本発明に係る装置を実施するための形態の一つの例を図面に基づいて説明する。図1〜図13は本実施形態に係る装置、プログラム、について説明するための図である。以下の説明では、被検眼Eの軸方向(前後方向)をZ方向、水平方向(左右方向)をX方向、鉛直方向(上下方向)をY方向とする。眼底の表面方向をXY方向として考えてもよい
<概要>
本実施形態に係る眼科撮影装置の概要について説明する。本実施形態において、眼科撮影装置は、主に、被検眼の断層像を得るOCT光学系(干渉光学系)200と、制御部70と、を備える。
OCT光学系200には、SS−OCT(Swept Source-OCT)方式が用いられ、測定光源27として出射波長を時間的に高速で変化させる波長可変光源(波長走査型光源)が用いられる。光源27は、出射光の波長を変化させる。検出器120は、例えば、受光素子からなる平衡検出器(Balanced Detector)が設けられる。受光素子には、受光部が一つのみからなるポイントセンサを使用できる。例えば、アバランシェ・フォト・ダイオードが用いられる。
波長可変光源27より出射された光は、光分割器によって測定光と参照光に分割され、測定光が被検眼に向けて照射される。そして、検出器120は、測定光の被検眼からの反射光と,参照光と,が合成された合成光のスペクトルを受光する。検出器120から出力される干渉信号が処理されることで、断層画像が取得される。例えば、光分割器としては、カップラー26、ビームスプリッタ等が挙げられる。
本実施形態において、検出器120から出力される干渉信号は、波長可変光源27の共振によって周期的に発生する可干渉区間における第1可干渉区間での第1干渉信号と、周期的に発生する可干渉区間における、第1可干渉区間とは深さ方向に異なる領域の第2可干渉区間での第2干渉信号と、を含む。すなわち、第1可干渉区間と第2可干渉区間は、可干渉区間において、離間して生じている。
本実施形態において、制御部(演算手段)70は、第1干渉信号に基づいて被検眼の前側領域に関する第1深度情報を取得する。また、制御部70は、第2干渉信号に基づいて被検眼の後側領域に関する第2深度情報を取得する。
例えば、前側領域としては、角膜、水晶体前面等が挙げられる。例えば、後側領域としては、水晶体後面、眼底等が挙げられる。
例えば、深度情報は、被検眼をZ方向に走査した場合における1つの走査位置での被検眼部位の反射情報である。例えば、深度情報は、少なくとも1つの走査位置での被検眼部位の反射情報であればよく、複数の走査位置での反射情報であってもよい。例えば、反射情報とは、前側領域及び後側領域によって反射された測定光の情報である(例えば、輝度情報、位相情報等)。
制御部70は、第1深度情報、第2深度情報に基づいて、種々の演算処理を行う。
例えば、制御部70は、第1可干渉区間と、第2可干渉区間と、との間の深度方向における距離情報を取得してもよい。すなわち、制御部70は、第1可干渉区間と第2可干渉区間との離間した距離を取得する。制御部70は、第1深度情報から前側領域における被検眼部位(例えば、角膜、水晶体前面等)の位置を検出する。また、制御部70は、第2深度情報から後側領域における被検眼部位(例えば、水晶体後面、眼底等)の位置を検出する。制御部70は、第1深度情報の検出結果と,第2深度情報の検出結果と,距離情報と,に基づいて、前記前側領域の被検眼部位の位置から後側領域の被検眼部位の位置までの間の深さ方向における距離を取得することによって、被検眼の眼特性情報(眼特性情報)を取得する。例えば、眼特性情報としては、眼軸長、水晶体厚、前房深度等が挙げられる。このように、可干渉区間の間の距離に基づいて、第1干渉信号と第2干渉信号との位置関係を把握することによって、精度良く眼特性を測定することができる。
例えば、距離情報としては、第1可干渉区間の光路長一致位置と、第2可干渉区間の光路長一致位置と、が離間した距離が挙げられる。また、例えば、距離情報としては、第1可干渉区間の光路長一致位置の座標位置情報と、第2可干渉区間の光路長一致位置との座標位置情報が挙げられる。なお、距離情報としては、第1可干渉区間と第2可干渉区間の位置関係を示す情報であればよい。例えば、第1可干渉区間と第2可干渉区間と最短の距離を距離情報としてもよい。
また、例えば、制御部70は、第1深度情報、第2深度情報、に基づく、種々の演算処理として、断層画像の取得を行う。例えば、制御部70は、前側領域又は後側領域のいずれに対して光路長調整を行う。制御部70は、測定光の進行方向を変更する走査部(光スキャナ)23により、被検眼上で横断方向に測定光を走査することによって、複数の各走査位置において第1干渉信号を取得する。制御部70は、複数の各走査位置において取得された第1干渉信号の第1深度情報に基づいて、前側領域に関する第1断層画像を取得する。また、制御部70は、光スキャナ23により、被検眼上で測定光を走査することによって、複数の各走査位置における第2干渉信号を取得する。なお、第1干渉信号と第2干渉信号は、光路長を再調整することなく、同時に取得される。制御部70は、複数の各走査位置における第2干渉信号の第2深度情報に基づいて、後側領域に関する第2断層画像を取得する。なお、第1断層画像及び第2断層画像に限らず、取得された干渉信号より、2つ以上の断層画像を取得する構成としてもよい。このようにして、光路長等の切り換え等を必要とすることなく、容易な構成で、複数の断層画像を一括で撮影することができる。
第1断層画像と第2断層画像を取得後、制御部70は、第1可干渉区間と、第2可干渉区間と、の間の深度方向における距離情報を取得し、距離情報に基づいて、第1断層画像と第2断層画像を画像処理によって合成することによって、前側領域と、後側領域と、を含む第3断層画像(合成断層画像)を取得してもよい。このような構成によって、実際の位置関係での被検眼の断層画像を観察することができる。
なお、撮影時において、前側領域及び後側領域の干渉信号が取得されるように調整する構成を設けてもよい。例えば、制御部70は、第1干渉信号が前側領域からの反射光に基づく干渉信号を含むように、光路長調整手段を制御するとともに、第2干渉信号が後側領域からの反射光に基づく干渉信号を含むように、光路長調整手段を制御する。このような構成によって、撮影位置が調整され、所望の被検眼部位の断層画像を取得することできるため、スムーズに撮影を行うことができる。
光路長調整手段は、測定光又は参照光の少なくとも一方の光路長を調整する。例えば、光路長調整手段としては、参照ミラー31の移動又は測定光路中に配置された光学部材が光軸方向に移動される構成が挙げられる。もちろん、双方を連動して移動させて、光路長を変更する構成としてもよい。また、例えば、光路長調整手段は、被検眼と装置本体3の相対位置関係を調整するものが挙げられる。
なお、本実施形態において、第1干渉信号と第2干渉信号を抽出するための処理が行われる。例えば、制御部70は、光路長調整手段を制御して、光路長を調整することによって、第1可干渉区間の領域内における被検眼の前側領域に関する第1深度情報の取得位置と、第2可干渉区間の領域内における被検眼の後側領域に関する第2深度情報の取得位置とを、各可干渉区間に対して相対的に移動させる。
例えば、可干渉区間に対して前述の各取得位置を相対的に移動させる手段は、被検眼に対して装置又は装置に備えれた光学系を移動させる構成としてもよい。また、例えば、可干渉区間に対して前述の各取得位置を相対的に移動させる手段は、顎台や額当て等を移動させることによって、装置に対して、被検眼を移動させる構成としてもよい。
制御部70は、第1深度情報の取得位置の可干渉区間に対する移動方向と、第2深度情報の取得位置の可干渉区間に対する移動方向と、に基づいて、第1可干渉区間における第1干渉信号と、第2可干渉区間における第2干渉信号と、を判別(判定)する。そして、制御部70は、判別結果に基づいて、前記干渉信号から第1干渉信号と第2干渉信号を抽出する。なお、判定する手段としては、これに限定されない。例えば、制御部70は、分散補正処理(詳細は後述する)によって、後側領域像及び前側領域像の実像及び虚像の判定処理を行う。そして、制御部70が実像と虚像との関係からそれぞれ被検眼部位の向きを判定する構成が挙げられる。このような構成とすることによって、複数の干渉信号が含まれる干渉信号を取得した場合であっても、抽出したい干渉信号のみが抽出される。このため、複数の干渉信号を同時に取得できるようになる。
なお、本実施形態においては、上記実施形態に記載した装置に限定されない。例えば、上記実施形態の機能を行う眼科撮影ソフトウェア(プログラム)をネットワークや各種記憶媒体を介して、システムあるいは装置に供給する。そして、システムあるいは装置のコンピュータ(例えば、CPU等)がプログラムを読み出し、実行する構成であってもよい。
<実施例>
以下、本発明の一実施例について、図面を参照して説明する。本発明の実施例に係る眼科撮影装置を図面に基づいて説明する。図1は本実施例に係る眼科撮影装置の外観側面図である。
