<概要>
以下、典型的な実施形態の1つについて、図面を参照して説明する。図1~図11は、本実施形態に係る眼科撮影装置を説明する図である。本実施形態においては、被検眼の水平方向をX方向、鉛直方向をY方向、軸方向をZ方向として説明する。眼底の表面方向をXY方向として考えてもよい。なお、以下の<>にて分類された項目は、独立または関連して利用され得る。
なお、本開示は、本実施例に記載する装置に限定されない。例えば、下記実施形態の機能を行う端末制御ソフトウェア(プログラム)を、ネットワークまたは各種記憶媒体等を介してシステムあるいは装置に供給し、システムあるいは装置の制御装置(例えば、CPU等)がプログラムを読み出して実行することも可能である。
例えば、本実施例における眼科撮影装置(例えば、眼科撮影装置1)は、OCT光学系(例えば、OCT光学系2)を有し、OCT信号を処理することで被検眼のOCT画像データを取得する。例えば、OCT光学系(OCTデバイス)は、フーリエドメイン光コヒーレンストモグラフィー(FD-OCT)を基本的構成としてもよい。例えば、FD-OCTとしては、スペクトルドメインOCT(SD-OCT)、波長掃引式OCT(SS-OCT)を用いてもよい。また、例えば、OCTデバイスは、タイムドメインOCT(TD-OCT)を基本構成としてもよい。なお、例えば、本開示の技術は、被検物の反射強度を検出するためのスダンダートOCT、被検物のモーションコントラストデータを検出するためのOCTアンジオグラフィー(例えば、ドップラーOCT)、偏光感受OCT(PS-OCT:Polarization Sensitive OCT)等において適用されてもよい。また、スダンダートOCTとPS-OCTとが複合されたマルチファンクションOCTにおいて適用されてもよい。
<OCT光学系>
例えば、OCT光学系は、被検眼に照射された測定光と参照光によるOCT信号を検出する。また、例えば、OCT光学系は、被検眼の第1深度帯に対応する第1位置(例えば、被検眼の前眼部等)と、被検眼の第1深度帯とは異なる第2深度帯に対応する第2位置(例えば、被検眼の眼底等)と、におけるOCT画像データを取得できる。
なお、被検眼の前眼部は、OCT光学系を用いて、その画像データを取得する構成であってもよい。もちろん、被検眼の前眼部は、SLO(Scanning Laser Ophthalmoscope)やシャインプルークカメラ等を用いて、その画像データを取得する構成であってもよい。すなわち、被検眼に光束を照射し、被検眼からの反射光を受光する受光素子を有し、受光素子からの受光信号に基づいて、被検眼の正面像を得るものを利用してもよい。
例えば、OCT光学系は、OCT原理を用いて被検物の断層像を得るための干渉計に係る構成を備えていてもよい。例えば、OCT光学系は、光源(例えば、光源11)、分割器(例えば、カップラー15)、コンバイナ(光合成器)(例えば、カップラー15)、検出器(例えば、検出器40)、参照光学系(例えば、参照光学系30)を備えていてもよい。
例えば、分割器は、光源からの光を測定光と参照光に分割してもよい。例えば、コンバイナは、測定光と参照光とを合成(干渉)させてもよい。例えば、分割器とコンバイナは兼用されてもよい。また、例えば、分割器とコンバイナは別途設けられてもよい。例えば、分割器及びコンバイナには、ビームスプリッタ、ハーフミラー、ファイバーカップラー、サーキュレータ等のいずれかを用いてもよい。
例えば、検出器は、測定光と参照光との干渉により生じた干渉信号光を受光してもよい。例えば、参照光学系は、参照光を装置内で進行させ、測定光と干渉させるための構成を備えていてもよい。
<測定光学系>
例えば、測定光学系(例えば、測定光学系20)は、測定光を被検眼の第1深度帯に対応する第1位置へ導くための構成であってもよい。また、例えば、測定光学系は、測定光を被検眼の第2深度帯に対応する第2位置へ導くための構成であってもよい。例えば、測定光学系は、走査部(光スキャナー)(例えば、走査部24)を備えていてもよい。例えば、走査部は、測定光を被検眼の第1深度帯に対応する第1位置上で走査する。また、例えば、走査部は、測定光を被検眼の第2深度帯に対応する第2位置上で走査する。例えば、走査部は、互いに異なる方向へ測定光を偏向する2つの光スキャナ(例えば、ガルバノミラー241、ガルバノミラー242)を含んでいてもよい。例えば、走査部に含まれる光スキャナには、MEMSスキャナ、レゾナントスキャナ、ポリゴンミラー等の反射型スキャナや、音響光学素子を用いてもよい。すなわち、走査部に含まれる光スキャナは、測定光を偏向することが可能なスキャナであればよい。
<OCT画像データ>
例えば、OCT画像データは、被検眼の反射強度特性を示す断層画像データ、被検眼のOCTアンジオ画像データ(例えば、OCTモーションコントラスト画像データ)、被検眼のドップラー特性を示すドップラーOCT画像データ、被検眼の偏光特性を示す偏光特性画像データ、等の少なくともいずれかであってもよい。なお、各データは、生成された画像のデータであってもよいし、画像が生成される前の信号データであってもよい。
例えば、断層画像データは、Aスキャン断層画像データであってもよい。また、例えば、断層画像データは、Bスキャン断層画像データであってもよい。なお、例えば、Bスキャン断層画像データは、走査ライン(横断位置)に沿って測定光をXY方向のいずれかの方向(例えば、X方向)に走査させることによって取得される断層画像データであってもよい。また、例えば、断層画像データは、三次元断層画像データであってもよい。なお、例えば、三次元断層画像データは、測定光を二次元的に走査することによって取得される断層画像データであってもよい。例えば、OCT画像データは、三次元断層画像データから取得されるOCT正面(Enface)画像データ(例えば、深さ方向に関して積算された積算画像、XY各位置でのスペクトルデータの積算値、ある一定の深さ方向におけるXY各位置での輝度データ、網膜表層画像、等)であってもよい。
例えば、OCTアンジオ画像データは、二次元OCTアンジオ画像データであってもよい。なお、例えば、二次元OCTアンジオ画像データは、走査ライン(横断位置)に沿って測定光をXY方向のいずれかの方向(例えば、X方向)に走査させることによって取得されるOCTアンジオ画像データであってもよい。また、例えば、OCTアンジオ画像データは、三次元OCTアンジオ画像データであってもよい。なお、例えば、三次元OCTアンジオ画像データは、測定光を二次元的に走査することによって取得されるOCTアンジオ画像データであってもよい。また、例えば、OCTアンジオ画像データは、三次元モーションコントラストデータから取得される正面(En face)モーションコントラストデータであってもよい。
例えば、OCT画像データは、被検眼の前眼部に対するOCT画像データ(前眼部OCT画像データ)であってもよい。例えば、前眼部OCT画像データは、前眼部断面画像データであってもよい。すなわち、前眼部断面画像データは、被検眼の角膜前面から水晶体後面までの間における断面画像データであってもよい。また、例えば、OCT画像データは、被検眼の眼底に対するOCT画像データ(眼底OCT画像データ)であってもよい。
例えば、本実施例において、眼科撮影装置は、被検眼の前眼部断面画像データを取得する取得手段(例えば、制御部70)を備えていてもよい。また、例えば、眼科撮影装置は、取得手段によって取得された前眼部断面画像データに基づいて、測定光の走査位置を設定する走査位置設定手段(例えば、制御部70)を備えていてもよい。また、例えば、眼科撮影装置は、OCT光学系を制御し、走査位置設定手段によって設定された走査位置において、被検眼の眼底OCT画像データを取得する制御手段(例えば、制御部70)を備えていてもよい。このような構成によって、検者は、被検眼の前眼部と眼底におけるそれぞれの画像データを効率よく取得することができる。
<走査位置設定手段>
例えば、走査位置設定手段は、前眼部断面画像データを処理することによって、混濁部の二次元分布を示す解析情報を取得してもよい。例えば、走査位置設定手段は、前眼部断面画像データを処理することで、被検眼の深さ方向に対する解析情報を取得する構成であってもよい。また、例えば、走査位置設定手段は、前眼部断面画像データを積算した正面画像データを処理することによって、被検眼の上下左右方向に対する解析情報を取得する構成であってもよい。
例えば、解析情報は、前眼部断面画像データを解析処理することによって取得される二次元分布(解析マップ)であってもよい。なお、解析マップは、信号データであってもよいし、信号データが画像化された画像データであってもよい。
例えば、解析情報は、前眼部断面画像データの輝度分布を示す情報であってもよい。例えば、輝度分布を示す情報は、前眼部断面画像データを二値化処理することによって取得される二値化マップであってもよい。例えば、二値化マップは、前眼部断面画像データの画素ごとに輝度値を検出することで取得してもよいし、XYZ方向のいずれか一方向に対する輝度の立ち上がりや立ち下がりを検出することによって取得してもよい。二値化マップを取得する場合には、所定の輝度値が検出された場合と、検出されなかった場合と、で二値化処理がされるようにしてもよい。
また、例えば、解析情報は、混濁部を特定した混濁マップであってもよい。例えば、混濁マップは、前眼部断面画像データの輝度値を検出し、検出した輝度値に基づいて、混濁部の判定処理をすることで、取得されてもよい。例えば、混濁マップは、前眼部断面画像データから検出された輝度値が、所定の輝度値を満たすか否かを判定することによって、混濁部の判定を行うようにしてもよい。なお、判定処理に用いられる所定の輝度値は、予め、実験やシミュレーションによって取得されるようにしてもよい。なお、混濁マップは、他の解析情報に基づいて取得されるようにしてもよい。この場合には、例えば、二値化マップに基づいて、混濁部の判定処理を行うようにしてもよい。
なお、例えば、上記のようにして取得された解析情報は、モニタに表示されるようにしてもよい。
例えば、走査位置設定手段は、解析情報に基づいて、OCT光学系における測定光の走査位置を設定する。例えば、このような構成によって、検者は、被検眼に生じた混濁部の位置を容易に判断することができる。また、検者は、測定光の走査位置を容易に設定することができる。
例えば、走査位置設定手段は、解析情報に基づいて光透過領域を特定し、光透過領域をOCT光学系における測定光が通過するように、OCT光学系における測定光の走査位置を設定するようにしてもよい。これによって、検者は、被検眼に生じた混濁部を回避するように、測定光の走査位置を容易に設定することができる。
例えば、走査位置設定手段は、OCT光学系における測定光の被検眼への入射位置を設定することで、測定光の走査位置を設定してもよい。例えば、走査位置の設定には、測定光の入射位置の設定と、測定光の入射角度(走査角度)の設定と、測定光の走査範囲の設定と、の少なくともいずれかが含まれる。例えば、走査位置設定手段は、これらの設定の少なくともいずれかを行ってもよいし、これらの設定を組み合わせて行ってもよい。例えば、走査位置設定手段は、走査位置を設定する構成として、OCT光学系を移動させてもよい。また、走査位置を設定する構成として、OCT光学系が備える光学部材を移動させてもよい。また、走査位置を設定する構成として、OCT光学系の光路中に光学部材を挿脱してもよい。このような構成によって、検者は、被検眼の混濁部を回避するように測定光の被検眼への入射位置を設定し、効率よく眼底撮影を行うことができる。
