<概要>
典型的な実施形態の1つについて、図面を参照して説明する。図1~図12は、本実施形態に係る光コヒーレンストモグラフィー(Optical Coherence Tomography:OCT)装置を説明する図である。なお、以下の<>にて分類された項目は、独立または関連して利用され得る。
<OCT光学系>
例えば、本実施例に係るOCT装置(例えば、OCT装置1)は、OCT光学系(例えば、OCT光学系100)を備え、OCT光学系の検出器から出力されるスペクトル干渉信号を処理してOCTデータを取得可能であってもよい。例えば、この場合、OCT光学系は、フーリエドメインOCT光学系を基本的構成としてもよい。フーリエドメインOCT光学系としては、スペクトルドメインOCT(SD-OCT)光学系であってもよい。波長掃引式OCT(SS-OCT)光学系であってもよい。また、例えば、この場合、OCT光学系は、タイムドメインOCT(TD-OCT)を基本構成としてもよい。
なお、本開示の技術は、被検物の反射強度を検出するためのスダンダートOCT、被検物のモーションコントラストデータを検出するためのOCTアンジオグラフィー(例えば、ドップラーOCT)、偏光感受OCT(PS-OCT:Polarization Sensitive OCT)、等において適用されてもよい。また、スダンダートOCTとPS-OCTとが複合されたマルチファンクションOCTにおいて適用されてもよい。
例えば、OCT光学系は、OCT光源からの光を測定光路と参照光路に分割するための光分割器を有し、測定光路を介して被検物に導かれた測定光と参照光路からの参照光とのスペクトル干渉信号を検出してもよい。
<眼底広角撮影>
例えば、OCT光学系は、OCT光源からの光を測定光路と参照光路に分割し、測定光路を介して被検眼眼底に導かれた測定光と参照光路からの参照光との干渉信号を、検出器によって検出するために設けられてもよい。
例えば、OCT光学系は、測定光が眼底上を横断する一つの横断方向に関して眼底中心部と眼底周辺部を含む広角領域に測定光を導くことが可能なOCT光学系であってもよい。この場合、広角領域としては、例えば、特定の横断方向(例えば、水平方向)に関して測定光が眼底上で横断する場合、眼底中心部と眼底周辺部の両方に横断するような広い角度領域であってもよい。また、測定光が横断する横断領域に関して、例えば、眼底中心部での横断領域と眼底周辺部での横断領域は、横断方向に関して連続してもよい。広角領域としては、例えば、眼底上において18mm以上の領域であってもよい。もちろん、広角領域が18mmよりも狭い領域を得る場合に用いられてもよく、本実施形態の装置は、眼底の湾曲度が大きい被検眼の周辺領域を撮像する場合に特に有用である。
例えば、眼底の広角領域に測定光を導くことが可能なOCT光学系としては、対物レンズ光学系が用いられてもよいし、凹面ミラーを用いた対物ミラー光学系が用いられてもよい。また、対物レンズ光学系に、広角アタッチメントが取り付けられた構成であってもよい。
例えば、OCT光学系は、複数の参照光路を備えてもよい。例えば、OCT光学系は、眼底中心部を含む第1OCTデータ(例えば、第1OCTデータ360、第1OCTデータ380)を得るために設定された光路長を有する第1参照光路(例えば、第1参照光路110a)と、眼底周辺部を含む第2OCTデータ(例えば、第2OCTデータ370、第2OCTデータ390)を得るために設定された光路長を有し第1参照光路とは異なる第2参照光路(例えば、第2参照光路110b)と、を備えてもよい。この場合、第1参照光路と第2参照光路との光路長差は、眼底中心部と眼底周辺部との間での測定光の光路長差に対応して設定されてもよい。なお、眼球の湾曲を考慮し、例えば、第2参照光路の方が、第1参照光路よりも光路長が短く設定されてもよい。
例えば、OCT光学系は、測定光を被検眼眼底上で走査するための光走査部(例えば、光スキャナ156)を備えてもよい。例えば、光走査部は、眼底上において測定光を一つの走査方向に走査することによって、眼底中心部と眼底周辺部を含む広角領域を走査してもよい。この場合、例えば、眼底中心部での走査領域と眼底周辺部での走査領域は、横断方向に関して連続してもよい。また、例えば、光走査部は、眼底上の広角領域を走査可能な走査角度まで測定光を走査できるように構成されてもよい。また、例えば、光走査部は、被検眼の瞳孔と略共役位置に配置され、瞳孔中心を旋回点として測定光を測定してもよい。
なお、光走査部が設けられる場合、光走査部による1回のBスキャンによって、眼底中心部と眼底周辺部を含む広角領域に測定光を走査し、眼底中心部を含むOCTデータと眼底周辺部を含むOCTデータが取得されてもよい。これによって、例えば、広角領域におけるOCTデータをスムーズに取得することができる。
例えば、OCT光学系は、眼底中心部に対応する第1検出器と眼底周辺部に対応する第2検出器とを備えてもよい。この場合、OCT光学系は、測定光と、第1参照光路による第1参照光と、の第1干渉信号を検出する第1検出器(例えば、検出器120a)と、測定光と、第2参照光路による第2参照光と、の第2干渉信号を検出する第2検出器(例えば、検出器120b)と、を備えてもよい。これによって、第1検出器と第2検出器を並列的に用いることができるため、眼底中心部と眼底周辺部のOCTデータを確実に検出することができるとともに、各OCTデータをスムーズかつ良好な信号強度にて取得できる。
<調整手段>
例えば、本実施例に係るOCT装置は、調整手段(例えば、制御部70)を備えていてもよい。例えば、調整手段は、第1干渉信号の検出によって第1検出器から出力される第1スペクトル干渉信号と、第2干渉信号の検出によって第2検出器から出力される第2スペクトル干渉信号と、に基づいて、第1OCTデータ及び第2OCTデータを取得するための撮影条件を調整する。例えば、スペクトル干渉信号は、検出器から出力される信号そのものであってもよい。また、例えば、スペクトル干渉信号は、検出器から出力される信号をフーリエ変換することで得たOCTデータであってもよい。
例えば、調整手段は、第1スペクトル干渉信号及び第2スペクトル干渉信号に基づいて、第1OCTデータ及び第2OCTデータを取得するための撮影条件を調整してもよい。例えば、この場合、調整手段は、第1スペクトル干渉信号と第2スペクトル干渉信号との信号強度に基づいて、第1OCTデータ及び第2OCTデータを取得するための撮影条件を調整する構成としてもよい。また、例えば、この場合、調整手段は、第1スペクトル干渉信号と第2スペクトル干渉信号とのコントラスト情報に基づいて、第1OCTデータ及び前記第2OCTデータを取得するための撮影条件を調整する構成としてもよい。
なお、スペクトル干渉信号の信号強度に基づく撮影条件の調整としては、検出器から出力された信号そのものに基づく撮影条件の調整であってもよいし、スペクトル干渉信号をフーリエ変換することで得たOCTデータに基づく撮影条件の調整であってもよいし、OCTデータを画像化した際の輝度情報に基づく撮影条件の調整であってもよい。
なお、調整手段は、スペクトル干渉信号の信号強度として、S/N比(すなわち、干渉信号とノイズ量の比)、特定の信号(例えば、疾患部位やCOSTライン等の少なくともいずれかに対応する信号)における鮮鋭度、等の少なくともいずれかを取得し、これに基づいて、第1OCTデータ及び第2OCTデータを取得するための撮影条件を調整してもよい。また、調整手段は、スペクトル干渉信号の信号強度に基づいて取得される画像情報として、輝度情報、コントラスト情報、ハレーションに関する情報(例えば、ハレーションの有無や面積等)等の少なくともいずれかを取得し、これに基づいて、第1OCTデータ及び第2OCTデータを取得するための撮影条件を調整してもよい。
例えば、調整手段は、測定光と第1参照光との光路長差及び測定光と第2参照光との光路長差を調整する光路長調整手段(例えば、カップラ153及びコリメータレンズ154)を調整する構成であってもよい。また、例えば、調整手段は、眼底中心部及び眼底周辺部に対する合焦位置を調整するフォーカス調整手段(例えば、フォーカスレンズ155)を調整する構成であってもよい。また、例えば、調整手段は、測定光と第1参照光との偏光状態及び測定光と第2参照光との偏光状態を調整する偏光調整手段(例えば、偏光調整部300、偏光調整部302)を調整する構成であってもよい。なお、本実施例において、調整手段は、光路長調整手段と、フォーカス調整手段と、偏光調整手段と、の少なくともいずれかを調整するようにしてもよい。もちろん、これらの調整以外に、参照光の光量、被検眼Eの前眼部アライメント機構、被検眼Eのスキャン位置、分散補正部材、等の少なくともいずれかを調整するようにしてもよい。
例えば、調整手段は、第1スペクトル干渉信号及び第2スペクトル干渉信号に被検眼の所定の領域のスペクトル干渉信号が含まれる場合には、被検眼の所定の領域における第1スペクトル干渉信号と第2スペクトル干渉信号とに基づいて、第1OCTデータ及び第2OCTデータを取得するための撮影条件を調整するようにしてもよい。例えば、所定の領域は、被検眼Eにおける深さ方向に設けられてもよい。また、例えば、所定の領域は、被検眼Eにおける横断方向に設けられてもよい。これによって、第1OCTデータと第2OCTデータのそれぞれに重複領域が設けられるので、共通の領域を比較することで、撮影条件を容易に調整できるようになる。なお、このような所定の領域は、被検眼の疾患部位等を含む領域であってもよい。また、このような所定の領域は、ゼロディレイ位置から一定の深さだけ離れた位置等であってもよい。
<光路長調整手段>
例えば、光路長調整手段は、測定光と第1参照光との光路長差と、測定光と第2参照光との光路長差と、を共通の光学部材の駆動によって、同時に調整する構成であってもよい。例えば、本実施例においては、測定光路に設けられた測定光の光路長を調整するための光学部材(例えば、レンズ等)を移動させることによって、測定光と第1参照光との光路長差と、測定光と第2参照光との光路長差と、が同時に調整される。もちろん、測定光と第1参照光との光路長差と、測定光と第2参照光との光路長差と、はそれぞれを独立に調整可能な構成としてもよい。この場合には、第1参照光路と、第2参照光路と、のそれぞれに、参照光の光路長を調整するための光学部材が設けられてもよい。このような構成であれば、各参照光の光路長を調整することによって、測定光と第1参照光との光路長差と、測定光と第2参照光との光路長差と、を独立に調整することができる。
<フォーカス調整手段>