本装置は、基台1と、移動台2と、装置本体3と、顔支持ユニット5と、を備える。移動台2は、基台1に対してX方向及びZ方向に移動可能である。装置本体3は、移動台2に対して3次元方向に移動可能に設けられ後述する光学系を収納する筐体である。顔支持ユニット5は、被検者の顔を支持するために基台1に固設される。本装置には、装置本体3と被検眼との位置関係を相対的に調整する調整手段が備えられる。例えば、本実施例において、調整手段として、移動台2に設けられたXYZ駆動部6が用いられる。装置本体3は、移動台2に設けられたXYZ駆動部6により、被検眼Eに対してX方向、Y方向及びZ方向に相対的に移動される。移動台2は、ジョイスティック4の操作により基台1上をXZ方向に移動される。また、回転ノブ4aが回転操作されることによって、XYZ駆動部6がY駆動し、装置本体3は、Y方向に移動される。装置本体3の検者側には、断層画像及び前眼部観察像等を表示するモニタ75が設けられている。なお、調整手段としては、被検者の顔を支持する顔支持ユニット5を装置本体3に対して移動させる駆動部を用いてもよい。
図2は、眼科撮影装置の装置本体3に収納される光学系及び制御系の概略構成図である。なお、以下の実施例においては、眼科撮影装置を用いた撮影として、被検眼の眼底を撮影する場合を例に挙げて説明する。本光学系は、眼Eの断層像を得るOCT光学系(干渉光学系)200と、観察光学系(スキャニングレーザオフサルモスコープ(SLO)光学系)300、眼Eにアライメント指標を投影する指標投影光学系(投影光学系)150と、前眼部Eaの正面像を観察するための前眼部観察光学系90と、を備える。ダイクロイックミラー91は、OCT光学系200の測定光を透過する一方、投影光学系150によって照射された前眼部からの光を反射する。これらの光学系は、装置本体3に内蔵され、前述のアライメント用移動機構(手動又は電動)により、眼Eに対して三次元的に移動される。
<干渉光学系(OCT光学系)>
OCT光学系200には、SS−OCT(Swept Source-OCT)方式が用いられ、測定光源27として出射波長を時間的に高速で変化させる波長可変光源(波長走査型光源)が用いられる。光源27は、出射光の波長を変化させる。検出器120は、例えば、受光素子からなる平衡検出器(Balanced Detector)が設けられる。受光素子には、受光部が一つのみからなるポイントセンサを用いることができる。例えば、アバランシェ・フォト・ダイオードが用いられる。
OCT光学系200は、測定光学系200aと参照光学系200bによって構成される。光源27はOCT光学系200の測定光及び参照光の光源として用いられる。光源27は、例えば、レーザ媒体、共振器、及び波長選択フィルタによって構成される。そして、波長選択フィルタとして、例えば、回折格子とポリゴンミラーの組み合わせ、ファブリー・ペローエタロンを用いたフィルタが挙げられる。光源27は、波長選択フィルタによって選択された波長の光をレーザ媒体及び共振器によって光を発振させて、光を増幅させる。その後、増幅された光の内、一部の光が取り出され、出射される。
本実施例では、瞬間輝線幅が短く、共振器長が短い光源としてAXSUN社のTUNABLE LASER が用いられる(例えば、λc=1060nm、Δλ=110nm、δλ=0.055nm)。このような波長可変光源は、例えば、米国公開2009/0059971号に記載されている。
ダイクロイックミラー40は、測定光源27から発せられる測定光を反射し、SLO光源61から発せられるレーザ光を透過する特性を有する。この場合、ダイクロイックミラー40は、OCT光学系200の測定光軸L1とSLO光学系300の測定光軸L2とを同軸にする。
ファイバーカップラー(スプリッタ)26は、光分割部材と光結合部材としての役割を兼用する。光源27から発せられた光は、導光路としての光ファイバ38aを経て、ファイバーカップラー26によって参照光と測定光とに分割される。測定光は光ファイバ38bを介して被検眼Eへと向かい、参照光は光ファイバ38c(ポラライザ(偏光素子)33)を介して参照ミラー31へと向かう。
測定光を被検眼Eへ向けて出射する光路には、測定光を出射する光ファイバ38bの端部39b、コリメータレンズ21、フォーカス用光学部材(フォーカシングレンズ)24、走査部(光スキャナ)23と、リレーレンズ22が配置されている。走査部23は、2つのガルバノミラーによって構成され、走査駆動機構51の駆動により、測定光源から発せられた光を眼底(被検物)上で二次元的(XY方向)に走査させるために用いられる。なお、走査部23は、例えば、AOM(音響光学素子)やレゾナントスキャナ等によって構成されていてもよい。
ダイクロイックミラー40及び対物レンズ10は、OCT光学系200からの測定光を被検眼眼底へと導光する導光光学系としての役割を有する。
フォーカシングレンズ24は、駆動機構24aの駆動によって、光軸方向に移動可能となっており、被検者眼底に対する視度を補正するために用いられる。
光ファイバ38bの端部39bから出射した測定光は、コリメータレンズ21によってコリメートされた後、フォーカシングレンズ24を介して、走査部23に達し、2つのガルバノミラーの駆動により反射方向が変えられる。その後、測定光は、リレーレンズ22を介して、ダイクロイックミラー40で反射された後、対物レンズ10を介して、被検眼眼底に集光される。
そして、眼底で反射した測定光は、対物レンズ10を介して、ダイクロイックミラー40で反射し、OCT光学系200に向かい、リレーレンズ22、走査部23の2つのガルバノミラー、フォーカシングレンズ24及びコリメータレンズ21を介して、光ファイバ38bの端部39bに入射する。端部39bに入射した測定光は、光ファイバ38b、ファイバーカップラー26、光ファイバ38dを介して、検出器120に達する。
参照光学系200bは、眼底Efでの測定光の反射によって取得される反射光と合成される参照光を生成する。参照光学系200bは、マイケルソンタイプであってもよいし、マッハツェンダタイプであっても良い。参照光学系200bは、例えば、反射光学系(例えば、参照ミラー31)によって形成され、カップラー26からの光を反射光学系により反射することにより再度カップラー26に戻し、検出器120に導く。他の例としては、参照光学系200bは、透過光学系(例えば、光ファイバー)によって形成され、カップラー26からの光を戻さず透過させることにより検出器120へと導く。
例えば、参照光を参照ミラー31に向けて出射する光路には、光ファイバ38c、参照光を出射する光ファイバ38cの端部39c、コリメータレンズ29、参照ミラー31が配置されている。光ファイバ38cは、参照光の偏光方向を変化させるため、駆動機構34により回転移動される。すなわち、光ファイバ38c及び駆動機構34は、偏光方向を調整するためのポラライザ33として用いられる。
なお、本実施例のポラライザ33は、測定光と参照光の偏光方向を一致させるために、測定光と参照光の少なくともいずれかの偏光方向を調整する。ポラライザ33は、測定光路又は参照光路の少なくともいずれかに配置される。ポラライザ33としては、上記構成に限定されず、例えば、光軸を中心に1/2波長板又は1/4波長板の回転角を調整することによって光の偏光方向を変える構成、ファイバーに圧力を加えて変形させることによって光の偏光方向を変える構成、などが考えられる。
また、参照ミラー駆動機構50は、参照光との光路長を調整するために参照光路中に配置された参照ミラー31を駆動させる。参照ミラー31は、本実施例においては、参照光路中に配置され、参照光路長を変化させるべく、光軸方向に移動可能な構成となっている。なお、本実施例においては、光路長差を調整する構成として、参照ミラー31を移動させる構成を例に挙げたがこれに限定されない。光路長差を調整する構成は、測定光と参照光との光路長差を調整するためにOCT光学系200に配置された光学部材の少なくとも一部を光軸方向に移動させる構成であればよい。例えば、光路長差を変更するための構成は、測定光学系200aの測定光路中に配置されてもよい。測定光路中に配置された光学部材(例えば、光ファイバーの端部)が光軸方向に移動される。
光ファイバー38cの端部39cから出射した参照光は、コリメータレンズ29で平行光束とされ、参照ミラー31で反射された後、コリメータレンズ29により集光されて光ファイバ38cの端部39cに入射する。端部39cに入射した参照光は、光ファイバ38c(ポラライザ33)を介して、ファイバーカップラー26に達する。
そして、光源27から発せられた光によって前述のように生成される参照光と被検眼眼底に照射された測定光による眼底反射光は、ファイバーカップラー26にて合成され干渉光とされた後、光ファイバ38dを通じて検出器120に受光される。検出器120は、干渉信号光を検出する。
光源27により出射波長が変化されると、これに対応する干渉信号光が検出器120に受光され、結果的に、スペクトル干渉信号光として検出器120に受光される。検出器120から出力されたスペクトル干渉信号は、制御部70に取り込まれ、このスペクトル干渉信号に基づき、深さプロファイルが形成される。
制御部70は、走査部23の駆動を制御し、眼底Ef上で測定光を横断方向に走査させる。制御部70は、各走査位置での深さプロファイルを順次並べることにより眼底断層画像を形成させる。
例えば、制御部70は、検出器120から出力されるスペクトル干渉信号に基づいて干渉光のスペクトル強度を取得し、予めメモリ72に記憶された検出器120の画素位置と波長λの対応関係を用いて波長λの関数として書き換える。次に、スペクトル強度I(λ)を波数k(=2π/λ)に関して等間隔な関数I(k)に変換する。なお、スペクトル強度I(k)は、補正された分散補正後のスペクトル強度I(k)を取得する。