<被検眼とOCT光学系のアライメント>
例えば、アライメント検出手段(例えば、制御部70)は、被検眼とアライメント基準位置との位置ずれに基づいて、被検眼とOCT光学系の光軸とのアライメント状態を検出する。例えば、この場合、アライメント基準位置が設定され、アライメント基準位置からのずれ量が検出されることで、被検眼のアライメント状態が検出されてもよい。なお、アライメント基準位置には、アライメントの適否を判断するための許容範囲が設けられていてもよい。また、被検眼とアライメント基準位置との位置ずれが検出された場合には、位置ずれに基づいてOCT光学系における光軸の位置を補正するようにしてもよい。
例えば、アライメント状態の検出には、被検眼の前眼部観察像(例えば、前眼部観察像60)を解析処理して用いてもよい。例えば、この場合、被検眼の角膜に形成された指標像が前眼部観察像から検出される構成であってもよい。また、例えば、前眼部における各部位(例えば、黒目部分、虹彩部分、瞳孔部分、強膜部分(白目部分)等)が前眼部観察像から検出される構成であってもよい。なお、前眼部観察像の解析処理は、指標像や各部位を画像処理によって検出できる処理であればよい。
また、例えば、アライメント検出手段は、走査位置設定手段によって設定された入射位置に測定光が照射されるように、アライメント基準位置を設定する構成であってもよい。これによって、検者は、測定光を被検眼に対してより正確な位置に入射させることができる。
例えば、アライメント制御手段(例えば、制御部70)は、被検眼に対してOCT光学系を駆動させる駆動手段(例えば、移動台102、駆動部106)を駆動して、被検眼に対するOCT光学系の自動アライメントを行う構成であってもよい。例えば、この場合には、アライメント検出手段の検出結果に基づいて、アライメント基準位置の許容範囲内にOCT光学系の光軸が位置されるようにしてもよい。これによって、アライメントが精度よく行われ、検者は効率的に被検眼とOCT光学系とを位置合わせ(アライメント)することができる。
例えば、本実施例における眼科撮影装置は、前眼部断面画像データとして、OCT光学系を制御して、第1位置において被検眼の前眼部OCT画像データを取得するようにしてもよい。この場合には、例えば、取得手段が、第1位置における被検眼の前眼部OCT画像データを取得してもよい。また、例えば、本実施例における眼科撮影装置は、OCT光学系を制御して、第2位置において被検眼の眼底OCT画像データを取得するようにしてもよい。この場合には、例えば、制御手段が、第2位置における被検眼の眼底OCT画像データを取得してもよい。このような構成であることによって、新たな部材やアタッチメント等を必要とせず、深度帯が異なる部位を容易に撮影できるようになる。なお、例えば、第1位置における前眼部OCT画像データと、第2位置における眼底OCT画像データと、は異なるタイミングで取得する構成であってもよいし、同時に取得する構成であってもよい。この場合には、第1位置からの戻り光と参照光とが干渉した干渉信号と、第2位置からの戻り光と参照光とが干渉した干渉信号と、を同時に取得することができる光学系配置としてもよい。
また、例えば、制御手段は、取得手段によって前眼部OCT画像を取得した後に、OCT光学系を制御して、第2位置において被検眼の眼底OCT画像データを取得する構成であってもよい。これによって、検者は、被検眼の前眼部と眼底を連続して撮影し、効率よく測定を行うことができる。
例えば、本実施例における眼科撮影装置は、前眼部断面画像データに基づいて、測定光の走査位置を遂次設定するようにしてもよい。この場合には、例えば、取得手段が、被検眼の前眼部断面画像データをリアルタイムで取得するようにしてもよい。また、例えば、走査位置設定手段は、取得手段によってリアルタイムで取得された前眼部断面画像データに基づいて、測定光の走査位置を遂次設定してもよい。このような構成によって、所望する撮影部位に測定光が入射するように、走査位置が常に補正される。従って、検者は、眼底OCT画像データをより正確に取得することができる。
例えば、本実施例における眼科撮影装置は、被検眼の前眼部断面画像データとして、前眼部三次元断面画像データを取得してもよい。例えば、この場合には、取得手段が、被検眼の前眼部断面画像データとして、前眼部三次元断面画像データを取得する。このような構成によって、被検眼における混濁部の位置を、XY方向だけでなく、Z方向においても特定することができる。従って、検者は、被検眼の眼底OCT画像データを精度よく取得することができる。
<実施例>
以下、本開示の実施例について図面を用いて説明する。図1は本実施例に係る眼科撮影装置1の外観構成図である。例えば、眼科撮影装置1は、基台101と、移動台102と、測定部103と、操作部材104と、顔支持ユニット105と、駆動部106と、モニタ75と、を備える。例えば、移動台102は、基台101に対して左右方向(X方向)及び前後方向(Z方向)に移動可能である。例えば、測定部103は後述する光学系を収納する。例えば、顔支持ユニット105は、被検者の顔を支持するために基台101に固設されている。例えば、駆動部106は、移動台102に対して上下方向(Y方向)に移動可能である。例えば、モニタ75は、後述するOCT画像データ等を表示する。
例えば、操作部材(ジョイスティック)104には、被検眼Eに対して測定部103を相対的に移動させる移動機構が設けられている。より詳細には、例えば、ジョイスティック104は、基台101上で移動台102をXZ方向に摺動させる図示なき摺動機構を備える。例えば、ジョイスティック104を操作すると、移動台102が基台101上をXZ方向に摺動する。また、ジョイスティック104には回転ノブが設けられている。例えば、ジョイスティック104を回転操作すると、駆動部106がY方向へ駆動し、測定部103がY方向に移動する。例えば、これによって、被検眼Eに対して測定部103を移動させることができる。
なお、本実施例においては、駆動部106によって測定部103をY方向へ移動させる構成を例に挙げて説明したがこれに限定されない。例えば、測定部103には、測定部103をXYZ方向に移動可能とする移動機構を設けてもよい。この場合には、例えば、被検眼Eに対して測定部103のXYZ方向の移動機構が、測定部103を微動させる際に用いられ、移動台102の摺動機構が、測定部103を粗動させる際に用いられるようにしてもよい。
例えば、本実施例における眼科撮影装置1は、被検眼Eの深さ情報を取得する光断層干渉計(以下、OCTデバイス1と称す)である。例えば、OCTデバイス1は、フーリエドメイン光コヒーレンストモグラフィー(FD-OCT:Fourier Domain OCT)であってもよいし、タイムドメインOCT(TD-OCT:Time Domain OCT)であってもよい。FD-OCTとしては、スペクトルドメインOCT(SD-OCT:Spectral Domain OCT)、波長掃引式OCT(SS-OCT:Swept Source OCT)が代表的であり、もちろん、それらの装置に対して本開示が適用され得る。
図2A及び図2Bは、本実施例に係る眼科撮影装置1の光学系及び制御系を示す概略構成図である。図2Aは眼底撮影時の光学配置を示し、図2Bは前眼部撮影時の光学配置を示している。図2Aと図2Bに示すOCTデバイス1は、主に、干渉光学系(OCT光学系)2と、測定光学系(導光光学系)20と、制御部70と、を備える。本実施例におけるOCTデバイス1は、さらに、固視標投影ユニット90(第2光学系)と、記憶部(メモリ)72と、操作部74と、モニタ75と、を備える。例えば、前述した測定部103には、OCT光学系2と、測定光学系20と、固視標投影ユニット90と、が収納される。また、例えば、前述した移動台102には、制御部70と、記憶部72と、が収納される。
まず、OCT光学系2について説明する。OCT光学系2は、光源11から発せられた光束を測定光と参照光に分割する。OCT光学系2は、測定光を被検眼Eに導くと共に、参照光を参照光学系30に導く。そして、OCT光学系2は、被検眼Eに照射された測定光と参照光との干渉を検出器(光検出器)40によって検出する。より具体的には、本実施例では、被検眼Eで反射(または後方散乱)された測定光、及び参照光の合成による干渉光が検出器40によって検出され、干渉信号が取得される。
例えば、SD-OCTの場合、光源11として低コヒーレント光源(広帯域光源)が用いられ、検出器40には、干渉光を周波数成分に分光する分光光学系(スペクトルメータ)が設けられる。例えば、スペクトルメータは、回折格子とラインセンサからなる。
また、例えば、SS-OCTの場合、光源11として出射波長を時間的に高速で変化させる波長走査型光源(波長可変光源)が用いられ、検出器40には、例えば、単一の受光素子が設けられる。光源11は、例えば、光源、ファイバーリング共振器、及び波長選択フィルタによって構成される。そして、波長選択フィルタとして、例えば、回折格子とポリゴンミラーの組み合わせ、ファブリー・ペローエタロンを用いたものが挙げられる。
OCTデバイス1では、測定光学系20の光学配置が切り換わる。一例として、図2Aに示す光学配置と、図2Bに示す光学配置とに切り換わってもよい。図2A及び図2Bの光学配置では、OCTデバイス1によって断層像が撮像される部位の深度帯が互いに異なる。以下、本実施例においては、OCTデバイス1にSD-OCTを適用した場合を例に挙げて説明する。
図2Aと図2Bに例示するOCT光学系2は、光源11と、光ファイバ15a,15b,15c,15dと、分割器15と、参照光学系30と、検出器40と、を備える。
光源11は、OCT光学系2の測定光及び参照光として用いられる低コヒーレントの光を発する。光源11としては、例えば、SLD光源等が用いられてもよい。より詳細には、例えば、光源11はλ=800nm~1100nmの間に中心波長を持つ光を出射してもよい。光源11からの光は、光ファイバ15aを介して、分割器15へ導かれる。
なお、光ファイバ15a,15b,15c,15dは、内部に光を通過させることで、分割器15,光源11,測定光学系20,参照光学系30,及び検出器40等のそれぞれを繋ぐ。
分割器15は、(光ファイバ15aを介して)光源11から導かれた光を、測定光と参照光とに分割する。測定光は、光ファイバ15bを通って、測定光学系20へ導かれる。一方、参照光は、光ファイバ15c、及びポラライザ31を介して、参照光学系30へ導かれる。
図2A,図2Bの例において、分割器15は、被検眼Eへ導光された測定光の戻り光と、参照光との導光路を結合する結合部(コンバイナ)を兼用する(詳細は後述する)。このような分割器15は、例えば、ファイバーカップラーであってもよい。以下、分割器15をカップラー15と示す。
