筒部13の挿入方向での長さ(より厳密には、基部面27の挿入方向での長さ)を、L1とする(図10参照)。従来のバンドクランプ90において、図10(b)に示すように、ワイヤハーネス20の径がL1以上の場合は、当該ワイヤハーネス20の周面に対して、バンド部15の内周面17を適切に密着させることができる。これにより、バンドクランプ90によって、ワイヤハーネス20をしっかりと固定できる。
従来のバンドクランプ90において、ワイヤハーネス20の周囲にバンド部15を巻き付けるためには、当該バンド部15を筒部13に挿通させねばならない。この筒部13の部分は、可撓性を有していないので、ワイヤハーネス20に沿って曲がることができない。このため、従来のバンドクランプ90においては、ワイヤハーネス20が比較的小径の場合(具体的には、ワイヤハーネス20の径が、筒部13の挿入方向の長さL1未満の場合)、図10(c)に示すように、バンド部15をワイヤハーネス20の周面に適切に密着させることができず、当該ワイヤハーネス20に対するバンドクランプ90の固定力が不足してしまう場合がある。
以上のように、従来のバンドクランプ90では、小径のワイヤハーネス20に対してしっかり固定することが難しく、当該ワイヤハーネス20のズレや回転が生じる場合があった。
この点、特許文献2は、バックルに挿入されることで湾曲状となったベルトの内側に、小径のワイヤハーネスを保持する保持片を備えた構成のバンドクリップを開示している。そして、特許文献2では、小径の電線をクランプするときには、当該電線をバックルと保持片との間に入れ、この状態で前記ベルトをバックルに通して締め付けるようにしている。特許文献2は、これにより、小径の電線の外周面に保持片が押し付けられるので、当該電線がベルトクランプにより適正に保持できるとしている。
特許文献3は、極小径のワイヤハーネスの所定部分に粘着テープを多重に巻き付けて大径部を形成し、当該大径部にバンドクリップのバンドを巻き付けて固定する取付構造を開示している。また、特許文献3は、極小径のワイヤハーネスの所定部分に、電線を沿わせて大径部を構成する構成も開示している。特許文献3は、これにより、極小径のワイヤハーネスに対しても、特別なクリップを用いる必要なく、汎用のバンドクリップを巻き付けて固定できる、としている。
しかし、上記特許文献2の構成において、適切な保持片の長さは、電線の径によって異なる。このため、電線を適切に固定するためには、電線の径に応じて保持片の長さを異ならせた複数種類のベルトクランプが必要となる。従って、特許文献2の構成では、部品種類が増加して、部品管理の手間が発生する。
特許文献3の構成は、極小径の電線の周囲に、テープを巻いたり電線を沿わせたりする工程が必要であるため、バンドクリップの取り付け作業が煩雑になる。また、電線を沿わせる場合は、ダミーの電線が製品中に混入するおそれがあり、管理の手間が発生する。
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その主要な目的は、簡単な構成で、大径から小径まで様々なサイズのワイヤハーネスに対して適切に固定できるバンドクランプを提供することにある。
課題を解決するための手段及び効果
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
本願発明の観点によれば、ワイヤハーネスを目標物に対して固定するためのバンドクランプが以下のとおり提供される。即ち、このバンドクランプは、バンド部と、バックル部と、固定部と、を有する。前記バンド部は、前記ワイヤハーネスの周囲に周回される。前記バックル部は、前記バンド部を所定の挿入方向から挿入可能な筒部を有する。前記固定部は、前記バックル部に対して固定的に設けられ、前記目標物に対して固定可能である。前記バンド部の基端部は、前記筒部の前記挿入方向下流側の端部に接続している。そして、前記バンド部には、当該バンド部を挿通可能な挿通孔が形成されている。
この構成によれば、バンド部を、当該バンド部に形成された挿通孔に通過させることで、ワイヤハーネスの周囲に巻き付けることができる。このように、バンド部を、筒部に挿通させずにワイヤハーネスの周囲に巻き付けることができるので、ワイヤハーネスが小径の場合であっても、当該ワイヤハーネスに対してバンド部を密着させることができる。これにより、ワイヤハーネスが小径の場合であっても、当該ワイヤハーネスに対してバンドクランプを適切に固定できる。