ここで、分散(dispersion)補正について説明する。分散による影響は、干渉成分の位相をシフトさせ、各波長の合波信号のピークを下げ、信号に拡がりを持たせる(解像度が下がる)。そこで、分散補正では、波長毎にシフトした位相を戻してやることで、スペクトル干渉信号の低下による解像度の低下を補正する。この場合、波数kの関数としての位相ずれ量φ(k)を求めておき、I(k)・exp-iφ(k)によってkの値毎に位相のずれを戻す。ここで、分散補正すべき位相φ(k)は、キャリブレーションによって予め求めることもできるし、取得された断層画像に対応する位相φ(k)を求めるようにしてもよい。なお、上記のようにソフトウェアによって分散補正を行う手法の詳細については、米国特許第6980299号公報、特表2008−501118号公報、等を参考にされたい。
例えば、キャリブレーションによって予め分散補正データを得る場合、参照ミラー31の移動によって参照光の光路長を調整し、実像(例えば、網膜表面側の感度が高い)が取得された状態における眼底断層像に基づいて算出される第1の分散補正データ(位相φ1(k))と、虚像(例えば、脈絡膜側の感度が高い)が取得された状態における眼底断層像に基づいて算出される第2の分散補正データ(位相φ2(k))をそれぞれ求めておき、メモリ72に記憶させる。これにより、実像に対する分散補正を行うための第1の分散補正データと、虚像に対する分散補正を行うための第2の分散補正データと、が予め準備される。その後、制御部70は、予め設定された分散補正データによって補正された分散補正後のスペクトル強度I(k)をフーリエ変換することにより、被検眼の深さ方向における情報が得られる。
また、例えば、取得された断層画像に対応する分散補正データを用いる場合、制御部70は、実像が取得された状態における眼底断層像に基づいてリアルタイムにて第1の分散補正データ(位相φ1(k))を算出し、算出された第1の分散補正データによって補正された分散補正後のスペクトル強度I(k)をフーリエ変換することにより、被検眼の深さ方向における情報を得てもよい。また、制御部70は、虚像が取得された状態における眼底断層像に基づいてリアルタイムにて第2の分散補正データ(位相φ2(k))を算出し、算出された第2の分散補正データによって補正された分散補正後のスペクトル強度I(k)をフーリエ変換することにより、被検眼の深さ方向における情報を得てもよい。
なお、分散補正処理は、分散補正用の光学部材を参照光の光路中もしくは測定光の光路中に配置した場合等であっても、分散補正の影響をさらに改善させる目的で使用できる。
<観察光学系(SLO光学系)>
次に、ダイクロイックミラー40の透過方向に配置されたSLO光学系(共焦点光学系)300について説明する。SLO光学系300は、被検眼眼底の正面画像を取得するための観察光学系として用いられる。SLO光学系300は、照明光学系、受光光学系に大別される。照明光学系は、被検眼眼底を照明する。受光光学系は、照明光学系によって照明された被検眼の反射光を受光素子によって受光する。制御部70は、受光素子から出力される受光信号に基づいて被検眼眼底の正面画像を得る。
光出射部61は、第1の光源(SLO光源)61a、第2の光源(固視光源)61b、ミラー69、ダイクロイックミラー101、を有する。
SLO光源61aは、高コヒーレントな光を発する光源であり、例えば、λ=780nmの光源(レーザダイオード光源やSLD光源等)が用いられる。固視光源61bは、可視域の波長の光であり、例えば、λ=630nmの光源(レーザダイオード光源やSLD光源等)が用いられる。SLO光源61を出射したレーザ光は、ダイクロイックミラー101を透過し、コリメートレンズ102を介して、ビームスプリッタ62に進む。固視光源61bを出射した可視光は、ミラー69によって折り曲げられた後、ダイクロイックミラー101によって反射され、SLO光源61aから出射したレーザ光と同軸とされる。
SLO光源61aから発せられるレーザ光を被検眼Eに向けて出射する光路には、コリメートレンズ102、被検眼の屈折誤差に合わせて光軸方向に移動可能なフォーカシングレンズ63、図示無き走査駆動機構の駆動により眼底上でXY方向に測定光を高速で走査させることが可能なガルバノミラーとポリゴンミラーとの組み合せからなる走査部64、リレーレンズ65、対物レンズ10が配置されている。また、走査部64のガルバノミラー及びポリゴンミラーの反射面は、被検眼瞳孔と略共役な位置に配置される。
また、SLO光源61aとフォーカシングレンズ63との間には、ビームスプリッタ62が配置されている。そして、ビームスプリッタ62の反射方向には、共焦点光学系を構成するための集光レンズ66と、眼底に共役な位置に置かれる共焦点開口67と、SLO用受光素子68とが設けられている。
ここで、SLO光源61aから発せられたレーザ光(測定光)は、ビームスプリッタ62を透過した後、フォーカシングレンズ63を介して、走査部64に達し、ガルバノミラー及びポリゴンミラーの駆動により反射方向が変えられる。そして、走査部64で反射されたレーザ光は、リレーレンズ65を介して、ダイクロイックミラー40を透過した後、対物レンズ10を介して、被検眼眼底に集光される。
そして、眼底で反射したレーザ光は、対物レンズ10、リレーレンズ65、走査部64のガルバノミラー及びポリゴンミラー、フォーカシングレンズ63を経て、ビームスプリッタ62にて反射される。その後、集光レンズ66にて集光された後、共焦点開口67を介して、受光素子68によって検出される。そして、受光素子68にて検出された受光信号は制御部70へと入力される。制御部70は受光素子68にて得られた受光信号に基づいて被検眼眼底の正面画像を取得する。取得された正面画像はメモリ72に記憶される。なお、SLO画像の取得は、走査部64に設けられたガルバノミラーによるレーザ光の縦方向の走査(副走査)とポリゴンミラーによるレーザ光の横方向の走査(主走査)によって行われる。
<アライメント指標投影光学系>
投影光学系150は、角膜に指標を投影するために用いられる。投影光学系150には、図2の左下の点線内の図に示すように、光軸を中心として同心円上に45度間隔で近赤外光源が複数個配置されている。投影光学系150は、光軸L1を通る垂直平面を挟んで左右対称に配置された赤外光源151とコリメーティングレンズ152を持つ第1指標投影光学系(0度、及び180)と、第1指標投影光学系とは異なる位置に配置され6つの近赤外光源153を持つ第2指標投影光学系と、を備える。なお、図2の本図には、便宜上、第1指標投影光学系(0度、及び180度)と、第2指標投影光学系の一部のみ(45度、135度)が図示されている。光源151は前眼部照明を兼ねる。もちろん、前眼部証明用の光源を別途設ける構成としてもよい。
<前眼部観察光学系>
前眼部観察光学系90は、眼Eを撮像し前眼部像を得るために配置されている。前眼部観察光学系90は、対物レンズ10、ダイクロイックミラー91、結像レンズ95、二次元撮像素子(二次元受光素子)97を備える。
投影光学系150による前眼部反射光及びアライメント光束は、対物レンズ10を介してダイクロイックミラー91によって反射された後、結像レンズ95を介して二次元撮像素子97により受光される。二次元撮像素子97の出力は制御部70に送信され、モニタ75には二次元撮像素子97によって撮像された前眼部像が表示される。
なお、本実施形態において、投影光学系150及び前眼部観察光学系90は、眼Eに対して装置本体3を所定の位置関係に誘導させるためのアライメント検出光学系として用いられる。例えば、投影光学系150及び前眼部観察光学系90は、眼Eと装置本体3を所定の適正作動距離に誘導するために利用される。
なお、アライメント検出光学系は、Z方向について眼Eに対する装置本体3のアライメント状態を検出する構成としては、眼Eに対して斜めからアライメント光を投光し、その反射光を斜め反対方向から受光してZアライメントを検出するようにしてもよい。
<制御部>
制御部70は、CPU(プロセッサ)、RAM、ROM等を備える。制御部70のCPUは、眼科撮影装置の制御を司る。RAMは、各種情報を一時的に記憶する。制御部70のROMには、眼科撮影装置の動作を制御するための各種プログラム、初期値等が記憶されている。
制御部70には、不揮発性メモリ(記憶手段)72、操作部(コントロール部)74、および表示部(モニタ)75等が電気的に接続されている。不揮発性メモリ72は、電源の供給が遮断されても記憶内容を保持できる非一過性の記憶媒体である。例えば、ハードディスクドライブ、フラッシュROM、および、眼科撮影装置に着脱可能に装着されるUSBメモリ等を不揮発性メモリ72として使用することができる。不揮発性メモリ72には、眼科撮影装置による正面画像および断層画像の撮影を制御するための撮影制御プログラムが記憶されている。また、不揮発性メモリ72には、撮影された二次元の断層画像、三次元画像、正面画像、断層画像の撮影位置の情報等、撮影に関する各種情報が記憶される。操作部74には、検者による各種操作指示が入力される。
操作部74は、入力された操作指示に応じた信号を制御部70に出力する。操作部74には、例えば、マウス、ジョイスティック、キーボード、タッチパネル等の少なくともいずれかを用いればよい。