便宜上、ここで、測定光学系20について説明する。測定光学系20は、例えば、測定光を被検眼Eに導く。一例として、図2A,図2Bに示す測定光学系20は、コリメータレンズ21,光束径調節部22,集光位置可変光学系(集光位置可変レンズ系)23,走査部(光スキャナー)24,ミラー25,ダイクロイックミラー26,及び対物光学系27を有する。
コリメータレンズ21は、光ファイバ15bの端部16bから出射される測定光をコリメートする。
光束径調節部22は、OCT光学系2と走査部24(つまり、光スキャナ)との間の光路中に配置されており、その光路における測定光の光束径を変更するために利用される。図2A,図2Bの例において、光束径調節部22は、測定光学系20におけるカップラー15と、走査部24と、の間の光路中に設けられる。光束径調節部22は、例えば、挿脱機構によって光路から挿脱可能なアパーチャ、可変ビームエクスパンダ,及び開口の径を調整可能な可変アパーチャ等の少なくともいずれかであってもよい。例えば、本実施例において図2A,図2Bに示す光束径調節部22は、可変ビームエクスパンダである。図2A,図2Bに示すように、可変ビームエクスパンダには、例えば、2つのレンズ22a,22bと、駆動部22cと、が含まれてもよい。駆動部22cは、互いのレンズ22a,22bにおける光軸方向の位置関係を、制御部70からの制御信号に基づいて変更する。これにより、測定光の光束径(及び、開口数NA)が変更される。
集光位置可変光学系23は、測定光の集光位置を、光軸L1方向に変更するために利用される。集光位置可変光学系23は、少なくとも1つのレンズ23aを有し、レンズ23aを用いて測定光の集光位置を、光軸L1方向に関して調整する。図2A,図2Bの例において、集光位置可変光学系23は、カップラー15と、走査部24と、の間の光路中に設けられている。なお、本実施例では、光束径調節部22と走査部24との中間に集光位置可変光学系23が配置される。しかし、光束径調節部22と集光位置可変光学系23の配置は、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、互いに置き換えられてもよい。また、両者の間にリレー光学系等が介在してもよい。レンズ23aは、光軸L1方向に関して、測定光の集光位置を定めるフォーカス光学系を構成する。集光位置可変光学系23は、レンズ23a単独で構成されてもよいし、レンズ23aと、それ以外の光学素子と共に構成されてもよい。集光位置可変光学系23は、例えば、レンズ23aの屈折力,対物光学系27とレンズ23aとの光軸L1方向に関する位置関係,のいずれかを調整する構成で実現される。なお、対物光学系27とレンズ23aとの位置関係の調整は、例えば、光軸L1方向に関するレンズ23aの位置,レンズ23aと対物光学系27aとの間の光路長,及び,測定光路に対するレンズの挿脱,のいずれかによって実現されてもよい。この場合、レンズ23aを所期する方向に移動させる駆動部(アクチュエータ)が、制御部70によって制御される。
図2A,図2Bの例において、レンズ23aは、可変焦点レンズである。レンズ23aは、光軸L1に対して静止した状態で、焦点位置を変更可能である。レンズ23aは、制御部70によって設定される印加電圧の大きさに応じて、屈折力を変化させる。典型的な可変焦点レンズとしては、液晶レンズ等が知られている。なお、屈折力可変のレンズとしては、液晶レンズに限られるものではなく、例えば、液体レンズ、非線形光学部材、分子部材、回転非対称な光学部材等であってもよい。
走査部24は、測定光を走査するために、OCT光学系からの測定光を偏向する光スキャナを有する。走査部24は、例えば、2つのガルバノミラー241,242(光スキャナの一例)を有してもよい。図3の例において、241は、X走査用ガルバノミラーであり、242は、Y走査用ガルバノミラーである。各ガルバノミラー241,242は、それぞれ、ミラー部241a,242aと、それぞれの241a,242aを回転させる駆動部241b,242b(例えば、モーター)を含んでいてもよい。制御部70が、各々のガルバノミラー241,242の向きを独立に制御することで、測定光の進行方向を変更する。その結果、被検眼Eに対して、上下左右方向に測定光を走査することができる。なお、走査部24は、ガルバノミラー241b,242b以外の光スキャナを用いることができる。例えば、反射型のスキャナ(例えば、MEMSスキャナ、レゾナントスキャナ、ポリゴンミラー等)が用いられてもよいし、音響光学素子等が用いられてもよい。
図2A,図2Bの例では、走査部24によって進行方向が変えられた測定光は、各ミラー面が直角を挟んで配置されるミラー25,及び,ダイクロイックミラー26,のそれぞれで反射される。これにより、測定光は、走査部24からの出射時とは反対向きに折り返される。その結果として、測定光が対物光学系27へ導かれる。
本実施例において、対物光学系27は、固定的に配置されている。より詳細には、対物光学系27は、測定光学系20において、走査部24と被検眼Eとの間に配置されている。対物光学系27は、光スキャナ(本実施例では、ガルバノミラー241,242)によって偏向された測定光を、被検眼Eに導く。本実施例において、対物光学系27は、正のパワーを持つレンズ系(対物レンズ系)として形成されている。このため、走査部24からの測定光は、対物光学系27を通過することで、光軸L1側に折れ曲がる。なお、図2A,図2Bでは、便宜上、対物光学系27を、2枚のレンズ27a,27bからなる光学系として示しているが、対物光学系27を構成するレンズの数は、これに限定されない。対物光学系27は、1枚のレンズに置き換えてもよいし、3枚以上のレンズに置き換えてもよい(例えば、図4A及び図4B参照)。また、対物光学系27は、レンズ系に限られるものではなく、例えば、ミラー系であってもよいし、レンズとミラーとの組み合わせによる光学系であってもよいし、レンズ及びミラー以外の光学部材を含む光学系であってもよい。
このような測定光学系20では、光ファイバ15bの端部16bから測定光が出射すると、コリメータレンズ21によって測定光がコリメートされる。その後、測定光は、光束径調節部22及び集光位置可変光学系23を通過して、走査部24に達する。測定光は、走査部24に設けられた2つのガルバノミラーで反射された後、更に、ミラー25及びダイクロイックミラー26で反射される。その結果、測定光は、対物光学系27に入射する。そして、測定光は、対物光学系27を通過して、被検眼Eへ導光される。その後、測定光は、被検眼Eで反射または散乱され、その結果として、測定光学系20を逆に辿って光ファイバ15bの端部16bに入射する。端部16bに入射した測定光は、光ファイバ15bを介して、カップラー15に入射する。
OCTデバイス1は、駆動部(アクチュエータ)を備える。駆動部は、対物光学系27に対する走査部24(つまり、光スキャナであるガルバノミラー241,242)の相対位置であって、測定光学系20の光軸L1方向に関する相対位置を変位させる。より詳細には、駆動部の駆動によって、対物光学系27の後側焦点位置(又は、その共役位置)に対する走査部24の相対位置が変更される。この相対位置の変位によって、測定光の旋回位置が光軸L1方向に関して変更される(詳細は後述する)。駆動部は、走査部24、及び、対物光学系27と走査部24との間に配置される光学部材、の少なくとも一方を移動させることで、対物光学系27に対する走査部24の相対距離を変位させてもよい。図2A,図2Bの例において、OCTデバイス1は、駆動部50を有する。対物光学系27と走査部24との間隔(光路長)が、駆動部50の駆動によって変更され、これにより、対物光学系27に対する走査部24の相対位置が変位される。この相対位置は、断層像が撮影される被検眼Eの深度帯と対応して変更される。
図2A,図2Bの例において、駆動部50は、それぞれのミラー面が直角を挟んで配置される2枚のミラー(ミラー25及びダイクロイックミラー26)を、所定の方向に一体的に移動させる。本実施例では、対物光学系27の光軸方向に移動される。その結果、走査部24から対物光学系27までの光路長が変更される(例えば、図2A→図2B,図2B→図2A)。例えば、断層像が得られる深度帯を前眼部Ecと眼底Erとの間で切り換える場合は、走査部24から対物光学系27までの光路長を比較的大きく変更する必要がある。これに対し、図2Aの例において、走査部24から出射した測定光は、2枚のミラーによって折り返されているので、2枚のミラーを移動させた場合、走査部24から対物光学系27までの光路長の変化(換言すれば、対物光学系27に対する走査部24の光軸L1方向に関する変位量)を、2枚のミラー25,26の移動量の2倍とることができる。故に、対物光学系27に対する走査部24の位置を、測定光学系20の光軸L1方向に関して変位させるために必要なスペースを抑制できる。
また、図2A,図2Bに示すように、OCTデバイス1は、対物光学系27に対する走査部24の位置を検出するためのセンサ51を備えていてもよい。センサ51としては、様々なデバイスを利用可能である。例えば、ポテンショメータ等のリニア変位センサがセンサ51として適用されてもよい。
ここで、OCT光学系2の説明に戻る。参照光学系30は、参照光を生成する。参照光は、眼底Erによって反射された測定光の反射光と合成される光である。参照光学系30は、マイケルソンタイプであってもよいし、マッハツェンダタイプであっても良い。図2A,図2Bに例示する参照光学系30は、反射光学系(例えば、参照ミラー34)によって形成される。図2A,図2Bの例では、カップラー15からの光が、反射光学系によって反射されることで再度カップラー15に戻され、結果として、検出器40に導かれる。必ずしもこれに限られるものではなく、参照光学系30は、透過光学系(例えば、光ファイバー)によって形成されてもよい。この場合、参照光学系30は、カップラー15で分割された参照光を、カップラー15へ戻さずに、透過させることで検出器40へ導く。
図2A,図2Bの例において、参照光学系30は、分割器15から、参照ミラー34までの光路に、光ファイバ15c,光ファイバ15cの端部16c,コリメータレンズ33,参照ミラー34,を有している。光ファイバ15cは、参照光の偏光方向を変化させるため、駆動部32により回転移動される。すなわち、光ファイバ15c及び駆動部32は、偏光方向を調整するためのポラライザ31として用いられる。なお、ポラライザとしては、上記構成に限定されず、測定光の光路または参照光の光路に配置されるポラライザを駆動させることにより、測定光と参照光の偏光状態を略一致させるものであればよい。例えば、1/2波長板や1/4波長板を用いることや光ファイバに圧力を加えて変形させることで偏光状態を変えるもの等が適用できる。
なお、ポラライザ31(偏光コントローラ)は、測定光と参照光の偏光方向を一致させるために、測定光と参照光の少なくともいずれかの偏光方向を調整する構成であればよい。例えば、ポラライザ31は、測定光の光路に配置された構成であってもよい。
また、参照ミラー34は、参照ミラー駆動部34aによって、光軸方向L2に関して変位する。参照ミラー34が変位することで、参照光の光路長が調整される。
