図1A〜図1Cは、第1の実施例による表示装置(ECL表示装置)の製造方法を示す概略的な断面図である。
図1Aを参照する。一対のITO膜(透明導電材料膜)12a、12b付ガラス基板(透明基板)11a、11bを準備する。
図1Bを参照する。ITO膜12a、12bをフォトリソ工程にてパターニングし、ガラス基板11a、11b上に、それぞれITO電極(表示用電極)13a、ITO電極(対向電極)13bを形成する。ガラス基板11a上にITO電極13aを備える上側基板(表示用基板)10a、及び、ガラス基板11b上にITO電極13bを備える下側基板(対向基板)10bが作製される。
第1の実施例においては、基板10a、10bを重ね合わせたとき、両基板10a、10b間で引き回し線部分が重ならず、表示部のみ電極13a、13bが重なるように電極パターンを設計する。電極パターンは、たとえば1/16デューティで単純マトリクス駆動を行う液晶表示装置のそれと等しくすることができる。引き回し線部分は太幅に形成することが望ましい。また、ECL表示装置では基板10a、10b間に電流を流す必要があるため、電極13a、13bを液晶表示装置の電極よりも低抵抗とすることが好ましい。
電極13a、13bのパターニングにおいては、王水系混酸の水溶液を用いたウェットエッチングを行った。エッチャントとして、たとえば酸化第二鉄を用いることもできる。レーザを使用し、ITO膜12a、12bをアブレーションして除去することで、パターニングを行ってもよい。パターニングにおいては、電極13a、13bの各々におけるITO間の距離を、おおむね数十μmから数百μmとした。
なお実施例においては、透明基板上に透明電極を形成するが、基板の一方は不透明基板でもよく、その上に形成される電極も不透明電極とすることができる。不透明電極を形成する材料として、銀合金、金、銅、アルミニウム、ニッケル、モリブデン等をあげることができる。また、これらの金属の極細線を透明電極の補助電極として用いてもよい。更に、透明電極はITO以外の透明導電性材料を使用して形成することも可能である。
図1Cを参照する。たとえば20μm〜数百μm径、実施例においては50μm径のギャップコントロール剤を、基板10a、10bの一方上に、一例として、1個〜3個/mm2となるように散布する。ギャップコントロール剤の径に応じ、表示に影響を与えにくい散布量とすることが望ましい。なおECL表示装置の場合、多少ギャップムラがあっても表示への影響は少ないため、ギャップコントロール剤の散布量の重要性は高くない。また実施例においては、ギャップコントロール剤を用いたギャップコントロールを行うが、リブなどを用いてギャップコントロールを行うことも可能である。
基板10a、10bの他方上に、メインシールパターンを形成した。実施例では、紫外線+熱硬化タイプのシール材16を用いた。シール材16として、光硬化タイプまたは熱硬化タイプを使用してもよい。ECL表示装置に用いる電解液に耐えるシール材料(腐食されないシール材料)が好ましい。なお、ギャップコントロール剤の散布とメインシールパターンの形成は同一基板側に行ってもよい。
次に、ECL材料(発光材料)を含む電解液を、両基板10a、10b間に封入した。
実施例ではODF工程を用いた。ECL材料を含む電解液を、基板10a、10bの片方上に適量滴下する。滴下方法として、ディスペンサやインクジェットを含む各種印刷方式が適用できる。ここではディスペンサを用いて、電解液を適量滴下した。
ECL材料を含む電解液は、ECL材料、支持電解質、溶媒などにより構成される。
ECL材料は、電圧の印加により、電極近傍で酸化されてカチオンラジカル(酸化種)、還元されてアニオンラジカル(還元種)となる。この両者が会合するとECL材料の励起状態が生成し、その失活過程において発光が起きる。
使用するECL材料は、電気化学的な酸化還元反応によって発光する材料であれば、特段の制限はない。たとえば「ビピリジン誘導体やフェナントロリン誘導体等の配位子を有するルテニウム錯体及び希土類錯体(対イオンとしてヘキサフルオロリン酸、ハロゲン等を有する)」やPVB(ポリビニルブチラール)、DPA(9,10−ジフェニルアントラセン)、過塩素酸テトラ−n−ブチルアンモニウムのようなものを含むTBAP(過塩素酸テトラブチルアンモニウム)等を好適に用いることができる。実施例においては、ルテニウム錯体を使用した。