モニタ75は、眼科撮影装置の本体に搭載されたディスプレイであってもよいし、本体に接続されたディスプレイであってもよい。パーソナルコンピュータ(以下、「PC」という。)のディスプレイを用いてもよい。複数のディスプレイが併用されてもよい。また、モニタ75は、タッチパネルであってもよい。なお、モニタ75がタッチパネルである場合に、モニタ75が操作部として機能する。モニタ75には、OCT装置1によって撮影された断層画像および正面画像を含む各種画像が表示される。
なお、制御部70は、複数の制御部(つまり、複数のプロセッサ)によって構成されてもよい。例えば、PCに設けられた設定制御部と、眼科撮影装置の動作を制御する動作制御部とによって、眼科撮影装置の制御部70が構成されてもよい。この場合、例えば、PCの設定制御部は、PCに接続された操作部の操作信号を受信して、受信した操作信号に基づいて、各種の制御動作を動作制御部に指示すればよい。すなわち、設定制御部は、操作信号からの操作信号を受信する受信手段の役割を行う。動作制御部は、設定制御部からの指示に従って、OCT装置1の各構成による撮影動作を制御すればよい。また、受光信号に基づいて画像を生成(取得)する処理は、動作制御部および設定制御部のいずれで行ってもよい。
<制御動作>
以下、図3を参照して、本実施例における眼科撮影装置による制御動作について説明する。本実施例においては、前側領域(例えば、角膜、水晶体前面等)と後側領域(例えば、水晶体後面、眼底等)とを撮影する場合を例に挙げて説明する。なお、本実施例においては、前側領域として、角膜から水晶体前面までを撮影する。また、後側領域として、眼底を撮影する。もちろん、後側領域として、水晶体後面が撮影される構成としてもよい。また、前側領域として、角膜又は水晶体前面等の一部を撮影してもよい。
初めに、検者は、ジョイスティック4を操作して装置本体3を移動させ、被検眼に対するアライメントを行う(S1)。その後、制御部70は、最適化制御(S2)を行うことによって、検者が所望する被検眼部位が高感度・高解像度で観察できるようになる。
制御部70は、最適化制御後において、モニタ75上に断層画像を表示する(S4)。このとき、断層画像として、角膜及び水晶体前面(以下、前眼部と記載)の断層画像及び後側領域の断層画像がモニタ75上に表示される。これは、検出器120によって検出された干渉信号に、第1干渉信号と、第2干渉信号が含まれるためである。第1干渉信号は、波長可変光源27の共振によって周期的に発生する可干渉区間における第1可干渉区間で検出される干渉信号である。第2干渉信号は、周期的に発生する可干渉区間における、第1可干渉区間とは深さ方向に異なる領域の第2可干渉区間で検出される干渉信号である。(詳細は、後述する断層画像の表示(S4)にて説明する)。
次いで、制御部70は、モニタ75上に表示された断層画像を撮影する(S6)。このとき、制御部70は、眼特性情報を測定するために、断層画像の取得(S7)とともに、断層画像の向きを判定するための画像判定処理(S8)を行う。画像判定処理の完了後、制御部70は、取得された断層画像の解析処理(S9)を行う。断層画像解析処理では、被検眼の前眼部に関する第1深度情報(反射情報)と、第2干渉信号に基づいて前記被検眼の眼底に関する第2深度情報と、を取得する。なお、反射情報とは、前眼部及び眼底によって反射された測定光の情報である(例えば、輝度情報、位相情報等)。
制御部70は、深度情報に基づいて、前眼部及び眼底のそれぞれの断層画像を取得し、モニタ75上に表示する。また、制御部70は、深度情報に基づいて、眼特性情報を算出し(S10)、モニタ75上に表示する(S12)。
以下、制御動作について詳細に説明する。なお、本実施例においては、前眼部及び眼底の断層画像を取得するとともに、眼特性情報を取得する。眼特性情報としては、前房深度、眼軸長、水晶体厚等が挙げられる。本実施例においては、眼特性情報として、眼軸長を算出する方法を例に挙げて説明する。
<アライメント操作(S1)>
検者は、被検者の顔を顔支持ユニット5に固定させ、図示無き固視標を固視するように指示する。そして、検者は、ジョイスティック4を操作して装置本体3を移動させ、被検眼に対するアライメントを行う(S1)。これにより、前眼部が撮像素子97によって、撮像され、モニタ75には、前眼部像、指標像が表示される。
例えば、制御部70は、指標像Ma〜Mhによって形成されるリング中心のXY座標を略角膜頂点位置として検出し、頂点位置に対応するアライメント指標Cをモニタ75上に電子的に表示する(図4(a)参照)。レチクルLTは、本実施例においては、角膜頂点位置と装置の光軸L1が一致する位置として設定されたアライメント基準位置を電子的に表示したものである。
また、制御部70は、無限遠の指標像Ma,Meの間隔と有限遠の指標像Mh,Mfの間隔とを比較することによりZ方向のアライメント偏位量を求める(詳しくは、特開平6−46999号参照)。そして、制御部70は、インジケータEをモニタ75上に表示し、アライメントずれに基づいてインジケータEの本数を増減させる。
制御部70は、撮像素子97からの撮像信号に基づいて被検眼に対するアライメント状態を検出する。この場合、制御部70は、撮像素子97によって検出された指標像Ma〜Mhによって形成されるリング中心のXY座標を算出することにより被検眼に対する上下左右方向のアライメント状態を求める。また、制御部70は、装置本体3が作動距離方向(Z方向)にずれた場合に、無限遠の指標像Ma,Meの間隔と有限遠の指標像Mh,Mfの間隔とを比較することによりZ方向のアライメント状態を求める。そして、制御部70は、アライメント検出結果に基づいて、XYZ駆動部6を駆動制御することにより、被検眼に対する自動アライメントを行う(図4(b)参照)。
なお、本実施例においては、自動アライメントモードにて調整をおこなったが、手動にてアライメントを行う構成としてもよい。この場合、検者は、表示モニタ7に表示される指標Cを見ながらジョイスティック4を操作して、指標Csがレチクル(レチクルマーク)LT内に収まるように装置本体3の位置をXY方向に調整する。その後、検者は、インジケータEsがアライメント完了を示すように、装置本体3を前後に移動させ、Z方向の位置を調整する。これによって、アライメントが完了される。
<最適化処理(S2)>
アライメント完了後、制御部70は、アライメント状態の適否を判定し、判定結果に基づいて、最適化制御(最適化処理)を開始する(S2)。
制御部70は、アライメント偏位量(ずれ)が所定の許容範囲内(例えば、XYZ方向におけるアライメント基準位置からのずれが0.5mm以内)であるか否かを判定する。例えば、制御部70は、XYZ方向におけるアライメント偏位量がアライメント完了の許容範囲内に収まっているかにより、XYZ方向のアライメントの適否を判定する。制御部70は、XYZ方向におけるアライメント偏位量がアライメント完了の許容範囲内に収まっている場合、アライメントが適正であると判定する。制御部70は、XYZ方向におけるアライメントが適正であると判定すると、XYZ駆動部6の駆動を停止させると共に、アライメント完了信号を出力する。
また、制御部70は、XYZ方向におけるアライメント偏位量がアライメント完了の許容範囲内に、収まっていない場合、アライメントが適正でないと判定し、自動アライメントを行う。
アライメント完了信号が出力されると、制御部70は、最適化制御を開始するためのトリガ信号を発し、最適化制御を開始する。なお、最適化制御中において、制御部70は、アライメント偏位量が許容範囲を満たすように被検者眼に対して装置本体3を追尾させる制御(トラッキング)を行ってもよい。例えば、制御部70は、XYZ方向におけるアライメント偏位量がアライメント完了の許容範囲内に、一定時間(例えば、画像処理の10フレーム分又は0.3秒間等)継続して収まっているかにより、XYZ方向のアライメントの適正状態が継続しているか否かを判定する。制御部70は、XYZ方向におけるアライメント偏位量がアライメント完了の許容範囲内に、一定時間、継続して収まっている場合、アライメントの適正状態が継続していると判定し、XYZ駆動部6の駆動は停止させた状態を維持する。
また、制御部70は、XYZ方向におけるアライメント偏位量がアライメント完了の許容範囲内に、一定時間、継続して収まっておらず、許容範囲を外れてしまっている場合、アライメントの適正状態が継続していないと判定し、XYZ駆動部6の駆動を開始し、自動アライメントを再開する。この場合、例えば、制御部70は、XYZ駆動部6の駆動中(自動アライメント中)においても、最適化制御を続けて行う。もちろん、制御部70は、アライメント偏位量が許容範囲を外れた場合、最適化制御を停止するような構成としてもよい。また、最適化制御の停止後、アライメント偏位量が許容範囲内に復帰した場合、制御部70は、最適化制御を再開するような構成としてもよい。また、自動アライメントを再開した場合には、最適化制御を初期位置からやり直す構成としてもよい。
なお、本実施例においては、アライメント完了信号が出力されると、最適化制御を開始するためのトリガ信号を発し、最適化制御を開始する構成としたがこれに限定されない。例えば、検者によって操作部74が操作されることによって、最適化制御を開始するトリガ信号が発信され、最適化制御が開始される構成としてもよい。
