JP6213999B2 - アミン化合物、光学活性アミン、光学活性アミンを含む不斉触媒および不斉触媒を用いた光学活性ハロゲン化合物の製造方法 - Google Patents

アミン化合物、光学活性アミン、光学活性アミンを含む不斉触媒および不斉触媒を用いた光学活性ハロゲン化合物の製造方法 Download PDF

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本発明は、アミン化合物、光学活性アミン、光学活性アミンを含む不斉触媒および不斉触媒を用いた光学活性ハロゲン化合物の製造方法に関する。
アミン化合物は、有用な化合物として広く知られており、各種用途において新たなアミン化合物に対する強い要望がある。また、触媒用途において、光学活性アミンに対する強い要望がある。
医薬品を含む化合物の製造において、有用な合成中間体は欠かせないものとなっている。近年上市される医農薬品の多くは不斉炭素を有するキラル化合物である。キラル化合物を光学活性体として使用することで薬効および安全性をより高めることが一般的となっている。従って、医農薬品の合成に用いられる中間体を光学活性体として得ることが非常に重要となっており、鏡像異性体の一方のみを選択的に合成する不斉合成が注目されている。
また、近年、カルボニル化合物の不斉有機変換反応を実現する触媒として、アミノ基を触媒活性点とする有機分子触媒が注目されている(非特許文献1〜3)。
Angew. Chem. Int. Ed. 2012, 51, 9748 (Review) Chem. Eur. J. 2006, 12, 6039. Angew. Chem. Int. Ed. 2008, 47, 6138 (Review)
しかしながら、非特許文献1,3に示されるような従来のアミン系化合物で構成される不斉触媒は、その多くが天然由来のキラルアミノ酸から合成されているため、触媒設計の自由度が低く、基質や反応系への適用範囲が制限されているという問題点があった。また、新たな合成経路を構築する場合には既存の触媒を適用できないことも多い。このため、高効率に不斉合成を行うための有機分子触媒のさらなる開発が要求されている。
例えば、キラルアミン触媒を用いたアルデヒドのα位置換反応は極めて有用な置換反応であるが、α位の炭素に2つの置換基が導入されたα−2置換アルデヒドや、α,β−不飽和アルデヒドを反応基質とした場合の成功例は少ない。アルデヒドは反応性に富む低分子化合物であり、合成ブロックとして汎用に用いられるものの1つである。ここで、化合物の塩素化やフッ素化等のハロゲン化は、物性が大きく変化することが知られており、医農薬品においては、ハロゲン化技術に対する強い要求がある。ところが、上記したようにα−2置換アルデヒドやα,β−不飽和アルデヒドは置換反応を容易に行うことができないため、かかる基質に所望の置換基が導入された目的化合物を得ることは極めて困難であった。
非特許文献2には、α−2置換アルデヒドの不斉フッ素化反応によって、α−3置換アルデヒドの合成が80%ee以上の光学純度で達成されているが、本技術のみで、立体構造や化学的性質の異なる数多くのα−2置換アルデヒド及びα,β−不飽和アルデヒドの全てについて、工業的に使用可能な良好な反応性で不斉ハロゲン化を行うことは困難である。また、本反応系では化学収率が低いという問題点があった。
故に、かかる基質に対し、置換基、特に、ハロゲン原子を導入する簡便かつ汎用的な手法(置換反応の実現)が強く求められている。
本発明は上述の問題点を解決するためになされたもので、新規な光学活性アミン及び光学活性アミンを含む新規な不斉触媒、更には当該不斉触媒を用いた高効率的な不斉有機分子変換による光学活性ハロゲン化合物の製造方法、更には新規なアミン化合物を提供することを目的とする。
この目的を達成するため、請求項1に係る発明は、式(0)で表される光学活性アミンである。
Figure 0006213999
式中のZは、
Figure 0006213999
または
Figure 0006213999
で表される。
ただし、Rは、同一または異なって、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルアルキル基、シリル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シロキシ基、アシルオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルアミノ基、アシルアミノ基、またはアルキレン基を示し、R、R、Rは、同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルアルキル基、シリル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シロキシ基、アシルオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルアミノ基、アシルアミノ基、またはアルキレン基を示し、Rは、水素原子、アルキル基、アリール基、アルアルキル基、シリル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シロキシ基、アシルオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルアミノ基、アシルアミノ基、またはアルキレン基を示し、Xは、酸素原子、硫黄原子、またはセレン原子を示す。
請求項2に係る発明は、式(1)で表される光学活性アミンを含有する不斉触媒である。
Figure 0006213999