支持電解質は、溶媒中でイオンを効率的に生成できるものであれば限定されない。たとえば、過塩素酸テトラ−n−ブチルアンモニウムのようなものを含む過塩素酸テトラブチルアンモニウム、過塩素酸テトラ−n−アルキルアンモニウム、過塩素酸リチウム(LiClO4)、ヨウ化テトラ−n−アルキルアンモニウムなどハロゲン化テトラ−n−アルキルアンモニウム、及び、陽イオンがアルカリ金属イオン、アルキルアンモニウムイオンで、陰イオンがトリフルオロメタンスルホン酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオンからなる塩を用いることができる。支持電解質の濃度は、たとえば10mM以上1M以下であることが好ましいが、これも特に限定されるものではない。
溶媒は、発光材料等を安定的に保持することができるものであれば限定されない。水や炭酸プロピレン等の極性溶媒、極性のない有機溶媒、更には、イオン性液体、イオン導電性高分子、高分子電解質等を使用することが可能である。具体的には、炭酸プロピレン、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、ポリビニル硫酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリアクリル酸等を用いることができる。
真空中で両基板10a、10bの重ね合わせを行った。大気中、もしくは窒素雰囲気中で行ってもよい。
紫外線を、たとえば21J/cm2のエネルギ密度でシール材16に照射し、シール材16を硬化した。なお、紫外線がシール部のみに照射されるように、SUSマスクを使用した。
最後に、電源及び駆動回路を含む駆動装置40を電極13a、13b間に接続した。駆動回路は、所期の駆動条件、たとえば駆動周波数を50Hz以上400Hz以下、一例として50Hz、デューティ比を1/32未満、たとえば1/16以下、バイアス比を1/5以下とする条件で第1の実施例による表示装置をデューティ駆動(単純マトリクス駆動)する。
図1Cは、第1の実施例による表示装置の概略的な断面図を示す。第1の実施例による表示装置は、表示素子及び駆動装置40を含む。表示素子は、略平行に離間して対向配置された上側基板10a、下側基板10b、及び、両基板10a、10b間に配置された発光層15を備える。
基板10a、10bは、それぞれガラス基板11a、11b、及びガラス基板11a、11b上に形成されたITO電極13a、13bを含む。
発光層15は、ECL材料を含む電解液で構成され、基板10a、10b間の、シール材16に囲まれた領域内に画定される。
図1Dは、電極13a、13bの電極パターンの一部を示す概略的な平面図である。
本図に示す範囲においては、電極13aは電極Sa〜Sgで構成され、電極13bは電極C1、C2で構成される。電極SbとSe、電極ScとSd、電極SfとSgは、それぞれ電気的に接続される。電極Sa、電極Sb(Se)、電極Sc(Sd)、及び、電極Sf(Sg)は、互いに電気的に独立し、異なる取り出し端子部T3、T4、T5、T6に接続される。また電極C1と電極C2は、互いに電気的に独立し、異なる取り出し端子部T1、T2に接続される。電極Sa、Sb、Sc、及び、Sgは、電極C1に対向し、電極Sd、Se、及び、Sfは、電極C2に対向する。なお本図においては、電極13a、13bの引き回し線部分を概念的な表示にとどめてある。
第1の実施例による表示装置においては、駆動装置40により電極13a、13b(基板10a、10b)間に交流電圧を印加し、発光層15で発光を生じさせて表示を行う。たとえば図1Dに示す電極13a、13b部分においては、デューティ駆動により0〜9の数字のセグメント表示が可能である。表示はたとえば基板10a側から観察される。発光層15での発光は、たとえば電極13a、13b近傍で生じ、電極13a近傍で生じた発光が観察者に視認される。