本実施例において、最適化の制御は、光路長調整、フォーカス調整、偏光状態の調整(ポラライザ調整)、の制御である。なお、最適化の制御において、被検眼に対する一定の許容条件を満たすことができればよく、最も適切な状態に調整する必要は必ずしもない。最適化制御を行うことによって、検者が所望する被検眼部位が高感度・高解像度で観察できるようにする。
最適化制御において、制御部70は、初期化の制御として、参照ミラー31とフォーカシングレンズ24の位置を初期位置に設定する。初期化完了後、制御部70は、設定した初期位置から参照ミラー31を一方向に所定ステップで移動させ、第1光路長調整を行う(第1自動光路長調整)。なお、第1光路長調整は、眼底が検出される位置に調整される。また、第1光路長調整と並行するように、制御部70は、受光素子68から出力される受光信号によって取得されるSLO眼底像に基づいて被検眼眼底に対する合焦位置情報を取得する。合焦位置情報が取得されると、制御部70は、フォーカスシングレンズ24を合焦位置に移動させ、オートフォーカス調整(フォーカス調整)を行う。なお、合焦位置とは、観察画像として許容できる断層画像のコントラストを取得できる位置であればよく、必ずしも、フォーカス状態の最適位置である必要はない。
そして、フォーカス調整完了後、制御部70は、再度、参照ミラー31を光軸方向に移動させ、光路長の再調整(光路長の微調整)をする第2光路長調整を行う。第2光路長調整完了後、制御部70は、参照光の偏光状態を調節するためのポラライザ33を駆動させ、測定光の偏光状態を調整する(詳しくは、特願2012−56292号参照)。
以上のようにして、最適化の制御が完了されることにより、検者が所望する眼底が高感度・高解像度で観察できるようになる。そして、制御部70は、走査部23の駆動を制御し、眼底上で測定光を走査する。制御部70は、走査中に受光素子120から出力される出力信号から所定の走査領域に対応する受光信号を取得して眼底像を形成する。すなわち、制御部70は、受光素子120によって検出されたスペクトルデータを処理し、画像処理により断層像を形成させる。
<断層画像の表示(S4)>
図5はOCT光学系200によって取得(形成)される断層画像の一例を示す図である。断層画像の画像データGは、光路長一致位置より奥側に対応する第1の画像データG1と、光路長一致位置より手前側に対応する第2画像データG2からなり、測定光と参照光の光路長が一致する深度位置(Zero delay position)Z0に関して互いに対称な画像となっている。
例えば、眼底を検出できるように光路長を調整する場合に、測定光と参照光との光路長が一致する深度位置Sが網膜表面より前側に形成されるように参照ミラー31が配置されると、脈絡膜側部分よりも網膜表面側の感度が高い眼底断層像が取得される。この場合、第1の画像データG1と第2画像データG2における眼底断層像は、向かい合った状態となる。この場合、第1の画像データG1において実像が取得され、第2画像データG2において虚像(ミラーイメージ)が取得される。一方、例えば、測定光と参照光との光路長が一致する深度位置が脈絡膜より奥側に形成されるように参照ミラー31が配置されると、網膜表面側よりも脈絡膜側部分の感度が高い眼底断層像が取得される。この場合、第1の画像データG1と第2画像データG2における眼底断層像は、互いに反対方向を向いた状態にある。この場合、第2の画像データG2において実像が取得され、第1の画像データG1において虚像(ミラーイメージ)が取得される。
制御部70は、例えば、断層画像の画像データGのうち、第1の画像データG1もしくは第2画像データG2のいずれかの画像データを抽出し、モニタ75の画面上に表示する(S4)。なお、本実施例では、第1の画像データG1を抽出する設定となっている。第1の画像データG1を抽出する際、上記で説明したように、第1の画像データG1に対して分散補正を行う。すなわち、制御部70は、受光素子120から出力されるスペクトルデータに対しソフトウェアによる分散補正処理を施す。そして、分散補正後のスペクトルデータに基づいて深さプロファイルを得る。このため、実像と虚像との間で画質において差異が生じる。
例えば、実像に対する分散の影響を補正するための分散補正値として、予め設定された第1の分散補正値をメモリ72から取得し、受光素子120から出力されるスペクトルデータを第1の分散補正値を用いて補正し、補正されたスペクトルデータをフーリエ変換して断層画像データを形成する。これにより、第1の画像データG1において実像が取得されたとき、その実像は、高感度・高解像度の画像にて取得され、第1の画像データG1において虚像が取得されたとき、その虚像は、分散補正値の違いにより低解像度のぼやけた像となる。なお、虚像に対する分散の影響を補正するための分散補正値として、第2の分散補正値にて、補正をした場合に、虚像が高感度・高解像度の画像にて取得される。そして、その実像は、分散補正値の違いにより低解像度のぼやけた像となる。
以上のようにして、画像データが抽出され、モニタ75上に、眼底の断層画像が表示される。
ここで、モニタ75上に表示された断層画像において、眼底の他に、異なる被検眼部位が重畳表示される。例えば、断層画像には、深さ方向(Z方向)に異なる被検眼部位である前眼部と眼底とが重畳表示される。以下、Z方向に異なる被検眼部位が表示されることについて説明する。
光源27として波長可変光源(波長走査型光源)が用いられた場合、光源27の共振によって周期的に発生する複数の可干渉区間が生じる。可干渉区間とは、測定光と参照光の干渉(干渉光)が検出可能な領域(干渉領域)である。すなわち、可干渉区間に被検眼部位が位置する場合に、被検眼の断層像を取得することができる。可干渉区間は、光路長一致位置より奥側に対応する検出領域と、光路長一致位置より手前側に対応する検出領域と、からなる。例えば、図5の画像データG1と画像データG2の領域が可干渉区間に相当する。
可干渉区間は、周期的に発生する。すなわち、可干渉区間は、測定光と、測定光の漏れ光及び測定光の残り光が、1回の波長掃引において、光源27より出射されることによって生じる。可干渉区間が生じる周期は、光源27を構成する共振器長に基づいて算出される。例えば、共振器長がLである場合に、第1可干渉区間A1の光路長一致位置Z1から次の第2可干渉区間A2の光路長一致位置Z2が生じるまでの距離はLとなる(図6参照)。すなわち、第1の可干渉区間A1からZ方向にLだけ離れた位置(第2可干渉区間)において干渉光を検出することができる(詳細は後述する)。このため、第1可干渉区間で検出された被検眼のスペクトルデータの他に、第1可干渉区間からZ方向にLだけ離れた位置(第2可干渉区間)に存在する被検眼部位のスペクトルデータを検出することができる。これらの各可干渉区間で検出されたスペクトルデータは、同時に検出される。そして、断層画像データを形成した場合に、Z方向において異なる位置での各被検眼部位の断層画像が重畳表示される。なお、第1可干渉区間A1がもっとも干渉光の検出感度が高く、第1可干渉区間A1の光路長一致位置Z1から離れた可干渉区間であるほど、干渉光の検出感度が悪くなっていく。このため、第1可干渉区間に近い位置で生じる可干渉区間の断層画像であるほど、断層画像がより高感度・高解像度の画像にて取得される。本実施例において、可干渉区間の離間の距離は、人眼の角膜から眼底までの平均的な距離に対応するように設定されている。もちろん、可干渉区間の離間の距離は、検者の所望する部位が取得されるように、構成することができる。例えば、可干渉区間の離間の距離は、人眼の角膜から水晶体後面までの平均的な距離に対応するように設定されてもよい。
なお、各可干渉区間で検出されたスペクトルデータは、完全に同時に検出されるものに限定されない。各可干渉区間で検出されたスペクトルデータが同時に検出される構成とは、略同時に検出される構成であってもよい。
なお、可干渉区間が生じる周期は、少なくとも共振器長に依存する。もちろん、可干渉区間が生じる周期は、共振器長のみならず、光源の組立てや他の部材等の個体差によって、同様の共振器長にて構成された光源であっても、可干渉区間の生じる周期が異なる場合もある。
図6は、複数の可干渉区間について詳細に説明する図である。例えば、光路長調整によって、光路長一致位置が光路長一致位置Z1となった場合、光路長一致位置Z1の可干渉区間である第1可干渉区間A1を基準として、その前後に一定の周期で複数の可干渉区間A2〜A5が生じる。
例えば、第1可干渉区間から後の周期で生じる、第4可干渉区間A4と第5可干渉区間A5は、第1可干渉区間を撮影する際において、光源27より出射された第1の光よりも、遅いタイミングで出射される、第1の光の残り光によって生じる。すなわち、第4可干渉区間A4と第5可干渉区間A5は、光源27より出射された第1の光の残り光が光源27の共振器をより多く往復して、遅れて出射されることによって生じる。例えば、第4可干渉区間A4は、第1可干渉区間A1のよりも1回分共振された後、出射された光によって生じる。共振器長がLである場合、第1可干渉区間A1の光路長一致位置Z1から第4可干渉区間の光路長一致位置Z4が生じるまでの距離は、本実施例では、Lとなる。また、例えば、第5可干渉区間A5は、第1可干渉区間A1のよりも共振器内を2往復された後、出射された光によって生じる。共振器長がLである場合、第1可干渉区間A1の光路長一致位置Z1から第5可干渉区間の光路長一致位置Z5が生じるまでの距離は、本実施例では、2Lとなる。