ただし、Rは、同一または異なって、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルアルキル基、シリル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シロキシ基、アシルオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルアミノ基、アシルアミノ基、またはアルキレン基を示し、R、R、Rは、同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルアルキル基、シリル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シロキシ基、アシルオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルアミノ基、アシルアミノ基、またはアルキレン基を示す。
請求項3に係る発明は、式(1−1)で表される光学活性アミンを含有する不斉触媒である。
Figure 0006213999
ただし、Rは、同一または異なって、水素原子よりも大きな置換基を示し、R、R、Rは、同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルアルキル基、シリル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シロキシ基、アシルオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルアミノ基、アシルアミノ基、またはアルキレン基を示す。
請求項4に係る発明は、式(1−2)で表される光学活性アミンを含有する不斉触媒である。
Figure 0006213999
ただし、Rは、同一または異なって、ナフチル基と同程度またはそれ以上の嵩高の置換基を示し、R、R、Rは、同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルアルキル基、シリル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シロキシ基、アシルオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルアミノ基、アシルアミノ基、またはアルキレン基を示す。
請求項5に係る発明は、式(2)で表される光学活性アミンを含有する不斉触媒である。
Figure 0006213999
ただし、Rは、同一または異なって、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルアルキル基、シリル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シロキシ基、アシルオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルアミノ基、アシルアミノ基、またはアルキレン基を示し、Rは、水素原子、アルキル基、アリール基、アルアルキル基、シリル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シロキシ基、アシルオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルアミノ基、アシルアミノ基、またはアルキレン基を示し、Xは、酸素原子、硫黄原子、またはセレン原子を示す。
請求項6に係る発明は、式(2−1)で表される光学活性アミンを含有する不斉触媒である。
Figure 0006213999
ただし、Rは、同一または異なって、水素原子よりも大きな置換基を示し、Rは、水素原子、アルキル基、アリール基、アルアルキル基、シリル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シロキシ基、アシルオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルアミノ基、アシルアミノ基、またはアルキレン基を示し、Xは、酸素原子、硫黄原子、またはセレン原子を示す。
請求項7に係る発明は、式(2−2)で表される光学活性アミンを含有する不斉触媒である。
Figure 0006213999
ただし、Rは、同一または異なって、ナフチル基と同程度またはそれ以上の嵩高の置換基を示し、Rは、水素原子、アルキル基、アリール基、アルアルキル基、シリル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シロキシ基、アシルオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルアミノ基、アシルアミノ基、またはアルキレン基を示し、Xは、酸素原子、硫黄原子、またはセレン原子を示す。
請求項8に係る発明は、不斉反応による光学活性ハロゲン化合物の製造方法であって、基質と請求項2から7のいずれかに記載の不斉触媒とを接触させる光学活性ハロゲン化合物の製造方法である。
請求項9に係る発明は、α位の炭素に結合する2つ以上の水素原子が置換された多置換アルデヒドを基質とし、請求項2から7のいずれかに記載の不斉触媒を不斉ハロゲン化反応触媒として用いて、α位の炭素に新たにハロゲン原子が導入された光学活性ハロゲン化アルデヒドを製造する光学活性ハロゲン化合物の製造方法である。
請求項10に係る発明は、式(3)で表されるアミン化合物である。
Figure 0006213999
式中のZは、
Figure 0006213999
または
Figure 0006213999
で表される。
