本開示の実施形態の一例について図面に基づいて説明する。図1~図15は本実施形態の実施例に係る図である。なお、以下の<>にて分類された項目は、独立又は関連して利用されうる。
<概要>
本実施形態に係るOCT装置は、OCT光学系を備え、OCT光学系の検出器から出力される干渉信号を処理してOCTデータを取得可能であってもよい。OCTデータとしては、例えば、被検眼の眼底又は前眼部のOCTデータであってもよい。この場合、OCT光学系は、例えば、フーリエドメインOCT光学系(SS-OCT光学系、SD-OCT光学系)であってもよい。OCT光学系は、OCT光源からの光を測定光路と参照光路に分割するための光分割器を有し、測定光路を介して被検眼の眼底又は前眼部の一方に導かれた測定光と参照光路からの参照光とのスペクトル干渉信号を検出器によって検出してもよい。
眼底のOCTデータとしては、例えば、硝子体、網膜、脈絡膜の少なくともいずれかの領域を含むOCTデータであってもよい。前眼部のOCTデータとしては、角膜、水晶体の少なくともいずれかの領域を含むOCTデータであってもよい。
OCTデータとしては、例えば、被検眼の形態断層データ、被検眼のモーションコントラストデータ(OCTアンジオデータ)であってもよい。OCTデータが取得される際、例えば、静止画データとしてキャプチャーされ、画像データとして表現されてもよい。OCTデータは、被検眼上で測定光を走査することによって取得されてもよい。なお、モーションコントラストデータは、例えば、被検眼上の同一位置に関して測定光を走査することによって得られた時間的に異なる複数のOCTデータを処理することによって取得されてもよい。
<内部切換部>
OCT装置は、例えば、OCT光学系の測定光路の内部に配置された光学部材によって、測定光の集光位置を前眼部と眼底との間で切り換える内部切換部を備えてもよい。これによって、OCTデータを取得する部位の切換をスムーズに行うことができ、例えば、被検眼と装置との位置関係を維持した状態にて取得部位を切り換えることができる。
内部切換部は、例えば、測定光路の内部に配置された光学部材を駆動させる駆動部を備えてもよく、駆動部の駆動によって測定光の集光位置を前眼部と眼底との間で切り換えてもよい。
内部切換部としては、例えば、種々の機構を用いることができ、特に限定されない。例えば、レンズ挿脱ユニット、ミラー挿脱ユニット、液晶レンズユニットの少なくともいずれかが用いられてもよい。
OCT装置は、例えば、測定光路上に光スキャナおよび対物光学系を備え、更に、内部切換部として、対物光学系の焦点と光スキャナとの相対位置を、光軸方向に関して変更可能な切換部を備えてもよい。当該相対位置の変更は、被検物が眼である場合に、OCTデータが取得される深さ領域を眼底と前眼部との間で切り換える上で、有用である。ただし、内部切換部としては、これに限定されない。
<集光位置切換制御>
OCT装置は、例えば、内部切換部を少なくとも制御する制御部を備えてもよい。この場合、制御部は、眼底又は前眼部の一方のOCTデータの取得完了をトリガとして内部切換部を制御することによって測定光の集光位置を眼底又は前眼部の他方に切り換えるようにしてもよい。OCTデータの取得完了の際、取得されたOCTデータは、記憶部に静止画データとして記憶(キャプチャー)されてもよい。測定光の集光位置が切り換えられた後、制御部は、眼底又は前眼部の他方のOCTデータの撮影動作に移行し、自動又は手動にて発せられる撮影開始信号に応じてOCTデータを取得してもよい。上記によれば、例えば、眼底と前眼部の両方のOCTデータをスムーズに取得することができる。この結果として、例えば、撮影時間が短縮されることで、被検者の負担が軽減し、良好なOCTデータを取得することができる。
なお、本実施形態では、眼底又は前眼部の一方、他方の関係につき、先に取得される部位を一方、後に取得される部位を他方として説明される。よって、前眼部が先に取得され、眼底が後に取得される場合、一方が前眼部に対応し、他方が眼底に対応する。また、眼底が先に取得され、前眼部が後に取得される場合、一方が眼底に対応し、他方が前眼部に対応する。
取得完了をトリガとする手法としては、例えば、OCTデータの撮影動作の完了(例:キャプチャ動作完了)をトリガとしてもよいし、撮影動作完了後の良否判定(自動又は手動)を介して良好と判定されたOCTデータの取得完了をトリガとしてもよい。なお、撮影動作の完了のタイミングとしては、例えば、静止画としてのOCTデータの撮影が完了されたタイミングであってもよいし、OCTデータが記憶部に一時的に取り込まれたタイミングであってもよい。
より具体的には、制御部は、例えば、撮影開始信号に応じて実行されるOCT光学系によるOCTデータの撮影動作(キャプチャー動作)が完了したことをトリガとしてもよい。また、制御部は、OCTデータの撮影動作の完了後、自動又は手動にて行われる良否判定の結果、良と判定されたことをトリガとしてもよい。もちろん、上記に限定されず、例えば、制御部は、OCTデータが静止画としてキャプチャーされたことをトリガとしてもよい。
OCTデータの取得完了をトリガとして測定光の集光位置を切り換える場合、制御部は、眼底又は前眼部の一方のOCTデータの取得完了をトリガとして内部切換部を制御することによって測定光の集光位置を眼底又は前眼部の他方に自動的に切り換えるようにしてもよい。この場合、例えば、制御部は、例えば、OCT光学系によるOCTデータの撮影動作(キャプチャー動作)が完了したことをトリガとして集光位置を自動的に切り換えてもよいし、自動又は手動にて行われる良否判定の結果、良と判定されたことをトリガとして集光位置を自動的に切り換えてもよい。
上記において、良否判定を自動的に行う場合、制御部は、例えば、取得されたOCTデータの信号強度に基づいて良否判定を行うようにしてもよいし、OCTデータと同時に取得された正面像に基づいて良否判定を行うようにしてもよい。前眼部のOCTデータに関して、例えば、制御部は、OCTデータの信号強度に加え、OCTデータ又は正面像において注目部位(例えば、角膜頂点)が検出されているかにより良否判定を行うようにしてもよい。眼底のOCTデータに関して、例えば、制御部は、OCTデータの信号強度に加え、OCTデータ又は正面像において注目部位(例えば、黄斑部、又は乳頭部位)が検出されているかにより良否判定を行うようにしてもよい。また、良否判定を手動にて行う場合、制御部は、検者によって操作される操作部から操作信号に基づく判定結果に応じて良否判定を行うようにしてもよい。
なお、取得完了をトリガとして集光位置を切り換える手法としては、前述のようにOCTデータの取得完了を直接的なトリガとする制御の他、OCTデータの取得完了を間接的なトリガとする制御も含まれる。例えば、制御部は、OCTデータの取得完了を直接的なトリガとしてOCT光学系の他の構成(例:光路長差調整部、フォーカス調整部)を制御し、当該他の構成の制御動作(例えば、制御開始後、制御完了後等)に応じて測定光の集光位置を切り換えるようにしてもよい。
<OCT光学系の制御>
上記に限定されず、制御部は、眼底又は前眼部の一方のOCTデータの取得完了をトリガとしてOCT光学系を制御することによってOCT光学系によるOCTデータの取得部位を眼底又は前眼部の他方に切り換えるようにしてもよい。OCTデータの取得完了をトリガとする例、自動切換制御の例としては、前述の<集光位置切換制御>を参照されたい。
OCT装置は、例えば、測定光路と参照光路との間の光路長差を調整する光路長差調整部を備えてもよい。光路長差調整部としては、例えば、測定光路と参照光路の少なくともいずれかに配置された光学部材を駆動させる駆動部を備え、測定光路と参照光路の少なくともいずれかの光路長を変化させる構成であってもよい。
この場合、例えば、制御部は、眼底又は前眼部の一方のOCTデータの取得完了をトリガとして光路長差調整部を制御することによってOCTデータの取得範囲を眼底又は前眼部の他方に切り換えてもよい。OCTデータの取得範囲としては、例えば、深さ方向におけるOCTデータの取得範囲であってもよい。制御部は、光路長差調整部を制御することによってOCTデータの取得範囲を眼底又は前眼部の他方に向けて変化させると共に、取得されるOCTデータに基づいて、眼底又は前眼部の他方のOCTデータが取得されるように光路長差調整部を制御してもよい。この場合、上記に限定されず、被検眼の既知の眼軸長が利用されてもよいし、予め記憶された過去の光路長差調整量が利用されてもよい。
OCTデータの取得完了をトリガとしてOCTデータの取得範囲を切り換える場合、制御部は、眼底又は前眼部の一方のOCTデータの取得完了をトリガとして光路長差調整部を制御することによってOCTデータの取得範囲を眼底又は前眼部の他方に自動的に切り換えるようにしてもよい。この場合、例えば、制御部は、OCTデータの撮影動作が完了したことをトリガとしてOCTデータの取得範囲を自動的に切り換えてもよいし、自動又は手動にて行われる良否判定の結果、良と判定されたことをトリガとしてOCTデータの取得範囲を自動的に切り換えてもよい。
なお、制御部は、測定光の集光位置の切換制御と並行して、光路長差調整部の調整制御を行うようにしてもよい。これによって、次のOCTデータをより短時間で取得することができる。また、制御部は、集光位置の切換制御の完了後、光路長差調整部の調整制御を行うようにしてもよい。また、光路長差調整部の調整完了後、集光位置の切換制御を行うようにしてもよい。
