以下、本発明の接触式温度計の実施形態について説明する。なお、以下の実施形態では、熱電対として+極にクロメル、−極にアルメルを用いたタイプKを例に説明するが、本発明は、+極にクロメル、−極にコンスタンタンを用いたタイプEや、+極に白金ロジウム合金(ロジウム含有量30%)、−極に白金ロジウム合金(ロジウム含有量6%)を用いたタイプBなどの様々な種類の熱電対に適用することができる。また、図面に関しては、構成が分かり易いように寸法を変化させており、各部材、各部品の板厚や幅や長さなどの比率も必ずしも実際に製造するものの比率とは一致させていない。加えて、図面において、接触板の被測温体に接触する部分の長さ方向をx方向、幅方向をy方向、厚さ方向をz方向とする。
図1に示すように、第一実施形態の接触式温度計1Aは接触体10を備え、その接触体10は接触板11と複数の側沿板12と押出用板(押出部材)13と間隙保持部14と熱電対20と絶縁膜21とを有する。また、この接触体10は被測温体側に向いた面を含む外側面10aとその外側面10aの反対側の内側面10b、10cとを有し、内側面10cはx方向に互いに対向する面である。
接触板11はy方向から見て被測温体に接触する部分を含む一部分がコの字状のニッケル基の超合金の導電性の板材で形成され、被測温体側に突出している。この接触板11はx方向に延設された接触部16と、接触部16のx方向の両端部に配置された屈曲部F1と、接触部16に隣接して屈曲部F1から延設される非接触部17とを有する。接触部16は被測温体の温度を測定する際に被測温体に接触する部分であり、非接触部17は被測温体に接触しない部分であり、それぞれ外側に湾曲している。
また、接触体10が被測温体に押圧された際に、接触板11の接触部16が弾性変形して被測温体と接触したときの接触する部分のx方向の長さL1は、熱電対20の厚さの20倍以上とすることが好ましい。なお、この実施形態では熱電対20の厚さが0.1mmであるので、長さL1は2.0mm以上とする。
側沿板12は、接触板11の幅方向であるy方向の両側に接触板11との間に間隙を空けて配置され、接触板11と同様にy方向から見て一部分がコの字状のニッケル基の超合金の導電性の板材で形成され、被測温体側に突出している。この側沿板12は、x方向に延設され接触部16に沿う接触部側沿部18と、接触部側沿部18のx方向の両端部に配置された屈曲部F1と、接触部側沿部18に隣接し屈曲部F1から延設され非接触部17に沿う非接触部側沿部19とを有する。この接触部側沿部18と非接触部側沿部19とは接触板11と同様に外側に湾曲している。
熱電対20は薄い帯状に形成された熱電対であり、接触体10の内側面10b、10cに沿って配置される。この熱電対20は、異種金属からなる熱電対素線22A、22Bとその熱電対素線22A、22Bを接合して形成された測温部23とを有する。
また、この熱電対20は測温部23が接触板11の接触部16の中央部に配置され、測温部23からx方向に導出している熱電対素線22A、22Bのそれぞれが接触体10の内側面10b、10cに沿って配置される。加えて、この熱電対20は測温部23の近傍と屈曲部F1の近傍とが接触板11にスポット溶接で固定される。
詳しくは、測温部23から導出している熱電対素線22A、22Bのそれぞれがスポット溶接によって接触板11に固定されることにより接触板11の接触部16の中央部から接触部16のx方向の端部に渡って内側面10bに接触する。このように熱電対素線22A、22Bを内側面10bに接触させることで、接触部16の被測温体に接触する長さL1が熱電対20の厚さの20倍以上であることも合わせて、被測温体の温度を測定する際に被測温体から接触板11を介して熱が十分に伝わって熱電対20が十分に均熱される。
絶縁膜21は熱電対20と接触板11との間に介設される。この絶縁膜21は電気絶縁性の芳香族ポリイミドで構成される。
押出用板13は接触板11と同様のニッケル基の超合金の導電性の板材で形成され、熱電対20の配設方向であるx方向に交差するy方向に、一方の側沿板12から他方の側沿板12に渡って延設される。また、この押出用板13は熱電対20に対して接触板11の反対側に重ねられる。加えて、この押出用板13は側沿板12に対して被測温体側に配置される。このとき、押出用板13の位置は熱電対20に対して測温部23が配置された位置、つまり接触板11の接触部16の中央部となる。そして、この押出用板13は熱電対20の測温部23と当接する部分が熱電対20と共に接触板11にスポット溶接により接合され、y方向の両端部が各側沿板12にスポット溶接により接合される。