ただし、Rは、同一または異なって、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルアルキル基、シリル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シロキシ基、アシルオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルアミノ基、アシルアミノ基、またはアルキレン基を示し、R、R、Rは、同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルアルキル基、シリル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シロキシ基、アシルオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルアミノ基、アシルアミノ基、またはアルキレン基を示し、Rは、水素原子、アルキル基、アリール基、アルアルキル基、シリル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シロキシ基、アシルオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルアミノ基、アシルアミノ基、またはアルキレン基を示し、Xは、酸素原子、硫黄原子、またはセレン原子を示す。
請求項1に記載の光学活性アミンによれば、式(0)に示す新規の光学活性アミンを提供できるという効果がある。更には、本アミン化合物は、軸不斉を有し触媒活性を備えるので、例えば、不斉合成に用いる有機分子触媒とし得るという効果がある。
請求項2記載の不斉触媒によれば、式(1)の光学活性アミンを含有する有機分子触媒であるので、金属含有触媒に比べて、環境負荷を低減できる上、化学的に安定であり取扱いが容易であるという効果がある。更には、シンコナアルカロイド系や他の天然由来のキラルアミノ酸とは異なり、合成反応によって比較的簡便に合成できる分子構造であるので、触媒設計の自由度が高く、基質や目的産物の特性に応じて適切な触媒を設計できるという効果がある。
また、請求項2記載の不斉触媒によれば、更に、化学収率および立体制御(エナンチオ選択性)に優れた触媒を提供する事ができるという効果がある。これにより、本触媒を用いた場合の不斉反応の反応効率を向上させ、目的産物の収率や光学純度を向上させることができる。
請求項3記載の不斉触媒によれば、式(1−1)におけるRが、水素原子より大きな置換基である光学活性アミンを含有するので、Rが水素原子である場合に比べて、より一層立体制御(エナンチオ選択性)に優れた触媒を提供する事ができるという効果がある。これにより、本触媒を用いた場合の不斉反応の反応効率を向上させ、目的産物の収率や光学純度を向上させることができる。
請求項4記載の不斉触媒によれば、式(1−2)のRが、同一または異なって、ナフチル基と同程度またはそれ以上の嵩高の置換基であるので、当該嵩高い置換基の作用によって、基質との立体反発等を利用した的確な立体制御を行いつつ反応を円滑に促進することができる。例えばα−2置換アルデヒドやα位に置換基を持つα,β−不飽和アルデヒドを基質とした不斉反応は、従来、非常に困難な反応であったが、本不斉触媒を用いることで、当該アルデヒドを基質とする不斉反応の反応性を改善し、目的の光学活性化合物を容易に得ることができる。
請求項5記載の不斉触媒によれば、効率的な不斉有機分子変換反応を実現する事ができるという効果がある。また、本不斉触媒は、有機分子触媒であるので、金属含有触媒に比べて、環境負荷を低減できる上、化学的に安定であるため取り扱いが容易である。更には、シンコナアルカロイド系や他の天然由来のキラルアミノ酸とは異なり、合成反応によって比較的簡便に合成できる分子構造であるので、触媒設計の自由度が高く、目的の有機分子を合成する反応や基質に応じて適切な触媒を設計できるという効果がある。
また、請求項5記載の不斉触媒によれば、更に、化学収率および立体制御(エナンチオ選択性)に優れた触媒を提供する事ができるという効果がある。これにより、本触媒を用いた場合の不斉反応の反応効率を向上させ、目的産物の収率や光学純度を向上させることができる。
請求項6記載の不斉触媒によれば、式(2−1)におけるRが、同一または異なって、水素原子よりも大きな置換基である光学活性アミンを含有するので、Rが水素原子である場合に比べて、より一層、立体制御(エナンチオ選択性)に優れた触媒を提供する事ができるという効果がある。これにより、本触媒を用いた場合の不斉反応の反応効率を向上させ、目的産物の収率や光学純度を向上させることができる。
請求項7記載の不斉触媒によれば、式(2−2)のRが、同一または異なって、ナフチル基と同程度またはそれ以上の嵩高の置換基であるので、当該嵩高い置換基の作用によって、基質に対する親和力を向上し得、的確な立体制御を行いつつ反応を円滑に促進することができる。例えばα−2置換アルデヒドやα位に置換基を持つα,β−不飽和アルデヒドを基質とした不斉反応は、従来、非常に困難な反応であったが、本不斉触媒を用いることで、当該アルデヒドを基質とする不斉反応の反応性を改善し、目的の光学活性化合物を容易に得ることができる。
請求項8記載の光学活性ハロゲン化合物の製造方法によれば、基質と請求項2から7のいずれかに記載の不斉触媒とを接触させることにより、不斉反応による光学活性ハロゲン化合物を効率的に合成でき、目的産物の光学活性ハロゲン化合物の収率および光学純度を向上させることができるという効果がある。
請求項9記載の光学活性ハロゲン化合物の製造方法によれば、α位の炭素に結合する2つ以上の水素原子が置換された多置換アルデヒドを基質とし、請求項2から7のいずれかに記載の不斉触媒を不斉ハロゲン化反応触媒として用いて、α位の炭素に更にハロゲン原子が導入された光学活性ハロゲン化アルデヒドを製造することができるという効果がある。従来、α位の炭素上の2以上の水素原子が置換された多置換アルデヒドにおいて、新たにα位の炭素に置換基を導入する事は非常に困難であったが、本製造方法によれば、α位の炭素に新たにハロゲン原子が導入された目的の光学活性ハロゲン化合物を、複雑な合成経路を経ずに簡便かつ効率的に製造する事ができる。