OCT装置は、例えば、OCT光学系の測定光路の内部に配置された光学部材によって、被検眼に対する測定光のフォーカスを調整するフォーカス調整部を備えてもよい。フォーカス調整部としては、例えば、測定光路に配置された光学部材を光軸方向に駆動させる駆動部を備え、被検眼に対する測定光のフォーカスを調整する構成であってもよい。
この場合、例えば、制御部は、内部切換部による集光位置の切換後、フォーカス調整部を制御することによって被検眼に対する測定光のフォーカスを自動的に行ってもよい。制御部は、内部切換部を制御することによって測定光の集光位置を眼底又は前眼部の他方に切り換えると共に、取得されるOCTデータ又は正面像データに基づいて、眼底又は前眼部の他方に対してフォーカスが一致するようにフォーカス調整部を制御してもよい。この場合、上記に限定されず、被検眼の既知の視度が利用されてもよいし、予め記憶された過去のフォーカス量が利用されてもよい。なお、フォーカス調整制御について、例えば、眼底のOCTデータを取得する際の視度補正にて実施されてもよい。もちろん、前眼部と眼底の両方でフォーカス調整が行われてもよい。
<OCTデータの確認画面>
制御部は、表示部を制御してもよい。この場合、制御部は、取得されたOCTデータを含む確認画面を表示部に表示してもよい。例えば、制御部は、眼底と前眼部の両方のOCTデータが取得された後、眼底と前眼部の両方のOCTデータを含む確認画面を表示部に表示してもよい。これによって、連続的に取得された眼底と前眼部の両方のOCTデータを同時に確認できるので、OCTデータの良否を容易に確認できる。
OCTデータを含む確認画面を表示部に表示する場合、例えば、制御部は、眼底又は前眼部の一方のOCTデータが取得された後、一方のOCTデータを含む確認画面を表示部に表示すると共に、確認画面の表示中において、内部切換部と光路長差調整部の少なくともいずれかを制御し、眼底及び前眼部の他方のOCTデータの取得に移行してもよい。これによって、他方のOCTデータを取得するための制御を、確認画面の表示中に行うことによって他方のOCTデータの取得をスムーズに行うことができる。例えば、内部切換部を予め作動させておくことによって、他方のOCTデータに対応する部位へのフォーカス制御を短縮化できる。また、例えば、光路長差調整部を予め作動させておくことによって、他方のOCTデータに対応する部位への光路長差調整を短縮化できる。
制御部は、眼底と前眼部のOCTデータのいずれかを選択的に再取得するための選択信号に基づいて内部切換部を制御することによって測定光の集光位置を切り換え、選択されたOCTデータの取得に移行してもよい。これによって、各OCTデータの再取得をスムーズに行うことができる。この場合、検者からの選択信号を受け付ける指示受付部が設けられてもよい。眼底と前眼部の両方のOCTデータを含む確認画面上において、再取得するOCTデータを、眼底と前眼部のOCTデータから選択可能であってもよい。なお、上記に限定されず、制御部は、OCTデータの良否判定処理を行い、否と判定されたOCTデータに関して選択的に再取得を行うため、測定光の集光位置を切り換えてもよい。
<撮影条件の事前設定>
OCT装置は、例えば、眼底のOCTデータと前眼部のOCTデータの両方を取得する前段階において、眼底のOCTデータと前眼部のOCTデータを取得する際の撮影条件を予め設定する設定部が設けられてもよい。制御部は、設定部によって設定された撮影条件に基づいてOCT光学系を制御することによって、設定された撮影条件に対応する眼底と前眼部のOCTデータを取得するようにしてもよい。これによって、眼底と前眼部のOCTデータを得る際の撮影条件を事前に設定できるので、両方のOCTデータを得る撮影動作をスムーズに行うことができる。
設定部は、眼底のOCTデータと前眼部のOCTデータを取得する際の撮影条件を、複数の撮影条件から予め選択するための選択指示を受け付ける指示受付部を備えてもよい。指示受付部は、例えば、検者からの選択指示を受け付ける構成であってもよいし、制御部によって自動的に選択された選択指示を受け付ける構成であってもよい。なお、指示受付部は、被検眼の疾患(例えば、緑内障、加齢黄斑変性等)に応じて撮影条件を選択可能な構成であってもよい。例えば、緑内障の場合、前眼部の隅角部分が撮影部位として設定されてもよいし、加齢黄斑変性の場合、眼底の黄斑部分が撮影部位として設定されてもよい。これらはあくまで一例であり、これに限定されない。
撮影条件としては、例えば、測定光の走査条件、OCTデータの特性(例えば、OCT形態データ、OCTモーションコントラストデータ)であってもよい。なお、OCTモーションコントラストデータを得る際、例えば、同一の走査位置に関して測定光を複数回走査させる場合があるので、測定光の走査条件の一つとして、OCTデータをOCTモーションコントラストデータとして取得するか否かが予め設定可能であってもよい。
<実施例>
本実施例では、OCT装置として、図1に示される光コヒーレンストモグラフィー(OCT)装置が用いられる。本実施例に係るOCT装置は、例えば、波長掃引式OCT(SS-OCT:Swept Source-OCT)を基本的構成とし、波長可変光源102、干渉光学系(OCT光学系)100、演算制御器(演算制御部)70と、を含む。その他、OCT装置には、メモリ72、表示部75、図示無き正面像観察系及び固視標投影系が設けられてもよい。演算制御器(以下、制御部)70は、波長可変光源102、干渉光学系100、メモリ72、表示部75に接続されている。
干渉光学系100は、導光光学系150によって測定光を眼Eに導く。干渉光学系100は、参照光学系110に参照光を導く。干渉光学系100は、眼Eによって反射された測定光と参照光との干渉、によって取得される干渉信号光を検出器(受光素子)120に受光させる。さらに、本実施例の干渉光学系100は、FPN生成光学系200を備える(詳しくは後述する)。なお、干渉光学系100は、図示無き筐体(装置本体)内に搭載され、ジョイスティック等の操作部材を介して周知のアライメント移動機構により眼Eに対して筐体を3次元的に移動させることによって被検眼に対するアライメントが行われてもよい。
干渉光学系100には、SS-OCT方式が用いられ、光源102として出射波長を時間的に高速で変化させる波長可変光源(波長走査型光源)が用いられる。光源102は、例えば、レーザ媒体、共振器、及び波長選択フィルタによって構成される。そして、波長選択フィルタとして、例えば、回折格子とポリゴンミラーの組み合わせ、ファブリー・ペローエタロンを用いたフィルタが挙げられる。また、光源102として、VCSEL式波長可変光源が用いられてもよい。
カップラ(スプリッタ)104は、第1の光分割器として用いられ、光源102から出射された光を測定光路と参照光路に分割する。カップラー104は、例えば、光源102からの光を測定光路側の光ファイバー105に導光すると共に、参照光路側の参照光学系110に導光する。
カップラ(スプリッタ)130は、第2の光分割器として用いられ、光ファイバー105からの光(測定光)を、導光光学系150の光路とFPN生成光学系200の光路に分割する。つまり、測定光路には、導光光学系150とFPN生成光学系200が設けられている。カップラ(スプリッタ)130は、ビームスプリッタであってもよいし、サーキュレータであってもよい。
<導光光学系>
導光光学系150は、測定光を眼Eに導くために設けられる。導光光学系150には、例えば、光ファイバー152、カップラー153、コリメータレンズ154、光スキャナ156、及び対物レンズ系158が順次設けられてもよい。この場合、測定光は、光ファイバー152、カップラー153を介して、コリメータレンズ154によって平行ビームとなり、光スキャナ156に向かう。光スキャナ156を通過した光は、対物レンズ系158を介して、眼Eに照射される。測定光は、前眼部及び後眼部の両方に照射され、各組織にて散乱・反射される。
光スキャナ156は、眼E上でXY方向(横断方向)に測定光を走査させてもよい。光スキャナ156は、例えば、2つのガルバノミラーであり、その反射角度が駆動機構によって任意に調整される。光源102から出射された光束は、その反射(進行)方向が変化され、眼底上で任意の方向に走査される。光スキャナ156としては、例えば、反射ミラー(ガルバノミラー、ポリゴンミラー、レゾナントスキャナ)の他、光の進行(偏向)方向を変化させる音響光学素子(AOM)等が用いられてもよい。
この場合、測定光による眼Eからの散乱光(反射光)は、対物レンズ系158、光スキャナ156、コリメータレンズ154、カップラー153、光ファイバー152を経た後、カップラ―130に達する。カップラ130は、光ファイバー152からの光を、第1の検出器120aに向かう光路(例えば、光ファイバー115~カップラー350a)と、第2の検出器120bに向かう光路(例えば、光ファイバー105~カップラー104~光ファイバー117~カップラー350b)に分割する。