例えば、本実施例におけるフォーカス調整手段は、眼底中心部及び眼底周辺部に対する合焦位置を、共通のフォーカス部材の駆動によって、同時に調整する構成であってもよい。例えば、本実施例においては、測定光路に設けられたフォーカス調整用の光学部材を移動させることによって、眼底中心部と眼底周辺部とに対する合焦位置が同時に調整される。もちろん、眼底中心部に対する合焦位置と、眼底周辺部に対する合焦位置と、はそれぞれが独立に調整される構成であってもよい。この場合には、眼底中心部と眼底周辺部に対応する2つの測定光路を設け、各測定光路にフォーカス調整用の光学部材を配置するようにしてもよい。このような構成であれば、被検眼の眼底中心部に対する合焦位置と、被検眼の眼底周辺部に対する合焦位置と、を独立に調整することができる。
<偏光調整手段>
例えば、本実施例における偏光調整手段は、第1参照光路に配置された第1偏光調整部材(例えば、第1偏光調整部300)を有していてもよい。また、例えば、本実施例における偏光調整手段は、第2参照光路に配置され、第1偏光調整部材とは異なる第2偏光調整部材(例えば、第2偏光調整部302)を有していてもよい。例えば、偏光調整手段は、第1偏光調整部材を調整することによって、測定光と第1参照光との偏光状態を調整し、第2偏光調整部材を調整することによって、測定光と第2参照光との偏光状態を調整する構成であってもよい。
<画像処理器>
例えば、本実施例に係るOCT装置は、画像処理器(例えば、制御部70)を備えてもよい。画像処理器は、検出器から出力されるスペクトル干渉信号を処理してOCTデータを取得可能であってもよい。例えば、この場合、画像処理器は、眼底中心部に導かれた測定光と第1参照光との第1干渉信号に基づいて眼底中心部を含む第1OCTデータを得るとともに、眼底周辺部に導かれた測定光と第2参照光との第2干渉信号に基づいて眼底周辺部を含む第2OCTデータを得てもよい。例えば、画像処理器は、調整手段によって撮影条件が調整された後の第1OCTデータと第2OCTデータを得ることで、各OCTデータに生じる信号強度の差が小さいOCTデータを取得することができる。このため、検者はバランスのとれた第1OCTデータと第2OCTデータをそれぞれ取得することができる。
<合成処理手段>
例えば、本実施例に係るOCT装置は、合成処理手段(例えば、制御部70)を備えてもよい。合成処理手段は、第1OCTデータと第2OCTデータとを合成処理することによって、合成OCTデータ(例えば、合成OCTデータ400)を取得する。例えば、合成処理手段は、第1OCTデータと、第2OCTデータと、が深さ方向と横断方向の少なくともいずれかに関して連続するように、それぞれのOCTデータを合成してもよい。また、例えば、合成処理手段は、各OCTデータに含まれるFPN信号を用いて、それぞれのOCTデータを合成してもよい。例えば、これによって、被検眼における1枚の広角OCTデータを得ることができる。
<実施例>
以下、本実施例に係る光コヒーレンストモグラフィー(OCT)装置の実施例について説明する。図1はOCT装置1の光学系及び制御系を示す図である。例えば、OCT装置1は、波長掃引式OCT(SS-OCT:Swept Source-OCT)を基本構成とし、波長可変光源102と、干渉光学系(OCT光学系)100と、演算制御器(演算制御部)70と、を含む。その他、OCT装置1には、メモリ72、表示部75、図示なき正面像観察系及び固視標投影系が設けられてもよい。演算制御器(以下、制御部)70には、波長可変光源102、干渉光学系100、メモリ72、表示部75、が接続されている。
干渉光学系100は、導光光学系150によって測定光を被検眼Eに導く。干渉光学系100は、参照光学系110に参照光を導く。干渉光学系100は、被検眼Eによって反射された測定光と参照光との干渉によって取得される干渉信号光を検出器(受光素子)120に受光させる。さらに、本実施例の干渉光学系100は、FPN生成光学系200を備える(詳しくは後述する)。なお、干渉光学系100は、図示なき筐体(装置本体)内に搭載され、ジョイスティック等の操作部材を介して、周知のアライメント移動機構により被検眼Eに対して筐体を3次元的に移動させることで、被検眼Eに対するアライメントが行われてもよい。
干渉光学系100にはSS-OCT方式が用いられ、光源102として出射波長を時間的に高速で変化させる波長可変光源(波長走査型光源)が用いられる。光源102は、例えば、レーザ媒体、共振器、及び波長選択フィルタによって構成される。波長選択フィルタとしては、例えば、回折格子とポリゴンミラーの組み合わせ、ファブリー・ペローエタロンを用いたフィルタが挙げられる。また、光源102としては、VCSEL式波長可変光源が用いられてもよい。
カップラ(スプリッタ)104は、第1の光分割器として用いられ、光源102から出射された光を測定光路と参照光路に分割する。カップラ104は、例えば、光源102からの光を測定光路側の光ファイバー105に導光すると共に、参照光路側の参照光学系110に導光する。
カップラ(スプリッタ)130は、第2の光分割器として用いられ、光ファイバー105からの光(測定光)を、導光光学系150の光路とFPN生成光学系200の光路に分割する。つまり、測定光路には、導光光学系150とFPN生成光学系200が設けられている。カップラ(スプリッタ)130は、ビームスプリッタであってもよいし、サーキュレータであってもよい。
<導光光学系>
導光光学系150は、測定光を被検眼Eに導くために設けられる。導光光学系150には、例えば、光ファイバー152、カップラ153、コリメータレンズ154、フォーカスレンズ155、光スキャナ156、及び対物レンズ系158が順次設けられてもよい。この場合、測定光は、光ファイバー152、カップラ153を介して、コリメータレンズ154によって平行ビームとなり、フォーカスレンズ155を介して光スキャナ156に向かう。光スキャナ156を通過した光は、対物レンズ系158を介して、被検眼Eに照射される。測定光は、前眼部及び後眼部の両方に照射され、各組織にて散乱・反射される。
光スキャナ156は、被検眼E上でXY方向(横断方向)に測定光を走査させてもよい。光スキャナ156は、例えば、2つのガルバノミラーであり、その反射角度が駆動機構によって任意に調整される。光源102から出射された光束は、その反射(進行)方向が変化され、被検眼の眼底上で任意の方向に走査される。光スキャナ156としては、例えば、反射ミラー(ガルバノミラー、ポリゴンミラー、レゾナントスキャナ)の他、光の進行(偏向)方向を変化させる音響光学素子(AOM)等が用いられてもよい。
この場合、測定光による被検眼Eからの散乱光(反射光)は、対物レンズ系158、光スキャナ156、フォーカスレンズ155、コリメータレンズ154、カップラ153、光ファイバー152を経た後、カップラ130に達する。カップラ130は、光ファイバー152からの光を、第1検出器120aに向かう光路(例えば、光ファイバー115~カップラ350a)と、第2検出器120bに向かう光路(例えば、光ファイバー105~カップラ104~光ファイバー117~カップラ350b)に分割する。
カップラ130によって分割された測定光のうち、第1検出器120aに向かう光路を経由した測定光は、カップラ350aにて、第1参照光路110aからの参照光と合波されて干渉する。また、第2検出器120bに向かう光路を経由した測定光は、カップラ350bにて、第2参照光路110bからの参照光と合波されて干渉する。
なお、導光光学系には、測定光の合焦位置を調整するための光学部材が配置されていてもよい。例えば、本実施例においては、フォーカスレンズ155が光軸方向に移動されることで、測定光の合焦位置が調整され、結果として被検眼Eに対するフォーカスが調整される。例えば、フォーカスレンズ155は可変焦点レンズであってもよく、この場合には、可変焦点レンズを光軸方向に対して固定配置し、その屈折力を変化させることで、被検眼Eに対するフォーカスが調整されてもよい。
<参照光学系>
参照光学系110は、被検眼Eでの測定光の反射によって取得される反射光と合成される参照光を生成する。参照光学系110を経由した参照光は、カップラ(例えば、カップラ350a、350b)にて測定光路からの光と合波されて干渉する。参照光学系110は、マイケルソンタイプであってもよいし、マッハツェンダタイプであってもよい。
参照光学系110は、例えば、反射光学系によって形成され、カップラ104からの光を反射光学系により反射することにより検出器120に導いてもよい。参照光学系110は、透過光学系によって形成されてもよい。この場合、参照光学系110は、カップラ104からの光を戻さず透過させることにより検出器120へと導く。
なお、測定光路と参照光路の少なくともいずれかには、測定光と参照光との光路長差を調整するための光学部材が配置されてもよい。例えば、コリメータレンズ154とカップラ153とが一体的に移動されることで、測定光の光路長が調整され、結果として、測定光と参照光との光路長差が調整されてもよい。もちろん、参照光路に配置された光学部材が移動されることによって、結果として、測定光と参照光との光路長差が調整されてもよい。
本実施例において、参照光学系110として、複数の参照光路が設けられてもよく、例えば、第1参照光路110aと、第2参照光路110bとが設けられてもよい。
参照光学系110には、例えば、参照光路を、第1参照光路110aと、第2参照光路110bと、に分割するための光分割器(例えば、カップラ111)が設けられてもよい。第1参照光路110aと、第2参照光路110bと、の少なくともいずれかには、例えば、参照光の光路長を変更するために移動される光学部材112が設けられてもよい。光学部材112は、制御部70によって制御される図示なき駆動部によって移動されてもよい。
例えば、カップラ104からの参照光は、カップラ111によって第1参照光路110aと第2参照光路110bに分割される。第1参照光路110aを経由した参照光は、カップラ350aにて、光ファイバー115からの測定光と合波されて干渉する。第2参照光路110bを経由した参照光は、カップラ350bにて、光ファイバー117からの測定光と合波されて干渉する。
第1参照光路110aと、第2参照光路110bは、互いに異なる光路長に設定されてもよい。これによって、例えば、互いに異なる深さ領域に対応する干渉信号を同時に取得でき、結果として、広範囲のOCTデータを同時に取得できる。
例えば、第1参照光路110aが、被検眼Eにおける第1の深さ領域(例えば、水晶体、眼底)に対応する干渉信号を得るために設けられ、第2参照光路110bが、被検眼Eにおける第2の深さ領域(例えば、角膜)に対応する干渉信号を得るために設けられてもよい。この場合、第2の深さ領域は、第1の深さ領域に対して異なる領域に設定される。この場合、第1の深さ領域と第2の深さ領域は、互いに分離した領域であってもよいし、互いに隣接した領域であってもよいし、一部が重複した領域であってもよい。
なお、第1参照光路110aと、第2参照光路110bは、同じ光路長に設定されてもよい。これによって、例えば、同一の深さ領域に対応する干渉信号を同時に取得でき、結果として、同一領域に関する複数のOCTデータを同時に取得できる。
