まず、眼底を撮像する際のOCT装置の構成及び前眼部を撮像する際のOCT装置の構成について、図11(a)乃至(c)を参照して説明する。図11(a)は、眼底を撮像する際のOCT装置の構成を示す。図11(b)は、前眼部をテレセントリックな光学系を用いて撮像するOCT装置の構成を示す。図11(c)は、前眼部を非テレセントリックな光学系を用いて撮像するOCT装置の構成を示す。なお、図11(a)乃至(c)においては、説明の簡略化のため、対物レンズOLとアダプターレンズAL1,AL2以外のOCT装置の構成要素を省略している。また、図11(a)乃至(c)では、対物レンズOLの異なる領域を透過した測定光を、実線及び破線で表している。なお、図11(b)及び(c)において、アダプターレンズAL1,AL2は対物レンズOLに接続されているが、アダプターレンズは任意の構成によってOCT装置に接続されることができる。
眼底の断層像を取得する際には、図11(a)に示すように、OCT装置の対物レンズOLを透過した測定光が被検眼Eの瞳に入射し、被検眼Eの眼底で収束し、反射又は散乱される。これに対し、被検眼Eの前眼部を撮像する際には、図11(b)及び(c)に示すように、対物レンズOLと被検眼Eとの間にアダプターレンズAL1,AL2が挿入される。この場合、測定光は対物レンズOLを透過した後、アダプターレンズAL1,AL2を介して被検眼Eの前眼部で収束する。その後、測定光は被検眼Eの前眼部で反射又は散乱される。
ここで、テレセントリックな光学系を用いて被検眼Eの前眼部を撮像する際には、測定光が対物レンズOLからアダプターレンズAL1に入射する。アダプターレンズAL1を透過した測定光は、主光線が測定光の光軸に対して平行となる光束として被検眼Eに照射され、前眼部で収束し反射又は散乱される。この場合、図11(b)に示すように、対物レンズOLを透過した光束の全てがアダプターレンズAL1に入射し、前眼部の所望の範囲に測定光が照射されるように、アダプターレンズAL1のサイズが大きく構成される必要がある。
これに対し、非テレセントリックな光学系を用いて被検眼Eの前眼部を撮像する構成も考えられる。この場合には、図11(c)に示すように、対物レンズOLからアダプターレンズAL2に入射する測定光は、アダプターレンズAL2を透過した後、測定光の光軸に対し角度を持った光束として被検眼Eの前眼部に照射され、前眼部で収束し反射又は散乱される。
このような構成では、アダプターレンズAL2は、対物レンズOLの前側焦点位置(ピボット位置)に配置されるため、アダプターレンズAL2のサイズを大きく構成する必要がない。そのため、非テレセントリックな光学系を用いるOCT装置では、テレセントリックな光学系を用いる場合に比べ、アダプターレンズAL2のサイズをコンパクトにすることができる。
以下、本発明を実施するための例示的な実施例では、図11(c)に示すような非テレセントリックな光学系を想定している。以下の実施例について、図面を参照して詳細に説明する。ただし、以下の実施例で説明する寸法、材料、形状、及び構成要素の相対的な位置等は任意であり、本発明が適用される装置の構成又は様々な条件に応じて変更できる。また、図面において、同一であるか又は機能的に類似している要素を示すために図面間で同じ参照符号を用いる。
[実施例1]
(装置の概略構成)
以下、図1乃至9を参照して、本発明の実施例1による光断層撮像装置の例であるOCT装置1の概略的な構成について説明する。図1は、本実施例に係るOCT装置1の概略的な構成を示す。
OCT装置1には、光学ヘッド900と、制御部170(情報取得部)と、表示部190とが設けられている。光学ヘッド900は、被検眼100の前眼画像、並びに眼底又は前眼部の二次元画像及び断層画像を撮像するための測定光学系として構成される。制御部170は、光学ヘッド900における各光学要素の駆動制御や、光学ヘッド900から出力される信号の処理、画像の生成等を行う。表示部190は、制御部170から出力される画像や情報を表示する。なお、制御部170は任意のコンピュータを用いて構成されることができ、OCT装置1用のコンピュータとして構成されてもよいし、一般的な汎用コンピュータを用いて構成されてもよい。また、図1において制御部170は光学ヘッド900とは別体として示されているが、制御部は光学ヘッド900と一体的に構成されてもよい。表示部190は任意のモニタによって構成されることができる。表示部190は制御部170や光学ヘッド900と一体的に構成されてもよい。
(光学ヘッド900の光学系)
本実施例に係る光学ヘッド900の光学系の構成について図1を参照して説明する。光学ヘッド900においては、被検査物である被検眼100に対向して対物レンズ101−1が設けられる。また、被検眼100と対物レンズ101−1の間には、撮像部位切替手段として、挿脱可能なアダプターレンズ105が設けられている。OCT装置1は、被検眼100の眼底を撮像する際にはアダプターレンズ105を対物レンズ101−1と被検眼100との間から外し、被検眼100の前眼部を撮像する際にはアダプターレンズ105を挿入する構成としている。
光学ヘッド900の内部には光路分離手段として、第1ダイクロイックミラー102、第2ダイクロイックミラー103、及び第3ダイクロイックミラー104が配置される。被検眼100に対向して対物レンズ101−1が配置され、被検眼100からの反射光の光軸上に第1ダイクロイックミラー102が配置され、第1ダイクロイックミラー102の反射光の光軸上に第2ダイクロイックミラー103が配置される。
第1ダイクロイックミラー102は、透過光が前眼観察光路L3に向かい、反射光が第2ダイクロイックミラー103に向かうように、被検眼100からの反射光の光路を分離する。第2ダイクロイックミラー103は、透過光がOCT光学系の測定光路L1に向かい、反射光が二次元観察及び固視灯用の光路L2に向かうように第1ダイクロイックミラー102の反射光の光路を波長帯域ごとに分離する。また、第3ダイクロイックミラー104は、後述するように、光路L2に配置され、光路L2を二次元観察光路と固視灯光路にさらに波長帯ごとに分離する。
光路L2には、後述する走査手段117を構成するXスキャナ117−1及びYスキャナ117−2が設けられている。OCT装置1は、被検眼100の眼底撮影時には、Xスキャナ117−1及びYスキャナ117−2を用いて眼底上にて照明光を走査することによって、眼底の二次元像を得ることができる。また、OCT装置1は、アダプターレンズ105が挿入されている場合には、Xスキャナ117−1及びYスキャナ117−2を用いて前眼部上にて照明光を走査することによって、前眼部の二次元像を得ることができる。
光路L2には、第2ダイクロイックミラー103から順に、レンズ101−2、Xスキャナ117−1、Yスキャナ117−2、合焦レンズ112、光路分離部材118、レンズ113−1、及び第3ダイクロイックミラー104が配置される。光路L2は、第3ダイクロイックミラー104によって二次元観察用の光源114に至る光路と固視灯119に至る光路とに波長帯域ごとに分離される。
光源114は780nmの波長の光を発生し、光源114から発せられた光は第3ダイクロイックミラー104によって反射され、光路L2に向かう。また、固視灯119は、被検眼100に対し任意の方向・位置に固視を促すために用いられ、例えば可視域の波長を発光するレーザーもしくはLED(Light Emitting Diode)で構成される。固視灯119から発せられた光は、第3ダイクロイックミラー104を透過し、光路L2に向かう。なお、光源114から発せられた光が第3ダイクロイックミラー104を透過し、固視灯119から発せられた光が第3ダイクロイックミラー104によって反射されるように、光源114及び固視灯119が配置されてもよい。
光路分離部材118は、穴あきミラーや、中空のミラーが蒸着されたプリズムで構成されることができ、光源114による照明光や固視灯119からの光が伝播する光路と、眼底からの照明光の戻り光が伝播する光路とを分離する。光源114及び固視灯119からの光は光路分離部材118を透過し、合焦レンズ112を介してXスキャナ117−1及びYスキャナ117−2によって構成される走査手段117に至る。
合焦レンズ112は、固視灯119、二次元観察用のシングルディテクター116及び光源114の合焦調整用のレンズである。合焦レンズ112は、不図示のモータによって駆動されることができ、制御部170に含まれる駆動制御部172によって不図示のモータを制御することで、光源114等からの光の合焦調整のために光軸方向(図中矢印方向)に駆動される。合焦レンズ112は、光軸方向に駆動されることで、光源114等からの光を被検眼100に合焦させることができる。