以下、本発明を詳細に説明する。アミン化合物、中でも、光学活性アミンは、工業上の有用化合物として知られている。このため、新たな光学活性アミンに対する強い要望がある。
本発明の光学活性アミンは、式(0)において
Figure 0006213999
Zが式(0−1)
Figure 0006213999
または式(0−2)
Figure 0006213999
で表されるものであり、夫々、次の式(1)および式(2)の構造式で示される。
Figure 0006213999
Figure 0006213999
本光学活性アミンは、ナフチル基が2個単結合で繋がれた1,1’−ビナフチル骨格を有しており、1,1’ −ビナフチル構造に由来した軸不斉を有する。ビナフチル構造の3,3’の位置には置換基Rを備えている。
式(1)及び(2)における二つのRは、同一または異なっていても良く、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルアルキル基、シリル基,アルコキシ基、アリールオキシ基、シロキシ基、アシルオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルアミノ基、アシルアミノ基、またはアルキレン基であっても良い。
好適には、Rは、アリール基、アルコキシ基、アルキル基であってよい。その合成を容易とし得るからである。
尚、Rが有機基である場合、各有機基は置換基を備えたものが含まれる。また、本明細書において「アルアルキル基」はアラルキル基と称されるものと同じであり、アリール基を持つアルキル基、即ち、アルキル基における1つの水素原子が、アリール基に置換されている基を意味するものである。
更に、本光学活性アミンは、2個のナフチル基に連結する炭素環を有している。かかる炭素環においてビナフチル骨格から最も遠い第2級炭素原子の2つの水素原子は、共に有機基(置換基)に置換されており、一方の置換基はアミノ基となっている。
また、他方の置換基(式(0)中のZ)は、式(1)の光学活性アミンと式(2)の光学活性アミンとで異なっており、式(1)の光学活性アミンにおいては、−CRである。ここで、R、R、Rは、同一または異なっていて良く、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルアルキル基、シリル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シロキシ基、アシルオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルアミノ基、アシルアミノ基、またはアルキレン基であっても良い。
,Rは、好適には、水素原子、アルキル基、アリール基であって良い。Rは、好適には、水素原子、水酸基、アルキル基、アリール基、シリル基、アルコキシ基、シロキシ基であっても良い。これにより、その合成を容易とし得るからである。
尚、R,R,Rは、有機基である場合、それぞれ各有機基は置換基を備えたものが含まれる。
式(2)において、他方の官能基(式(0)中のZ)は−C(=X)Rであり、Rは、水素原子、アルキル基、アリール基、アルアルキル基、シリル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シロキシ基、アシルオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルアミノ基、アシルアミノ基、またはアルキレン基であって良く、Xは、酸素原子、硫黄原子、またはセレン原子であって良い。尚、Rは、有機基である場合、各有機基は置換基を備えたものであっても良い。好適には、Xは、酸素原子、硫黄原子であってよい。また、特に好ましくは、Xは、酸素原子である。
尚、本発明の光学活性アミンにおいて、ビナフチル骨格の各炭素原子は、水素原子に代えて各種置換基を備えていても良い。
ここで、式(0)の化合物と、上述の式(3)にて示すアミン化合物とは、同じ又は同様の構造であって、式(0)の化合物は、光学活性体であって本発明の光学活性アミンである。一方、式(3)の化合物は、新規なアミン化合物であって、光学活性を備えない本発明のアミン化合物である。
本発明の不斉触媒は、上記式(1)及び式(2)の光学活性アミンを含むものである。尚、本発明の不斉触媒は、上記式(1)及び式(2)の光学活性アミンのいずれか一方を含むものであれば良い。また、本発明の不斉触媒は、上記式(1)及び式(2)において、Rは、好適には、アリール基、アルコキシ基、アルキル基であってよく、また、R,Rは、好適には、水素原子、アルキル基、アリール基であって良い。Rは、好適には、水酸基、アルキル基、アリール基、シリル基、アルコキシ基、シロキシ基であっても良い。これにより、その合成を容易とし得るからである。当該不斉触媒は、1,1’ −ビナフチル構造に由来した軸不斉のため2種の光学異性体が存在する。このため、一方の光学異性体を不斉触媒として用いることで、良好なエナンチオ選択性を実現する。このような本不斉触媒を新たに提供することにより、不斉合成反応に用いる基質の適用範囲を拡大し得ることとなる。
一方で、本不斉触媒は、式(1−1)又は(2−1)の光学活性アミンを含むものであっても良い。
Figure 0006213999
Figure 0006213999