図2Aに、駆動波形(ON波形及びOFF波形)の一例を示す。また図2Bに、1/2デューティ、1/2バイアス駆動を行う場合の駆動電圧の例を示す。たとえば、取り出し端子部T1、T2に、図示する態様で電圧が印加されるとき、例1は、電極C1に対向する電極Sa、Sb、Sc、及び、Sgに印加された場合であっても、電極C2に対向する電極Sd、Se、及び、Sfに印加された場合であっても、ON状態(電極間の発光層が発光する状態)を実現する電圧印加態様である。例2は、電極C1に対向する電極に印加された場合はON状態を実現し、電極C2に対向する電極に印加された場合はOFF状態(電極間の発光層が発光しない状態)を実現する電圧印加態様である。また、例3は、電極C1に対向する電極に印加された場合はOFF状態を実現し、電極C2に対向する電極に印加された場合はON状態を実現する電圧印加態様を表す。更に、例4は、電極C1に対向する電極に印加された場合も、電極C2に対向する電極に印加された場合もOFF状態を実現する電圧印加態様である。
図3は、第1の実施例による表示装置の表示エリアの外観写真である。白っぽく視認される領域は、基板10a、10bの法線方向から見たとき、電極13a、13bが重なり、両電極13a、13b間に電圧が印加されている部分である。実際にはオレンジ色に発光している。
図4に、電圧に対する輝度特性を示す。グラフの横軸は、印加電圧を単位「V」で表し、縦軸は、輝度を任意単位(A.U.)で表す。第1の実施例による表示装置においては、2.6V程度の電圧値から輝度の顕著な上昇が認められ、印加する電圧値の増加にしたがって輝度も増加する。
本願発明者らは、実施例による表示装置でデューティ駆動を行う際の駆動条件について鋭意研究した。
図5A〜図5Cは、第1の実施例による表示装置をデューティ駆動した場合のコントラスト特性を示すグラフである。液晶ディスプレイ用のものと同様のドライバを使用し、駆動周波数を50Hzとして駆動した。グラフの横軸は、印加電圧を単位「V」で表し、縦軸は、コントラスト比を表す。図5Aは、1/16デューティ、1/4バイアス、図5Bは、1/16デューティ、1/5バイアス、図5Cは、1/32デューティ、1/5バイアスで駆動した場合のコントラスト比である。
図5A及び図5Bを参照すると、1/16デューティ、1/4バイアス駆動、及び、1/16デューティ、1/5バイアス駆動においては、比較的高いコントラスト比、印加電圧によっては6〜7以上のコントラスト比が得られており、ディスプレイとして使用可能であることがわかる。たとえば1/16デューティ、1/4バイアス駆動(図5A参照)の場合は、駆動電圧を10V〜12Vとすることで、ディスプレイに適用可能である。また、1/16デューティ、1/5バイアス駆動(図5B参照)の場合は、駆動電圧を11.6V程度以上に設定することでディスプレイとして使用可能である。
なお、視角特性については測定していないが、ECL表示装置は、液晶表示装置とは異なり、視角依存性がないため、視認方向を問わず、比較的高いコントラスト比で表示を行うことが可能である。
図5Cを参照すると、1/32デューティで駆動する場合は、ON状態とOFF状態の電圧差が小さく、コントラスト比は最大で1.8程度であり、ディスプレイとして用いるにはやや不適当であることがわかる。
1/16デューティ駆動でディスプレイとして使用可能であることから、たとえば1/8デューティ、1/4デューティといった、デューティ比が1/16以下の条件で駆動することにより、ディスプレイとして使用可能である。また、デューティ比が1/16のときに比較的高いコントラスト比が得られたことから、1/32デューティと1/16デューティの間にも、ディスプレイとして使用可能なコントラストが得られるデューティ比が存在すると考えられる。
したがって、第1の実施例による表示装置は、デューティ比が1/32未満、たとえば1/16以下の条件で駆動することにより、ディスプレイとして使用可能であるといえる。
また、バイアス比が1/4及び1/5で比較的高いコントラスト比が得られたことから、第1の実施例による表示装置は、バイアス比を1/5以下とする条件で駆動することにより、ディスプレイとして使用可能である。
