以下に、本開示に係る実施形態について図面に基づいて説明する。
<概要>
<OCT光学系>
本実施形態に係る光干渉断層撮像装置は、例えば、測定光と参照光との干渉信号に基づいて被検体のOCT画像を得るためのOCT光学系(光コヒーレンストモグラフィー)であってもよい。OCT光学系によって取得されるOCT画像としては、例えば、被検体の形態断層画像、モーションコントラスト画像(OCTアンジオ画像)であってもよい。この場合、OCT画像としては、OCT正面像(OCTエンフェイス画像)、3次元OCT画像であってもよい。
OCT光学系としては、例えば、光源から出射された光束を測定光と参照光に分割し、測定光を被検体に導き、参照光を参照光学系に導いた後、被検体から反射された測定光と参照光との干渉状態を検出器により検出する構成であってもよい。OCT画像は、検出器からの出力信号に基づいて取得されてもよい。なお、測定光は、光スキャナによって走査されてもよい。
<偏光調整部>
OCT光学系の光路には、例えば、偏光調整部(ポラライザ)が設けられてもよく、偏光調整部は、測定光と参照光の少なくともいずれかの偏光状態を調整するために設けられてもよい。偏光調整部は、測定光の光路と参照光の光路の少なくともいずれかに配置されてもよい。なお、偏光調整部は、測定光の光路と参照光の光路が分岐される後の光路に配置され、測定光と参照光の偏光状態を一致させるために用いられてもよい。
例えば、偏光調整部は、光路中の光ファイバーを回転させたり圧力を加えて、偏光方向を調整してもよい。また、偏光調整部は、1/2波長板又は1/4波長板を用いて偏光方向を調整してもよい。また、偏光調整部は、1/2波長板又は1/4波長板と同様の効果を持つプリズム(例えば、フレネルロム)等を組み合わせて実現してもよい。なお、偏光調整部は、少なくとも、S偏光の直線偏光、P偏光の直線偏光、円偏光との間で偏光方向を調整可能な構成であってもよい。
<特定部位に対する偏光調整>
画像取得部は、例えば、偏光調整部を制御し、OCT画像上に含まれる被検体の特定部位に対して偏光状態を調整し、特定部位に関するOCT画像を取得してもよい。画像取得部は、例えば、偏光調整部を制御する制御部であってもよい。
特定部位に関するOCT画像を取得する場合、例えば、画像取得部は、特定部位が適正に画像化されたOCT画像が取得されるように偏光調整部を制御してもよい。この場合、画像取得部は、OCT光学系によって取得されるOCT画像における特定部位での画像信号に基づいて、偏光調整部を制御してもよい。このような構成によれば、特定部位に関する良好なOCT画像を取得可能な偏光状態への調整を容易に行うことができる。
上記構成に限定されず、例えば、画像取得部は、偏光調整部を制御し、特定部位に対応して予め設定された偏光状態への調整を行うことによって、特定部位が適正に画像化されたOCT画像を取得してもよい。予め設定された偏光状態への調整を行う場合は、偏光調整部の駆動パラメータ(例えば、回転位置)を特定部位に応じて予め記憶部に記憶させておいてもよい。なお、特定部位に対応する駆動パラメータは、予め実験・シミュレーション等によって求めることが可能である。
特定部位に関するOCT画像を取得する場合、例えば、画像取得部は、偏光調整部を制御し、異なる偏光状態のOCT画像を複数取得し、特定部位が適正に画像化されたOCT画像を選別してもよい。この場合、画像取得部は、OCT光学系によって取得されるOCT画像における特定部位での画像信号に基づいて、特定部位が適正に画像化されたOCT画像を選別してもよい。もちろん、これに限定されず、特定部位に対応して予め設定された偏光状態のOCT画像を、複数のOCT画像から選別するようにしてもよい。
なお、特定部位が適正に画像化されたOCT画像としては、他の偏光状態にて取得されるOCT画像よりも相対的に特定部位が適正に画像化されたOCT画像(例えば、特定部位の輝度値、コントラスト等の評価値が相対的に高い、又は、特定部位が相対的により良好に描画されている等)であってもよいし、特定部位の画質が所定の閾値を満たすOCT画像(例えば、特定部位の輝度値、コントラスト等の評価値が所定の閾値を満たす、又は特定部位と他の部位との境界が明確に検出可能である等)であってもよい。
なお、OCT画像における特定部位での画像信号に基づいて特定部位に関するOCT画像を取得する場合、例えば、画像取得部は、OCT画像上に含まれる被検体の特定部位を画像処理により検出し、検出された特定部位における画像信号を評価してもよい。画像取得部は、検出された特定部位における画像信号を評価する処理を行うことによって、特定部位が適正に画像化されたOCT画像を取得してもよい。このような構成によれば、特定部位を画像処理によって検出できるので、特定部位が適正に画像化されたOCT画像をより確実に取得できる。この場合、画像取得部は、特定部位の画質に関する評価値を取得し、取得された評価値が一定の条件を満たすOCT画像を取得してもよい。
なお、被検体の特定部位を画像処理により検出する構成に限定されず、表示部に表示されたOCT画像における特定部位に対する検者からの選択指示を受け付けることによって、被検体の特定部位を検出するようにしてもよい。
なお、被検体の特定部位は、検者によって操作される操作部からの走査信号に基づいて予め設定されてもよい。これにより、検者が所望する特定部位のOCT画像をスムーズに取得できる。また、これに限定されず、被検体の特定部位は、デフォルトとして所定の特定部位に設定された構成であってもよい。また、取得されたOCT画像に基づいて特定部位を設定する構成であってもよい(例えば、OCT画像上での選択指示を受け付ける、病変部位を画像処理により検出し、特定部位として設定する等)。
