JP6748002B2 - 摩擦伝動ベルト及びその製造方法 - Google Patents

摩擦伝動ベルト及びその製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP6748002B2
JP6748002B2 JP2017024393A JP2017024393A JP6748002B2 JP 6748002 B2 JP6748002 B2 JP 6748002B2 JP 2017024393 A JP2017024393 A JP 2017024393A JP 2017024393 A JP2017024393 A JP 2017024393A JP 6748002 B2 JP6748002 B2 JP 6748002B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
layer
resin
friction transmission
belt
transmission belt
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2017024393A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2017150662A (ja
Inventor
学 光冨
学 光冨
博樹 武市
博樹 武市
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Mitsuboshi Belting Ltd
Original Assignee
Mitsuboshi Belting Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Mitsuboshi Belting Ltd filed Critical Mitsuboshi Belting Ltd
Publication of JP2017150662A publication Critical patent/JP2017150662A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6748002B2 publication Critical patent/JP6748002B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Compositions Of Macromolecular Compounds (AREA)

Description

本発明は、自動車エンジン補機駆動などに用いられる摩擦伝動ベルトに関し、詳しくは、摩擦伝動面の摩擦状態を安定化して耐発音性を向上できる摩擦伝動ベルト及びその製造方法に関する。
ゴム工業分野のなかでも、特に自動車用部品においては高機能、高性能化が望まれている。このような自動車用部品に用いられるゴム製品の一つとして摩擦伝動ベルトがあり、この摩擦伝動ベルトは、例えば、自動車のエアーコンプレッサーやオルタネータなどの補機駆動の動力伝達に広く用いられている。この種のベルトとしては、リブをベルト長手方向に沿って設けたVリブドベルトが知られているが、Vリブドベルトには、省燃費性や耐摩耗性などのベルト性能に加えて、耐発音性が要求される。特に、被水時での走行では、スティック−スリップ音の発生が問題となっている。詳しくは、摩擦伝動面の濡れ性が低く、ベルトとプーリ間の水の浸入状態が均一でないと、水が浸入していない箇所(乾燥状態)では摩擦係数が高く、水が浸入した箇所(被水状態)では、部分的に摩擦係数が著しく低下して、摩擦状態が不安定になり、スティック−スリップ音が発生する。
特開2008−185162号公報(特許文献1)には、少なくとも摩擦伝動面が、エチレン−α−オレフィンエラストマー100質量部に対して、界面活性剤を1〜25質量部配合したゴム組成物で構成された摩擦伝動ベルトが開示されている。この摩擦伝動ベルトは、界面活性剤を配合することで摩擦伝動面を形成するゴム(エチレン−α−オレフィンエラストマー)と水との親和性を高めることができ、スティック−スリップによる異音を低減して被水時の耐発音性を向上できる。
しかし、このベルトでは、摩擦伝動面に滲出した界面活性剤がベルト−プーリ間の摩擦状態を安定化するものの、ゴム中の界面活性剤の挙動が不安定であるためか、ゴム強度が低下し、耐摩耗性を維持できない虞がある。さらに、圧縮ゴム層全体に界面活性剤が配合されているため、圧縮ゴム層の力学特性(強度や伸びなど)が低下する。
特開2006−118661号公報(特許文献2)には、心線のベルト底面側に圧縮ゴム層が配設された伝動ベルトにおいて、前記圧縮ゴム層に、レゾルシン−ホルマリン−ラテックス(RFL)処理したゲル化可能なポリビニルアルコール繊維からなる短繊維が圧縮ゴム層表面に露出するように埋設された伝動ベルトが開示されている。この文献には、露出させたポリビニルアルコール短繊維が吸水してゲル化することにより、多量の水が入っても、水の膜が突き破られ、ベルトとプーリとの界面に発生した水層に起因するスリップによる伝動能力の低下と異音の発生を防止することが記載されている。さらに、実施例では、発音性能の評価として、2軸試験機でベルトを回転させて注水時の発音限界張力を測定している。
しかし、この伝動ベルトに含まれる短繊維は、ゲル化可能なポリビニルアルコール繊維であるため、耐発音性を向上できない。すなわち、特許文献2の実施例では、注水時の2%スリップ時の負荷を測定しているが、比較例(ナイロン短繊維配合)に比べ、負荷が大きくなり、注水時の摩擦係数は大きくなっている。しかし、実車エンジンでは、回転変動があるため、注水時の摩擦係数が高いと、スティック−スリップによる発音が生じ易くなる。そのため、摩擦伝動面を形成するゴムと水との親和性を高めて、均一な水膜を形成して、注水時の摩擦係数を下げ、かつ滑り速度に対する摩擦係数の変化を小さくする必要がある。しかし、特許文献2の短繊維では、吸水してゲル化した短繊維が摩擦伝動面で突出して水膜を突き破って除去するため、均一な水膜自体を形成できず、摩擦状態を安定化することができない。そのため、回転変動がある実車エンジンでは、耐発音性が十分ではない。
また、ゲル化短繊維は吸水により軟化していると推定できるが、ベルト伝動時に突出した短繊維が摩滅するため、耐摩耗性も維持できない。
さらに、短繊維は粒子に比べ圧縮ゴム層中へ分散し難く、加工性が低い。また、ゴム中に分散した短繊維は、ゴムとの接触面積が小さく、平滑な接触面となるため、ゴムとの接着性が低くなり、接着力向上のため、RFL処理などの表面処理が必要となる。さらに、短繊維が圧縮ゴム層全体に配合されているため、力学特性が低下する。
特開2008−157445号公報(特許文献3)には、少なくとも摩擦伝動面の一部が、ゴム100質量部に対して、融点又は軟化点が80℃以下の水溶性高分子を5〜50質量部含有するゴム組成物で構成された摩擦伝動ベルトが開示されている。この文献には、前記水溶性高分子としては、ポリエチレンオキサイドが記載されている。
しかし、水溶性高分子が圧縮ゴム層全体に配合されているため、力学特性が低下する。なお、特許文献3の実施例では、水溶性高分子としてポリビニルアルコールが配合されているが、注水時の発音限界張力が低い比較例として記載されている上に、その詳細も不明である。
WO2011/114727号パンフレット(特許文献4)には、プーリに接触して動力を伝える圧縮ゴム層を備え、かつ前記圧縮ゴム層が、可塑剤の含有量が相対的に多く、かつ粒状の超高分子量ポリエチレン樹脂を含む表面ゴム層と、可塑剤の含有量が相対的に少ない内部ゴム層とを有する摩擦伝動ベルトが開示されている。また、特開2013−113343号公報(特許文献5)には、プーリに係合又は接触するための摩擦伝動面を有する圧縮ゴム層を備え、かつ前記摩擦伝動面にポリエチレン系樹脂で形成された滑剤が付着した摩擦伝動ベルトが開示されている。
しかし、超高分子量ポリエチレン樹脂などのポリエチレン系樹脂では、摩擦係数の低減により耐発音性や耐摩耗性が改善できるが、被水時の発音を高いレベルで抑制できない。
特開2008−185162号公報(特許請求の範囲) 特開2006−118661号公報(請求項1、段落[0005][0006][0009]) 特開2008−157445号公報(特許請求の範囲、実施例) WO2011/114727号パンフレット(請求項1及び6) 特開2013−113343号公報(請求項1)
従って、本発明の目的は、摩擦伝動面の摩擦状態を安定化して耐発音性を向上できる摩擦伝動ベルト及びその製造方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、強度や伸びなどの力学特性を維持しつつ、被水時における摩擦伝動面とプーリとの間のスリップによる発音を抑制できる摩擦伝動ベルト及びその製造方法を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、耐摩耗性などのベルト性能を維持しつつ、耐発音性を向上できる摩擦伝動ベルト及びその製造方法を提供することにある。
本発明の別の目的は、長期間走行しても、優れた耐発音性及び耐摩耗性を維持できる摩擦伝動ベルト及びその製造方法を提供することにある。
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、摩擦伝動ベルトの圧縮層の摩擦伝動面を親水性樹脂及び特定のバインダー樹脂を含む表層で被覆すると、省燃費性や耐摩耗性などのベルト性能を維持しつつ、摩擦伝動面の摩擦状態を安定化して耐発音性を向上できることを見いだし、本発明を完成した。
すなわち、本発明の摩擦伝動ベルトは、少なくとも一部がプーリと接触可能な摩擦伝動面を有し、かつポリマー成分を含むゴム組成物で形成された圧縮層を含む摩擦伝動ベルトであって、前記摩擦伝動面が親水性樹脂及びバインダー樹脂を含む表層で被覆されており、かつ前記バインダー樹脂がベルトの加硫温度で溶融又は軟化する樹脂である。前記親水性樹脂はポリビニルアルコール系樹脂を含んでいてもよい。前記ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は50モル%以上であってもよい。前記バインダー樹脂は、ベルトの走行温度以上であり、かつベルトの加硫温度以下の融点を有する熱可塑性樹脂であってもよい。前記バインダー樹脂はポリオレフィン(特にポリプロピレン系樹脂)であってもよい。前記親水性樹脂と前記バインダー樹脂との質量比は、前者/後者=80/20〜20/80程度である。前記表層は、熱可塑性樹脂(特にポリエチレン系樹脂及び/又はポリプロピレン系樹脂)を含むアンカー層を介して摩擦伝動面を被覆していてもよい。前記圧縮層は、エチレン−α−オレフィンエラストマーを含んでいてもよい。本発明の摩擦伝動ベルトは、さらに芯体とベルト背面を形成する伸張層とを含み、前記伸張層の一方の面に圧縮層が形成され、かつ前記伸張層と前記圧縮層との間にベルト長手方向に沿って前記芯体が埋設されていてもよい。本発明の摩擦伝動ベルトは、Vリブドベルトであってもよい。
本発明には、円筒状ドラムに圧縮層を形成するための未加硫ゴムシートを巻き付ける圧縮層巻付工程、前記未加硫ゴムシートを金型に押し付けて加硫する加硫成形工程を含み、前記圧縮層巻付工程及び前記加硫成形工程のいずれかの工程で表層を形成する前記摩擦伝動ベルトの製造方法も含まれる。本発明の製造方法は、表層を形成する前に、熱可塑性樹脂を含むアンカー層前駆体で摩擦伝動面を被覆するアンカー層形成工程をさらに含み、かつ前記アンカー層前駆体が布帛であってもよい。前記圧縮層巻付工程において、未加硫ゴムシートの摩擦伝動面に親水性樹脂の前駆体粒子及びバインダー樹脂の前駆体粒子を付着させてもよい。前記加硫成形工程において、金型として、未加硫ゴムシートとの接触面に親水性樹脂の前駆体粒子及びバインダー樹脂の前駆体粒子を付着させた金型を用いてもよい。
本発明では、摩擦伝動ベルトの圧縮層の摩擦伝動面が親水性樹脂及び特定のバインダー樹脂を含む表層で被覆されているため、摩擦伝動面の摩擦状態を安定化して耐発音性(特に被水時の耐発音性)を向上できる。特に、表層が親水性樹脂を含むため、強度や伸びなどの力学特性を維持しつつ、親水性樹脂が適度に水に溶解して摩擦伝動面において均一な水膜を形成するためか、被水時における摩擦伝動面とプーリ間のスリップによる発音を抑制できる。さらに、バインダー樹脂として、ポリプロピレン系樹脂などのポリオレフィンを用いると、プーリとの接触(摺動)において、摩擦係数の低減(摺動性の向上)や耐摩耗性を向上できるため、耐摩耗性などのベルト性能を維持した(ゴムの架橋阻害による性能低下が起こらない)まま、耐発音性を向上できる。特に、バインダー樹脂として特定の熱可塑性樹脂を含むと、親水性樹脂を含む表層が摩擦伝動面に強固に固着されるため、走行中に表層が剥離するのを抑制でき、長期間走行しても、優れた耐発音性及び耐摩耗性を維持できる。
図1は、本発明のVリブドベルトの一例を示す概略断面図である。 図2は、実施例でのミスアライメント発音評価試験を説明するための概略図である。 図3は、実施例での摩擦係数の測定方法を説明するための概略図である。 図4は、実施例での摩擦係数(注水時)の測定方法を説明するための概略図である。 図5は、実施例での耐久性試験を説明するための概略図である。 図6は、実施例8で得られたVリブドベルトにおける圧縮層断面の走査型電子顕微鏡写真である。 図7は、実施例12で得られたVリブドベルトにおける圧縮層断面の走査型電子顕微鏡写真である。
[摩擦伝動ベルト]
以下に、必要により添付図面を参照しつつ、本発明を詳細に説明する。
本発明の摩擦伝動ベルトは、少なくとも一部がプーリと接触可能な摩擦伝動面を有する圧縮層を含み、前記摩擦伝動面が親水性樹脂及び特定のバインダー樹脂を含む表層で被覆されていれば特に限定されず、Vベルト、Vリブドベルト、平ベルトなどであってもよい。また、摩擦伝動ベルトは、摩擦伝動部(リブなど)が形成されたベルトであってもよく、代表的な伝動ベルトは、ベルト周長方向に延びる複数のV字状リブ部が形成され、伝動効率の高いVリブドベルトである。