カップラー130によって分割された測定光のうち、第1の検出器120aに向かう光路を経由した測定光は、カップラ350aにて、第1の参照光路110aからの参照光と合波されて干渉する。また、第2の検出器120bに向かう光路を経由した測定光は、カップラ350bにて、第2の参照光路110bからの参照光と合波されて干渉する。
<参照光学系>
参照光学系110は、眼Eでの測定光の反射によって取得される反射光と合成される参照光を生成する。参照光学系110を経由した参照光は、カップラ(例えば、カップラ350a、350b)にて測定光路からの光と合波されて干渉する。参照光学系110は、マイケルソンタイプであってもよいし、マッハツェンダタイプであってもよい。
参照光学系110は、例えば、反射光学系によって形成され、カップラー104からの光を反射光学系により反射することにより検出器120に導いてもよい。参照光学系110は、透過光学系によって形成されてもよい。この場合、参照光学系110は、カップラー104からの光を戻さず透過させることにより検出器120へと導く。
なお、測定光路と参照光路の少なくともいずれかには、測定光と参照光との光路長差を調整するための光学部材が配置されてもよい。例えば、コリメータレンズ154とカップラー153とが一体的に移動されることで、測定光の光路長が調整され、結果として、測定光と参照光との光路長差が調整されてもよい。もちろん、参照光路に配置された光学部材が移動されることによって、結果として、測定光と参照光との光路長差が調整されてもよい。
本実施例において、参照光学系110として、複数の参照光路が設けられてもよく、例えば、第1の参照光路110aと、第2の参照光路110bとが設けられてもよい。
参照光学系110は、例えば、参照光路を第1の参照光路110aと、第2の参照光路110bに分割するための光分割器(例えば、カップラ111)が設けられてもよい。第1の参照光路110aと、第2の参照光路110bの少なくともいずれかには、例えば、参照光の光路長を変更するために移動される光学部材112が設けられてもよい。光学部材112は、制御部70によって制御される図示なき駆動部によって移動されてもよい。
例えば、カップラ104からの参照光は、カップラ111によって第1の参照光路110aと第2の参照光路110bに分割される。第1の参照光路110aを経由した参照光は、カップラ350aにて、光ファイバ115からの測定光と合波されて干渉する。第2の参照光路110bを経由した参照光は、カップラ350bにて、光ファイバ117からの測定光と合波されて干渉する。
第1の参照光路110aと、第2の参照光路110bは、互いに異なる光路長に設定されてもよい。これによって、例えば、互いに異なる深さ領域に対応する干渉信号を同時に取得でき、結果として、広範囲のOCTデータを同時に取得できる。
例えば、第1の参照光路110aが、被検眼における第1の深さ領域(例えば、水晶体、眼底)に対応する干渉信号を得るために設けられ、第2の参照光路110bは、被検眼における第2の深さ領域(例えば、角膜)に対応する干渉信号を得るために設けられてもよい。この場合、第2の深さ領域は、第1の深さ領域に対して異なる領域に設定される。この場合、第1の深さ領域と第2の深さ領域は、互いに分離した領域であってもよいし、互いに隣接した領域であってもよいし、一部が重複した領域であってもよい。
なお、第1の参照光路110aと、第2の参照光路110bは、同じ光路長に設定されてもよい。これによって、例えば、同一の深さ領域に対応する干渉信号を同時に取得でき、結果として、同一領域に関する複数のOCTデータを同時に取得できる。
<光検出器>
検出器120は、測定光路からの光と参照光路からの光による干渉を検出するために設けられている。なお、検出器120は、受光素子であってもよく、例えば、受光部が一つのみからなるポイントセンサであって、例えば、アバランシェ・フォト・ダイオードが用いられてもよい。
本実施例では、検出器120として、第1の検出器120aと、第1の検出器120aとは異なる第2の検出器120bと、が設けられてもよい。第1の検出器120aは、第1の参照光路110aからの参照光と光ファイバー115からの測定光との第1の干渉信号を検出するための検出器として設けられてもよい。第2の検出器120bは、第2の参照光路110bからの参照光と光ファイバ117からの測定光との第2の干渉信号を検出するための検出器として設けられてもよい。この場合、第1の検出器120aにて第1の干渉信号を検出すると同時に、第2の検出器120bにて第2の干渉信号を検出することによって、第1の干渉信号と第2の干渉信号を同時に検出可能である。
なお、第1の検出器120a、第2の検出器120bは、それぞれ平衡検出器であってもよい。この場合、第1の検出器120a、第2の検出器120bは、複数の受光素子をそれぞれ備え、第1受光素子からの干渉信号と第2受光素子からの干渉信号との差分を得て、干渉信号に含まれる不要なノイズを削減できる。
<FPN生成光学系>
FPN生成光学系200は、FPN信号を生成するために設けられてもよい。FPN生成光学系200は、FPNを発生させる光学部材(例えば、第1の光学部材204又は第2の光学部材206)を少なくとも一つ備えてもよい。本実施例において、FPN生成光学系200は、測定光が被検眼に向かう光路から分岐された位置に配置されている。
FPN生成光学系200としては、例えば、反射光学系であってもよく、FPN発生用光学部材としては、例えば、光反射部材(例えば、ミラー)が用いられてもよい。なお、本実施例においては、FPNを発生させる光学部材を複数設けたが、これに限定されず、FPN生成光学系200は、FPNを発生させる光学部材を一つ備える構成であってもよい。
第1の検出器120aには、第1の干渉信号と共にFPN信号が検出され、第2の検出器120bには、第2の干渉信号と共にFPN信号が検出される。FPN信号は、例えば、第1の干渉信号に基づく第1のOCTデータと、第2の干渉信号に基づく第2のOCTデータとの合成(詳しくは後述する)、各干渉信号の波数マッピング補正、偏光調整等に用いられてもよい。
例えば、FPN生成光学系200は、第1のFPN信号と第2のFPN信号を生成するために設けられてもよい。例えば、FPN生成光学系200は、第1のFPNを発生させる第1の光学部材204と、第2のFPNを発生させる第2の光学部材206と、を少なくとも備えてもよい。第2の光学部材206は、第2の光学部材を経由した光が、第1の光学部材204を経由した光による光路長とは異なるように配置されてもよい。これによって、第2のFPNは、第1のFPNに対して異なる位置に発生される。なお、後述するゼロディレイ位置は、OCTデータ上において、測定光の光路長と参照光の光路長とが一致する位置に対応する。
第1の光学部材204と第2の光学部材206とが同時に使用されることによって、2つのFPN信号を同時に生成することが可能であり、これによって、2つのFPN信号を処理する際の時間的なずれの影響を軽減できる。なお、FPN光学系200は、3つ以上のFPN発生用光学部材を備えてもよく、これらが同時に使用されることによって、3つ以上のFPN信号を同時に生成することが可能である。
FPN生成光学系200としては、例えば、反射光学系であってもよく、FPN発生用光学部材としては、例えば、光反射部材(例えば、ミラー)が用いられてもよい。本実施例では、第1のFPN発生用光学部材204、第2のFPN発生用光学部材206としてミラーが用いられているが、これに限定されない。
この場合、カップラ130からの光は、第1の光学部材204又は第2の光学部材206を経由した後、カップラ130に戻され、導光光学系150からの光と同様の経路を経て、カップラ350a,カップラ350bに達する。FPN生成光学系200からの光は、カップラ350a,350bにて参照光と合波されて干渉する。なお、光源102~FPN生成光学系200~カップラ350a,350bの光路長と、光源102~参照光学系110~カップラ350a,350bまでの光路長は、ほぼ同じ長さに設定されてもよい。
例えば、第1の光学部材204を経由した光が参照光と干渉することによって、第1のFPNに対応する干渉信号光が生成され、検出器120には第1のFPN信号が生成され、第2の光学部材206を経由した光が参照光と干渉することによって、第2のFPNに対応する干渉信号光が生成され、検出器120には第2のFPN信号が生成される。結果として、例えば、検出器120には、第1のFPN信号と第2のFPN信号の両方が同時に検出される。
FPN信号を所定の処理に用いる場合、検出器120a、検出器120bのそれぞれにおいて、第1のFPN信号と第2のFPN信号の両方が同時に検出されてもよいし、検出器120aにおいて一方のFPN信号が検出され、検出器120bにおいて他方のFPN信号が検出されてもよい。また、検出器120a、検出器120bの一方において、第1のFPN信号と第2のFPN信号の両方が同時に検出され、検出器120a、検出器120bの他方において第1のFPN信号と第2のFPN信号の一方が検出されてもよい。また、検出器120a、検出器120bの一方において、少なくとも一つのFPN信号が検出され、また、検出器120a、検出器120bの他方において、FPN信号が検出されなくてもよい。