光ファイバ15cの端部16cから出射した参照光は、コリメータレンズ33で平行光束とされ、参照ミラー34で反射される。その後、参照光はコリメータレンズ33によって集光されて光ファイバ15cの端部16cに入射する。端部16cに入射した参照光は、光ファイバ15c、光ファイバ31(ポラライザ31)を介して、カップラー15に達する。
図2A,図2Bの例では、参照ミラー34で反射された参照光と、被検眼Eに導光された測定光の戻り光(つまり、被検眼Eで反射または散乱された測定光)とは、カップラー15によって合成されて、干渉光とされる。この干渉光は、光ファイバ15dを介して、端部16dから出射される。その結果、干渉光が検出器40に導かれる。
検出器(ここでは、スペクトロメータ部)40は、周波数(波長)毎の干渉信号を得るために、参照光と測定光による干渉光を周波数(波長)毎に分光し、分光された干渉光を受光する。
図2A,図2Bに示す検出器40は、例えば、コリメータレンズ、グレーティングミラー(回折格子)、集光レンズ、等の光学系(いずれも図示せず)を含んでいてもよい。検出器40の本体(受光素子部分)は、例えば、一次元受光素子(ラインセンサ)が適用されてもよい。検出器40は、光源11から出射される光の波長に対して、感度を有する。上述したように、光源11から赤外域の光が出射される場合、赤外域の感度がある検出器40を利用し得る。
端部16bから出射された干渉光は、コリメータレンズ21によって平行光とされ、その後、図示なきグレーティングミラーによって、周波数成分に分光される。そして、周波数成分に分光された干渉光は、図示なき集光レンズを介して、検出器40の受光面に集光する。これによって、検出器40上での干渉縞のスペクトル情報(スペクトル信号)が得られる。スペクトル情報は、制御部70へ入力され、制御部70において、フーリエ変換を用いて解析される。そして、解析結果として、被検眼Eの断層像が形成される。また、解析結果として、被検眼Eの深さ方向における情報が計測可能となる。
ここで、制御部70は、走査部24により測定光を被検眼Eの横断方向に走査することにで、断層像を取得できる。例えば、X方向もしくはY方向に走査することにより、被検眼眼底ErのXZ面もしくはYZ面における断層像を取得できる(なお、本実施例においては、このように測定光を眼底Erに対して一次元走査し、断層像を得る方式をBスキャンとする)。なお、取得された断層像は、制御部70に接続された記憶部72に記憶される。更に、走査部24の駆動を制御して、測定光をXY方向に二次元的に走査することにより、被検者眼眼底ErのXY方向に関する二次元動画像,及び,被検眼眼底Erの三次元画像を検出器40からの出力信号に基づいて形成可能である。
次に、固視標投影ユニット90について説明する。固視標投影ユニット90は、被検眼Eの視線方向を誘導するための光学系を有する。固視標投影ユニット90は、被検眼Eに呈示する固視標(固視光源91)を有する。固視標投影ユニット90は、複数の方向に被検眼Eを誘導する構成でもよい。ここで、ダイクロイックミラー26は、OCT光学系2の測定光として用いられる波長成分の光を透過し、固視標投影ユニット90に用いられる波長成分の光を透過する特性を有する。故に、固視標投影ユニット90から出射される固視標光束は、対物光学系27を介して被検眼Eの眼底Erに照射される。これにより、被検者は固視が可能になる。
<制御系>
次に、OCTデバイス1の制御系を説明する。制御部(コントローラ)70は、OCTデバイス1の各部を制御する。例えば、制御部70は、CPU(プロセッサ)及びメモリ等を含んで構成されてもよい。また、本実施例において、制御部70は、例えば、検出器40からの出力信号(つまり、干渉信号)を処理することによって、被検眼Eの深さ情報を取得する。深さ情報としては、断層像等の画像情報,被検眼Eの各部の寸法を示す寸法情報,測定光の照射部位における動き量を示す情報,偏光特性の情報を含む(複素数の)解析信号,等の少なくともいずれかであってもよい。本実施例では、制御部70が、干渉信号に基づいて被検眼Eの断層像を形成する画像処理器を兼用している。また、本実施例の制御部70は、断層像の形成以外にも、各種画像処理を行う。画像処理は、制御部70に設けられた専用の電子回路(例えば、図示なき画像処理IC)によって行われてもよいし、プロセッサ(例えば、CPU)によって行われてもよい。
制御部70には、記憶部72,操作部(ユーザインターフェイス)74,及び,モニタ75,が接続されている(図2A及び図2B参照)。記憶部72は、書き換え可能な非一過性の記憶媒体を含んでいてもよく、例えば、フラッシュメモリ及びハードディスク等のいずれかであってもよい。撮影及び測定の結果得られた画像及び測定データは、記憶部72に保存される。OCTデバイス1における撮影シーケンスを規定するプログラム及び固定データは、この記憶部72に記憶されていてもよいし、制御部70内のROMに記憶されていてもよい。また、光源11,検出器40,及び,各種駆動部22c,23a,241a,242b,32,34a,50のほか、センサ51等が接続されている。
<撮影深度帯の切換動作>
次に、図4A,図4Bを参照して、上記のような構成のOCTデバイス1における、撮影深度帯の切換動作について説明する。本実施例では、撮影深度帯を切換えるために、制御部70は、駆動部50を制御し、被検眼Eにおける測定光の旋回位置を光軸L1方向に関して変位させる。旋回位置は、対物光学系27に対する走査部24の相対位置に応じて変位する。つまり、本実施例において、制御部70は、対物光学系27に対する走査部24の相対位置を駆動部50によって変更させ、その結果として、被検眼Eにおける測定光の旋回位置を光軸L1方向に関して調整する。その際、制御部70は、測定光の旋回位置を、少なくとも、第1位置と、第2位置との間で変更する。第1位置は、被検眼Eの第1深度帯に対応し、第2位置は、第1深度帯とは異なる被検眼Eの第2深度帯に対応する。また、第2位置は、測定光学系の光軸方向(被検眼Eの深さ方向)に関して第1位置とは異なる。
また、第1位置と、第2位置とは、走査部24から対物光学系27における被検者側端部までの区間に形成される瞳のフーリエ変換像の数(又は、瞳像の数)が、互いに異なる旋回位置であってもよい。図4A,図4Bにおいて、対物光学系27における被検者側端部は、対物光学系27において、最も被検眼Eの近くに配置されるレンズ面である。なお、仮に、対物光学系27がミラー系である場合、最も被検眼Eの近くに配置されるミラー面が、被検者側端部である。第1位置と第2位置との間で旋回位置が切換わることで、上記区間における瞳のフーリエ変換像の数(又は、瞳像の数)の偶奇が切換わってもよい(詳細は後述する)。なお、このとき、瞳のフーリエ変換像の数,及び瞳像の数のうち、両方における偶奇が切換わってもよいし、一方だけが切換わってもよい。第1位置と第2位置とにおいて、上記区間における瞳のフーリエ変換像の数(又は、瞳像の数)の偶奇が切換わることで、例えば、第1位置と第2位置との一方では、前眼部の断層像が良好に撮像されやすくなり、他方では、眼底Erの断層像が良好に撮像されやすくなる。なお、瞳のフーリエ変換像は、瞳から出射される平行光束が集光する位置に形成される(例えば、図4BにおけるFrの位置)。
ここで、図4Aは、前眼部(本実施例における第1深度帯)の撮影時における測定光学系20の各部の位置関係を示す。図4Bは、眼底Er(本実施例における第2深度帯)の撮影時における測定光学系20の各部の位置関係を示す。なお、図4A,図4Bでは、ミラー25及びダイクロイックミラー26の図示を省略している。なお、図4A,図4Bにおいて、Ffは、対物光学系27の前側焦点を示し、Frは、対物光学系27の後側焦点を示す。また、Icは、対物光学系27に関し、被検眼Eの瞳孔と共役な位置を示している。
図4A,図4Bの例において、制御部70は、前眼部の撮影時と,眼底Erの撮影時と,において、駆動部50を制御することで、測定光の旋回位置を光軸L1方向に関して切換える。このとき、対物光学系27と走査部24との相対位置の変更と連動して、制御部70は、参照光学系30における光路長を調整してもよい。また、このとき、制御部70は、集光位置可変光学系23を制御して、測定光の集光位置を切換えてもよい。また、更に、制御部70は、光束径調節部22を制御して、NAを調節してもよい。このような走査部24の位置変更(換言すれば、撮影深度帯の変更)は、例えば、操作部74から制御部70へ出力される切換信号に基づいて実行されてもよい。また、一連の撮影シーケンスにおいて、制御部70が自動的に切換えを行ってもよい。以下、詳細を説明する。
<前眼部撮影>
図4Aに示すように、前眼部撮影時において、制御部70は、走査部24を眼底撮影時(図4B参照)に対して対物光学系27に近づける。結果、測定光の旋回位置を、瞳のフーリエ変換像の数が偶数となる位置に設定する。図4Aの例では、瞳のフーリエ変換像の数は「0」である。この場合において、制御部70は、走査部24を、対物光学系27の後側焦点位置Frに配置してもよい。例えば、制御部70は、センサ51の検出信号に基づいて、走査部24を後側焦点位置Frへ位置決めする。位置決めの際、走査部24を構成する光スキャナ(本実施例では、ガルバノミラー241,242)は、許容される測定精度(又は、断層像の画質)の範囲で、後側焦点位置Frの近傍に配置されることが望ましい。例えば、制御部70は、2つの光スキャナ(本実施例では、ガルバノミラー241,242)の中間点Cp(図2参照)を、後側焦点位置Frに位置させてもよいし、いずれか一方の光スキャナの反射面を、後側焦点位置Frに位置させてもよい。もちろん、これら以外の配置もありうる。
走査部24が対物光学系27の後側焦点位置Frに配置された結果、対物光学系27の物体側(被検眼側)において、測定光の主光線がテレセントリック(又は、略テレセントリック)となる。つまり、本実施例では、走査部24と対物光学系27からなる光学系(便宜上、スキャン光学系という)が、物体側テレセントリック光学系として形成される。この場合、被検眼Eにおける測定光の旋回位置(本実施例における第1位置)は、光軸L1上の無限遠点であるものと考えることができる。また、この場合、対物光学系27の前面(つまり、最も被検眼側に配置されるレンズ面)から、被検眼Eの瞳孔面に照射される測定光の主光線は、走査部24で反射される測定光の向きに関わらず、光軸L1と平行(略平行)となる。これにより、被検眼Eの位置の変化による撮影画像の倍率変化を低減させることができる。結果、撮影された前眼部断層像から、精度よく距離計測が行える。また、前眼撮影時にテレセントリックな測定光を照射することによって、被検眼Eの作動距離方向の位置ずれに起因する断層像の歪みが生じにくくなる。これによって、検者は、歪みの少ない断層像を観察することができ、断層像による診断を行い易くなる。更に、前眼部撮影時にテレセントリックな測定光を照射することによって、被測定部からの戻り光(反射光または後方散乱光)の回収効率が向上するため、画像の周辺部が暗くなることを低減できる。