図1に示すように、このような摩擦伝動ベルト(Vリブドベルト)1は、ベルト背面(ベルトの外周面)を形成し、かつカバー帆布(織物、編物、不織布など)で構成された伸張層4と、この伸張層の片面側(一方の面側)に形成され、摩擦伝動面(摩擦伝動部の表面)を有する圧縮層(圧縮ゴム層)2と、圧縮層2の摩擦伝動面に被覆(積層)されてベルト内周面を形成し、プーリに接触可能な表層5と、前記伸張層4と圧縮層2との間にベルト長手方向(周長方向)に沿って埋設された芯体3とを備えている。この例では、芯体3は、ベルト幅方向に所定間隔で配列した心線(撚りコード)であり、伸張層4と圧縮層2とに接して、両層の間に介在している。
圧縮層2には、ベルト長手方向に伸びる複数の断面V字状溝が形成され、この溝の間には断面V字形(逆台形)の複数のリブが形成されており、リブの二つの傾斜面(表面)が摩擦伝動面を形成している。そして、摩擦伝動面は、表層5を介して、プーリと接触可能であり、前記表層5の表面及び内部には親水性樹脂が保持されている。
なお、本発明は、圧縮層2にプーリとの摩擦伝動面(又は摩擦伝動部)が形成された伝動ベルトに好適に適用される。本発明の摩擦伝動ベルトは上記構造に限定されず、例えば、伸張層4をゴム組成物で形成してもよく、圧縮層2と伸張層4との間には、芯体3と伸張層4又は圧縮層2との接着性を向上させるため、接着層を介在させてもよい。芯体3は、伸張層4と圧縮層2との間に埋設できればよく、例えば、圧縮層2に埋設させてもよく、伸張層4に接触させつつ圧縮層2に埋設させてもよい。さらに、芯体3は前記接着層に埋設させてもよく、圧縮層2と接着層又は接着層と伸張層4との間に芯体3を埋設してもよい。
以下に、ベルトを構成する各部材、及びベルトの製造方法の詳細を説明する。
[表層]
表層は、親水性樹脂及びバインダー樹脂を含み、圧縮層(圧縮ゴム層)の摩擦伝動面を被覆している。詳しくは、親水性樹脂とバインダー樹脂とが一体化した状態で表層を形成し、圧縮層の摩擦伝動面に固着されており、親水性樹脂の親水作用により、摩擦伝動面の乾燥状態(Dry)と被水状態(Wet)とで摩擦係数の差が小さくなり、ベルトとプーリとの間でスティック−スリップ音を長期間抑制できる。このような耐発音性が発現する理由は、次のように推定できる。
すなわち、走行中のベルトでは、圧縮層の摩擦伝動面に親水性樹脂が存在することにより、圧縮層の摩擦伝動面の水に対する濡れ性を向上できる。そのため、走行時に水が浸入してもベルトとプーリとの間に水膜が均一に拡がり、摩擦状態を安定化して自励振動による発音を抑制できる。特に、実車エンジンのような回転変動がある場合でも、滑り速度に対する摩擦係数の変化を小さくして、スティック−スリップによる異音を低減して被水時の耐発音性を向上できると推定できる。
なお、親水性樹脂がベルト中に分散粒子として存在する場合、走行前のベルトでは、表層の表面では、通常、粒状親水性樹脂は、バインダー樹脂の薄膜に被覆されているが、走行初期でリブ表面の薄膜が飛散されると、親水性樹脂が露出する。この状態で連続してプーリに接触して走行を続けた場合、ベルトの加硫後にプーリとの接触側表面に親水性粒子を付着させる工法に比べ、親水性粒子が水に流されて、摩擦伝動面から落ちこぼれたり、プーリとの接触摩擦により走行初期で欠落したりして、親水性粒子の効果が消失するリスクは大きく低減される。そのため、親水性樹脂が粒子状であっても、バインダー樹脂と一体化した状態で固着された粒状親水性樹脂は、走行経緯の中でも脱落することなく保持されて、粒状親水性樹脂の親水効果が長時間持続されると推定できる。
表層は、プーリと接触可能な摩擦伝動面に積層されていればよいが、生産性などの点から、圧縮層の表面全体(露出した表面全体)に積層されていてもよい。
(親水性樹脂)
親水性樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、アクリルアミド系樹脂、ビニルエーテル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリビニルピロリドン系樹脂、ポリエチレングリコール系樹脂、ポリエチレンイミン系樹脂、セルロース系樹脂などが挙げられる。これらの親水性樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの親水性樹脂のうち、親水性(水との濡れ性)及び耐摩耗性に優れる点から、ポリビニルアルコール系樹脂が好ましい。
ポリビニルアルコール系樹脂は、ビニルアルコール単位を主単位として含んでいればよく、ビニルアルコール単位に加えて、他の共重合性単位をさらに含んでいてもよい。
他の共重合性単位を構成する単量体としては、例えば、オレフィン類(エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、1−ヘキセンなどのα−C2−10オレフィンなど)、不飽和カルボン酸類[(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチルなどの(メタ)アクリル酸C1−6アルキルエステル、(無水)マレイン酸など]、ビニルエーテル類(メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテルなどのC1−6アルキルビニルエーテル類、エチレングリコールビニルエーテル、1,3−プロパンジオールビニルエーテル、1,4−ブタンジオールビニルエーテルなどのC2−6アルカンジオール−ビニルエーテルなど)、不飽和スルホン酸類(エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸など)などが挙げられる。これらの単量体は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの単量体のうち、エチレンやプロピレンなどのα−C2−4オレフィンが汎用される。
他の共重合性単位の割合は、全単位に対して50モル%以下であってもよく、例えば0〜30モル%、好ましくは0.1〜20モル%、さらに好ましくは1〜10モル%程度である。ポリビニルアルコール系樹脂は、ビニルアルコール単位単独で構成されたホモポリマーであってもよい。
ポリビニルアルコール系樹脂は、ビニルアルコール単位が疎水基で変性されていてもよい。疎水基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ヘキシル基などのC1−10アルキル基、シクロヘキシル基などのシクロアルキル基、フェニル基などのアリール基などが挙げられる。これらの疎水基は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの疎水基のうち、エチル基やプロピル基などのC2−4アルキル基が好ましい。
本発明では、共重合性単位や疎水基の割合により、ポリビニルアルコール系樹脂の水に対する溶解度などを調整できる。
ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は30モル%以上であってもよく、例えば30〜99.7モル%、好ましくは50〜99.5モル%、さらに好ましくは60〜99モル%程度である。ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は、耐久性を向上できる点から、85モル%以上であってもよく、例えば85〜99.7モル%、好ましくは90〜99.5モル%、さらに好ましくは95〜99.3モル%程度である。本発明では、耐発音性及び耐摩耗性のバランスに優れ、特に、被水時の摩擦係数変化(μ−V曲線の傾き)が小さく、水との濡れ性が良好でベルト走行時においても被水時の耐発音性に優れる点から、ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は90モル%以下(例えば50〜80モル%)のケン化度であってもよく、例えば50〜90モル%、好ましくは55〜85モル%、さらに好ましくは60〜80モル%(特に65〜75モル%)程度であってもよい。
さらに、ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は、耐発音性と耐摩耗性とを高度に両立できる点から、高い方が好ましく、例えば90モル%以上(例えば90〜99.99モル%)、好ましく92モル%以上(例えば92〜99.9モル%)、さらに好ましくは95モル%以上(例えば95〜99.5モル%)程度であり、完全ケン化物が特に好ましい。なお、完全ケン化物のケン化度は97.5モル%以上(特に98モル%以上)であってもよい。
ポリビニルアルコール系樹脂の粘度平均重合度は、例えば50〜3500、好ましくは100〜3200、さらに好ましくは150〜3000程度である。粘度平均重合度は、耐発音性(特に被水時の耐発音性)を向上できる点から、例えば50〜1000、好ましくは80〜800、さらに好ましくは100〜500(特に150〜300)程度であってもよい。重合度が大きすぎると、水に溶解しにくく水との濡れ性が劣るため、被水時の耐発音性が低下する虞があり、小さすぎると、粘度が低く、プーリとの粘着性が高くなるため耐摩耗性が低下する虞がある。なお、本発明では、粘度平均重合度は、JIS K6726(1994)に準じた方法などで測定できる。
ポリビニルアルコール系樹脂の融点は、特に限定されず、例えば、ベルトの加硫温度をT℃とするとき、例えば(T−50)℃〜(T+50)℃、好ましくは(T−30)℃〜(T+30)℃、さらに好ましくは(T−20)℃〜(T+20)℃程度である。ポリビニルアルコール系樹脂の融点は、例えば140℃以上(例えば140〜300℃)であってもよく、例えば145〜200℃、好ましくは150〜180℃、さらに好ましくは155〜160℃程度であってもよい。融点が低すぎると、プーリとの摩擦熱により軟化して粘着性が高くなるため、耐摩耗性が低下する虞がある。
親水性樹脂(特にポリビニルアルコール系樹脂)の20℃における水への溶解度は1質量%以上であってもよく、好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上程度であってもよい。ベルトが被水すると、走行時のベルト温度が低下するため、常温付近での溶解度が低すぎると、より低温域(例えば、常温付近)での摩擦伝動面の濡れ性が低下し、耐発音性が低下する虞がある。
表層では、親水性樹脂の形態は、特に限定されず、マトリックスを形成するバインダー樹脂に対して分散相(粒状)を形成してもよく、分散相を形成するバインダー樹脂に対してマトリックスを形成してもよい。また、親水性樹脂とバインダー樹脂とは両連続相分離構造(網目構造)を形成してもよい。さらに、粒状の親水性樹脂は、表層の表面において、突出して分散していてもよく、突出せずに分散していてもいずれでもよいが、通常、表面に位置する粒状親水性樹脂の表面は、薄膜のバインダー樹脂で被覆されている。これらのうち、耐発音性と耐摩耗性とを高度に両立できる点から、粒状の親水性樹脂が分散相を形成する形態が特に好ましい。
親水性樹脂が粒状(粒子)である場合、粒状親水性樹脂(特に粒状ポリビニルアルコール系樹脂)の個数平均粒径は、例えば10〜300μm、好ましくは15〜200μm、さらに好ましくは20〜100μm(特に50〜100μm)程度である。また、粒状親水性樹脂の個数平均粒径は、耐発音性(特に被水時の耐発音性)を向上でき、かつベルト走行中の粒子の脱落や粒子−バインダー樹脂間での亀裂の発生も抑制できる点から、比較的小粒径であってもよく、例えば10〜100μm、好ましくは15〜80μm(例えば20〜50μm)、さらに好ましくは20〜70μm(特に40〜60μm)程度であってもよく、特に、耐発音性と耐摩耗性とを高度に両立できる点から、例えば10〜50μm、好ましくは12〜30μm、さらに好ましくは15〜25μm程度であってもよい。小粒径の粒子が耐発音性を向上できる理由は、均一な分散により水に対する濡れ性が向上し、ベルト走行中の粒子の脱落や粒子−バインダー樹脂間での亀裂の発生を抑制できるためであると推定できる。粒径が大きすぎると、表層の機械的特性や耐久性が低下する虞がある。一方、粒径が小さすぎると、表層中に均一に充填、分散させるのが困難となり、耐発音性が低下する虞がある。なお、本発明では、個数平均粒径は、粒子が異方形状である場合、長径と短径との平均値で示す。
粒状親水性樹脂(特に粒状ポリビニルアルコール系樹脂)の最大粒径は500μm以下であってもよく、例えば400μm以下、好ましくは350μm以下(例えば300μm以下)、さらに好ましくは200μm以下(特に180μm以下)であってもよい。粒状親水性樹脂(特に粒状ポリビニルアルコール系樹脂)の最小粒径は1μm以上であってもよく、例えば3μm以上、好ましくは5μm以上、さらに好ましくは8μm以上であってもよい。最大粒径が大きすぎると、耐発音性が低下する虞がある。
粒状親水性樹脂(特に粒状ポリビニルアルコール系樹脂)の平均アスペクト比(短径に対する長径の比)は10以下(例えば1〜10)であってもよく、例えば1〜5、好ましくは1〜3、さらに好ましくは1〜2(例えば1.2〜1.9)程度である。また、粒状親水性樹脂のアスペクト比は、被水時の耐発音性を向上できる点から、例えば1.5〜5、好ましくは1.6〜3、さらに好ましくは1.8〜2.5程度であってもよい。アスペクト比が大きすぎると、圧縮層を形成するゴム組成物の変形時に界面へ応力集中を生じ、ゴム組成物の破断伸びが低下する虞がある。
なお、本発明では、個数平均粒径、平均アスペクト比は、50倍で撮影した走査型電子顕微鏡写真を基に寸法を計測する方法などで測定できる。