なお、FPN生成光学系200には、光量モニタ210が配置されてもよく、光源102からの光は、ビームスプリッタ208を介して光量モニタ120によって検出される。光量モニタ120からの出力信号は、光源102の出射光量が適正か否かを判定するために用いられてもよい。
<光量分岐比>
ここで、カップラー130は、カップラー104からの光を、導光光学系150の光路とFPN生成光学系200の光路に分割すると共に、導光光学系150及びFPN生成光学系200からの光を、第1の検出器350aへと向かう光路(例えば、光ファイバー115~カップラー350a)と、カップラー104へと向かう光路(例えば、光ファイバー105~カップラー104~光ファイバー117~カップラー350b)と、に分割する。
ファイバー105からの光を分割する際のカップラー130の光量分割比S1は、導光光学系150よりもFPN生成光学系200に多くの光が導かれるように設定されてもよい。この場合、ファイバー105からの光がカップラ130―によって分割される光量比は、導光光学系150<FPN生成光学系200となる。
導光光学系150からの光を分割する際のカップラー130の光量分割比S2は、光量分割比S1に依存する。この結果、導光光学系150からの光に関し、第1の検出器120aに向かう光路よりも、第2の検出器120aに向かう光路に、多くの光が導かれる。この場合、導光光学系150からの光がカップラー130によって分割される光量比は、第1の検出器120aに向かう光路<カップラー104に向かう光路となる。
第1の検出器120aに向かう光路を経由した測定光は、第1の参照光路110aからの光と干渉した後、第1の検出器120aにて第1の干渉信号として検出される。一方、カップラー104に向かう測定光は、カップラー104によって、光源102に向かう光路と、第2の検出器120bに向かう光路(例えば、光ファイバー117~カップラー350b)に分割される。カップラー130からの光を分割する際の光量分割比S4は、光源102からの光を測定光路と参照光路とに分割する際の光量分割比S3に依存する。光量分割比S3が、測定光路よりも参照光路に多くの光が導かれるように設定された場合、カップラー130からの光がカップラー104によって分割される光量比は、光源102に向かう光路<第2の検出器120bに向かう光路となる。この結果、カップラ130からの光に関し、光源102に向かう光路よりも、第2の検出器120bに向かう光路に多くの光が導かれる。第2の検出器120bに向かう光路を経由した測定光は、第2の参照光路110bからの光と干渉した後、第2の検出器120bにて第2の干渉信号として検出される。
上記構成をまとめると、カップラー130の光量分割比S2に関して、第1の検出器120aに向かう光路<カップラー104に向かう光路であり、カップラー104の光量分割比S4に関して、光源102に向かう光路<第2の検出器120bに向かう光路にて設定されている。
この結果として、第1の検出器120aにて検出される第1の干渉信号と、第2の検出器120bにて検出される第2の干渉信号と、を適度なバランスにて検出できる。つまり、カップラー104を経由して第2の検出器120bに向かう光路の場合、導光光学系150からの光は、複数の光分割器(例えば、カップラ130、カップラー104)を経由するので、光量減衰の回数が多いのに対し、第1の検出器120aに向かう光路の場合、導光光学系150からの光は、カップラー130を経由して第1の検出器120aに達するので、光量減衰の回数が相対的に少ない。
そこで、カップラー130の光量分割比S2に関して、第1の検出器120aに向かう光路<カップラー104に向かう光路であり、カップラー104の光量分割比S4に関して、光源102に向かう光路<第2の検出器120bに向かう光路であることで、光量減衰が複数回行われたとしても、光量減衰を軽減でき、結果として、第1の検出器120aと第2の検出器120bとの間で信号強度の差異を少なくできる。したがって、第1の検出器120aによって得られるOCTデータと第2の検出器120bによって得られるOCTデータとの信号強度の差異が少なくなり、それぞれ適正なOCTデータを取得できる。
なお、カップラー130の光量分割比S2と、カップラー104の光量分割比S4に関して、第1の検出器120aに向かう光路と第2の検出器120bに向かう光路との光量比が同一となるように設定されてもよい。その一例としては、カップラー130の光量分割比S2に関して、第1の検出器120aに向かう光路:カップラー104に向かう光路=6:4、カップラー102の光量分割比S4に関して、光源102に向かう光路:第2の検出器120bに向かう光路=1:2となるように設定されてもよい。
上記限定されず、カップラー130の光量分割比S2と、カップラー104の光量分割比S4に関して、第1の検出器120aと第2の検出器120bによって検出されるOCTデータの撮影部位での反射光量の違いを考慮して、光量分割比が設定されてもよい。つまり、被検眼の角膜からの反射光は、反射光量が大きいが、水晶体及び眼底からの光は、反射光量が相対的に少ない。そこで、撮影部位による反射光量比を考慮して、結果として、第1の検出器120aと第2の検出器120bとの間でのOCTデータの信号強度が同一となるように、カップラー130の光量分割比S2と、カップラー104の光量分割比S4が設定されてもよい。
なお、本実施例において、導光光学系150からの光を複数の検出器に導光させる際、1つの光分割器(例えば、カップラー130)を介して第1の検出器120aに向かう光と、複数のカップラー(例えば、カップラー130、カップラー104)を介して第2の検出器120bに向かう光に分けたのは、導光光学系150からの光をより多く効率的に各検出器に導かれるためである。このような光学配置は、光源120の出射光量が限られており、被検眼からの反射光が微弱であるような場合に、特に有利である。
図2は、本実施例に係るFPN生成光学系の一例を示す図である。FPN生成光学系200は、例えば、第1の光学部材204を備える第1の光路203と、第2の光学部材206を備える第2の光路205とを少なくとも備えてもよい。ここで、第1の光路203と第2の光路205との間において、第1の光路203の光路長と第2の光路205の光路長が異なることによって、第2のFPNは、第1のFPNとは異なる位置に生成される。例えば、第2の光路205の光路長が第1の光路203の光路長よりも長いことによって、第1のFPNよりもゼロディレイから離れた位置に生成される。
FPN生成光学系200は、光路分割部材202(例えば、ビームスプリッタ)を備えてもよく、光路分割部材202は、光源側の光路を、第1の光路203と第2の光路205とに分割するために設けられてもよい。第1の光学部材204は、光路分割部材202によって分割された第1の光路203に配置されており、第2の光学部材206は、光路分割部材202によって分割された第2の光路に配置されている。
第1の光路203と第2の光路205は、互いに異なる光路長を持つ。つまり、光路分割部材202の分岐位置から第1の光学部材204までの光路長と、光路分割部材202の分岐位置から第2の光学部材206までの光路長は異なる。この結果として、第1の光学部材204によって形成される第1のFPNと、第2の光学部材206によって形成される第2のFPNは、OCT画像上において深さ方向に異なる位置に形成される。なお、深さ方向における第1のFPNと第2のFPNとの間の距離は、第1の光路203と第2の光路205との間の光路長差に起因する。
<偏波調整機構>
本実施例のOCT光学系100において、複数の偏光調整部が設けられてもよく、例えば、OCT光学系100の光路には、第1の偏光調整部300、第2の偏光調整部302、第3の偏光調整部304が設けられてもよい(図1参照)。
第1の偏光調整部300は、第1の参照光路110aの光路に配置され、第1の参照光路110aを経由する参照光の偏光状態を調整するために設けられてもよい。第2の偏光調整部302は、第2の参照光路110bの光路に配置され、第2の参照光路110bを経由する参照光の偏光状態を調整するために設けられてもよい。第3の偏光調整部304は、FPN生成光学系200の光路に配置され、FPN生成光学系200の光路を経由する光の偏光状態を調整するために設けられてもよい。
<深さ情報の取得>
光源102により出射波長が変化されると、これに対応する干渉信号光が検出器120に受光され、結果的に、スペクトル信号として検出器120によって検出される。制御部70は、検出器120によって検出されたスペクトル信号を処理(フーリエ解析)し、被検眼のOCTデータを得る。
スペクトル信号(スペクトルデータ)は、波長λの関数として書き換えられ、波数k(=2π/λ)に関して等間隔な関数I(k)に変換されてもよい。あるいは、初めから波数kに関して等間隔な関数I(k)として取得されてもよい(K―CLOCK技術)。演算制御器は、波数k空間でのスペクトル信号をフーリエ変換することにより深さ(Z)領域におけるOCTデータを得てもよい。
さらに、フーリエ変換後の情報は、Z空間での実数成分と虚数成分を含む信号として表されてもよい。制御部70は、Z空間での信号における実数成分と虚数成分の絶対値を求めることによりOCTデータを得てもよい。