Xスキャナ117−1及びYスキャナ117−2は、光源114から発せられた照明光を被検眼100の眼底上又は前眼部上で走査するために用いられる走査手段117を構成する。Xスキャナ117−1は、照明光をx方向に高速スキャンするために、ポリゴンミラーによって構成されている。その他、Xスキャナ117−1は共振型のミラーで構成されていてもよい。Yスキャナ117−2は、照明光をy方向にスキャンするために、ガルバノミラーなどの偏向ミラーを用いて構成されている。なお、Xスキャナ117−1及びYスキャナ117−2の駆動は、制御部170の駆動制御部172によって制御される。なお、x方向及びy方向の各方向は、被検眼100の眼軸方向に対して直交する方向であり、且つ、互いに直交する方向である。
なお、図1においては、Xスキャナ117−1と、後述するピンホール115、光源114、及び固視灯119との間の光路は紙面内において構成されているが、実際は紙面垂直方向に構成されている。これらの光路による構成が紙面垂直方向に大きくなる場合は、不図示のミラーによって光路を折り曲げて構成されてもよい。レンズ101−2は、Xスキャナ117−1及びYスキャナ117−2の中心位置付近を焦点位置として配置されている。
また、固視灯119は、Xスキャナ117−1及びYスキャナ117−2の駆動に合わせて、制御部170によって点灯制御されることで、被検眼100に対し任意の方向・位置に固視を促すことができる。
光路分離部材118の反射光の光路上には、レンズ113−2、ピンホール115及びシングルディテクター116が配置される。アダプターレンズ105が挿入されていない場合には、ピンホール115は被検眼100の眼底と略共役位置に配置され、眼底上とピンホール115とで共焦点光学系を構成している。アダプターレンズ105が挿入されている場合には、ピンホール115は被検眼100の前眼部と略共役位置に配置され、前眼部上とピンホール115とで共焦点光学系を構成している。眼底又は前眼部上を走査する光源114からの照明光は、眼底又は前眼部にて散乱・反射される。その散乱・反射された光についてピンホール115にて必要な光のみを透過させ、シングルディテクター116で受光する。シングルディテクター116はAPD(アバランシェフォトダイオード)で構成され、被検眼100からの照射光の戻り光を受光する。なお、光路分離部材118の反射光の光路上に第3ダイクロイックミラー104等の構成要素が配置され、光路分離部材118の透過光の光路上にピンホール115等が配置されてもよい。
OCT装置1の制御部170は、シングルディテクター116で検出した光から被検眼100の眼底又は前眼部の情報を取得し、眼底又は前眼部の2次元画像を形成することができる。
前眼観察光路L3は、第1ダイクロイックミラー102の透過光の光路である。前眼観察光路L3上には、第1ダイクロイックミラー102より順に、レンズ141、及び前眼観察用のCCD142が配置される。CCD142は不図示の前眼観察用照明光源から発せられる光の波長、具体的には970nm付近に感度を持ち、被検眼100からの前眼観察用照明光の戻り光を検出する。
OCT装置1の制御部170は、CCD142で検出した光から被検眼100の前眼部の情報を取得し、前眼画像を形成することができる。CCD142を用いて取得された前眼部の情報は、光学ヘッド900の被検眼100に対する位置合わせ(アライメント)等に用いることができる。
測定光路L1は前述の通りOCT光学系の一部を成しており、アダプターレンズ105が挿入されていない場合には、被検眼100の眼底の断層像を撮像するために用いられる。また、測定光路L1は、アダプターレンズ105が挿入されている場合には、被検眼100の前眼部の断層像を撮像するために用いられる。より具体的には、測定光路L1は、被検眼100の眼底又は前眼部の断層画像を形成するための干渉信号を得るために用いられる。
測定光路L1には、第2ダイクロイックミラー103より順に、レンズ101−3、ミラー121、OCTXスキャナ122−1、OCTYスキャナ122−2、OCT合焦レンズ123、レンズ124及びファイバー端126が配置される。これら構成は、後述するOCTの測定光を被検眼100に照射するOCT測定光学系の一部を構成する。
ファイバー端126は、測定光を測定光路L1に入射させる。ファイバー端126は、本実施例では測定光の光源として把握することもできる。ファイバー端126は、アダプターレンズ105が挿入されていない場合には眼底と光学的な共役関係にあり、アダプターレンズ105が挿入されている場合には前眼部と光学的な共役関係にある。
OCT合焦レンズ123は、測定光の眼底又は前眼部に対する合焦調整用のレンズである。OCT合焦レンズ123は、不図示のモータによって駆動されることができ、制御部170に含まれる駆動制御部172によって不図示のモータを制御することで、測定光の合焦調整のために光軸方向(図中矢印方向)に駆動される。OCT合焦レンズ123は、光軸方向に駆動されることで、測定光を被検眼100に合焦させることができる。測定光の合焦調整は、測定光の光源として把握されるファイバー端126から出射する光を眼底上又は前眼部上に結像するように行われる。ただし、前眼部の断層像を取得する際には、後述するようにOCT合焦レンズ123はあらかじめ定められた位置に配置される。
OCTXスキャナ122−1及びOCTYスキャナ122−2はOCT走査手段122を構成し、測定光を被検眼100の眼底上又は前眼部上で走査する。OCTXスキャナ122−1及びOCTYスキャナ122−2はガルバノミラー等の任意の偏向ミラーで構成されることができる。OCTXスキャナ122−1及びOCTYスキャナ122−2の駆動は、制御部170の駆動制御部172によって制御されることができる。また、OCT走査手段122は、測定光を2次元走査可能な一つの偏向ミラーで構成されてもよく、この場合も駆動制御部172によって偏向ミラーの駆動が制御される。なお、図1において、OCTXスキャナ122−1及びOCTYスキャナ122−2の間の光路は紙面内において構成されているが、実際は紙面垂直方向に構成されている。OCTXスキャナ122−1及びOCTYスキャナ122−2の間の光路の延在方向は所望の構成に応じて任意の方向とすることができる。
次に、光源130からファイバー端126、参照光学系、及び分光器180に至る光学系の構成について説明する。
本実施例では、光源130として、代表的な低コヒーレント光源であるSLD(Super Luminescent Diode)を用いており、中心波長は855nm、波長バンド幅は約100nmとしている。ここで、バンド幅は、得られる断層画像の光軸方向の分解能に影響するため、重要なパラメータである。また、光源130の種類は、ここではSLDを選択したが、低コヒーレント光を射出できる光源の種類であればよい。光源130の中心波長は、眼を測定することを鑑みて近赤外光を用いることができる。また、NA(開口数)が同じ場合には、中心波長が得られる断層画像の横方向の分解能に影響するため、光源130として中心波長がなるべく短波長のものを用いることができる。双方の理由から、本実施例では中心波長を855nmとした。
光源130から射出された光は、光ファイバー125−1を通り光カプラー125に至る。シングルモードの光ファイバー125−1〜4は光カプラー125に接続されている。光カプラー125に至った光はここで測定光と参照光とに分割され、測定光が光ファイバー125−2を介して測定光路L1に、参照光が光ファイバー125−3を介して参照光路L4に導かれる。光カプラー125は、光源130から射出された光を測定光と参照光とに分割するとともに、被検眼100からの測定光の戻り光と参照光とを合波させて干渉光を得る干渉部を構成する。
光ファイバー125−2に入射した光は前述したファイバー端126に至る。測定光は測定光路L1を通じ、観察対象である被検眼100の眼底又は前眼部に照射され、網膜又は角膜等による反射や散乱により同じ光路を通じて光カプラー125に到達する。ここで、光カプラー125からファイバー端126に至る光路、測定光路L1、及び第2ダイクロイックミラー103から被検眼100に至る光路はOCT測定光路を構成し、OCT測定光路に配置された光学部材はOCT測定光学系を構成する。
参照光路L4には、光ファイバー125−3の射出端より順に、レンズ151、分散補償ガラス152、及び参照ミラー153が配置される。ここで、参照光路L4に配置された光学部材はOCT参照光学系を構成する。
光ファイバー125−3の射出端より射出された参照光は、レンズ151及び分散補償ガラス152を介して参照ミラー153に到達し反射される。分散補償ガラス152は、測定光と参照光の分散を合わせるために参照光路L4中に挿入されている。参照ミラー153により反射された参照光は、同じ光路を戻り光カプラー125に到達する。参照ミラー153は、駆動制御部172により制御される不図示のモータ及び駆動機構によって、光軸方向(図中矢印方向)に調整可能に保持される。このため、参照ミラー153は、光軸方向に駆動することで参照光の光路長を変化させることができる光路長変更手段を構成する。