<光検出器>
検出器120は、測定光路からの光と参照光路からの光による干渉を検出するために設けられている。なお、検出器120は、受光素子であってもよく、例えば、受光部が1つのみからなるポイントセンサであって、例えば、アバランシェ・フォト・ダイオードが用いられてもよい。
本実施例では、検出器120として、第1検出器120aと、第1検出器120aとは異なる第2検出器120bと、が設けられてもよい。第1検出器120aは、第1参照光路110aからの参照光と、光ファイバー115からの測定光と、による第1干渉信号を検出するための検出器として設けられてもよい。第2検出器120bは、第2参照光路110bからの参照光と、光ファイバー117からの測定光と、による第2干渉信号を検出するための検出器として設けられてもよい。この場合、第1検出器120aにて第1干渉信号を検出すると同時に、第2検出器120bにて第2干渉信号を検出することによって、第1干渉信号と第2干渉信号を同時に検出可能である。これらの検出器のサンプリング速度は、互いに異なっていても良いし、同じであっても良い。
なお、第1検出器120a、第2検出器120bは、それぞれ平衡検出器であってもよい。この場合、第1検出器120a、第2検出器120bは、複数の受光素子をそれぞれ備え、第1受光素子からの干渉信号と第2受光素子からの干渉信号との差分を得て、干渉信号に含まれる不要なノイズを削減できる。
<FPN生成光学系>
図2は、本実施例に係るFPN生成光学系の一例を示す図である。FPN生成光学系200は、FPN信号を生成するために設けられてもよい。FPN生成光学系200は、FPNを発生させる光学部材(例えば、第1の光学部材204又は第2の光学部材206)を少なくとも1つ備えてもよい。本実施例において、FPN生成光学系200は、測定光が被検眼Eに向かう光路から分岐された位置に配置されている。
FPN生成光学系200としては、例えば、反射光学系であってもよく、FPN発生用光学部材としては、例えば、光反射部材(例えば、ミラー)が用いられてもよい。なお、本実施例では、第1のFPN発生用光学部材204、第2のFPN発生用光学部材206としてミラーが用いられているが、これに限定されない。また、本実施例においては、FPNを発生させる光学部材を複数設けたが、これに限定されず、FPN生成光学系200は、FPNを発生させる光学部材を1つ備える構成であってもよい。
第1検出器120aには、第1干渉信号と共にFPN信号が検出され、第2検出器120bには、第2干渉信号と共にFPN信号が検出される。FPN信号は、例えば、第1干渉信号に基づく第1OCTデータと、第2干渉信号に基づく第2OCTデータとの合成(詳しくは後述する)、各干渉信号の波数マッピング補正、偏光調整等に用いられてもよい。
例えば、FPN生成光学系200は、第1のFPN信号と第2のFPN信号を生成するために設けられてもよい。例えば、FPN生成光学系200は、第1のFPNを発生させる第1の光学部材204と、第2のFPNを発生させる第2の光学部材206と、を少なくとも備えてもよい。第2の光学部材206は、第2の光学部材を経由した光が、第1の光学部材204を経由した光による光路長とは異なるように配置されてもよい。これによって、第2のFPNは、第1のFPNに対して異なる位置に発生される。なお、後述するゼロディレイ位置は、OCTデータ上において、測定光の光路長と参照光の光路長とが一致する位置に対応する。
第1の光学部材204と第2の光学部材206とが同時に使用されることによって、2つのFPN信号を同時に生成することが可能であり、これによって、2つのFPN信号を処理する際の時間的なずれの影響を軽減できる。なお、FPN光学系200は、3つ以上のFPN発生用光学部材を備えてもよく、これらが同時に使用されることによって、3つ以上のFPN信号を同時に生成することが可能である。
この場合、カップラ130からの光は、第1の光学部材204又は第2の光学部材206を経由した後、カップラ130に戻され、導光光学系150からの光と同様の経路を経て、カップラ350a,カップラ350bに達する。FPN生成光学系200からの光は、カップラ350a,350bにて参照光と合波されて干渉する。なお、光源102~FPN生成光学系200~カップラ350a,350bの光路長と、光源102~参照光学系110~カップラ350a,350bまでの光路長は、ほぼ同じ長さに設定されてもよい。
例えば、第1の光学部材204を経由した光が参照光と干渉することによって、第1のFPNに対応する干渉信号光が生成され、検出器120には第1のFPN信号が生成され、第2の光学部材206を経由した光が参照光と干渉することによって、第2のFPNに対応する干渉信号光が生成され、検出器120には第2のFPN信号が生成される。結果として、例えば、検出器120には、第1のFPN信号と第2のFPN信号の両方が同時に検出される。
FPN信号を所定の処理に用いる場合、検出器120a、検出器120bのそれぞれにおいて、第1のFPN信号と第2のFPN信号の両方が同時に検出されてもよいし、検出器120aにおいて一方のFPN信号が検出され、検出器120bにおいて他方のFPN信号が検出されてもよい。また、検出器120a、検出器120bの一方において、第1のFPN信号と第2のFPN信号の両方が同時に検出され、検出器120a、検出器120bの他方において第1のFPN信号と第2のFPN信号の一方が検出されてもよい。また、検出器120a、検出器120bの一方において、少なくとも一つのFPN信号が検出され、また、検出器120a、検出器120bの他方において、FPN信号が検出されなくてもよい。
なお、FPN生成光学系200には、光量モニタ210が配置されてもよく、光源102からの光は、ビームスプリッタ208を介して光量モニタ210によって検出される。光量モニタ210からの出力信号は、光源102の出射光量が適正か否かを判定するために用いられてもよい。
FPN生成光学系200は、例えば、第1の光学部材204を備える第1の光路203と、第2の光学部材206を備える第2の光路205とを少なくとも備えてもよい。ここで、第1の光路203と第2の光路205との間において、第1の光路203の光路長と第2の光路205の光路長が異なることによって、第2のFPNは、第1のFPNとは異なる位置に生成される。例えば、第2の光路205の光路長が第1の光路203の光路長よりも長いことによって、第2のFPNは第1のFPNよりもゼロディレイから離れた位置に生成される。
FPN生成光学系200は、光路分割部材202(例えば、ビームスプリッタ)を備えてもよく、光路分割部材202は、光源側の光路を、第1の光路203と第2の光路205とに分割するために設けられてもよい。第1の光学部材204は、光路分割部材202によって分割された第1の光路203に配置されており、第2の光学部材206は、光路分割部材202によって分割された第2の光路に配置されている。
第1の光路203と第2の光路205は、互いに異なる光路長を持つ。つまり、光路分割部材202の分岐位置から第1の光学部材204までの光路長と、光路分割部材202の分岐位置から第2の光学部材206までの光路長は異なる。この結果として、第1の光学部材204によって形成される第1のFPNと、第2の光学部材206によって形成される第2のFPNは、OCT画像上において深さ方向に異なる位置に形成される。なお、深さ方向における第1のFPNと第2のFPNとの間の距離は、第1の光路203と第2の光路205との間の光路長差に起因する。
また、第1の光路203と第2の光路205は、互いに等しい光学的分散量に設定(構築)されている。この結果として、第1のFPNを用いて算出される各波数成分のマッピング情報(以下、第1の波数マッピング情報)と、第2のFPNを用いて算出される各波数成分のマッピング情報(以下、第2の波数マッピング情報)との間の差分に基づいて、各波数成分のマッピング状態を補正するための補正情報を演算により求める際、各マッピング情報に含まれる分散成分を適正にキャンセルできるので、補正情報を精度よく求めることができる。この場合、互いに等しい分散量としては、厳密に同一である必要は必ずしもなく、一定の精度を確保し、分散成分を適正にキャンセルできればよい。
なお、FPN生成光学系200の光路に遮光部材又は減光部材が配置されることによって、被検眼Eの観察又は撮影に用いるOCTデータのFPN信号を軽減するようにしてもよい。この場合、第1の光路と第2の光路との少なくともいずれかが遮光又は減光されることで、OCTデータ上でのFPN信号を軽減するようにしてもよい。これらは、診断・観察等に用いるOCTデータを得る場合において有効である。また、これに限定されず、OCTデータに含まれるFPN信号を信号処理によって除去するようにしてもよい。
例えば、FPN生成光学系200の光路には、第1の光路を遮光するための第1の遮光部材210と、第2の光路を遮光するための第2の遮光部材212と、が各光路に対して挿脱可能に配置されてもよい。
<光量分岐比>
ここで、カップラ130は、カップラ104からの光を、導光光学系150の光路とFPN生成光学系200の光路に分割すると共に、導光光学系150及びFPN生成光学系200からの光を、第1検出器350aへと向かう光路(例えば、光ファイバー115~カップラ350a)と、カップラ104へと向かう光路(例えば、光ファイバー105~カップラ104~光ファイバー117~カップラ350b)と、に分割する。
光ファイバー105からの光を分割する際のカップラ130の光量分割比S1は、導光光学系150よりもFPN生成光学系200に多くの光が導かれるように設定されてもよい。この場合、ファイバー105からの光がカップラ130によって分割される光量比は、導光光学系150<FPN生成光学系200となる。
導光光学系150からの光を分割する際のカップラ130の光量分割比S2は、光量分割比S1に依存する。この結果、導光光学系150からの光に関し、第1検出器120aに向かう光路よりも、第2検出器120bに向かう光路に、多くの光が導かれる。この場合、導光光学系150からの光がカップラ130によって分割される光量比は、第1検出器120aに向かう光路<カップラ104に向かう光路となる。
第1検出器120aに向かう光路を経由した測定光は、第1参照光路110aからの光と干渉した後、第1検出器120aにて第1干渉信号として検出される。一方、カップラ104に向かう測定光は、カップラ104によって、光源102に向かう光路と、第2検出器120bに向かう光路(例えば、光ファイバー117~カップラ350b)に分割される。カップラ130からの光を分割する際の光量分割比S4は、光源102からの光を測定光路と参照光路とに分割する際の光量分割比S3に依存する。光量分割比S3が、測定光路よりも参照光路に多くの光が導かれるように設定された場合、カップラ130からの光がカップラ104によって分割される光量比は、光源102に向かう光路<第2検出器120bに向かう光路となる。この結果、カップラ130からの光に関し、光源102に向かう光路よりも、第2検出器120bに向かう光路に多くの光が導かれる。第2検出器120bに向かう光路を経由した測定光は、第2参照光路110bからの光と干渉した後、第2検出器120bにて第2干渉信号として検出される。