本実施例では、制御部70は、第1の検出器120aによって検出された第1の干渉信号を処理して第1のOCTデータを得ると共に、第2の検出器120bによって検出された第2の干渉信号を処理して第2のOCTデータを得てもよい。ここで、第1の参照光路110aと第2の参照光路120bとが異なる光路長に設定される場合、第1のOCTデータと第2のOCTデータは、深さ方向に関して少なくとも一部が異なる領域のOCTデータが取得され、第1の参照光路110aと第2の参照光路120bとが同じ光路長に設定される場合、第1のOCTデータと第2のOCTデータは、深さ方向に関して同じ領域のOCTデータが取得される。
<制御系>
制御部70は、CPU(プロセッサ)、RAM、ROM等を備えてもよい(図1参照)。例えば、制御部70のCPUは、OCT装置の制御を司ってもよい。RAMは、各種情報を一時的に記憶する。制御部70のROMには、OCT装置の動作を制御するための各種プログラム、初期値等が記憶されてもよい。
制御部70には、記憶部としての不揮発性メモリ(以下、メモリに省略する)72、表示部75等が電気的に接続されてもよい。メモリ72には、電源の供給が遮断されても記憶内容を保持できる非一過性の記憶媒体が用いられてもよい。例えば、ハードディスクドライブ、フラッシュROM、および、OCT装置に着脱可能に装着されるUSBメモリ等をメモリ72として使用することができる。メモリ72には、OCTデータの取得及びOCT画像の撮影を制御するための制御プログラムが記憶されてもよいし、FPNを用いてOCT画像を合成するための演算処理プログラム、各波数成分のマッピング状態を補正するための補正情報を得る演算処理プログラム等が記憶されてもよい。また、メモリ72には、OCTデータから生成されるOCT画像の他、撮影に関する各種情報が記憶されてもよい。表示部75は、OCTデータから生成されるOCT画像を表示してもよい。
<FPNを用いた画像合成>
制御部70は、第1の干渉信号に基づく第1のOCTデータと、第2の干渉信号に基づく第2のOCTデータとを、第1の検出器120aによって検出されたFPN信号と第2の検出器120bによって検出されたFPN信号とに基づいて合成することによって合成OCTデータを得てもよい(図3~図5参照)。つまり、FPN信号は、複数のOCTデータを合成するための基準信号として用いられてもよい。ここで、第2のOCTデータは、第1のOCTデータに対して被検眼上の深さ領域の少なくとも一部が異なってもよい。
一例としては、FPN生成光学系200においてFPN発生用の光学部材(例えば、光学部材204、206)の配置位置は既知であるから、第1のOCTデータと第2のOCTデータとの位置関係をFPN信号を用いて設定してもよい。
これによって、第1のOCTデータと第2のOCTデータとの位置関係を適正に設定できる。なお、本実施例では、第1のOCTデータが第1の検出器120aにて検出されると同時に、第2のOCTデータが第2の検出器120bにて検出されるので、被検眼の移動などによる位置ズレも軽減できる。
例えば、FPN生成光学系200は、第1のFPNを発生させる第1の光学部材(例えば、第1の光学部材204)と、第1のFPNとは異なる位置に第2のFPNを発生させる第2の光学部材(例えば、第2の光学部材206)と、を少なくとも備え、少なくとも2つのFPN信号を生成するためのFPN生成光学系であってもよい。
制御部70は、第1の干渉信号に基づく第1のOCTデータと、第2の干渉信号に基づく第2のOCTデータとを、第1の検出器120aによって検出された第1の光学部材によるFPNと第2の検出器120bによって検出された第2の光学部材によるFPNとに基づいて合成することによって合成OCTデータを得てもよい。
図3、4はFPN信号を用いて複数のOCTデータを合成する場合のデータの一例を示す図であり、図3は合成前、図4は合成後のイメージ図である。FPN1は、第1の光学部材204によって生成されたFPN信号であり、FPN2は、第2の光学部材206によって生成されたFPN信号である。
図3においては、第1のOCTデータには、FPN1が形成され、第2のOCTデータには、FPN2が形成される。第1のOCTデータは、第1の参照光路110a及び第1の検出器110aを用いて取得され、第2のOCTデータは、第2の参照光路110b及び第2の検出器110bを用いて取得されてもよい。
FPN信号を用いてOCTデータ間の位置関係を設定する場合、制御部70は、例えば、第1のOCTデータに含まれるFPN1と第2のOCTデータに含まれるFPN2を用いてOCTデータ間の位置関係を設定してもよい。ここで、制御部70は、深さ方向におけるFPNの位置を検出し、FPNの検出位置を基準として複数のOCTデータを合成してもよい(図4参照)。
ここで、第1の光学部材204と第2の光学部材204との間の位置関係は既知であるから(例えば、光路長ΔD)、制御部70は、第1のOCTデータと第2のOCTデータとを合成する場合、FPN1とFPN2の位置を検出し、FPN1の検出位置とFPN2の検出位置とが光路長ΔD分離間するように合成してもよい。なお、複数のOCTデータ間の重複部分に関する合成について、いずれか一方のOCTデータを用いるようにしてもよいし、両方のOCTデータの平均を求めるようにしてもよい。
制御部70は、上記のようにして合成された合成OCTデータに基づいて被検眼の寸法(例えば、前房深度、眼軸長等)を測定してもよく、さらに、得られた測定結果を表示部75上に表示してもよい。
<遮光部材>
なお、FPN生成光学系200の光路に遮光部材又は減光部材が配置されることによって、被検眼の観察又は撮影に用いるOCTデータのFPN信号を軽減するようにしてもよい。この場合、第1の光路と第2の光路との少なくともいずれかが遮光又は減光されることで、OCTデータ上でのFPN信号を軽減するようにしてもよい。これらは、診断・観察等に用いるOCTデータを得る場合において有効である。また、これに限定されず、OCTデータに含まれるFPN信号を信号処理によって除去するようにしてもよい。
例えば、FPN生成光学系200の光路には、第1の光路を遮光するための第1の遮光部材210と、第2の光路を遮光するための第2の遮光部材212と、が各光路に対して挿脱可能に配置されてもよい。
<被検眼への適用例>
本装置は、被検眼のOCTデータを取得するための眼科用OCT装置であってもよい。例えば、眼科用OCT装置としては、眼底のOCTデータと、角膜及び水晶体を含む前眼部のOCTデータと、を取得可能な構成であってもよく、さらに、角膜及び眼底のOCTデータに基づいて眼軸長を測定可能な構成であってもよい。
例えば、眼科用OCT装置は、自動又は手動によるモード切換信号に応じて、OCT光学系100の光学配置を切換可能な構成であってもよい。例えば、眼底Erを撮影する眼底撮影モード、被検眼Eの前眼部Ecを撮影する前眼部撮影モード、眼底撮影モードと前眼部撮影モードとを連続的に行う前眼部・眼底撮影モードが設定可能であってもよい。追加的には、さらに、被検眼の眼軸長を測定する眼軸長測定モードが設定可能であってもよい。
<眼底撮影モード>
眼底撮影モードに設定された場合、制御部70は、導光光学系150を制御し、眼底のOCTデータを得るための光学配置に切り替えてもよい。この場合、例えば、制御部70は、被検眼瞳孔上に測定光の旋回点が形成されると共に、測定光の集光位置が眼底上に形成されるように、導光光学系150の光学配置を切り換えてもよい。なお、導光光学系150の光学配置の切換に係る構成については、例えば、特開2016-209577号公報を参照されたい。
眼底撮影モードに設定された場合、制御部70は、測定光と参照光の少なくともいずれかの光路長を調整し、OCTデータの取得領域を眼底に設定してもよい。この場合、例えば、制御部70は、複数の参照光路の少なくともいずれかを経由した参照光の光路長が、眼底を経由した測定光の光路長と一致するように、測定光と参照光との間の光路長差を調整してもよい。なお、光路長差が調整される場合、ゼロディレイ位置よりも網膜が奥側に形成された状態でOCTデータが取得されるように調整されてもよいし、ゼロディレイ位置よりも脈絡膜が前側に形成された状態でOCTデータが取得されるように調整されてもよい。
本実施例では、例えば、眼底からの測定光の光路長と、第1の参照光路110aからの参照光とが一致するように、測定光路に配置された光学部材が移動されることによって、測定光の光路長が調整されてもよい。これによって、少なくとも、第1の検出器110aからの出力信号に基づいて得られる第1のOCTデータには、眼底のOCTデータが含まれる。
図5は眼底撮影モードにおいて取得されるOCTデータの一例を示す図である。制御部70は、光学部材112を移動させ、第1の参照光路110aと同一の光路長となるように、第2の参照光路110bの光路長を調整してもよい。この結果、第1の検出器110aに基づく第1のOCTデータと、第2の検出器110bに基づく第2のOCTデータとが、眼底の同一領域となる。この場合、制御部70は、第1のOCTデータと第2のOCTデータとに基づく合成OCTデータ(例えば、加算平均画像、超解像画像、等)を得てもよい。これによって、短時間で、所定の撮像領域に関する良好な眼底のOCTデータが得られる。
<前眼部撮影モード>