図6に、駆動周波数と輝度の関係を示す。本図のグラフの横軸は、駆動周波数を単位「Hz」で表し、縦軸は、輝度を単位「cd/m2」で表す。なお、本図に示す関係の測定においては、発光層にECL材料として、ルテニウムビピリジル錯体であるトリス(2,2’−ビピラジル)ルテニウム(II)[Ru(bpy)3]2+を10mM、及び、TBAPを100mM加えたPC溶液を使用した。素子面積1.5×1.5cm2、電極間距離75μmとしたECL表示素子に、室温10℃、湿度50%の環境下で4Vの交流電圧を印加して測定を行った。
グラフから、駆動周波数が低いほど輝度が高くなることがわかる。しかし50Hz未満の駆動周波数においてはフリッカーの発生が認められ、駆動周波数を低くするにつれ目立つことが確認された。このため、駆動周波数は50Hz程度であることが望ましい。また、たとえば50Hz以上400Hz以下であれば、フリッカーの発生のない、高輝度での表示が可能である。
第1の実施例による表示装置は、たとえば駆動周波数を50Hz以上400Hz以下、一例として50Hz、デューティ比を1/32未満、たとえば1/16以下、バイアス比を1/5以下とする条件でデューティ駆動することにより、高輝度、高コントラスト比で、フリッカーの発生のない、高品位の表示を行うことができる。TFT素子を必要としない単純な構造を備え、低コストで製造可能である。
図7A〜図7Cは、第2の実施例による表示装置の製造方法を示す概略的な断面図である。
図7Aに示すように、一対のITO膜22a、22b付ガラス基板(透明基板)21a、21bを準備する。
図7Bを参照する。ITO膜22a、22bをフォトリソ工程にてパターニングし、ガラス基板21a、21b上に、それぞれITO電極(表示用電極)23a、ITO電極(対向電極)23bを形成する。
パターニングは、ITO膜22a、22bを多く残存させるようなパターンを形成して行う(引き回し線部分を太幅に形成する)。また、基板間における引き回し線部分の重なり状態を考慮する必要はない。エッチングは、王水系混酸の水溶液を用いたウェットエッチにて実施した。エッチャントとして、たとえば酸化第二鉄を用いることもできる。レーザアブレーションにより、パターニングを行ってもよい。パターニングにおいては、電極23a、23bの各々におけるITO間の距離を、おおむね数十μmから数百μmとする。第2の実施例においては、最も狭い部分のITO間距離を100μmとした。
第2の実施例においては、後述の絶縁膜パターンも考慮して、電極パターンを設計する。表示部のパターンは、たとえば1/16デューティで単純マトリクス駆動を行う液晶表示装置の表示部パターンと等しくすることができる。基板間における引き回し線部分の重なり状態を考慮する必要がないため、電極23a、23bパターン設計における自由度は大きい。電極23a、23bは太幅に形成することが望ましく、電極23a、23bを液晶表示装置の電極よりも低抵抗とすることが好ましい。
続いて、電極23a上の一部を含む領域に、絶縁膜(透明絶縁膜)として、厚さ3000Å〜4000ÅのSiO2膜24aを形成する。SiO2膜24aの成膜はマグネトロンスパッタで行い、リフトオフ法でパターン形成をした。膜厚はこれに限られない。また、成膜方法もスパッタに限定されない。パターン形成は、簡易的には、所定形状の開口部を有するSUSマスクを用いて行ってもよい。フォトリソ工程にてパターニングを行うことも可能である。この場合は、電極23aにダメージを与えないウェットエッチング条件、もしくはドライエッチング条件を用いる。
SiO2膜24aは、電極23aが形成されていないガラス基板21a上の領域、少なくとも製造後の表示装置のシールに囲まれた表示エリア内について、ガラス基板21a上の電極23a非形成領域全域にも形成されることが望ましい。なお、電極23aの取り出し端子部にはSiO2膜24aが形成されないように、パターン形成を行った。
このようにして、ガラス基板21a上に電極23aを備え、少なくとも電極23a上の一部を含む領域に、SiO2膜24aが形成されている上側基板(表示用基板)20a、及び、ガラス基板21b上に電極23bを備える下側基板(対向基板)20bが作製される。