上記式(1−1)及び(2−1)におけるRは、水素原子より大きな置換基であることが好ましい。言い換えれば、本不斉触媒は、Rに、置換基を備えたものが好適に用いられる。即ち、Rとしては、同一または異なって、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルアルキル基、シリル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シロキシ基、アシルオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルアミノ基、アシルアミノ基、またはアルキレン基などを挙げることができる。尚、前記の式(1)の場合と同様に、Rが有機基である場合には、各有機基は置換基を備えたものが含まれる。Rが水素原子より大きな置換基であるとは、物理的な大きさが水素原子よりも大きなことを意味するものであり、このため、本不斉触媒において、Rは、ホウ素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子などのヘテロ原子を含む1価の原子団であっても良い。
特に好適には、Rは、アリール基、アルコキシ基、アルキル基であってよい。尚、上記式(1−1)及び(2−1)におけるR、R、R、RおよびXは、式(1)及び(2)の場合と同様である。ここで、R,Rは、好適には、水素原子、アルキル基、アリール基であって良い。Rは、好適には、水酸基、アルキル基、アリール基、シリル基、アルコキシ基、シロキシ基であっても良い。これにより、その合成を容易とし得るからである。Xは、好適には、酸素原子、硫黄原子であってよく、特に好ましくは、酸素原子である。
これらの置換基は、その大きさの上限は特に制限されないが、好適には、当該嵩高の置換基を構成する炭素(ヘテロ原子を含む)数が、1〜100の範囲にあることが望ましい。かかる範囲において、製造の煩雑さや原料コストを考慮して選択されればよく、より好適には、炭素(ヘテロ原子を含む)数が1〜60の範囲であり、更に好適には、1〜40の範囲である。このように、Rを、水素原子より大きな置換基とすることにより、不斉反応の反応効率を向上させることができる。
上記のRは、嵩高い置換基とすれば、よりエナンチオ選択性の良好な触媒が得られる点で望ましい。
ここで、嵩高い置換基とは、炭素原子よりも原子半径の大きな原子や、かかる大きな原子を備える有機基、更には、空間的に広がった立体構造を有し直鎖状の飽和炭化水素鎖に比較して剛直な構造の分子(原子団)などである。尚、有機基は炭素原子を含む基をいい、炭化水素基にて構成されているもののみならず、該炭化水素基の一部に、酸素原子、窒素原子又はハロゲン原子などのヘテロ原子が含まれた基をいう。
詳細には、かかる嵩高い置換基として、例えば、複数の分岐鎖を備えたアルキル基や、上述のRにおいて置換基を備えたものが含まれ、好適には、例えば、置換基を備えていても良いアリール基、置換基を備えていても良いヘテロアリール基等が例示できる。
かかる嵩高い置換基の内、ヘテロ原子を含んでいても良い炭化水素の主骨格に2以上の置換基が結合したものは特に好ましく、かかる結合置換基としては、ターシャルブチル基やフェニル基などが好適である。このような嵩高い置換基の例としては、例えば、3,5−ジフェニルフェニル基、3,5−ジターシャルブチルフェニル基等が例示できるが、これらに限定されるものでない。
このような嵩高い置換基を備えることによって、立体障害に起因するエナミン中間体の幾何異性の制御および求電子試薬の攻撃面の制御が適切に起こり、不斉反応の効率が向上すると推定される。
尚、本不斉触媒として前掲したものは、実行する不斉合成反応に応じて、上記した光学活性アミンの内から反応に適したものが、選択されて使用される。選択される不斉触媒は1種類でも複数種類でも良い。
本不斉触媒は、各種の不斉合成反応に適用することができ、例えば、ハロゲン化反応、酸化反応、アザマイケル反応、アルドール反応、マイケル付加反応に適用できる。従来の報告(Angew. Chem. Int. Ed. 2008, 47, 6138−6171)より、かかる酸化反応、アザマイケル反応、アルドール反応、マイケル付加反応は、本不斉触媒を用いたハロゲン化反応と類似の機構で進行することは明らかである。故に、本不斉触媒はかかる不斉合成反応の好適な触媒となるのである。
本不斉触媒を用いた不斉合成反応においては、導入する置換基として、アミノ基、ヒドロキシ基、スルフェニル基、ハロゲン原子が例示できる。
本不斉触媒は、特に好適には、導入する置換基をハロゲン原子とする不斉ハロゲン化反応に用いられる。導入されるハロゲン原子は、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)、アスタチン(At)である。
また、かかる不斉ハロゲン化反応において用いられる基質としては、例えば、α−2置換アルデヒド、α−1置換アルデヒド、ジアルキルケトン、アルキルアリールケトン等が例示できる。本不斉触媒を用いて不斉ハロゲン化反応を行うと、従来は困難であった合成反応を容易とし、良好な収率、良好な光学純度で目的とする光学活性ハロゲン化合物を得ることができる。
また、α−2置換アルデヒドが基質である場合、α位の2つの置換基は、置換基を有していても良いアルキル基やアリール基であって良い。置換基を有していても良いアリール基としては、例えば、フェニル基、メチルフェニル基、ブロモフェニル基、ニトロフェニル基、ナフチル基などが例示されるが、これに限られるものではない。また、α−2置換アルデヒドは、α位の2つの置換基を含んで環状構造が形成されたものであっても良く、かかるアルデヒドとしては、例えば、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2−カルボアルデヒドなどが例示されるが、これに限られるものではない。