なお、被検体としては、例えば、被検眼であってもよく、被検眼のOCT画像を取得可能な眼科用OCT装置において、本実施形態の適用が可能である。この場合、被検眼の眼底又は前眼部であってもよいし、硝子体であってもよい。眼底の特定部位としては、例えば、眼底の網膜、脈絡膜、病変部位であってもよいし、黄斑部、乳頭部等の特徴部位であってもよい。この場合、眼底の特定部位がさらに細分化されてもよく、例えば、網膜の表層部、中層部、深層部のように細分化されてもよい。また、前眼部の特定部位としては、例えば、前眼部の角膜、強膜、水晶体、隅角、病変部位であってもよいし、シユレム管、繊維柱帯等の特徴部位であってもよい。この場合、前眼部の特定部位がさらに細分化されてもよく、例えば、角膜の上皮、内皮のように細分化されてもよいし、水晶体前面、水晶体後面のように細分化されてもよい。また、角膜と網膜を含むOCT画像を取得するような場合、角膜と眼底のいずれかが特定部位として設定されてもよい。この場合、角膜と眼底で感度が低い方が特定部位として設定され、設定された特定部位に対する偏光調整が行われてもよい。角膜と網膜を含むOCT画像は、眼軸長測定に用いられてもよい。
また、被検体としては、眼に限定されず、生体の他の部位(例えば、耳、皮膚)であってもよいし、生体以外の被検体であってもよく、被検体における注目部位が特定部位として設定されてもよい。
また、上記実施形態において、OCT光学系によって取得される特定部位を含むOCT画像に基づいて被検体の特定部位をトラッキングし、特定部位に対する偏光調整を行うようにしてもよい。このようなトラッキング制御によって、被検体が動いても、偏光調整を確実に行うことが可能である。
この場合、例えば、画像取得部は、第1のOCT画像における特定部位の画像領域を基準画像として記憶し、後に取得される第2のOCT画像とのマッチング処理を行い、第2のOCT画像における特定部位の画像領域の画像信号に基づいて、偏光調整を行うようにしてもよい。また、これに限定されず、随時取得されるOCT画像を処理し、特定部位の画像領域を検出するための処理を行い、検出された特定部位の画像領域の画像信号に基づいて、偏光調整を行うようにしてもよい。
この場合、画像取得部は、例えば、正面観察光学系からの撮像光学系からの撮像信号に基づいて光スキャナを制御して特定部位を追尾するトラッキング制御を行ってもよく、これにより、特定部位が上下左右に移動しても、確実に特定部位を撮像できる。また、画像取得部は、例えば、OCT光学系からの出力信号に基づいて、測定光と参照光の光路長差を調整する光路長差調整部を制御して特定部位を追尾するトラッキング制御を行ってもよく、これにより、特定部位が前後方向(深さ方向)に移動しても、確実に特定部位を撮像できる。
なお、特定部位に対する偏光調整を行う場合、制御部70は、OCT光学系とは異なる他の検査系によって得られた情報に基づいて、特定部位に対する偏光調整を行うようにしてもよい。他の検査系としては、例えば、SLO(走査型レーザ検眼鏡)、眼底カメラ、視野計等であってもよく、本実施形態に係る装置にOCT光学系と共に搭載されてもよいし、別装置に搭載されてもよい。この場合、例えば、制御部70は、OCT光学系によって取得すべき特定部位を、他の検査系によって得られた情報に基づいて設定してもよく、設定された特定部位に対する偏光調整を行ってもよい。設定された特定部位に対する偏光調整は、特定部位での画像信号に基づいて調整されてもよいし、当該特定部位に対応して予め設定された偏光状態への調整を行うようにしてもよい。これによれば、例えば、OCT光学系のみでは特定が難しい疾患に関し、当該疾患に関連する特定部位のOCT画像を他の検査系を用いて効果的に取得可能であり、複合的な診断が可能となる。
より具体的には、画像取得部は、他の検査系によって得られた情報に基づいて設定された特定部位に関して適正なOCT画像に得られるように、特定部位に対する偏光調整を行うようにしてもよい。当該手法は、例えば、他の装置によって特定された病変部位(例えば、緑内障発生時における乳頭部)であって当該病変部位に臨床的に関連する特定部位(例えば、篩状板)に関するOCT画像を得るために用いることが可能である。
なお、本実施形態に用いるOCT装置としては、診断用OCTとして用いられてもよいし、手術用OCTとして用いられてもよい。診断用OCTの場合、据置型であってもよいし、ハンディタイプであってもよい。手術用OCTの場合、例えば、プローブ型OCTであってもよいし、手術顕微鏡に搭載されたOCTであってもよい。
<実施例>
本開示の実施例を図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態に係る光干渉断層撮像装置の光学系及び制御系を示す図である。なお、以下の説明においては、眼科撮像装置を例にとって説明する。なお、眼底を撮像する場合を例とするが、前眼部を撮像してもよい。また、本実施例においては、被検眼の奥行き方向をZ方向(光軸L1方向)、奥行き方向に垂直な平面上の水平方向成分をX方向、鉛直方向成分をY方向として説明する。
図1において、その光学系は、光源から出射された光束を測定光と参照光に分割し、測定光束を被検者眼眼底に導き,参照光を参照光学系に導いた後、前記眼底から反射された測定光と参照光との干渉状態を検出器により検出する干渉光学系(OCT光学系)200と、固視標投影ユニット300と、を備える。干渉光学系200は、測定光学系200aと参照光光学系200bを含む。また、干渉光学系200は、参照光と測定光による干渉光を周波数(波長)毎に分光し,分光された干渉光を受光手段(本実施形態においては、1次元受光素子)に受光させる分光光学系800を有する。また、ダイクロイックミラー40は、OCT光学系200の測定光として用いられる波長成分の光を反射し、固視標投影ユニット300に用いられる波長成分の光を透過する特性を有する。なお、OCT光学系200は、例えば、スペクトラルドメインOCT(SD−OCT)であってもよいし、スウィプトソースOCT(SS−OCT)であってもよいし、タイムドメインOCT(TD−OCT)であってもよい。
まず、ダイクロイックミラー40の反射側に設けられたOCT光学系200の構成について説明する。OCT光源27はOCT光学系200の測定光及び参照光として用いられる低コヒーレントな光を発するOCT光源であり、例えばSLD光源等が用いられる。OCT光源27には、例えば、中心波長840nmで50nmの帯域を持つ光源が用いられる。26は光分割部材と光結合部材としての役割を兼用するファイバーカップラーである。OCT光源27から発せられた光は、導光路としての光ファイバ38aを介して、ファイバーカップラー26によって参照光と測定光とに分割される。測定光は光ファイバ38bを介して被検眼Eへと向かい、参照光は光ファイバ38c(ポラライザ(偏光素子)33)を介して参照ミラー31へと向かう。