なお、後述するようにアダプターレンズ105の分散は被検眼100の前眼部から眼底までの分散とほぼ等しく構成している。そのため、前眼部撮影時にも参照光路L4中から分散補償ガラス152を外す必要をなくし、且つ、新たな分散補償ガラスを挿入する必要もなくすことができる。
光カプラー125において、被検眼100からの測定光の戻り光と参照ミラー153から反射された参照光とは合波され干渉光となる。ここで、測定光の戻り光と参照光は、戻り光の光路長と参照光の光路長が略同一となったときに干渉を生じる。OCT装置1では、参照ミラー153を光軸方向に駆動させることで、被検眼100によって変わる戻り光の光路長に対して参照光の光路長を合わせることできる。干渉光は光ファイバー125−4を介して分光器180に導かれる。
分光器180は、被検眼100からの測定光の戻り光と参照光との干渉光を受光する検出部を構成する。分光器180には、レンズ181,183、回折格子182、及びラインセンサ184が設けられている。光ファイバー125−4から出射された干渉光は、レンズ181を介して略平行光となった後、回折格子182で分光され、レンズ183によってラインセンサ184に結像される。検出器であるラインセンサ184によって検出された干渉光に基づいて生成された干渉信号は制御部170の演算処理部171に出力信号として出力される。演算処理部171は、ラインセンサ184から出力された干渉信号に対して、高速フーリエ変換(FFT)等の処理を行い、被検眼100の情報を断層画像として構築、取得する。
次に制御部170について説明する。制御部170は、光学ヘッド900の各構成要素の制御、光学ヘッド900から出力される信号の処理、及び画像の形成等を行う情報取得部を構成する。制御部170には、演算処理部171、駆動制御部172、記憶部173、及び入力部174が設けられている。制御部170は、光学ヘッド900及び表示部190に電気的に通信可能に接続されている。
演算処理部171は、光学ヘッド900のシングルディテクター116、CCD142、及び分光器180のラインセンサ184から出力される信号を受け取り、これらを処理して各種画像を形成することができる。具体的には、演算処理部171は、シングルディテクター116から出力される信号を処理し、被検眼100の眼底又は前眼部の2次元画像(正面画像)を形成し、CCD142から出力される信号を処理し、被検眼100の前眼画像を形成する。また、演算処理部171は、ラインセンサ184から出力された干渉信号に対して、高速フーリエ変換(FFT)等の処理を行い、干渉信号に含まれる輝度分布(光の強度情報)に関する情報等から眼底又は前眼部の断層画像を形成する。演算処理部171は、形成した各種画像を表示部190に送り、表示部190にこれら画像等を表示させることができる。
駆動制御部172は、光学ヘッド900の合焦レンズ112、走査手段117、OCT走査手段122、OCT合焦レンズ123、及び参照ミラー153の駆動を制御する。また、駆動制御部172は、固視灯119の点灯制御を行う。さらに、駆動制御部172は、後述するアダプターレンズ105の不図示の駆動機構を制御し、アダプターレンズ105の光路に対する挿脱を制御することができる。なお、アダプターレンズ105の挿脱は検者が行ってもよい。
演算処理部171及び駆動制御部172は、制御部170のCPUなどの演算処理装置によって実現されることができ、例えば、それぞれ一つのモジュールとして実現されることができる。また、演算処理部171及び駆動制御部172を、それぞれ複数のモジュールで実現してもよく、まとめて一つのモジュールで実現してもよい。
記憶部173は、制御部170で実行する任意のプログラムや光学ヘッド900におけるOCT走査手段122等の各種構成要素の制御情報、形成した被検眼100の画像や被検者の情報等を記憶することができる。記憶部173は、任意の記憶手段で構成されることができる。入力部174は、制御部170に対する検者の入力を受け付けることができる。入力部174は、任意の入力手段で構成されることができ、例えばマウスやキーボードを含むことができる。
(アダプターレンズ)
本実施例では、前眼部を撮影する際に、挿脱可能なアダプターレンズ105を対物レンズ101−1と被検眼100との間に挿入することとしている。アダプターレンズ105は、被検眼100の眼底と前眼部との間で撮像部位を切り換えるための撮像部位切換手段として、光学ヘッド900において被検眼100と対向する位置に設けられている。なお、アダプターレンズ105は光学ヘッド900の筐体の中に含まれてもよいし、筐体の外において筐体に取り付けられる構成であってもよい。また、アダプターレンズ105の挿脱によりOCT測定光学系の分散が変わらないように、アダプターレンズ105の分散量は被検眼100の前眼部から眼底までの分散とほぼ等しくなるように構成されている。
アダプターレンズ105は、断層画像の取得位置(測定部位)を被検眼100の眼底と前眼部で切り換えるために、OCT走査手段122と被検眼100との間に挿入される光学部材を構成する。アダプターレンズ105は、前眼部を撮像する際に、対物レンズ101−1の焦点位置に配置されるとともに、OCT走査手段122と光学的に略共役な位置に配置される。本実施例では、構成の容易さ等により、アダプターレンズ105を被検眼100と対物レンズ101−1の間に挿入することとしているが、被検眼100とOCT走査手段122との間の光路であれば任意の位置に挿入することが可能である。
また、アダプターレンズ105の光路への挿入については、駆動制御部172によって、入力部174を介して制御部170が受けた断層画像を取得する測定部位の切り替え指示に応じて、制御されることができる。これに対し、手動等によりアダプターレンズ105を挿入し、任意のセンサ等を用いてアダプターレンズ105の挿入を検知して、測定部位の切り替えに応じた各種制御を制御部170に実行させることもできる。
なお、アダプターレンズ105の挿入によって、ファイバー端126の共役位置が被検眼100の眼底から前眼部へ切り替わることを考慮し、アダプターレンズ105は凸レンズとすることができる。
また、アダプターレンズ105の厚さは、被検眼100の前眼部から眼底まで光が通過する際の群速度GDを考慮することにより決定されることができる。群速度GDは下記の式1により表わされる。
GD=dng/dλ=−λ×d2n/dλ2 (式1)
ただし、ng=n−λ×dn/dλで、λは光源130の中心波長であり、dng/dλは群屈折率ngの波長微分、d2n/dλ2は屈折率nの波長の2階微分であり、dn/dλは屈折率nの波長微分を示す。
式1により被検眼100中の媒質の群速度GDを求め、被検眼100中の媒質の光軸方向の厚さLとの積(GD×L)が被検眼100とアダプターレンズ105で略一致するように、アダプターレンズ105のガラス材料及び厚さが決定される。これにより、OCT装置1は、OCT測定光学系に発生する光の分散を相殺し、滲みのない明瞭な断層画像を得ることができる。さらに、眼底と前眼部の撮影の切り替えに伴う分散の調整の必要をなくすことができる。また、分散補償を信号処理で行う場合には、分散補償の信号処理を簡素にすることができる。
また、アダプターレンズ105の挿入及び被検眼100の測定部位の変更により、光学ヘッド900と被検眼100の距離が眼底を撮像する際の距離から変わるために、測定光と参照光の光路長差が変わる。そのため、後述するように、本実施例では、アダプターレンズ105の挿脱に応じて、駆動制御部172によって、参照ミラー153の光軸方向における位置を予め定められた位置に移動させる。同様に、測定光の光路長の変化及び被検眼100の測定部位の変更に応じて測定光の合焦位置も変化する。そのため、本実施例では、アダプターレンズ105の挿脱に応じて、駆動制御部172によって、OCT合焦レンズ123の光軸方向における位置も予め定められた位置に移動させる。
(断層画像の撮像方法)
以下、図2乃至4を参照して、本実施例に係るOCT装置1を用いた断層画像の撮像方法について説明する。OCT装置1は、OCTXスキャナ122−1及びOCTYスキャナ122−2によって構成されるOCT走査手段122を制御することで、被検眼100の眼底又は前眼部における所望部位の断層画像を撮像することができる。
上述のOCT光学系の一連の動作により、OCT装置1は、被検眼100のある1点における断層に関する情報を取得することができる。このように、被検眼100の奥行き方向の断層に関する情報を取得することをAスキャンと呼ぶ。また、OCT装置1では、OCT走査手段122によって被検眼100を測定光で走査することにより、被検眼100の2次元の断層像や3次元の断層像の情報を取得することができる。