前眼部撮影モードに設定された場合、制御部70は、導光光学系150を制御し、角膜及び水晶体を含む前眼部のOCTデータを得るための光学配置に切り替えてもよい。この場合、被検眼瞳孔よりも装置側に測定光の旋回点が形成されると共に、測定光の集光位置が前眼部上に形成されるように、導光光学系150の光学配置を切り換えてもよい。なお、導光光学系150の光学配置の切換に係る構成については、例えば、特開2016-209577号公報を参照されたい。
前眼部撮影モードに設定された場合、制御部70は、制御部70は、測定光と参照光の少なくともいずれかの光路長を調整し、第1の検出器120aと第2の検出器120bの一方によるOCTデータの取得領域を水晶体に設定し、第1の検出器120aと第2の検出器120bの他方によるOCTデータの取得領域を角膜に設定してもよい。ここで、第1の検出器120aによって取得されるOCTデータと、第2の検出器120bによって取得されるOCTデータとは、被検眼上の取得領域の少なくとも一部が深さ方向に関して異なる。これによって、角膜領域を含むOCTデータと、水晶体領域を含むOCTデータが取得されてもよい。この場合、角膜領域を含むOCTデータに、角膜及び水晶体前面が少なくとも含まれ、水晶体領域を含むOCTデータに、水晶体後面が少なくとも含まれてもよい。つまり、前眼部領域における前側領域のOCTデータと、前眼部領域における後側領域のOCTデータとが、それぞれ別々に取得されてもよい。
なお、制御部70は、例えば、水晶体領域を含むOCTデータと、角膜領域を含むOCTデータとを合成してもよい。この場合、前述のFPN信号を用いた合成処理が用いられてもよく、角膜及び水晶体からの測定光の光路長と、FPN生成光学系200を経由した測定光の光路長が一致するように、FPN生成光学系200の光路長が設定されてもよい。いいかえれば、角膜領域を含むOCTデータと水晶体領域を含むOCTデータとを取得できるように導光光学系150の測定光と参照光との光路長差が設定された状態において、各OCTデータにFPN信号が含まれるように、FPN生成光学系200が設定されてもよい。
なお、光路長差が調整される場合、ゼロディレイ位置よりも角膜前面が奥側に形成された状態で角膜領域を含むOCTデータが取得されるように調整され、ゼロディレイ位置よりも水晶体後面が前側に形成された状態で水晶体領域を含むOCTデータが取得されるように調整されてもよい。これにより、画像合成時のミラーイメージによる影響を回避できる。また、第1のOCTデータと第2のOCTデータとの間において、深さ方向において被検眼上の取得領域の一部が重複するように、第1の参照光路110aと第2の参照光路110bの光路長差が設定されてもよい。これによって、画像合成における連結をスムーズに行うことができる。
図6は前眼部撮影モードにおいて取得されるOCTデータの一例を示す図である。本実施例では、例えば、水晶体からの測定光の光路長と、第1の参照光路110aからの参照光とが一致するように、測定光路に配置された光学部材が移動されることによって、測定光の光路長が調整されてもよい。これによって、少なくとも、第1の検出器110aからの出力信号に基づいて得られる第1のOCTデータには、水晶体領域のOCTデータが含まれる。
第1のOCTデータに水晶体のOCTデータが含まれるように、測定光路に配置された光学部材の位置が調整された状態において、例えば、制御部70は、角膜からの測定光の光路長と、第2の参照光路110bからの参照光とが一致するように、第2の参照光路110bに配置された光学部材112が移動されることによって、第2の参照光路110bの参照光の光路長が調整されてもよい。これによって、第2の検出器110bからの出力信号に基づいて得られる第2のOCTデータには、角膜のOCTデータが含まれる。
水晶体のOCTデータと角膜のOCTデータが取得されると、例えば、制御部70は、水晶体のOCTデータと角膜のOCTデータを合成し、合成OCTデータを取得してもよい。さらに、制御部70は、合成OCTデータに基づいて角膜位置、水晶体位置等を検出し、被検眼の前房深度、水晶体厚等を測定してもよい。
<導光光学系の光学配置の切替に係る構成>
ここで、内部切換部として、導光光学系150の光学配置の切替に係る構成の例を、図7を参照して説明する。
図7は、導光光学系150に対し、光学配置の切替に係る構成の一例を適用したものである。図16では、導光光学系150における光学配置を、眼底撮影モードと、前眼部撮影モードと、のモード切替に応じて切り替えるために、主に、第1切替部410と第2切替部420とが、更に、OCT装置に設けられている。
一例として、図7に示した第1切替部410は、ミラー411,412を含み、ミラー411,412を移動させることで、対物光学系158と光スキャナ156との間の光路長を変更する(図7A⇔図7B)。対物光学系158と光スキャナ156との間の光路長が変更された結果として、対物光学系158における焦点と、光スキャナ156との相対位置が切り替えられる。
図7に示した第1切替部410におけるミラー411,412は、ステージ440上に配置されており、駆動部430がステージ440を駆動することによって移動され、対物光学系158と光スキャナ156との間の光路長を変更する。なお、駆動部430は、制御部70によって駆動される。光路長の変更に伴って、相対位置は、第1位置(光スキャナ156が対物光学系156の焦点と略一致して配置される位置、図16A参照)と、第2位置対物光学系158に関して光スキャナ156と前眼部とが共役関係になる位置、図16B参照)との2つの間で切替る。
第1位置の場合、光スキャナ156を経て、対物光学系158を通過した測定光は、物体側にテレセントリックな光またはテレセントリックに近い光(つまり、光軸上における無限遠点に、又は、その近傍に、旋回点を持つ光)として、被検眼Eへ照射される。結果、前眼部Eaの広範囲において、OCTデータを取得可能になる。
このように、対物光学系158における焦点位置と光スキャナ156との相対位置が、第1切替部410によって切り替えられることで、前眼部と眼底のそれぞれにおいて、OCTデータを良好に取得できる。但し、このとき、第1切替部410は、測定光路と参照光路との光路長差が変化される。図7において、この光路長差の変動の少なくとも一部は、第2切替部420によって相殺される。
図7において、第2切替部420は、ミラー421~424を有している。第2切替部420は、ミラー421~424が測定光路上から退避される退避状態と、測定光路上に配置される挿入状態と、に切替えられる。ミラー421~424のうち、ミラー421,422は、ステージ440上に配置されており、駆動部430がステージ440を駆動することによって、測定光路に対して挿脱される。ミラー421,422が測定光路に対して挿入されることにより、ミラー421~424は迂回光路を形成し、挿入前に対して、カップラー153と光スキャナ156との間における光路長を増大させる。このようにして、第2切替部420によって、光スキャナ156とカップラー153との間における測定光路の光路長が変更される。
ここでは、第1切替部410のミラー411,414、および、第2切替部420のミラー421,422が、1つのステージ440の上に配置されており、各ミラー411,414,421,422が一体的に変位することによって、第1切替部410と第2切替部420とが、連動される。即ち、第1切替部410によって光スキャナ156と被検眼Eとの間の光路が短縮される場合に、第2切替部420において、ミラー421~424による迂回光路が形成され、その結果、光スキャナ156からカップラー153までの光路は延長される(図7B→図7A)。このとき、測定光路と参照光路の光路長差は、ステージ440の駆動の前後で増大される。その結果として、駆動後において参照光学系の調整を省略、或いは、簡略化できる。反対に、第1切替部410によって光スキャナ1
56と被検眼Eとの間の光路が短縮される場合には、第2切替部420において、ミラー421,422が測定光路から退避されることに伴って、測定光の迂回は解消され、その結果、光スキャナ156からカップラー153までの光路は短縮される(図7A→図7B)。このとき、測定光路と参照光路の光路調査は、ステージ440の駆動の前後で減少される。その結果として、駆動後において参照光学系の調整を省略、或いは、簡略化できる。また、第2切換部420は、折り返された2つの光路において、光路長が調整されるので、駆動量が少なく済み、装置のコンパクト化に貢献できる。
このようにして、第1切替部410による旋回点の位置変更に伴う測定光路における光路長変化(換言すれば、測定光路と参照光路との光路長差の変化)が、第2切替部420によって軽減される。
なお、図7において、第1切替部410におけるミラー411,412および第2切替部420におけるミラー421~424は、例えば、プリズム等に置き換えられてもよい。
<制御動作>
以下、図8に示すフローチャートを用いて、上記の構成を備えるOCTデバイス1の制御動作を順に説明する。例えば、本実施例においては、前眼部・眼底撮影モードを設定された場合の一例を示す。これによって、まず、前眼部撮影モードに設定され、制御部70は、前眼部Ecを撮影し、前眼部のOCTデータを取得するための設定を行う。制御部70は、前眼部のOCTデータの動画像、前眼部正面像等が表示される前眼部撮影画面(例えば、図11参照)をモニタ75に表示する。前眼部撮影画面においては、例えば、前眼部正面像を用いてOCTデータの取得位置が設定されてもよいし、OCTの走査パターンが設定されてもよい。