加えて、この押出用板13は、図2に示すように、両端部が各側沿板12の被測温体側に配置されて接合されることで、熱電対20と絶縁膜21とを介して、接触板11の接触部16を両側の側沿板12の接触部側沿部18よりも被測温体側に押し出している。従って、接触板11は熱電対20の厚さd1と押出用板13の厚さd2と絶縁膜21の厚さd3分だけ側沿板12よりも被測温体側に押し出される。
接触板11の厚さd2は0.1mm以上、0.5mm以下の厚さが望ましい。この厚さd2が0.5mmより大きいと、被測温体の温度を測定するときの応答速度が遅くなり、厚さd2が0.1mmより小さいと、接触板11の弾性力が低下し被測温体に押圧された際に破損し易くなる。
絶縁膜21の厚さd3は0.01mm以上、0.05mm以下が好ましい。この厚さd3が0.05mmより大きいと、被測温体の温度を測定するときの応答速度が遅くなり、厚さが0.01mmより小さいと、損傷し易くなる。
接触板11の幅B1は、少なくとも熱電対20の幅B2よりも広くし、且つ、接触体10の幅B3の半分以上よりも広くする。接触板11の幅B1を熱電対20の幅B2よりも広くすることで、熱電対20が被測温体に直接接触しないように保護して耐久性を向上する。また、接触板11の幅B1を接触体10の幅B3の半分以上の幅とすると、接触体10がy方向にずらされた場合でも、接触板11の変形を抑制する。
また、接触板11と側沿板12との間の幅B4は0.2mm以上、0.3mm以下が望ましい。幅B4が0.2mmより小さいと、接触板11と側沿板12との間が狭く、被測温体と接触する接触板11から側沿板12に伝熱し、精度の高い測定が難しくなる。一方、幅B4が0.3mmよりも大きいと、接触板11、あるいは側沿板12がy方向に大きく変形可能になる。
従って、接触体10の耐久性と測定結果の精度を考慮すると、接触体10の幅B3を基準として、接触板11の幅B1はその半分以上の幅とし、側沿板12の幅B5はその五分の一から四分の一程度の幅に設定することが望ましい。
間隙保持部14は、図3に示すように、複数の接合片15を有し、接合片15は接触板11と同様にニッケル基の超合金の導電性の板材で形成され、接触板11の非接触部17の幅方向であるy方向の端部から対向する側沿板12の非接触部側沿部19の幅方向であるy方向の端部に渡って延設される。また、この接合片15は接触板11の非接触部17の屈曲部F1側と側沿板12の非接触部側沿部19の屈曲部F1側とを繋ぐ位置に配置される。
この接触式温度計1Aは上記の接触体10を支持する支持体30と図示しないグリップと接続線とを備える。支持体30は、被測温体側の端部に配置され接触体10が突出する頭部31とその反対側の端部に接合される導出管32とを有する。
また、この頭部31は金属加工体で形成され、円筒状の円筒体33を有する。円筒体33は、被測温体側の端部に開口した開口部34と、円筒面の互いに対向する位置のそれぞれに開口部34に繋がる切込部35とを有する。この円筒体33の開口部34から接触板11の接触部16と側沿板12の接触部側沿部18とが被測温体側に突出するように配置され、切込部35に接触板11の非接触部17と側沿板12の非接触部側沿部19とが配置される。
また、この頭部31は円筒体33の切込部35により形成された二つの半円筒形状の両端部に衝突部36を有する。加えて、この頭部31は円筒体33の内部に抜け留部材37と、その抜け留部材37に固定された突出片38A、38Bとを有する。
抜け留部材37は、円筒状の金属加工体で形成され、一方の端部が円筒体33の内底面との間に接触体10の端部を挟持して、円筒体33の内底面に接合される。
突出片38A、38Bは、抜け留部材37と同様に金属加工体で形成され、抜け留部材37の他方の端部に配置され、その端部から接触体10の内側面10cに向かってx方向に突出している。また、一組の突出片38Aと他組の突出片38Bとはそれぞれx方向の反対方向に突出する。