粒状親水性樹脂(特に粒状ポリビニルアルコール系樹脂)は、このような形状を有しているため、圧縮層を形成するゴム組成物の変形時に、圧縮層と表層との界面におけるせん断や引張りの応力集中が生じ難い。そのため、レゾルシン−ホルマリン−ラテックス(RFL)液などの接着成分により接着処理をしなくても、摩擦伝動面に粒子を固定できる。特に、ポリビニルアルコール系樹脂では、水酸基(親水基)の他に酢酸基(疎水基)が存在するため、界面活性能を有し、表層を形成するバインダー樹脂へ容易に均一に分散できる。
(バインダー樹脂)
バインダー樹脂としては、ベルトの加硫温度で溶融又は軟化することにより前記親水性樹脂と一体化して親水性樹脂を摩擦伝動面に固着できるバインダー性能を有していればよい。さらに、バインダー樹脂としては、溶融変形して親水性樹脂を固着できる点や、親水性樹脂が粒状であり、バインダー樹脂で被覆されていても、ベルト走行中には、粒状親水性樹脂を表層(摩擦伝動面)から脱離することなく、保持できる点から、ベルトの走行温度以上であり、かつベルトの加硫温度以下の融点を有する熱可塑性樹脂が好ましく利用できる。
このような熱可塑性樹脂の融点は、ベルトの加硫温度をT℃とするとき、例えば(T−100)℃〜(T)℃、好ましくは(T−50)℃〜(T−2)℃、さらに好ましくは(T−30)℃〜(T−3)℃程度である。熱可塑性樹脂の融点は、例えば120〜180℃、好ましくは130〜170℃、さらに好ましくは140〜165℃(特に145〜160℃)であってもよい。融点が低すぎると、ベルト走行時に溶融し、ベルトの耐発音性が低下する虞があり、高すぎると、親水性樹脂(特に粒状親水性樹脂)の保持力が低下し、ベルト走行時に親水性樹脂が脱離する虞がある。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレンなど)、スチレン系樹脂(ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂など)、ポリエステル系樹脂(脂肪族ポリエステルなど)、ポリカーボネート系樹脂(脂肪族ポリカーボネートなど)、ポリアミド系樹脂(脂肪族ポリアミドなど)、ポリウレタン系樹脂(ポリエステル型ポリウレタンなど)などが挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
熱可塑性樹脂は、ポリエチレンやポリプロピレンなどの結晶性樹脂であってもよく、ポリスチレンなどの非晶性樹脂であってもよいが、脆くなく、耐摩耗性に優れ、クラック(リブゴム亀裂)を防止できる点から、結晶性樹脂が好ましい。さらに、これらの熱可塑性樹脂のうち、耐摩耗性に優れる上に、圧縮層がエチレン−α−オレフィンエラストマーである場合、共架橋により表層に強固に固着できる点から、ポリオレフィンが好ましい。
ポリオレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、3−メチルペンテン、4−メチルペンテンなどのα−オレフィン(特に、エチレン、プロピレンなどのα−C2−6オレフィン)を主要な重合成分とする重合体であってもよい。
前記α−オレフィン以外の共重合性単量体としては、例えば、(メタ)アクリル系単量体[例えば、(メタ)アクリル酸メチルや(メタ)アクリル酸エチルなどの(メタ)アクリル酸C1−6アルキルエステルなど]、不飽和カルボン酸類(例えば、無水マレイン酸など)、ビニルエステル類(例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなど)、ジエン類(ブタジエン、イソプレンなど)などが挙げられる。これらの単量体は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
ポリオレフィンとしては、例えば、ポリエチレン系樹脂(低、中又は高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン−1共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン−1共重合体、エチレン−(4−メチルペンテン−1)共重合体など)、ポリプロピレン系樹脂(ポリプロピレン、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−ブテン−1共重合体、プロピレン−エチレン−ブテン−1共重合体など)などが挙げられる。これらのポリオレフィンは、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
これらのポリオレフィンのうち、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂が好ましく、走行初期に摩耗が少なく、リブ表面の粘着性が低い上に、流動性にも優れ、表層全体に均一に親水性樹脂を強固に固着できる点から、ポリプロピレン系樹脂が好ましい。
ポリプロピレン系樹脂は、ポリプロピレンホモポリマー(単独重合体)であってもよく、ポリプロピレンコポリマー(共重合体)であってもよい。コポリマーに含まれる共重合性単量体としては、例えば、プロピレン以外の前記α−オレフィンや、前記α−オレフィン以外の共重合性単量体などが挙げられる。これらの共重合性単量体は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの共重合性単量体のうち、エチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチルペンテン、1−オクテンなどのα−C2−8オレフィンが好ましい。共重合性単量体の割合は好ましくは30モル%以下(例えば0.01〜30モル%)、より好ましくは20モル%以下(例えば0.1〜20モル%)、さらに好ましくは10モル%以下(例えば1〜10モル%)程度である。コポリマーは、ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体などであってもよい。
ポリプロピレン系樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、プロピレンと共重合可能なモノマーとの共重合体(プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−(メタ)アクリル酸共重合体などの二元共重合体;プロピレン−エチレン−ブテン−1などの三元共重合体)などが含まれる。これらのポリプロピレン系樹脂のうち、特に、ポリプロピレンなどのプロピレンの単独重合体などが好ましい。ポリプロピレン系樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
ポリオレフィン(特にポリプロピレン系樹脂)の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC法)において(ポリスチレン換算)、例えば1万〜100万、好ましくは2万〜50万、さらに好ましくは3万〜30万程度である。分子量が小さすぎると、機械的特性及び耐熱性が低下するとともに、摩擦係数が大きくなりすぎて、摩耗量が増加するとともに、耐久性が低下する虞がある。一方、大きすぎると、ベルトの屈曲性が低下して耐久性が低下するとともに、摩擦係数が小さくなりすぎて、ベルトがスリップし易くなる。
前記親水性樹脂と前記バインダー樹脂との質量比は、前者/後者=90/10〜10/90程度の範囲から選択でき、例えば80/20〜20/80、好ましくは70/30〜30/70、さらに好ましくは60/40〜40/60(特に55/45〜45/55)程度である。バインダー樹脂の割合が少なすぎると、親水性樹脂が表層から脱離し、耐久性が低下する虞があり、逆に多すぎると、耐発音性が低下する虞がある。
バインダー樹脂の形状は、特に限定されず、マトリックスを形成する親水性樹脂に対して分散相(粒状)を形成してもよく、分散相を形成する親水性樹脂に対してマトリックスを形成しててもよいが、粒状親水性樹脂を摩擦伝動面に対して強固に固着できる点から、加硫による溶融により、粒状親水性樹脂(分散相又は島部)に対してマトリックス相(海部)を形成するのが好ましい。
(表層の特性)
表層は、後述する圧縮層の項で例示される補強材、添加剤(又は配合剤)をさらに含んでいてもよい。
表層の厚み(平均厚み)は、例えば10〜150μm、好ましくは15〜80μm、さらに好ましくは20〜60μm程度である。表層の厚みが薄すぎると、耐発音性を向上する効果が低下する虞があり、耐発音性の耐久性も低下する虞がある。一方、表層の厚みが厚すぎると、圧縮層の力学特性が低下する虞がある。
本発明では、表層の平均厚みは、走査型電子顕微鏡を用いて、摩擦伝動ベルトの圧縮層部分の断面を観察して測定し、10箇所の平均値を算出することにより求めることができる。
[圧縮層]
(ポリマー成分)
圧縮層は、ポリマー成分を含むゴム組成物で形成されている。ポリマー成分としては、公知のゴム成分及び/又はエラストマー、例えば、ジエン系ゴム[天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(ニトリルゴム)、水素化ニトリルゴム(水素化ニトリルゴムと不飽和カルボン酸金属塩との混合ポリマーを含む)など]、エチレン−α−オレフィンエラストマー、クロロスルフォン化ポリエチレンゴム、アルキル化クロロスルフォン化ポリエチレンゴム、エピクロルヒドリンゴム、アクリル系ゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴムなどが例示できる。これらのポリマー成分は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのポリマー成分のうち、有害なハロゲンを含まず、耐オゾン性、耐熱性、耐寒性を有し、経済性にも優れる点から、エチレン−α−オレフィンエラストマー(エチレン−プロピレン共重合体(EPM)、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体(EPDM)などのエチレン−α−オレフィン系ゴム)が好ましい。
圧縮層全体(又はゴム組成物全量)に対するポリマー成分の割合は、例えば20質量%以上(例えば25〜80質量%)、好ましくは30質量%以上(例えば35〜75質量%)、さらに好ましくは40質量%以上(特に45〜70質量%)であってもよい。
(補強材)
圧縮層のゴム組成物は、機械的強度を向上させるために、補強材を含んでいてもよい。補強材には、慣用の充填剤及び補強繊維などが含まれる。
充填剤としては、例えば、炭素質材料(カーボンブラック、グラファイトなど)、金属化合物又は合成セラミックス(酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化鉄、酸化銅、酸化チタン、酸化アルミニウムなどの金属酸化物、ケイ酸カルシウムやケイ酸アルミニウムなどの金属ケイ酸塩、炭化ケイ素や炭化タングステンなどの金属炭化物、窒化チタン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素などの金属窒化物、炭酸マグネシウムや炭酸カルシウムなどの金属炭酸塩、硫酸カルシウムや硫酸バリウムなどの金属硫酸塩など)、鉱物質材料(ゼオライト、ケイソウ土、焼成珪藻土、活性白土、アルミナ、シリカ、タルク、マイカ、カオリン、セリサイト、ベントナイト、モンモリロナイト、スメクタイト、クレーなど)などが挙げられる。これらの充填剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。充填剤の形状は、粒状、板状、不定形状などである。充填剤の個数平均一次粒径は、種類に応じて、10nm〜10μm程度の範囲から適宜選択できる。これらの充填剤のうち、カーボンブラックなどの炭素質材料、シリカなどの鉱物質材料などが汎用され、カーボンブラックが好ましい。
カーボンブラックの個数平均一次粒径は5〜200nm程度の範囲から選択でき、例えば10〜100nm、さらに好ましくは15〜80nm(特に20〜50nm)程度である。粒径が大きすぎると、圧縮層の力学特性が低下する虞がある。
補強繊維としては、例えば、ポリオレフィン系繊維(ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維など)、ポリアミド繊維(ポリアミド6繊維、ポリアミド66繊維、ポリアミド46繊維、アラミド繊維など)、ポリエステル繊維[ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維、ポリエチレンナフタレート(PEN)繊維などのポリC2−4アルキレンC6−14アリレート系繊維など]、ビニロン繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール(PBO)繊維などの合成繊維;綿、麻、羊毛などの天然繊維;炭素繊維などの無機繊維が例示できる。これらの繊維は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
これらの短繊維のうち、アラミド繊維などのポリアミド繊維、ポリエステル繊維、ビニロン繊維などから選択された少なくとも一種が好ましい。補強繊維はフィブリル化していてもよい。
補強繊維は、通常、短繊維の形態で圧縮層に含有させてもよく、短繊維の平均長さは、例えば0.1〜20mm、好ましくは0.5〜15mm、より好ましくは1〜10mmであり、1〜5mm(例えば、2〜4mm)程度であってもよい。補強繊維の平均繊維径は、例えば1〜100μm、好ましくは3〜50μm、さらに好ましくは5〜40μm(特に10〜30μm)程度である。
補強材の割合は、ポリマー成分100質量部に対して40質量部以上であり、例えば45〜100質量部、好ましくは50〜90質量部、さらに好ましくは55〜80質量部(特に60〜70質量部)程度である。