上記構成をまとめると、カップラ130の光量分割比S2に関して、第1検出器120aに向かう光路<カップラ104に向かう光路であり、カップラ104の光量分割比S4に関して、光源102に向かう光路<第2検出器120bに向かう光路にて設定されている。
この結果として、第1検出器120aにて検出される第1干渉信号と、第2検出器120bにて検出される第2干渉信号と、を適度なバランスにて検出できる。つまり、カップラ104を経由して第2検出器120bに向かう光路の場合、導光光学系150からの光は、複数の光分割器(例えば、カップラ130、カップラ104)を経由するので、光量減衰の回数が多いのに対し、第1検出器120aに向かう光路の場合、導光光学系150からの光は、カップラ130を経由して第1検出器120aに達するので、光量減衰の回数が相対的に少ない。
そこで、カップラ130の光量分割比S2に関して、第1検出器120aに向かう光路<カップラ104に向かう光路であり、カップラ104の光量分割比S4に関して、光源102に向かう光路<第2検出器120bに向かう光路であることで、光量減衰が複数回行われたとしても、光量減衰を軽減でき、結果として、第1検出器120aと第2検出器120bとの間で信号強度の差異を少なくできる。したがって、第1検出器120aによって得られるOCTデータと第2検出器120bによって得られるOCTデータとの信号強度の差異が少なくなり、それぞれ適正なOCTデータを取得できる。
なお、カップラ130の光量分割比S2と、カップラ104の光量分割比S4に関して、第1検出器120aに向かう光路と第2検出器120bに向かう光路との光量比が同一となるように設定されてもよい。その一例としては、カップラ130の光量分割比S2に関して、第1検出器120aに向かう光路:カップラ104に向かう光路=6:4、カップラ102の光量分割比S4に関して、光源102に向かう光路:第2検出器120bに向かう光路=1:2となるように設定されてもよい。
上記に限定されず、カップラ130の光量分割比S2と、カップラ104の光量分割比S4に関して、第1検出器120aと第2検出器120bによって検出されるOCTデータの撮影部位での反射光量の違いを考慮して、光量分割比が設定されてもよい。つまり、被検眼Eの角膜からの反射光は反射光量が大きいが、被検眼Eの水晶体及び眼底からの光は反射光量が相対的に少ない。そこで、撮影部位による反射光量比を考慮して、結果として、第1検出器120aと第2検出器120bとの間でのOCTデータの信号強度が同一となるように、カップラ130の光量分割比S2と、カップラ104の光量分割比S4が設定されてもよい。
なお、本実施例において、導光光学系150からの光を複数の検出器に導光させる際、1つの光分割器(例えば、カップラ130)を介して第1検出器120aに向かう光と、複数のカップラ(例えば、カップラ130、カップラ104)を介して第2検出器120bに向かう光に分けたのは、導光光学系150からの光をより多く効率的に各検出器へと導かせるためである。このような光学配置は、光源120の出射光量が限られており、被検眼Eからの反射光が微弱であるような場合に、特に有利である。
<偏波調整機構>
本実施例のOCT光学系100においては、複数の偏光調整部が設けられてもよく、例えば、OCT光学系100の光路には、第1偏光調整部300、第2偏光調整部302、第3の偏光調整部304が設けられてもよい(図1参照)。
第1偏光調整部300は、第1参照光路110aの光路に配置され、第1参照光路110aを経由する参照光の偏光状態を調整するために設けられてもよい。第2偏光調整部302は、第2参照光路110bの光路に配置され、第2参照光路110bを経由する参照光の偏光状態を調整するために設けられてもよい。第3の偏光調整部304は、FPN生成光学系200の光路に配置され、FPN生成光学系200の光路を経由する光の偏光状態を調整するために設けられてもよい。
<深さ情報の取得>
光源102により出射波長が変化されると、これに対応する干渉信号光が検出器120に受光され、結果的に、スペクトル信号として検出器120によって検出される。制御部70は、検出器120によって検出されたスペクトル信号を処理(フーリエ解析)し、被検眼のOCTデータを得る。
スペクトル信号(スペクトルデータ)は、波長λの関数として書き換えられ、波数k(=2π/λ)に関して等間隔な関数I(k)に変換されてもよい。あるいは、初めから波数kに関して等間隔な関数I(k)として取得されてもよい(K-CLOCK技術)。制御部70は、波数k空間でのスペクトル信号をフーリエ変換することにより、深さ(Z)領域におけるOCTデータを得てもよい。
さらに、フーリエ変換後の情報は、Z空間での実数成分と虚数成分を含む信号として表されてもよい。制御部70は、Z空間での信号における実数成分と虚数成分の絶対値を求めることによりOCTデータを得てもよい。
本実施例では、制御部70は、第1検出器120aによって検出された第1干渉信号を処理して第1OCTデータを得ると共に、第2検出器120bによって検出された第2干渉信号を処理して第2OCTデータを得てもよい。ここで、第1参照光路110aと第2参照光路110bとが異なる光路長に設定される場合、第1OCTデータと第2OCTデータは、深さ方向に関して少なくとも一部が異なる領域のOCTデータが取得され、第1参照光路110aと第2参照光路110bとが同じ光路長に設定される場合、第1OCTデータと第2OCTデータは、深さ方向に関して同じ領域のOCTデータが取得される。
<制御系>
制御部70は、CPU(プロセッサ)、RAM、ROM等を備えてもよい(図1参照)。例えば、制御部70のCPUは、OCT装置1の制御を司ってもよい。制御部70のRAMは、各種情報を一時的に記憶する。制御部70のROMには、OCT装置1の動作を制御するための各種プログラム、初期値等が記憶されてもよい。
制御部70には、記憶部としての不揮発性メモリ(メモリ)72、表示部75、等が電気的に接続されてもよい。メモリ72には、電源の供給が遮断されても記憶内容を保持できる非一過性の記憶媒体が用いられてもよい。例えば、ハードディスクドライブ、フラッシュROM、および、OCT装置1に着脱可能に装着されるUSBメモリ等を使用することができる。メモリ72には、OCTデータの取得及びOCT画像の撮影を制御するための制御プログラムが記憶されてもよいし、FPNを用いてOCT画像を合成するための演算処理プログラム、各波数成分のマッピング状態を補正するための補正情報を得る演算処理プログラム、等が記憶されてもよい。また、メモリ72には、OCTデータから生成されるOCT画像の他、撮影に関する各種情報が記憶されてもよい。表示部75は、OCTデータから生成されるOCT画像を表示してもよい。
<FPNを用いた画像合成>
制御部70は、第1干渉信号に基づく第1OCTデータと、第2干渉信号に基づく第2OCTデータとを、第1検出器120aによって検出されたFPN信号と第2検出器120bによって検出されたFPN信号とに基づいて合成することによって合成OCTデータを得てもよい(図3~図5参照)。つまり、FPN信号は、複数のOCTデータを合成するための基準信号として用いられてもよい。ここで、第2OCTデータは、第1OCTデータに対して被検眼上の深さ領域の少なくとも一部が異なってもよい。
一例としては、FPN生成光学系200においてFPN発生用の光学部材(例えば、光学部材204、206)の配置位置は既知であるから、第1OCTデータと第2OCTデータとの位置関係を、FPN信号を用いて設定してもよい。これによって、第1OCTデータと第2OCTデータとの位置関係を適正に設定できる。なお、本実施例では、第1OCTデータが第1検出器120aにて検出されると同時に、第2OCTデータが第2検出器120bにて検出されるので、被検眼の移動などによる位置ズレも軽減できる。
例えば、FPN生成光学系200は、第1のFPNを発生させる第1の光学部材(例えば、第1の光学部材204)と、第1のFPNとは異なる位置に第2のFPNを発生させる第2の光学部材(例えば、第2の光学部材206)と、を少なくとも備え、少なくとも2つのFPN信号を生成するためのFPN生成光学系であってもよい。
図3と図4はFPN信号を用いて複数のOCTデータを合成する場合のデータの一例を示す図であり、図3は合成前、図4は合成後のイメージ図である。FPN1は第1の光学部材204によって生成されたFPN信号であり、FPN2は第2の光学部材206によって生成されたFPN信号である。
図3においては、第1OCTデータにFPN1が形成され、第2OCTデータにFPN2が形成される。第1OCTデータは、第1参照光路110a及び第1検出器120aを用いて取得され、第2OCTデータは、第2参照光路110b及び第2検出器120bを用いて取得されてもよい。
FPN信号を用いてOCTデータ間の位置関係を設定する場合、制御部70は、例えば、第1OCTデータに含まれるFPN1と第2OCTデータに含まれるFPN2を用いてOCTデータ間の位置関係を設定してもよい。ここで、制御部70は、深さ方向におけるFPNの位置を検出し、FPNの検出位置を基準として複数のOCTデータを合成してもよい(図4参照)。
ここで、第1の光学部材204と第2の光学部材206との間の位置関係は既知であるから(例えば、光路長ΔD)、制御部70は、第1OCTデータと第2OCTデータとを合成する場合、FPN1とFPN2の位置を検出し、FPN1の検出位置とFPN2の検出位置とが光路長ΔD分離間するように合成してもよい。なお、複数のOCTデータ間の重複部分に関する合成について、いずれか一方のOCTデータを用いるようにしてもよいし、両方のOCTデータの平均を求めるようにしてもよい。
制御部70は、上記のようにして合成された合成OCTデータに基づいて被検眼Eの寸法(例えば、前房深度、眼軸長等)を測定してもよく、さらに、得られた測定結果を表示部75上に表示してもよい。
図5は、FPN信号を用いて複数のOCTデータを合成する場合のデータの変容例を示す図であり、第3のOCTデータには、FPN1とFPN2が形成されている。ここで、第3のOCTデータは、第1参照光路110a及び第1検出器120aを用いて取得されてもよく、第1参照光路110aの光路長が調整されることで、第3のOCTデータが取得されてもよい。