例えば、第1可干渉区間A1の前の周期で生じる、第2可干渉区間A2と第3可干渉区間A3は、第1可干渉区間を撮影する際において、光源27より出射された第1の光よりも、早いタイミングで出射される、第1の光の漏れ光によって生じる。すなわち、第2可干渉区間A2と第3可干渉区間A3は、第1の光を出射する際の共振の回数に到達する前に、光が漏れ出ることによって生じる。例えば、第2可干渉区間A2は、第1可干渉区間A1のよりも共振が1回分少ない状態で出射された光によって生じる。共振器長がLである場合、第1可干渉区間A1の光路長一致位置Z1から第2可干渉区間の光路長一致位置Z2が生じるまでの距離は、本実施例では、Lとなる。また、例えば、第3可干渉区間A3は、第1可干渉区間A1のよりも共振が2回分少ない状態で出射された光によって生じる。共振器長がLである場合、第1可干渉区間A1の光路長一致位置Z1から第3可干渉区間の光路長一致位置Z3が生じるまでの距離は、本実施例では、2Lとなる。
なお、本実施例においては、一例として、可干渉区間を5つ示すことによって、複数の可干渉区間について説明したが、これに限定されない。干渉信号の検出に用いることのできる可干渉区間の数は、構成によって変化する。例えば、光源特性や検出器の性能によって、干渉信号の検出に用いることのできる可干渉区間は異なる。もちろん、検者によって、使用される可干渉区間を設定する構成であってもよい。
複数の可干渉区間が生じることによって、例えば、モニタ75上の断層画像には、Z方向において異なるZ位置での被検眼部位の断層画像が表示される。例えば、本実施例において、被検眼の眼底が検出できるように光路長調整を行った場合に、モニタ75上において、被検眼の眼底の断層画像の他に、被検眼の前眼部の断層画像が重畳表示される。すなわち、複数の可干渉区間A1〜A5の各干渉信号が1つの干渉信号として検出される。これによって、モニタ75上には、複数の可干渉区間A1〜A5の各干渉信号によって取得される各断層画像が1つの画像領域に表示される。
<断層画像の取得(S7)、画像判定処理(S8)>
次いで、検者は、操作部74の図示無き撮影スイッチを操作して、モニタ75上に表示された断層画像を撮影する。もちろん、最適化制御が完了した際に、自動的に撮影が開始される構成としてもよい。検者によって図示無き撮影スイッチが選択されると、制御部70は、断層画像を取得し、メモリ72に記憶させる(S7)。また、制御部70は、断層画像の取得とともに、断層画像の画像判定を行う(S8)。そして、制御部70は、画像判定結果をメモリ72に記憶させる。なお、画像判定結果は、後述する眼軸長算出処理(S10)時において用いられる。
以下、図7を参照して、画像判定処理の制御動作について説明する。画像判定処理では、モニタ75上に表示された断層画像における被検眼部位の向き(方向)を判定する。例えば、第1可干渉区間の被検眼部位の向きと第2可干渉区間での被検眼部位の向きとが同じ向きであるか否かを判定する。なお、本実施例において、上記記載のように、モニタ75上に表示される可干渉区間の第1画像領域を画像判定処理の対象とする。
ここで、第1可干渉区間の被検眼部位の向きと第2可干渉区間での被検眼部位の向きとの関係を説明する。図8は、第1可干渉区間の被検眼部位の向きと第2可干渉区間での被検眼部位の向きとの関係を説明する図である。図9は、モニタ75上に表示される断層画像の一例を示している。例えば、図9(a)は、図8(a)の場合におけるモニタ75上に表示される断層画像を示している。また、図9(b)は、図8(b)の場合におけるモニタ75上に表示される断層画像を示している。
例えば、図8は、第1可干渉区間A1にて眼底が撮像され、第2可干渉区間A2に前眼部が撮像される場合を示している。なお、第2可干渉区間A2は、Z方向において、第1可干渉区間A1より手前(検者側)の位置での可干渉区間を示している。また、モニタ75上に表示される画像は、第1画像データ(第1画像領域)を抽出した画像を表示する設定となっている。もちろん、第2画像領域の画像データが抽出され、表示される構成であってもよいし、第1画像領域と第2画像領域の双方の画像データが表示される構成であってもよい。
図8(a)は、第1可干渉区間A1の第1画像領域G1A1で撮像された被検眼部位の向きと、第2可干渉区間A2の第1画像領域G1A2で撮像される被検眼部位の向きと、が同様の向きである場合を示している。この場合、例えば、第1可干渉区間A1の第1画像領域G1A1と、第2可干渉区間A2の第1画像領域G1A2と、において、実際の被検眼部位が位置する。これによって、それぞれの画像領域において、被検眼部位の実像(図8(a)実線部)が取得される。すなわち、第1可干渉区間A1の第1画像領域G1A1と、第2可干渉区間A2の第1画像領域G1A2と、で撮像された前眼部及び眼底の実像がモニタ75上に重畳表示される(図9(a)参照)。
図8(b)は、第1可干渉区間A1の第1画像領域G1A1で撮像された被検眼部位の向きと、第2可干渉区間A2の第1画像領域G1A2で撮像される被検眼部位の向きが異なる向きである場合を示している。この場合、例えば、第1可干渉区間A1の第1画像領域G1A1において、実際の被検眼部位が位置され、第2可干渉区間A2の第2画像領域G2A2において、実際の被検眼部位が位置される。これによって、第1可干渉区間A1の第1画像領域G1A1では、実像(図8(b)実線部)が取得され、第2可干渉区間A2の第1画像領域では、虚像(図8(b)点線部)が取得される。すなわち、モニタ75上に表示される断層画像としては、前眼部の虚像及び眼底の実像が表示される。実像と虚像とは光路長が一致する深度位置に関して互いに対称な画像となっているため、モニタ75上に表示される断層画像は、前眼部と眼底とで異なる向きの画像が重畳表示されている(図9(b)参照)。
制御部70は、モニタ75上に表示される第1可干渉区間及第2可干渉区間のそれぞれの断層画像に対して、分散補正処理(S71)を行う。眼底の断層画像(眼底像)及び前眼部の断層画像(前眼部像)のそれぞれに対して、分散補正処理を行うことによって、眼底像と前眼部像とを、高感度・高解像度の画像にて取得する。分散補正処理においては、それぞれの可干渉区間での実像又は虚像の分散補正値を用いて、分散補正を行う。例えば、眼底の実像を高感度・高解像度の画像にて取得するためには、眼底が撮像される可干渉区間における実像の分散補正値を用いて、分散補正を行う。また、制御部70は、前眼部に対しても眼底の分散補正処理と同様にして、分散補正を行う。
以下の説明において、モニタ75上に、図9(a)の断層画像が表示されている場合を例に挙げて説明する。図9(a)は、第1画像領域において、眼底の実像と前眼部の実像が撮像されている。この場合、制御部70は、第1可干渉区間における実像の分散補正値を用いて分散補正を行う。これによって、第1可干渉区間において撮像された眼底(実像)が高感度・高解像度の画像にて取得される。また、第2可干渉区間における実像の分散補正値を用いて分散補正を行う。これによって、第2可干渉区間において撮像された前眼部(実像)が高感度・高解像度の画像にて取得される。なお、第1画像領域に撮像されている断層画像(モニタ75上に表示されている断層画像)が実像であるか又は虚像であるかを判別できない場合、各可干渉区間における実像と虚像の分散補正値を用いて、順に、分散補正処理を行っていくことによって、第1画像領域に撮像されている断層画像が実像であるか又は虚像であるかを判別できる。
制御部70は、分散補正処理完了後、断層画像検出処理(S72)を行う。図10は、断層画像検出処理について説明する図である。断層画像検出処理において、制御部70は、各分散補正値を用いて分散補正処理された断層画像より眼底像又は前眼部像を検出する。
より詳細に説明すると、制御部70は、第1画像領域G1の前眼部像を検出する場合に、第1画像領域G1の前眼部像に対する分散補正値を用いて、分散補正処理を行う。これによって、第1画像領域G1の前眼部が高感度・高解像度の画像にて取得されるようになる。このとき、前眼部像と重畳表示されている眼底像(図10点線部)は、分散補正値の違いにより低解像度のぼやけた像となっている。次いで、図10に示されるように、制御部70は、断層画像のZ方向(Aスキャン方向)に走査する複数の走査線を設定し、各走査線上における輝度分布データを求める。
制御部70は、各走査線に対応する輝度分布から輝度値が閾値以上となる位置を検出する。すなわち、制御部70は、輝度値が立ち上がる(上昇する)位置を検出する。これによって、断層画像における前眼部像のエッジを検出する。制御部70は、各走査線において、同様に前眼部像のエッジ検出を行うことによって、前眼部像を検出する。例えば、閾値は、分散補正処理が行われた被検眼部位のエッジが検出できる値であって、その他の分散補正処理されていない被検眼部位が検出さない値にて設定される。もちろん、閾値はこれに限定されない。少なくとも、分散補正処理のされた被検眼部位のエッジが検出できる値であればよい。なお、閾値の設定としては、例えば、予め、模型眼等の測定によるシミュレーションによって求めた値によって設定される。