この突出片38Aは接触体10の互いに対向する内側面10cのうちの一方と接触可能な位置に配置され、突出片38Bは他方と接触可能な位置に配置される。また、この突出片38Aは一方の内側面10cの幅方向であるy方向の両端部、つまりx方向に対して接触部16を介して対向配置された一組の非接触部側沿部19の内側面と接触可能な位置に配置され、突出片38Bは他組の非接触部側沿部19の内側面と接触可能な位置に配置される。加えて、この突出片38A、38Bは側沿板12の非接触部側沿部19の接触部側沿部18側、つまり非接触部側沿部19の屈曲部F1の近傍と接触可能な位置に配置される。
次に、この接触式温度計1Aの製造方法について説明する。まず、熱電対20を、熱電対素線22A、22Bの先端部分を接合して測温部23を形成して、作成する。
次いで、図4に示すように、幅B3、厚さd2のニッケル基の超合金などの金属の板材P1を加工し、板材P1の両幅端部側のそれぞれに、詳しくは板材P1のy方向の端部から幅B5の箇所に幅B6、長さL2の間隙G1をそれぞれ形成する。次いで、間隙G1のx方向の端部から板材P1のx方向の端部に向って間隔L3を空け、板材P1のx方向の端部に向って間隙G1と同じ幅の間隙G2を形成する。このようにして一枚の板材P1に二つの間隙G1と少なくとも四つの間隙G2を形成することで、接触板11と両側の側沿板12と接合片15を形成する。
接触体10を被測温体に押圧したときに、接触板11と両側の側沿板12が無理なく変形し、歪みを発生させないようにするために、押出用板13が接合される接触部16の中央部と接合片15との間の長さL4を長くすることが望ましい。一方で、接合片15は、接触板11と両側の側沿板12とを繋いで、y方向の力に対して、接触板11と両側の側沿板12がy方向に変形することを抑制して、接触体10の耐久性を向上するという役割を持つ。そのため、接触部16の中央部と接合片15との間の長さL4を長くし過ぎるとその抑制効果が低くなる。従って、この実施形態では、接合片15を接触板11の非接触部17の屈曲部F1側と側沿板12の非接触部側沿部19の屈曲部F1側とを繋ぐ位置に配置して、弾性変形する際に発生する力を抑制し、且つ幅方向への変形や移動を防止する効果を向上している。
また、間隙G1と間隙G2との間の間隔L3を長くすると、接合片15のx方向の長さが伸びて強度を増すことができる。但し、この間隔L3を長くし過ぎると強度が高すぎて、この部分の変形を妨げる可能性がある。従って、この間隔L3の長さは1.0mm以上、3.0mm以下が好ましい。間隔L3が1.0mmよりも小さいと接合片15の強度が低くなり変形し易くなる。一方、間隔L3が3.0mmより大きいとその部分の弾性変形を阻害する。また、間隙G2の長さを長くすると、この部分の弾性力を低下させることができる。つまり、接触体10を組み立てた際に、接触板11の非接触部17及び側沿板12の非接触部側沿部19が、接触部16及び接触部側沿部18よりも変形し易くなる。従って、接触部16を被測温体に押し付ける力を減少させることができ、接触部16の浮き上がりを抑制する。
次いで、板材P1をジグなどの機械工作機器で固定して、図5に示すように屈曲する。なお、図5では非接触部17は側沿板12に重なっている状態であるため、非接触部17を示す符号については側沿板12を示す符号に括弧書きで追加した。このとき、接触板11の接触部16及び側沿板12の接触部側沿部18の両端部の屈曲部F1を山折り、非接触部17及び非接触部側沿部19の屈曲部F2と屈曲部F3を山折りにする。このようにして接触板11に、接触部16と非接触部17を形成すると共に、非接触部17に接触部16の両端より略L字状に折り曲げられた第一変形部17aと、この第一変形部17aの端部より中央方向に折り曲げられた第二変形部17bとを形成する。同様に側沿板12に接触部側沿部18と非接触部側沿部19を形成すると共に、非接触部側沿部19に接触部側沿部18の両端より略L字状に折り曲げられた第一変形部19aと、この第一変形部19aの端部より中央方向に折り曲げられた第二変形部19bとを形成する。