上記のバンドクランプにおいて、前記挿通孔は、前記バンド部の厚み方向に対して傾いて形成されていることが好ましい。
このように、挿通孔を斜めに形成することで、当該挿通孔に挿通させたバンド部を、ワイヤハーネスの周面に沿わせることができる。これにより、ワイヤハーネスに対するバンド部の密着性が向上する。
上記のバンドクランプにおいて、前記挿通孔は、前記バンド部の長手方向に複数形成できる。この場合、前記バンド部の厚み方向に対する各挿通孔の傾きが互いに異なることが好ましい。
これにより、ワイヤハーネスの径に応じて、適切な挿通孔を選択できる。
上記のバンドクランプは、以下のように構成されることが好ましい。即ち、前記筒部の外周壁面又は前記バンド部の一方には、凸部が形成される。前記筒部の外周壁面又は前記バンド部の他方には、前記凸部と嵌合可能な凹部が形成されている。
これにより、バンド部を挿通孔に通過させ、ワイヤハーネスの周囲に巻き付けた状態で、凸部を凹部に嵌合させることにより、当該バンド部を仮止めできる。これにより、巻き付け作業を行い易くなる。
上記のバンドクランプにおいては、前記凸部又は凹部の少なくとも一方を、複数形成することが好ましい。
これにより、ワイヤハーネスの径に応じて、適切な凸部と凹部を嵌合させることができる。
上記のバンドクランプにおいては、前記挿通孔の縁部に沿って、前記バンド部に肉厚部を設けることが好ましい。
これにより、バンド部の引っ張りに対する強度を向上させることができる。また、バンド部に肉厚部を設けることにより、バンド部をワイヤハーネスに巻き付けたときの隙間が埋まり、当該バンド部とワイヤハーネスの密着性を向上させることができる。
上記のバンドクランプにおいて、前記挿通孔は、当該挿通孔に挿入されたバンド部を係止する係止爪を有することが好ましい。
これにより、挿通孔に挿入されたバンド部が緩むことを防止できるので、ワイヤハーネスに対してバンドクランプを確実に固定できる。
上記のバンドクランプにおいては、前記バンド部において、前記挿通孔よりも先端部側の一部の領域を、波型に形成することが好ましい。また、前記バンド部において、前記挿通孔よりも先端部側の一部の領域を、肉薄に形成しても良い。
これにより、バンド部の屈曲性が向上するので、小径のワイヤハーネスに対するバンド部の密着性を更に向上させることができる。また、波型又は肉薄に形成する部分を一部の領域に限定しているので、バンド部の通常の使用時に影響を及ぼすことが無い。
また、前記バンド部に、長手方向のスリットを形成しても良い。
この場合も、バンド部の屈曲性が向上するので、小径のワイヤハーネスに対するバンド部の密着性を更に向上させることができる。
本願発明の別の観点によれば、上記のバンドクランプと、前記ワイヤハーネスと、を備えるワイヤハーネスアッセンブリの製造方法が以下のとおり提供される。即ち、この製造方法において、前記ワイヤハーネスの径が所定以上の部分に前記バンドクランプを取り付ける際には、当該ワイヤハーネスの周囲に前記バンド部を1回だけ周回させて、当該バンド部を前記バックル部の前記筒部に挿入する。また、この製造方法において、前記ワイヤハーネスの径が所定未満の部分に前記バンドクランプを取り付ける際には、当該ワイヤハーネスの周囲に前記バンド部を周回させて、当該バンド部を前記挿通孔に挿通させる第1巻き付け工程を行う。
このように、ワイヤハーネスの径の大小に応じて、当該ワイヤハーネスに対するバンドクランプの取り付け方法を異ならせることにより、一種類のバンドクランプによって、大小のワイヤハーネスに対応できる。小径のワイヤハーネスに対してバンドクランプを取り付ける際には、バンド部をワイヤハーネスの周囲に周回させて挿通孔に挿通させる。このように、バンド部を、筒部に挿通させることなく、ワイヤハーネスの周囲に巻き付けることができる。これにより、バンド部の巻き付け径が小さくなるので、小径のワイヤハーネスに対するバンド部の密着性が向上する。
上記の製造方法において、前記ワイヤハーネスの径が所定未満の部分に前記バンドクランプを取り付ける際には、前記第1巻き付け工程の後で、前記バンド部を更にワイヤハーネスまわりで周回させ、当該バンド部を前記筒部に挿入する第2巻き付け工程を行うことが好ましい。