図7Cを参照する。第1の実施例と同様にセル化を行い、基板20a、20b間のシール材26の内側に、ECL材料を含む発光層25を配置した。発光層25を構成する電解液は、たとえば第1の実施例と等しい。
最後に、電源及び駆動回路を含む駆動装置41を電極23a、23b間に接続した。駆動回路は、たとえば駆動周波数を50Hz以上400Hz以下、一例として50Hz、デューティ比を1/32未満、たとえば1/16以下、バイアス比を1/5以下とする条件で第2の実施例による表示装置をデューティ駆動する。
図7Cは、第2の実施例による表示装置の概略的な断面図である。第2の実施例による表示装置は、略平行に離間して対向配置された上側基板20a、下側基板20b、及び、両基板20a、20b間に配置された発光層25を含む。
上側基板20aは、ガラス基板21a、ガラス基板21a上に形成されたITO電極23a、及び、少なくともITO電極23a上の一部を含む領域に形成されたSiO2膜24aを含む。第2の実施例においては、SiO2膜24aは、シール材26に囲まれた領域内の、ITO電極23aが形成されていないガラス基板21a上の全領域にも形成されている。
下側基板20bは、ガラス基板21b、及びガラス基板21b上に形成されたITO電極23bを含む。
発光層25は、ECL材料を含む電解液で構成され、基板20a、20b間の、シール材26に囲まれた領域内に画定される。
図8Aは、電極23aの電極パターンの一部、及び、電極23a上におけるSiO2膜24a形成パターンを示す概略的な平面図である。本図においては、電極23a上のSiO2膜24a形成範囲に斜線を付して示した。また、シール材26の形成位置を一点鎖線で表した。
電極23aは、互いに電気的に独立し、異なる取り出し端子部を備える複数のITO電極(表示用電極)23a3〜23a6で構成される。電極23a3上には表示部23Sa、電極23a4上には表示部23Sb及び23Se、電極23a5上には表示部23Sc及び23Sd、電極23a6上には表示部23Sf及び23Sgが画定される。表示部23Sa〜23Sgは、実際に行いたい表示の形状に対応する形状、実施例においては同形状、具体的には図1Dに示す電極Sa〜Sg部分の形状と同形状に形成される。
各電極23a3〜23a6は、シール材26に囲まれた領域の外側に存在する取り出し端子部T3〜T6と、シール材26に囲まれた領域の内側に存在する電極部分とを有し、シール材26に囲まれた領域の内側に存在する電極部分は、表示部23Sa〜23Sgに対応する電極領域とそれ以外の引き回し線部分とからなる。
SiO2膜24aは、取り出し端子部を除く、表示部23Sa〜23Sg以外の電極23a3〜23a6上に形成されている。すなわち、シール材26に囲まれた領域の内側に存在する電極23a3〜23a6上には、表示部23Sa〜23Sgを除いてSiO2膜24aが形成されている。換言すれば、表示部23Sa〜23Sgは、シール材26に囲まれた領域の内部において、SiO2膜24aの非形成領域として、電極23a3〜23a6上に規定されている。SiO2膜24aが形成された電極23a3〜23a6上の領域が引き回し線部分である。
図8Bは、電極23bの電極パターンの一部を示す概略的な平面図である。電極23bは、互いに電気的に独立し、異なる取り出し端子部を備えるITO電極(対向電極)23b1、23b2で構成される。平面視上(基板20a、20bの法線方向から見たとき)、電極23a3〜23a6の表示部23Sa〜23Sgと対向する位置には、電極23b1、23b2が存在する。電極23b1、23b2上には、絶縁膜は形成されていない。
なお、シール材26に囲まれた領域の内部において、電極23b上にもSiO2膜等の絶縁膜を形成することができる。その場合、表示部23Sa〜23Sgと対向する位置には、絶縁膜を形成しない。したがって一例として、図8Cに斜線で示すように、図1Dに示す電極C1、C2部分の形状と同形状の対向部23C1、23C2以外の電極23b上のすべての位置に絶縁膜を形成することが可能である。更に、絶縁膜は対向電極23bが形成されていないガラス基板21b上の領域に形成されてもよい。