充填剤の割合は、ポリマー成分100質量部に対して10質量部以上であり、例えば20〜100質量部、好ましくは30〜90質量部、さらに好ましくは35〜80質量部(特に40〜70質量部)程度である。
補強繊維の割合は、ポリマー成分100質量部に対して80質量部以下(例えば0〜80質量部)であり、例えば60質量部以下(例えば1〜60質量部)、好ましくは50質量部以下(例えば5〜50質量部)、さらに好ましくは40質量部以下(例えば10〜40質量部)程度である。
(他の添加剤又は配合剤)
ゴム組成物は、必要により、慣用の添加剤又は配合剤を含んでいてもよい。配合剤としては、例えば、加硫剤又は架橋剤[例えば、オキシム類(キノンジオキシムなど)、グアニジン類(ジフェニルグアニジンなど)、金属酸化物(酸化マグネシウム、酸化亜鉛など)、有機過酸化物(ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステル、ジアルキルパーオキサイドなど)など]、共架橋剤又は加硫助剤、加硫促進剤、加硫遅延剤、可塑剤、軟化剤(パラフィンオイル、ナフテン系オイルなどのオイル類など)、加工剤又は加工助剤(ステアリン酸、ステアリン酸金属塩、ワックス、パラフィンなど)、老化防止剤(芳香族アミン系、ベンズイミダゾール系老化防止剤など)、接着性改善剤[レゾルシン−ホルムアルデヒド共縮合物、ヘキサメトキシメチルメラミンなどのメラミン樹脂、これらの共縮合物(レゾルシン−メラミン−ホルムアルデヒド共縮合物など)など]、着色剤、粘着付与剤、カップリング剤(シランカップリング剤など)、安定剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤など)、潤滑剤、難燃剤、帯電防止剤などが例示できる。これらの配合剤は単独で又は二種以上組み合わせて使用でき、ポリマー成分の種類や用途、性能に応じて適宜選択して用いられる。
本発明では、表層が親水性樹脂を含むため、圧縮層は、親水性樹脂を含む必要はなく、含む場合でも、圧縮層の力学特性を維持できる点から、表層よりも低濃度で親水性樹脂(特にポリビニルアルコール系樹脂)を含むのが好ましい。親水性樹脂(特にポリビニルアルコール系樹脂)の割合は、ポリマー成分100質量部に対して50質量部未満であればよく、例えば20質量部以下(例えば0.001〜20質量部)、好ましくは10質量部以下(例えば0.005〜10質量部)、さらに好ましくは5質量部以下(例えば0.01〜5質量部)程度であり、力学特性の点からは、親水性樹脂を実質的に含まないのが好ましく、ポリビニルアルコール系樹脂を含まないのが特に好ましい。
さらに、本発明では、表層の親水性樹脂により、被水時の摩擦伝動面に均一な水膜を形成できるため、力学特性の点から、圧縮層は、親水性樹脂(特にポリビニルアルコール系樹脂)以外の界面活性剤を実質的に含んでいないのが好ましい。圧縮層において、親水性樹脂(特にポリビニルアルコール系樹脂)以外の界面活性剤の割合は、圧縮層を形成するゴム組成物全体に対して10質量%以下(特に1質量%以下)であってもよく、実質的に(不可避的不純物を除き)親水性樹脂以外の界面活性剤を含まないのが特に好ましい。
[芯体]
芯体としては、特に限定されないが、通常、ベルト幅方向に所定の間隔で配列した心線(撚りコード)を使用できる。心線は、高モジュラスな繊維、例えば、ポリエステル繊維(ポリアルキレンアリレート系繊維)、アラミド繊維などの合成繊維、炭素繊維などの無機繊維などが汎用され、ポリエステル繊維(ポリエチレンテレフタレート系繊維、ポリエチレンナフタレート系繊維)、アラミド繊維が好ましい。繊維はマルチフィラメント糸、例えば、繊度2000〜10000デニール(特に4000〜8000デニール)程度のマルチフィラメント糸であってもよい。
心線としては、通常、マルチフィラメント糸を使用した撚りコード(例えば、諸撚り、片撚り、ラング撚りなど)を使用できる。心線の平均線径(撚りコードの繊維径)は、例えば0.5〜3mm、好ましくは0.6〜2mm、さらに好ましくは0.7〜1.5mm程度であってもよい。心線はベルトの長手方向に埋設され、単数又は複数の心線がベルトの長手方向に平行に所定のピッチで並列的に埋設されていてもよい。
ポリマー成分との接着性を改善するため、心線は、エポキシ化合物、イソシアネート化合物などによる種々の接着処理を施した後に、伸張層と圧縮層との間(特に接着層)に埋設してもよい。
[伸張層]
伸張層は、圧縮層と同様のゴム組成物で形成してもよく、帆布などの布帛(補強布)で形成してもよい。布帛(補強布)としては、例えば、織布、広角度帆布、編布、不織布などの布材などが挙げられる。これらのうち、平織、綾織、朱子織などの形態で製織した織布や、経糸と緯糸との交差角が90〜120°程度の広角度帆布や編布などが好ましい。補強布を構成する繊維としては、前記圧縮層の補強繊維の項で例示された繊維などを利用できる。
また、補強布には、接着処理(例えば、前記繊維部材の項で例示した接着処理)を施してもよい。接着処理としては、例えば、接着性成分[例えば、エポキシ化合物、イソシアネート化合物]を有機溶媒(トルエン、キシレン、メチルエチルケトン等)に溶解させた樹脂系処理液などへの浸漬処理、レゾルシン−ホルマリン−ラテックス液(RFL液)への浸漬処理、ゴム組成物を有機溶媒に溶解させたゴム糊への浸漬処理が挙げられる。さらに、接着処理した後、例えば、補強布とゴム組成物とをカレンダーロールに通して補強布にゴム組成物を刷り込むフリクション処理、補強布にゴム糊を塗布するスプレディング処理、補強布にゴム組成物を積層するコーティング処理などのゴム付帆布を形成する方法も採用できる。
また、伸張層はゴム(ゴム組成物)で形成してもよい。ゴム組成物には、背面駆動時に背面ゴムの粘着により発生する異音を抑制するために、さらに圧縮層と同様の短繊維を含有させてもよい。短繊維は、ゴム組成物中でランダムに配向させてもよい。さらに、短繊維は一部が屈曲した短繊維であってもよい。
さらに、背面駆動時の異音を抑制するために、伸張層の表面(ベルトの背面)に凹凸パターンを設けてもよい。凹凸パターンとしては、編布パターン、織布パターン、スダレ織布パターン、エンボスパターンなどが挙げられる。これらのパターンのうち、織布パターン、エンボスパターンが好ましい。補強布は、必要であれば、前記接着処理を施し、伸張ゴム層の表面に積層してもよい。
伸張層の厚みは、ベルトの種類などに応じて適宜選択できるが、例えば0.5〜10mm、好ましくは0.7〜8mm、さらに好ましくは1〜5mm程度であってもよい。
[接着層]
接着層は、前記の通り、必ずしも必要ではない。接着層(接着ゴム層)は、例えば、前記圧縮層(圧縮ゴム層)と同様のゴム組成物(エチレン−α−オレフィンエラストマーなどのゴム成分を含むゴム組成物)で構成できる。接着層のゴム組成物は、さらに接着性改善剤(レゾルシン−ホルムアルデヒド共縮合物、アミノ樹脂など)を含んでいてもよい。
接着層の厚みは、ベルトの種類などに応じて適宜選択できるが、例えば0.2〜5mm、好ましくは0.3〜3mm、さらに好ましくは0.5〜2mm程度であってもよい。
なお、前記伸張層及び接着層のゴム組成物において、ゴム成分としては、前記圧縮ゴム層のゴム組成物のゴム成分と同系統又は同種のゴムを使用する場合が多い。また、これらのゴム組成物において、加硫剤又は架橋剤、共架橋剤又は加硫助剤、加硫促進剤などの添加剤の割合は、それぞれ、前記圧縮層のゴム組成物と同様の範囲から選択できる。
[アンカー層]
本発明では、表層と圧縮層との間にさらにアンカー層を介在させ、表層を圧縮層の摩擦伝動面に強固に一体化してもよい。
アンカー層は、熱可塑性樹脂を含んでおり、ポリマー成分を含むゴム組成物の加硫物で形成された圧縮層を備えた摩擦伝動ベルトでは、前記圧縮層の加硫温度以下の融点(又は軟化点)を有するのが好ましく、例えば、前記加硫温度よりも0〜100℃(例えば3〜30℃)、好ましくは3〜80℃(例えば5〜20℃)、さらに好ましくは5〜70℃(特に10〜60℃)低い融点を有していてもよい。熱可塑性樹脂の融点が高すぎると、加硫工程で熱可塑性樹脂が融解せず、均一なアンカー層の形成が困難となり、逆に低すぎると、アンカー層の機械的特性が低下し、走行時の摩擦により破損し易くなる。圧縮層の加硫温度は150〜180℃程度である場合が多く、熱可塑性樹脂(特にポリエチレン系樹脂)の融点は、例えば165℃以下(例えば80〜165℃)、好ましくは150℃以下(例えば90〜150℃)、さらに好ましくは130℃以下(特に100〜130℃)程度であってもよい。さらに、熱可塑性樹脂(特にポリプロピレン系樹脂)の融点は、耐摩耗性を向上できる点から、例えば120〜175℃、好ましくは130〜170℃、さらに好ましくは150〜165℃以下(特に155〜163℃)程度であってもよい。
さらに、本発明では、熱可塑性樹脂としては、圧縮層の加硫工程で融解して均一化され、アンカー効果を向上できる点から、実質的に架橋されていない樹脂が使用される。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン、アクリル系樹脂、ビニル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリウレタン、セルロース系樹脂、熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの熱可塑性樹脂のうち、汎用性に優れる点から、ポリオレフィン及び/又はポリウレタン(例えば、ポリエステル型ポリウレタン、ポリエーテル型ポリウレタンなど)が好ましく、ポリオレフィンが特に好ましい。
ポリオレフィンとしては、前記表層のバインダー樹脂の項で例示されたポリオレフィンを利用できる。前記ポリオレフィンのうち、ポリエチレンなどのポリエチレン系樹脂、及び/又はポリプロピレンなどのポリプロピレン系樹脂が好ましく、加硫温度で容易に融解する点から、ポリエチレン系樹脂が特に好ましく、耐摩耗性を向上できる点から、ポリプロピレン系樹脂が特に好ましい。
ポリエチレン系樹脂としては、低、中又は高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン−1共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン−1共重合体、エチレン−(4−メチルペンテン−1)共重合体などが挙げられる。これらのポリエチレン系樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのポリエチレン系樹脂のうち、低密度ポリエチレンが好ましい。
ポリプロピレン系樹脂としては、例えば、前記表層の項で例示されたポリプロピレン系樹脂などが挙げられる。前記ポリプロピレン系樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。前記ポリプロピレン系樹脂のうち、ポリプロピレンなどのプロピレンホモポリマーが好ましい。
熱可塑性樹脂の原料の形態は、特に限定されず、通常、粒子状、シート状、繊維状などである。これらの形態のうち、ベルト生産性を向上できる点から、繊維状が好ましい。繊維状の原料としては、不織布、織布、編布などを利用でき、不織布を好適に利用できる。
アンカー層は、繊維構造を有する布帛を用いて得られる場合、原料由来の繊維構造が残存していてもよいが、表層を摩擦伝動面に強固に一体化できる点から、非繊維構造(均一なフィルム構造)であるのが好ましく、アンカー層全体に対する繊維構造の割合は50%以下、好ましくは30%以下、さらに好ましくは10%以下であり、略全面がフィルム状であるアンカー層が特に好ましい。すなわち、アンカー層は、繊維構造を有する布帛を融解して得られた層であっても、熱可塑性樹脂の融解により繊維形状が消失し、実質的に繊維構造を有していない層が特に好ましい。本発明では、繊維構造の割合は、断面積の電子顕微鏡写真に基づいて、断面積における面積割合として算出する。
アンカー層は、慣用の添加剤、例えば、着色剤、粘着付与剤、カップリング剤(シランカップリング剤など)、安定剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤など)、潤滑剤、難燃剤、帯電防止剤などを含んでいてもよい。添加剤の割合は、熱可塑性樹脂100質量部に対して30質量部以下、好ましくは10質量部以下(例えば0.01〜10質量部)程度である。すなわちアンカー層全体に対して熱可塑性樹脂の割合は70質量%以上(特に90質量%以上)であってもよく、実質的に熱可塑性樹脂のみで形成されていてもよい。
アンカー層の平均厚みは、例えば、0.01〜0.5mm、好ましくは0.03〜0.3mm、さらに好ましくは0.05〜0.15mm(特に0.06〜0.15mm)程度である。アンカー層の厚みが薄すぎると、アンカー効果が低下する虞がある。アンカー層の厚みが大きすぎると、アンカー層の可撓性が低下し、圧縮層の表面からの剥離や、割れが発生し易くなる。
[摩擦伝動ベルトの製造方法]
本発明の摩擦伝動ベルトの製造方法は、円筒状ドラムに圧縮層を形成するための未加硫ゴムシートを巻き付ける圧縮層巻付工程、前記未加硫ゴムシートを金型に押し付けて加硫する加硫成形工程を含む方法を採用でき、前記圧縮層巻付工程及び前記加硫成形工程のいずれかの工程で表層を形成する表層形成工程をさらに含む。また、アンカー層を形成する場合は、表層を形成する前に、熱可塑性樹脂を含むアンカー層前駆体で摩擦伝動面を被覆するアンカー層形成工程をさらに含む。
表層形成工程及びアンカー層形成工程以外は、金型で成形する方法であれば、特に限定されず、慣用の方法を利用できる。慣用の方法としては、例えば、円筒状ドラムに芯体を形成する心線を巻き付ける心線スピニング工程、巻き付けた心線の上に、未加硫ゴムシートを巻き付ける圧縮ゴム層巻付工程、前記心線及び前記未加硫ゴムシートを金型に押し付けて(金型で押圧して)加硫する加硫成形工程を含む方法を利用でき、伸張層や接着層を形成する場合は、心線スピニング工程の前工程として、円筒状の成形ドラムに装着された可撓性ジャケット(ブラダー)の上に、伸張層(ゴムシート又は補強布)を構成する部材、必要に応じて接着層を形成するゴムシートを巻き付ける工程を含んでいてもよく、巻き付けた部材の上さらに心線を螺旋状にスピニングしてもよい。
