜98%)、さらに好ましくは60%以上(例えば、60〜95%)であってもよく、通常50%を超えて(例えば、55%以上、好ましくは60%以上)埋設されていてもよい。なお、心線のすべて(全体積)が伸張ゴム層に埋設されていてもよい。
(圧縮ゴム層)
圧縮ゴム層を形成するゴム組成物(圧縮ゴム層用ゴム組成物)は、特に制限されないが、通常、ゴム成分と加硫剤又は架橋剤とを含むゴム組成物が使用される。このようなゴム組成物において、ゴム成分としては、伸張ゴム層の項で例示のゴム成分と同様のゴム成分が使用できる。通常、ゴム成分は、伸張ゴム層を構成するゴム成分と同系統又は同種のゴム成分(例えば、エチレン−α−オレフィンエラストマーなど)を使用する場合が多い。なお、エチレン−α−オレフィンエラストマーの種類やエチレンとα−オレフィンとの割合など、好ましい態様も前記と同様である。
また、加硫剤又は架橋剤、共架橋剤又は架橋助剤、加硫促進剤などの種類やその割合も、それぞれ、前記伸張ゴム層のゴム組成物と同様の範囲から選択できる。
さらに、圧縮ゴム層(又はゴム組成物)は、伸張ゴム層の項で例示の種々の添加剤を含んでいてもよく、その割合も前記の範囲から選択できる。ただし、本発明では、圧縮ゴム層のゴム組成物(特にリブ部を形成するゴム組成物)は、短繊維などの繊維を実質的に含まないのが好ましい。一般的には、圧縮ゴム層のリブ部には短繊維を含有させることが多いが、本発明では、短繊維の配合が不要であり、圧縮ゴム層(又はそのリブ部)が短繊維を含まないため、成形時におけるゴム組成物の流れを良好に維持でき、また、ベルト寿命を向上できる。
圧縮ゴム層の厚みは、例えば、1〜25mm、好ましくは1.5〜16mm、さらに好ましくは2〜12mm程度であってもよい。
(補強層)
圧縮ゴム層の表面(圧縮ゴム層のベルト腹面側の表面、プーリと接触する面)は、必ずしも必要ではないが、補強層で被覆してもよい。補強層は、圧縮ゴム層又はリブ表面を補強し、圧縮ゴム層とプーリとの摩擦係数を低減することで、走行時の異音や騒音の発生を防止又は抑制するなどの観点から、好適に設けることができる。また、補強層を設けることで、成形時における圧縮ゴム層(又はリブ部)表面と金型面との間に存在するガスを除去して、より正確にリブ表面を形成することができる。
補強層としては、図1のような補強布の他、前記スキン層(熱可塑性樹脂で形成されたフィルム状のスキン層)を補強層とすることもできる。代表的には、補強層は補強布であってもよい。補強布としては、例えば、織布、広角度帆布、編布、不織布などの布材などが挙げられる。これらのうち、平織、綾織、朱子織などの形態で製織した織布や、経糸と緯糸との交差角が90〜120°程度の広角度帆布や編布などが好ましい。
補強布を構成する繊維としては、前記短繊維と同様の繊維を利用できる。補強布は、前記レゾルシン−ホルマリン−ラテックス液(RFL液)で処理(浸漬処理など)した後、ゴム組成物を擦り込むフリクション・コーティング又は積層してゴム付帆布を形成してもよい。
なお、補強層は、前記スキン層の項で記載したのと同様に、圧縮ゴム層の表面の一部を被覆してもよいが、通常、圧縮ゴム層の表面の全部を被覆してもよい。
補強層の厚みは、例えば、0.1〜1mm、好ましくは0.2〜0.6mm、さらに好ましくは0.3〜0.5mm程度であってもよい。
[伝動ベルトの製造方法]