次いで、接触体10の内側面10b、10cに絶縁膜21を形成し、その上に熱電対20を配置する。次いで、接触部16の中央部に押出用板13を重ね、押出用板13の延設方向の両端部を側沿板12の接触部側沿部18に対して被測温体側に配置する。このとき、押出用板13は接触板11の接触部16と側沿板12の接触部側沿部18に挟持される。次いで、押出用板13の両端部を各側沿板12にスポット溶接で接合する。このとき、押出用板13の熱電対20の測温部23と重なる部分を熱電対20と共に接触板11にスポット溶接で接合し、熱電対20を屈曲部F1の近傍で接触板11にスポット溶接で接合する。なお、押出用板13と熱電対20との間にも絶縁膜を介設するとよい。
次いで、側沿板12の端部同士、つまり第二変形部19bの端部同士を接合して、接触体10を側面から見て矩形の輪状に形成する。このとき接触板11の端部同士は接合せず、その端部の間から熱電対20を導出する。このようにして、接触体10を作成する。
次いで、接触体10の輪の中に抜け留部材37を挿入し、この接触体10と抜け留部材37を頭部31の円筒体33の開口部34から挿入する。このとき、接触板11の接触部
16と側沿板12の接触部側沿部18を開口部34から被測温体側に突出するように、また非接触部17の第一変形部17aと非接触部側沿部19の第一変形部19aを切込部35から外側に湾曲して突出するように、また屈曲部F1の近傍のy方向の両端部を衝突部36のそれぞれに当接可能に、それぞれ配置する。また、接触体10の対向する内側面10cを、突出片38A、38Bのそれぞれに接触可能に配置する。
次いで、接触板11及び側沿板12のそれぞれの端部を抜け留部材37と円筒体33の内底面との間で挟持して固定する。次いで、頭部31に導出管32を接合する。そして導出管32の一端部から熱電対20を導出して接続線に接合して接触式温度計1Aの製造が完了する。
次に、この接触式温度計1Aの動作について説明する。図5に示すように、接触体10を被測温体に押圧していない状態では、接触体10は抜け留部材37により支持されている。このとき接触体10の一部は開口部34と切込部35から被測温体側に突出している。また、接触板11の接触部16が押出用板13により熱電対20と絶縁膜21とを介して間接的に押し出され、側沿板12の接触部側沿部18よりも被測温体側に位置している。加えて、接触板11の非接触部17と側沿板12の非接触部側沿部19は接合片15により非接触部17と非接触部側沿部19とのどちらが外側や内側に突出することなく一体化している。
図6の実線で示すように、接触体10を被測温体に対して垂直に押圧した状態では、接触体10の接触板11の接触部16と側沿板12の接触部側沿部18のそれぞれは平らな状態に弾性変形する。一方、接触板11の非接触部17の第一変形部17aと側沿板12の非接触部側沿部19の第一変形部19aのそれぞれは一体的に外側に広がった状態に弾性変形する。このとき、接触板11の接触部16は、自身の弾性力に加えて、押出用板13により間接的に押し出され、その部分は、常に両側の側沿板12の接触部側沿部18よりも被測温体側に位置することになる。
ここで、図7の(a)に示す押出用板13の無い接触式温度計の接触体10Xと、図7の(b)に示す押出用板13Yと接合片15Yとの間の長さが短い接触体10Yと、この実施形態の接触式温度計1Aの接触体10との違いについて説明する。なお、接触体10X、10Yはどちらも接触体10と同様に支持体30にその端部が固定されているものとする。押出用板13の無い接触体10Xを被測温体に押圧すると、図7の(a)に示すように、接触板11Xが浮き上がって被測温体から離れてしまう。また、押出用板13Yと接合片15Yとの間の長さが短い接触体10Yを被測温体に押圧すると、図7の(b)に示すように、接触板11Y及び側沿板12Yの変形量が大きく、且つ接合片15Yとの接合部の付近に大きな歪みが発生する。
一方、上記の接触式温度計1Aは押出用板13で間接的に接触板11を押し出すことで、接触板11の接触部16を両側の側沿板12の接触部側沿部18よりも被測温体側に押し出して、接触板11の浮き上がりを回避する。また、接合片15を接触板11の非接触部17と側沿板12の非接触部側沿部19とを繋ぐ位置に配置して、押出用板13と接合片15との間を長くすることで、接触板11及び側沿板12の変形量を小さくし、且つ接合片15との接合部の付近の歪みの発生を回避する。