測定光を被検眼Eへ向けて出射する光路には、測定光を出射する光ファイバ38bの端部39b、被検者眼底に対する視度を補正するために光軸方向に移動可能なフォーカス用光学部材(フォーカシングレンズ)24、走査駆動機構51の駆動により眼底上でXY方向に測定光を走査させることが可能な2つのガルバノミラーの組み合せからなる走査部(光スキャナ)23と、リレーレンズ22が配置されている。ダイクロイックミラー40及び対物レンズ10は、OCT光学系200からのOCT測定光を被検眼眼底へと導光する導光光学系としての役割を有する。
光ファイバ38bの端部39bから出射した測定光は、フォーカシングレンズ24を介して、走査部23に達し、2つのガルバノミラーの駆動により反射方向が変えられる。そして、走査部23で反射された測定光は、リレーレンズ22を介して、ダイクロイックミラー40で反射された後、対物レンズ10を介して、被検眼眼底に集光される。
そして、眼底で反射した測定光は、対物レンズ10を介して、ダイクロイックミラー40で反射し、OCT光学系200に向かい、リレーレンズ22、走査部23の2つのガルバノミラー、フォーカシングレンズ24を介して、光ファイバ38bの端部39bに入射する。端部39bに入射した測定光は、光ファイバ38b、ファイバーカップラー26、光ファイバ38dを介して、光ファイバ38dの端部84aに達する。
一方、参照光を参照ミラー31に向けて出射する光路には、光ファイバ38c、参照光を出射する光ファイバ38cの端部39c、コリメータレンズ29、参照ミラー31が配置されている。光ファイバ38cは、参照光の偏光方向を変化させるため、駆動機構34により回転移動される。すなわち、光ファイバ38c及び駆動機構34は、偏光方向を調整するためのポラライザ33として用いられる。なお、ポラライザとしては、上記構成に限定されず、測定光の光路又は参照光の光路に配置されるポラライザを駆動させることにより、測定光と参照光の偏光状態を略一致させるものであればよい。例えば、1/2波長板や1/4波長板を用いることやファイバーに圧力を加えて変形させることで偏光状態を変えるもの等が適用できる。
なお、ポラライザ33(偏光コントローラ)は、測定光と参照光の偏光方向を一致させるために、測定光と参照光の少なくともいずれかの偏光方向を調整する構成であればよい。例えば、ポラライザは、測定光の光路に配置された構成であってもよい。
また、参照ミラー駆動機構50は、測定光又は参照光との光路長を調整するために測定光又は参照光の光路中に配置された参照ミラー31を駆動させる。参照ミラー31は、本実施形態においては、参照光の光路中に配置され、参照光の光路長を変化させるべく、光軸方向に移動可能な構成となっている。
光ファイバー38cの端部39cから出射した参照光は、コリメータレンズ29で平行光束とされ、参照ミラー31で反射された後、コリメータレンズ29により集光されて光ファイバ38cの端部39cに入射する。端部39cに入射した参照光は、光ファイバ38c、光ファイバ38c(ポラライザ33)を介して、ファイバーカップラー26に達する。
そして、光源27から発せられた光によって前述のように生成される参照光と被検眼眼底に照射された測定光による眼底反射光は、ファイバーカップラー26にて合成され干渉光とされた後、光ファイバ38dを通じて端部84aから出射される。周波数毎の干渉信号を得るために干渉光を周波数成分に分光する分光光学系800(スペクトロメータ部)は、コリメータレンズ80、グレーティングミラー(回折格子)81、集光レンズ82、受光素子83を有する。受光素子83は、赤外域に感度を有する一次元素子(ラインセンサ)を用いている。
ここで、端部84aから出射された干渉光は、コリメータレンズ80にて平行光とされた後、グレーティングミラー81にて周波数成分に分光される。そして、周波数成分に分光された干渉光は、集光レンズ82を介して、検出器(受光素子)83の受光面に集光する。これにより、受光素子83上で干渉縞のスペクトル情報が記録される。そして、受光素子83からの出力信号に基づいて眼の断層画像を撮像する。すなわち、そのスペクトル情報が制御部70へと入力され、フーリエ変換を用いて解析することで、被験者眼の深さ方向における情報が計測可能となる。ここで、制御部70は、走査部23により測定光を眼底上で所定の横断方向に走査することにより断層像を取得できる。例えば、X方向もしくはY方向に走査することにより、被検眼眼底のXZ面もしくはYZ面における断層像(眼底断層像)を取得できる(なお、本実施形態においては、このように測定光を眼底に対して一次元走査し、断層像を得る方式をBスキャンとする)。なお、取得された眼底断層像は、制御部70に接続されたメモリ72に記憶される。さらに、走査部23の駆動を制御して、測定光をXY方向に二次元的に走査することにより、受光素子83からの出力信号に基づき被検者眼眼底のXY方向に関する二次元動画像や被検眼眼底の三次元画像を取得することも可能である。
参照ミラー31は、駆動機構50の駆動によって光軸方向に移動され、被検眼毎の眼軸長の違いに対応できるよう、その移動可能範囲が設定されている。図1において、参照ミラー31は、参照光の光路長が短くなる方向における移動限界位置K1から参照光の光路長が長くなる方向における移動限界位置K2までの範囲を移動可能である。
自動光路長調整(第1自動光路長調整(詳しくは後述する))を開始する前の参照ミラー31の初期位置(移動開始位置)は、移動限界位置K1又は移動限界位置K2に設定される。もちろん、初期化開始以前の途中位置を初期位置としてもよい。また、初期位置を任意に変更できる設定としてもよい。
フォーカシングレンズ24は、駆動機構24aの駆動によって光軸方向に移動され、その移動可能範囲が設定されている。フォーカシングレンズ24は、第1移動限界位置(例えば、屈折力が−15Dに対応する位置、すなわち、−15Dの屈折力でフォーカスが合う位置)から第2移動限界位置(例えば、屈折力が+15Dに対応する位置)までの範囲を移動可能である。