ここで、本不斉触媒は、特に、下記式(1−2)又は(2−2)に示す光学活性アミンを含むものであっても良い。
Figure 0006213999
Figure 0006213999
上記式(1−2)及び(2−2)におけるRは、ナフチル基と同程度以上の嵩高の置換基であることが好ましい。尚、上記式(1−2)及び(2−2)におけるR、R、R、RおよびXは、式(1)及び(2)の場合と同様であり、R,Rは、好適には、水素原子、アルキル基、アリール基であって良い。Rは、好適には、水酸基、アルキル基、アリール基、シリル基、アルコキシ基、シロキシ基であっても良い。これにより、その合成を容易とし得るからである。Xは、好適には、酸素原子、硫黄原子であって良く、特に好ましくは、酸素原子である。かかる場合には、α−2置換アルデヒドや、α位に置換基を持つα,β−不飽和アルデヒドを反応基質とする不斉反応を容易に実現できる。
ナフチル基と同程度以上の嵩高さとは、ナフチル基と同程度またはそれ以上の嵩高さであることの意味であり、かかる基としては、例えば、4−トリフルオロメチルフェニル基、4−ターシャルブチルフェニル基、3,4,5−トリフルオロフェニル基、3,5−ジメチルフェニル基、2,6−ジメチルフェニル基、3,5−ジターシャルブチルフェニル基等が例示される。尚、Rには、置換基を有していても良いナフチル基が含まれるものとする。
従来の有機アミンを触媒としたカルボニル化合物の不斉分子変換反応は数多く報告されているが、未だに基質の適用範囲が制限されているのが現状である。特に、α位に置換基を持つα,β−不飽和アルデヒドや、α−2置換アルデヒドを反応基質とした不斉反応の成功例は極端に少ない。
しかし、本発明に係る上記の不斉触媒(式(1−2)及び(2−2)において、Rにナフチル基と同程度以上の置換基を具有するもの)を用いれば、従来、非常に困難であったα位に置換基を持つα,β−不飽和アルデヒドを基質とする不斉Diels-Alder反応、不斉マイケル付加反応を実現できる。また、α−2置換アルデヒドのα位に新たに置換基を導入する不斉分子変換反応を実現できる。また、α−2置換アルデヒドを基質とし導入する置換基をハロゲン原子とすれば、目的生成物として、光学活性ハロゲン化アルデヒドを良好な収率、良好な光学純度で得ることができる。これによって、医農薬品やその中間体の製造に求められる新たなビルディングブロックの提供に寄与できる。
従来、一級および二級アミン触媒はα,β−不飽和アルデヒドを反応基質とした場合、イミニウムカチオン中間体を形成し、さらに様々な求核的な反応剤と結合形成を行うことが良く知られている(Angew. Chem. Int. Ed. 2008, 47, 6138−6171)。ところが、反応基質にα位に置換基を持つα,β−不飽和アルデヒドを用いた場合、α−2置換アルデヒドの不斉α位置換反応(ハロゲン化反応等)と同様に、従来、主に用いられてきた二級アミン型の触媒とはイミニウムカチオン中間体(もしくはエナミン中間体)を形成しにくいため、効率的な不斉反応の実践が困難であった。本不斉触媒は、一級アミン部分を活性中心として設計されているので、両アルデヒドのいずれにもその作用を効果的に及ぼすことができ、かかるアルデヒドの不斉合成反応を実現できる。
上記した光学活性アミン(不斉触媒)は、ビナフチル骨格を有する前駆体から作製される。詳細な合成手順については後述の実施例にて詳述する。尚、式(1)と式(2)の光学活性アミンは、骨格構造が同じ(式(0)参照)であり、式(0)のZの構造部分のみ異なるものである。従って、骨格構造については、同様の合成法にて合成でき、更に、例えば、式(1)の光学活性アミンは、式(2)の光学活性アミンをリチウムアルミニウムヒドリド等の還元剤でカルボニル基を還元しアルコールを得る、もしくはグリニャール試薬を作用させてカルボニル基にアルキル基やアリール基を付加するなどの一般的な合成経路を経て得ることができる。
尚、本不斉触媒は、必ずしも上記した光学活性アミン100%の純度である必要はなく、不斉反応を進行させる程度の純度および光学純度であればよい。
更に、本不斉触媒は、従来公知の方法で反応系に混合して使用しても良く、公知の手法によって担体に担持させて用いてもよい。
このように、本光学活性アミンは、天然アミノ酸を原料とする合成経路(製造方法)とは異なり、工業的に確立されているビナフチル構造を経由する合成経路によって製造することができる。このため、構造設計の自由度が高く、様々な構造体を提供することができる。
以上、上記実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に基づいて限定されるものではない。下記実施例においては、説明を容易とするために、反応式中の化合物に適宜符号を付して説明を行なう。尚、下記実施例において化合物の同定は、水素(1H)核磁気共鳴スペクトルを以下の装置及び条件で測定することにて行った。尚、フッ素化合物については、フッ素(19F)核磁気共鳴スペクトルについても以下の装置及び条件で測定を行った。
1)1H−NMRスペクトル=内部標準としてテトラメチルシラン(0 ppm)を用いたJNM−ECX500分光計(日本電子株式会社製)
2)19F−NMRスペクトル=内部標準としてトリクロロフルオロメタン(0 ppm)を用いたJNM−ECX500分光計(日本電子株式会社製)
更に、単離・精製のための各種クロマトグラフィー操作では、順相シリカゲルカラムクロマトグラフィー=シリカゲル60(関東化学株式会社、230〜400メッシュ)を用い分離操作を行った。
また、光学異性体の分析は、キラルカラム(CHIRALPAK ID (株)ダイセル社製)を用いた高速液体クロマトグラフィー(HPLC)(日本分光製、PU1586およびUV-1575)を用いて行った。