具体的には、慣用の方法では、先ず、内型として外周面に可撓性ジャケットを装着した円筒状内型を用い、外周面の可撓性ジャケットに未加硫の伸張層用ゴムシート(又は補強布)を巻きつけ、このシート上に芯体を形成する心線を螺旋状にスピニングし、さらに未加硫の圧縮層用ゴムシートを巻き付けて積層体を作製する。次に、前記内型に装着可能な外型として、内周面に複数のリブ型が刻設された筒状外型を用い、この外型内に、前記積層体が巻き付けられた内型を、同心円状に設置する。その後、可撓性ジャケットを外型の内周面(リブ型)に向かって膨張させて積層体(圧縮ゴム層)をリブ型に圧入し、加硫する。そして、外型より内型を抜き取り、複数のリブを有する加硫ゴムスリーブを外型から脱型した後、カッターを用いて、加硫ゴムスリーブをベルト長手方向に所定の幅にカットしてVリブドベルトに仕上げる。この方法では、伸張層、芯体、圧縮ゴム層を備えた積層体を一度に膨張させて複数のリブを有するスリーブ(又はVリブドベルト)に仕上げることができる。
一方、他の方法として、例えば、特開2004−82702号公報に開示される方法(圧縮層のみを膨張させて予備成形体(半加硫状態)とし、次いで伸張層と芯体とを膨張させて前記予備成形体に圧着し、加硫一体化してVリブドベルトに仕上げる方法)を採用してもよい。
(表層形成工程)
表層形成工程は、このような慣用の方法において、圧縮層巻付工程及び加硫成形工程のいずれかの工程に組み込むことができ、例えば、(1)圧縮層巻付工程において、未加硫ゴムシートの摩擦伝動面(又はアンカー層前駆体面)に親水性樹脂の前駆体粒子及びバインダー樹脂の前駆体粒子を付着させる方法、(2)加硫成形工程において、金型として、未加硫ゴムシートとの接触面(又はアンカー層前駆体面)に親水性樹脂の前駆体粒子及びバインダー樹脂の前駆体粒子を付着させた金型を用いる方法などが挙げられる。
親水性樹脂の前駆体粒子(特にポリビニルアルコール系樹脂の前駆体粒子)の個数平均粒径は、例えば10〜300μm、好ましくは15〜200μm、さらに好ましくは20〜100μm(特に50〜100μm)程度である。また、親水性樹脂の前駆体粒子の個数平均粒径は、耐発音性(特に被水時の耐発音性)を向上でき、かつベルト走行中の粒子の脱落や粒子−バインダー樹脂間での亀裂の発生も抑制できる点から、比較的小粒径であってもよく、例えば10〜100μm、好ましくは15〜80μm、さらに好ましくは20〜70μm(特に40〜60μm)程度であってもよい。粒径が大きすぎると、表層の機械的特性や耐久性が低下する虞がある。一方、粒径が小さすぎると、表層中に均一に充填、分散させるのが困難となり、耐発音性が低下する虞がある。
親水性樹脂の前駆体粒子(特にポリビニルアルコール系樹脂の前駆体粒子)の最大粒径は500μm以下であってもよく、例えば400μm以下、好ましくは350μm以下(例えば300μm以下)、さらに好ましくは200μm以下(特に180μm以下)であってもよい。親水性樹脂の前駆体粒子(特にポリビニルアルコール系樹脂の前駆体粒子)の最小粒径は1μm以上であってもよく、例えば3μm以上、好ましくは5μm以上、さらに好ましくは8μm以上であってもよい。
親水性樹脂の前駆体粒子(特にポリビニルアルコール系樹脂の前駆体粒子)の平均アスペクト比(短径に対する長径の比)は10以下(例えば1〜10)であってもよく、例えば1〜5、好ましくは1〜3、さらに好ましくは1〜2(例えば1.2〜1.9)程度である。また、親水性樹脂の前駆体粒子のアスペクト比は、被水時の耐発音性を向上できる点から、例えば1.5〜5、好ましくは1.6〜3、さらに好ましくは1.8〜2.5程度であってもよい。
バインダー樹脂の前駆体粒子の個数平均粒径は、例えば1〜100μm、好ましくは2〜50μm、さらに好ましくは3〜30μm(特に4〜10μm)程度である。バインダー樹脂の前駆体粒子の粒径が大きすぎると、親水性樹脂の前駆体粒子を均一に分散させるのが困難となる虞があり、逆に小さすぎると、取り扱い性が低下する虞がある。
方法(1)及び(2)において、両粒子は、粒子自体を塗布(散布)又は付着させて(吹き付けて)もよく、溶媒中に粒子を分散させた液状組成物を塗布してもよい。
両粒子を散布又は吹き付ける方法としては、慣用の粉体塗装方法、例えば、粉散布機の散布口から両粒子を散布(例えば、均一に落下させて散布)する方法、粒子を帯電させてスプレーで吹き付ける静電塗装方法、両粒子の流動層に浸漬する流動浸漬塗装法などを利用できる。これらのうち、摩擦伝動面に対して均一に両粒子を付着できる点から、静電塗装方法が好ましい。
液状組成物の塗布方法としては、慣用の方法、例えば、コーター法、流延法、ディップ法、スプレー法、スピナー法などが挙げられる。これらの方法のうち、コーター法やスプレー法などが汎用される。なお、必要であれば、塗布液は複数回に亘り塗布してもよい。
液状組成物を構成する溶媒としては、例えば、水、アルコール類(例えば、エタノール、イソプロパノールなどのアルカノール類など)、炭化水素類(例えば、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類)、エーテル類(例えば、ジエチルエーテルなどの鎖状エーテル;ジオキサン、テトラヒドロフランなどの環状エーテル)、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトンなどの鎖状ケトン;シクロヘキサノンなどの環状ケトン)、エステル類(例えば、酢酸エチルなどの酢酸エステル)、セロソルブ類(メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブなど)、カルビトール類などの汎用の溶媒が挙げられる。これらの溶媒は、単独で又は混合溶媒としてもよい。
(アンカー層形成工程)
前記アンカー層形成工程において、アンカー層前駆体で摩擦伝動面を被覆する方法としては、熱可塑性樹脂で形成された粒子を摩擦伝動面に付着させる方法、熱可塑性樹脂で形成されたシートを摩擦伝動面に積層する方法、熱可塑性樹脂で形成された布帛を摩擦伝動面に積層する方法などが挙げられる。
これらの方法のうち、ベルト生産性を向上できる点から、熱可塑性樹脂で形成された布帛を摩擦伝動面に積層する方法が好ましい。すなわち、布帛を用いると、ベルトの加硫時に、金型とリブゴムとの間のエアー溜りが部材を伝って抜けきる効果を発現できる。これに対して、加硫時に金型とリブゴムとの間のエアーが抜けないと、エアーが妨げになってリブゴムが十分に金型に沿って流れないため、リブ形状が欠損したリブドベルトが生産される虞がある。なお、加硫時の金型とリブゴムとの間のエアー抜きの機能は、加硫が始まり、リブゴムが金型内に十分充填された時点で目的は達成されるため、その後は溶融してベルトと一体化するのが望ましい。すなわち、前述のように、布帛が溶融して、圧縮層の摩擦伝動面と一体化するのが望ましい。
布帛は、繊維構造を有していれば、特に限定されず、例えば、不織布、織布、編布などであってもよい。これらのうち、通気性が高く、エア溜まりの抑制効果が高い点から、不織布が好ましい。
不織布の製造方法は、例えば、スパンボンド法、ケミカルボンド法、サーマルボンド法、ニードルパンチ法などが挙げられる。これらの製造方法のうち、スパンボンド法が好ましい。スパンボンド法で得られたスパンボンド不織布は、構成繊維がフィラメントであるため、熱圧着して得られる不織布が引張強度、引裂強度が大きく、ベルト成形時の巻き付け工程において、寸法安定性が高く、作業性を向上できる。
布帛(特に不織布)の目付は10〜100g/m程度の範囲から選択でき、例えば15〜80g/m、好ましくは18〜75g/m、さらに好ましくは20〜70g/m程度である。目付が小さすぎると、布帛の引張強度、引裂強度が小さくなり、また融解してもフィルムの厚みが不均一になり易い。一方、目付が大きすぎると、繊維量が多くなり、熱伝導率が低下して繊維の融解によるフィルム化が困難になる上に、通気性が低下し、エア溜まりが発生し易い。
布帛(特に不織布)の平均厚みは、例えば0.05〜0.5mm、好ましくは0.1〜0.3mm、さらに好ましくは0.15〜0.25mm程度である。
本発明では、前記目付及び厚みを有する薄肉の布帛(不織布)を複数回(複数層)巻き付けてもよいが、1回の巻き付けが好ましい。
布帛を構成する繊維の形状は、特に限定されず、横断面形状(繊維の長さ方向に垂直な断面形状)は、例えば、略円形状、楕円状、扁平状、多角形状などが挙げられる。これらの形状のうち、均一な厚みを有するフィルムを形成し易い点から、略円形状が好ましい。
繊維は、単独の熱可塑性樹脂で形成された繊維に限定されず、複数種の熱可塑性樹脂を組み合わせた複合繊維であってもよい。複合繊維は、横断面構造の相違によって、例えば、芯鞘型、海島型、ブレンド型、並列型(多層貼合型)、放射型などに分類される。これらのうち、鞘部が低融点の熱可塑性樹脂で形成された芯鞘型複合繊維などであってもよいが、布帛が十分に融解して均一な厚みを有するアンカー層を形成し易い点から、低融点の熱可塑性樹脂単独で形成された単相の繊維、又は低融点の熱可塑性樹脂同士の組み合わせで形成された複合繊維が特に好ましい。
繊維の平均繊度は、例えば5〜60dtex、好ましくは10〜40dtex、さらに好ましくは15〜30dtex程度である。繊度が小さすぎると、布帛の強度が低下し、取り扱い性が低下し、大きすぎると、均一なフィルムの形成が困難となる。
本発明では、加硫前のアンカー層が布帛で形成されていても、繊維を構成する熱可塑性樹脂が加硫温度で融解可能な融点を有しているため、成形工程では繊維構造によりエア溜まりを防止し、かつ成形後は熱可塑性樹脂の融解により繊維構造が部分的又は完全に消失し、略均一な厚みを有するフィルム状アンカー層を形成できる。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、実施例で使用した原料の詳細、ゴム組成物の調製方法、測定した評価項目の評価方法を以下に示す。
[原料の詳細]
(ゴム組成物の原料)
EPDM1:三井化学(株)製「EPT2060M」
EPDM2:ダウ・ケミカル社製「ノーデルIP4640」
ステアリン酸:日油(株)製「ステアリン酸つばき」
酸化亜鉛:正同化学工業(株)製「酸化亜鉛3種」
カーボンブラックHAF:東海カーボン(株)製「シースト3」、平均粒径28nm
老化防止剤A(ジフェニルアミン系老化防止剤):大内新興化学工業(株)製「ノクラックCD」
老化防止剤B(メルカプトベンゾイミダゾール系老化防止剤):大内新興化学工業(株)製「ノクラックMB」
軟化剤(パラフィンオイル):出光興産(株)製「ダイアナプロセスオイル」
エーテルエステル系可塑剤:(株)ADEKA製「RS−700」
ナイロンフロック:ニシヨリ(株)製「ナイロンカット糸」繊維長約0.5mm
固体潤滑剤:オリエンタル産業(株)製「グラファイトAT−20」
有機過酸化物:ジクミルパーオキサイド
共架橋剤:大内新興化学工業(株)製、「バルノックDGM」。
(表層の原料)
PVA−A(部分ケン化ポリビニルアルコール粒子):デンカ(株)製「B-05S」、ケン化度約86.5〜89.5モル%、粘度平均重合度600、融点193℃
PVA−B(低ケン化ポリビニルアルコール粒子):日本酢ビ・ポバール(株)製「JMR−10MD」、ポリビニルアルコール低ケン化品、ケン化度約70モル%、粘度平均重合度100〜400、融点156℃
PVA−C(完全ケン化ポリビニルアルコール粒子):デンカ(株)製「K−17C」、ケン化度約98.7〜99.7モル%、粘度平均重合度1700、融点220℃
PE−D(ポリエチレン粒子):(株)セイシン企業製「SK−PE−20L」、平均粒径約20μm、融点110℃
PP−E(ポリプロピレン粒子):(株)セイシン企業製「PPW−5」、平均粒径約5μm、融点165℃
PET−F(ポリエチレンテレフタレート粒子):(株)セイシン企業製「SK−RP−150−W−01」、平均粒径約5μm、融点250℃。
(アンカー層の原料)
ポリエチレン不織布:出光ユニテック(株)製「ストラテックLL」、融点約110℃
ポリプロピレン不織布:金星製紙(株)製「WJ55P100」、融点約160℃。
[ゴム組成物の調製]
表1に示すゴム組成物A及びBをバンバリーミキサーでゴム練りし、この練りゴムをカレンダーロールに通して所定厚みの未加硫圧延ゴムシート(圧縮層用シート)を作製した。なお、ゴム組成物Aで形成された圧縮層用シートは、比較例1〜3及び実施例1〜12の圧縮層用シートとして用い、ゴム組成物Bで形成された圧縮層用シートは、比較例4の圧縮層用シートとして用いた。また、表1に示すゴム組成物Cを用い、同様にして、伸張層用シートを作製した。さらに、表1に示すゴム組成物Dを用い、同様にして、接着層用シートを作製した。
[ポリビニルアルコール粒子の形状]
走査型電子顕微鏡(日本電子(株)製「JSM5900LV」)を用いて、原料のポリビニルアルコール粒子を、倍率300倍にて撮影後、画像解析ソフトを使用して、ポリビニルアルコール粒子の粒径(長径及び短径)を測定し、ポリビニルアルコール粒子の平均粒径及びアスペクト比を算出した。結果を表2に示す。
[耐発音性]
ミスアライメント発音評価試験(発音限界角度)は、図2にレイアウトを示すように、直径101mmの駆動プーリ(Dr.)、直径80mmのアイドラープーリ(IDL.1)、直径128mmのミスアライメントプーリ(W/P)、直径80mmのアイドラープーリ(IDL.2)、直径61mmのテンションプーリ(Ten.)、直径80mmのアイドラープーリ(IDL.3)を順に配置した試験機を用いて行い、アイドラープーリ(IDL.1)とミスアライメントプーリの軸離(スパン長)を135mmに設定し、全てのプーリが同一平面上(ミスアライメントの角度0°)に位置するように調整した。