フォーカシングレンズ24の初期位置は、被検眼の平均的な眼屈折力に対応する位置(例えば、0Dに対応する位置)としている。もちろん、初期位置に移動させる以前の位置を初期位置としてもよい。また、初期位置を任意に変更できる設定としてもよい。第1移動限界位置、第2移動限界位置のいずれかが初期位置であってもよい。
光ファイバ38cは、駆動機構34の駆動によって回転移動され、その移動可能範囲が設定されている。光ファイバ38cは、第1移動限界位置(例えば、0°)から第2移動限界位置(例えば、180°)までの回転移動可能である。
光ファイバ38cは、第1移動限界位置から第2移動限界位置までの間の途中位置に位置されており、第2自動光路長調整完了後までは移動されない。そのため、ポラライザ33においては、途中位置が初期位置となる。
次に、固視標投影ユニット300について説明する。固視標投影ユニット300は、眼Eの視線方向を誘導するための光学系を有する。投影ユニット300は、眼Eに呈示する固視標を有し、複数の方向に眼Eを誘導できる。
例えば、固視標投影ユニット300は、可視光を発する可視光源を有し、視標の呈示位置を二次元的に変更させる。これにより、視線方向が変更され、結果的に撮像部位が変更される。例えば、撮影光軸と同方向から固視標が呈示されると、眼底の中心部が撮像部位として設定される。また、撮影光軸に対して固視標が上方に呈示されると、眼底の上部が撮像部位として設定される。すなわち、撮影光軸に対する視標の位置に応じて撮影部位が変更される。
固視標投影ユニット300としては、例えば、マトリクス状に配列されたLEDの点灯位置により固視位置を調整する構成、光源からの光を光スキャナを用いて走査させ、光源の点灯制御により固視位置を調整する構成、等、種々の構成が考えられる。また、投影ユニット300は、内部固視灯タイプであってもよいし、外部固視灯タイプであってもよい。
また、制御部70には、表示モニタ75、メモリ72、コントロール部74、参照ミラー駆動機構50、フォーカシングレンズ24を光軸方向に移動させるための駆動機構24a、駆動機構34、等が接続されている。
図2はOCT光学系200によって取得(形成)される断層画像の一例を示す図である。断層画像の画像データGは、光路長一致位置より手前側に対応する第1の画像データG1と、光路長一致位置より奥側に対応する第2画像データG2からなり、測定光と参照光の光路長が一致する深度位置Sに関して互いに対称な画像となっている。
なお、上記構成において、測定光と参照光との光路長が一致する深度位置が網膜表面より前側に形成されるように参照ミラー31が配置されると、脈絡膜側部分よりも網膜表面側の感度が高い眼底断層像(正像)が取得される。この場合、第1の画像データG1と第2画像データG2における眼底断層像は、向かい合った状態となる。この場合、第1の画像データG1において実像が取得され、第2画像データG2において虚像(ミラーイメージ)が取得される。
一方、測定光と参照光との光路長が一致する深度位置が網膜表面より奥側に形成されるように参照ミラー31が配置されると、網膜表面側よりも脈絡膜側部分の感度が高い眼底断層像(逆像)が取得される。この場合、第1の画像データG1と第2画像データG2における眼底断層像は、互いに反対方向を向いた状態にある。この場合、第2の画像データG2において実像が取得され、第1の画像データG1において虚像(ミラーイメージ)が取得される。
制御部70は、例えば、断層画像の画像データGのうち、第1の画像データG1もしくは第2画像データG2のいずれかの画像データを抽出し、モニタ75の画面上に表示する。なお、本実施形態では、第1の画像データG1を抽出する設定となっている。
本実施形態において、制御部70は、受光素子83から出力されるスペクトルデータに対しソフトウェアによる分散補正処理を施す。そして、分散補正後のスペクトルデータに基づいて深さプロファイルを得る。このため、実像と虚像との間で画質において差異が生じる。
例えば、実像に対する分散の影響を補正するための分散補正値として第1の分散補正値(正像用)をメモリ72から取得し、受光素子83から出力されるスペクトルデータを第1の分散補正値を用いて補正し、補正されたスペクトル強度データをフーリエ変換して断層画像データを形成する。これにより、第1の画像データG1において実像が取得されたとき、その実像は、高感度・高解像度の画像にて取得され、第1の画像データG1において虚像が取得されたとき、その虚像は、分散補正値の違いにより低解像度のぼやけた像となる。
もちろん、これに限定されず、虚像に対するソフトウェアの分散補正が行われても良い。また、第2の画像データG2を抽出する設定であってもよいし、もちろん第1の画像データG1と第2の画像データG2の両方を抽出する設定であってもよい。また、所定のスイッチにより任意に設定されてもよい。
以上のような構成を備える装置において、その制御動作について説明する。図3は、本装置における動作の流れを示すフローチャートである。検者は、固視標投影ユニット300の固視標を注視するように被検者に指示した後、図示無き前眼部観察用カメラで撮影される前眼部観察像をモニタ75で見ながら、被検眼の瞳孔中心に測定光軸がくるように、図示無きジョイスティックを用いて、アライメント操作を行う。
次いで、最適化を行うことによって、検者が所望する眼底部位が高感度・高解像度で観察できるようにする。なお、本実施形態において、最適化の制御は、光路長調整、フォーカス調整、偏光状態の調整(ポラライザ調整)、の制御である。
検者は、コントロール部74に配置された最適化開始スイッチ(Optimizeスイッチ)74aを押す。最適化開始スイッチ74aから操作信号が発せられると、制御部70は、最適化制御を開始するためのトリガ信号を発し、最適化を開始する。
ここで、制御部70は、第1光路長調整と第2光路長調整の間にOCT光学系200を調整することにより撮影条件の最適化を行う。本実施形態における最適化としては、例えば、第1自動光路長調整、フォーカス調整、第2自動光路長調整、ポラライザ調整の順で行われる。最適化の完了後、検者により、図示無き撮影スイッチが押されると、眼底断層像が撮影され、メモリ75に記憶される。