図9は、第2の実施例による表示装置の電極23a、23b間に交流電圧を印加したときの表示エリアの外観写真である。白っぽく視認されるのは、SiO2膜24aが形成されていない、すなわち発光層25と直接接している、電極23a上の領域(たとえば表示部23Sa〜23Sgを含む。)である。実際にはオレンジ色に発光している。黒っぽく視認されるのは、SiO2膜24aが形成されている領域である。第2の実施例による表示装置は、SiO2膜24aの形成領域と非形成領域とに対応して、非表示部と表示部とが規定される表示装置である。
第1の実施例においては、たとえば図3の写真に見られるように、引き回し線(たとえば「:」のドット間に見られる引き回し線)が観察される場合がある。また、「:」部分が他の発光部分に比べて明るいといった、表示面積の違いによる輝度ムラや、大きな画素(電極)において周辺部分が明るいといった輝度ムラが認められる場合がある。しかし第2の実施例においては、引き回し線部分はまったく観察されない。また発光部分の輝度は均一で、輝度ムラも認められない。
第2の実施例による表示装置の特性を調べたところ、図4に示す電気光学特性、及び、図5A〜図5Cに示す、駆動周波数50Hzにおけるデューティ駆動特性とほぼ同一の特性を有していた。
第2の実施例による表示装置も、たとえば駆動周波数を50Hz以上400Hz以下、一例として50Hz、デューティ比を1/32未満、たとえば1/16以下、バイアス比を1/5以下とする条件でデューティ駆動することにより、高輝度、高コントラスト比で、フリッカーの発生のない、高品位の表示を行うことができる。TFT素子を必要としない単純な構造を備え、低コストで製造可能である。
また、第2の実施例による表示装置によると、たとえば引き回し線部分の発光が抑制され、また発光部分の輝度ムラが低減された、第1の実施例よりも一層高品位の発光表示を実現することができる。更に、たとえば表示用電極上に絶縁膜を形成して引き回し線部分とするので、引き回し線部分の幅に制限がなく、引き回し線部分を太幅に形成することができる。対向基板上の電極パターンに対する干渉(重なり合い)を考慮して大きく引き回したり、線幅を補足する必要がない。このため、たとえば取り出し端子部から離れた位置の画素(表示部)に対する場合であっても、十分な電流値を与えることができ、画素やラインごとの駆動電圧のムラ、発光輝度のムラを低減することができる。
次に、第3の実施例による表示装置について説明する。第2の実施例においては絶縁膜としてSiO2膜(無機系の絶縁膜)を使用したが、第3の実施例では有機系の絶縁膜(透明絶縁膜)を用いる。ここではアクリル系絶縁材料を使用して、絶縁膜を形成した。
2000rpm、30秒の条件でスピンコートを行うことにより、厚さ1.8μmの有機絶縁膜を形成し、その後ホットプレートでのプリベーク(100℃、120秒)、露光(照度5.79mW/cm2で5秒。5.79×5=28.95mJ/cm2)、現像(TMAH1%溶液にて60秒のシャワー現像)を行い、最後にポストベーク(220℃、30分)して絶縁膜パターンを得た。
絶縁膜材料、絶縁膜形成工程以外は、第2の実施例と同様の方法で、第3の実施例による表示装置を作製した。電極23a上における有機絶縁膜形成範囲は、第2の実施例におけるSiO2膜24a形成範囲と等しい。
図10は、第3の実施例による表示装置の電極23a、23b間に交流電圧を印加したときの表示エリアの外観写真である。第2の実施例と同様に、表示部で発光し、有機絶縁膜が形成されている領域は発光していない。引き回し線や輝度ムラは認められない。
第3の実施例による表示装置の特性を調べたところ、図4に示す電気光学特性、及び、図5A〜図5Cに示す、駆動周波数50Hzにおけるデューティ駆動特性とほぼ同一の特性を有していた。
第3の実施例による表示装置は、有機絶縁膜の形成領域と非形成領域とに対応して、非表示部と表示部とが規定される表示装置である。第3の実施例による表示装置は、第2の実施例と同様に駆動し、同様の効果を奏することができる。
なお、第2の実施例のSiO2膜も第3の実施例の有機絶縁膜も、メインシール26が形成される位置のガラス基板21a、21b上に存在していてもよい。密着性などに問題はみられなかった。