本発明の伝動ベルトは、特に限定されないが、通常、金型を用いる方法、例えば、円筒状ドラム(又は金型又は内型)に、スキン層を形成するための熱可塑性樹脂シート(例えば、熱可塑性樹脂繊維で形成された布帛)、前記伸張ゴム層用ゴム組成物で構成された未加硫ゴムシート(短繊維を含む伸張ゴム層を形成するための未加硫ゴムシート、伸張ゴム層用ゴムシート)、心線、および圧縮ゴム層用ゴム組成物で構成された未加硫ゴムシート(圧縮ゴム層を形成するための未加硫ゴムシート、圧縮ゴム層用ゴムシート)を、順次(この順に)巻き付けて、未加硫(未架橋)のベルトスリーブ(ベルト用積層シート)を作製する巻付工程と、この巻付工程で得られた未加硫のベルトスリーブを金型(又は外型又は加硫型)に押し付けて(金型で押圧して)加硫(又は架橋)成形する加硫成形工程とを含む方法により、製造できる。
本発明では、このように研磨を要することのない金型(および加硫型)を用いる方法であっても、前記のような伝動ベルトを得ることができる。
金型に押しつけて加硫成形する方法(又は手段)としては、特に限定されないが、例えば、円筒状ドラムとして、周囲に可撓性ジャケット(ブラダー)を備えた円筒状の成形ドラムを用い、この可撓性ジャケット上に、上記の順に、各種シートおよび心線を巻き付ける巻付工程を行い、可撓性ジャケットを膨張させて、未加硫のベルトスリーブを金型(外型)に押しつけながら、加温下で加硫成形してもよい。なお、リブ部を有する圧縮ゴム層を形成する場合には、金型(外型)としてリブ部に対応した金型(又は外型、具体的には、リブ部に対応した溝状刻印を有する金型又は外型)に押しつけることで、リブ部(複数のリブ部)が形成される。
巻付工程において、熱可塑性樹脂シートは、平滑なフィルム状の熱可塑性樹脂シートであってもよいが、前記のように、熱可塑性樹脂繊維で形成された布帛(不織布など)を好適に用いてもよい。このような布帛の巻き付けは、前記のように、複数回行ってもよい。
また、熱可塑性樹脂シートは、円筒状ドラムと伸張ゴム層用ゴムシートとの間に介在させて(又は配置して)巻き付ける又は配置することができれば、巻き付け又は配置方法は特に限定されず、円形ドラムに直接的に巻き付けてもよいが、特に、伸張ゴム層用ゴムシートに熱可塑性樹脂シートを積層(例えば、ゴムシートの幅方向に沿って帯状に積層又は全面に積層)した積層シート(複合シート)を、熱可塑性樹脂シート側の面を円筒状ドラム側として、円筒状ドラムに巻き付けてもよい。なお、熱可塑性樹脂シートは、必ずしも成形ドラムの周方向全体に対して巻き付ける(又は配置する)必要はなく、前記のように、代表的には、伸張ゴム層用ゴムシートの幅方向(又はドラムの周方向に直交する方向)に沿って一端から他端にわたって接触するように配置する(又は積層する)場合が多い。このような幅方向に沿って配置又は積層する場合、熱可塑性樹脂シートの平均幅や伸張ゴム層用ゴムシート表面と接触する面積割合などは、前記に対応している。
なお、熱可塑性樹脂シート(又は布帛)は、円筒状の成形ドラムの周方向に対して、平行(又はほぼ平行)に巻き付けてもよく、斜め方向に巻き付けてもよい。
巻付工程において、心線は、所定の間隔で螺旋状に巻き付け(スピニングし)てもよい。
なお、補強層を設ける場合、巻付工程では、巻き付けた圧縮ゴム層シートの上に補強層を形成するためのシート(補強層用シート、例えば、補強布など)を巻き付け、未加硫のベルトスリーブを作製する。
加硫成形工程は、通常、加熱又は加温下で行ってもよく、加熱温度は、例えば、120〜220℃、好ましくは130〜200℃、さらに好ましくは150〜180℃程度であってもよい。
なお、このような加硫成形工程では、加硫成形とともに、通常、熱可塑性樹脂シートが溶融又は融解し、フィルム状の(又は平滑な)スキン層が形成される。また、加硫成形工程では、加硫成形とともに、熱可塑性樹脂シート(特に、熱可塑性樹脂繊維で形成された布帛)が溶融又は融解しつつ、発生(又は内在)するガスが脱気される。そのため、ベルト背面側に凹凸又は溝のないベルトが得られる。