なお、本実施形態において、第1自動光路長調整、フォーカス調整、ポラライザ調整は、断層画像の信号強度を検出することによって行われる。以下の説明では、第1自動光路長調整、フォーカス調整では、信号強度を示す指標として所定の評価値Bが用いられ、ポラライザ調整では、特定部位の信号強度を示す指標として評価値Cが用いられてもよい(詳しくは、<ポラライザ調整>参照)。なお、第1自動光路長調整、フォーカス調整においても、評価値Cが用いられてもよい。
評価値Bは、B=((画像の平均最大輝度値)−(画像の背景領域の平均輝度値))/(背景領域の輝度値の標準偏差)の式より求められる。制御部70は、受光素子83からの出力信号に基づいて取得される断層画像の輝度分布データを取得する。例えば、図4は、参照ミラー、フォーカシングレンズ、ポラライザがある所定の位置に配置されている場合のモニタ75の画面上に表示された画像を示す図である。
制御部70は、初めに、深さ方向(Aスキャン方向)に走査する複数の走査線を設定し、各走査線上における輝度分布データを求める。図4においては、画像を10分割し、10本の分割線を走査線としている。図5は、画像の深さ方向における輝度分布の変化を示す図である。
ここで、制御部70は、各走査線に対応する輝度分布から輝度値の最大値(以下、最大輝度値と省略する)を算出する。そして、制御部70は、眼底断層像における最大輝度値として、各走査線における最大輝度値の平均値を算出する。そして、制御部70は、眼底断層像における背景領域の平均輝度値として、各走査線における背景領域の輝度値の平均値を算出する。
このようにして、算出された評価値Bは、第1自動光路長調整、フォーカス調整において利用される。なお、この場合、画像データG1内の断層画像にて、評価値Bを算出することが好ましい。
<最適化制御>
図6は、本実施形態に係る最適化制御について説明する図である。概して、制御部70は、初期化の制御として、参照ミラー31とフォーカシングレンズ24の位置を初期位置に設定する。初期化完了後、制御部70は、設定した初期位置から参照ミラー31を一方向に所定ステップで移動させ、第1光路長調整を行う(第1自動光路長調整)。第1光路長調整完了後、制御部70は、合焦位置情報を取得し、フォーカスシングレンズ24を合焦位置に移動させ、オートフォーカス調整を行う。そして、オートフォーカス調整完了後、再度、参照ミラー31を光軸方向に移動させ、光路長の再調整(光路長の微調整)をする第2光路長調整を行う。第2光路長調整完了後、制御部70は、参照光の偏光状態を調節するためのポラライザ33を駆動させ、測定光の偏光状態を調整する。
以下に、最適化制御の一例について詳細に説明する。
<初期化>
初めに、制御部70は、初期化の制御を行う。初期化の制御は、参照ミラー31とフォーカシングレンズ24の位置を初期位置(移動開始位置)に移動させる。
そして、初期化の制御が開始されると、制御部70は、移動限界位置K1又は移動限界位置K2のどちらかの位置を参照ミラー31の初期位置として選択する。なお、初期位置の決定は、初期化の制御を開始する以前の参照ミラー31の位置から移動限界位置K1又は移動限界位置K2により近い側の位置が選択される。そして、制御部70は、移動限界位置K1又は移動限界位置K2の初期位置へ参照ミラー31を移動させる。もちろん、異なる基準に基づいて、初期位置に設定するための移動方向の決定を行ってもよい。
また、制御部70は、フォーカシングレンズ24を初期位置(本実施形態においては、0Dに対応する位置)へ移動させる。
<第1自動光路長調整(粗調整)>
以上のようにして、初期化が完了すると、次いで、制御部70は、第1自動光路長調整(自動粗光路長調整)を行う。図7は、第1自動光路長調整の制御動作の流れを示すフローチャートである。
制御部70は、駆動機構50の駆動を制御して参照ミラー31を移動させると共に、参照ミラー31の各位置にて受光素子83から出力される出力信号に基づいて、眼底断層像が取得される位置に参照ミラー31を移動させる。
具体的には、制御部70は、初期位置にて断層画像を取得した後、初期位置とは逆の移動限界位置に向けて参照ミラー31を移動させる。例えば、参照ミラー31の初期位置として限界位置K1が選択(設定)された場合、限界位置K2に向けて方向へ移動させる。
ここで、制御部70は、参照ミラー31を所定のステップ(例えば、撮影範囲として2mmステップ)で移動させ、各移動位置における断層画像を順次取得していき、眼底断層像が取得される位置を探索していく。
この場合、制御部70は、離散的に設定された参照ミラー31の移動位置において、参照ミラー31が停止される度に断層像を取得する。そして、制御部70は、各位置にて取得される断層画像を解析する。例えば、制御部70は、各位置にて取得される断層像の評価値Bを算出する。そして、制御部70は、参照ミラー31の位置と断層像の評価値Bとを対応付けてメモリ75に記憶する。
図8は、参照ミラー31の位置ごとにおける評価値Bの算出結果の一例を示す図である。横軸は、参照ミラーの位置、縦軸は、参照ミラーの各位置における評価値Bを表記したものである。
ここで、制御部70は、取得された参照ミラー31の位置ごとにおける評価値Bの算出結果から、評価値Bのピークを検出する。そして、制御部70は、ピークの検出位置に対応する参照ミラー31の位置をメモリ75に記憶させる。そして、制御部70は、評価値Bのピークに対応する位置へ参照ミラー31を移動させる。なお、一般的には、眼底の実像が断層画像中に現れるときの参照ミラー31の位置が、評価値Bのピークが検出される位置となる。ただし、フォーカスがあっていない場合においては、虚像が断層画像中に現れるときの参照ミラー31の位置が、評価値Bのピークが検出される位置となる場合もありえる。
以上のようにして光路長がラフに調整されると、モニタ72上のいずれかの位置に眼底断層像の少なくとも一部が表示された状態となる。
なお、本実施形態においては、参照ミラー31を所定のステップで移動させる場合、評価値Bの上昇がなくなり、下降をはじめた位置で、参照ミラー31の駆動を停止するようにしてもよい。また、制御部70は、参照ミラー31の位置ごとにおける評価値Bの算出結果からピークに対応する参照ミラーの位置を推測するようにしてもよい。(例えば、評価値Bの変化を示す近似曲線を作成する)。
<オートフォーカス調整>