制御部70は、前眼部像のエッジを検出すると、前眼部像のエッジが検出された座標位置を前眼部像の座標位置として、メモリ72に記憶させる。また、制御部70は、上記記載の前眼部像の検出方法と同様にして、眼底像についてもエッジ検出を行う。そして、検出された眼底像の座標位置をメモリ72に記憶させる。
なお、断層画像検出処理を行った場合に、エッジ検出ができない場合がある。例えば、分散補正処理を行った際に、適切な分散補正値を用いて分散補正処理を行っていないと、被検眼部位がぼやけた像となってしまい、検出することができない。本実施例においては、予め、各可干渉区間の第1画像領域に被検眼の前眼部と眼底が実際に位置するように構成されている。すなわち、第1画像領域において、前眼部及び眼底の実像が表示されるように設定されている。このため、予め、前眼部及び眼底の実像を分散補正処理するための分散補正値をそれぞれ用いて分散補正処理を行うことによって、断層画像検出処理を適切に行うことができる。なお、エッジ検出ができない場合に、分散補正処理に用いた分散補正値を実像に対応する分散補正値から虚像(虚像から実像)に対応する分散補正値に変更して用いる構成としてもよい。この場合、例えば、エッジが検出できない場合に、制御部70は、分散補正処理に用いた分散補正値を変更して、分散補正処理を再度行う。その後、制御部70は、エッジ検出を再び行う。
次いで、制御部70は、移動台2に設けられたXYZ駆動部6を駆動し、被検眼Eに対して、装置本体3をZ方向に相対的に移動させる(S73)。制御部70によって、装置本体3を移動させることによって、第1画像領域に表示されている眼底像の位置及び前眼部像の位置が第1画像領域に対して相対的に移動される。すなわち、第1画像領域内における、前眼部像及び眼底部像の表示位置が変化する。これによって、断層画像の向き判定(S74)を行う。なお、本実施例のおいては、被検眼Eに対して、装置本体3を移動させる構成としたがこれに限定されない。例えば、顎台や額当て等を制御することによって、被検眼を装置本体3に対して移動させてもよい。また、例えば、被検眼に対して、装置本体3に備えられた光学系が移動される構成としてもよい。
図11は、装置本体3の移動前後での断層画像の表示について説明する図である。図11(a)は、第1画像領域において、眼底の実像と前眼部の実像が撮像されている場合である。図11(b)は、第1画像領域において、眼底の実像と、前眼部の虚像が撮像されている場合である。例えば、制御部70は、被検眼に近づける方向に装置本体3を移動させる。図11(a)に示すように、眼底像及び前眼部像は、K1方向に移動する。すなわち、前眼部像及び眼底像が画像領域上において、同一の方向に移動される。また、図11(b)に示すように、眼底像はK1方向に移動され、前眼部像はK2方向に移動される。すなわち、実像と虚像は逆方向に移動する。
制御部70は、眼底像及び前眼部像が移動した位置を検出し、眼底像及び前眼部像の移動方向を判定(判別)する。例えば、制御部70は、装置本体3の移動後において、再度、分散補正処理を行い、前眼部像を検出する。そして、制御部70は、装置本体3の移動後において検出した前眼部像の座標位置と、メモリ72に記憶させていた装置本体3の移動前の前眼部の座標位置と、の座標のずれを算出する。制御部70は、前眼部像の移動方向を検出することによって、前眼部像が実像又は虚像のいずれであるか判定することできる。これによって、制御部70は、前眼部像の向きを判定する。また、制御部70は、眼底においても、同様にして、眼底像の向きを判定する。制御部70は、断層画像の向き判定を完了すると、判定結果をメモリ72に記憶させる(S75)。
なお、本実施例において、装置本体を移動させることによって、断層画像の向き判定を行う構成としたが、これに限定されない。判定手段としては、種々の構成が挙げられる。例えば、制御部70は、断層画像検出処理によって検出された前眼部像及び眼底像が位置する画像領域によって、断層画像の向きを判定する構成としてもよい。また、実像又は虚像の分散補正処理を行うことによって、第1画像領域に表示されている眼底像及び前眼部像の実像及び虚像の判定処理を行う。そして、実像と虚像との関係からそれぞれ被検眼部位の向きを判定する構成としてもよい。
<画像解析処理(S9)>
制御部70は、メモリ72に記憶された断層画像に対して解析処理(S9)を行い、眼軸長算出処理(S10)を行う。
以下、図12を参照して、断層画像解析処理の制御動作について説明する。断層画像解析処理では、取得した断層画像より前眼部像と眼底像の深度情報を取得する。例えば、深度情報は、被検眼部位の反射情報(Aスキャン上での反射情報)を示す。例えば、被検眼の反射情報は、被検眼部位の断層画像及び被検眼部位の座標位置等を取得するために用いられる。なお、以下の説明では、反射情報として、輝度情報を例に挙げて説明する。
制御部70は、断層画像判定処理(S7)時と同様にして、前眼部像に対する分散補正処理(S91)を行う。制御部70は、分散補正処理後の断層画像から、前眼部像を検出する(S92)。なお、本実施例において、断層画像解析処理(S9)における前眼部の検出は、前眼部像が第1画像領域上において、どの位置に存在するかを示す座標位置の取得が挙げられる。また、前眼部の検出は、眼底像と前眼部像が重畳表示された断層画像から、前眼部像のみが表示された断層画像の取得が挙げられる。なお、本実施例においては、前眼部の検出として、その双方が行われる構成としているがこれに限定されない。いずれか一方が取得される構成であってもよい。なお、前眼部断層画像は、前眼部でのアライメントが行われていることによって、被検眼の視軸と角膜頂点位置が含まれた前眼部断層画像が撮影できている。
以下、より詳細に説明する。例えば、制御部70は、断層画像のZ方向(Aスキャン方向)に走査する複数の走査線を設定し、各走査線上において、輝度情報(輝度分布データ)を求める。制御部70は、各走査線に対応する輝度分布から輝度値が閾値以上となる位置を検出する。これによって、断層画像における前眼部像のエッジを検出する。制御部70は、各走査線において、同様に前眼部像のエッジ検出を行うことによって、前眼部像を検出する。前眼部像のエッジを検出すると、前眼部像のエッジが検出された座標位置を前眼部像の座標位置として、メモリ72に記憶させる。なお、断層画像解析処理(S9)における座標位置の取得は、画像判定処理(S7)時において、検出された断層画像の座標位置の情報を適用してもよい。
また、制御部70は、前眼部像の断層画像を取得する。制御部70は、各走査線上における輝度分布データを用いる。制御部70は、各走査線に対応する輝度分布から輝度値が閾値以上となる位置を検出する。これによって、輝度値の高い前眼部像のみを検出することができ、眼底のぼやけた像を断層画像上から除去することができる。制御部70は、前眼部像のみが表示された断層画像を取得すると、メモリ72に記憶させる。なお、断層画像の取得方法としては、これに限定されない。例えば、分散補正処理後の断層画像に対して、ノイズ除去処理を行うことによって、眼底のぼやけた像を除去することができ、前眼部像のみを検出することができる。なお、前眼部像のみが表示される断層画像の取得は、画像判定処理(S7)時に行われる構成としてもよい。
制御部70は、眼底像において、前眼部像と同様にして、眼底に対する分散補正処理を行う(S93)。その後、前眼部と同様にして、眼底像の検出を行う(S94)。以上のようにして、断層画像解析処理が行われる。
<眼軸長算出処理(S10)>
次いで、制御部70は、眼軸長算出処理を行う。例えば、制御部70は、断層画像解析処理の解析結果に基づいて、眼軸長を算出する。例えば、制御部70は、各可干渉区間の間の距離、被検眼部位の座標位置に基づいて、眼軸長を算出する。なお、本実施例において、例えば、眼軸長は、角膜頂点位置から眼底の網膜までの距離を求めることによって算出される。なお、本実施例において、眼軸長測定の基準となる前眼部の位置は、角膜頂点位置を基準しているが、これに限定されない。前眼部のいずれの位置を基準とする構成であってもよい。また、本実施例において、眼軸長測定の基準となる眼底の網膜の位置は、網膜の位置の内、Z方向において、もっとも深い位置(例えば、黄斑)の網膜の位置を基準とする。すなわち、眼軸長測定の基準となる眼底の網膜の位置は、網膜の位置の内、Z方向において、角膜頂点位置からもっとも奥の網膜の位置を基準とする。もちろん、眼軸長算出に用いる網膜の位置としては眼底の網膜のいずれの位置を基準としてもよい。
図13は、眼軸長の算出方法について説明する図である。図13(a)は、第1画像領域において、眼底の実像と前眼部の実像が撮像されている場合である。図13(b)は、第1画像領域において、眼底の実像と、前眼部の虚像が撮像されている場合である。
制御部70は、第1画像領域に表示された断層画像に基づいて、眼軸長算出の演算方法を選択する。例えば、図13(a)において、前眼部と眼底は、断層画像の向きは同様の向きを向いている。この場合、眼軸長ALは、距離Y1、距離Y2、距離Lに基づいて算出される。なお、距離Y1は、第1可干渉区間A1における光路長一致位置A1Z1から網膜位置までの距離である。距離Y2は、第2可干渉区間A2における光路長一致位置A2Z2から角膜頂点までの距離である。距離Lは、第1可干渉区間A1(光路長一致位置A1Z1)と第2可干渉区間A2(光路長一致位置A2Z2)との間の距離である。距離Lは、光源27の共振器長に依存する。