なお、図4Aの例では、テレセントリックな測定光を照射するために、駆動部50の制御によって、走査部24が対物光学系27の後側焦点位置Frに配置される場合を例示したが、後側焦点位置Frとレンズ系等を関して共役な位置に走査部24が配置されるように、駆動部50が制御されてもよい。なお、本開示において、「共役」は、必ずしも光学的に完全な共役関係に限定されるものではない。本開示において、「共役」な関係は、完全な共役関係のほか、許容される測定精度(又は、断層像の画質)の範囲で完全な共役関係からずれた位置関係であってもよい。
また、本実施例では、制御部70は、前眼部撮影時において、参照光学系30の光路長を、前眼部から眼底Erまでの測定光の光路長に応じて、眼底撮影時に対して短く設定する。より詳細には、前眼部からの測定光の戻り光の光路長と、参照光学系30の光路長とが同じになるように、参照光学系30の光路長は調整される。これによって、測定光の戻り光と参照光とが良好に干渉した干渉信号が、検出器40で良好に得られる。この干渉信号に基づいて制御部70が画像を形成することによって、被検眼Eにおける前眼部Ecの断層像が得られる。
また、図4Aに示すように、制御部70は、前眼部撮影時において、集光位置可変光学系23を制御して、前眼部に測定光の集光位置を設定する。この場合、制御部70は、レンズ23aから走査部24へ入射する測定光が、若干拡散されるように、集光位置可変光学系23を制御してもよい。具体例としては、制御部70が、可変焦点レンズ(レンズ23a)の屈折力を、負の値に設定してもよい。これにより、集光位置が、角膜前面と水晶体後面との中間(より好ましくは、水晶体前面と、水晶体後面の中間)に設定されることが好ましい。この場合、角膜面上に集光位置を設定する場合と比べて、断層像において比較的高い分解能を持つ領域が、より広くなる。
また、図4Aに示すように、制御部70は、前眼部撮影時において、光束径調節部22を制御して、OCT光学系2と走査部24(つまり、光スキャナ)との間の光路における測定光の光束径を、眼底撮影時に対して細くする。これにより、被検眼Eに入射する光束のNAが小さくなる。つまり、対物光学系27に関しての焦点深度が眼底撮影時に比べて増大される。結果、被検眼Eの深さ方向に関し、検出器40からの干渉信号が良好に得られる範囲が広がる。よって、光干渉断層計1によって、前眼部の広範囲(例えば、角膜前面から水晶体後面まで)を良好に撮像しやすくなる。
<眼底撮影>
一方、図4Bに示すように、眼底撮影時において、制御部70は、前眼部眼底撮影時(図4A参照)に対して、走査部24を対物光学系27から遠ざける。その結果、測定光の旋回位置を、瞳のフーリエ変換像の数が奇数となる位置に設定する。図4Bの例では、瞳のフーリエ変換像の数は「1」である。この場合において、制御部70は、走査部24を、対物光学系27に関して、被検眼Eの瞳孔と共役な位置Icに配置してもよい。例えば、制御部70は、センサ51の検出信号に基づいて、走査部24を瞳孔共役位置Icへ位置決めする。例えば、走査部24を構成する2つの光スキャナ(本実施例では、ガルバノミラー)の中間点Cp(図2参照)が対物光学系27に関して瞳孔共役となるように、走査部24は配置されてもよい。勿論、これ以外の配置もありうる。走査部24が、瞳孔共役位置Icに配置されることによって、走査部24の駆動に伴い、対物光学系27の前面(最も被検眼側のレンズ面)から出た測定光が、瞳孔位置を中心(旋回点)として旋回する。つまり、この場合、被検眼Eにおける測定光の旋回位置(本実施例における第2位置)は、瞳孔位置に設定される。これにより、測定光のケラレを抑制しつつ、測定光を眼底Erで走査できるようになる。その結果、眼底Erの断層像を、眼底Erの広範囲において撮影可能となる。なお、本実施例において、眼底撮影時においては、走査部24を瞳孔共役位置Icに配置する場合について説明したが、前眼部の所定部位と略共役な位置であればよく、例えば、角膜共役であってもよい。
また、本実施例において、制御部70は、眼底撮影時において、参照光学系30の光路長を、前眼部から眼底Erまでの測定光の光路長に応じて、前眼部撮影時に対して長く設定する。より詳細には、眼底Erからの測定光の戻り光の光路長と、参照光学系30の光路長とが同じになるように、参照光学系30の光路長は調整される。これによって、眼底Erからの測定光の戻り光と参照光とが良好に干渉した干渉信号が、検出器40から良好に得られるようになる。この干渉信号に基づいて制御部70が画像を形成することによって、被検眼Eにおける眼底Erの断層像が得られる。
図4Bに示すように、制御部70は、眼底撮影時において、集光位置可変光学系23を制御して、眼底Erに測定光の集光位置を設定する。この場合、制御部70は、対物光学系27における後側焦点位置Frにおいて、測定光が一旦集光するように、集光位置可変光学系23を制御してもよい。例えば、制御部70は、可変焦点レンズ(レンズ23a)の屈折力を正の既定値に調整する。結果、測定光は、対物光学系27によってコリメートされるので、屈折誤差がない被検眼Eであれば、眼底上で測定光が集光される。被検眼Eに屈折誤差がある場合は、その分だけ、制御部70は集光位置をオフセットさせてもよい。結果として、眼底Erの断層像が、良好に取得されやすくなる。
また、図4Bに示すように、制御部70は、眼底撮影時において、OCT光学系2と走査部24(つまり、光スキャナ)との間の光路における測定光の光束径を、前眼部撮影時に対して太くする。結果、対物光学系27に入射する測定光のNAが大きくなるので、高解像の眼底断層像が得られやすくなる。なお、焦点深度は、前眼撮影時と比べて狭くなる。
このように、図4A,図4Bの例において、制御部70は、被検眼Eにおける測定光の旋回位置が第1位置に変位される場合、検出器40からの出力信号に基づいて前眼部の断層像を生成する。また、測定光の旋回位置が第2位置に変位される場合、検出器40からの出力信号に基づいて、制御部70は、眼底Erの断層像を生成する。
前眼部Ecの断層像と、眼底Erの断層像とが生成された場合において、制御部70は、各断層像を、各断層像と対応する深度帯同士の距離(つまり、前眼部Ec(第1深度帯)と眼底Er(第2深度帯)との距離)を示す距離情報に基づいて合成して、合成画像を生成してもよい。距離情報は、例えば、人眼における平均値,標準値等の固定値であってもよいし、眼軸長測定装置等の眼寸法測定装置によって得られた被検眼Eにおける実測値であってもよい。また、OCTデバイス1における検出器40からの出力信号に基づいて距離情報を取得し、制御部70が、この距離情報を用いて合成画像を生成してもよい。また、合成画像は、それぞれの断層像の全体を含む画像に限られるものではなく、それぞれの断層像の一部同士を合成した画像を示すものであってもよい。また、合成画像は、眼球を模した眼球モデル画像上に、各断層像が重畳された画像であってもよい。
また、本実施例では、対物レンズ系27に対する走査部24の相対位置が瞳共役位置Icに設定されることで、眼底Erの断層像が撮像可能となる。そこから、対物レンズ系27の位置を固定したまま、走査部24を対物光学系27の後側焦点Frに設定すると、走査部24と対物光学系27からなるスキャン光学系が、物体側テレセントリック光学系となり、前眼部の断層像が撮像可能となる。このように、OCTデバイス1は、ワーキングディスタンス(例えば、被検眼Eの角膜から対物光学系27における被検者側端部までの距離)を変えずに、前眼部の断層像と、眼底Erの断層像とを得ることができる。
また、本実施例では、制御部70が集光位置可変光学系23を制御することで、対物光学系27に対する走査部24の相対位置の変更と連動して測定光の集光位置を光軸L1方向に関して変更する。より詳細には、制御部70は、測定光の集光位置を走査部24の位置に対応する撮影深度帯に設定するように、集光位置可変光学系23を制御する。即ち、制御部70は、旋回位置が前眼部と対応する位置に変位される場合には、前眼部において測定光が集光するように、また、旋回位置が眼底Erと対応する位置に変位される場合には、眼底Erにおいて測定光が集光するように、対物光学系27に対する走査部24の相対位置と連動して集光位置可変光学系23を制御する。その結果、各深度帯における断層像を良好に得ることができる。
また、本実施例のOCTデバイス1は、対物光学系27に対する走査部24の相対位置の変更と連動して、制御部70は、光束径調節部22の駆動部50(アジャスター)を制御する。これにより、OCT光学系2と走査部24(つまり、光スキャナ)との間の光路における測定光の光束径が、走査部27の位置に応じて調整される。その結果、前述したように、本実施例では、撮影深度帯に応じた焦点深度が設定される。結果、断層像毎に、良好な解像度が得られる領域が深さ方向に関して適正に設定される。
<制御動作>
以下、図5に示すフローチャートを用いて、上記の構成を備えるOCTデバイス1の制御動作を順に説明する。例えば、本実施例においては、被検眼Eの前眼部Ecと眼底Erとを連続的に撮影する前眼部・眼底撮影モードを設定した場合を例に挙げる。これによって、まず、制御部70は、被検眼Eの前眼部Ecを撮影し、被検眼Eの前眼部OCT画像データを取得するための設定を行う。なお、被検眼Eの前眼部Ecを撮影する前眼部撮影モードと、被検眼Eの眼底Erを撮影する眼底撮影モードと、はそれぞれ設けられていてもよい。この場合には、検者が撮影モードを切換えられる構成であってもよい。
例えば、検者は、固視標投影ユニット90の固視標を注視するよう被検者に指示する。図示なき前眼部撮像光学系により被検眼Eの前眼部が検出されると、その前眼部観察像60(図6参照)がモニタ75に表示される。前眼部観察像60上には、後述するアライメント指標像Ma~Mhが現れている。例えば、この状態において、制御部70は、移動台102及び駆動部106を制御し、測定部103を移動させることで、自動アライメントを開始する。
<被検眼の前眼部に対するアライメント(S1)>
例えば、制御部70は、被検眼Eと後述するアライメント基準位置O1との位置ずれに基づいて、被検眼EとOCT光学系2における光軸L1とのアライメントを行う(S1)。図6は被検眼Eの前眼部観察像60を示す図である。被検眼Eと測定光学系20とのアライメント状態を検出する際には、図示なき指標投影光学系において光源が点灯する。これによって、被検眼Eには指標像Ma~Mhがリング状に投影される。例えば、指標像Ma及びMeは無限遠であり、指標像Mh及びMfは有限遠である。制御部70は、指標像Ma~Mhにおけるリング形状のXY中心座標(図6に示す十字マーク)を略角膜頂点位置Kとして検出する。
例えば、被検眼Eの左右方向(X方向)及び上下方向(Y方向)におけるアライメント状態は、予め設定されたアライメント基準位置O1(図7参照)を用いて判定される。例えば、本実施例においては、アライメント基準位置O1が、被検眼Eの略角膜頂点位置Kと光軸L1とが一致する位置に設定されている。
図7はアライメント制御について説明する図である。例えば、制御部70は、検出した被検眼Eの略角膜頂点位置Kと、アライメント基準位置O1と、の偏位量Δdを求めることによって、被検眼Eに対する光軸L1のXY方向における位置ずれを検出する。例えば、被検眼Eに対してXY方向の位置ずれが検出された場合、制御部70は、偏位量Δdが0となるようにX方向及びY方向のアライメントを調整する。すなわち、制御部70は、被検眼Eの略角膜頂点位置Kと、アライメント基準位置O1と、が一致するように、X方向及びY方向のアライメントを調整する。