ここで、制御部70は、第3のOCTデータを利用して、第1OCTデータと第2OCTデータとの位置関係を設定してもよい。この場合、制御部70は、例えば、第1OCTデータ上でのFPN1の検出位置と、第3のOCTデータ上でのFPN1の検出位置が、深さ方向に関して同じ位置となるように位置関係を設定してもよく、さらに、制御部70は、例えば、第2OCTデータ上でのFPN2の検出位置と、第3のOCTデータ上でのFPN2の検出位置が、深さ方向に関して同じ位置となるように位置関係を設定してもよい。これによれば、仮に、FPN発生用の光学部材の位置が経年変化によって変動したとしても、実際の位置関係を利用できるので、第1OCTデータと第2OCTデータとの位置関係をより安定的に設定可能である。
なお、深さ方向におけるFPNの位置を検出する場合、例えば、制御部70は、検出器120a、120bにて取得されたOCTデータを処理し、FPN発生用の光学部材(例えば、第1の光学部材204又は第2の光学部材206)によるFPN信号を抽出してもよい。FPN信号の信号強度は既知であるから、制御部70は、例えば、OCTデータの各輝度信号に対し、FPN信号を得るために設定された閾値を超えるか否を判定することによって、FPN発生用の光学部材に対応するFPN信号(基準信号)を抽出できる。なお、FPN1とFPN2は、既知の配置を利用して判別可能である。
なお、上記手法に限定されず、図5の第3のOCTデータを第1OCTデータとし、図5の第2OCTデータとして、これらを合成するようにしてもよい(図6参照)。この場合、第1OCTデータには、FPN1とFPN2が形成され、第2OCTデータには、FPN2が形成される。第1OCTデータは、第1参照光路110a及び第1検出器120aを用いて取得され、第2OCTデータは、第2参照光路110b及び第2検出器120bを用いて取得されてもよい。
この場合、制御部70は、FPN2の位置を検出し、その検出位置を利用してOCTデータ間の位置関係を設定してもよいし、第1OCTデータのFPN2と、第2OCTデータのFPN2とを画像処理によってマッチングさせることによって位置関係を設定してもよい。この場合、制御部70は、合成OCTデータにおいて、第1OCTデータのFPN1と第2OCTデータのFPN1とが深さ方向において一致するように合成を行ってもよい。
なお、本実施例において、FPN生成光学系200について、第1の光学部材204が配置された第1の光路203と、第2の光学部材206が配置された第2の光路205は、互いに等しい光学的分散量に設定(構築)されている。この結果として、FPNによるPSF信号は相似形となるので、例えば光源の質が悪く、PSFが単峰性でない場合などでも、相応するピーク位置を検出しやすく、離間を容易に決定することが出来る。
また、図6のように、一つのFPNを用いて画像合成を行う一例として考えることも可能である。FPN1の生成は必ずしも必須ではない。つまり、本実施例のFPN生成光学系200が、一つのFPN発生用の光学部材を備える場合であっても、画像合成は可能であり、装置の構成の簡略化が可能だが、複数のFPN信号を用いる場合と比較して深さ方向の撮像可能範囲が狭くなると共に、異なるOCTデータ間での重複領域が多くなる。一方、共通領域を設ける場合は、複数のFPN信号を用いることで、深さ方向の撮像可能範囲が広くできると共に、異なるOCTデータ間での重複領域を少なくできる。その他、間に不連続な領域を含んでもよい。この場合も、両者の離間が正確にわかるので、例えば眼の調節機能を調べたりする場合に有用である。
なお、本実施例に係るFPN生成光学系200について、OCTデータの合成に用いるFPN発生用の光学部材(例えば、第1の光学部材204、第2の光学部材206)は空気中に配置されており、その表面反射によって生成されたFPNが画像合成に利用されるため、この結果としてFPNの信号強度(SNR)の低下等を軽減でき、FPNを用いたOCTデータの合成を正確に行うことができる。
なお、FPN信号を得るタイミングとしては、例えば、電源投入時に実施されてもよいし、被検者が変更される毎に実施されてもよい。また、OCT光学系における撮影条件を最適化する最適化制御の際に実施されてもよい。もちろん、これに限定されず、常時実施されてもよい。例えば、制御部は、FPN信号を含むOCTデータを予め取得しておき、予め取得されたFPN信号を用いて、後に取得されたOCTデータの合成、マッピング状態の補正、偏光調整等を行うようにしてもよい。
<制御動作>
以下、上記の構成を備えるOCT装置1の制御動作について説明する。本実施例におけるOCT装置1は、被検眼Eの前眼部におけるOCTデータを取得する前眼部撮影モードと、被検眼Eの眼底におけるOCTデータを取得する眼底撮影モードと、を手動または自動によるモード切換信号に応じて切り換え可能な構成であってもよい。この場合、制御部70は、導光光学系150を制御して、前眼部のOCTデータを取得するための光学配置、あるいは眼底のOCTデータを取得するための光学配置に切り換える。より詳細には、例えば、前眼部撮影モード設定時には、測定光の集光位置が被検眼Eの前眼部上に形成されるように、導光光学系150の光学配置を切り換えてもよい。また、例えば、眼底撮影モード設定時には、測定光の集光位置が眼底上に形成されるように、導光光学系150の光学配置を切り換えてもよい。なお、導光光学系150の光学配置の切り換えに係る構成については、例えば、特開2016-209577号公報を参照されたい。
また、本実施例におけるOCT装置1は、眼底撮影モードとして、被検眼Eの眼底中心部と眼底周辺部を含む広角領域でのOCTデータを取得する広角眼底撮影モードを設定することができる。例えば、上述した通常の眼底撮影モードと、広角眼底撮影モードと、は切り換え可能な構成であってもよい。また、例えば、広角眼底撮影モードにおいては、光スキャナ156による眼底上での測定光の走査範囲が、眼底の中心部と周辺部を含む広角領域に設定されてもよい。この場合、広角撮影用のレンズアタッチメントが用いられてもよい。以下の実施例においては、検者が広角眼底撮影モードを設定し、被検眼Eの眼底中心部と眼底周辺部のOCTデータを取得する場合を例に挙げる。
<被検眼のアライメント>
検者は、図示なき固視標投影系が備える固視標を注視するよう被検者に指示する。被検眼Eには、図示なき指標投影系の光源が点灯することにより、アライメント指標像が投影される。また、被検眼Eの前眼部は、図示なき正面像撮像系によって検出され、その前眼部観察像がモニタ75に表示される。例えば、制御部70は、アライメント指標像を用いて被検眼Eと導光光学系150とのアライメント状態を検出し、被検眼Eの角膜頂点位置(または、略角膜頂点位置)と測定光軸とを一致させる自動アライメントを行う。なお、被検眼Eに対する導光光学系150のアライメントは、検者が図示なきジョイスティック等の操作部材を操作することにより、手動で被検眼Eの角膜頂点位置と測定光軸とを一致させる構成としてもよい。
<撮影モードの設定>
被検眼Eのアライメントが完了すると、検者はモニタ75に表示された図示なきモード選択ボタンを操作して、広角眼底撮影モードを設定する。もちろん、アライメント完了の出力信号に応じて、制御部70が自動で広角眼底撮影モードを設定してもよい。広角眼底撮影モードが設定されると、制御部70は、測定光と参照光の少なくともいずれかの光路長を調整する。例えば、本実施例において、参照光の光路長は、被検眼Eの眼底中心部を含む後述の第1OCTデータを得るために設定された光路長を有する第1参照光路110aであってもよい。また、参照光の光路長は、被検眼Eの眼底周辺部を含む後述の第2OCTデータを得るために設定された光路長を有する第2参照光路110bであってもよい。例えば、制御部70は、測定光と、第1参照光路110aによる第1参照光と、の第1干渉信号が第1検出器120aから検出されるように光路長を設定し、測定光と、第2参照光路110bによる第2参照光と、の第2干渉信号が第2検出器120bから検出されるように光路長を設定してもよい。
ここで、眼は眼球を中心として球状となっており、眼底は眼底中心部を底部とする凹形状となっているところ、測定光は瞳孔中心付近を中心に旋回され眼底を走査される。この場合、走査中心から眼底中心部までの光路長よりも、走査中心から眼底周辺部までの光路長の方が短くなる。通常、干渉信号を得る際の深さ方向の撮像可能範囲はゼロディレイ位置から所定距離であり、眼底を広角に走査した場合には、深さ方向に関して撮像可能範囲から外れてしまう可能性がある。
そこで、例えば、眼底中心部と眼底周辺部との間の光路長差を考慮して第1参照光路110aと第2参照光路110bとの間の光路長差が設定されるとともに、被検眼眼底に対して測定光と参照光の光路長差が調整されることで、検出器120は眼底中心部からの第1干渉信号と、眼底周辺部からの第2干渉信号と、を検出可能になる。この場合、例えば、第1参照光路110aの光路長が、眼底中心部からの測定光の光路長に合わせて設定され、第2参照光路110bの光路長が、眼底周辺部からの測定光の光路長に合わせて設定されてもよい。また、この場合、眼球形状を考慮し、眼底周辺部に対応する参照光路110bの方が、眼底中心部に対応する参照光路110aよりも光路長が短く設定されてもよい。もちろん、場合によっては、眼底周辺部に対応する参照光路110bの方が、眼底中心部に対応する参照光路110aよりも光路長が長く設定されてもよい。
例えば、このように、第1参照光路110aの光路長と、第2参照光路110bの光路長と、を適切に設定することで、第1検出器120aは、被検眼Eの眼底中心部に導かれた測定光と、第1参照光路110aによる第1の参照光と、による第1干渉信号を検出することができる。また、第2検出器120bは、被検眼Eの眼底周辺部に導かれた測定光と、第2参照光路110bによる第2の参照光と、の第2干渉信号を検出することができる。なお、第1検出器120aが検出した第1干渉信号は、第1スペクトル干渉信号として第1検出器120aから制御部70へと出力される。また、第2検出器120bが検出した第2干渉信号は、第2スペクトル干渉信号として第2検出器120bから制御部70へと出力される。
<撮影条件の調整>
例えば、制御部70は、第1干渉信号の検出によって第1検出器120aから出力される第1スペクトル干渉信号と、第2干渉信号の検出によって第2検出器120bから出力される第2スペクトル干渉信号と、に基づいて、第1OCTデータ及び第2OCTデータを取得するための撮影条件を調整する。例えば、撮影条件の調整としては、測定光と第1参照光との光路長差及び測定光と第2参照光との光路長差を調整する光路長調整が行われてもよい。被検眼Eの眼底中心部及び眼底周辺部に対する合焦位置を調整するフォーカス調整が行われてもよい。測定光と第1参照光との偏光状態及び測定光と第2参照光との偏光状態を調整するポラライザ調整が行われてもよい。