尚、下記実施例に記載する反応式や表中の構造式において、tBuはターシャルブチル基、nBuはノルマルブチル基、Meはメチル基、Etはエチル基、Phはフェニル基である。
[光学活性アミン合成の実施例]
以下に、光学活性アミンの合成にかかる実施例を示す。
(実施例1)光学活性アミン(I)の合成
EP1712549 A1に記載されている手法を利用して前駆体(A)を合成した。また、前駆体(A)はTetrahedron Letters (2008) pp.2026−2030に記載された手法でも合成できる。
そして、乾燥させたナス型フラスコに前駆体(A)(光学純度100%)のアセトニトリル溶液(2.4 mmol)を加え、さらに0.49 mmolのテトラブチルアンモニウム亜硫酸塩、2.9 mmol のイソシアノ酢酸エチルエステル、および25 mmolの炭酸カリウムを加え、12時間加熱還流を行った。その後、反応溶液を室温まで冷却後に反応溶液をセライト濾過することで沈殿物を除去した。減圧下でアセトニトリルを留去して得られた粗生成物のエタノール溶液をナス型フラスコに加え、さらに濃塩酸を6.4 mL加えた。反応溶液を12時間室温で撹拌した後、飽和重層水を加え、続いてジクロロメタンで抽出を行った。ジクロロメタン層を硫酸ナトリウムで脱水し、減圧下ジクロロメタンを留去して得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。これにより、下記反応式1に示す目的とする触媒(光学活性アミン(I))の合成を行った。そして、収率20%で目的物を得た。
Figure 0006213999
得られた目的物は、1HNMRにて構造解析を行い、表1に示す結果を得た。
Figure 0006213999
これにより、得られた目的物は、光学活性アミン(I)であることを確認した。
(実施例2)光学活性アミン(II)の合成
Journal of the American Chemical Society (2003) pp.5139−5151に記載されている手法を利用して前駆体(B)を合成した。また、前駆体(B)はTetrahedron Letters (2008) pp.2026−2030に記載された手法でも合成できる。そして、前駆体(B)(光学純度100%)から実施例1と同様の手法で、目的とする触媒(光学活性アミン)の合成を下記反応式2に示すように行い、収率30%で目的物を得た。
Figure 0006213999
得られた目的物は、1HNMRにて構造解析を行い、表2に示す結果を得た。
Figure 0006213999
これにより、得られた目的物は、目的の光学活性アミン(II)であることを確認した。
(実施例3)光学活性アミン(III)の合成
Journal of the American Chemical Society (2003) pp.5139-5151に記載されている手法を利用して前駆体(C)を合成した。そして、前駆体(C)(光学純度100%)から実施例1と同様の手法で、目的とする触媒(光学活性アミン)の合成を下記反応式3に示すように行い、収率40%で目的物を得た。得られた目的物は、1HNMRにて構造解析を行い、目的の光学活性アミン(III)であることを確認した。
Figure 0006213999
(参考例1)光学活性アミン(IV)の合成
Journal of the American Chemical Society (2003) pp.5139-5151に記載されている手法を利用して(R)-2,2’-bis(bromometyl)-1,1’binaphthylを前駆体(D)として合成した。そして、加熱還流時間を18時間、濃塩酸等を加えた後の室温での撹拌操作を6時間とした以外は、実施例1と同様の手法で、前駆体(D)(光学純度100%)から下記反応式4に従って目的とする触媒(光学活性アミン)の合成を行い、収率84%で目的物を得た。
Figure 0006213999
得られた目的物は、1HNMRにて構造解析を行い、目的の光学活性アミン(IV)であることを確認した。
[光学活性フルオロアルデヒド合成の実施例]
以下に、光学活性フルオロアルデヒドの合成にかかる実施例を示す。
(実施例4)光学活性フルオロアルデヒド(VII)の合成
下記反応式5に示す合成反応により、光学活性フルオロアルデヒド(VII)の合成を行った。尚、不斉触媒として用いた光学活性アミン(I)は、R体であり、反応式5において(R)-1と表示する。
Figure 0006213999
具体的には、乾燥させたシュレンク管に実施例1で得た光学活性アミン(I)のトルエン溶液(0.02mmol)を加え、さらに0.3 mmolのα−2置換アルデヒド(V)と0.2 mmol N−フルオロベンゼンスルホンイミド(VI)を加え、室温で2時間撹拌した。反応溶液に飽和重層水を加え、続いてジクロロメタンで抽出を行った。ジクロロメタン層を硫酸ナトリウムで脱水し、減圧下ジクロロメタンを留去して得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し目的とするフルオロアルデヒド(VII)の合成を行った。得られたフルオロアルデヒド(VII)の構造決定は、一級アルコールに還元した後に行った。
一級アルコールへの誘導化は、反応式6に示すように、得られたフルオロアルデヒド(VII)の粗生成物に1.0 mmolの水素化ホウ素ナトリウム(NaBH)とメタノールを加え、室温で1時間撹拌して行った。その後、反応溶液に飽和重層水を加え、続いてジクロロメタンで抽出を行った。ジクロロメタン層を硫酸ナトリウムで脱水し、減圧下ジクロロメタンを留去して得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、フルオロアルコール(VIII)を収率99%、光学純度88%eeで得た。