ここで、Aスキャン方向と直交する方向における被検眼100の断層に関する情報、すなわち2次元の断層像の情報を取得する方向に被検眼100を測定光で走査することをBスキャンと呼ぶ。さらに、Aスキャン、及びBスキャンのいずれの走査方向とも直交する方向に被検眼100を測定光で走査することをCスキャンと呼ぶ。特に、3次元の断層像の情報を取得する際に被検眼100に対し2次元ラスター走査する場合、高速に走査が行われる方向をBスキャン方向と呼び、Bスキャン方向に直交し、低速に走査が行われる方向をCスキャン方向と呼ぶ。
図2は、被検眼100の眼底202を撮像する際に、被検眼100に測定光201を照射し、眼底202を測定光201でx方向にスキャン(Bスキャン)している様子を示している。なお、図2においては、x方向に移動された光束を破線で示しており、一点差線は各光束の主光線を示している。ラインセンサ184は、眼底202におけるx方向の撮像範囲から所定の撮像回数(Aスキャンの回数)だけ情報を取得する。
x方向のある位置で得られるラインセンサ184上の輝度分布の信号に対して、演算処理部171は波数変換、分散補償の計算、及び高速フーリエ変換(FFT)等の信号処理を行う。これら信号処理で得られた線状の輝度分布をモニタに示すために、濃度又はカラー情報に変換したものをAスキャン画像と呼ぶ。また、この複数のAスキャン画像を並べた2次元の画像をBスキャン画像と呼ぶ。
OCT装置1は、1つのBスキャン画像を構築するための複数のAスキャン画像を撮像した後、y方向のスキャン位置を移動させて再びx方向のスキャン(Bスキャン)を行うことにより、複数のBスキャン画像を得ることができる。演算処理部171は、Bスキャン画像に対して輝度調整等の処理をさらに実行し、処理した画像を表示部190の画面上に表示させる。
複数のBスキャン画像又は複数のBスキャン画像から構築した3次元断層画像を表示部190に表示することで、検者がこれらの画像を被検眼100の診断に用いることができる。また、上述の断層画像の構築方法は被検眼100の前眼部の断層画像の構築に対しても同様である。
図3は、被検眼100と対物レンズ101−1との間にアダプターレンズ105が挿入されていない眼底撮影時において、表示部190の表示画面200に表示される画像を示す。図4は、被検眼100と対物レンズ101−1との間にアダプターレンズ105が挿入されている前眼部撮影時において、表示画面200に表示される画像を示す。なお、図3及び4において、表示領域210に示す破線は被検眼100と光学ヘッド900とのxy方向におけるアライメント用の指標を示し、表示領域211に示す点線は表示領域212に示される断層画像を取得する位置の指標を示す。また、図4において、表示領域212には、前眼部撮影時用のアライメント基準線212−1が破線で示されている。
眼底撮影時には、図3に示すように表示領域210に前眼画像、表示領域211に眼底202の二次元画像、及び表示領域212に眼底202の断層画像であるBスキャン画像が表示される。表示領域210に表示される前眼画像は、演算処理部171がCCD142からの出力信号を処理して形成した画像である。表示領域211に表示される眼底202の二次元画像は、演算処理部171がシングルディテクター116の出力信号を処理し形成した画像である。表示領域212に表示される眼底202の断層画像は、演算処理部171がラインセンサ184からの出力信号を処理し構築した画像である。
一方で、前眼部撮影時には、図4に示すように表示領域210に前眼部の二次元画像、表示領域211にも前眼部の二次元画像、及び表示領域212に前眼部の断層画像であるBスキャン画像が表示される。表示領域210,211に表示される前眼部の二次元画像はともに、演算処理部171がシングルディテクター116の出力を処理して形成した画像である。表示領域212に表示される前眼部の断層画像は、演算処理部171がラインセンサ184からの出力信号を処理し構築した画像である。また、前眼部撮影時には、表示領域212中に後述するアライメント基準線212−1があらかじめ表示されている。なお、表示領域210には、CCD142からの出力信号を処理して形成した画像を表示してもよい。
(前眼部撮影時のアライメント)
以下、図5乃至図8を参照して、前眼部撮影時のアライメントについて説明する。図5は、被検眼100と対物レンズ101−1との間にアダプターレンズ105が挿入されていない眼底撮影時の測定光201の光路を示す。図6(a)及び(b)は、被検眼100と対物レンズ101−1との間にアダプターレンズ105が挿入されている前眼部撮影時の測定光201の光路を示す。なお、図5乃至6(b)においては、測定光201の主光線を一点差線で示している。また、説明のため、測定光201の光軸に対して互いに同じ角度を持って対物レンズ101−1から出射される測定光201の主光線501,601,602を示している。なお、図6においてアダプターレンズ105は対物レンズ101−1に接続されていないように示されているが、上述のようにアダプターレンズ105は光学ヘッド900に含まれ、光学ヘッド900を駆動させる際には対物レンズ101−1と連動する。
被検眼100の眼底202を撮像する際には、図5に示すように、測定光学系を構成する光学ヘッド900の射出瞳の位置(瞳位置)に被検眼100の瞳孔が配置されるように、光学ヘッド900が被検眼100に対してアライメントされる。ここで、光学ヘッド90の射出瞳の位置(瞳位置)とは、被検眼100側から見て測定光201の主光線が交わる位置であり、瞳位置はOCTXスキャナ122−1及びOCTYスキャナ122−2の中央点の光学的な共役位置である。このような配置により、OCT走査手段122によって走査される測定光201が被検眼100の眼底202に届くこととなる。
ここで、光学ヘッド900のアライメントは、検者が不図示のステージなどの駆動装置を用いて光学ヘッド900をx方向、y方向、及びz方向の3軸方向に適宜に駆動することで行われる。なお、光学ヘッド900のアライメントは、取得された前眼画像等に基づいて、制御部170の駆動制御部172が光学ヘッド900の駆動装置を制御することで行われてもよい。
被検眼100の前眼部を撮像する際には、図6(a)及び(b)に示すように、アダプターレンズ105が、アダプターレンズ105を除く光学ヘッド900の瞳位置に配置されている。この配置により、光学ヘッド900の射出瞳が有限の距離に置かれ、前眼部を走査する測定光201の主光線が光軸に対して平行ではない構成となり、測定光201で前眼部を走査する際の光路が非テレセントリックな構成となる。これに対し、従来のOCT装置では、前眼部をテレセントリックな光学系を用いて撮像することから前眼部に照射される測定光の主光線が光軸に平行となるため、射出瞳が無限遠点に配置されることになる。本実施例の構成では、アダプターレンズ105は、測定光201の主光線が交わる瞳位置に配置されるため、従来のテレセントリックな構成におけるアダプターレンズに比べてコンパクトにすることができる。
また、当該構成では、従来のテレセントリックな構成において対物レンズとアダプターレンズとの間で必要とされる、対物レンズの前側焦点位置からアダプターレンズまでのアダプターレンズの後ろ側焦点距離分の距離が必要なくなる。そのため、本実施例によるアダプターレンズ105の構成では、従来のテレセントリックな構成と比べて、前眼部撮影時において対物レンズ101−1と被検眼100の距離を短くすることができる。そのため、前眼部撮影時のアライメントにおいて、被検眼100にアダプターレンズ105が接触しないように、被検眼100に対してz方向に光学ヘッド900を駆動させることができる可動範囲を広くすることができる。従って、当該構成によって前眼部撮影時のOCT装置1の操作性を向上させることができる。なお、これらの効果はアダプターレンズ105が対物レンズ101−1とOCT走査手段122との間に配置された場合でも同様に奏されることができる。
一方で、本実施例に係る構成にて前眼部の断層像を取得する場合、被検眼100に対する光学ヘッド900の作動距離に応じて被検眼100のスキャン範囲が変化する。ここで、作動距離とは、被検眼100と対向する光学要素間の距離をいい、言い換えると、被検眼100と被検眼100に至る光学系における被検眼100に最も近い構成要素との間の距離をいう。被検眼100の前眼部を撮像する際の本実施例に係る構成では、被検眼100とアダプターレンズ105との間の距離が作動距離となる。
図6(a)は、被検眼100に対して作動距離WD1だけ離れた位置に光学ヘッド900が配置されたときの前眼部撮影時の測定光201の光路を示す。図6(b)は、被検眼100に対して、作動距離WD1よりも長い作動距離WD2だけ離れた位置に光学ヘッド900が配置されたときの前眼部撮影時の測定光201の光路を示す。図7(a)及び(b)は、それぞれ図6(a)及び(b)に示す光学ヘッド900の配置において撮像されたBスキャン画像を示す。