このように、小径のワイヤハーネスに対してバンドクランプを取り付ける際には、バンド部を、ワイヤハーネスに二重に巻き付けることにより、当該ワイヤハーネスに対してバンドクランプを強固に固定することができる。
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は、本願発明の第1実施形態に係るバンドクランプ10である。
本実施形態のバンドクランプ10は、ワイヤハーネス20を、図略の目標物(自動車の車体パネルなど)に対して固定するためのものである。なお、本実施形態のバンドクランプ10の構成要素のうち、図10で説明した従来のバンドクランプ90と共通又は類似の構成については、図面に同一の符号を付して説明を省略する。
図1に示すように、第1実施形態のバンドクランプ10のバンド部15には、基端部24と先端部25との間の位置において、挿通孔30が形成されている。図1(a)に示すように、挿通孔30は、バンド部15を貫通して形成されている。また、本実施形態の挿通孔30は、バンド部15の厚み方向に形成されている。
挿通孔30は、当該挿通孔30よりも先端部25側のバンド部15を挿入可能に形成されている。バンド部15は、他の部分よりも幅広となる幅広部31を有しており、当該幅広部31に挿通孔30が形成されている(図1(b))。
この本実施形態のバンドクランプ10をワイヤハーネス20に対して取り付けた状態の物を、ワイヤハーネスアッセンブリ91と呼ぶ。ところで、ワイヤハーネス20は、1本又は複数の電線が束ねられたものであり、しかも複雑な分岐構造を有している。このため、ワイヤハーネス20の各部の径はそれぞれ異なっている。
図2(a)に示したのは、ワイヤハーネスアッセンブリ91のうち、ワイヤハーネス20の比較的大径の部分(具体的には、ワイヤハーネス20の径が、筒部13の挿通方向での長さL1よりも大きい部分)に対して、バンドクランプ10を取り付けた様子である。これに対して、図2(b)には、ワイヤハーネスアッセンブリ91のうち、ワイヤハーネス20の比較的小径の部分(具体的には、ワイヤハーネス20の径が、筒部13の挿通方向での長さL1よりも小さい部分)に対して、バンドクランプ10を取り付けた様子を示す。このように、本実施形態では、ワイヤハーネス20の径の大小に応じて、当該ワイヤハーネス20に対してバンドクランプ10を取り付ける方法を異ならせることができる。
本実施形態のバンドクランプ10をワイヤハーネス20の比較的大径の部分(具体的には、径がL1以上の部分)に対して取り付ける方法は、従来と同じである。即ち、バンド部15を、ワイヤハーネス20の周囲に1回だけ周回させて筒部13に挿入し、当該バンド部15を締め付けることにより、バンドクランプ10をワイヤハーネス20に対して取り付ける。
続いて、本実施形態のバンドクランプ10を、ワイヤハーネス20の比較的小径の部分(具体的には、径がL1未満の部分)に対して取り付ける方法について説明する。
ワイヤハーネス20の比較的小径の部分に対してバンドクランプ10を取り付ける場合、図3(a)に示すように、ワイヤハーネス20を、バンド部15の内周面17側に配置する。この状態で、図3(a)の二点鎖線の矢印で示すように、バンド部15をワイヤハーネス20の周囲に周回させ、当該バンド部15を挿通孔30に挿通させる(第1巻き付け工程)。これにより、図3(b)に示すように、バンド部15を、ワイヤハーネス20の周囲に巻き付けることができる。
以上のようにすることで、ワイヤハーネス20が比較的小径の場合(具体的には、ワイヤハーネス20の径が、筒部13の挿通方向での長さL1未満の場合)であっても、当該ワイヤハーネス20の周面に対してバンド部15を密着させることができる。
即ち、従来のバンドクランプ90(図10)において、バンド部15をワイヤハーネス20の周囲に巻き付けるためには、当該バンド部15を、バックル部12の筒部13に挿通させる必要があった。このため、図10(c)に示すように、ワイヤハーネス20が比較的小径の場合(ワイヤハーネス20の径が、筒部13の挿通方向での長さL1未満の場合)には、当該ワイヤハーネス2の周面に対してバンド部15が密着できなかったのである。これに対し、本実施形態では上記のように構成することで、バンド部15を、バックル部12の筒部13に挿通させることなくワイヤハーネス20の周囲に巻き付けることができるので、従来に比べて、ワイヤハーネス20に対するバンド部15の密着性を高めることができる。