また、例えば、被検眼Eの前後方向(Z方向)におけるアライメント状態は、前述した指標像を用いて判定される。例えば、本実施例においては、OCTデバイス1に対して被検眼Eが適切な位置にある場合(すなわち、被検眼Eに対してZ方向の位置ずれがない場合)、無限遠の指標像MaからMeまでの像間隔aと、有限遠の指標像MhからMfまでの像間隔bと、がある一定の比率となるように設定されている。例えば、OCTデバイス1に対して被検眼Eが適切な位置にない場合(すなわち、被検眼Eに対してZ方向の位置ずれがある場合)、無限遠の指標像MaからMeまでの像間隔aはほとんど変化しないが、有限遠の指標像MhからMfまでの像間隔bは変化する。例えば、制御部70は、無限遠の指標像Ma及びMeの像間隔aと、有限遠の指標像Mh及びMfの像間隔bとの像比率(つまり、a/b)を比較し、これが一定の比率となるようにZ方向のアライメントを調整する。なお、上記構成の詳細については特開平6-46999号公報を参照されたい。
例えば、制御部70はこのようにして、被検眼Eに対してOCT光学系2を駆動させる。被検眼EとOCTデバイス1とのXYZ方向におけるアライメントが調整されると、制御部70はアライメントが完了したと判断し、アライメント完了信号を出力する。
<被検眼の前眼部撮影時における最適化制御(S2)>
アライメント完了信号が出力されると、制御部70は最適化を開始するためのトリガ信号を発し、最適化を開始する(S2)。例えば、最適化の制御を行うことによって、検者が所望する前眼部部位が高感度・高解像度で観察できるようになる。例えば、最適化の制御とは、光路長調整、フォーカス調整、偏光状態の調整(ポラライザ調整)である。
なお、例えば、本実施例においては、第1自動光路長調整、フォーカス調整、第2自動光路長調整、ポラライザ調整の順に最適化の制御が行われる。例えば、制御部70は、参照ミラー34の位置を初期位置に設定し、レンズ23aの屈折力を0Dにする。初期化が完了すると、制御部70は、参照ミラー34を初期位置から一方向に所定ステップで移動させ、第1光路長調整(第1自動光路長調整)を行う。第1光路長調整が完了すると、制御部70は、被検眼Eの前眼部に合焦するようにレンズ23aの屈折力を変化させて、オートフォーカス調整(フォーカス調整)を行う。オートフォーカス調整が完了すると、制御部70は参照ミラー34を光軸L2方向に移動させ、光路長を再調整(光路長を微調整)するための第2光路長調整(第2自動光路長調整)を行う。第2光路長調整が完了すると、制御部70は干渉光を強く受光できる位置(すなわち、測定光と参照光の偏光状態が合う位置)にポラライザ31を移動させて、測定光の偏光状態を調整する。
<前眼部三次元断面画像データの取得(S3)>
例えば、制御部70は、アライメント調整と最適化制御が行われた上記の状態において、OCT光学系2を制御することにより、被検眼Eの第1深度帯に対応する第1位置(本実施例では、被検眼Eの前眼部Ec)における被検眼Eの前眼部OCT画像データを取得する(S3)。例えば、被検眼Eの前眼部OCT画像データとしては、被検眼Eの前眼部断面画像データであってもよい。この場合、前眼部断面画像データは、二次元の断面画像データや三次元の断面画像データであってもよい。また、前眼部断面画像データは、これに基づいて積算された被検眼Eの正面画像データであってもよい。なお、例えば、本実施例では、被検眼Eの前眼部三次元断面画像データを取得し、これを用いる場合を例に挙げる。
なお、例えば、OCTデバイス1は、上記のような前眼部断面画像データとして、前眼部断面画像の信号(すなわち、画像化される前の信号)を用いる構成としてもよいし、前眼部断面画像を用いる構成としてもよい。
<撮影部位の変更(S4)>
被検眼Eにおける前眼部三次元断面画像データが取得されると、制御部70は測定モードを自動的に切り換え、撮影部位を変更する(S4)。例えば、本実施例においては、被検眼Eの前眼部OCT画像データを取得するための設定から、被検眼Eの眼底OCT画像データを取得するための設定へと自動的に切り換わる。これによって、被検眼Eの撮影部位を前眼部Ecから眼底Erに変更することができる。例えば、制御部70は、撮影部位に変更にともなって、被検眼Eの眼底Erに対するアライメント及び最適化制御を実施する。
<前眼部三次元断面画像データの解析(S5)>
例えば、制御部70は、取得した前眼部三次元断面画像データに基づいて、OCT光学系2における測定光の走査位置を設定する。例えば、本実施例においては、制御部70が前眼部三次元断面画像データを処理することによって、混濁部65(図8参照)の二次元分布を示す解析情報を取得する(S5)。また、例えば、制御部70は、混濁部65の二次元分布を示す解析情報に基づいて、OCT光学系2における測定光の走査位置を設定する(後述するS6参照)。以下、これについてより詳細に説明する。
例えば、制御部70は、取得した前眼部三次元断面画像データを深さ方向に積算して、モニタ75に前眼部Ecの正面画像(En face画像)データ62を表示してもよい。図8は前眼部の正面画像データ62を示す図である。例えば、本実施例においては、OCT撮影を利用して被検眼Eの前眼部三次元断面画像データを取得している。OCT撮影は、被検眼Eにおける測定光の反射率に基づいて断層像を撮影するものである。被検眼Eに混濁が生じていた場合には、混濁部65に入射した測定光が反射されるため、断層像上において混濁部65が輝度の高い(明るい)像となって表れる。すなわち、前眼部Ecの正面画像データ62上では、混濁部65が輝度の高い像として、混濁部でない部分(図8における斜線部)が輝度の低い(暗い)像として表れる。
なお、例えば、被検眼Eの眼底Erにおいて反射した測定光の戻り光に基づいて徹照像を撮影する場合(すなわち、徹照撮影を行う場合)には、測定光の戻り光が混濁部に遮られるため、徹照像上において混濁部が輝度の低い影となって表れる。
例えば、制御部70は、解析処理を行うことによって、解析情報を取得する。なお、本実施例においては、解析情報として、混濁マップを取得する場合を例に挙げて説明する。初めに、例えば、制御部70は、得られた前眼部Ecの正面画像データ62に対して二値化処理を行う。例えば、本実施例においては、制御部70が前眼部Ecの正面画像データ62を画素位置ごとに分割し、それぞれの画素位置に対する輝度値を検出する。また、例えば、制御部70は、検出された輝度値に基づいて、前眼部Ecの正面画像データ62を二値化処理するための閾値を設定する。例えば、このような閾値は、被検眼Eにおける前眼部の正面画像データごとに設定されてもよい。この場合には、全画素位置における輝度値の平均と標準偏差による統計情報を用いて閾値が設定されてもよいし、判別分析法を用いて閾値が設定されてもよい。また、例えば、このような閾値は、実験やシミュレーションによって、予め所定の閾値が設定されていてもよいし、検者が任意に設定することが可能な構成としてもよい。
例えば、制御部70は、閾値以上の輝度値をもつ画素位置と、閾値未満の輝度値をもつ画素位置と、において、それぞれの輝度値を置き換える。例えば、この場合、輝度値が閾値以上の画素位置は、その輝度を最大の255(白色)に置き換えてもよい。また、輝度値が閾値未満の画素位置は、その輝度を最小の0(黒色)に置き換えてもよい。なお、輝度値は、閾値を境界として異なる2つの値を用いる構成であればよく、本実施例に限定されない。
例えば、二値化処理が完了すると、制御部70は二値化処理の結果(二値化マップ)に基づいて混濁部65を特定する。この場合、制御部70は、輝度値が255に置き換えられた領域が混濁部65に対応すると判断してもよい。また、制御部70は、輝度値が0に置き換えられた領域は混濁部65に対応しないと判断してもよい。
例えば、制御部70は、上記のようにして取得された二値化マップを解析して、被検眼Eにおける混濁部65の位置を特定できるような混濁マップを取得してもよい。なお、本実施例においては、混濁部65の位置を特定する混濁マップを取得して、被検眼Eに対する測定光の走査位置を設定する場合を例に挙げる。例えば、図9は、混濁部65の位置を特定する混濁マップ63の一例である。例えば、混濁マップ63には、被検眼Eにおける混濁部65(図9における点線の内側)と、混濁部65に対応しない領域(図9における点線の外側)と、が示されてもよい。
次いで、制御部70は、取得した解析情報に基づいて、光透過領域68を特定する。例えば、前述のように、被検眼Eに入射する測定光は混濁部65によって反射されるため、本実施例では混濁部65に対応しない領域が光透過領域68として特定される。すなわち、制御部70は、二値化処理において輝度値が0に置き換えられた画素位置を光透過領域68として特定する。
なお、解析情報は、モニタ75に表示される構成としてもよい。この場合、例えば、検者は、モニタ75に表示された解析情報を観察し、走査位置を設定するようにしてもよい。
<走査位置の設定(S6)>
例えば、被検眼Eの略角膜頂点位置Kを通過する光軸L1上が光透過領域68でない場合、制御部70は、OCT光学系2における測定光が光透過領域68を通過するように、OCT光学系2における測定光の走査位置を設定する(S6)。例えば、走査位置の設定としては、測定光の入射位置が設定されてもよいし、測定光の入射角度(走査角度)が設定されてもよいし、測定光の走査範囲が設定されてもよい。なお、被検眼Eにおける混濁部65の位置や大きさ等に応じて、測定光の入射位置の設定、入射角度の設定、及び走査範囲の設定を組み合わせてもよい。もちろん、制御部70は、測定光の入射位置の設定、入射角度の設定、及び走査範囲の設定の少なくともいずれかを行う構成としてもよい。例えば、本実施例では、制御部70が被検眼Eに対してOCT光学系2における測定光の入射位置を設定することで、測定光の走査位置を設定する場合を例に挙げて説明する。
例えば、制御部70は、被検眼Eの略角膜頂点位置Kから、光透過領域68でない領域(言い換えると、混濁部65に対応すると判断された領域)の縁部69までの距離を算出する。例えば、制御部70は、略角膜頂点位置Kを基点として、360度すべての経線方向に対する縁部69の座標位置(例えば、ピクセル座標)を取得する。例えば、略角膜頂点位置Kから経線方向へ1度刻みに座標位置を取得した場合、360個の点の座標位置を得ることができる。もちろん、縁部69上において座標位置を取得する点の数は任意の数でもよく、360個に限定されない。例えば、制御部70は、略角膜頂点位置Kの座標位置と、縁部上の各点における座標位置と、を比較し、これらの座標位置におけるX方向及びY方向の差分を求める。これによって、被検眼Eの略角膜頂点位置Kから縁部上の各点までの距離を算出することができる。