図6(a)を参照すると、作動距離WD1に光学ヘッド900が配置されているときには、光軸に対して角度を持った測定光201の主光線601は被検眼100の角膜の周縁部付近に到達している。これに対し、図6(b)を参照すると、より長い作動距離WD2に光学ヘッド900が配置されているときには、光軸に対して主光線601と同じ角度を持った測定光201の主光線602は、被検眼100の角膜の周縁部を越え強膜に到達している。このことから、より長い作動距離に光学ヘッド900を配置した場合、光軸に対してx方向に角度を持った測定光201は、光軸からよりx方向に離れた被検眼100の位置に到達することが分かる。このように、本構成では、前眼部の断層像を取得する際には、測定光201のOCT走査手段122を同じ角度範囲で駆動させた場合であっても、被検眼100に対する光学ヘッド900の作動距離に応じて被検眼100のスキャン範囲が変化する。
被検眼100に対する光学ヘッド900の作動距離が変化すると、図7(a)及び(b)に示すように、被検眼100のスキャン範囲、すなわち、表示画面200の表示領域211に表示される前眼部のBスキャン画像の画界が変わってしまう。そのため、前眼部のBスキャン画像を解析し、例えば水晶体の幅等のBスキャン画像中の2点間の距離d1,d2等を求める際に、想定していた画界からの違いに起因して正確な距離測定が行えない場合がある。そのため、前眼部撮像時には、被検眼100に対する光学ヘッド900の作動距離を精度良く定めることが重要となる。なお、スキャン範囲の変化による画界の変化はOCT走査手段122による走査に関連して変化するため、干渉信号のサンプリング数に応じて決まるz方向(深さ方向)の画界には変化は生じない。
本実施例では、作動距離を精度良く定めるために、OCT装置1によって取得された断層画像を用いて光学ヘッド900と被検眼100の位置合わせ(アライメント)を行うことで作動距離を定める。以下に、本実施例によるOCT装置1において、被検眼100の前眼部撮像時の光学ヘッド900のアライメントについて述べる。
本実施例では、被検眼100の前眼部撮像時のアライメントにおいて、まず参照光路長を所定の光路長に調整する。具体的には、駆動制御部172により参照ミラー153の光軸方向における位置を、正確な距離測定を行うことができる画界に対応する所定の作動距離に応じて、あらかじめ定められた位置(所定の位置)に移動させる。
被検眼100の前眼部撮像時のアライメントは、参照ミラー153を所定の位置に配置した状態で、被検眼100の角膜の頂点が、生成した断層画像におけるアライメント基準線212−1に一致するように、光学ヘッド900を駆動させることで行う。このアライメントは、光学ヘッド900を検者が手動で駆動させて行うことができる。また、このアライメントは、演算処理部171によって被検眼100の角膜頂点の位置を断層画像から判別し、角膜頂点の位置がアライメント基準線212−1に一致するように駆動制御部172によって光学ヘッド900を駆動させて自動で行ってもよい。また、アライメント基準線212−1に合わせる被検眼100の部位は角膜の頂点である必要はなく、角膜の内部の構造や虹彩、水晶体など被検眼100の前眼部内部の構造であってもよい。
被検眼100の角膜頂点の位置をアライメント基準線212−1に一致するように光学ヘッド900の位置を調整することで、被検眼100に対する光学ヘッド900の作動距離が一意に定まる原理を、図8(a)及び(b)を参照して説明する。
図8(a)は、OCT測定光路L5中の参照光路長等価位置220とOCT断層画像の撮像範囲221の関係を示し、図8(b)は被検眼100の角膜頂点がアライメント基準線212−1に一致していないときのOCT断層画像の撮像範囲221を示す。参照光路長等価位置220は、光カプラー125からの光路長が参照光路L4の片道の光路長と同一となる位置をOCT測定光路L5中に示した位置である。なお、参照光路L4の片道の光路長とは、光カプラー125から参照ミラー153までの光路長をいう。言い換えると、参照光路長等価位置220は、測定光201の光路長が参照ミラー153の位置に応じた参照光の光路長と同じ光路長となる位置である。ここで、参照光路長等価位置220は、断層画像の撮像範囲221のうち一般的に一番上の位置に対応しており、OCT断層画像は参照光路長等価位置220を一番上とした画像となる。
参照ミラー153を所定の位置に配置することは、参照光路長等価位置220を所定の位置に設定することになる。ここで、OCTにおいては、参照光の光路長と測定光201の光路長がほぼ等しいときの参照光と測定光201の干渉光から、被検査物の断層像が得られる。そのため、参照ミラー153を所定の位置に配置し、参照光路長等価位置220を所定の位置に設定することで、OCT測定光学系に対するOCT断層画像の撮像範囲221を設定することができる。
設定された断層画像の撮像範囲221内に被検眼100が入るように、光学ヘッド900を被検眼100に対して駆動させOCT測定光路L5の光路長を変更することは、被検眼100に対する光学ヘッド900の作動距離を調整することになる。従って、OCT断層画像の撮像範囲221内のアライメント基準線212−1に被検眼100の角膜頂点の位置を一致させるように光学ヘッド900を駆動させることで、光学ヘッド900の作動距離を所定の作動距離になるように調整することができる。
また、OCT断層画像の生成において、FFTによって求められた干渉信号は正の成分と負の成分の情報を持つ。上述は正の成分の情報を用いた時の場合であるが、負の成分の情報を用いてOCT断層画像を生成する場合には、参照光路長等価位置220が、断層画像の一番下の位置に対応する。この場合にも、上記本実施例に係るアライメントと同様のアライメントによって被検眼100に対する光学ヘッド900の作動距離を一意に定めることができる。なお、この場合には、参照ミラー153が配置される所定の位置が上記の場合と異なり、断層画像の縦方向の表示距離分だけ光路長を長い位置に移動させた位置、すなわち図8(a)に示す撮像範囲221の一番下の位置となる。
(前眼部撮影時の光路長補正方法)
一方で、光ファイバー125−2,125−3の長さのばらつき、光学系の空気間隔、並びに光学素子の屈折率及び厚さ等のばらつきにより、参照光路L4とOCT測定光路L5の光路長差は基本的に装置ごとにばらつくことが想定される。そのため、任意の光学ヘッド900について、特定の位置に参照ミラー153を移動させても、参照光路長等価位置220はOCT測定光路L5中で一定とはならない。すなわち、光学ヘッド900ごとの参照光路L4とOCT測定光路L5の光路長差のばらつきにより、参照ミラー153を特定の位置に移動させても、被検眼100に対する任意の光学ヘッド900の作動距離を一定にすることができない。
そのため、本実施例では、このばらつきを装置ごとに補正し、装置ごとに参照ミラー153を配置する所定の位置を定める。特に図6に示すような作動距離に応じて画角が変化する光学系においては、この補正が重要となる場合がある。なお、装置ごとに定められた参照ミラー153の所定の位置は、記憶部173等に記憶することができる。
以下、図9を参照して、装置ごとのばらつきに応じた、前眼部撮影時に参照ミラー153を配置する所定の位置の補正方法、すなわち参照光の光路長の補正方法を説明する。図9は、前眼部撮影時の参照光の光路長の補正方法を説明するための図である。図9(a)は、反射物体222(基準反射物体)を、光学ヘッド900に対して前述の作動距離だけ離れた位置に配置した際のOCT測定光路L5と参照光路L4を示す。図9(a)においては、測定光201の光路長と参照光の光路長の関係を分かりやすく示すために、OCT測定光路L5と参照光路L4を並べて示している。図9(b)は、図9(a)に示したOCT測定光路L5と参照光路L4の関係において取得されたAスキャンデータから形成されたAスキャンデータ画像を示す。
図9(a)において、測定光201の光路長が参照ミラー153の位置に応じた参照光の光路長と同じ光路長となる位置が、OCT測定光路L5中の参照光路長等価位置220である。また、OCT測定光路L5中に基準となる反射物体222を配置している。この反射物体222は、反射物体222に対する光学ヘッド900の作動距離が、前述の被検眼100に対する光学ヘッド900の所定の作動距離と同じ距離となる位置に配置されている。
反射物体222を光学ヘッド900に対して前述の所定の作動距離に配置した際に、測定光201と参照光の干渉の結果得られるAスキャンデータを用いて、図9(b)に示すようなAスキャンデータ画像を形成することができる。Aスキャンデータ画像において、画像の横方向はz方向(深さ方向)の位置に対応し、画像の縦方向はAスキャンデータに含まれる干渉信号の強度に対応する。なお、ここでは説明のため、画像としているが単にグラフであってもよい。