ただし、本実施形態において、挿通孔30には、バンド部15を係止する機構を設けていない。従って、バンド部15を挿通孔30に挿通させただけの状態(図3(b)の状態)では、バンド部15が挿通孔30から抜けてしまう。従って、この状態では、ワイヤハーネス20に対してバンドクランプ10を固定したことにはならない。また、図3(b)の状態では、バンド部15が、基端部24を中心にグラついてしまうので、安定性に欠ける。そこで、本実施形態では、バンド部15が抜けることを防止するとともに、グラつきを防止し、ワイヤハーネス20に対してバンドクランプ10を強固に固定するために、第2巻き付け工程を行う。
具体的には、以下のとおりである。即ち、まず図3(b)に二点鎖線の矢印で示すように、挿通孔30に挿通させたバンド部15を、第1巻き付け工程で巻き付けたときと同じ巻き付け方向で、ワイヤハーネス20まわりで更に周回させる。そして、バンド部15の先端部25を、バックル部12の筒部13に対して挿通方向から挿入させる(第2巻き付け工程)。これにより、バンド部15が、バックル部12の係止爪14に係合するので、当該バンド部15がバックル部12から抜けることを防止できる。そして、この状態から、バンド部15を締め付けることにより、ワイヤハーネス20に対してバンドクランプ10を確実に固定することができる(図2(b)の状態)。
以上のように、本実施形態のバンドクランプ10を、比較的小径のワイヤハーネス20に取り付ける場合には、第1巻き付け工程と第2巻き付け工程を行う。これにより、ワイヤハーネス20の周囲において、バンド部15の少なくとも一部が二重に巻かれた状態となる(図2(b)の状態)。そこで、バンド部15の、挿通孔30に挿入されている部分よりも基端部24側の部分を、「1周目のバンド部」と呼ぶ。同様に、バンド部15の、挿通孔30に挿入されている部分よりも先端部25側の部分を「2周目のバンド部」と呼ぶ。
前述のように、第1巻き付け工程においては、バンド部15(1周目のバンド部15)を、ワイヤハーネス20の周囲に密着させて巻き付けることができる。これは、バンド部15を、筒部13に挿通させずにワイヤハーネス20に巻き付けることができるためである。
一方、第2巻き付け工程においては、2周目のバンド部15を筒部13に挿通させる必要がある。このため、2周目のバンド部は、1周目のバンド部15ほどは、ワイヤハーネス20に密着させることができない。しかしながら、第2巻き付け工程においは、既に1周目のバンド部15がワイヤハーネス20に巻き付けられている状態であるため、当該ワイヤハーネス20の見かけの径が太くなっている。このため、第2巻き付け工程においては、2周目のバンド部15を、ワイヤハーネス20の周面(に巻き付いた1周目のバンド部15)に密着させ易くなっており、固定力が向上している。
なお、本実施形態のバンドクランプ10において、挿通孔30は、筒部13の基部面27に近い位置に形成されている。より具体的には、本実施形態の挿通孔30は、基部面27から距離L2の位置に形成されている(図1(a)参照)。そして、前記距離L2は、筒部13の挿通方向の長さL1よりも短い。このように、挿通孔30が、基部面27に近い位置に形成されているので、ワイヤハーネス20(及びこれに巻き付いた1周目のバンド部15)を、基部面27と、2周目のバンド部15と、の間で挟み込むことができる(図2(b)の状態)。これにより、ワイヤハーネス20のグラつきを防止できる。
以上により、ワイヤハーネス20の比較的小径の部分に対しても、バンドクランプ10を適切に取り付けることができる。
以上で説明したように、本実施形態のバンドクランプ10は、バンド部15と、バックル部12と、固定部11と、を有する。バンド部15は、ワイヤハーネス20の周囲に周回される。バックル部12は、バンド部15を所定の挿入方向から挿入可能な筒部13を有する。固定部11は、バックル部12に対して固定的に設けられ、目標物に対して固定可能である。バンド部15の基端部24は、筒部13の挿入方向下流側の端部に接続している。そして、バンド部15には、当該バンド部15を挿通可能な挿通孔30が形成されている。