図11は、第4の実施例による表示装置を示す概略的な断面図である。第1の実施例においては、基板10a、10b間の、シール材16に囲まれた領域内にECL材料を含む発光層15を配置したが、第4の実施例においては、ECL材料とEC材料をともに含む電解液で構成される発光・発色層17を配置する。
ECL材料とEC材料をともに含む電解液は、ECL材料、EC材料、支持電解質、溶媒などにより構成される。
ECL材料は、第1の実施例と等しい材料を用いることができる。
EC材料は、電気化学的な酸化還元反応によって可逆的な色変化を示す化合物であれば、特に制限されない。たとえば、ジメチルテレフタレート、4,4’−ビフェニルヂカルボン酸ヂエチルエステル、ジアセチルベンゼン(1,4−ジアセチルベンゼン等)、ビオロゲン(N,N’−ジメチルビオロゲン、1,4−ジヘプチルビオロゲン等)、導電性高分子(ポリチオフェン、ポリピロール、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、ポリアニリン等)、金属錯体(フェナントロリン錯体、ビピリジン錯体等)、トリフェニルアミン誘導体等、電気化学活性有機化合物の少なくとも一つを含むものを好適に用いることができる。また、無機系のEC材料としては、たとえば水酸化イリジウム酸化チタン等の遷移金属酸化物、水酸化イリジウム等の金属水酸化物、プルシアンブルー等の混合原子価化合物を使用することができる。
支持電解質は、発色材料の酸化還元反応等を促進するものであれば限定されず、たとえばリチウム塩(LiCl、LiBr、LiI、LiBF4、LiClO4等)、カリウム塩(KCl、KBr、KI等)、ナトリウム塩(NaCl、NaBr、NaI等)を好適に用いることができる。支持電解質の濃度は、たとえば10mM以上1M以下であることが好ましいが、これも特に限定されるものではない。
溶媒は、ECL材料及びEC材料を安定的に保持することができるものであれば限定されず、たとえば第1の実施例と等しい溶媒を使用することができる。
第4の実施例による表示装置の素子部分は、電解液の構成を異ならせ、他の工程は第1の実施例と同様にして作製することができる。
第4の実施例による表示装置は、交流駆動でECL材料の発光・消光を制御し、直流駆動でEC材料の発色・消色を制御する、デュアルモードの表示装置である。電極13a、13b間への直流電圧の印加により、発光・発色層17は基板10a(電極13a)側で発色する。
駆動装置42は、電極13a、13b間に、交流電圧を印加してECL材料による発光表示を行い、直流電圧を印加してEC材料による発色表示(反射表示)を行う。
第4の実施例による表示装置の特性を調べたところ、交流電圧の印加に対し、図4に示す電気光学特性、及び、図5A〜図5Cに示す、駆動周波数50Hzにおけるデューティ駆動特性とほぼ同一の特性を有していた。また、EC材料による発色表示はメモリ性を有しているため、ラインごとに直流電圧を印加していくことで、マトリクス表示を行うことができた。表示可能なライン数はメモリ時間に依存するが、1/32デューティ以下であれば特に問題なく表示を行うことができた。
第4の実施例による表示装置は、たとえば駆動周波数を50Hz以上400Hz以下、一例として50Hz、デューティ比を1/32未満、たとえば1/16以下、バイアス比を1/5以下とする条件でデューティ駆動することにより、高輝度、高コントラスト比で、フリッカーの発生のない、高品位の発光表示を行うことができる。TFT素子を必要としない単純な構造を備え、低コストで製造可能である。更に、直流電圧の印加により発色表示を行うことができ、メモリ性を利用してマトリクス表示を行うことができる。第4の実施例による表示装置によれば、たとえば明るい環境下、暗い環境下など様々な環境下において、見やすい表示が可能である。
図12は、第5の実施例による表示装置を示す概略的な断面図である。第4の実施例は、バルク型の表示装置であったが、第5の実施例は界面型の表示装置である。ECL材料とEC材料とを含む電解液層(発光・発色層17)とするのではなく、ECL材料を含む電解液層(発光層18)及びEC材料膜(発色層19)で発光・発色層を構成する。EC材料膜は、たとえば電極13a上に形成される。