例えば、検者は、図示無き固視標を注視するよう被検者に指示する。図示なき前眼部撮像光学系により被検眼Eの前眼部が検出されると、その前眼部観察像60(図9参照)がモニタ75に表示される。前眼部観察像60上には、後述するアライメント指標像Ma~Mhが現れている。例えば、この状態において、制御部70は、OCT光学系100を内蔵する装置本体を駆動部により移動させることで、自動アライメントを開始する。なお、アライメント検出及び自動アライメントの手法については、以下に限定されず、周知の技術が採用可能である。
<被検眼の前眼部に対するアライメント(S1)>
例えば、制御部70は、被検眼Eと後述するアライメント基準位置O1との位置ずれに基づいて、被検眼EとOCT光学系100における光軸L1とのアライメントを行う(S1)。図9は被検眼Eの前眼部観察像60を示す図である。被検眼Eと測定光学系20とのアライメント状態を検出する際には、図示なき指標投影光学系において光源が点灯する。これによって、被検眼Eには指標像Ma~Mhがリング状に投影される。例えば、指標像Ma及びMeは無限遠であり、指標像Mh及びMfは有限遠である。制御部70は、指標像Ma~Mhにおけるリング形状のXY中心座標(図9に示す十字マーク)を略角膜頂点位置Kとして検出する。
例えば、被検眼Eの左右方向(X方向)及び上下方向(Y方向)におけるアライメント状態は、予め設定されたアライメント基準位置O1(図10参照)を用いて判定される。例えば、本実施例においては、アライメント基準位置O1が、被検眼Eの略角膜頂点位置Kと光軸L1とが一致する位置に設定されている。
図10はアライメント制御について説明する図である。例えば、制御部70は、検出した被検眼Eの略角膜頂点位置Kと、アライメント基準位置O1と、の偏位量Δdを求めることによって、被検眼Eに対する光軸L1のXY方向における位置ずれを検出する。例えば、被検眼Eに対してXY方向の位置ずれが検出された場合、制御部70は、偏位量Δdが0となるようにX方向及びY方向のアライメントを調整する。すなわち、制御部70は、被検眼Eの略角膜頂点位置Kと、アライメント基準位置O1と、が一致するように、X方向及びY方向のアライメントを調整する。
また、例えば、被検眼Eの前後方向(Z方向)におけるアライメント状態は、前述した指標像を用いて判定される。例えば、本実施例においては、OCTデバイス1に対して被検眼Eが適切な位置にある場合(すなわち、被検眼Eに対してZ方向の位置ずれがない場合)、無限遠の指標像MaからMeまでの像間隔aと、有限遠の指標像MhからMfまでの像間隔bと、がある一定の比率となるように設定されている。例えば、OCTデバイス1に対して被検眼Eが適切な位置にない場合(すなわち、被検眼Eに対してZ方向の位置ずれがある場合)、無限遠の指標像MaからMeまでの像間隔aはほとんど変化しないが、有限遠の指標像MhからMfまでの像間隔bは変化する。例えば、制御部70は、無限遠の指標像Ma及びMeの像間隔aと、有限遠の指標像Mh及びMfの像間隔bとの像比率(つまり、a/b)を比較し、これが一定の比率となるようにZ方向のアライメントを調整する。なお、上記構成の詳細については特開平6-46999号公報を参照されたい。
例えば、制御部70はこのようにして、被検眼Eに対してOCT光学系100を駆動させる。被検眼EとOCTデバイス1とのXYZ方向におけるアライメントが調整されると、制御部70はアライメントが完了したと判断し、アライメント完了信号を出力する。
<被検眼の前眼部撮影時における最適化制御(S2)>
アライメント完了信号が出力されると、制御部70は最適化を開始するためのトリガ信号を発し、最適化を開始する(S2)。例えば、最適化制御を行うことによって、検者が所望する前眼部部位が高感度・高解像度で観察できるようになる。
例えば、最適化制御として、例えば、偏光状態の調整(ポラライザ調整)が行われてもよい。この場合、例えば、制御部70は、偏光調整部300、302を制御することによって、干渉光を強く受光できる位置(すなわち、測定光と参照光の偏光状態が合う位置)に偏光状態を調整してもよい。
なお、最適化制御としては、例えば、前眼部に対する光路長の調整が行われてもよい。この場合、制御部70は、測定光と参照光の少なくともいずれかの光路長を調整することによって前眼部に対する光路長調整を行ってもよく、例えば、光路長を調整するための光学部材を初期位置から所定方向に移動させることによって、前眼部に対する光路長調整を行ってもよい。
また、最適化制御としては、例えば、前眼部に対するフォーカス調整が行われてもよい。この場合、例えば、制御部70は、被検眼Eの前眼部に合焦するように光学部材(例えば、フォーカシングレンズ)を駆動させ、オートフォーカス調整を行うようにしてもよい。
<前眼部のOCTデータの撮影(S3)>
例えば、制御部70は、アライメント調整と最適化制御が行われた上記の状態において、自動又は手動にて発せられるトリガ信号に基づいてOCT光学系100を制御することにより、前眼部のOCTデータを撮影(キャプチャー)する(S3)。前眼部のOCTデータは、2次元データであってもよいし、3次元データであってもよい。この場合、制御部70は、前眼部のOCTデータの撮影と同時に、前眼部の正面データを図示無き観察光学系を用いて取得してもよい。
<前眼部のOCTデータの確認(S4)、前眼部OCTデータの記憶(S5)>
前眼部のOCTデータが撮影された後、制御部70は、モニタ75の表示画面を撮影画面から確認画面に移行させる。制御部70は、画像化された前眼部のOCTデータを含む確認画面(例えば、図12参照)をモニタ75に表示する。なお、確認画面には、前眼部のOCTデータと共に、前眼部の正面データが表示されてもよい。
確認画面には、例えば、OKを示す第1のスイッチ500と、再撮影に移行するための第2のスイッチ502と、が表示されており、第1のスイッチ500が操作されると、制御部70は、撮影された前眼部のOCTデータを記憶部72に記憶すると共に、前眼部のOCTデータの確認画面を眼底撮影画面(例えば、図13参照)に移行する。第1のスイッチ500が操作され、撮影された前眼部のOCTデータを記憶部72に記憶されることで、前眼部のOCTデータの取得が完了される。
さらに、確認画面には、OCTデータの良否に関わらず、眼底撮影画面に移行するための第3のスイッチ504が配置されてもよく、制御部70は、第3のスイッチ504が操作されると、前眼部確認画面から眼底撮影画面に表示画面を移行する。なお、上記第1~第3のスイッチは、確認画面に表示される形態に限定されず、所定のコントローラパネルに物理的に配置される構成であってもよい。
なお、前眼部確認画面には、眼底撮影画面が小画面600として表示されてもよい。小画面600には、眼底のOCTデータ、眼底正面像の少なくともいずれかが表示されてもよい。
<集光位置の切換(S6)>
前述のように前眼部のOCTデータの取得が完了されると、これをトリガ信号として、制御部70は、導光光学系150を制御し、眼底のOCTデータを得るための光学配置に切り替えてもよい。この場合、例えば、制御部70は、被検眼瞳孔上に測定光の旋回点が形成されると共に、測定光の集光位置が眼底上に形成されるように、導光光学系150の光学配置を切り換えてもよい。これによって、測定光の集光位置が前眼部から眼底に切り替えられる。
<眼底に対する最適化制御(S7)>
集光位置が切り換えられた後、眼底に対する最適化制御が行われてもよい。この場合、制御部70は、測定光と参照光の少なくともいずれかの光路長を調整することによって、眼底に対する光路長調整を行ってもよい。例えば、制御部70は、光路長を調整するための光学部材(例えば、光学部材112)を初期位置から所定方向に移動させることによって、眼底に対する光路長調整を行ってもよい。なお、例えば、制御部70は、参照光路を経由した参照光の光路長と眼底を経由した測定光の光路長とが一致するように、測定光と参照光の少なくともいずれかの光路長を調整してもよい。ここで、OCT光学系100の検出器から出力されるOCTデータにおいて、眼底のOCTデータが含まれるように光路長が調整されてもよい。
また、集光位置の切換が行われた後、制御部70は、眼底にフォーカスを調整するための光学部材(例えば、フォーカシングレンズ)を駆動させるフォーカス調整部を制御し、眼底に対する導光光学系150のフォーカスを自動的に調整してもよい。例えば、制御部70は、観察光学系の検出器から出力される受光信号、又はOCT光学系100の検出器から出力される検出信号に基づいて、導光光学系150のフォーカスを調整してもよい。
また、追加的には、例えば、制御部70は、眼底に対する偏光状態の調整(ポラライザ調整)を行ってもよい。この場合、例えば、制御部70は、偏光調整部300、302を制御することによって、眼底反射光と参照光に基づく干渉光を強く受光できる位置(すなわち、測定光と参照光の偏光状態が合う位置)に移動させて、測定光の偏光状態を調整してもよい。