図8に示すように、接触体10を被測温体に押圧した状態で支持体30をy方向に動かした場合には、接触体10の幅方向であるy方向の一方の端部が、つまり一方の側沿板12が、一方の半円筒形状の両端部に配置された一組の衝突部36と接触する。従って、接触体10の一方の側沿板12と衝突部36とが接触していることにより、これ以上は変形しない。これにより、接触体10のy方向の変形を抑制する。
また、このとき衝突部36と接触した側沿板12が接触板11側に変形しようとするが、接触板11の非接触部17と側沿板12の非接触部側沿部19とを繋ぐ接合片15が接触板11と側沿板12との間の間隙を保持して、その変形を抑制する。
図9に示すように、接触体10を被測温体に押圧した状態で支持体30をx方向に動かした場合には、接触体10の切込部35に配置され互いに対向している内側面10cのうちの一方が、組となる突出片38Bと接触する。より詳しくは、接触部16のx方向の端部側に配置された一組の側沿板12の非接触部側沿部19の内側面の屈曲部F1の近傍と各突出片38Bとが接触する。従って、接触体10の対向している内側面10cのうちの一方と突出片38Bとが接触していることにより、これ以上は変形しない。これにより、接触体10のx方向の変形を抑制する。
図10に示すように、被測温体の表面に支持体30の頭部31よりも小さい突起が存在し、接触体10を突起に押圧した状態では、まず、接触体10が図6と同様に弾性変形する。次いで、突起により接触体10が押圧方向の反対側に変形しようする。このときに、各突出片38A、38Bが接触体10の内側面10bと接触することにより、接触体10が押圧方向の反対側にこれ以上変形しない。これにより、接触体10のz方向の変形を抑制する。
このように、被測温体の温度の測定中に予期せぬ事態が発生し、支持体30を動かした場合に、支持体30に設けた衝突部36、あるいは突出片38A、38Bと接触体10が接触することで、接触体10の変形を抑制する。
特に、支持体30を接触板11の接触部16の長さ方向であるx方向に動かした場合に、x方向に接触体10の弾性力よりも強い力が掛かっても、突出片38A、38Bが接触体10のx方向の変形を抑制して、接触体10の変形や破損を回避する。
また、支持体30が接触体10に対してx方向に動かされたときにのみに、突出片38A、38Bのどちらか一方が接触体10の対向する内側面10cのうちの一方と接触するので、被測温体の温度を測定する際の接触体10の弾性変形を阻害しないため、測定の精度の悪化を回避する。
加えて、突出片38A、38Bが非接触部側沿部19の屈曲部F1側と接触するので、接触体10の変形量を最小にして、接触体10の変形や破損を確実に回避する。
更に、突出片38A、38Bは熱電対20と接触しないので、突出片38A、38Bと熱電対20とが接触することで発生する熱電対20の損傷を回避する。
図11に示すように、第二実施形態の接触式温度計1Bは接触体40を備え、接触体40は第一実施形態と同様の接触板11と複数の側沿板12と熱電対20とを有すると共に、絶縁膜41と押出用板42と間隙保持部43とを有する。また、この接触体40は被測温体側に向いた面を含む外側面40aとその外側面40aの反対側の内側面40b、40cとを有し、内側面40cはx方向に互いに対向する面である。
図12に示すように、絶縁膜41は電気絶縁性の芳香族ポリイミドと電気絶縁性のフッ素樹脂とが重ねて形成されたフィルム41A、41Bで構成される。また、この絶縁膜41は少なくとも熱電対20の接触板11と接触する部分を被覆するようにされている。従って、この実施形態では、熱電対20が接触板11の非接触部17にも沿って配置されるので、絶縁膜41は接触体40の内側面40b、40cに接する部分の熱電対20の外表面を被覆する。このフィルム41A、41Bの厚さd3はそれぞれ、第一実施形態の絶縁膜21と同様に0.01mm以上、0.05mm以下が好ましい。
押出用板42は接触板11と同様のニッケル基の超合金の導電性の板材で形成され、熱電対20の配設方向であるx方向に交差するy方向に延設される。また、この押出用板42は側沿板12に対して被測温体の反対側に配置される。そして、この押出用板42は延設方向であるy方向の両端部が各側沿板12にスポット溶接により接合される。このようにして絶縁膜41で覆われた熱電対20の測温部23が接触板11と押出用板42との間に挟持されて固定される。なお、この押出用板42は接触板11には接合されない。