角膜頂点位置としては、断層画像解析処理によって検出された前眼部の座標位置の情報をメモリ72により呼び出して用いる。例えば、撮像された前眼部が実像である場合、制御部70は、前眼部の座標位置情報の内、Z方向において、もっとも光路長一致位置A2Z2の近傍にある座標位置を角膜頂点位置として用いる。すなわち、各走査線によって検出された輝度値の立ち上がり部分の内、もっとも光路長一致位置の近傍にある座標位置を角膜頂点位置として用いる。もちろん、角膜頂点位置の設定は、これに限定されない。例えば、断層画像解析処理によって検出された前眼部の座標位置を円近似して、その円のZ方向における頂点位置を角膜頂点位置として設定する方法が挙げられる。
また、眼底の網膜位置としては、断層画像解析処理によって検出された眼底の座標位置の情報をメモリ72により呼び出して用いる。例えば、撮像された眼底が実像である場合、制御部70は、眼底の座標位置情報の内、Z方向において、光路長一致位置A1Z1からもっとも離れた位置(奥の位置)にある網膜の座標位置を網膜位置として用いる。すなわち、各走査線によって検出された輝度値の立ち上がり部分の内、光路長一致位置からもっとも離れた位置にある座標位置を網膜位置として用いる。もちろん、網膜位置の設定は、これに限定されない。例えば、各走査線によって検出された、隣り合う座標位置間において、座標位置がもっとも大きく変化した位置を網膜位置として設定してもよい。
図13(a)の場合、眼軸長は、以下の演算式によって算出される。なお、第1画像領域で撮像されている被検眼部位が実像であるか虚像であるかの判定については、上記記載の断層画像判定方法と同様にして、判定される。
また、例えば、図13(b)において、前眼部と眼底では、断層画像の向きは異なる向きを向いている。この場合、眼軸長ALは、距離Y1、距離Y3、距離Y4、距離Lに基づいて算出される。なお、距離Y1は、第1可干渉区間A1における光路長一致位置A1Z1から網膜位置までの距離である。距離Y3は、第2可干渉区間A2における第1画像領域G1A2のZ方向における範囲である。距離Y4は、第1画像領域G1A2のZ方向における範囲において、光路長一致位置からもっとも離れた位置ZLから角膜頂点位置までの距離である。
例えば、撮像された前眼部が虚像である場合、制御部70は、前眼部の座標位置情報の内、Z方向において、光路長一致位置A2Z2からもっとも離れた位置にある前眼部の座標位置を角膜頂点位置として用いる。例えば、撮像された眼底が実像である場合、制御部70は、眼底の座標位置情報の内、Z方向において、光路長一致位置A1Z1からもっとも離れた位置(奥の位置)にある網膜の座標位置を網膜位置として用いる。
図13(b)の場合、眼軸長は、以下の演算式によって算出される。
制御部70は、眼軸長が算出されると、眼軸長をモニタ75上に表示する。また、制御部70は、断層画像解析処理によって取得した前眼部及び眼底のそれぞれの断層画像をモニタ75上に表示する。
以上のように、光源27によって生じる複数の可干渉区間を利用することによって、前眼部アダプターの装着や、前側領域と後側領域での光路長の切り換え等の制御が必要なく、容易な構成で、前側領域及び後側領域の断層画像を取得することができる。また、眼軸長を容易に取得することができる。
<変容例>
なお、本実施例において、前側領域の断層画像と、後側領域の断層画像と、を取得して、別々にモニタ75上に表示する構成としたがこれに限定されない。前側領域の断層画像と、後側領域の断層画像と、を合成することによって合成画像を取得し、合成画像をモニタ75上に表示する構成としてもよい。例えば、合成画像を形成する場合、制御部70は、前側領域の断層画像の光路長一致位置と後側領域の断層画像の光路長一致位置との間を、可干渉区間の間の距離分(共振器長分)だけ離間させて、前側領域の断層画像と後側領域の断層画像とを合成する。すなわち、前側領域の断層画像と後側領域の断層画像との距離が距離情報によって示される距離となるように、断層画像を合成する。これによって、被検眼全体(フルレンジ)の断層画像を取得することができる。なお、前側領域の断層画像と後側領域の断層画像との間の距離は、可干渉区間の間の距離分(共振器長分)だけ離間させて、合成するものに限定されない。前側領域の断層画像と後側領域の断層画像との間の距離は種々の距離で合成してもよい。もちろん、前側領域の断層画像と後側領域の断層画像との間の距離は任意に設定可能な構成としてもよい。
なお、本実施例においては、眼特性情報として、眼軸長を測定する構成としたがこれに限定されない。水晶体厚や前房深度等を測定する構成であってもよい。例えば、水晶体厚を測定する場合、制御部70は、水晶体前面の断層画像と水晶体後面の断層画像とを撮影する。そして、水晶体前面と水晶体後面とを検出し、水晶体厚を測定する。
なお、本実施例において、所望する被検眼部位が撮影できていない場合に、所望する部位が撮影領域に含まれるように、調整をする構成としてもよい。すなわち、制御部70は、撮影範囲に、前側領域からの反射光に基づく干渉信号と、後側領域からの反射光に基づく干渉信号が含まれるように、調整を行う。例えば、制御部70は、光路長調整手段(例えば、参照ミラー31)を制御して、撮影範囲に、前側領域からの反射光に基づく干渉信号と、後側領域からの反射光に基づく干渉信号が含まれるようにする。また、例えば、装置本体3を被検眼に対して移動させ、撮影範囲に、前側領域からの反射光に基づく干渉信号と、後側領域からの反射光に基づく干渉信号が含まれるようにする。
なお、本発明は、光路長を変更して、複数の撮影を行う構成においても、適用可能である。この場合、光路長が変更されることよって、複数の断層画像が取得される。例えば、角膜と水晶体前面と眼底が撮像された断層画像と、角膜と水晶体前面と水晶体後面が撮像された断層画像と、を撮像し、これらを合成することで、被検眼の全体の断層画像を取得することができる。また、例えば、1回の撮影で前側領域と後側領域が撮影できない場合においても、前側領域に光路長をあわせて撮影を行った後、後側領域に光路長をあわせて撮影を行うことで、被検眼の全体の断層画像を取得することができ、被検眼の個体差に関係なく、眼特性情報を測定することができる。
なお、光路長を変更する場合において、光路長の変更距離は、共振器長に依存した距離の整数倍(例えば、共振器長に依存した距離の2倍の距離等)の距離にて、変更をする構成が挙げられる。このような構成とすることによって、最初に撮影された複数の可干渉区間での断層画像を、複数の可干渉区間の位置が変更されることなく、最初に取得された可干渉区間の位置において、光路長の変更とともに、順に感度よく取得することができる。もちろん、光路長の変更距離は、これに限定されない。検者の任意の距離にて、変更がされる構成としてもよいし、被検眼部位の反射情報を検出して、変更される構成としてもよい。
なお、例えば、光路長を変更する手段としては、参照ミラー31の移動又は測定光路中に配置された光学部材が光軸方向に移動される構成が挙げられる。もちろん、双方を連動して移動させて、光路長を変更する構成としてもよい。また、例えば、光路長を変更する手段としては、光路長の異なる複数の参照光路を設ける。そして、光路切り換え手段(例えば、光スイッチ、ガルバノミラー駆動、偏光状態の変更手段等)によって、参照光路を切り換えることによって、光路長が変更される構成が挙げられる。また、上記記載の光路長を変更する手段を組み合わせて用いる構成としてもよい。
なお、本実施例において、2つの可干渉区間を用いて、前側領域及び後側領域の撮影を行う構成としたがこれに限定されない。前側領域及び後側領域の撮影を行う構成は、2つ以上の可干渉区間を用いてもよい。例えば、3つの可干渉区間を用いることによって、角膜、水晶体前面、水晶体後面、眼底を撮影する構成であってもよい。
なお、本実施例においては、眼底に対してフォーカス調整を行う構成としたがこれに限定されない。前側領域の断層画像を取得する際には、前側領域に対してフォーカスを調整するとよりよい。すなわち、眼底に対してフォーカス調整を行った場合には、前側領域において測定光が平行光として照射され、後側領域において測定光が集光する構成となる。このため、前側領域は後側領域に対して、ぼやけた像となっている。このため、後側領域に対してフォーカス調整をし、撮影を行う。また、前側領域に対してフォーカス調整を行う。このような構成とすることによって、各被検眼部位の断層画像をより鮮明に撮影することができる。
なお、本実施例における制御動作は、SS−OCTを例に挙げて説明をしたが、これに限定されない。本発明の制御動作は、他の原理を用いたOCTにも適用可能である。例えば、Spectral-domain OCT(SD−OCT)、Time-domain OCT(TD−OCT)等が挙げられる。
なお、本発明においては、本実施例に記載した装置に限定されない。例えば、上記実施例の機能を行うソフトウェア(プログラム)をネットワークや各種記憶媒体を介して、システムあるいは装置に供給する。そして、システムあるいは装置のコンピュータ(例えば、CPU等)がプログラムを読み出し、実行することも可能である。