すなわち、試験機の各プーリにVリブドベルトを掛架し、通常走行時(DRY)においては、図2に示す駆動プーリの出口付近での注水を行うことなく、室温条件下(25℃)で、駆動プーリの回転数が1000rpm、ベルト張力が50N/Rib(リブ)となるように張力を付与してベルトを走行させた。一方、注水走行時(WET)においては、図2に示すように、駆動プーリの出口付近においてVリブドベルトの摩擦伝動面に定期的(約30秒間隔)に5ccの水を注水しながらベルトを走行させた。
これらの走行時において、ミスアライメントプーリを各プーリに対し手前側にずらしてゆき、ミスアライメントプーリの入口付近で発音が発生する角度(発音限界角度)を求めた。発音限界角度が大きいほど静粛性に優れており、通常、4°付近でベルトがプーリからはずれて(すなわち、リブずれとなり)正常に動力伝達しない状態になる。
[摩擦係数(SAEμ法)]
摩擦係数の測定には、図3にレイアウトを示すように、直径121.6mmの駆動プーリ(Dr.)、直径76.2mmのアイドラープーリ(IDL.1)、直径61.0mmのアイドラープーリ(IDL.2)、直径76.2mmのアイドラープーリ(IDL.3)、直径77.0mmのアイドラープーリ(IDL.4)、直径121.6mmの従動プーリ(Dn.)を順に配置した試験機を用いた。
すなわち、試験機の各プーリにVリブドベルトを掛架し、通常走行時(DRY)においては室温条件下(25℃)で、駆動プーリの回転数を400rpm、従動プーリへのベルト巻き付け角度を20°とし、一定荷重[180N/6Rib(リブ)]を付与してベルトを走行させ、従動プーリのトルクを0〜最大20Nmまで上げていき、従動プーリに対するベルトの滑り速度が最大(100%スリップ)となったときの従動プーリのトルク値より、以下の式を用いて摩擦係数μを求めた。
μ=ln(T1/T2)/α。
ここで、T1は張り側張力、T2は緩み側張力、αは従動プーリへのベルト巻き付け角度であり、それぞれ以下の式で求めることができる。
T1=T2+Dn.トルク(kgf・m)/(121.6/2000)
T2=180(N/6Rib)
α=π/9(rad)(式中、radはラジアンを意味する)。
注水走行時(WET)の摩擦係数の測定には、図4にレイアウトを示すような試験機を用い、駆動プーリの回転数を800rpm、従動プーリへのベルト巻き付け角度を45°(α=π/4)、従動プーリの入口付近に1分間あたり300mlの水を注水し続ける以外は、通常走行時と同じであり、摩擦係数μも上記式を用いて同様に求めた。
[耐久性試験(高温高張力逆曲げ試験)]
高温高張力逆曲げ試験は、図5にレイアウトを示すように、直径120mmの駆動プーリ(Dr.)、直径75mmのアイドラープーリ(IDL.)、直径120mmの従動プーリ(Dn.)、直径60mmのテンションプーリ(Ten.)を順に配置した試験機を用いて行った。詳しくは、試験機の各プーリにVリブドベルトを掛架し、駆動プーリの回転数を4900rpm、アイドラープーリ及びテンションプーリへのベルト巻き付け角度を90°、従動プーリ負荷を10.4kWとし、一定荷重[91kg/6Rib(リブ)]を付与してベルトを雰囲気温度120℃で走行させた。走行時間は、400時間で打ち切りとし、リブ表面に外観異常が発生した時間と、異常の態様を、以下の基準で評価した。さらに、異常の有無に拘わらず、400時間走行させ、走行試験前後のベルトの質量を測定し、質量減量から摩耗量を算出した。
S:異常なし
A:400時間まで表層剥離なく走行したが、微小なクラックあり
B:48時間で表層剥離
C:24時間で表層剥離。
比較例1
外周面に可撓性ジャケットを装着した円筒状内型を用い、外周面の可撓性ジャケットに未加硫の伸張層用シートを巻きつけ、このシート上に芯体となる心線(撚りコード)を螺旋状にスピニングし、さらに未加硫の圧縮層用シートを巻き付けて積層体を作製した。次に、巻き付けた圧縮層用シートの摩擦伝動面に、粉体塗装装置(ノードソン(株)製「アンコールXT ハンドガン」)を用いて、吹付け量50g/mの条件で、部分ケン化ポリビニルアルコール粒子(PVA−A)を吹き付けた。
なお、心線には、1100dtex/2×3構成のポリエステルコードを用いた。ゴムとの接着性を向上させるため、予め心線をレゾルシン−ホルマリン−ラテックス液(RFL液)へ浸漬処理した後、EPDMを含むゴム組成物を有機溶媒(トルエン)に溶解させた処理液でコーティング処理を行った。
この筒状積層体が巻き付けられた内型を、内周面に複数のリブ型が刻設された筒状外型内に同心円状に設置し、前記可撓性ジャケットを膨張させて積層体をリブ型に圧入し、170℃で加硫した。そして、外型から内型を抜き取り、複数のリブを有する加硫ゴムスリーブを外型から脱型し、カッターを用いて、加硫ゴムスリーブをベルト長手方向に所定の幅にカットし、予備Vリブドベルト(リブ数6個、周長1200mm)を作製した。得られたVリブドベルトの圧縮層の表面には部分ケン化ポリビニルアルコール粒子で形成された表層(単一層)が積層されていた。
比較例2
部分ケン化ポリビニルアルコール粒子(PVA−A)の代わりにポリエチレン粒子(PE−D)を用いる以外は比較例1と同様にしてVリブドベルトを得た。得られたVリブドベルトの圧縮層の表面にはポリエチレン粒子で形成された表層(単一層)が積層されていた。
比較例3
圧縮層用シートを巻き付けた後、粉体塗装装置を用いて、部分ケン化ポリビニルアルコール粒子(PVA−A)とポリエチレンテレフタレート(PET)粒子(PET−F)とを、50:50の質量割合で配合した混合粉末を吹き付ける以外は比較例1と同様にしてVリブドベルトを得た。得られたVリブドベルトの圧縮層の表面には部分ケン化ポリビニルアルコール粒子とPET粒子とで形成された表層が積層されていた。
比較例4
心線をスピニングした後、接着層用シートを巻き付け、さらにゴム組成物Bで形成された圧縮層用シートを巻き付けた後、部分ケン化ポリビニルアルコール粒子を吹き付けない以外は比較例1と同様にしてVリブドベルトを得た。すなわち、得られたVリブドベルトには、表層は積層されていない。
実施例1
圧縮層用シートを巻き付けた後、さらにその外周面に、アンカー層を形成するためのポリエチレン不織布を巻き付けた積層体に、粉体塗装装置を用いて、部分ケン化ポリビニルアルコール粒子(PVA−A)とポリエチレン(PE)粒子(PE−D)とを、50:50の質量割合で配合した混合粉末を吹き付ける以外は比較例1と同様にしてVリブドベルトを得た。得られたVリブドベルトの圧縮層の表面には部分ケン化ポリビニルアルコール粒子とPE粒子とで形成された表層(平均厚み50μm、部分ケン化ポリビニルアルコール粒子の平均粒径30μm)が積層されていた。
実施例2
圧縮層用シートを巻き付けた後、さらにその外周面に、アンカー層を形成するためのポリエチレン不織布を巻き付けた積層体に、粉体塗装装置を用いて、低ケン化ポリビニルアルコール粒子(PVA−B)とポリエチレン粒子(PE−D)とを、50:50の質量割合で配合した混合粉末を吹き付ける以外は比較例1と同様にしてVリブドベルトを得た。得られたVリブドベルトの圧縮層の表面には低ケン化ポリビニルアルコール粒子とPE粒子とで形成された表層(平均厚み50μm)が積層されていた。
実施例3
圧縮層用シートを巻き付けた後、さらにその外周面に、アンカー層を形成するためのポリエチレン不織布を巻き付けた積層体に、粉体塗装装置を用いて、低ケン化ポリビニルアルコール粒子(PVA−B)とポリプロピレン(PP)粒子(PP−E)とを、50:50の質量割合で配合した混合粉末を吹き付ける以外は比較例1と同様にしてVリブドベルトを得た。得られたVリブドベルトの圧縮層の表面には低ケン化ポリビニルアルコール粒子とPP粒子とで形成された表層(平均厚み48μm)が積層されていた。
実施例4
アンカー層を形成するためのポリエチレン不織布を用いないこと以外は、実施例3と同様にしてVリブドベルトを得た。得られたVリブドベルトの圧縮層の表面には低ケン化ポリビニルアルコール粒子とPP粒子とで形成された表層(平均厚み40μm)が積層されていた。
実施例5
圧縮層用シートを巻き付けた後、さらにその外周面に、アンカー層を形成するためのポリエチレン不織布を巻き付けた積層体に、粉体塗装装置を用いて、低ケン化ポリビニルアルコール粒子(PVA−B)とポリプロピレン粒子(PP−E)とを、75:25の質量割合で配合した混合粉末を吹き付ける以外は比較例1と同様にしてVリブドベルトを得た。得られたVリブドベルトの圧縮層の表面には低ケン化ポリビニルアルコール粒子とPP粒子とで形成された表層(平均厚み40μm)が積層されていた。
実施例6
圧縮層用シートを巻き付けた後、さらにその外周面に、アンカー層を形成するためのポリエチレン不織布を巻き付けた積層体に、粉体塗装装置を用いて、低ケン化ポリビニルアルコール粒子(PVA−B)とポリプロピレン粒子(PP−E)とを、25:75の質量割合で配合した混合粉末を吹き付ける以外は比較例1と同様にしてVリブドベルトを得た。得られたVリブドベルトの圧縮層の表面には低ケン化ポリビニルアルコール粒子とPP粒子とで形成された表層(平均厚み48μm)が積層されていた。
実施例7
アンカー層を形成するためのポリエチレン不織布を用いないこと以外は、実施例6と同様にしてVリブドベルトを得た。得られたVリブドベルトの圧縮層の表面には低ケン化ポリビニルアルコール粒子とPP粒子とで形成された表層(平均厚み40μm)が積層されていた。
実施例8
圧縮層用シートを巻き付けた後、さらにその外周面に、アンカー層を形成するためのポリエチレン不織布を巻き付けた積層体に、粉体塗装装置を用いて、完全ケン化ポリビニルアルコール粒子(PVA−C)とポリプロピレン粒子(PP−E)とを、25:75の質量割合で配合した混合粉末を吹き付ける以外は比較例1と同様にしてVリブドベルトを得た。得られたVリブドベルトの圧縮層の表面には完全ケン化ポリビニルアルコール粒子とPP粒子とで形成された表層(平均厚み51μm、完全ケン化ポリビニルアルコール粒子の平均粒径20μm)が積層されていた。圧縮層断面を走査型顕微鏡で観察した結果を図6に示す。図6の圧縮層表面の表層において、色の濃い部分がバインダー及びアンカー層に相当し、色の濃い部分において、白色の粒子がPVA粒子に相当する。このように、PVA粒子は、表層中において粒子状で存在していた。
実施例9
アンカー層を形成するためのポリエチレン不織布を用いないこと以外は、実施例8と同様にしてVリブドベルトを得た。得られたVリブドベルトの圧縮層の表面には完全ケン化ポリビニルアルコール粒子とPP粒子とで形成された表層(平均厚み43μm、完全ケン化ポリビニルアルコール粒子の平均粒径20μm)が積層されていた。
実施例10
アンカー層を形成するためのポリエチレン不織布の代わりにポリプロピレン不織布を用いること以外は、実施例8と同様にしてVリブドベルトを得た。得られたVリブドベルトの圧縮層の表面には完全ケン化ポリビニルアルコール粒子とPP粒子とで形成された表層(平均厚み50μm、完全ケン化ポリビニルアルコール粒子の平均粒径20μm)が積層されていた。
実施例11
PVA−CとPP−Eとを、50:50の質量割合で配合した混合粉末を吹き付けること以外は、実施例8と同様にしてVリブドベルトを得た。得られたVリブドベルトの圧縮層の表面には完全ケン化ポリビニルアルコール粒子とPP粒子とで形成された表層(平均厚み49μm、完全ケン化ポリビニルアルコール粒子の平均粒径20μm)が積層されていた。
得られたVリブドベルトについて、ミスアライメント発音限界角度、摩擦係数、耐久性を評価した結果を表3に示す。
表3の結果から明らかなように、比較例1のVリブドベルトは、Dry時とWet時の摩擦係数の差が小さいことから耐発音性に優れているものの、バインダーが含まれていないために、早期に表面層が剥離した。
比較例2のVリブドベルトは、耐久性、耐摩耗性に優れているものの、Dry時とWet時との摩擦係数の差が大きいため、耐発音性が低かった。
比較例3のVリブドベルトは、融点の高いバインダーの特性から、PVA粒子が十分にリブ表面層に固着されずに早期に表面層が剥離した。
比較例4のVリブドベルトは、耐発音性には優れているものの、リブ表面に親水性可塑剤を含むゴムが露出しているため、摩耗が大きく、リブ表面にクラックも確認されて耐久性も低かった。
これに対して、実施例のVリブドベルトは、表層に、熱可塑性樹脂のバインダーにPVA粒子が固着しているため、400hr耐久試験後、表面層の剥離を含め破損現象が認められず耐久性に優れていた。更に、Dry時とWet時の摩擦係数の差が小さいことから耐発音性に優れていた。なかでも、実施例3は、耐久性、耐発音性、耐摩耗性のバランスに優れていた。
さらに、アンカー層を有する実施例3、6及び8のVリブドベルトは、アンカー層を有していない実施例4、7及び9のVリブドベルトに比べて、耐摩耗性が向上した。
また、実施例10のVリブドベルトは、アンカー層としてPP不織布を用いることにより、耐摩耗性が向上した。
さらに、実施例11のVリブドベルトは、耐発音性と耐摩耗性とを高度に両立できた。
実施例12
PVA−AとPE−Dとを、25:75の質量割合で配合した混合粉末を吹き付けること以外は、実施例1と同様にしてVリブドベルトを得た。得られたVリブドベルトの圧縮層断面を走査型顕微鏡で観察した結果を図7に示す。図7から明らかなように、PVA粒子は、表層中において粒子状で存在していた。
本発明の摩擦伝動ベルトは、耐発音性が求められる種々のベルト、例えば、Vベルト、Vリブドベルトなどの摩擦伝動ベルトとして利用できる。また、本発明の摩擦伝動ベルトは、被水時の静音性を改善できるため、自動車、自動二輪車、農業機械など屋外で使用される伝動装置にも好適に利用できる。
1…Vリブドベルト
2…圧縮層
3…芯体
4…伸張層
5…表層