次いで、制御部70は、略角膜頂点位置Kから縁部上の各点までの距離のうち、略角膜頂点位置Kから縁部69までの距離がもっとも短くなる縁部上の点Pを選択する。さらに、制御部70は、略角膜頂点位置Kと点Pを結ぶ直線の延長線上において、点Pから所定の距離Wだけ離れた位置を、被検眼Eに対する測定光の入射位置64として設定する。例えば、所定の距離Wは、OCT光学系2における測定光が、混濁部65に干渉することを抑制するために設定された距離である。言い換えると、所定の距離Wは、被検眼Eに入射させた測定光が、混濁部65に当たらないように設定された距離である。例えば、所定の距離Wは、予め実験やシミュレーションにより設定されていてもよい。
例えば、このようにして被検眼Eに対する測定光の入射位置64が設定されると、制御部70は、入射位置64に測定光が照射されるように、アライメント基準位置を設定する。
<被検眼の眼底に対するアライメント(S7)>
例えば、前述したアライメント基準位置O1は、被検眼Eの略角膜頂点位置Kと、OCT光学系2における光軸L1と、が一致する位置に設定されている。そこで、例えば、制御部70は、上記のように設定された入射位置64に測定光が照射されるように、アライメント基準位置を設定する。例えば、本実施例においては、制御部70が、アライメント基準位置を、アライメント基準位置O1からアライメント基準位置O2へと変更する。
例えば、アライメント基準位置O2が設定されると、制御部70は自動アライメントを開始する(S7)。このとき、例えば、制御部70は、被検眼Eとアライメント基準位置との位置ずれを検出する。また、制御部70は、検出した位置ずれに基づいて、被検眼EとOCT光学系2における光軸L1とのアライメント状態を検出する。
例えば、制御部70は駆動部106を制御することにより、被検眼Eに対して測定部103を上下方向に移動させる。また、例えば、制御部70は移動台102を駆動することにより、被検眼Eに対して測定部103を左右方向に移動させる。例えば、本実施例においては、1ピクセルの長さに対する実距離が予め決定されている。このため、制御部70は、前述した略角膜頂点位置Kの座標位置と、入射位置64の座標位置と、におけるX方向及びY方向の差分を、測定部103をX方向及びY方向に移動させるための移動量に換算することができる。例えば、制御部70は、OCT光学系2における光軸L1が、アライメント基準位置O2と一致するように、X方向及びY方向のアライメントを調整する。
例えば、制御部70は、このようにして被検眼EとOCTデバイス1とのアライメントを調整し、OCT光学系2の光軸L1をアライメント基準位置O2に一致させることができる。すなわち、OCT光学系2における測定光が被検眼Eに対して通過する位置を、混濁部65から回避させることができる。また、制御部70は、このようにしてアライメントを調整すると、アライメント完了信号を出力する。
<被検眼の眼底撮影時における最適化制御(S8)>
例えば、アライメント完了信号が出力されると、上述の最適化制御と同様にして、第1自動光路長調整、フォーカス調整、第2自動光路長調整、ポラライザ調整の順に最適化が行われる(S8)。これによって、検者が所望する眼底部位が高感度・高解像度で観察できるようになる。
<眼底OCT画像データの取得(S9)>
例えば、制御部70は、上記のように設定された走査位置において、OCT光学系2を制御することにより、被検眼Eの第2深度帯に対応する第2位置(本実施例では、被検眼Eの眼底Er)における被検眼Eの眼底OCT画像データを取得する(S9)。例えば、被検眼Eの眼底OCT画像データとしては、被検眼Eの断層画像データであってもよいし、モーションコントラストデータであってもよいし、偏光特性データであってもよい。例えば、本実施例においては、被検眼Eの眼底Erにおける断層画像データが取得される。もちろん、このような眼底OCT画像データは、画像化される前の信号を用いる構成としてもよいし、眼底OCT画像を用いる構成としてもよい。
以上説明したように、例えば、本実施例における眼科撮影装置は、被検眼の前眼部断面画像データを取得する取得手段と、前眼部断面画像データに基づいて測定光の走査位置を設定する走査位置設定手段と、走査位置設定手段によって設定された走査位置において被検眼の眼底OCT画像データを取得する制御手段と、を備える。これによって、検者は、被検眼の前眼部と眼底におけるそれぞれの画像データを効率よく取得することができる。
また、例えば、本実施例における眼科撮影装置は、前眼部断面画像データを処理することによって、混濁部の二次元分布を示す解析情報を取得し、解析情報に基づいてOCT光学系における測定光の走査位置を設定する。これによって、検者は、被検眼に生じた混濁部の位置を容易に判断することができる。また、検者は、測定光の走査位置を容易に設定することができる。
また、例えば、本実施例における眼科撮影装置は、解析情報に基づいて光透過領域を特定し、光透過領域をOCT光学系における測定光が通過するように、OCT光学系における測定光の走査位置を設定する。このため、検者は、被検眼に生じた混濁部を回避するように、測定光の走査位置を容易に設定することができる。
また、例えば、本実施例における眼科撮影装置は、OCT光学系における測定光の被検眼への入射位置を設定することで、測定光の走査位置を設定することができる。これによって、検者は、被検眼の混濁部を回避するように測定光の被検眼への入射位置を設定し、効率よく眼底撮影を行うことができる。
また、例えば、本実施例における眼科撮影装置は、被検眼とアライメント基準位置との位置ずれに基づいて、被検眼とOCT光学系の光軸とのアライメント状態を検出するアライメント検出手段を備える。これによって、走査位置設定手段によって設定された入射位置に測定光が照射されるように、アライメント基準位置を設定することができる。従って、検者は、測定光を被検眼に対してより正確な位置に入射させることができる。
また、例えば、本実施例における眼科撮影装置は、被検眼に対してOCT光学系を駆動させる駆動手段を備える。また、本実施例における眼科撮影装置は、アライメント検出手段の検出結果に基づいて、アライメント基準位置の許容範囲内にOCT光学系の光軸が位置されるように、被検眼に対するOCT光学系の自動アライメントを行うアライメント制御手段を備える。これによって、アライメントが精度よく行われ、検者は効率的に被検眼とOCT光学系とを位置合わせすることができる。
また、例えば、本実施例における眼科撮影装置は、被検眼の第1深度帯に対応する第1位置と、被検眼の第2深度帯に対応する第2位置と、におけるOCT画像データを取得することができる。また、例えば、本実施例における眼科撮影装置は、前眼部断面画像データとして、第1位置における被検眼の前眼部OCT画像データを取得し、OCT光学系を制御して、第2位置における被検眼の眼底OCT画像データを取得することができる。これによって、新たな部材やアタッチメント等を必要とせず、深度帯が異なる部位を容易に撮影することができる。
また、例えば、本実施例における眼科撮影装置は、取得手段によって前眼部OCT画像データを取得した後に、OCT光学系を制御して被検眼の眼底OCT画像データを取得することができる。これによって、検者は、被検眼の前眼部と眼底を連続して撮影し、効率よく測定を行うことができる。
また、例えば、本実施例における眼科撮影装置は、被検眼の前記前眼部断面画像データとして、前眼部三次元断面画像データを取得する。このため、被検眼における混濁部の位置を、XY方向だけでなく、Z方向(深さ方向)においても特定できる。従って、検者は、被検眼の眼底OCT画像データを精度よく取得することができる。
<変容例>
なお、本実施例においては、OCTデバイス1を用いて、被検眼Eの前眼部断面画像データを取得する構成を例に挙げて説明したがこれに限定されない。例えば、被検眼Eの前眼部断面画像データは、光干渉以外の技術を利用して取得されてもよい。例えば、この場合には、SLO(Scanning Laser Ophthalmoscope)やシャインプルークカメラ等の撮影装置により、前眼部断面画像データを取得する構成としてもよい。
なお、本実施例においては、眼科撮影装置1によって取得した前眼部断面画像データに基づいて、測定光の走査位置を決定する場合を例に挙げて説明したがこれに限定されない。例えば、測定光の走査位置は、徹照像データに基づいて決定してもよい。この場合には、本実施例における眼科撮影装置1に、被検眼Eの徹照像データを取得可能とする構成を備えてもよい。また、この場合には、別の装置を用いて、被検眼Eの徹照データを取得する構成であってもよい。例えば、別の装置としては、被検眼Eの眼底Erに投影した光束の反射光を受光することによって、被検眼Eの眼屈折力を他覚的に測定することが可能な装置を用いてもよい。
なお、本実施例においては、OCT光学系2における光軸L1を、アライメント基準位置O1及びO2に一致させる構成を例に挙げて説明したがこれに限定されない。本実施例においては、アライメント基準位置O1及びO2を中心としたXY方向の所定の領域が、アライメントの適否を判定するためのアライメント許容範囲として設定されていてもよい。もちろん、アライメント基準位置を中心としたZ方向の所定の領域についても、アライメント許容範囲が設定されていてもよい。例えば、制御部70は、アライメント基準位置の許容範囲内にOCT光学系2の光軸L1が位置するように、被検眼Eに対するOCT光学系2の自動アライメントを行う。
図10はアライメント許容範囲について説明する図である。例えば、アライメント基準位置O1には、アライメント基準位置O1を中心とした所定の領域が、アライメントの適否を判定するためのアライメント許容範囲A1として設定されている。例えば、制御部70は、OCT光学系2における光軸L1の通過位置がアライメント許容範囲A1におさまるように、X方向及びY方向のアライメントを調整する。例えば、図10では、被検眼Eに対して光軸L1が通過する実際の位置O1´がアライメント許容範囲A1内におさまっているので、制御部70はアライメントが完了したと判断する。
同様に、例えば、アライメント基準位置O2に対しても、アライメント基準位置O2を中心とした所定の領域に、アライメント許容範囲A2が設定されていてもよい。例えば、制御部70は、OCT光学系2における光軸L1の通過位置が、アライメント許容範囲A2におさまるように、X方向及びY方向のアライメントを調整する。例えば、図10では、被検眼Eに対して光軸L1が通過する実際の位置O2´がアライメント許容範囲A2内におさまっているので、制御部70はアライメントが完了したと判断する。
なお、本実施例においては説明を省略したが、前眼部撮影時と眼底撮影時において、被検眼Eの位置がずれている場合がある。この状態では、前眼部断面画像データを解析することで設定した入射位置64に測定光を照射しても、測定光を所望の眼底部位に入射させることができず、良好な眼底OCT画像データを取得することができない。例えば、このとき、制御部70は、被検眼Eの位置ずれを検出し、これを補正する構成としてもよい。
図11は被検眼Eにおける位置ずれの補正ついて説明する図である。例えば、図11は、前眼部撮影後に被検眼EがX方向に移動した状態を示している。これにともなって、被検眼Eの混濁部65は、点線で示す位置から実線で示す位置に移動する。なお、以下ではX方向における位置ずれの補正について説明するが、Y方向及びZ方向に位置ずれが生じていた場合には、X方向と同様に補正してもよい。