制御部70は、第1自動光路長調整が完了すると、次いで、フォーカス調整を行う。
制御部70は、第1自動光路長調整を経て、受光素子83から出力される出力信号に基づいて、被検者眼眼底に対する合焦位置にフォーカシングレンズ24を移動させる。
具体的には、制御部70は、駆動部24aの駆動を制御し、所定の初期位置から所定のステップでレンズ24を移動させる。そして、制御部70は、各移動位置における断層画像を順次取得していき、合焦位置(眼底断層像のフォーカスが合う位置)を探索していく。
例えば、制御部70は、ある移動限界位置に向けて0.5Dずつレンズ24を移動させていき、合焦位置が見つかれなければ、反対方向にレンズ24を移動させる。なお、レンズ24の移動ステップは、これに限定されず、例えば、1Dでもよいし、2Dでもよく、任意に設定される構成でもよい。
合焦位置の探索は、離散的に設定されたフォーカシングレンズ24の移動位置でフォーカシングレンズ24が停止される度に、その位置にて取得される画像を解析する。例えば、制御部70は、各位置にて取得される断層像の評価値Bを算出する。そして、制御部70は、レンズ24の位置と断層像の評価値Bとを対応付けてメモリ75に記憶する。
ここで、制御部70は、取得されたフォーカシングレンズ24の位置ごとにおける評価値Bの算出結果から、評価値Bのピークを検出する。そして、制御部70は、ピークの検出位置に対応する位置へフォーカシングレンズ24を移動させる。以上のようにして、フォーカス調整が完了される。
<第2光路長調整(微調整)>
制御部70は、フォーカス調整を経て、受光素子83から出力される出力信号に基づいて、第1自動光路長調整によって調整された位置から参照ミラー31の位置を再調整する。
具体的には、フォーカス調整が完了すると、制御部70は、フォーカス調整によって取得された断層画像に基づいて、参照ミラー31を移動させる第2自動光路長調整を行う。
ここで、制御部70は、画像データG1において、フォーカス調整後に取得された眼底断層像が実像か虚像かを判定する。例えば、制御部70は、深さ方向での輝度分布におけるピークに対する半値幅が所定の許容幅より小さいとき、眼底断層像を実像と判定し、半値幅が所定の許容幅が大きいとき、眼底断層像を虚像する。なお、断層像の実虚の判定については、実像と虚像との間の画質の差異が利用される手法であればよく、半値幅の他、例えば、断層像のコントラスト、断層像のエッジの立ち上がり度等が利用される。また、眼底断層像の形状が利用されてもよい。
制御部70は、取得される眼底断層像が虚像と判定された場合、実像が取得される方向(参照光が短くなる方向)に向けて参照ミラー31を移動させる。このとき、制御部70は、光路長一致位置Sから像検出位置までの偏位量をゼロにする参照ミラー31の移動量を算出し、さらに算出された移動量の2倍分参照ミラー31を移動させる。これにより、実像のみが取得された状態となる。この場合、参照ミラー31が一定量移動されたときの偏位量を予め求めておけばよい。これにより、制御部70は、光路長断層像の深度位置から像検出位置までの偏位量が所定の偏位量となるように参照ミラー31を移動させることが可能となり、眼底断層像を所定の表示位置に表示できる。なお、参照ミラー31を移動させる手段はこれに限定されるものではない。例えば、虚像と判定された場合に、予め、参照ミラー31を実像が取得される方向(参照光が短くなる方向)に向けて移動させる所定のオフセット量を設定しておく。そして、制御部70は、眼底断層像が虚像と判定された場合、参照ミラー31を所定のオフセット量分移動させる。
また、取得される眼底断層像が実像と判定された場合、制御部70は、深さ方向における輝度分布のピークが検出された位置を像位置とみなし、予め設定された光路長調整位置と像位置との変位量を算出し、その変位量がなくなるように参照ミラー31を移動させる(特開2010−12111号公報参照)。
制御部70は、上記のように画像データG1の断層像に対する実虚の判定を行うと共に、さらに、画像データG1において実像と虚像が並存するか否かを並行して判定するのが好ましい。例えば、制御部70は、前述のように算出される各走査線における最大輝度値の検出位置の平均位置を眼底断層像の像位置P1として検出する。そして、制御部70は、測定光と参照光の光路長が一致する深度位置S(第1の画像データの上端位置)から像検出位置P1までの偏位量を算出する。すなわち、制御部70は、測定光と参照光の光路長が一致する深度位置Sを基準に眼底断層像の像位置を検出する。
そして、制御部70は、前述のように算出される眼底断層像の像位置P1が断層画像の上端付近(例えば、断層画像の上端から1/4に相当する領域)にある場合、眼底断層像の実像と虚像が並存している状態であると判定する。この場合、制御部70は、実像のみが取得される方向(参照光が短くなる方向)に向けて参照ミラー31を所定量移動させる。この場合、実像と虚像が並存している状態から実像のみが取得された状態となるまでの参照ミラー31の移動方向及び移動量を実験もしくはシミュレーションにより予め求めておき、メモリ72に記憶しておけばよい。
以上のように、第1自動光路長調整、フォーカス調整、第2自動光路長調整という手順で最適化の制御を動作させる。本実施形態においては、第1自動光路長調整は、受光素子83から出力される出力信号の信号強度に基づいて、断層画像中に眼底断層像が含まれるようにラフに光路長を調整するものである。一方、第2自動光路長調整は、受光素子83から出力される出力信号に基づいて深さ方向における眼底断層像の位置情報を取得し、取得された位置情報に基づいて、眼底断層像が所定の深さ位置にて取得されるようにシビアに光路長を調整するものである。第1自動光路長調整がフォーカス調整を可能にするための光路長調整であるのに対し、第2自動光路長調整が撮影時の最適な光路長に調整するための光路長調整である。
例えば、フォーカス調整は、眼底断層像の輝度値に基づいて行われるため、断層画像の撮影範囲内に眼底断層像が含まれる必要がある。このため、フォーカス調整前に、第1自動光路長調整により粗く光路長を調整し、断層画像中に眼底断層像が取得されるようにしたので、フォーカスをスムーズに調整できる。