Claims (16)

  1. 少なくとも一部がプーリと接触可能な摩擦伝動面を有し、かつポリマー成分を含むゴム組成物で形成された圧縮層を含む摩擦伝動ベルトであって、前記摩擦伝動面が粒状親水性樹脂及びバインダー樹脂を含む表層で被覆されており、かつ前記バインダー樹脂がベルトの加硫温度で溶融又は軟化する樹脂である摩擦伝動ベルト。
  2. 粒状親水性樹脂がポリビニルアルコール系樹脂を含む請求項1記載の摩擦伝動ベルト。
  3. ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度が50モル%以上である請求項2記載の摩擦伝動ベルト。
  4. バインダー樹脂が、ベルトの走行温度以上であり、かつベルトの加硫温度以下の融点を有する熱可塑性樹脂である請求項1〜3のいずれかに記載の摩擦伝動ベルト。
  5. バインダー樹脂がポリオレフィンである請求項1〜4のいずれかに記載の摩擦伝動ベルト。
  6. ポリオレフィンがポリプロピレン系樹脂である請求項5記載の摩擦伝動ベルト。
  7. 粒状親水性樹脂とバインダー樹脂との質量比が、前者/後者=80/20〜20/80である請求項1〜6のいずれかに記載の摩擦伝動ベルト。
  8. 表層が、熱可塑性樹脂を含むアンカー層を介して摩擦伝動面を被覆している請求項1〜7のいずれかに記載の摩擦伝動ベルト。
  9. アンカー層に含まれる熱可塑性樹脂が、ポリエチレン系樹脂及び/又はポリプロピレン系樹脂である請求項8記載の摩擦伝動ベルト。
  10. 圧縮層が、エチレン−α−オレフィンエラストマーを含む請求項1〜9のいずれかに記載の摩擦伝動ベルト。
  11. さらに芯体とベルト背面を形成する伸張層とを含み、前記伸張層の一方の面に圧縮層が形成され、かつ前記伸張層と前記圧縮層との間にベルト長手方向に沿って前記芯体が埋設されている請求項1〜10のいずれかに記載の摩擦伝動ベルト。
  12. Vリブドベルトである請求項1〜11のいずれかに記載の摩擦伝動ベルト。
  13. 円筒状ドラムに圧縮層を形成するための未加硫ゴムシートを巻き付ける圧縮層巻付工程、前記未加硫ゴムシートを金型に押し付けて加硫する加硫成形工程を含み、前記圧縮層巻付工程及び前記加硫成形工程のいずれかの工程で表層を形成する請求項1〜12のいずれかに記載の摩擦伝動ベルトの製造方法。
  14. 表層を形成する前に、熱可塑性樹脂を含むアンカー層前駆体で摩擦伝動面を被覆するアンカー層形成工程をさらに含み、かつ前記アンカー層前駆体が布帛である請求項13記載の製造方法。
  15. 圧縮層巻付工程において、未加硫ゴムシートの摩擦伝動面に粒状親水性樹脂の前駆体粒子及びバインダー樹脂の前駆体粒子を付着させる請求項13又は14記載の製造方法。
  16. 加硫成形工程において、金型として、未加硫ゴムシートとの接触面に粒状親水性樹脂の前駆体粒子及びバインダー樹脂の前駆体粒子を付着させた金型を用いる請求項13又は14記載の製造方法。
JP2017024393A 2016-02-25 2017-02-13 摩擦伝動ベルト及びその製造方法 Active JP6748002B2 (ja)