この構成によれば、バンド部15を、当該バンド部15に形成された挿通孔30に通過させることで、ワイヤハーネス20の周囲に巻き付けることができる。このように、バンド部15を、筒部13に挿通させずにワイヤハーネス20の周囲に巻き付けることができるので、ワイヤハーネス20が小径の場合であっても、当該ワイヤハーネス29に対してバンド部15を密着させることができる。これにより、ワイヤハーネス20が小径の場合であっても、当該ワイヤハーネス20に対してバンドクランプ10を適切に固定できる。
また、本実施形態のワイヤハーネスアッセンブリ91の製造方法は、以下のように行うものである。即ち、この製造方法において、ワイヤハーネス20の径がL1以上の部分にバンドクランプ10を取り付ける際には、当該ワイヤハーネス20の周囲にバンド部15を1回だけ周回させて、当該バンド部15をバックル部12の筒部13に挿入する。また、この製造方法において、ワイヤハーネス20の径がL1未満の部分にバンドクランプ10を取り付ける際には、当該ワイヤハーネス20の周囲にバンド部15を周回させて、当該バンド部15を挿通孔30に挿通させる第1巻き付け工程を行う。
このように、ワイヤハーネス20の径の大小に応じて、当該ワイヤハーネス20に対するバンドクランプ10の取り付け方法を異ならせることにより、一種類のバンドクランプ10によって、大小のワイヤハーネス20に対応できる。小径のワイヤハーネス20に対してバンドクランプ10を取り付ける際には、バンド部15をワイヤハーネス20の周囲に周回させて挿通孔30に挿通させる。このように、バンド部15を、筒部13に挿通させることなく、ワイヤハーネス20の周囲に巻き付けることができる。これにより、バンド部15の巻き付け径が小さくなるので、小径のワイヤハーネス20に対するバンド部15の密着性が向上する。
そして、本実施形態の製造方法において、ワイヤハーネス20の径がL1未満の部分にバンドクランプ10を取り付ける際には、前記第1巻き付け工程の後で、バンド部15を更にワイヤハーネス20まわりで周回させ、当該バンド部15を筒部13に挿入する第2巻き付け工程を行う。
このように、小径のワイヤハーネス20に対してバンドクランプ10を取り付ける際には、バンド部15を、ワイヤハーネス20に二重に巻き付けることにより、当該ワイヤハーネス20に対してバンドクランプ10を強固に固定することができる。
続いて、本願発明の第2実施形態について説明する。なお、以下の説明において、上記実施形態と共通又は類似の構成については、図面に同一の符号を付して説明を省略することがある。
図4に示す第2実施形態のバンドクランプ52では、挿通孔30が、バンド部15の厚み方向に対して斜めに形成されている。具体的には図4(a)に示すように、第2実施形態の挿通孔30は、バンド部15の内周面17側から外周面18側にゆくに従って、先端部25側に近づくように、斜めに形成されている。言い換えれば、本実施形態の挿通孔30は、ワイヤハーネス20の長手方向から見て(図4参照)、バンド部15の巻き付け方向(ワイヤハーネス20の周面に沿った方向)に沿うように形成されている。
これに対し、第1実施形態のバンドクランプ10(図1)においては、挿通孔30が、バンド部15の厚み方向に形成されている。即ち、第1実施形態の挿通孔30は、バンド部15の巻き付け方向に沿っていなかった。このため、バンド部15をワイヤハーネス20の周囲に周回させて挿通孔30に挿通させたときに、当該バンド部15とワイヤハーネス20の周面との間に隙間32が生じていた(図2(b)及び図3(b)参照)。この点、第2実施形態のバンドクランプ52では、挿通孔30を、巻き付け方向に沿うように斜めに形成したことにより、バンド部15をワイヤハーネス20の周囲に周回させて挿通孔30に挿通させたときに、当該バンド部15をワイヤハーネス20の周面に沿わせることができる(図4(b)参照)。これにより、バンド部15とワイヤハーネス20との接触面積が増大するので、当該ワイヤハーネス20に対してバンドクランプ52をより確実に固定することができる。
以上で説明したように、第2実施形態のバンドクランプ52において、挿通孔30は、バンド部15の厚み方向に対して傾いて形成されている。このように、挿通孔30を斜めに形成することで、当該挿通孔30に挿通させたバンド部15を、ワイヤハーネス20の周面に沿わせることができる。これにより、ワイヤハーネス20に対するバンド部15の密着性が向上する。
次に、本願発明の第3実施形態について説明する。