また、上記のように断層画像に基づくフォーカス調整後に光路長を再調整することにより、フォーカス調整によって画質(解像度、コントラストなど)が向上した眼底像を用いて光路長を調整できるため、所定の位置に向けて眼底像を確実に誘導できる。
すなわち、フォーカス調整前の光路長調整では、画像から検出される輝度が弱いために、実像・虚像の判定、適正な深さ位置への眼底断層像の誘導制御が適正に行わない場合がある。そこで、上記のようにフォーカス前とフォーカス後に自動光路長調整(OPL)制御を行うことにより、光路長調整をスムーズかつ安定して行うことができる。
このようなことにより、SLO光学系もしくは眼底カメラ光学系等の眼底正面撮影専用の光学系を利用しない光断層像撮影装置でも、スムーズに光路長調整とフォーカス調整を可能にする。
<ポラライザ調整>
制御部70は、第2自動光路長調整後に受光素子83から出力される出力信号に基づき、ポラライザ33を駆動させ、偏光状態の調整を行う。
具体的には、制御部70は、ポラライザ33の位置を初期位置より、移動開始位置に移動させる。なお、ポラライザ33の初期位置は、第1移動限界位置から第2移動限界位置までの間の途中の位置に配置されている。なお、ポラライザ調整の際の、ポラライザ33の移動開始位置は、第1移動限界位置又は第2移動限界位置の位置となる。
制御部70は、ポラライザ33を途中位置から第1移動限界位置又は第2移動限界位置のどちらかの移動開始位置を選択し、移動させる。例えば、制御部70は、第1移動限界位置を移動開始位置として選択し、ポラライザ33を移動させる。そして、制御部70は、ポラライザ33を第1移動限界位置から第2移動限界位置方向へ移動させる。なお、移動開始位置が第2移動限界位置の場合には、第1移動限界位置方向へ移動させる。
なお、制御部70は、例えば、移動開始位置とは、逆の移動限界位置まで、5°ずつポラライザ33を移動させてもよい。なお、本実施形態では、5°ずつポラライザ33を移動させる構成としたが、これに限定されない。例えば、10°でもよいし、20°でもよく、任意に設定できる構成でもよい。
以下、特定部位に対して偏光状態を調整する場合の一例を示す。この場合、検者が所望する特定部位が、予め設定されてもよく、例えば、複数の特定部位(例えば、網膜、脈絡膜、病変部位、前眼部の隅角又はシユレム管、等)が表示モニタ75に選択可能に表示され、コントロール部74を介して検者によって選択されてもよい。
特定部位を設定するタイミングとしては、上記アライメント、フォーカス等が行われる前段階において、撮影部位等の設定と同時に、検者によって操作されるコントロール部74を介して設定されることで、スムーズな設定及び撮影が可能となる。もちろん、他のタイミングで設定されてもよい。
予め設定された特定部位に対する偏光調整を行う場合、例えば、制御部70は、ポラライザ33の各移動位置における断層画像を順次取得していき、予め設定された特定部位での信号強度がより強く検出される最適位置を探索してもよい。
最適位置は、例えば、結果として、特定部位での信号強度がより強く検出される位置であり、測定光による特定部位から反射光と参照光とがより干渉する位置である。特定部位からの反射光には、P偏光又はS偏光のいずれかの直線偏光のみ、あるいは、円偏光である場合もあり、特定部位への入射光の偏光特性、特定部位の偏光特性、特定部位まで光路における偏光特性等によって異なる。このため、ポラライザ33の偏光特性が特定部位からの反射光の偏光特性に合致しない場合、特定部位の画質がよくない又は特定部位が画像化されない可能性がある。
そこで、ポラライザ33の偏光特性を調整して特定部位からの反射光に合わせることによって特定部位からの反射光と参照光とがより干渉する位置(最適位置)での断層像を得ることで、結果として、特定部位に関して良好な断層像が得られる。例えば、干渉性が低い位置では特定部位の画質がよくない場合であっても、特定部位に対する偏光調整によって、特定部位がより鮮明に画像化された断層像が得られる。また、干渉性が低い位置では特定部位が画像化されない場合であっても、特定部位に対する偏光調整によって、特定部位が画像化された断層像が得られる。
なお、上記最適位置は、特定部位での信号強度が最も強く検出されるピーク位置に限定されるものではなく、ピーク位置の近傍であってもよく、これらによれば、より確実に特定部位の信号強度が強い断層像が得られる。また、最適位置としては、特定部位において許容できる一定強度の信号が検出される位置であってもよく、これによれば、偏光調整をより短時間で済ますことが可能である。
最適位置を探索する場合、制御部70は、離散的に設定されたポラライザ33の移動位置でポラライザ33が停止される度に、その移動位置にて取得される画像を解析し、特定部位における評価値Cの算出を行ってもよい。
各移動位置にて特定部位における評価値Cを求める場合、制御部70は、断層像に対して画像処理を行うことによって、特定部位を検出してもよい。網膜表層、脈絡膜等の層を検出する場合、制御部70は、例えば、画像処理によって断層像を層毎に分離する(セグメンテーション)ことによって所定の層を検出してもよい。図9は特定部位として網膜表層が検出された場合の一例を示す図である(ハッチング参照)。
病変部位を特定する場合、制御部70は、例えば、病変部位の形状、サイズ、輝度値等から画像処理により病変部位を検出してもよい。他の特徴部位(例えば、黄斑、乳頭、隅角、シュレム管)を検出する場合、制御部70は、例えば、特徴部位の輝度、位置等から画像処理によって所定の特徴部位を検出してもよい。
特定部位が検出されると、制御部70は、特定部位に対応する画像領域での信号強度に基づいて、特定部位における評価値Cを算出してもよい(図10参照)。評価値Cとしては、例えば、特定部位に対応する画像領域での輝度値の累計値、平均値、コントラスト、先鋭度であってもよい。また、評価値Cは、深さ方向における信号強度の変化であってもよく、例えば、深さ方向における所定の閾値以上の輝度値を有する領域の広がり具合を評価値Cとしてもよい。また、特定部位における評価値を得る場合、画像処理によって検出された特定部位内での評価値Cであってもよいし、画像処理によって検出された特定部位を含む一定範囲内での評価値Cであってもよい。