Applications Claiming Priority (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2016034754 2016-02-25
JP2016034754 2016-02-25

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2017150662A JP2017150662A (ja) 2017-08-31
JP6748002B2 true JP6748002B2 (ja) 2020-08-26

Family

ID=59738913

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2017024393A Active JP6748002B2 (ja) 2016-02-25 2017-02-13 摩擦伝動ベルト及びその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6748002B2 (ja)

Families Citing this family (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP6849850B1 (ja) * 2019-09-25 2021-03-31 三ツ星ベルト株式会社 ゴム組成物および摩擦伝動ベルト
WO2021060536A1 (ja) 2019-09-25 2021-04-01 三ツ星ベルト株式会社 摩擦伝動ベルト
JP6916356B2 (ja) * 2019-09-25 2021-08-11 三ツ星ベルト株式会社 摩擦伝動ベルト

Family Cites Families (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH05147406A (ja) * 1991-11-27 1993-06-15 Yokohama Rubber Co Ltd:The 空気入りタイヤ
JPH09193613A (ja) * 1996-01-23 1997-07-29 Bridgestone Corp 空気入りタイヤ
JP2003222194A (ja) * 2002-01-29 2003-08-08 Gates Unitta Asia Co 動力伝達ベルト、動力伝達ベルト用帆布および動力伝達ベルトの製造方法
JP6059111B2 (ja) * 2012-10-31 2017-01-11 三ツ星ベルト株式会社 摩擦伝動ベルト
JP6055430B2 (ja) * 2013-03-29 2016-12-27 三ツ星ベルト株式会社 伝動用ベルト

Also Published As

Publication number Publication date
JP2017150662A (ja) 2017-08-31

Similar Documents

Publication Publication Date Title
CN108138908B (zh) 多楔带及其制造方法
JP6059111B2 (ja) 摩擦伝動ベルト
WO2015080157A1 (ja) 摩擦伝動ベルト及びその製造方法
JP5956162B2 (ja) 摩擦伝動ベルト及びその製造方法
US10508712B2 (en) Friction transmission belt and manufacturing method thereof
JP2016070494A (ja) 摩擦伝動ベルト及びその製造方法
JP2014209028A (ja) Vリブドベルト
WO2006057129A1 (ja) Vリブドベルト及びそれを用いた自動車の補機駆動用ベルト伝動装置
JP6059004B2 (ja) 伝動ベルト及びその製造方法
JP6748002B2 (ja) 摩擦伝動ベルト及びその製造方法
JP5926543B2 (ja) 摩擦伝動ベルト及びその製造方法
JP6717877B2 (ja) Vリブドベルト及びその製造方法
JP6291470B2 (ja) 摩擦伝動ベルト及びその製造方法
US11654645B2 (en) Friction transmission belt and method for producing same
JP6175113B2 (ja) 摩擦伝動ベルト
JP6626226B2 (ja) Vリブドベルトおよびその使用方法
JP6423321B2 (ja) Vリブドベルト及びその製造方法
JP6224886B2 (ja) 伝動ベルト及びその製造方法
WO2016068337A1 (ja) 摩擦伝動ベルト及びその製造方法
JP2018197606A (ja) Vリブドベルト及びその製造方法
JP2007298162A (ja) 摩擦伝動ベルト
JP7555992B2 (ja) 摩擦伝動ベルト
WO2018174093A1 (ja) 摩擦伝動ベルト及びその製造方法
JP6747945B2 (ja) 摩擦伝動ベルト及びその製造方法
JP2006064015A (ja) 摩擦伝動ベルト及び摩擦伝動ベルトの製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20190704

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20200519

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20200602

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20200715

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20200804

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20200806

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6748002

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250