図5に示す第3実施形態のバンドクランプ53では、バンド部15の長手方向で複数の挿通孔30a,30b,30cが形成されている。このように、複数の挿通孔をバンド部15の長手方向に設けたので、ワイヤハーネスの径に応じて、最適な挿通孔を選択することができる。
また、第3実施形態のバンドクランプ53では、バンド部15の厚み方向に対する挿通孔30a,30b,30cの傾きを、互いに異ならせている。これにより、ワイヤハーネスの径に応じて、最適な挿通孔を選択することができる。なお、本実施形態では、バンド部15の先端部25に近い挿通孔ほど、バンド部15の厚み方向に対する傾きがより大きくなるように形成している。挿通孔の傾きが大きければ大きいほど、径が小さいワイヤハーネス20にバンド部15を沿わせ易くなる。従って、第3実施形態のバンドクランプ53においては、ワイヤハーネス20の径が小さいほど、より先端部25に近い位置の挿通孔(即ち、より傾きが大きい挿通孔)を使用すれば良い。
次に、本願発明の第4実施形態について説明する。
図6に示す第4実施形態のバンドクランプ54は、バンド部15において、挿通孔30の縁部に沿って肉厚部33を設けたものである。即ち、本願発明のバンドクランプにおいて、バンド部15には挿通孔30が形成されているので、当該挿通孔30の部分において、バンド部15の引っ張り強度が不足するおそれがある。そこで上記のように、挿通孔30の縁に沿って肉厚部33を設けることで、バンド部15の引っ張り強度を確保できる。
なお、前述のように、第1実施形態においては、挿通孔30がバンド部15の厚み方向に形成されていたので、当該バンド部15をワイヤハーネス20の周面との間に隙間32が生じていた(図2(b)及び図3(b))。この点、第4実施形態においても、挿通孔30は、第1実施形態と同様にバンド部15の厚み方向に形成されている。このため、何ら工夫をしなければ、第1実施形態のような隙間32が生じうる。そこで、この第4実施形態においては、第1実施形態のような隙間32が生じることを防ぐために、上記肉厚部33の形状を工夫している。
即ち、図6(a)に示すように、第4実施形態の肉厚部33は、バンド部15の内周面17側から突出するように形成されている。そして、肉厚部33は、挿通孔30の縁からバンド部15の長手方向に遠ざかるに従って徐々に突出量(肉厚)が小さくなるように形成されている。即ち、ワイヤハーネス20の長手方向で見たときに(図6(a)及び図6(c))、肉厚部33の表面は、バンド部15の厚み方向に対して斜めとなるように(テーパ状に)形成されている。
肉厚部33を上記のように形成しているので、第4実施形態のバンドクランプ54において、バンド部15を、ワイヤハーネスの周囲に周回させて挿通孔30に挿通させたときに、肉厚部33の表面が、ワイヤハーネス20の表面に沿った状態となる(図6(c)の状態)。即ち、第4実施形態の肉厚部33は、第1実施形態で生じていた隙間32を塞ぐように形成されているのである。これにより、比較的小径のワイヤハーネス20に対するバンド部15の密着性が更に向上する。
次に、本願発明の第5実施形態について説明する。
図7及び図8に示す第5実施形態のバンドクランプ55は、筒部13の基部面27に、凸部35を設けた構成である。また、第5実施形態のバンドクランプ55において、バンド部15の外周面18には、凹部34が形成されている。
凸部35は、基部面27から突出する柱状の部位として形成されている。また、凹部34は、前記凸部35に嵌合可能に形成されている。
より具体的には、本実施形態のバンドクランプ55は、第1巻き付け工程を終了した状態(図8(a)に示す状態)のバンド部15の凹部34に対して、筒部13の凸部35を嵌合させることができるように構成されている。これにより、図8(b)に示すように、バンド部15を、ワイヤハーネス20の周囲に巻き付けた状態で仮止めすることができる(仮止め工程)。これにより、第2巻き付け工程を行い易くなる。
即ち、前述のように、本願発明のバンドクランプは、比較的小径のワイヤハーネス20に取り付ける際には、第1巻き付け工程と、第2巻き付け工程と、を行うことにより、当該ワイヤハーネス20に対してバンド部15を二重に巻き付けるものである。従って、小径のワイヤハーネス20に対してバンド部15をしっかりと密着させるためには、第1巻き付け工程においてバンド部15をしっかりと締め付け、その状態を維持したままで、第2巻き付け工程を行うことが好ましい。しかしながら、実際には、第1巻き付け工程でのバンド部15の締め付けを維持したまま、第2巻き付け工程を行うことは難しい。このため、第2巻き付け工程を行う際に、第1巻き付け工程でのバンド部15の締め付けが緩んでしまう可能性がある。