このようにしてベルトスリーブ(特に、リブ部を有するベルトスリーブ)が得られ、その後加硫スリーブを所定幅に輪切りして切断することにより、個々のベルト(Vリブドベルトなど)に仕上げることができる。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。以下の例において、各物性における測定方法又は評価方法、実施例に用いた原料を以下に示す。
(1)ベルト背面の外観およびスキン層の厚み
作製したVリブドベルトをベルト幅方向に切断し、その断面をマイクロスコープによって撮影して、背面(伸張ゴム層側表面)の外観を観察した。なお、実施例では、フィルム状のスキン層を形成しているものについては、その厚み(平均厚み)を観察した。
(2)耐熱耐久性
耐熱耐久性の試験に用いた走行試験機は、駆動プーリ(直径120mm)、アイドラープーリ(直径85mm)、従動プーリ(直径120mm)、テンションプーリ(直径45mm)を配置して構成される。そして、テンションプーリへの巻き付け角度が90°、アイドラープーリへのベルト背面での巻き付け角度が120°になるように各プーリにVリブドベルトを懸架し、雰囲気温度120℃、駆動プーリの回転数4900rpmの条件でVリブドベルトを走行させた。このとき、ベルト張力40kgf/リブとなるように駆動プーリに荷重を付与し、従動プーリに負荷8.8kWを与えた。そして、このようにVリブドベルトを、400時間を打ち切りとして走行させ、心線に達する亀裂が6個発生するまでの時間を測定した。
(3)原料
EPDMポリマー:デュポン・ダウエラスマージャパン(株)製「IP3640」、ムーニー粘度40(100℃)
カーボンHAF:東海カーボン(株)製「シースト3」
老化防止剤:精工化学(株)製「ノンフレックスOD3」
ナイロンミルドファイバー:ナイロン66、繊維長約0.5mm
有機過酸化物:化薬アクゾ(株)製「パーカドックス14RP」
エーテルエステル系可塑剤:(株)アデカ製「RS−700」、SP値8.5、粘度30cps(20℃)
固体潤滑剤:人造黒鉛粉「ATNo.20」、平均粒径8μm
LDPE繊維:低密度ポリエチレン繊維、出光ユニテック(株)製「ストラテックLL」、融点約110℃
TPO繊維:オレフィンエラストマー繊維、出光ユニテック(株)製「ストラフレックス」、融点約100℃
PP/LDPE繊維:芯部がポリプロピレンで形成され、鞘部が低密度ポリエチレンで形成された芯鞘複合繊維、融点約165℃
心線:1,000デニールのPET繊維を2×3の撚り構成で、上撚り係数3.0、下撚り係数3.0で緒撚りしたトータルデニール6,000のコードを接着処理した繊維。
実施例1〜3及び比較例1
(伸張ゴム層を形成するためのゴムシート)
表1に示すゴム組成物をバンバリーミキサーで混練し、カレンダーロールによって圧延することによって、伸張ゴム層を形成するためのゴムシート(伸張ゴム層用ゴムシート)を0.8mmの厚みで作製した。
Figure 0006224886
(圧縮ゴム層を形成するためのゴムシート)
表2に示すゴム組成物をバンバリーミキサーで混練し、カレンダーロールによって圧延することによって、圧縮ゴム層を形成するためのゴムシート(圧縮ゴム層用ゴムシート)を2.5mmの厚みで作製した。
Figure 0006224886
(補強布)
綿帆布(綿糸20s/2、経糸70本/5cm、緯糸70本/5cmの平織)にゴム糊を付着し、ミシンジョイントして筒状にしたものを1プライ使用した。
(ベルトの製造)
図2に示すように、エアー供給口23及び天板22aを備えた金型(円筒ドラム又は内型)14のブラダー15の外周に、伸張ゴム層用ゴムシート16aの表面に、表3に示す不織布16dを積層した積層シートを、不織布16dがブラダー15の外周に接するように巻き付けた。