例えば、本実施例においては、第1自動光路長調整、フォーカス調整、第2自動光路長調整、ポラライザ調整、の順に最適化制御を行うことで、撮影条件が調整される。例えば、制御部70は、カップラ153及びコリメータレンズ154の位置を初期位置に設定する。また、例えば、制御部70は、フォーカスレンズ155を初期位置に設定する。このような初期化が完了すると、制御部70は、カップラ153及びコリメータレンズ154を一体的に初期位置から一方向に移動させ、第1光路長調整(第1自動光路長調整)を行う。第1光路長調整が完了すると、制御部70は、被検眼Eの眼底中心部及び眼底周辺部に合焦するように、フォーカスレンズ155を初期位置から一方向に移動させ、フォーカス調整(オートフォーカス調整)を行う。フォーカス調整が完了すると、制御部70は、カップラ153及びコリメータレンズ154を一体的に移動させ、光路長を再調整(微調整)するための第2光路長調整(第2自動光路長調整)を行う。第2光路長調整が完了すると、制御部70は、干渉信号を強く検出できる位置(すなわち、測定光と参照光との偏光状態が合う位置)に第1偏光調整部300及び第2偏光調整部302移動させ、ポラライザ調整を行う。なお、光路長調整と、フォーカス調整と、ポラライザ調整と、は少なくともいずれかが行われる構成であってもよい。例えば、これらを調整して撮影条件を最適化することで、検者は所望の撮影部位を高感度・高解像度で観察できるようになる。
以下、フォーカス調整を行う場合を例に挙げて、撮影条件の最適化についてより詳細に説明する。図7はフォーカスレンズ155の移動方向を説明する図である。例えば、制御部70は、広角眼底撮影モードが設定されると、導光光学系150に配置されたフォーカスレンズ155の初期化を開始して、フォーカスレンズ155を初期位置に配置する。例えば、初期位置としては、初期化を開始する以前に配置されていたフォーカスレンズ155の位置から、移動限界位置K1または移動限界位置K2により近い側の位置が選択されるようにしてもよい。例えば、移動限界位置とは、光軸上におけるフォーカスレンズ155の可動範囲の限界位置である。例えば、これによって、本実施例では、フォーカスレンズ155が移動限界位置K1を初期位置として配置される。もちろん、制御部70は、異なる基準に基づいて、移動限界位置K1または移動限界位置K2のいずれかをフォーカスレンズ155の初期位置として選択してもよい。なお、フォーカスレンズ155の初期位置は、移動限界位置とは異なる位置(例えば、可動範囲の中央等)であってもよい。
例えば、制御部70は、フォーカスレンズ155を光軸方向に移動させることによって、被検眼Eに対するフォーカスを調整する。例えば、本実施例においては、フォーカスレンズ155が移動限界位置K2に近づく方向(すなわち、図7における矢印A方向)に移動される。なお、OCT光学系100において、フォーカスレンズ155は、第1検出器120aに向かう光路を経由する測定光(すなわち、被検眼Eの眼底中心部からの測定光)と、第2検出器120bに向かう光路を経由する測定光(すなわち、被検眼Eの眼底周辺部からの測定光)と、における共通の光路中に設けられている。このため、制御部70は、被検眼Eの眼底中心部及び眼底周辺部に対する合焦位置を、共通のフォーカス部材(つまり、フォーカスレンズ155)の駆動によって、同時に調整することができる。
例えば、制御部70は、フォーカスレンズ155の各移動位置において、第1スペクトル干渉信号及び第2スペクトル干渉信号をそれぞれ取得する。フォーカスレンズ155の移動は、予め設定された所定のステップ毎(例えば、0.5D毎、等)であってもよいし、検者が任意に設定したステップ毎であってもよい。例えば、制御部70は、フォーカスレンズ155の移動にともなって、第1検出器120aから出力される第1スペクトル干渉信号と、第2検出器120bから出力される第2スペクトル干渉信号と、のそれぞれを連続的に取得する。
例えば、制御部70は、フォーカスレンズ155の移動にともなって連続的に取得される第1スペクトル干渉信号と第2スペクトル干渉信号との信号強度に基づいて、後述する第1OCTデータ及び第2OCTデータを取得するための撮影条件を調整してもよい。なお、本実施例においては、第1スペクトル干渉信号と第2スペクトル干渉信号の信号強度として、それぞれを処理することで取得した第1OCTデータと第2OCTデータの輝度情報に基づいて、撮影条件を調整する場合を例に挙げて詳細を説明する。なお、撮影条件の調整は、第1スペクトル干渉信号と第2スペクトル干渉信号との信号強度に基づいて取得されたS/N比(Signal to Noise ratio)、特定信号(例えば、COSTラインや疾患部位)における鮮鋭度、コントラスト情報、ハレーションの有無もしくは面積、等の少なくともいずれかに基づいて行われてもよい。
<評価値の算出>
例えば、制御部70は、第1OCTデータと、第2OCTデータと、のそれぞれから輝度値を求め、これを用いてそれぞれの評価値Bを算出する。例えば、評価値Bは各OCTデータの信号強度を示す指標であり、B=((OCT画像の平均最大輝度値)-(OCT画像の背景領域の平均輝度値))/(背景領域の輝度値の標準偏差)の式より求めることができる。
ここで、例えば、制御部70は、フォーカスレンズ155を移動させることにより、第1OCTデータ360として、被検眼Eの眼底中心部330を含むOCTデータを取得する。また、例えば、制御部70は、フォーカスレンズ155を移動させることにより、第2OCTデータ370として、被検眼Eの眼底周辺部340を含むOCTデータを取得する。
図8はOCTデータ上を走査する走査線と輝度値の変化を説明する図である。図8(a)は第1OCTデータ360上を走査する走査線を示している。図8(b)は第1OCTデータ360のある走査線上における輝度値の変化を示している。図8(c)は第2OCTデータ370上を走査する走査線を示している。例えば、制御部70は、第1OCTデータ360において、深さ方向(すなわち、Aスキャン方向)に走査する複数の走査線inを設定する。例えば、nは走査線の番号を表しており、10本の走査線を設定した場合、nは1~10のそれぞれの数字となる。
例えば、制御部70は、各走査線inのそれぞれにおいて輝度値の最大値(最大輝度値)を求める。また、例えば、制御部70は、第1OCTデータ360の平均最大輝度値として、各走査線inにおける最大輝度値の平均値を算出する。さらに、例えば、制御部70は、第1OCTデータ360の背景領域の平均輝度値として、各走査線inにおける背景領域の輝度値の平均値を算出する。これによって、制御部70は、前述の式より第1OCTデータ360の評価値B1を求めることができる。
例えば、第2OCTデータ370の評価値B2は、第1OCTデータ360の評価値B1と同様にして求めることができる。すなわち、制御部70は、第2OCTデータ370において深さ方向に走査する複数の走査線inを設定し、各走査線上の輝度値を算出することで、第2OCTデータ370の評価値B2を求めることができる。例えば、制御部70は、フォーカスレンズ155の各移動位置にて取得された第1OCTデータ360の評価値B1及び第2OCTデータ370の評価値B2と、フォーカスレンズ155の移動位置と、を対応付けてメモリ72に記憶する。
なお、第1OCTデータ360と第2OCTデータ370は、被検眼Eにおける測定光の反射率に基づいて取得されているので、眼底中心部330と眼底周辺部340における輝度は高く(明るく)なり、これら以外の部分(すなわち、前述の背景領域)における輝度は低く(暗く)なる。また、被検眼Eの眼底中心部330には測定光が垂直に照射されるが、眼底周辺部340には測定光が垂直に照射されないため、眼底周辺部は眼底中心部に比べて測定光の反射光が散乱しやすく、眼底中心部よりも輝度が低くなる。このため、第2OCTデータ370の評価値B2は、第1OCTデータ360の評価値B1よりも低くなる傾向にある。そこで、例えば、制御部70は、各OCTデータに対して所定のウェイト(重み)を付けて、評価値B1と評価値B2とを算出するようにしてもよい。例えば、このようなウェイトは、予め実験やシミュレーション等の結果に基づいて設定しておいてもよい。また、このようなウェイトは、検者が観察したい眼底領域に応じて、その比率を変更できるようにしてもよい。
図9はフォーカスレンズ155の各移動位置における評価値をグラフに表した図である。図9(a)は光軸上のすべての位置にフォーカスレンズ155を移動させた場合の一例である。図9(b)は後述する駆動制御によりフォーカスレンズ155を停止させた場合の一例である。実線は第1OCTデータ360の評価値B1を示し、点線は第2OCTデータ370の評価値B2を示している。また、縦軸は評価値Bを示し、横軸は光軸上におけるフォーカスレンズ155の移動位置を示している。例えば、制御部70は、初期位置K1から移動限界位置K2に向かってフォーカスレンズ155を移動させる際、すべての範囲にフォーカスレンズ155を移動させることで、図9(a)に示すような評価値B1及び評価値B2の分布を求めてもよい。
また、例えば、制御部70は、初期位置K1から移動限界位置K2に向かってフォーカスレンズ155を移動させる際、第1OCTデータ360の評価値B1と第2OCTデータ370の評価値B2との双方が減少したときには、フォーカスレンズ155の移動を停止してもよい。例えば、この場合、制御部70は、フォーカスレンズ155のある移動位置Knにて取得した各OCTデータの評価値B1n及びB2nと、フォーカスレンズ155を移動位置Knから所定のステップだけ移動させた移動位置Kn+1にて取得した各OCTデータの評価値B1n+1及びB2n+1と、がB1n>B1n+1且つB2n>B2n+1となったときに、フォーカスレンズ155の移動を停止してもよい。つまり、各OCTデータにおける評価値が減少し始めた位置にて、フォーカスレンズ155の移動が停止されてもよい。なお、このとき、制御部70は、評価値B1と評価値B2とが減少し始めても、予め決定されたステップ分(例えば、3ステップ分等)はフォーカスレンズ155を移動させ、評価値が徐々に減少することを認識したうえで、フォーカスレンズ155の移動を停止してもよい。例えば、制御部70は、このような駆動制御により、図9(b)に示すような評価値B1及び評価値B2の分布を求めてもよい。
なお、上記においては、評価値B1と評価値B2との双方が減少した場合にフォーカスレンズ155の移動を停止するようにしているがこれに限定されない。例えば、評価値B1と評価値B2のいずれか一方が減少した場合に、フォーカスレンズ155の移動を停止するようにしてもよい。
<撮影条件の決定>