実施例においては、パターニングされた電極13a上に、真空蒸着法によりEC材料膜として三酸化タングステン(WO3)膜を形成した。酸化モリブデン膜、酸化タングステン−モリブデン複合膜、酸化バナジウム膜、酸化イリジウム膜、二酸化マンガン膜、酸化ニッケル膜等とすることも可能である。ビオロゲン系、スチリル系化合物等の有機系材料を用いて膜を形成することもできる。消色(透明)−発色(着色)状態を切り替え可能なEC材料膜であればよい。膜形成はスパッタ法(RFマグネトロンスパッタ法)、メッキ法、LB法、各種印刷法(スクリーン印刷、スピンコート、ダイコート等)により行ってもよい。更に、電解重合によっても形成可能である。
なお緻密な膜構造より、アモルファスで、内部に多くの隙間をもつ構造が望ましい。積極的に隙間を設けるため、微小な径の粒子を分散させてもよい。
第5の実施例においては、WO3膜の成膜後、350℃で30分の熱処理を行った。
発光層18を構成する電解液は、ECL材料、支持電解質、溶媒などを含む。
ECL材料及び支持電解質は、第1の実施例と等しい材料を用いることができる。ECL材料の濃度は特に限定されないが、5M以下であることが望ましく、1mM〜1Mであることがより望ましく、10mM〜100mMであることが一層望ましい。
溶媒は、ECL材料等を安定的に保持することができるものであれば限定されず、たとえばNMP溶液等を好適に使用することができる。
第5の実施例による表示装置も、第4の実施例と同様に、交流駆動でECL材料の発光・消光を制御し、直流駆動でEC材料の発色・消色を制御する、デュアルモードの表示装置である。電極13a、13b間への直流電圧の印加により、発色層19で発色が行われる。
第5の実施例による表示装置の特性を調べたところ、交流電圧の印加に対し、図4に示す電気光学特性、及び、図5A〜図5Cに示す、駆動周波数50Hzにおけるデューティ駆動特性とほぼ同一の特性を有していた。また第4の実施例と同様に、直流電圧の印加でEC材料によるマトリクス表示を行うことができ、1/32デューティ以下であれば、特に問題なく表示が可能であった。
第5の実施例による表示装置によれば、駆動装置43で第4の実施例と同様の駆動を行い、同様の効果を奏することができる。
図13は、第6の実施例による表示装置を示す概略的な断面図である。第6の実施例は、発光層15内の基板10a側(表示が観察される側)に光散乱層30を含む点で、第1の実施例と異なる。
光散乱層30は、たとえば酸化金属粒子、一例としてチタニアで構成された、厚さ3000Å〜4000Åの白色層であり、光を散乱させる性質を有する。光散乱層30は、たとえば発光層15から基板10a側に進行する光を散乱させるとともに、基板10aから発光層15側に進行する光を散乱させる。
たとえば発光層15がECL材料としてルテニウム錯体を含む場合、発光層15は黄みを帯びる。第6の実施例による表示装置においては、光散乱層30により、発光層15から基板10a側に進行する光が散乱されるため、バルクの電解液が直接的には観察されず、発光層15に含まれるルテニウム錯体の黄色が目立ちにくくなる。このため第6の実施例による表示装置によれば、第1の実施例の奏する効果に加え、一層高品位の表示を実現することができる。
なお、図13においては、発光層15と光散乱層30の形成領域が相互に排斥しあう関係にあるように示しているが、発光層15を構成する電解液は、光散乱層30に浸透しているため、光散乱層30の形成領域は、発光層15の配置領域でもある。
また、光散乱層は第1の実施例に限らず、他の実施例による表示装置においても形成可能である。
以上、実施例に沿って本発明を説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
たとえば第4及び第5の実施例における表示部と非表示部を、絶縁膜の非形成領域と形成領域で規定してもよい。
その他、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者には自明であろう。