前述のように、参照光路長等価位置220はBスキャン画像の一番上(z方向の一番浅い位置)に対応するため、Aスキャンデータ画像中の紙面左端にあるピーク位置が参照光路長等価位置220に対応する反射点220pである。これに対し、アライメント基準線212−1の付近に位置するピーク位置が反射物体222に対応する反射点222pである。
ここで、駆動制御部172の制御によって参照ミラー153を参照光の光軸に沿って移動させると参照光の光路長を変更することができる。OCTの干渉光は測定光201の光路長と参照光の光路長がほぼ等しいときに生じるため、参照光の光路長を変化させることで、OCTの干渉光に基づいて構築されるAスキャンデータ画像の撮像範囲を移動させることができる。そのため、参照ミラー153を参照光の光軸に沿って移動させることで、Aスキャンデータ画像の撮像範囲を図中矢印で示すz方向に移動させることができる。
反射物体222は、前述の所定の作動距離に配置されているため移動しないが、Aスキャンデータ画像の撮像範囲を移動させることで、Aスキャンデータ画像中の反射点222pのピークをアライメント基準線212−1に一致させることができる。ここで、反射物体222は所定の作動距離に配置されている。そのため、反射点222pがアライメント基準線212−1と一致するように参照ミラー153を移動させることで、所定の作動距離に配置された物体を適切に撮像する際の参照ミラー153の位置を求めることができる。これにより、任意の光学ヘッド900の構成に応じた、参照ミラー153の前述の所定の位置を求めることができる。
Aスキャンデータ画像中の反射点222pのピークとアライメント基準線212−1が一致した際の、参照ミラー153の位置に関連する情報を記憶部173等に記憶する。ここで、参照ミラー153の位置に関連する情報には、例えば、参照ミラー153を駆動するモータや駆動機構の位置に関連する情報(モーターの回転数や、ステップ数等)が含まれる。参照ミラー153に関連する情報を記憶させる作業を各OCT装置1に対して行うことで、光ファイバー長さ、光学系の空気間隔、並びに光学素子の屈折率及び厚さ等のばらつきに起因した測定光201と参照光の光路長差のばらつきを補正することができる。この補正によって、被検眼100に対して光学ヘッド900を前述の所定の作動距離に配置して被検眼100の前眼部の撮像を行うことができるため、スキャン範囲のばらつきを最小限に抑えることができる。
なお、被検眼100のスキャン範囲は、測定光201を走査するOCT走査手段122を駆動させる角度範囲を変更させ、Bスキャン画像の画角を変更することでも変化する。このため、本実施例では、前述の所定の作動距離に光学ヘッド900を配置して前眼部を撮像する際に、同じスキャン範囲を撮像するためにOCT走査手段122を駆動させる角度範囲を特定の角度範囲としている。
特に、本実施例では、被検眼100に対して光学ヘッド900が所定の作動距離に配置されているときに、被検眼100の所定の撮像範囲内で測定光201を走査するように、所定の作動距離に対応付けられた角度範囲でOCT走査手段122を駆動させる。より具体的には、前眼部を撮像するときに、駆動制御部172が、OCT走査手段122を所定の作動距離に対応する角度範囲で駆動するように制御する。これにより、前眼部撮影時に、被検眼100に対して光学ヘッド900が所定の作動距離に配置されているときに、Bスキャン画像の画角の変化を防止することで、Bスキャン画像の画界の変化を防止することができる。このため、Bスキャン画像を解析する際の距離測定を適切に行うことができ、被検眼100をより適切に診断することができる。
(前眼部撮影時のOCT合焦レンズの位置)
眼底を撮影する際には、被検眼100の視度に応じてOCT合焦レンズ123の位置を異なる位置に調整し、撮影を行うことでOCT断層像を得る。一方で、前眼部を撮影する際のOCT合焦レンズ123の位置は、一般的に被検眼100に対する光学ヘッド900の作動距離により異なる位置に調整する必要がある。
ここで、本実施例では、前述のように前眼部を撮像する際に被検眼100に対して光学ヘッド900を所定の作動距離に配置する。そのため、前眼部を撮像する際のOCT合焦レンズ123の位置も所定の作動距離に応じて所定の位置(所定の合焦レンズ位置)に定めることができる。これにより、前眼部を撮像する際にOCT合焦レンズ123を調整する必要がなくなり、撮像にかかる時間を短縮できるとともに、作動距離の調整とOCT合焦レンズ123の調整という2つの調整を行う煩雑さを回避することができる。
眼底撮影時及び前眼部撮影時の合焦レンズ112とOCT合焦レンズ123の位置は、それぞれあらかじめ装置ごとに補正される。眼底を撮像する際の合焦レンズ112とOCT合焦レンズ123の位置の補正は、被検眼100の代用として各視度に応じた基準となる模擬被検眼を用いて行うことができる。また、各視度間の合焦レンズ位置は補間により求める。
前眼部撮影時の合焦レンズ112とOCT合焦レンズ123の位置の補正は、図9(a)に示した基準となる反射物体222(基準反射物体)を配置し、この反射物体222の位置を元に合焦レンズ位置を求めることで行われる。例えば、断層画像中の反射物体222の輝度が最も高くなる際のOCT合焦レンズ123の位置を前眼部撮影時のOCT合焦レンズ123の位置として求めることができる。すなわち、光学ヘッド900から所定の作動距離だけ離れた位置に反射物体222を配置し、Bスキャン画像における反射物体222の輝度に基づいて、測定光201が反射物体222に合焦する位置をOCT合焦レンズ123の所定の位置として設定する。なお、同様に、シングルディテクター116からの出力信号に基づく前眼部の2次元画像において反射物体222の輝度が最も高くなる際の合焦レンズ112の位置を前眼部撮影時の合焦レンズ112の位置として求めることができる。
その他、被検眼100の視度をあらかじめ求めておき、模擬被検眼を用いた補正値から、上記視度に対応した反射物体222を配置した際の合焦レンズ112及びOCT合焦レンズ123の位置を求めてもよい。例えば、反射物体222として視度の異なる複数の模擬被検眼を用いる。複数の模擬被検眼を光学ヘッド900に対して所定の作動距離に配置し、駆動制御部172によって合焦レンズ112及びOCT合焦レンズ123を駆動させ、複数の模擬被検眼の各々について前眼部に照明光及び測定光201が合焦する位置を求める。なお、照明光及び測定光201の合焦は、演算処理部171によって模擬被検眼の2次元画像やBスキャン画像から、模擬被検眼の輝度に基づいて判断することができる。そして、制御部170の演算処理部171は、被検眼100の視度に基づいて、当該求められた前眼部に合焦する位置から合焦レンズ112及びOCT合焦レンズ123が配置される所定の位置を選択する。この場合には、前眼部撮影時に被検眼100の視度に応じた所定の位置に合焦レンズ112とOCT合焦レンズ123を配置することができる。
いずれの場合も、前眼部撮影時には合焦レンズ112とOCT合焦レンズ123は所定の位置に配置して撮影が行われる。これにより、前眼部を撮像する際にOCT合焦レンズ123を調整する必要がなくなり、作動距離の調整とOCT合焦レンズ123の調整という2つの調整を行う煩雑さを回避することができる。
また、調整のしやすさの観点で、合焦レンズ112とOCT合焦レンズ123の被検眼100の前眼部における合焦位置は異なっていてもよい。例えば、OCT合焦レンズ123は前眼部の角膜が明瞭に観察できる位置に、合焦レンズ112は被検眼100の虹彩が明瞭に観察できる位置にそれぞれ配置し、光学ヘッド900のxy方向のアライメントの調整をしやすくしてもよい。
(作動距離の追尾)
光学ヘッド900を被検眼100に対して所定の作動距離に調整したのち、時間経過とともに被検眼100の固視微動や被検者の移動が生じ、z方向における被検眼100の位置が移動することが想定される。そのため、本実施例によるOCT装置1では、前眼部撮影時において、被検眼100に対する光学ヘッド900の作動距離が一定になるように、光学ヘッド900の位置の補正をリアルタイムに行う。すなわち、制御部170の駆動制御部172は、前眼部を撮像する際に、被検眼100の移動に応じて、被検眼100に対して所定の作動距離だけ離れた位置に光学ヘッド900を移動させる。
具体的には、駆動制御部172は、Bスキャン画像中の前眼部の断層像の位置に基づいて、Bスキャン画像中の前眼部の断層像の位置が常に一定な位置になるように、光学ヘッド900を被検眼100に対して駆動させる。例えば、駆動制御部172は、図9のAスキャンデータを用いて被検眼100の位置を求め、被検眼100の位置とアライメント基準線212−1との距離と等しい距離だけ光学ヘッド900を駆動させる。この処理を繰り返し行って、作動距離を一定に保つ追尾を行うことができる。