例えば、制御部70は、上述のようにして、フォーカスレンズ155の各移動位置に対する第1OCTデータ及び第2OCTデータの評価値を算出すると、これに基づいて、撮影時のフォーカスレンズ155の位置を決定する。例えば、撮影時のフォーカスレンズ155の位置は、第1OCTデータ360における評価値B1と、第2OCTデータ370における評価値B2と、を用いて計算される計算値Vが最大となる位置であってもよい。例えば、計算値Vは、各OCTデータの良否を示す指標であり、V=(評価値B1と評価値B2の和)/(評価値B1と評価値B2の差の絶対値)の式より求めることができる。例えば、制御部70は、計算値Vを算出し、その値が最大となる位置にフォーカスレンズ155を移動させてもよい。
また、例えば、撮影時のフォーカスレンズ155の位置は、評価値B1と評価値B2との差の絶対値が最小となる位置であってもよい。例えば、この場合には、予め実験やシミュレーション等を行って、評価値に対する閾値を設定してもよい。例えば、制御部70は、評価値B1と評価値B2とがともに閾値以上となる範囲内において、これらの差分の絶対値を算出し、その差の絶対値が最小となる位置にフォーカスレンズ155を移動させてもよい。
例えば、制御部70は、このようにしてフォーカスレンズ155の位置を調整することで、撮影条件を最適化することができる。
<第1OCTデータ及び第2OCTデータの取得>
例えば、制御部70は、上記のようにして撮影条件を調整すると、被検眼Eの眼底中心部に導かれた測定光と第1参照光との第1干渉信号に基づいて、眼底中心部を含む調整後の第1OCTデータ380を取得する。また、例えば、制御部70は、被検眼Eの眼底周辺部に導かれた測定光と第2参照光との第2干渉信号に基づいて、眼底周辺部を含む調整後の第2OCTデータ390を取得する。
図10は撮影条件を調整した後に取得される第1OCTデータ380と第2OCTデータ390の一例を示す図である。例えば、制御部70は、光スキャナ156を制御し、1回のBスキャンによって眼底中心部330と眼底周辺部340を含む広角領域に測定光を走査することで、撮影条件が調整された後の第1OCTデータ380と第2OCTデータ390とを取得するようにしてもよい。
例えば、水平方向に関して始点Aから終点Dとする1回のBスキャンが行われる場合、始点Aから点B付近の眼底領域が走査されると、第2検出器120bからの出力信号に基づいて、眼底周辺部(左側)からの反射光と参照光とによるOCTデータが取得される。また、第1検出器120aからの出力信号に基づいて、眼底周辺部(左側)に近い眼底中心部からの反射光と参照光とによるOCTデータが取得される。
次に、点B付近から点C付近までの眼底領域が走査されると、第1検出器120aからの出力信号に基づいて、眼底中心部からの反射光と参照光とによるOCTデータが取得される。さらに、点C付近から終点Dまでの眼底領域が走査されると、第2検出器120bからの出力信号に基づいて、眼底周辺部(右側)からの反射光と参照光とによるOCTデータが取得される。また、第1検出器120aからの出力信号に基づいて、眼底周辺部(右側)に近い眼底中心部からの反射光と参照光とによるOCTデータが取得される。
例えば、制御部70は、これによって、撮影条件が調整された後の第1OCTデータ380と第2OCTデータ390とを取得することができる。なお、制御部70は、被検眼眼底上の複数の広角領域に関してBスキャンをそれぞれ行うようにしてもよい(例えば、クロススキャン、マルチラインスキャン、ラジアルスキャン等)。また、制御部70は、被検眼Eの眼底中心部330と眼底周辺部340を含む広角領域を複数回に分けてBスキャンを行い、第1OCTデータ380と第2OCTデータ390とを取得するようにしてもよい。
また、制御部70は、1回のラスタースキャンによって、各走査ラインにて眼底中心部と眼底周辺部を含む広角領域に測定光を走査し、第1の3次元OCTデータと第2の3次元OCTデータを取得するようにしてもよい。この場合、ラスタースキャンを構成する複数の走査ラインに関してそれぞれ測定光が走査される。各走査ラインは、それぞれ広角領域に対応する走査範囲を有してもよい。これによって、広角領域での3次元OCTデータをスムーズに取得できる。この場合、例えば、制御部70は、ラスタースキャンを構成する各走査ラインに関して複数回測定光を走査し、各走査ラインでの時間的に異なる複数のOCTデータに基づいて広角での3次元モーションコントラストOCTデータ(OCTアンジオデータ)を取得してもよい。
なお、1回のBスキャンにおける走査範囲は、図10に示された正面画像に対する走査範囲に限定されるものではなく、さらに広角の眼底領域を走査する場合においても、本実施例の適用が可能であることはいうまでもない。この場合、2つの参照光路が用いられてもよいし、3つ以上の参照光路が用いられてもよい。
<合成OCTデータの取得>
例えば、制御部70は、撮影条件が調整された後の第1OCTデータ380と第2OCTデータ390とを取得すると、これらのOCTデータを合成処理することによって、合成OCTデータ400を取得する。例えば、この場合には、第1OCTデータ380と第2OCTデータ390とが深度方向に関して連続するように合成されてもよい。
図11は合成OCTデータ400の一例を示す図である。例えば、制御部70は、前述のFPN信号を用いた合成処理を行ってもよく、被検眼Eにおける眼底中心部及び眼底周辺部からの測定光の光路長と、FPN生成光学系200を経由した測定光の光路長と、が一致するように、FPN生成光学系200の光路長を設定してもよい。眼底中心部330のOCTデータを含む第1OCTデータ380と、眼底周辺部340のOCTデータを含む第2OCTデータ390と、を取得できるように、測定光と参照光との光路長差が設定された状態において、各OCTデータにFPN信号が含まれるように、FPN生成光学系200が設定されてもよい。
なお、合成処理としては、FPNを用いた処理に限定されず、例えば、制御部70は、第1OCTデータ380と第2OCTデータ390との間の重複領域を用いたマッチング処理によって、第1OCTデータ380と第2OCTデータ390の位置関係を規定してデータ合成を行ってもよい。また、制御部70は、第1参照光路110aと第2参照光路110bとの間の光路長差を利用して第1OCTデータ380と第2OCTデータ390の位置関係を規定してデータ合成を行ってもよい。その際、重複領域がある場合は、感度が高い側の信号を採用しても良いし、ノイズ・アーチファクトが少ない側を採用しても良い。また接続部で急激な変化が生じないように、接続部で各種スムーズ化等の処理がなされても良い。
以上説明したように、例えば、本実施例におけるOCT装置は、第1干渉信号の検出によって第1検出器から出力される第1スペクトル干渉信号と、第2干渉信号の検出によって第2検出器から出力される第2スペクトル干渉信号と、に基づいて、第1OCTデータ及び第2OCTデータを取得するための撮影条件を調整し、撮影条件が調整された後に、眼底中心部に導かれた測定光と第1参照光との第1干渉信号に基づいて眼底中心部を含む第1OCTデータを得るとともに、眼底周辺部に導かれた測定光と第2参照光との第2干渉信号に基づいて眼底周辺部を含む第2OCTデータを得る。これによって、各OCTデータに生じる信号強度の差が小さくなるため、検者はバランスのとれた第1OCTデータと第2OCTデータをそれぞれ取得することができる。
また、例えば、本実施例におけるOCT装置は、第1OCTデータと、第2OCTデータと、を合成処理することによって、合成OCTデータを取得する。これによって、検者は、被検眼Eにおける良好な広角のOCTデータを取得することができる。
<変容例>
なお、本実施例において、第1スペクトル干渉信号と、第2スペクトル干渉信号と、には被検眼Eの所定の領域のスペクトル干渉信号が含まれていてもよい。すなわち、第1スペクトル干渉信号と、第2スペクトル干渉信号と、がどちらも被検眼Eの所定の領域を含むように、第1参照光路110aと第2参照光路110bの光路長差が設定されてもよい。例えば、被検眼Eの所定の領域とは、被検眼Eの疾患部位等であってもよいし、ゼロディレイ位置から一定の深さだけ離れた位置等であってもよい。
例えば、各スペクトル干渉信号が所定の領域を含むことによって、第1OCTデータと第2OCTデータとのそれぞれには重複領域が設けられる。例えば、所定の領域は、被検眼Eにおける深さ方向に設けられてもよいし、横断方向に設けられてもよい。例えば、この場合には、制御部70が、被検眼Eの所定の領域における第1スペクトル干渉信号と、第2スペクトル干渉信号と、に基づいて、第1OCTデータと第2OCTデータとを取得するための撮影条件を調整してもよい。
例えば、このように、本実施例におけるOCT装置は、第1スペクトル干渉信号及び第2スペクトル干渉信号に被検眼の所定の領域のスペクトル干渉信号を含むことによって、第1OCTデータと第2OCTデータのそれぞれに重複領域を設けることができる。また、例えば、本実施例におけるOCT装置は、被検眼の所定の領域における第1スペクトル干渉信号と第2スペクトル干渉信号とに基づいて、第1OCTデータ及び第2OCTデータを取得するための撮影条件を調整する。これによって、第1OCTデータと第2OCTデータについて共通の領域を比較することができるため、撮影条件を容易に調整できるようになる。
なお、本実施例においては、フォーカス調整時(撮影条件の調整時)において連続的に取得した第1OCTデータ360と第2OCTデータ370とがメモリ72に記憶されている。このため、制御部70は、撮影条件の調整後において第1OCTデータ380と第2OCTデータ390とを取得する際に、第1OCTデータ360と第2OCTデータ370とを利用するようにしてもよい。例えば、この場合、制御部70は、フォーカス調整時において連続的に取得された第1OCTデータ360のうち、評価値が最も高くなった第1OCTデータをメモリ72から呼び出して、撮影条件の調整後に取得された第1OCTデータに加算し、これを第1OCTデータ380としてもよい。同様に、制御部70は、フォーカス調整時において連続的に取得された第2OCTデータ370のうち、評価値が最も高くなった第2OCTデータをメモリ72から呼び出して、撮影条件の調整後に取得された第2OCTデータに加算し、これを第2OCTデータ390としてもよい。
もちろん、制御部70は、フォーカス調整時において連続的に取得された各OCTデータのうち、評価値が最も高くなったOCTデータをメモリ72から呼び出し、これを第1OCTデータ380及び第2OCTデータ390として、合成OCTデータ400を取得するための合成処理を行うようにしてもよい。
なお、本実施例においては、撮影条件の調整を輝度情報に基づいて行う構成を例に挙げて説明したがこれに限定されない。例えば、第1OCTデータ380及び第2OCTデータ390を取得するための撮影条件は、第1スペクトル干渉信号と、第2スペクトル干渉信号と、のコントラスト情報に基づいて調整されてもよい。以下、このような場合について、図12を用いて説明する。