加えて、この押出用板42は、両端部が各側沿板12の被測温体側に配置されて接合されることで、絶縁膜41で覆われた熱電対20を介して、接触板11の接触部16を両側の側沿板12の接触部側沿部18よりも被測温体側に押し出している。従って、接触板11は絶縁膜41に覆われた熱電対20の厚さd4分だけ側沿板12よりも被測温体側に押し出される。
図13に示すように、間隙保持部43は複数の接合板44を有し、接合板44は接触板11と同様にニッケル基の超合金の導電性の板材で形成され、一方の側沿板12の非接触部側沿部19から他方の側沿板12の非接触部側沿部19に渡ってy方向に延設される。また、この接合板44は熱電対20に対して接触板11の反対側に重ねられる。このとき、この接合板44は接触板11の非接触部17の屈曲部F1側と側沿板12の非接触部側沿部19の屈曲部F1とを繋ぐ位置に配置される。そして、この接合板44は接触板11と側沿板12の両方に接合される。接合板44のy方向の両端部が各側沿板12にスポット溶接により接合されると共に、接合板44の中途の位置が接触板11の両幅端部にスポット溶接により接合される。なお、接触板11とのスポット溶接は絶縁膜41に被覆された熱電対20を避ける位置とする。
次に、この接触式温度計1Bの製造方法について説明する。まず、熱電対20を、熱電対素線22A、22Bの先端部分を接合して測温部23を形成して、作成する。次いで、フィルム41A、41Bのフッ素樹脂の面を対向させて、その間に熱電対20を挟持して合わせる。次いで、フィルム41A、41Bを加熱してフッ素樹脂により熱溶着して熱電対20を絶縁膜41で被覆する。
次いで、屈曲していない接触板11の内側面40b、40cに絶縁膜41で被覆した熱電対20を配置し、接触板11の幅方向の両側に屈曲していない側沿板12を配置する。次いで、接触部16の中央部に押出用板42を重ね、非接触部17の接触部16側に接合板44をそれぞれ重ねる。次いで、押出用板42の両端部を各側沿板12にスポット溶接で接合する。次いで、接合板44を接触板11の両幅端部と各側沿板12のそれぞれにスポット溶接で接合する。このようにして、絶縁膜41で被覆された熱電対20を接触板11と押出用板42と接合板44とで挟持し、固定する。
次いで、押出用板42と接合板44とにより一体的になった接触板11と側沿板12とをジグなどの機械工作機器で固定して、第一実施形態と同様にして、図14に示すように屈曲する。なお、図14では非接触部17は側沿板12に重なっている状態であるため、非接触部17を示す符号については側沿板12を示す符号に括弧書きで追加した。
次いで、側沿板12の端部同士を接合して、接触体40を側面から見て矩形の輪状に形成する。このとき接触板11の端部同士は接合せず、その端部の間から熱電対20を導出する。このようにして、接触体40を作成する。次いで、第一実施形態と同様の支持体30に接触体40を取り付けて接触式温度計1Bの製造が完成する。
上記の第二実施形態の接触式温度計1Bの動作は第一実施形態の接触式温度計1Aと同様の動作のためその説明を省略するが、第一実施形態とは異なり、熱電対20が絶縁膜41に被覆され、接触板11と非接地で固定されているため、被測温体に接触体40を押圧した際に熱電対20が被測温体と導通しない。
上記の接触式温度計1A、1Bによれば、接触板11の接触部16を押出用板13、42によって、両側の側沿板12よりも被測温体側に押し出して、接触体10、40を被測温体に強く押圧しても、その接触部16が被測温体から浮き上がることを防止することができる。これにより、その接触部16を被測温体に密着させることができ、被測温体の温度を精度良く測定することができる。
そして、その測定精度を向上する構成における課題であった接触体10、40の耐久性の悪化を改善するために、第一に、接触板11の非接触部17と両側の側沿板12の非接触部側沿部19とを繋ぐ接合片15又は接合板44を備えた。この構成により、接触体10、40を被測温体に押圧した際に、予期せぬ事態によって接触体10、40を支持する支持体30が動かされた場合には、接合片15又は接合板44が接触板11と両側の側沿板12との間の間隙を保持して、接触板11と両側の側沿板12との幅方向であるy方向への変形や移動を防止することができる。