制御部70は、取得されたポラライザ33の位置ごとにおける特定部位の評価値Cの算出結果から、最適位置に対応する移動位置(例えば、評価値Cがピークとなる位置、ピーク位置の近傍、評価値Cが所定の閾値を満たす位置等)を検出し、最適位置に対応する移動位置へポラライザ33を移動させる。以上のようにして、ポラライザ調整が完了される。
ポラライザ調整が完了された後、撮像開始のトリガ信号が自動又は手動にて発せられた場合、制御部70は、走査駆動機構51の駆動を制御し、設定された走査領域に関して断層像をキャプチャーしてもよい。キャプチャーされた断層像は、図示無き記憶部に記憶される。この場合、制御部70は、設定された走査領域において複数の断層像を取得してもよく、取得された複数の断層像に基づいて複合画像(例えば、加算平均画像、超解像画像)を取得してもよい。
上記によれば、特定の部位に対してポラライザ33の位置を自動的に調整することによって、検者が所望する特定部位の断層像を容易に取得することができる。さらに、断層像の複合画像を得ることで、検者が所望する特定部位に関して、より鮮明な断層像が取得される。
なお、図11は、特定部位として網膜表層が設定された場合のOCT画像の一例であり、図12は、特定部位として脈絡膜が設定された場合のOCT画像の一例である。
なお、上記説明においては、一つの特定部位に関する断層像を取得したが、これに限定されず、複数の特定部位に関する断層像を取得するための偏光調整を行うようにしてもよい。この場合、制御部70は、第1の特定部位(例えば、網膜表層)に対して偏光状態を調整することによって第1の特定部位に関する断層像を取得し、次に、第2の特定部位(例えば、脈絡膜)に対して偏光状態を調整することによって第2の特定部位に関する断層像を取得してもよい。
さらに、制御部70は、第1の特定部位に関する第1の断層像と第2の特定部位に関する第2の断層像とを合成した複合画像(例えば、加算平均画像、超解像画像)を取得してもよい。また、複合画像としては、第1の断層像における第1の特定部位の画像領域と、第2の断層像における第2の特定部位の画像領域とを繋ぎ合わせた複合画像であってもよい。
なお、上記説明においては、特定部位を自動的に検出したが、これに限定されず、検者の手動によって検出してもよい。例えば、検者は、コントロール部74を操作し、表示モニタ75に表示された断層像上における特定部位に対応する領域を指定してもよい。制御部70は、指定された領域に対する偏光調整を行ってもよい。これによって、断層像上で指定された特定部位の画質が良好な断層像を容易に取得できる。
なお、上記説明においては、特定部位が予め検者によって設定される例を示したが、これに限定されず、デフォルトとしてある特定部位が予め設定されており、予め設定された特定部位に対する偏光調整が行われてもよい。この場合、パラメータ設定により特定部位が変更できてもよい。また、病変部位が検出された場合、当該病変部位を特定部位として設定するようにしてもよい。
なお、上記説明においては、参照光の光路に配置されたポラライザ33の偏光特性を調整して特定部位からの反射光に合わせたが、これに限定されず、測定光の光路に配置されたポラライザ33の偏光特性を調整し、結果として、特定部位が良好に画像化された断層像が取得されてもよい。また、測定光の光路と参照光の光路の両方にポラライザ33が配置され、各光路のポラライザが調整されることで、特定部位に対する偏光調整を行うようにしてもよい。
なお、被検眼の特定部位に対応するポラライザ33の最適位置は、記憶部に記憶され、経過観察(フォローアップ)に用いられてもよい。つまり、制御部70は、特定部位に対応するポラライザ33の位置情報を記憶部から呼び出し、次回の撮影時に再現してもよい。この場合、各特定部位に応じてポラライザ33の位置情報が記憶されてもよい。
フォローアップ撮影の場合、制御部70は、上記位置情報を基準にして、一定範囲内(例えば、±10度)を探索することによって、時間経過による変動に対応してもよい。なお、異なる装置間でフォローアップが行われてもよく、この場合、過去の最適位置に対し、ポラライザ33を駆動させる際の個々の装置固有の偏光特性変化が考慮された位置にポラライザ33が配置されてもよい。また、年齢や水晶体の混濁度等に基づいて、過去のポラライザの位置からのシフト量を推測し、フォローアップにおけるポラライザ33の位置を求めてもよい。
また、例えば、制御部70は、被検眼の特定部位に対応する最適位置にポラライザ33が配置された状態において、装置のキャリブレーション処理を行うようにしてもよい。例えば、制御部70は、特定部位での評価値Cがピークを示すように、ソフトウェアによる分散補正処理を行うようにしてもよい。これによって、特定部位に関してさらに良好なOCT画像が得られる。
なお、制御部70は、ポラライザ33の駆動前後のOCT画像、ポラライザ33の駆動量に基づいて、被検体の特定部位における偏光特性に関する情報(例えば、複屈折量)を算出してもよい。例えば、制御部70は、ポラライザ33が最適位置(例えば、評価値Cが輝度のピークの位置)に配置された状態を基準としてポラライザ33を駆動させ、特定部位の深さ方向への距離(厚み)とポラライザ33の駆動量から複屈折量を算出してもよい。この場合、ポラライザ33の単位駆動量あたりの偏光特性変化×ポラライザ駆動量=複屈折量×深さ方向への距離としてみなすことができるので、複屈折量は、ポラライザ33の単位駆動量あたりの偏光特性変化×ポラライザ33の駆動量÷深さ方向への距離(厚み)によって求められる。なお、ポラライザ33の単位駆動量あたりの偏光特性変化は、予め実験・シミュレーション等によって求められる。また、ポラライザ駆動量は、例えば、最適位置からの駆動量であってもよい。深さ方向への距離は、例えば、特定部位の厚みを画像処理によって求めることによって取得されてもよい。上記手法によれば、特定部位の偏光特性を簡単に測定できる。上記手法は、例えば、網膜表層(例えば、神経線維層)の複屈折量を測定するために用いることができる。
なお、上記手法に関し、特定部位の複屈折性を予め求めておくことで、特定部位に関するポラライザ33の最適位置が逆算して求められてもよい。この場合、複数の被検体からの平均値が求められてもよいし、過去に取得された被検体の実際の複屈折性が用いられてもよい。