なお、不織布16dは、実施例1、2および比較例1においては、不織布16dを、ゴムシート16aの幅方向[心線のスパイラル方向と直行する方向(面長方向)]に沿って、ゴムシート16a表面の一端から他端に至るまで幅150mm(ゴムシート16a又はベルトの長さの14%)で帯状に積層し、実施例3においては不織布16dをゴムシート16aの表面側全体に積層した。また、比較例1においては、不織布を用いることなく、ゴムシート16aをそのままブラダー15に接するように巻き付けた。
さらに、ゴムシート16aの外周面に心線3をスパイラル状(心線の平均間隔0.5mm)に巻き付けた後、また、この心線3の上に圧縮ゴム層を形成するためのゴムシート16bを巻き付けた。さらに、このゴムシート16bの外周面に予めミシンジョイントした補強布16cを被せるように巻き付けてベルトスリーブ17を装着した。
Figure 0006224886
さらに、図3に示すように、ベルトスリーブ17を巻き付けた前記金型14を加硫型18内にセットし、加熱・冷却媒体導入口36,37を備えた加熱・冷却ジャケット35で加熱しながら、図4に示すようにブラダー15を膨張させ、ベルトスリーブ17を加硫型18の内周面に押し付けて加圧することによって加硫した。加硫の条件は160℃、1MPa、20分間に設定した。このとき、加硫型18の成形用凹凸部41がベルトスリーブ17に外周から食い込むことによって、ベルトスリーブ17の外周に溝26が成形された。 次に、加硫型18から金型14を抜き出し、加硫型18内に残る加硫ベルトスリーブを加熱・冷却ジャケット35で冷却した後、加硫ベルトスリーブを加硫型18から取り出した。そして、この加硫ベルトスリーブをカッターにより輪切りするように切断することによって、Vリブドベルトを得た。
実施例1〜3で得られたVリブドベルトは、図1で示される構造を有していた。すなわち、得られたVリブドベルトの断面をマイクロスコープにて撮影したところ、図1および図5(図1の部分拡大図)に示すように、心線3が短繊維を含有する伸張ゴム層5に埋設され[又は短繊維を含有する伸張ゴム層5が心線3の間に侵入し、すなわち、心線3の中心間を結ぶセンターラインLを超えて圧縮ゴム層6側に向かって侵入し(例えば、実施例1では心線径を100%としたとき伸張ゴム層に対して心線が平均64%侵入し)]、背面においては不織布を構成する低融点繊維が加硫温度で完全に融解してソリッドで平滑な(又は平坦で段差のない)フィルム状のスキン層9が形成されていた。
一方、比較例1で得られたVリブドベルトは、その断面をマイクロスコープにて撮影したところ、図6(図5に対応する部分拡大図)に示すように、伸張ゴム層5は、心線3に接触する程度であり、心線3の間に侵入していなかった。しかも、伸張ゴム層5の一部(心線3の間が開いている箇所)が、心線3の間隔を狭めるように押し広げる形態で圧縮ゴム層6に大きく侵入し、ベルト背面(伸張ゴム層5の表面)には、ベルト長手方向に沿って筋状の落ち込んだ溝Aが形成されていた。しかも、心線3の移動が生じて心線3の間隔が狭くなる箇所が存在し、心線3の並びにも乱れが発生し、さらに、リブ部7の外形がやや湾曲しており、金型面が正確に再現されていなかった。
(ベルトの評価)
作製したVリブドベルトの表面外観、スキン層厚み、耐熱耐久性の評価を表4に示す。
Figure 0006224886
本発明の摩擦伝動ベルトは、各種の伝動ベルト(特に金型成形レスベルト)に利用でき、例えば、Vリブドベルト、Vベルト、ローエッジVベルト、平ベルトなどの摩擦伝動ベルトに利用でき、特に、研磨による生産工程が煩雑であるVリブドベルトなどに有用である。