Figure 0006213999
得られたフルオロアルコール(VIII)は、1HNMR、19FNMRにて構造解析を行い、表3に示す結果を得た。かかる結果より、上記反応式5に従って合成した化合物が、目的の光学活性フルオロアルデヒド(VII)であることを確認した。
Figure 0006213999
尚、光学純度の決定は、一級アルコールをベンゾイルエステルに誘導化した後に、キラルカラム(CHIRALPAK ID (株)ダイセル社製)を用いたHPLC分析により行った。分析条件は、移動層ヘキサン:2−プロパノール=99:1、流量0.5 mL/min、溶出時間 16.6分,18.3分とした。
具体的には、乾燥させたシュレンク管に、上記で得た一級アルコール(VIII)のジクロロメタン溶液(0.2mmol)を加え、さらに0.4 mmolのトリエチルアミン、0.3 mmolの塩化ベンゾイルと0.02 mmolのN,N-ジメチル-4-アミノピリジンを加え、0℃で1時間撹拌した。反応溶液に飽和重層水を加え、続いてジクロロメタンで抽出を行った。ジクロロメタン層を硫酸ナトリウムで脱水し、減圧下ジクロロメタンを留去して得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し目的とするベンゾイルエステルを合成した。収率85%であった。
(実施例5,6および比較例1)光学活性フルオロアルデヒド(VII)の合成
実施例5,6および比較例1は、実施例2,3および参考例1で作製した光学活性アミン(II)〜(IV)を光学活性アミン(I)の代わりにそれぞれ触媒として用い、適宜反応時間を変更した以外は、実施例4と同様に反応を行うことで光学活性フルオロアルデヒド(VII)の合成を実施した。尚、光学活性アミン(II)〜(IV)も、それぞれR体を用いた。得られた目的物の分析及び同定も、また、実施例4と同様の手法で行い、それぞれ目的の光学活性フルオロアルデヒド(VII)の生成を確認した。その結果を、実施例4の結果と合わせて、表4に示す。
尚、表4に示す収率は、実施例4〜6および比較例1で得た光学活性フルオロアルデヒド(VII)のそれぞれをフルオロアルコール(VIII)へ誘導化して測定した結果を示しており、光学純度は、フルオロアルコール(VIII)を更にベンゾイルエステルに誘導化して測定した結果を示している。ベンゾイルエステルに誘導化しても光学純度は変化しないため、得られた結果は、そのまま、フルオロアルコール(VIII)の光学純度となる。
Figure 0006213999
表4からわかるように、いずれの実施例においても、光学活性フルオロアルコール(VIII)が85%を超える高い収率(化学収率)で得られた。表4に示した収率は、光学活性フルオロアルデヒド(VII)を更にアルコールに誘導化した後の収率であるので、目的の光学活性フルオロアルデヒド(VII)は、表4に示された値以上の収率で得られたことが示された。即ち、実施例1〜3の不斉触媒を用いた不斉合成によって光学活性フルオロアルデヒド(VII)を優れた収率で生成できることが確認された。また、比較例1の光学活性アミン(IV)を用いた場合に比して、実施例1〜3の光学活性アミン(I〜III)を用いたほうが、光学純度の高い光学活性フルオロアルコール(VIII)が得られており、嵩高い有機基をR(反応式5の本不斉触媒の構造式参照)に備えた光学活性アミンを用いることにより、より一層、α−2置換アルデヒドの不斉ハロゲン化反応の反応性が向上することが認められた。

Claims (4)

  1. 式(0)で表される光学活性アミン。
    Figure 0006213999
    式中のZは、
    Figure 0006213999
    で表される。
    ただし、R は、同一または異なって、複数の分岐鎖を備えたアルキル基、ターシャルブチル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルアルキル基、アリールオキシ基、またはアリールチオ基を示し、R 5 はアルコキシ基、アリールオキシ基、シロキシ基、アシルオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルアミノ基、またはアシルアミノ基を示し、Xは、酸素原子、硫黄原子またはセレン原子を示す。
  2. 式(2)で表される光学活性アミンを含有することを特徴とする不斉触媒。
    Figure 0006213999

    ただし、R は、同一または異なって、複数の分岐鎖を備えたアルキル基、ターシャルブチル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルアルキル基、アリールオキシ基、またはアリールチオ基を示し、R 5 はアルコキシ基、アリールオキシ基、シロキシ基、アシルオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルアミノ基、またはアシルアミノ基を示し、Xは、酸素原子、硫黄原子またはセレン原子を示す。
  3. 不斉反応による光学活性ハロゲン化合物の製造方法であって、基質と請求項2に記載の不斉触媒とを接触させることを特徴とする光学活性ハロゲン化合物の製造方法。
  4. α位の炭素に結合する2つ以上の水素原子が置換された多置換アルデヒドを基質とし、請求項2に記載の不斉触媒を不斉ハロゲン化反応触媒として用いて、α位の炭素に新たにハロゲン原子が導入された光学活性ハロゲン化アルデヒドを製造することを特徴とする光学活性ハロゲン化合物の製造方法。
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