第二に、接合片15又は接合板44を接触板11の非接触部17と側沿板12の非接触部側沿部19とを繋ぐ位置に配置して、押出用板13と接合片15との間を長くする、又は押出用板42と接合板44との間を長くすることで、接触体10、40を被測温体に押圧した際に、接触板11の接触部16の変形量と側沿板12の接触部側沿部18の変形量を緩やかにできる。また、接合片15又は接合板44を備えたことによって形成された接触板11との接合部や側沿板12との接合部に無理な力が掛かることを回避できる。これらにより、接触板11及び両側の側沿板12を無理なく変形させると共に、接合片15又は接合板44の接合部に歪みが発生することを回避することができる。
従って、接触板11の接触部16を押出用板13、42によって両側の側沿板12よりも被測温体側に押し出し、その部分が被測温体から浮き上がることを防止して測定精度を向上することができ、且つ接触体10、40の耐久性を向上することができる。
また、接触板11の幅B1の値が、熱電対20の幅B2の値よりも大きく、且つ接触体10、40の幅B3の半分の値よりも大きく形成することで、熱電対20を接触板11によって保護することができ、且つ、接触板11の幅方向であるy方向の強度が増すので、接触体10、40の耐久性を向上することができる。
また、上記の接触式温度計1Aによれば、接触板11と両側の側沿板12と接合片15とを一枚の板材P1から形成することができるので、接触体10の部品点数を減少し、接触体10を製造する際の加工工程を減少することができる。これにより、接触体10を安価に製造することができる。
また、上記の接触式温度計1Bによれば、熱電対20を押出用板42及び接合板44によって接触板11に非接地で固定することができる。つまり、熱電対20を接触板11に電気が導通しない状態で固定することにより、被測温体の温度を測定するときに接触板11を被測温体に押圧しても、熱電対20が被測温体と導通しないので、熱電対20に余分なノイズが入ることを回避して被測温体の温度を精度良く測定することができる。
また、接着剤や溶接などを使用せずに接触板11に熱電対20を固定するので、接触板
11が弾性変形しても接着剤や溶接などのように剥がれることはなく、熱電対20の固定が解除されることはない。また、接触板11の弾性変形を阻害したり、接触板11からの熱伝導が低下したりすることを回避することができる。加えて、熱電対20が接触板11の被測温体に接触しない面に設けられることによって、直接被測温体に接触しない構成のため、測定中に熱電対20を覆う絶縁膜41が被測温体により損傷して絶縁膜41が測温部23から剥がれることを回避することができる。従って、接触式温度計1Bの耐久性を向上することができる。
加えて、この接触式温度計1Bは、押出用板42が側沿板12の接触部側沿部18に対して被測温体の反対側に配置されるので、側沿板12の接触部側沿部18の被測温体側の面の凹凸を無くすことができる。これにより、接触体40を被測温体に強く押圧したときのx方向の引っ掛かりなどが無くなる。
図15に示すように、第三実施形態の接触式温度計1Cは接触体50を備え、接触体50が屈曲部F1で屈曲された第一実施形態とは異なる接触板51と側沿板52とを有すると共に、第一実施形態と同様の熱電対20と押出用板13と接合片15とを有する。
接触板51はy方向から見て被測温体に接触する部分を含む一部分が円弧状のニッケル基の超合金の導電性の板材で形成され、被測温体側に突出している。この接触板11は円弧状に延設された接触部53と、接触部53に隣接して円弧状の端部から円弧状に延設される非接触部54とを有する。側沿板52も同様に円弧状に形成され、接触部53に沿う接触部側沿部55と非接触部側沿部56とを有する。
また、この接触式温度計1Cは上記の接触体50を支持する支持体60と図示しないグリップと接続線とを備える。支持体60は、被測温体側の端部に配置され接触体50が突出する頭部61とその反対側の端部に接合される導出管62とを有する。