例えば、制御部70は、前眼部撮影時における被検眼Eの位置と、眼底撮影前における被検眼Eの位置と、のアライメントずれを検出する。なお、本実施例における眼底撮影前とは、被検眼Eの前眼部Ecから眼底Erへと撮影部位を変更するために、自動的に設定が切換わったタイミングであってもよい。すなわち、制御部70は、設定の切換わりをトリガ信号として図示なき前眼部撮像光学系を制御し、被検眼Eの前眼部を検出する。また、例えば、本実施例における眼底撮影前とは、被検眼Eの眼底Erを撮影する直前のタイミングであってもよい。この場合には、眼底Erに対するアライメント及び最適化制御の後に、制御部70が被検眼Eの前眼部を検出するようにしてもよい。また、例えば、操作部74が備える眼底撮影を行うための図示なき撮影スイッチが検者によって選択されたタイミングで、制御部70が被検眼Eの前眼部を検出するようにしてもよい。なお、例えば、制御部70は、このようなタイミングにおいて検出した被検眼Eの前眼部から略角膜頂点位置K´を検出する。
例えば、制御部70は、検出した略角膜頂点位置K´と、前眼部撮影時に検出した略角膜頂点位置Kと、の位置ずれを補正量ΔDとして検出する。また、例えば、制御部70は、検出した補正量ΔDに基づいて、測定光の入射位置64を変更する。例えば、本実施例においては、測定光の入射位置64が、補正量ΔDと同じ距離だけ移動した入射位置64´に設定される。これによって、前眼部撮影時と眼底撮影時における被検眼Eの位置ずれを補正することができる。
例えば、本実施例における眼科撮影装置は、前眼部撮影時と眼底撮影時における被検眼Eの位置ずれを検出し、このように補正することで、所望の眼底位置へ正確に測定光を照射でき、良好な眼底OCT画像データを取得することが可能となる。
なお、位置ずれの補正の実施は、本実施例のように、混濁部65の解析情報に基づいて測定光の走査位置を設定し、眼底Erを撮影する装置の適用のみに限定されない。例えば、被検眼Eの前眼部Ecから眼底Erへ撮影部位を切り換える際に、被検眼Eに位置ずれがあった場合には、上記のようにして補正を行ってもよい。例えば、このような構成であることによって、被検眼Eの前眼部撮影時と眼底撮影時における被検眼Eの位置ずれが自動的に補正されるので、検者はスムーズに撮影を進めることができる。
なお、被検眼Eにおける位置ずれの補正は、後述する追尾制御(トラッキング)において実施してもよい。この場合、被検眼Eの前眼部が常に検出され、前眼部撮影時に検出した略角膜頂点位置Kと、被検眼Eの移動にともなってずれた略角膜頂点位置K´との補正量ΔDが、制御部70によって常時算出される。また、測定光の入射位置64´が、制御部70によって遂次変更される。なお、このように検出された被検眼Eの前眼部は、制御部70による解析処理に用いられるのみでもよいし、前眼部観察像60としてモニタ75に表示される構成としてもよい。
また、上記では、補正量ΔDを検出してこれを補正する構成を例に挙げたが、補正量ΔDがわずかであれば、被検眼Eの位置ずれを補正しなくてもよい場合がある。例えば、このときには、補正量ΔDに対して許容範囲が設定されてもよい。このような許容範囲は、シミュレーションや実験等によって予め算出されていてもよい。例えば、制御部70は、検出した補正量ΔDが許容範囲を超えているか、あるいは許容範囲におさまっているかを判断し、その結果に基づいて、被検眼Eの位置ずれを補正するか否かを決定する構成であってもよい。
なお、本実施例では、X方向、Y方向、及びZ方向のすべてを調整するようにアライメント基準位置O1及びO2を設定する構成を例に挙げて説明したがこれに限定されない。このようなアライメント基準位置は、XYZ方向の少なくともいずれかに対して設定されてもよい。同様に、本実施例では、X方向、Y方向、及びZ方向のすべてを調整するようにアライメント許容範囲A1及びA2を設定したが、このようなアライメント基準範囲も、XYZ方向の少なくともいずれかに対して設定してもよい。
なお、本実施例では、被検眼Eとアライメント基準位置との位置ずれを検出する際に、被検眼Eにおける略角膜頂点位置Kを用いる構成を例に挙げて説明したがこれに限定されない。もちろん、位置ずれの検出には、被検眼Eの角膜頂点位置が用いられてもよい。また、例えば、位置ずれの検出には、被検眼Eの瞳孔位置が用いられてもよい。この場合には、制御部70が、図示なき前眼部撮像光学系により撮像された前眼部正面像から、被検眼Eにおける瞳孔位置を検出してもよい。このとき、制御部70は、検出した瞳孔位置を用いてアライメント基準位置との位置ずれを検出し、これに基づいて入射位置に測定光が照射されるように調整する構成であってもよい。
また、本実施例では、前眼部撮影時と眼底撮影時における被検眼Eの位置ずれを検出する場合においても、略角膜頂点位置Kを用いる構成を例に挙げて説明したが、被検眼Eの瞳孔位置を検出するようにしてもよい。
なお、本実施例においては、制御部70が自動アライメントを実施する構成を例に挙げて説明したがこれに限定されない。例えば、アライメントは、検者によって手動で実施されてもよい。例えば、測定部103は、ジョイスティック104等を操作することで、左右方向、上下方向、及び前後方向に移動可能となっている。アライメントを手動で行う際には、測定光の光軸L1が通過する位置と、アライメント基準位置と、を表示してもよい。これによって、検者は、モニタ75をみながらジョイスティック104を操作し、OCT光学系2における測定光の光軸L1を、アライメント基準位置に一致させることができる。あるいは、OCT光学系2における測定光の光軸L1を、アライメント許容範囲内におさめることができる。
なお、本実施例においては、OCTデバイス1を移動させることによって、被検眼Eに対する測定光の入射位置を変更し、測定光の走査位置を設定する構成を例に挙げて説明したがこれに限定されない。例えば、測定光の入射位置は、OCT光学系2が備える光学部材を移動させることで変更してもよいし、OCT光学系2の光路中に光学部材を挿脱させることで変更してもよい。例えば、光学部材を移動させる場合には、光束径調節部22が備えるレンズ22aとレンズ22bを、左右方向及び前後方向に移動可能とする構成が挙げられる。また、ダイクロイックミラー26を上下方向に移動可能とする構成が挙げられる。例えば、光学部材を挿脱させる場合には、プリズムやミラー等を光軸L1上において挿脱可能とする構成が挙げられる。
また、本実施例においては、OCTデバイス1を移動させることによって、被検眼Eに対する測定光の入射位置を変更する構成を例に挙げて説明したがこれに限定されない。例えば、固視標投影ユニット90における固視標の位置を変更することで、被検眼Eに対する測定光の入射位置を変更してもよい。例えば、固視標の位置をずらすと、被検者の視線が移動し、被検眼Eが旋回するため、被検眼Eに生じた混濁部を回避して測定光を入射させることができる場合がある。
なお、本実施例においては、測定光の走査位置が自動的に設定される構成を例に挙げて説明したがこれに限定されない。例えば、測定光の走査位置は、検者が手動で設定してもよい。例えば、この場合、制御部70は、前眼部三次元断面画像データを積算した正面画像をモニタ75に表示してもよい。もちろん、被検眼Eにおける前眼部の正面画像データ62に対して二値化処理を行った際の解析情報や、混濁部65の位置を特定した二次元分布がマップとしてモニタ75に表示されてもよい。例えば、検者は、モニタ75をみて被検眼Eのどこに混濁部65があるか判断し、操作部74を操作して正面画像上で走査位置を選択する。制御部70は、選択された正面画面上の走査位置における座標位置を検出し、これに基づいてOCTデバイス1を移動させる。例えば、測定光の走査位置は、このようにして任意の位置に設定される構成であってもよい。
なお、本実施例においては、被検眼Eの第1深度帯に対応する第1位置(本実施例では、被検眼Eの前眼部Ec)と、被検眼Eの第2深度帯に対応する第2位置(本実施例では、被検眼Eの眼底Er)と、を連続的に撮影する構成を例に挙げて説明したがこれに限定されない。例えば、被検眼Eの第1深度帯と第2深度帯は、同時に撮影してもよい。すなわち、被検眼Eにおける前眼部Ecと眼底Erを同時に撮影してもよい。例えば、この場合には、ハーフミラー等を用いて参照光学系30の光路を分岐し、それぞれに参照ミラーを配置してもよい。例えば、片方の参照ミラーは、前眼部Ecからの測定光の戻り光における光路長と等しくなる位置に配置される。また、例えば、もう片方の参照ミラーは、眼底Erからの測定光の戻り光における光路長と等しくなる位置に配置される。これによって、前眼部Ecからの戻り光と参照光とが干渉した干渉信号と、眼底Erからの戻り光と参照光とが干渉した干渉信号と、を検出器40で同時に取得することができるようになる。
また、本実施例においては、被検眼Eとアライメント基準位置O1とのアライメントが完了した後に、前眼部三次元断面画像データを取得する構成を例に挙げて説明したがこれに限定されない。例えば、前眼部三次元断面画像データがリアルタイムで取得され、これに基づいて測定光の走査位置が遂次設定されるようにしてもよい。この場合、制御部70は、被検眼Eに対するアライメントが完了した後であっても、XYZ方向のアライメントずれを随時検出し、被検眼Eの移動を常に検出する追尾制御(トラッキング)を行う。これによって、前眼部三次元断面画像データをリアルタイムで繰り返し取得することができる。また、例えば、制御部70は、前眼部三次元断面画像データが取得されるたびにデータを処理し、被検眼Eにおける混濁部65を常に検出してもよい。これによって、被検眼Eが移動しても、混濁部65を回避することができる位置に、眼底OCT画像データを取得するための測定光の走査位置を遂次設定することができる。例えば、眼底OCT画像データの取得位置は、リアルタイムの前眼部三次元断面画像データ上において表示される構成としてもよい。
例えば、このように、本実施例における眼科撮影装置は、被検眼の前眼部断面画像データをリアルタイムで取得し、リアルタイムで取得された前眼部断面画像データに基づいて、測定光の走査位置を逐次設定することができる。これによって、検者が所望する撮影部位に測定光が入射するように、走査位置が常に補正される。従って、検者は、眼底OCT画像データをより正確に取得することができるようになる。
なお、本実施例においては、被検眼Eの第1位置として前眼部Ecを、被検眼Eの第2位置として眼底Erを撮影し、それぞれのOCT画像データを取得する構成を例に挙げて説明したがこれに限定されない。例えば、本実施例における眼科撮影装置1は、被検眼Eの前眼部Ecにおいて、異なる深度帯のOCT画像データを取得してもよい。例えば、この場合には、第1位置として、被検眼Eの角膜前面から水晶体前面までを撮影してもよい。また、例えば、この場合には、第2位置として、被検眼Eの水晶体後面を撮影してもよい。もちろん、被検眼Eの角膜や水晶体前面に混濁が検出されたときには、混濁部の解析情報を利用して測定光の走査位置を決定し、水晶体後面を撮影してもよい。これによって、検者は、被検眼Eのより詳細な前眼部OCT画像データを取得することができる。