この点、第5実施形態のバンドクランプ55では、第1巻き付け工程においてバンド部15を締め付けた状態(図8(a)の状態)で、バンド部15の凹部34を筒部13の凸部35に嵌合させることにより、前記締め付けた状態でバンド部15を仮止めできる(図8(b)の状態)。従って、この状態から、第2巻き付け工程(図8(b)に二点鎖線の矢印で示す)を行うことにより、第1巻き付け工程でのバンド部15の締め付けを緩ませることなく、ワイヤハーネス20に対してバンドクランプ55を簡単に固定できる。
以上のように、第5実施形態のバンドクランプ55の構成によれば、比較的小径のワイヤハーネス20に対するバンド部15の巻き付け作業を行い易くなる。そして、第5実施形態のバンドクランプ55の構成によれば、バンド部15による締め付けが緩むことを防止できるので、比較的小径のワイヤハーネス20に対するバンドクランプ55の固定を、より確実に行うことができる。
また、図7及び図8に示すように、第5実施形態のバンドクランプ55は、バンド部15の長手方向に並べて、複数の凹部34を設けている。これにより、ワイヤハーネス20の径に応じて、最適な凹部34を選択して凸部35に係合させることができる。従って、様々な径のワイヤハーネス20に対応できる。
続いて、第5実施形態のバンドクランプ55の、別の特徴について説明する。
図7に示すように、第5実施形態のバンドクランプ55において、挿通孔30の中には、係止爪36が形成されている。この係止爪36は、挿通孔30に挿入されたバンド部15を係止するように構成されている。
即ち、前述のように、バンド部15の外周面18には、鋸波状の係止部が形成されている(従来例で説明した図10(a)を参照のこと)。第5実施形態の挿通孔30内に設けられた係止爪36は、バンド部15の外周面18に形成された上記係止部に係合することにより、当該バンド部15が挿通孔30から抜けることを防止する。
このように、挿通孔30内に係止爪36を設けたことにより、第1巻き付け工程においてバンド部15を締め付けた状態(図8(a)の状態)で、バンド部15が緩むことを防止できる。従って、この状態から、第2巻き付け工程(図8(b)に二点鎖線の矢印で示す)を行うことにより、第1巻き付け工程でのバンド部15の締め付けを緩ませることなく、ワイヤハーネス20に対してバンドクランプ55を簡単に固定できる。
なお、第5実施形態のバンドクランプ55において、凹部34及び凸部35による仮止め構造と、挿通孔30内の係止爪36による係止構造は、互いに独立している。従って、第5実施形態のバンドクランプ55において、上記仮止め構造、又は係止構造の何れか一方を、省略しても良い。
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
バンドクランプの構造は、必要に応じて適宜変更することができる。
小径のワイヤハーネスに対するバンド部15の密着性を向上させるため、当該バンド部15は、柔軟性が高いことが好ましい。そこで、バンド部15に対して、柔軟性を向上させるための加工を行うことができる。例えば図9(a)に示すのは、ワイヤハーネスの長手方向で見たときのバンド部15の断面形状が波状になるように、当該バンド部15に波状部37を形成した第1変形例である。このようにバンド部15を波状に加工することで、当該バンド部15の柔軟性を向上させ、比較的小径のワイヤハーネスに対する密着性を向上させることができる。
ところで、波状部37を形成した領域では、バンド部15が厚み方向で変位するので、仮に波状部37がバンド部15の長手方向全域にわたって形成されていると、バンド部15の通常の使用の際に弊害が生じ得る(例えば、バンド部15を筒部13にうまく挿入できない、係止爪14に適切に係合できない、など)。一方、バンド部15の柔軟性が特に要求されるのは、一周目のバンド部15に相当する領域、即ち、挿通孔30を起点として先端部25側の所定の領域である。従って、当該所定の領域以外の部分には、波状部37を形成する必要性が低い。