1…Vリブドベルト
2…スキン層
3…心線
4…短繊維
5…伸張層
6…圧縮ゴム層
7…リブ部
8…補強布
L…心線3の中心間を結ぶライン
A…溝

Claims (15)

  1. 短繊維を含む伸張ゴム層と、心線と、伸張ゴム層上に積層された圧縮ゴム層とを備えた伝動ベルトであって、伸張ゴム層の表面が、熱可塑性樹脂で形成されたフィルム状のスキン層で被覆され、かつ心線がベルト長手方向に沿って伸張ゴム層に埋設されており、前記伸張ゴム層のゴム成分が、エチレン−α−オレフィンエラストマーを含み、前記スキン層が単一層で形成され、前記スキン層の熱可塑性樹脂が、オレフィン系樹脂及びオレフィン系エラストマーから選択され、かつ前記伸張ゴム層の加硫温度以下の融点又は軟化点を有する少なくとも1種を含む、伝動ベルト。
  2. 熱可塑性樹脂が架橋されておらず、伸張ゴム層と圧縮ゴム層との間に接着ゴム層が形成されておらず、かつ請求項1記載のフィルム状のスキン層が直接伸張ゴム層の表面に被覆されている請求項1記載の伝動ベルト。
  3. 請求項1記載のフィルム状のスキン層の平均厚みが0.01〜0.5mmである請求項1又は2記載の伝動ベルト。
  4. 請求項1記載のフィルム状のスキン層が、ベルトの幅方向に、ベルト長手方向の所定の平均長さで、伸張ゴム層の一端から他端にわたって伸張ゴム層の表面を被覆しており、前記平均長さが、ベルトの長さの5%以上である請求項1〜3のいずれかに記載の伝動ベルト。
  5. 伸張ゴム層側のベルト表面に、凹凸又は溝を有していない請求項1〜4のいずれかに記載の伝動ベルト。
  6. 心線の全体積の半分以上が伸張ゴム層に埋設されている請求項1〜5のいずれかに記載の伝動ベルト。
  7. さらに、圧縮ゴム層の表面が補強布で被覆されている請求項1〜6のいずれかに記載の伝動ベルト。
  8. 圧縮ゴム層がベルト長手方向に延びる複数のリブ部を有するVリブドベルトである請求項1〜7のいずれかに記載の伝動ベルト。
  9. 円筒状ドラムに、スキン層を形成するための熱可塑性樹脂シート、短繊維を含む伸張ゴム層を形成するための未加硫ゴムシート、心線、および圧縮ゴム層を形成するための未加硫ゴムシートを、順次巻き付けて未加硫のベルトスリーブを作製する巻付工程と、この巻付工程で得られた未加硫のベルトスリーブを金型に押し付けて加硫成形する加硫成形工程とを含む請求項1〜8のいずれかに記載の伝動ベルトの製造方法。
  10. 巻付工程において、伸張ゴム層を形成するための未加硫ゴムシートに熱可塑性樹脂シートを積層した積層シートを、熱可塑性樹脂シート側の面を円筒状ドラム側として、円筒状ドラムに巻き付ける請求項9記載の製造方法。
  11. 巻付工程において、圧縮ゴム層を形成するための未加硫ゴムシートを巻き付けた後、さらに補強布を巻き付けて未加硫のベルトスリーブを作製する請求項9又は10記載の製造方法。
  12. 加硫成形工程において、加硫成形とともに、熱可塑性樹脂シートを溶融させてフィルム状のスキン層を形成する請求項9〜11のいずれかに記載の製造方法。
  13. 熱可塑性樹脂シートが熱可塑性樹脂繊維で形成された布帛である請求項12記載の製造方法。
  14. 布帛が不織布である請求項13記載の製造方法。
  15. 熱可塑性樹脂シートが熱可塑性樹脂繊維で形成された布帛であり、加硫成形工程において、加硫成形とともに熱可塑性樹脂シートを溶融させつつ発生するガスを脱気する請求項9〜14のいずれかに記載の製造方法。
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