また、この頭部61は金属加工体で形成され、半円柱状の半円柱体63A、63Bと円筒状の円筒体64とを有する。半円柱体63A、63Bは被測温体側の一端部が被測温体側に湾曲して突出し曲面が形成される。また半円柱体63A、63Bはそれぞれx方向に離間配置され他端部が円筒体64に接合される。この半円柱体63A、63Bの離間した部分に開口部65が形成される。この開口部65は第一実施形態の開口部34と切込部35と同様の役割を担い、開口部65から接触板51の接触部53と側沿板52の接触部側沿部55とが被測温体側に突出するように配置され、開口部65から接触板51の非接触部54と側沿板52の非接触部側沿部56とが突出するように配置される。
また、この頭部61は半円柱体63A、63Bの円柱面の反対側の角部に衝突部66を有する。加えて、この頭部61は内部に図示しない抜け留部材と、その抜け留部材に固定された第一実施形態と同様の突出片67A、67Bとを有する。
突出片67A、67Bは、接触体50の対向する内側面に向かってx方向に突出している。また、一方の対となる突出片67Aと他方の対となる突出片67Bはそれぞれ反対方向に突出する。
この第三実施形態の接触式温度計1Cによれば、第一実施形態の効果に加えて、接触体50が円弧状に形成され、且つ頭部61の半円柱体63A、63Bの被測温体側の一端部に曲面が形成されているので、その曲面に沿って支持体60を動かすことができる。これにより安定度が高く姿勢による誤差が最小になり、結果、被測温体の温度を精度良く測定することができる。
なお、上記の実施形態では、間隙保持部14、43が四つの接合片15を備える構成や二枚の接合板44を備える構成を例に説明したが、八つの接合片15を備える構成や四枚の接合板44を備える区制としてもよく、接合片15の数や接合板44の枚数は限定されない。
また、上記の実施形態では、支持体30の頭部31の開口部34から接触板11の接触部16と側沿板12の接触部側沿部18を突出させ、切込部35に接触板11の非接触部17と側沿板12の非接触部側沿部19を配置する構成を例に説明した。一方、支持体30の頭部31を浅く形成する場合は、この構成に限定されない。頭部31が浅い場合は、その開口部34から接触板11の非接触部17と側沿板12の非接触部側沿部19を露出する構成としてもよい。但し、上記の実施形態のように構成することで、接触体10、40を被測温体に強く押圧し過ぎたときに、支持体30の頭部31の開口部34の縁がストッパーの役割を果たすことで、接触体10、40へ過大な力が加わることを防ぐことができる。
また、第一実施形態では、押出用板13が接触板11と側沿板12とにより挟持されるように構成したが、例えば、図16に示すように、接触体70が第一実施形態と同様の接触板11と側沿板12と熱電対20とを有すると共に、間接部材71と押出用板72とを有するように構成してもよい。この間接部材71は、接触板11と同様に形成され、接触体70の内側面に配置された熱電対20と押出用板72との間に挟持される。また、この押出用板72は、第一実施形態の押出用板13と同様に形成される。この押出用板72は、熱電対20と熱電対20の測温部23に重ねられた間接部材71と共に接触板11にスポット溶接により接合され、y方向の両端部が各側沿板12にスポット溶接により接合される。従って、この接触体70は押出用板72が間接部材71と熱電対20と絶縁膜21とを介して接触板11を被測温体側に押し出すと共に、第二実施形態と同様に、側沿板12の接触部側沿部18の被測温体側の面の凹凸を無くすことができる。
また、第二実施形態では、押出用板42が接触板11に接合されないように構成したが、例えば、図17に示すように、接触体80が第二実施形態と同様の接触板11と側沿板12と熱電対20と絶縁膜41を有すると共に、押出用板81とを有するように構成してもよい。この押出用板81は、第二実施形態の押出用板42と同様に形成される。この押出用板81は、絶縁膜41に被覆された熱電対20の測温部23に重ねられ、y方向の両端部が側沿板12に対して被測温体の反対側に配置される。そして、接触板11のy方向の両幅端部にスポット溶接により接合され、y方向の両端部が各側沿板12にスポット溶接により接合される。