そこで本実施形態では、挿通孔30を起点として先端部25側の所定の加工長さL3の範囲内の領域にのみ、波状部37を形成している(図9(a)参照)。このように、波状部37を形成する領域を必要な範囲に限定しているので、バンド部15の通常の使用に影響が無い。なお、加工長さL3は、例えば、筒部13の挿入方向での長さL1程度とすれば好適である。
図9(b)に示すのは、上記波状部37の代わりに、肉薄部38をバンド部15に形成した第2変形例である。このように、バンド部15に肉薄部38を形成することにより、当該バンド部15の柔軟性を向上させ、比較的小径のワイヤハーネスに対する密着性を向上させることができる。なお、図9(b)の変形例では、バンド部15の外周面18を凹ませることにより、肉薄部38としている。
ところで、肉薄部38を形成した領域では、バンド部15の厚みが薄くなっているので、仮に肉薄部38がバンド部15の長手方向全域にわたって形成されていると、バンド部15の通常の使用の際に弊害が生じ得る(例えば、バンド部15を筒部13にうまく挿入できない、係止爪14に適切に係合できない、など)。そこで、図9(b)の変形例においても、挿通孔30を起点として先端部25側の所定の加工長さL3の範囲内の領域にのみ、肉薄部38を形成している。このように、肉薄部38を形成する領域を必要な範囲に限定しているので、バンド部15の通常の使用に影響が無い。
図9(c)に示すのは、バンド部15に、当該バンド部15の長手方向に沿ってスリット39を形成した第3変形例である。このように、バンド部15にスリット39を形成することにより、当該バンド部15の柔軟性を向上させ、比較的小径のワイヤハーネスに対する密着性を向上させることができる。
なお、スリット39の場合、バンド部15の厚み方向での寸法自体には変化は生じない。従って、仮にスリット39がバンド部15の長手方向全域にわたって形成されていていたとしても、バンド部15の通常の使用には影響が無い場合がある。このような場合は、図9(c)に示すように、スリット39をバンド部15の長手方向全域にわたって形成することができる。
第3実施形態のバンドクランプ53(図5)においては、複数の挿通孔30a,30b,30cの傾きを互いに異ならせているが、必ずしもこれに限らず、複数の挿通孔の傾きが同じであっても良い。
上記の説明では、比較的小径のワイヤハーネスにバンドクランプを取り付ける際には、バンド部15を二重に巻き付けるものとしたが、比較的小径のワイヤハーネスにバンド部15を巻き付ける回数は2回に限定されない。例えば、第3実施形態のバンドクランプ53(図5)のように、バンド部15に複数の挿通孔30a,30b,30c……が形成されている場合、先端部25に近い挿通孔から順にバンド部15を挿通させていくことで、三重巻き、四重巻き……というように、ワイヤハーネスに対してバンド部15を3回以上巻き付けることも可能である。巻き付ける回数を増やすことにより、ワイヤハーネスに対してバンドクランプをより強固に固定できる。
また、第5実施形態のバンドクランプ55(図7及び図8)においては、挿通孔30内に係止爪36が設けられているので、比較的小径のワイヤハーネスに対するバンドクランプ55の固定を、第1巻き付け工程だけで終わらせることも可能である(図8(a)の状態)。即ち、比較的小径のワイヤハーネスに対してバンドクランプを固定する場合であっても、必ずしも当該ワイヤハーネスに対してバンド部15を二重に巻き付けなければならないという訳ではない(つまり、第5実施形態のバンドクランプ55の場合、第2巻き付け工程を省略できる)。ただし、図8(a)の状態では、バンド部15が、基端部24を中心にグラついてしまうため、不安定である。そこで、第5実施形態のバンドクランプ55において、第2巻き付け工程を省略する場合であっても、仮止め工程は省略しないことが好ましい。即ち、仮止め止め工程を行うことで、凹部34と凸部35が嵌合させられるので、バンド部15のグラつきを防止することができる。
第5実施形態のバンドクランプ55(図7及び図8)において、バンド部15には凹部34が、筒部13には凸部35が形成されているが、これとは逆に、バンド部15には凸部を、筒部13には凹部34を形成しても良い。また、第5実施形態のバンドクランプ55においては、凹部34が複数形成されているが、これに代え、或いはこれに加えて、凸部35を複数形成しても同様の効果が得られる。