上述のように、本実施例によるOCT装置1は、光源130と、光源から出射された光を被検眼100に照射する光学ヘッド900と、光学ヘッド900を介して得た干渉光に基づいて被検眼100の断層像の情報を取得する制御部170を備える。光学ヘッド900は、光源130から出射された光を被検眼100に照射する測定光201と参照光とに分割するとともに、被検眼100からの測定光201の戻り光と参照光とを合波して干渉光を得る干渉部を備える。なお、本実施例では、干渉部は光カプラー125を用いて構成される。また、光学ヘッド900は、測定光201を被検眼上で走査するOCT走査手段122と、干渉光を検出する分光器180とを備える。制御部170は、光学ヘッド900の分光器180の出力信号に基づいて、被検眼100の断層像の情報を取得する。また、光学ヘッド900は、測定光201の光路と参照光の光路との間の光路長差を変更する参照ミラー153と、測定光201が照射される被検眼100の部位を切り替えるアダプターレンズ105を備える。さらに、光学ヘッド900は、測定光201を被検眼100に合焦させるOCT合焦レンズ123を含む。
OCT装置1では、被検眼100の前眼部を撮像する際に、光学ヘッド900の射出瞳が有限の距離に配置されるように、被検眼100とOCT走査手段122との間にアダプターレンズ105が配置される。このとき、アダプターレンズ105は、対物レンズ101−1の焦点位置に配置されるとともに、OCT走査手段122と光学的に略共役な位置に配置される。また、この際、被検眼100に対して光学ヘッド900が所定の作動距離に配置されるときに前眼部に測定光201が合焦し且つ前眼部が撮像範囲221に入るように、OCT合焦レンズ123と参照ミラー153がそれぞれ所定の位置に配置される。
本実施例によるOCT装置1では、前眼部を撮像する際に光学ヘッド900の射出瞳が有限の距離に配置されるため、前眼部を非テレセントリックな光学系によって撮像することとなる。また、OCT装置1では、前眼部を撮像する際に、光学ヘッド900を被検眼100に対して所定の作動距離に配置することで、前眼部に測定光201が合焦し且つ前眼部を撮像範囲221に入れることができる。従って、OCT装置1では、前眼部を撮像する際に非テレセントリックな光学系を用いながらも、アライメントを容易に行うことができる。
また、OCT装置1においては、撮像範囲221にアライメント基準線212−1が設けられている。また、OCT装置1のアライメントの際には、撮像範囲221のBスキャン画像におけるアライメント基準線212−1の位置に被検眼100の撮像対象の部位が配置されるように、被検眼100に対して光学ヘッド900が移動される。このため、検者は、前眼部を撮像する際に、OCT装置1の表示部190に表示される被検眼100のBスキャン画像を用いて光学ヘッド900を所定の作動距離に容易に配置することができる。
さらに、本実施例によるOCT装置1では、制御部170の駆動制御部172は、前眼部を撮像する際に、OCT走査手段122を光学ヘッド900の所定の作動距離に対応する所定の角度範囲で駆動するように制御する。このため、前眼部を撮像する際に、OCT走査手段122による測定光201の走査範囲を一定にすることができ、断層画像の画角を一定にすることができる。このため、被検眼100に対して光学ヘッド900を所定の作動距離に配置した際に、OCT走査手段122を駆動する角度範囲に応じて断層画像の画界が変化することを防止することができる。このため、断層画像を解析する際の距離測定を適切に行うことができ、被検眼100をより適切に診断することができる。
なお、被検眼100に対する光学ヘッド900の作動距離の変化に応じたスキャン範囲の変化は、測定光201の走査方向、すなわちx方向及びy方向において生じる。このことから、作動距離の変化に応じた画界の変化はBスキャン方向だけでなく、3次元の断層情報を取得する際の、Bスキャン画像を複数取得する方向であるCスキャン方向にも生じる。しかしながら、本実施例によるOCT装置1では、上述のように被検眼100の前眼部を撮像する際、所定の作動距離に光学ヘッド900が配置されることができる。そのため、前眼部の3次元の断層情報を取得する際に、x方向だけでなく、y方向でも所望の撮像範囲で断層情報を取得することができ、OCT装置1を用いることで適切な被検眼100の診療を行うことができる。
本実施例では、前眼部を撮像する際にOCT走査手段122を駆動させる角度範囲を、所定の撮像範囲のBスキャン画像を得られるように、所定の作動距離に基づいて定めている。これに対し、前眼部を撮像する際にOCT走査手段122を駆動させる角度範囲を予め定めておき、当該角度範囲に基づいて、所定の作動距離を定めてもよい。例えば、眼底を撮像する際のOCT走査手段122の角度範囲を、前眼部を撮像する際のOCT走査手段122の角度範囲として設定し、当該角度範囲に基づいて所定の作動距離を定めてもよい。
また、参照ミラー153が配置される所定の位置は、光学ヘッド900から所定の作動距離だけ離れた位置に反射物体222を配置した際に反射物体222が撮像範囲221の所定の位置に配置されるように、撮像範囲221を画定する位置に設定される。これにより、装置ごとの測定光と参照光の光路長差のばらつきによって、光学ヘッド900を所定の作動距離に配置する際の参照ミラー153の位置がばらつくことを防止することができる。
また、反射物体222を前述の所定の作動距離の位置に配置せずに、装置ごとの測定光と参照光の光路長差のばらつきを補正する方法も考えうる。
例えば、アダプターレンズ105を挿入せずに、被検眼100の眼底202に相当する位置に反射物体を配置し、上述の補正方法と同様にAスキャンデータ画像中の反射物体に対応する反射点のピークをアライメント基準線212−1に一致させる。その後、反射点のピークをアライメント基準線212−1に一致させた際の参照ミラー153の位置に関連する情報を上記と同様に記憶部173等に記憶させる。
また、アダプターレンズ105を挿入しない場合の眼底202に相当する位置と、アダプターレンズ105を挿入した場合の前述の所定の作動距離にある前眼部に相当する位置との測定光の光路長差を別途(実験的もしくは設計値からの計算にて)求めておく。そして、記憶した、眼底202に相当する位置に関する参照ミラー153の位置から、当該光路長差分をオフセットさせる。
すなわち、この場合には、被検眼100の眼底を撮像する際の測定光201の光路長と前眼部を撮像する際の測定光の光路長との差を求める。そして、眼底202を撮像する際の眼底202に対応する位置に反射物体222を配置する。その後、参照ミラー153の所定の位置として、反射物体222が撮像範囲221の所定の位置に配置されるように撮像範囲221を画定する位置から、求めた光路長の差だけオフセットさせた位置を設定する。
この方法でも装置ごとの測定光と参照光の光路長差のばらつきによって、光学ヘッド900を所定の作動距離に配置する際の参照ミラー153の位置がばらつくことを防止することができる。なお、この方法は、他の調整(例えば眼底撮像時の画角調整や、中心位置調整等)と兼ねることができるため、調整時間の短縮を図ることができる。なお、オフセットさせる光路長差は、眼底202及び前眼部撮像時のそれぞれの参照光の光路長差等であってもよい。また、OCT撮影時には参照光と測定光の光路長はほぼ等しいので、オフセットさせる光路長差は、眼底202及び前眼部撮像時のそれぞれの測定光と参照光の光路長差、又は参照光と測定光の光路長の差であってもよい。
また、補正方法は上記に限定されることはなく、任意の距離(光路長位置)に置かれた反射物体位置のピークと光路長差から補正値を求めることもできる。さらに、アダプターレンズ105を挿入した際の任意の距離におかれた反射物体の位置に基づいて、補正を求めてもよい。また、実際に被検眼100に対する測定光路長と参照光路長を求めて補正値を求めてもよい。
[実施例2]
以下、図10を参照して、実施例2によるOCT装置について説明する。実施例2によるOCT装置では、被検眼100の移動に応じて参照ミラー153の位置を移動させて追尾を行うとともに、参照ミラー153の移動に伴いOCT走査手段122を駆動させる角度範囲を補正する。
本実施例によるOCT装置の概略構成は、実施例1に示したものと同様であるため、同一の構成に関しては同じ参照番号を用い、説明を省略する。以下では、実施例1との違いを中心に説明する。
実施例1においては、被検眼100の移動に対する追尾として、光学ヘッド900と被検眼100の作動距離が一定になるように光学ヘッド900を駆動させた。これに対し、本実施例においては参照ミラー153の位置を動かすことで、被検眼100の移動に対する追尾を行う。