なお、上記のような眼底に対する最適化制御中において、制御部70は、前眼部に対する自動アライメントを継続的に実行してもよい。これにより、被検眼に対する位置関係を維持できるので、眼底に対する最適化制御を安定的に行うことができる。
<眼底撮影画面への移行>
集光位置の切換制御及び眼底に対する最適化制御が完了されると、制御部70は、眼底に対する撮影条件の調整が整った旨を報知してもよい。ここで、眼底撮影画面に移行されている状態においては、自動又は手動にて発せられるトリガ信号を待機した状態となる。眼底撮影画面においては、例えば、眼底正面像を用いてOCTデータの取得位置が設定されてもよいし、OCTの走査パターンが設定されてもよい。
<眼底OCTデータの取得(S8)>
眼底撮影画面への移行が完了され、集光位置の切換制御及び眼底に対する最適化制御が完了した状態において、制御部70は、自動又は手動にて発せられるトリガ信号に基づいてOCT光学系100を制御することにより、眼底のOCTデータを撮影(キャプチャー)する(S8)。眼底のOCTデータは、二次元データであってもよいし、3次元データであってもよい。この場合、制御部70は、眼底のOCTデータの撮影と同時に、前眼部の正面データを図示無き観察光学系を用いて取得してもよい。自動撮影を行う条件としては、例えば、オートアライメントが完了し、かつ、眼底に対する最適化制御が完了した状態であってもよい。
<眼底OCTデータの確認(S9)、眼底OCTデータの記憶(S10)>
眼底のOCTデータが取得された後、制御部70は、モニタ75の表示画面を撮影画面から確認画面に移行させる。制御部70は、画像化された眼底のOCTデータを含む確認画面(例えば、図14参照)をモニタ75に表示する。なお、確認画面には、眼底のOCTデータと共に、眼底の正面データが表示されてもよい。
確認画面には、例えば、OKを示す第1のスイッチ500と、再撮影に移行するための第2のスイッチ502と、が表示されており、第1のスイッチ500が操作されると、制御部70は、撮影された眼底のOCTデータを静止画として記憶部72に記憶する。一方、第2のスイッチ502が操作されると、制御部70は、表示画面を眼底撮影画面に移行させる。
上記のような制御によれば、前眼部のOCTデータの取得完了をトリガとして、測定光の集光位置が眼底に切り替わることによって、前眼部及び眼底に対する撮影条件の調整をスムーズに行うことが可能となり、結果として、前眼部と眼底のOCTデータを短時間で取得することが可能となる。
<変容例>
以下に上記実施例の変容例について説明する。
<確認画面の表示と測定光の集光位置の切換の並行>
制御部70は、確認画面の表示と並行して、測定光の集光位置の切換制御を行うようにしてもよい。これによって、眼底のOCTデータを得るまでの時間をより短縮できる。この場合、制御部70は、OKを示す第1のスイッチ500の操作に関わらず、前眼部のOCTデータの撮影動作完了(キャプチャー動作完了)をOCTデータの取得完了のトリガとして、導光光学系150を制御し、眼底のOCTデータを得るための光学配置に切り替えてもよい。
なお、集光位置の切換制御の完了後において、前眼部のOCTデータの確認画面が継続して表示されている場合、制御部70は、確認画面の表示と並行して、眼底に対する最適化制御を行うことによって、眼底のOCTデータを得るまでの時間をより短縮できる。
なお、前眼部確認画面において、集光位置の切換制御及び眼底に対する最適化制御が完了したような場合、例えば、制御部70は、前眼部確認画面において、その旨をモニタ75に表示してもよい(例えば、メッセージ602参照)。この場合、制御部70は、その旨のメッセージを表示してもよいし、眼底OCTデータと眼底正面像の少なくともいずれかを含む眼底撮影画面を表示する(例えば、サムネイル表示、拡大表示、強調表示等)ことによってその旨を報知してもよい。
ここで、第3のスイッチ504が操作されると、制御部70は、前眼部確認画面から眼底撮影画面に表示画面を移行してもよい。この場合、前眼部のOCTデータの確認は、一旦保留となる。なお、上記構成に限定されず、集光位置の切換制御及び眼底に対する最適化制御が完了されると、制御部70は、前眼部確認画面から眼底撮影画面に表示画面を自動的に移動させてもよい。
<前眼部のOCTデータの再取得>
なお、前眼部確認画面において、眼底のOCTデータの取得に向けた制御(集光位置切換、最適化制御)が既に行われている可能性がある。ここで、制御部70は、第2のスイッチ502の入力があっても、眼底のOCTデータの取得に向けた制御を優先することで、眼底撮影への移行途中において、前眼部撮影に戻ることによる時間ロスを軽減できる。
この場合、眼底のOCTデータを取得する制御が優先的に行われ、眼底のOCTデータが静止画として記憶部72に記憶された後、制御部70は、前眼部のOCTデータの取得に向けた制御(集光位置切換、最適化制御)を行うことによって、OCT光学系100にて前眼部のOCTデータを取得してもよい。これによって、眼底撮影への移行途中において、前眼部撮影に戻ることによる時間ロスを軽減できると共に、前眼部撮影をスムーズに行うことができる。もちろん、上記制御に限定されず、第3のスイッチ504が押された場合、制御部70は、前眼部のOCTデータの取得に向けた制御に移行してもよい。
<撮影条件の事前設定>
なお、上記説明において、前眼部撮影画面及び眼底撮影画面においてそれぞれ撮影条件が設定されたが、これに限定されず、前眼部のOCTデータと眼底のOCTデータを得る際の各撮影条件を複数の撮影条件から予め設定できる構成であってもよい。この場合、例えば、各撮影画面に移行する前に、前眼部のOCTデータと眼底のOCTデータを得る際の各撮影条件を設定するための指示を受け付け、制御部70は、各撮影モードにおいて、設定された撮影条件に応じて撮影を行う。撮影条件を設定するための指示は、例えば、検者からの操作信号に基づいて受け付けられてもよい。これによれば、各撮影画面において、撮影条件を設定する手間を軽減できるので、スムーズに前眼部と眼底のOCTデータを得ることができる。
なお、撮影条件としては、例えば、測定光の走査条件であってもよく、走査条件としては、走査パターン、走査範囲のサイズ、走査位置、走査部位(例えば、黄斑、乳頭)の少なくともいずれかであってもよい。その他、走査条件としては、走査密度、走査速度の少なくともいずれかであってもよい。
さらに、各撮影モードにおいて、複数の撮影条件が設定されてもよく、制御部70は、予め設定された複数の撮影条件に応じて複数のOCTデータを取得してもよい。例えば、制御部70は、第1の走査パターン(例えば、ラインスキャン)にて前眼部の第1のOCTデータを取得し、第2の走査パターン(例えば、マップスキャン)にて前眼部の第2のOCTデータを取得する。そして、制御部70は、前眼部の第2のOCTデータの取得完了をトリガとして測定光の集光位置を切り換えてもよい。集光位置が切り換えられた後、制御部70は、第1の走査パターン(例えば、マップスキャン)にて眼底の第1のOCTデータを取得してもよい。追加的には、制御部70は、第2の走査パターンにて眼底の第2のOCTデータを取得してもよい。もちろん、上記例は一例であり、複数の撮影条件が設定される場合において、種々の変容が可能である。
また、撮影条件としては、例えば、OCTデータの特性であってもよく、OCTデータとして、被検眼の形態データを示すOCTデータであってもよいし、被検眼の血管データを示すOCTデータ(例えば、モーションコントラストデータ)であってもよい。
なお、上記説明においては、前眼部確認画面と共に眼底撮影画面が小画面として表示されることで、前眼部のOCTデータを確認しながら、眼底撮影の状況を確認できる。もちろん、これに限定されず、前眼部確認画面と眼底撮影画面が別画面として切換表示されてもよい。また、前眼部OCTデータを得るための前眼部撮影画面と、眼底のOCTデータを得るための眼底撮影画面とが同一画面上に表示され、各撮影画面において撮影条件が設定できる表示形態であってもよい。これにより、撮影条件の設定をスムーズに行うことができる。
また、前眼部OCTデータを確認するための前眼部確認画面と、眼底のOCTデータを確認するための眼底確認画面とが同一画面上に表示され、各確認画面においてOCTデータを確認できる表示形態であってもよい(図15参照)。
なお、上記説明においては、OCTデータとしては、被検眼Eの形態を示す形態断層データであってもよいし、被検眼の血管状態を示すOCTモーションコントラストデータであってもよい。例えば、前眼部のOCTモーションコントラストデータ(例えば、前眼部の房水領域)と、眼底のOCTモーションコントラストデータ(例えば、眼底血流領域)とが並べて表示されてもよい。
また、OCTデータとしては、複数のOCTデータを繋ぎ合わせたパノラマOCTデータであってもよく、前眼部のパノラマOCTデータと眼底のパノラマOCTデータの少なくともいずれかが取得されてもよい。
また、例えば、本実施例における眼科撮影装置は、前眼部のOCTデータを処理することによって、混濁部の二次元分布を示す解析情報を取得し、解析情報に基づいてOCT光学系における測定光の走査位置を設定してもよい。これによって、検者は、被検眼に生じた混濁部の位置を容易に判断することができる。また、検者は、測定光の走査位置を容易に設定することができる。