図12は第1OCTデータ360上を走査する走査線とコントラスト値の変化を説明する図である。図12(a)は第1OCTデータ360上を走査する走査線を示している。図12(b)は第1OCTデータ360のある走査線上におけるコントラスト値の変化を示している。例えば、制御部70は、第1OCTデータ360において、深さ方向に走査する複数の走査線inを設定すると、各走査線inのそれぞれにおいて、コントラスト値が最大となる最大ピーク位置Zpと、最大ピーク位置Zpにおけるコントラスト値Ip(言い換えると、最大コントラスト値Ip)と、を算出する。また、例えば、制御部70は、最大ピークの立ち上がり位置Zqと、最大ピークの立ち上がり位置Zqにおけるコントラスト値Iqと、を算出する。
例えば、制御部70は、第1スペクトル干渉信号から求めたピーク位置及びコントラスト値を用いて、各走査線inにおける評価値Cを算出する。例えば、評価値Cは、C=(Ip-Iq)/(Zp-Zq)の式より求めることができる。例えば、制御部70は、走査線in毎に算出された評価値Cをすべて加算することにより、第1OCTデータ360の評価値C1を算出してもよい。なお、第2OCTデータ370についての説明は省略するが、第1OCTデータ360の評価値C1と同様にして、第2OCTデータ370の評価値C2を算出することができる。なお、評価値C1及び評価値C2は、第1OCTデータ360と第2OCTデータ370とが互いに接続する深さ位置、あるいは互いに重複する領域の深さ位置に近づくほど、高いウェイトを付けて計算されてもよい。このようなウェイトは、予め実験やシミュレーション等の結果に基づいて設定してもよい。
例えば、制御部70は、フォーカスレンズ155の各移動位置にて取得されたOCTデータに対する評価値C1及び評価値C2を算出すると、フォーカスレンズ155の位置と対応付けてメモリ72に記憶する。また、例えば、評価値C1及び評価値C2を用いて、前述のようにフォーカスレンズ155の移動を制御し、撮影条件を最適化してもよい。
なお、本実施例では、輝度値またはコントラスト値を評価値として用いる構成を例に挙げて説明したがこれに限定されない。例えば、評価値としては、画像の情報量を表す指標である画像エントロピーを用いるようにしてもよい。
なお、本実施例では、共通のフォーカス部材(すなわち、フォーカスレンズ155)を駆動させることで、被検眼Eの眼底中心部330及び眼底周辺部340に対する合焦位置を同時に調整する構成を例に挙げて説明したがこれに限定されない。例えば、被検眼Eの眼底中心部330及び眼底周辺部340に対する合焦位置は、それぞれを独立に調整可能な構成であってもよい。この場合には、測定光路にミラー等を配置して測定光を分割し、分割した2つの光路にフォーカス部材を設けてもよい。これによって、被検眼Eの眼底中心部330に対する合焦位置及び被検眼Eの眼底周辺部340に対する合焦位置がどちらも最適となるように、撮影条件を調整することができる。
なお、本実施例では、フォーカス調整を行うことにより撮影条件を調整する構成を例に挙げて説明したがこれに限定されない。例えば、制御部70は、光路長調整やポラライザ調整を行うことにより撮影条件を調整してもよい。例えば、光路長調整を行う場合、制御部70は、カップラ153とコリメータレンズ154を一体的に移動させることにより、測定光の光路長を調整してもよい。なお、本実施例におけるOCT光学系100では、カップラ153とコリメータレンズ154とが、第1検出器120aに向かう光路を経由する測定光(すなわち、被検眼Eの眼底中心部からの測定光)と、第2検出器120bに向かう光路を経由する測定光(すなわち、被検眼Eの眼底周辺部からの測定光)と、における共通の光路中に設けられている。このため、制御部70は、測定光と第1参照光との光路長差と、測定光と第2参照光との光路長差と、を共通の光学部材(つまり、カップラ153とコリメータレンズ154)の駆動によって、同時に調整することができる。
例えば、上記では、共通の光学部材を駆動させることで、測定光と第1参照光との光路長差と、測定光と第2参照光との光路長差と、を同時に調整する構成を例に挙げているがこれに限定されない。例えば、測定光と第1参照光との光路長差と、測定光と第2参照光との光路長差と、はそれぞれを独立に調整可能な構成であってもよい。この場合には、OCT光学系100における第1参照光路110aにも、第2参照光路110bと同様に光学部材112を配置してもよい。例えば、制御部70は、それぞれの参照光路に設けられた光学部材112を移動させ、参照光の光路長を調整することで、光路長調整を行うようにしてもよい。
また、例えば、ポラライザ調整を行う場合、制御部70は、第1偏光調整部300と第2偏光調整部302とを調整することにより、偏光状態を変更してもよい。なお、本実施例におけるOCT光学系100では、第1偏光調整部300が第1参照光路110aに配置され、第2偏光調整部302が第2参照光路110bに配置されている。このため、制御部70は、第1偏光調整部300を調整することによって、測定光と第1参照光との偏光状態を調整することができる。また、制御部70は、第2偏光調整部302を調整することによって、測定光と第2参照光との偏光状態を調整することができる。
なお、本実施例では、撮影条件の調整としてフォーカス調整のみを行っているが、撮影条件の調整として光路長調整のみ、あるいはポラライザ調整のみを行ってもよい。もちろん、これらが組み合わせて調整されてもよい。例えば、この場合、共通の部材を駆動させる調整(すなわち、光路長調整とフォーカス調整の少なくともいずれか)と、独立の部材を駆動させる調整(すなわち、ポラライザ調整)と、を行うときには、先に共通の部材を駆動させる調整を行い、後に独立の部材を駆動させる調整を行うようにしてもよい。これによって、第1OCTデータと第2OCTデータの双方を同時に調整したうえで、さらにそれぞれのOCTデータに対して微調整を行うことができ、より最適な撮影条件を設定できる。
なお、撮影条件の調整は、光路長調整、フォーカス調整、及びポラライザ調整の他、参照光の光量、被検眼Eの前眼部アライメント機構、被検眼Eのスキャン位置、分散補正部材、等を調整することにより行われてもよい。すなわち、撮影条件の調整は、被検眼Eの撮影に係る光学部材を調整することにより行われてもよい。
なお、本実施例では、フォーカスレンズ155を一方向に移動させる構成を例に挙げて説明したがこれに限定されない。例えば、制御部70は、フォーカスレンズ155の移動にともなって連続的に取得される各OCTデータの評価値に基づいて、フォーカスレンズ155を同一方向に移動させるか否かを判定してもよい。例えば、このような判定は、フォーカスレンズ155の初期位置が移動限界位置とは異なる位置であった場合等に行われてもよい。
例えば、制御部70は、フォーカスレンズ155の移動位置Knにて取得した各OCTデータの評価値B1n及びB2nと、フォーカスレンズ155の移動位置Kn+1にて取得した各OCTデータの評価値B1n+1及びB2n+1と、をそれぞれ比較する。例えば、制御部70は、第1OCTデータ360における評価値B1と、第2OCTデータ370における評価値B2と、の双方が増加した場合(すなわち、評価値がB1n<B1n+1且つB2n<B2n+1となった場合)には、フォーカスレンズ155を同一方向へと移動させてもよい。つまり、制御部70は、フォーカスレンズ155を同一方向へと移動させることで、各OCTデータにおける評価値がさらに改善されると判定し、フォーカスレンズ155の移動方向を同一方向と決定してもよい。
また、例えば、制御部70は、第1OCTデータ360における評価値B1と、第2OCTデータ370における評価値B2と、の双方が減少した場合には、フォーカスレンズ155を逆方向へと移動させてもよい。つまり、制御部70は、フォーカスレンズ155を同一方向へと移動させても、各OCTデータにおける評価値は改善されないと判定し、フォーカスレンズ155の移動方向を逆方向と決定してもよい。
例えば、上記のような判定は、フォーカスレンズ155の移動に限らず、光路長調整やポラライザ調整に対して行われてもよい。すなわち、制御部70は、カップラ153とコリメータレンズ154を一体的に移動させることにより連続的に取得される各OCTデータの評価値に基づいて、カップラ153及びコリメータレンズ154を同一方向に移動させるか否かを判定してもよい。また、例えば、制御部70は、第1偏光調整部300と第2偏光調整部302とを調整することにより連続的に取得される各OCTデータの評価値に基づいて、これらの調整部を同一方向に移動させるか否かを判定してもよい。
なお、本実施例では、各OCTデータにおける評価値B1と評価値B2との差の絶対値が最小となるように、撮影条件を調整する構成を例に挙げて説明したがこれに限定されない。例えば、撮影条件は、第1OCTデータと第2OCTデータとの互いの評価値が一定の比率となるように調整されてもよい。また、例えば、第1OCTデータと第2OCTデータの輝度値は必ずしも同一(略同一)である必要はなく、いずれか一方の評価値が高くなるように撮影条件が調整されてもよい。すなわち、第1OCTデータ及び第2OCTデータを取得するための撮影条件は、検者が観察したい撮影部位等に応じて、適宜変更可能であってもよい。
なお、本実施例では、被検眼Eの眼底中心部と眼底周辺部において、輝度値やコントラスト値を用いて撮影条件を調整しているがこれに限定されない。例えば、眼底中心部を含む第1OCTデータのうち、検者が観察したい特定の部位の輝度値が高くなるように、撮影条件が調整されてもよい。例えば、この場合、撮影条件は、被検眼Eにおける網膜の輝度値が高くなるように調整されてもよい。また、例えば、この場合、撮影条件は、被検眼Eにおける脈絡膜の輝度値が高くなるように調整されてもよい。もちろん、眼底周辺部を含む第2OCTデータのうち、検者が観察したい特定の部位の輝度値が高くなるように、撮影条件が調整されてもよい。
なお、本実施例においては、広角領域(例えば、18mm以上)を撮像するOCT装置を用いる構成を例に挙げて説明したがこれに限定されない。例えば、18mmよりも狭い領域を撮像するOCT装置において、上記で説明したような撮影条件の調整を行ってもよい。例えば、この場合には、強度近視眼の眼底中心部と眼底周辺部を含む眼底領域を撮像する際に適用されてもよい。また、例えば、この場合には、被検眼Eの乳頭を撮像する際に適用されてもよい。
なお、上記では被検眼Eを撮影するためのOCT装置を例に挙げて説明したがこれに限定されない。例えば、被検物のOCTデータを撮影するためのOCT装置において、本実施形態が適用されてもよい。例えば、被検物は、眼、皮膚、血管等の生体であってもよいし、樹脂体等の生体以外の試料であってもよい。