参照ミラー153の位置を動かす場合には、実施例1に記載のとおり、被検眼100に対する光学ヘッド900の作動距離に応じて被検眼100のスキャン範囲が変化する。スキャン範囲が変化すると、表示領域211に表示される前眼部のBスキャン画像の画界が変わる。そのため、前眼部のBスキャン画像を解析し、例えば水晶体の幅等のBスキャン画像中の2点間の距離等を求める際に、想定していた画界からの違いに起因して正確な距離測定が行えない場合がある。
これ対して、本実施例では、Bスキャン画像の画界が変わらないように、前眼部撮影時にOCT走査手段122であるOCTXスキャナ122−1及びOCTYスキャナ122−2を駆動させる角度範囲を補正する。
図10は、被検眼100の位置がz方向にΔdだけ移動した際に、OCT走査手段122を駆動させる角度範囲が変更された状態を示す。この場合、演算処理部171は、Bスキャン画像中の前眼部の断層像の位置に基づいて、参照ミラー153の移動量を求める。例えば、図9(b)に示すAスキャンデータに基づいて被検眼100の位置を求め、被検眼100の位置とアライメント基準線212−1との距離と等しい距離だけ参照ミラー153を移動させることを繰り返し行う。さらに、演算処理部171は、参照ミラー153の移動量に応じて、OCT走査手段122を駆動させる角度範囲を下記の式2により求める。
2θ’= arctan{d×tan2θ/(d+Δd)} (式2)
ただし、dは、実施例1で述べた所定の作動距離に対応する、OCT測定光学系の瞳位置(アダプターレンズ105の位置)と被検眼100の基準となる距離である。θは、光学ヘッド900が被検眼100に対して距離dに配置されたときのOCTXスキャナ122−1及びOCTYスキャナ122−2を駆動させる角度、Δdは参照ミラー153の移動量である。
当該駆動を繰り返し行うことで、被検眼100の移動に応じて参照ミラー153を移動させるときでも、Bスキャン画像の画界を一定にすることができ、Bスキャン画像の画角の変化を防止することで、Bスキャン画像の画界の変化を防止することができる。
また、OCTXスキャナ122−1及びOCTYスキャナ122−2の角度範囲の補正に伴い、Xスキャナ117−1及びYスキャナ117−2の角度範囲も補正することもできる。この場合には、シングルディテクター116からの出力信号に基づく前眼部の二次元画像の画界が変化することも防止することができる。さらに、二次元観察光路にはリアルタイムに画像を取得するために、Xスキャナ117−1及びYスキャナ117−2の高速性が求められる。この観点から、走査手段117には、ポリゴンスキャナや共振スキャナなどの素子が使用される場合が多い。これらの素子はスキャン角度を変えることが難しい。そのため、この場合には、信号の取得レート・取得タイミングを変化させることで実質的に走査手段117を駆動させる角度範囲を変えることと同等の効果を得ることができる。
上述のように、本実施例によるOCT装置では、制御部170の駆動制御部172は、前眼部を撮像する際に、被検眼100の移動に応じて、参照ミラー153が配置される所定の位置から参照ミラー153を移動させる。この際、駆動制御部172は、前眼部が撮像範囲内のアライメント基準線212−1に一致する所定の位置に配置されるように、参照ミラー153を移動させる。そして、駆動制御部172は、参照ミラー153の移動に基づいて、OCT走査手段122を駆動させる角度範囲を変化させる。これにより、被検眼100の移動に応じて参照ミラー153を移動させるときにおいても、Bスキャン画像の画界を一定にすることができる。このため、Bスキャン画像を解析する際の距離測定を適切に行うことができ、被検眼100を適切に診断することができる。
[実施例3]
実施例2においては、被検眼100の移動について参照ミラー153の位置を移動させて追尾を行う際に、OCT走査手段122を駆動させる角度範囲を補正することで、Bスキャン画像の画界を一定にした。これに対し、実施例3によるOCT装置では、被検眼100の移動を追尾する際の参照ミラー153の移動量に基づいて、Bスキャン画像中の距離を補正する。
本実施例によるOCT装置の概略構成も実施例1に示したものと同様であるため、同一の構成に関しては同じ参照番号を用い、説明を省略する。以下では、実施例2との違いを中心に説明する。
本実施例によるOCT装置では、前眼部撮影時に被検眼100の移動を追尾するために参照ミラー153を移動させる際に、OCT走査手段122を駆動させる角度範囲を補正せずに、画界が変化したBスキャン画像を取得する。その後、演算処理部171によって、取得したBスキャン画像を解析する際に、参照ミラー153の移動量に応じてBスキャン画像中の距離を補正する。
具体的には、演算処理部171は、実施例2と同様に、Bスキャン画像中の前眼部の断層像の位置に基づいて、参照ミラー153の移動量を求める。例えば、図9(b)に示すAスキャンデータに基づいて被検眼100の位置を求め、被検眼100の位置とアライメント基準線212−1との距離と等しい距離だけ参照ミラー153を移動させることを繰り返し行う。その後、参照ミラー153は、取得したBスキャン画像を解析する際に、参照ミラー153の移動量に基づいて、Bスキャン画像中の2点間の距離等を補正する。より具体的には、参照ミラー153が分散補償ガラス152に近づく方向に移動した場合には、参照ミラー153の移動量に応じて、Bスキャン画像中の距離を縮める。これに対し、参照ミラー153が分散補償ガラス152から遠ざかる方向に移動した場合には、参照ミラー153の移動量に応じて、Bスキャン画像中の距離を広げる。
上述のように、本実施例によるOCT装置では、制御部170の駆動制御部172は、前眼部を撮像する際に、被検眼100の移動に応じて、参照ミラー153が配置される所定の位置から参照ミラー153を移動させる。この際、駆動制御部172は、前眼部が撮像範囲内のアライメント基準線212−1に一致する所定の位置に配置されるように、参照ミラー153を移動させる。そして、演算処理部171は、前眼部を撮像したBスキャン画像を解析する際に、参照ミラー153の移動に基づいて、Bスキャン画像における2点間の距離を補正する。
これにより、被検眼100の移動を追尾するための参照ミラー153の移動に伴い、Bスキャン画像の画界が変化した場合であっても、Bスキャン画像中の任意の距離を所定の画界における距離に対応させて補正することができる。このため、本実施例によるOCT装置を用いた場合であっても、Bスキャン画像を解析する際の距離測定を適切に行うことができ、被検眼100を適切に診断することができる。
上述した実施例1乃至3においては、光路長変更手段として参照光の光路長を変更する参照ミラー153を用いたが、光路長変更手段として、測定光の光路長を変更する任意の光学部材を用いてもよい。
また、上述した実施例1乃至3では干渉計としてマイケルソン干渉計を用いたが、マッハツェンダー干渉計を用いてもよい。さらに、光源130からの光を測定光と参照光に分割し、測定光の被検査物からの戻り光と参照光とを合波して干渉光を得る干渉部として、上記実施例では光カプラー125を用いたが、干渉部の構成はこれに限られない。例えば、干渉計をマッハツェンダー干渉計とする場合には、干渉部は光源130からの光を測定光と参照光に分割する光カプラー及び測定光の戻り光と参照光とを合波する光カプラーの2つの光カプラーによって構成することができる。また、光カプラーの代わりに、ビームスプリッタ等を用いた空間光学系を用いてもよい。なお、光学ヘッド900内の構成要素の一部を光学ヘッド900の外部に設けてもよい。
さらに、上述した実施例1乃至3では、OCT装置として、SLDを光源として用いたスペクトラルドメインOCT(SD−OCT)装置について述べたが、本発明によるOCT装置の構成はこれに限られない。例えば、出射光の波長を掃引することができる波長掃引光源を用いた波長掃引型OCT(SS−OCT)装置等の他の種類のOCT装置にも本発明を適用することができる。
また本発明は、上記実施例の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
以上、実施例を参照して本発明について説明したが、実施例で説明されている特徴の組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須のものとは限らない。また、本発明は上述の実施例に限定されるものではない。本発明の趣旨に反しない範囲で変更された発明、及び本発明と均等な発明も本発明に含まれる。例えば、上記の実施例では、被測定物が眼の場合について述べているが、眼以外の皮膚や臓器等の被測定物に本発明を適用することも可能である。この場合、本発明は眼科装置以外の、例えば内視鏡等の医療機器としての態様を有する。従って、本発明は眼科装置に例示される光断層撮像装置として把握され、被検眼は被検査物の一態様として把握される。また、上述の各実施例及び変形例は、本発明の趣旨に反しない範囲で適宜組み合わせることができる。